JP2016207271A - フィラメント及びこれを用いた白熱電球 - Google Patents

フィラメント及びこれを用いた白熱電球 Download PDF

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松本 貴裕
Takahiro Matsumoto
貴裕 松本
和史 田中
Kazufumi Tanaka
和史 田中
朋朗 小泉
Tomoaki Koizumi
朋朗 小泉
渓 江本
Kei Emoto
渓 江本
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【課題】 放熱効率を大きくしたフィラメント及びこれを用いた白熱電球を提供する。【解決手段】 フィラメント1は、W系基材11と、W系基材11上に形成された酸化抑制層12と、酸化抑制層12に形成された放射抑制層13とによって構成されている。酸化抑制層12は、赤外光を透過する耐熱性誘電体層であって、高温耐熱性酸化物、たとえばイットリア安定化酸化ジルコニア(YSZ)よりなる。放射制御層13も赤外光を透過する高温耐熱性誘電体であって、単層または低屈折率層/高屈折率層の積層よりなる。【選択図】 図2

Description

本発明はタングステン(W)系、タンタル(Ta)系等の高融点金属よりなる基材を有するフィラメント及びこれを用いた白熱電球に関する。
現在、照明分野の光源として、発光ダイオード(LED)素子を始めとする半導体発光素子の台頭が目覚ましいが、未だ光源としてフィラメント式白熱電球が利用されている。白熱電球は安価であるという利点を有するが、発光効率が低く、投入電力の多くが熱として放出されている。
従来のフィラメントは、Wにレニウム等をドープしたドープドW層と、ZrCN等の炭窒化物よりなるコーティング層とにより構成されている(参照:特許文献1のFig.3)。ドープドWの蒸気圧が高いことから、コーティング層で被覆していると考えられる。これにより、色温度が高くなり、発光効率が向上すると考えられる。
US2010/0327731A1
しかしながら、上述の従来のフィラメントにおいては、赤外光の多くは抑制できずに放射され、発光効率の向上は未だ不十分であるという課題がある。
尚、フィラメントの発光効率には、赤外光放射抑制及び可視光増強のための耐熱性赤外光反射多層膜を必要とするが、通常、耐熱性赤外光反射多層膜を構成する高融点を有する可視光透過兼赤外光抑制可能な低屈折率材料及び高屈折率材料の多くは酸化物であり、これらの酸化物と上述の従来のコーティング層の炭窒化物とは高温時に疎水的な振舞いを起こし、耐熱性赤外光反射多層膜とコーティング層との密着性を阻害することが発明者らの実験で判明した。従って、上述の従来のフィラメントにおいて、単に、耐熱性赤外光反射多層膜を付加することは適切でない。
上述の課題を解決するために、本発明に係るフィラメントは、高融点金属基材と、高融点金属基材上に形成された酸化抑制層と、酸化抑制層上に形成された赤外光放射を抑制する放射抑制層とを具備するものである。
また、本発明に係る光源は、上述のフィラメントと、フィラメントを囲み、不活性ガス、希ガスまたはこれらの混合ガスが封入されたバルブとを具備するものである。
本発明によれば、酸化抑制層により高融点金属基材の酸化による酸化物たとえばWO分子の放射抑制層への拡散が抑制されるので、放熱効率を大きく、従って、放射抑制層の寿命を長くできる。
本発明に係るフィラメントの実施の形態を示す斜視図である。 図1のフィラメントの断面図である。 図1の放射抑制層の例を示す断面図であって、(A)は単層の場合、(B)は多層の場合を示す。 図1のフィラメントの製造に用いられるスパッタ装置を示す図である。 図1のフィラメントの製造方法を説明するためのフローチャートである。 図1のフィラメントを含む白熱電球の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図6のフィラメントマウント工程を説明する図である。 図6のステム/管球配管融着工程を説明する図である。 図6の管球先端封止工程を説明する図である。 図6の電球封止工程を説明する図である。 