JP2015227025A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
プライマー層用及び上塗り層用の樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。
これらの樹脂の中でも、アクリル樹脂はラジカル重合によって形成され、硬化速度が速く、適度な可使時間を有し、また、低温硬化性と空気硬化性に優れるため、施工期間を短くできるという利点を有している。
特許文献6には、コンクリート床版の上に、プライマー層と、防水層と、接着層とを形成する方法が開示されている。
しかし、特許文献1,2,3,6に開示された樹脂組成物及び防水方法では、−10℃においては優れたひび割れ追従性を有しているが、−10℃より更に低温になった場合には、基盤のひび割れに充分に追従できないことがあった。
特許文献4,5に開示された樹脂組成物及び防水方法においては、既に基盤に発生しているひび割れに対しては有効であるものの、防水層形成後に基盤に発生するひび割れには充分に追従できないことがあった。
そこで、本発明は、−20℃程度の低温においてもひび割れ追従性に優れる基盤被覆用の積層体を提供することを目的とする。
[2]前記上塗り層の引張破断伸度が、前記プライマー層の引張破断伸度より大きい、[1]に記載の積層体。
[3]前記上塗り層は、繰り返し単位(C4H8O)n(nは1以上の整数。)の質量平均分子量が1000以上のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)と、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、前記(A)成分及び前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して50質量部以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記上塗り層は、繰り返し単位(C4H8O)n(nは1以上の整数。)の質量平均分子量が1000以上のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)以外の、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(G)と、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、前記(G)成分及び前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して50質量部以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[5]前記上塗り層は、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、ウレタンアクリレートオリゴマー(D)と、前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して50質量部以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[6]プライマー層は、繰り返し単位(C4H8O)n(nは1以上の整数。)の質量平均分子量が1000以上のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)以外の、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(G)と、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して10質量部以下であり、前記単量体(B)は、アルキル(メタ)アクリレートと1個の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤とを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
本発明が適用される基盤は、コンクリート又はアスファルトによって形成された構造体であり、例えば、床版(道路の床版、橋の床版、高架橋の床版等)、建築物の床等が挙げられる。また、床版上に舗装層を形成したもの、既設の舗装層や既設の防水層を剥がした後の構造体を基盤としても構わない。
基盤の形状としては特に制限されず、例えば、平面、曲面、傾斜面等、どのような形状であってもよい。
コンクリートとしては、例えば、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、モルタルコンクリート、レジンコンクリート、透水コンクリート、ALC板、PC板等が挙げられる。これらは1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。基盤がコンクリートである場合は、鉄筋を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本発明の積層体の表面、すなわち上塗り層の表面には、舗装を施したり、樹脂製のトップコートを被覆したりすることができる。
上塗り層は、JIS K6251:2010に規定される測定方法に従い、試験温度−10℃で測定された引張破断伸度が80%以上、好ましくは100%以上の層である。樹脂硬化物の引張破断伸度が前記範囲を満たさない場合には、ひび割れ追従性、特に低温でのひび割れ追従性が不充分となることがある。
また、ひび割れ追従性をより向上させるためには、上塗り層は、JIS K6251:2010に規定される測定方法に従い、試験温度23℃で測定された引張破断伸度が200%以上であることが好ましく、250%以上であることがより好ましい。
上塗り層の引張破断伸度は、低温でのひび割れ追従性がより高くなることから、プライマー層の引張破断伸度より大きいことが好ましい。
上記引張破断伸度を満たす樹脂硬化物を形成する硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、硬化速度が速く、かつ低温での硬化性に優れることから、アクリル系樹脂が好ましい。
(i)ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)と、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単量体(B)と、樹脂(C)とを含む樹脂組成物。
(ii)ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)以外の、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(G)と、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単量体(B)と、樹脂(C)とを含む樹脂組成物。
(iii)(メタ)アクリロイル基を1つ有する単量体(B)と、ウレタンアクリレートオリゴマー(D)と、樹脂(C)とを含む樹脂組成物。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称であり、一般式CH2=C(R)−C(=O)−[Rは水素原子またはメチル基を示す。]で表される。
ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)は、下記一般式(I)で示される2官能単量体であり、下記一般式(I)における繰り返し単位(C4H8O)nの質量平均分子量が1,000以上である。ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)の繰返し単位(C4H8O)nの質量平均分子量は、1,400以上であることが好ましく、また、3,000以下であることが好ましい。
樹脂組成物がポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)を含むと、幅広い範囲での引張破断伸度及び引張最大強度を容易に向上させることができる。
繰り返し単位の質量平均分子量が前記上限値以下であれば、粘度が適性となり、塗工作業性が向上する。また、繰り返し単位の質量平均分子量が前記上限値以下であると、水に溶けにくくなり、上塗り層の耐水性を向上させることができる。
(ii)(iii)の樹脂組成物においては、(A)成分を含まなくてもよい。
単量体(B)は、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単量体である。単量体(B)は、樹脂組成物の粘度を調整したり、樹脂組成物より形成される塗膜の機械的強度等を調整したりする成分である。
(b−1):1個の(メタ)アクリロイル基、および少なくとも1個のカルボキシ基を有する単量体。
(b−2):1個の(メタ)アクリロイル基、および少なくとも1個の水酸基を有する単量体(ただし、前記(b−1)を除く。)。
(b−3):分子量が130未満であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−4):分子量が130〜300であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基およびヘテロ環を有する単量体(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−5):分子量が130〜300であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−6):分子量が130〜300であり、炭素数4〜15の長鎖アルキル基を有し、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−7):分子量が130〜300であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−8):分子量が130〜300であるフッ素原子含有(メタ)アクリレート(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−9):分子量が130〜300である炭化水素環含有(メタ)アクリレート(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−10):分子量が130〜300であり、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
(b−11):分子量が300を超え、かつ1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(ただし、前記(b−1)、(b−2)を除く。)。
単量体(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸等の脂肪族酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物などが挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(b−1)としては、具体的に、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられる。
これらの中でも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
これらの中でもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレートが特に好ましい。
(b−3)の分子量の下限は特に制限されないが、86以上が好ましい。
フラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、フリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロフラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ピラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、ピラニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロピラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、ジヒドロピラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニルメタクリレートが好ましい。
これらの中でも、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記(b−9)の、分子量が130〜300である炭化水素環含有(メタ)アクリレートとしては、ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のジまたはトリアルキルシクロヘキシル基含有(メタ)アクリレート;ジメチルフェニル(メタ)アクリレート、トリメチルフェニル(メタ)アクリレート等のジまたはトリアルキルフェニル基含有(メタ)アクリレート;ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)クリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(b−11)の分子量の上限は特に制限されないが、1,000以下が好ましい。
単量体(B)の含有量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分の合計を100質量部とした際に、55〜85質量部であることが好ましく、60〜85質量部であることがより好ましい。単量体(B)の含有量が前記下限値以上であれば、樹脂組成物の表面硬化性、塗膜の強度を向上でき、塗工作業性も良好にできる。一方、単量体(B)の含有量が前記上限値以下であれば、塗膜が硬くて脆くなることを防止できる。
1/(273+TgS)=Σ(WBx/(273+TgBx)) ・・・(1)
式(1)中、「TgS」はラジカル重合型アクリル系樹脂組成物の単量体混合物の硬化物のガラス転移温度(℃)である。前記単量体(B)はx種(x≧1)の単量体(B1)、(B2)・・・(Bx)からなり、「WBx」は単量体(B)中の各単量体の質量分率である(ただし、これらの質量分率は、単量体(B)の合計を100質量%に換算したときの値である。)。
「TgBx」は単量体(B)中の各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)である。