図10の電球封止工程に用いられる排気封止装置を示す図である。 図1のフィラメントの実施例、比較例1、2、3を示す断面図である。 図12のフィラメントの実施例、比較例1、2、3のラマン分光スペクトルを示すグラフである。 図12の(A)、(B)、(C)の実施例、比較例1、2の耐熱温度を測定するための耐熱温度測定装置を示す図である。 図12の(A)、(B)、(C)の実施例、比較例1、2の耐熱温度を示すグラフである。 図12の(A)の実施例の放射スペクトル及び放射率を示すグラフである。 図12の(B)の比較例1の放射スペクトル及び放射率を示すグラフである。 図12の(A)の実施例の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。 図12の(B)の比較例1の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。 図12の(C)の比較例2の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。 図12の(D)の比較例3の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。
図1は本発明に係るフィラメントの実施の形態を示す斜視図、図2は図1のフィラメントの断面図である。
図1、図2においては、フィラメント1は、W系基材11と、W系基材11上に形成された酸化抑制層12と、酸化抑制層12に形成された放射抑制層13とによって構成されている。
W系基材11は、フィラメント1の点灯時の2500Kの高温に耐える高温耐熱性のWよりなるが、レニウム(Re)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、カリウム(K)等をドープしてもよい。
酸化抑制層12は、赤外光を透過する耐熱性誘電体層であって、高温耐熱性酸化物、たとえばイットリア安定化酸化ジルコニア(YSZ)、イットリア安定化酸化ハフニウム(YSH)、高温耐熱性窒化物、たとえばAlN、BN、HfN、ZrN、または、高温耐熱性炭化物、たとえばTaC、HfC、ZrCよりなる。酸化抑制層12の厚さは、放射抑制層13の後述の単層または積層の各層の厚さより大きく、たとえば200nm〜1000nm好ましくは200nm〜400nmである。
放射制御層13も赤外光を透過する高温耐熱性誘電体であって、図3の(A)に示す単層または図3の(B)に示す低屈折率層/高屈折率層の積層よりなる。
図3の(A)においては、放射制御層13は低屈折率n13のたとえばMgOよりなる低屈折率層がある。他方、酸化抑制層12は高屈折率n12のたとえばYSZよりなる高屈折率層である。この場合、低屈折率層の厚さをt13とし、高屈折率層の厚さをt12とすれば、
n12・t12=n13・t13=λ/4 (1)
但し、λは赤外光の所定波長を満足する。これにより、光の干渉を利用して波長λの赤外光を反射する。
図3の(B)においては、放射抑制層13は、赤外光を透過する高耐熱性誘電体よりなる屈折率n1の低屈折率層L1及び赤外光を透過する高耐熱性誘電体よりなる屈折率n2の高屈折率層L2よりなる少なくとも1つの組13−1、13−2、…13−N(たとえばN=30〜60)を積層することによって構成されている。各組13−i(i=1,2、…、N)は所定の中心波長λiの赤外光を光の干渉を利用して反射する。このときの反射条件は、
n1・t1=n2・t2=λi/4 (2)
但し、n1は低屈折率層L1の屈折率、
t1は低屈折率層L1の厚さ、
n2は高屈折率層L2の屈折率、
t2は高屈折率層L2の厚さ
である。広い波長範囲の赤外光を反射するためには、中心波長λiを少しずつ異ならせた複数組13−1、13−2、…、13−Nを必要とする。この場合、低屈折率層L1と高屈折率層L2との屈折率差が大きい程、反射できる赤外光の波長幅が大きくなるので、反射したい赤外光の波長幅に応じて低屈折率層L1及び高屈折率層L2の材料を選択する。尚、上述の複数組を積層する場合、すべての中心波長λiを必ずしも相異ならせる必要はなく、複数の組全体で所望の波長帯域の赤外光を反射できればよい。つまり、いくつかの組の中心波長は同一であってもよく、2組づつ同一中心波長であってもよい。
たとえば、低屈折率層L1をMgOにより構成しかつ高屈折率層L2をYSZにより構成した30組合計60層の放射抑制層13を用いて2500Kの温度における黒体放射が1200nm程度の赤外波長のピークを有する波長帯域における反射を高める場合を想定する。この場合、低屈折率層L1の厚さt1を156nmから94nmまで徐々に異ならせると共に、高屈折率層L2の厚さt2を116nmから70nmまで徐々に異ならせることにより、中心波長λ1〜λ30=700nm〜10μmの範囲の良好な赤外光反射特性を得ることができる。
本発明に係る白熱電球は、上述のフィラメント1と、フィラメント1を囲み、不活性ガス、希ガスまたはこれらの混合ガスが封入されたバルブとによって構成されている。
次に、上述のフィラメント1及び白熱電球の製造方法を説明する。
始めに、フィラメント1の製造に用いられるスパッタ装置を図4を参照して説明する。
図4において、真空チャンバ401の上部にはW系基材11をセットするための基材ホルダ402が設けられ、基材ホルダ402はヒータ付回転ユニット403に固定されている。また、真空チャンバ401の下部には、スパッタターゲット404及びその上にシャッタ405が設けられている。スパッタターゲット404としては3種類のターゲットまで同時にセットできる。たとえば、低屈折率層L1用としてMgOターゲット、酸化抑制層12及び高屈折率層L2用としてYSZターゲットをセットする。または、酸化抑制層11用としてYSHターゲット、低屈折率層L1として酸化シリコン(SiO)、アルナミ(Al)あるいは酸化カルシウム(CaO)、高屈折率層L2としてイットリウムチタン酸化物(YTi、以下、YTO)あるいはストロンチウムチタン酸化物(SrTiO、以下STO)等のチタン混合物をセットする。いずれの融点も2300K以上である。
また、図4において、スパッタターゲット404にはRFマッチング回路406及びRF電源407が接続され、RFスパッタを可能とする。他方、スパッタターゲット404にはDC電源408が接続され、DCスパッタを可能とする。さらに、W系基材11には、DC電源409が接続され、必要に応じてW系基材11に逆バイアスを印加する。
さらに、図4において、真空チャンバ401を真空にするための排気ポンプ410及び真空チャンバ401の圧力を計測する圧力計411が設けられている。また、真空チャンバ401の吸気側には、真空チャンバ401にArガスを供給するためのArボンベ412、Arバルブ413及びAr流量調整ユニット414が設けられ、同様に、真空チャンバ401にOガスを供給するためのOボンベ415、Oバルブ416及びO流量調整ユニット417が設けられている。
制御ユニット418は、圧力計411の出力を受信すると共に、ヒータ付回転ユニット403、シャッタ405、RF電源407、DC電源408、409、排気ポンプ410、Ar流量調整ユニット414及びO流量調整ユニット417を制御するためのものであり、マイクロコンピュータによって構成されている。
次に、図5のフローチャートを参照してフィラメント1の製造方法を詳細に説明する。
始めに、洗浄工程501において、W系基材11をアセトン等の有機溶剤中にて10分間超音波洗浄及び純水洗浄をし、Nガスブローにて十分乾燥する。W系基材11の表面の酸化物の除去または結晶粒安定化を必要とする場合には、濃NaOHボイル処理、または、真空中もしくは水素還元零囲気中でのアニール処理を行う。
次に、基材セット工程502において、W系基材11を基材ホルダ402にセットし、基材ホルダ402をヒータ付回転ユニット403に固定する。次いで、制御ユニット418はヒータ付回転ユニット403のヒータをオンにしてW系基材11を加熱する。
次に、真空排気工程503において、制御ユニット418は排気ポンプ410を駆動して真空チャンバ401の圧力計411の圧力を1.5×10−4Paとする。
次に、基板加熱工程504において、制御ユニット418はヒータ付回転ユニット403を回転させると共にヒータをオンにし、W系基材11を400℃まで加熱する。これにより、W系基材11の温度を安定化させる。
次に、プレスパッタ工程505において、制御ユニット418はAr流量調整ユニット414を調整してArガス流量を94sccmとする。次いで、RF電源407をオンにしてプラズマを発生させてプラズマを安定化させる。このときのRFパワーは300Wとする。次いで、予めセットされた酸化抑制層12用のYSZターゲットの表面をプレスパッタし、YSZターゲットの表面を清浄化する。
次に、本スパッタ工程506において、真空チャンバ401の圧力0.3Paを維持したままシャッタ405を開け、W系基材11上にYSZよりなる厚さ200nmの酸化抑制層12を形成する。
次に、ターゲット切換工程507において、制御ユニット418はシャッタ405を閉じてRF電源407をオフにし、本スパッタ工程506を終了させ、スパッタターゲット404をMgOターゲットに切換える。
次に、プレスパッタ工程508において、RF電源407を再びオンにしてプラズマを発生させてプラズマを安定化させる。このときのRFパワーは300Wとする。次いで、低屈折率層L1用のMgOターゲットの表面をプレスパッタし、MgOターゲットの表面を清浄化する。
次に、本スパッタ工程509において、真空チャンバ401の圧力0.3Paを維持したままシャッタ405を開け、W系基材11上の酸化抑制層12上にMgOよりなる厚さ156nmの低屈折率層L1を形成する。
次に、ターゲット切換工程510において、制御ユニット418はシャッタ405を閉じてRF電源407をオフにし、本スパッタ工程509を終了させ、スパッタターゲット404を再びYSZターゲットに切換える。
次に、プレスパッタ工程511において、RF電源407を再びオンにしてプラズマを発生させてプラズマを安定化させる。このときのRFパワーは300Wとする。次いで、高屈折率層L2用のYSZターゲットの表面をプレスパッタし、YSZターゲットの表面を清浄化する。
次に、本スパッタ工程512において、真空チャンバ401の圧力0.3Paを維持したままシャッタ405を開け、W系基材11上の低屈折率層L1上にYSZよりなる厚さ116nmの高屈折率層L2を形成する。
このように、ターゲット切換工程507、プレスパッタ工程508、本スパッタ工程509、ターゲット切換工程510、プレスパッタ工程511及び本スパッタ工程512によって1組の低屈折率層L1、高屈折率層L2を形成する。従って、ターゲット切換工程507、プレスパッタ工程508、本スパッタ工程509、ターゲット切換工程510、プレスパッタ工程511及び本スパッタ工程512をMgOの厚さを徐々に減少させかつYSZの厚さを徐々に増加させて繰返すことによって30組の低屈折率層L1、高屈折率層L2を形成する。
最後に、終了工程513において、制御ユニット418はシャッタ405を閉じてRF電源407をオフにし、本スパッタ工程512を終了させる。加えて、制御ユニット418は真空チャンバ401へのArガス供給を停止し、ヒータ付回転ユニット403のヒータをオフにすると共に、基材の回転を停止する。そして、真空チャンバ401を大気圧に戻して酸化抑制層及び低屈折率層よりなる放射抑制層が形成されたフィラメントを取出す。
上述の取出したフィラメントの表裏を反対して図5の工程502〜513を繰返すことによってフィラメントの裏側に表側と同一の酸化抑制層及び低屈折率層/高屈折率層よりなる放射抑制層を形成することによりフィラメントは完成する。尚、DCスパッタ装置内でフィラメントの表裏反対することもできれば、表側の酸化抑制層及び低屈折率層/高屈折率層よりなる放射抑制層を形成後、引き続き、裏側の酸化抑制層及び低屈折率層/高屈折率層よりなる放射抑制層を形成できる。また、DCスパッタ装置内でフィラメントを回転できれば、フィラメント全体に酸化抑制層及び低屈折率層/高屈折率層よりなる放射抑制層を1回で形成できる。つまり、スパッタ装置環境に応じて膜形成を行えばよい。また、図3の(A)の単層よりなる放射抑制層13を形成する場合には、図5のターゲット切換工程507、プレスパッタ工程508及び本スパッタ工程509をそれぞれ実行後に終了工程513に進めばよい。
図5のフローチャートの製造方法によって完成したフィラメントFを用いて白熱電球の製造方法を図6のフローチャート及び図7、図8、図9及び図10を参照して説明する。
始めに、フィラメントマウント工程601において、図7をも参照すると、フィラメントFをリード線付ステム701のリード線701aの電着部701bに電着してマウントする。
次に、ステム/管球配管融着工程602において、図8の(A)をも参照すると、ステム701と管球のガラス配管702との位置合わせを行う。次いで、図8の(B)をも参照すると、バーナ703を融着する位置に合わせる。次いで、図8の(C)をも参照すると、ステム701とガラス配管702とをバーナ703によって融着する。尚、ステム701、ガラス配管702は、軟融点ガラス、高融点ガラス及び石英ガラスの1つを封入ガス、電球用途に応じて選択すればよい。
次に、管球先端封止工程603において、図9の(A)をも参照すると、バーナ703をガラス配管702の反対側先端に当て、図9の(B)に示すごとく、管球を完成する。
最後に、電球封止工程604において、図10をも参照すると、電球内に不活性ガス、希ガス、またはこれらの混合ガスを封入して白熱電球を完成する。具体的には、電球封止工程604は図11に示す排気封止装置において行われる。
電球封止工程604を図11の排気封止装置を参照して以下に詳述する。
ステム701の配管を耐熱Oリング1101を介して排気封止装置に接続して管球を排気する。始めに、ロータリポンプ1102を用いて粗引きし、続いてターボ分子ポンプ1103を用いて6.0×10−4Paまで真空排気する。この場合、圧力は圧力計1104にて計測する。次いで、管球を外部ヒータ1105にてアニールし、管球内部に付着残留したガスを除去する。このとき、圧力が一時的に高くなるので、再び、ターボ分子ポンプ1103を用いて6.0×10−4Paまで真空排気する。次いで、Heガス等の低分子量の希ガスの封入、排気を数回繰り返すことにより管球内部に付着したガスをパージする。次いで、Nボンベ1106、Heボンベ1107、Arボンベ1108等からNガス等の不活性ガス、Heガス、Arガス等の希ガス、またはこれらの混合ガスを封入する。たとえば、Arガス/Nガスの混合ガス(Nガス比10%)を圧力80kPaで封入する。最後に、チップオフバーナ1109で管球を封じ切りステム701をチップオフする。尚、場合によっては、ゲッタを設け、たとえば、チップオフ後に誘導加熱によって残留酸素を除去してもよい。図11の制御ユニット1110は圧力計1104の圧力を受信すると共に、ロータリポンプ1102、ターボ分子ポンプ1103、外部ヒータ1105及びチップオフバーナ1109を制御するためのものであり、マイクロコンピュータによって構成されている。
本発明に係る実施例として図5の工程501〜513によりW系基材11、YSZ酸化抑制層12、及び1組13−1のMgO層L1/YSZ層L2よりなるフィラメントを図12の(A)に示すごとく製造した。
比較例1として図5の工程501〜504、508、509によりW系基材11、MgO層L1よりなるフィラメントを図12の(B)に示すごとく製造した。
比較例2として図5の工程501〜504、507〜513によりW系基材11、1組13−1のMgO層L1/YSZ層L2よりなるフィラメントを図12の(C)に示すごとく製造した。
比較例3としてW系基材11、ZrCN層12’、及びYSZ酸化抑制層12よりなるフィラメントを図12の(D)に示すごとく製造した。つまり、図5の工程505の前に、次の工程を付加し、工程507〜512を削除した。
ZrCプレスパッタ工程:
但し、図5の工程501〜504を準備工程として行う。制御ユニット418はAr流量調整ユニット414を調整してArガス流量を94sccmとする。次いで、RF電源407をオンにしてプラズマを発生させてプラズマを安定化させる。このときのRFパワーは370Wとする。次いで、予めセットされたZrCターゲットの表面をプレスパッタし、ZrCターゲットの表面を清浄化する。
ZrC本スパッタ工程:
次に、真空チャンバ401の圧力0.3Paを維持したままシャッタ405を開け、W系基材11上に厚さ100nmのZrC層を形成する。このようにしてW系基材11全面にZrC層を形成する。
炭窒化工程:
次に、他の装置において、80kPaのArガス/Nガス(Nガス比10%)の雰囲気中でフィラメント(W系基材11)に通電し、ZrCを炭窒化ジルコニウム(ZrCN)に変化させる。この炭窒化処理により高温加熱時におけるZrCフィラメントの安定性並びに放射制御性がさらに向上する。その後、図5の工程501〜506、513を行う。
図12のフィラメントの実施例、比較例1、2、3のラマン分光スペクトルの評価について図13を参照して説明する。
図12の(A)の実施例のラマン分光スペクトルは図13の(A)に示すごとくであった。すなわち、成膜後室温では、YSZ(大部分ZrO)の比率が多いので、YSZ(ZrO)のラマンスペクトルのピーク値が観察された。他方、10kPaのAr雰囲気中で2500Kに通電加熱すると、YSZ(ZrO)のラマンスペクトルの明瞭なピーク値はなくなるも、ブロードな傾斜が残った。これはYSZ(ZrO)が2500Kの高温でラマンピーク強度の強い単結晶からラマンピーク強度の弱い立方晶へ変化する結晶相の変化を引き起こしたためである。2500Kの高温でも他のラマンピークつまりWOのラマンピークは観察されなかった。
図12の(B)の比較例1のラマン分光スペクトルは図13の(B)に示すごとくであった。すなわち、成膜後では、ラマンスペクトルのピーク値は何ら観察されなかった。これはMgOがラマン不活性であるからである。他方、10kPaのAr雰囲気中で2500Kで通電加熱した後は、WOのラマンスペクトルのピーク値が圧倒的な強度で観察された。
図12の(C)の比較例2のラマン分光スペクトルは図13の(C)に示すごとくであった。すなわち、成膜後では、弱いYSZ(ZrO)のラマンスペクトルのピーク値が観察された。他方、10kPaのAr雰囲気中で2500Kに通電加熱した後は、WOのラマンスペクトルのピーク値のみが観察された。
図12の(D)の比較例3のラマン分光スペクトルは図13の(D)に示すごとくであった。すなわち、成膜後では、図示しないが、YSZ(ZrO)のラマンスペクトルのピーク値が観察された。他方、10kPaのAr雰囲気中で2500Kに通電加熱した後は、フィラメント中心部ではZrN(C)のラマンスペクトルのピーク値のみが観察され、フィラメントエッジ部ではYSZ(ZrO)のラマンスペクトルのピーク値が支配的であった。
図13の(B)、(C)に示すごとく、2500Kに通電加熱後は、W自身の表面に残留する酸化物層及びMgOとの相互反応によりWO等の酸化タングステン化並びにMgWO等の酸化タングステン化合物の形成が急激に進行することが分った。他方、図13の(A)に示すごとく、YSZ酸化抑制層12の存在によって酸化タングステンの拡散及び酸化タングステン化合物の形成によるMgO層L1/YSZ層L2の各層の破壊が防止できることが分った。
一方、図13の(D)に示すごとく、ZrCN層12’にYSZ酸化抑制層12を形成すると、ZrCNとYSZとは相互に反応しないものの、これらの関係は疎水的であり、2500Kでの加熱ではZrCNとYSZとの界面の密着性は悪く、漏れ性が低いことが分った。従って、従来のフィラメントのZrCNコーティング層上に赤外光反射多層膜MgO/YSZを直接積層することは無理である。
図12のフィラメントの実施例、比較例1、2の耐熱温度の評価について図14、図15を参照して説明する。尚、比較例3の耐熱温度は、膜変形のために評価しなかった。
始めに、耐熱温度測定装置を図14を参照して説明する。図14において、真空チャンバ1401内を排気ポンプ1402によってArボンベ1402のArガスを封入する。実施例、比較例1、2の評価サンプル1403をDC電源1404によって通電加熱しながら、レーザ光源1405でレーザ照射し、その反射光を光センサ1406によって観察する。反射光の変化によって評価サンプル1403の膜表面の状態変化を検出し、そのときの温度を放射温度計1407によって耐熱温度として測定する。尚、評価サンプル1403はフィラメント形状でなく、長さ100mm、幅5mm、厚さ0.5mmのリボン形状(平板形状)とした。
図15に示すように、比較例1では、耐熱温度1995Kにて、表面散乱が大きくなり、膜表面の状態変化が発生し、また、比較例2では、耐熱温度2050Kにて、表面散乱が大きくなり、膜表面の状態変化が発生した。他方、実施例では、温度2500Kでも、表面状態は安定しており、膜表面の状態変化はなかった。つまり、ラマンピークは存在されず、YSZ/MgO層が明瞭に存在することを示している。尚、MgO、YSZの各融点は3125K、2988Kであるのに対し、WOの融点は1746Kと低い。従って、比較例1、2においては、WOの存在が耐熱性誘電体層の融点(耐熱温度)を低下させていることが分る。
図12の(A)の実施例の赤外分光放射特性の評価について図16を参照して説明する。図16の(A)の放射スペクトル及び図16の(B)の放射率に示すごとく、YSZ/MgO/YSZ構造が明瞭に維持されているので、1000K、2500Kでも、同様のピークが存在する。特に、点灯時(2500K)における波長1.3μm付近の放射スペクトルピーク値は非点灯時(1000K)より1桁増大しているが、放射率は略同じ値であることから放射抑制層が機能していることが分る。他方、比較例1の点灯時(2500K)における放射スペクトル及び放射率は図17に示すごとく、MgO層の耐熱温度が低く、また、MgO層の蒸気圧が高いため、MgOの昇華が進行し、Wの放射スペクトル及び放射率と同様となった。尚、比較例2の点灯時(2500K)における放射スペクトル及び放射率は、MgO上のYSZの存在のために、MgOの昇華が抑制され、比較例1より若干改善する。
図18は図12の(A)の実施例の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。
図18の(A)を参照すると、形成後では、W系基材11の最表面は空気に曝されてWO層が僅かに存在する。
次に、図18の(B)を参照すると、通電加熱中にあっても、酸化抑制層12のYSZ(ZrO)の原子結合が強く、従って、W系基材11のWが酸化抑制層12のYSZ(ZrO)の酸素を引き抜いてWO層を成長させることはない。W系基材11のWO層の酸素がYSZ酸化抑制層12のYSZ(ZrO)に吸収(吸着)され、MgO低屈折率層L1の最表面の酸素がMgと共に酸化抑制層12及び高屈折率層L2のYSZ(ZrO)に吸収(吸着)される。しかし、ZrOに添加されたY安定化剤効果のために、酸素及びMgの吸収量は極めて少なく、YSZ/MgO/YSZ界面は安定化する。
従って、図18の(C)に示すごとく、通電加熱後には、YSZ酸化抑制層12、MgO低屈折率層L1及びYSZ高屈折率層L2の積層構造は維持され、この結果、赤外線抑制及び可視光(あるいは特定波長)の増強機能も維持される。
図19は図12の(B)の比較例1の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。
図19の(A)を参照すると、形成後では、W系基材11の最表面は空気に曝されてWO層が僅かに存在する。
次に、図19の(B)を参照すると、通電加熱中にあっては、W系基材11のWがMgO低屈折率層L1の酸素を引き抜いてWO層を成長させる。さらに、WO層のWOがMgO低屈折率層L1中に拡散すると同時に、蒸気圧の高いMgOの昇華が進行する。この結果、MgO低屈折率層L1中の微小な空孔が増大し、WO自身がMgO中に拡散する。
従って、図19の(C)に示すごとく、通電加熱後には、低屈折率層L1は薄い(MgO+WO)層L1’となる。このとき、WOの融点(耐熱温度)が低いために、(MgO+WO)層L1’の耐熱温度も低下する。
図20は図12の(C)の比較例2の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。
図20の(A)を参照すると、形成後では、W系基材11の最表面は空気に曝されてWO層が僅かに存在する。
次に、図20の(B)を参照すると、通電加熱中にあっては、W系基材11のWがMgO低屈折率層L1の酸素を引き抜いてWO層を成長させる。さらに、WO層のWOがMgO低屈折率層L1中に拡散する。但し、MgO低屈折率層L1上にYSZ高屈折率層L2の存在のために、MgOの昇華は抑制される。
従って、図20の(C)に示すごとく、通電加熱後には、低屈折率層L1は(MgO+WO)層L1”となる。このとき、やはりWOの融点(耐熱温度)が低いために、(MgO+WO)層L1”の耐熱温度も低下する。
図21は図12の(D)の比較例3の酸化抑制メカニズムを説明するための図である。
図21の(A)を参照すると、形成後では、W系基材11の最表面は空気に曝されてWO層が僅かに存在する。
次に、図21の(B)を参照すると、通電加熱中にあっても、ZrCN層12’の酸化抑制機能によって、W系基材11のWO層が成長することはなく、Wの蒸発もない。しかし、温度が高くなるにつれてZrCN層12’とYSZ酸化抑制層12とは濡れ性が低くなり、つまり、疎水的となり、YSZ酸化抑制層12のYSZは中央部からエッジ部に移動し、エッジ部に集中する。
従って、図21の(C)に示すごとく、通電加熱後には、YSZ酸化抑制層12の体積が大きく変化し、温度むらまたは断線を引き起こす。また、YSZ酸化抑制層12上に赤外光反射多層膜を形成しても形状変化が大きく、赤外及び可視放射制御性を大きく低下させることになる。
尚、上述の実施の形態においては、W系基材11の代りに他の高融点金属基材たとえばタンタル(Ta)基材に置換し得、また、このタンタル基材には、C、N等をドープしてもよい。
また、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
11:W系基材
12:酸化抑制層
13:放射抑制層
13−1、13−2、…、13−N:組
L1:低屈折率層
L2:高屈折率層
401:真空チャンバ
402:基材ホルダ
403:ヒータ付回転ユニット
404:スパッタターゲット
405:シャッタ
406:RFマッチング回路
407:RF電源
408:DC電源
409:DC電源
410:排気ポンプ
411:圧力計
412:Arボンベ
413:Arバルブ
414:Ar流量調整バルブ
415:Oボンベ
416:Oバルブ
417:O流量調整バルブ
701:リード線付ステム
701a:リード線
701b:電着部
702:ガラス配管
703:バーナ
1101:耐熱Oリング
1102:ロータリポンプ
1103:ターボ分子ポンプ
1104:圧力計
1105:外部ヒータ
1106:Nボンベ
1107:Heボンベ
1108:Arボンベ
1109:チップオフバーナ
1401:排気ポンプ
1402:Arボンベ
1403:評価サンプル
1404:DC電源
1405:レーザ光源
1406:光センサ
1407:放射温度計

Claims (9)

  1. 高融点金属基材と、
    前記高融点金属基材上に形成された酸化抑制層と、
    前記酸化抑制層上に形成された赤外光放射を抑制する放射抑制層と
    を具備するフィラメント。
  2. 前記酸化抑制層の厚さは200nm〜1000nm、好ましくは200nm〜400nmである請求項1に記載のフィラメント。
  3. 前記酸化抑制層及び前記放射抑制層の融点は2300K以上である請求項1または2に記載のフィラメント。
  4. 前記高融点金属基材はタングステン系基材またはタンタル系基材である請求項1〜3のいずれかに記載のフィラメント。
  5. 前記酸化抑制層は赤外光を透過する耐熱性誘電体層よりなる請求項1〜4のいずれかに記載のフィラメント。
  6. 前記耐熱性誘電体層は高温耐熱性酸化物、高温耐熱性窒化物または高温耐熱性炭化物よりなる請求項1〜5のいずれかに記載のフィラメント。
  7. 前記放射抑制層は前記酸化抑制層の屈折率と異なる屈折率を有する耐熱性誘電体層を具備する請求項1〜6のいずれかに記載のフィラメント。
  8. 前記放射抑制層は赤外光反射多層膜を具備する請求項1〜7のいずれかに記載のフィラメント。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のフィラメントと、
    前記フィラメントを囲み、不活性ガス、希ガスまたはこれらの混合ガスが封入されたバルブと
    を具備する白熱電球。
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