単量体(B)のTgSが、−25℃以上であれば、上塗り層の表面硬化性が向上すると共に機械的強度を維持できる。一方、単量体(B)のTgSが15℃以下であれば、塗膜の柔軟性を維持できる。
単量体(G)は、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)以外の、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。
単量体(G)は、塗膜に靱性を付与する成分であり、硬化物の機械的強度を向上させる。
単量体(G)においても、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)と同様に、可撓性が得られ、引張破断伸度が高くなる傾向にある。
単量体(G)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(G)は、引張破断伸度や可撓性を損なわない程度にポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)と併用してもよいし、併用しなくてよい。
(i)(iii)の樹脂組成物においては、単量体(G)を含まなくてもよい。
樹脂(C)は、(A)成分、(B)成分及び(G)成分に可溶で、ガラス転移温度(TgC)が、20〜110℃である。樹脂(C)は、樹脂組成物の粘度、硬化性を向上させる成分である。
1/(273+TgC)=Σ(Wn/(273+Tgn)) ・・・(2)
式(2)中、「TgC」は樹脂(C)のガラス転移温度(℃)である。樹脂(C)はn種(n≧1)の単量体(1)、(2)・・・(n)の重合体であり、「Wn」は樹脂(C)を構成する各単量体の質量分率であり、「Tgn」は樹脂(C)を構成する各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)である。
1/(273+TgC)=W1/(273+Tg1)+W2/(273+Tg2)+・・・ ・・・(2’)
式(2’)中、「W1、W2・・・」は、単量体(1)、(2)・・・の質量分率であり、「Tg1、Tg2・・・」は、単量体(1)、(2)・・・のホモポリマーのガラス転移温度(℃)であり、該ガラス転移温度は、「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値を使用できる。
(c−1)アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、セルロースアセテートブチレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、飽和ポリエステル樹脂。
(c−2)炭素数2個以上のアルキル基を有する単位またはメチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート単位を有し、且つ、二重結合を有する重合体。
(c−3)オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー、スチレン・イソプレン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー。
アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体を構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
樹脂(c−1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂(c−1)のMwは、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算したものである。
200,000<樹脂(c−1)のMw×樹脂(c−1)の含有量<1,600,000 ・・・(3)
式(3)中、「樹脂(c−1)の含有量」は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計を100質量部としたときの樹脂(c−1)の含有量(質量部)である。
200,000<{樹脂(c−1−1)のMw×樹脂(c−1−1)の含有量}+{樹脂(c−1−2)のMw×樹脂(c−1−2)の含有量}+・・・<1,600,000 ・・・(3’)
樹脂(c−2)は、炭素数2個以上のアルキル基を有する単位またはメチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート単位を有し、且つ、二重結合を有する重合体である。
樹脂(c−2)における前記二重結合は、ラジカル重合反応に関与する二重結合であり、かかる二重結合を有する官能基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
樹脂(c−2)は、樹脂組成物の硬化塗膜の機械的強度に寄与する。
具体的な単量体(cm2)としては、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;上記炭素数2個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位、およびシクロアルキル(メタ)アクリレート単位のいずれにも含まれないアクリル系単位としてグリシジル(メタ)アクリレート、または(メタ)アクリル酸が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂(c−2)を構成する単量体として、メチルメタクリレートと、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートおよび/またはイソボルニル(メタ)アクリレートと、グリシジル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸とを用いることが好ましく、メチルメタクリレートと、グリシジル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸とを用いることがより好ましい。
炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートは、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレートが好ましく、n−ブチルメタクリレートが特に好ましい。
すなわち、まず、第1段階の反応として、メチルメタクリレート(cm1)および他のアクリル系単量体(cm2)の2種類以上と、エステル化反応に関与する第1の官能基を有する単量体とを共重合させて、該第1の官能基を有する第1の共重合体を得る。次いで、第2段階の反応として、前記第1の官能基とエステル化反応する第2の官能基および二重結合を有する第2の単量体と、前記第1の共重合体とをエステル化反応させることにより、二重結合を有する樹脂(c−2)を得る。
前記第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、カルボキシ基とグリシジル基、ヒドロキシ基とイソシアネート基等が好ましい。
まず、第1段階の反応においてメチルメタクリレート(cm1)および他のアクリル系単量体(cm2)の1種以上と(メタ)アクリル酸を懸濁重合してカルボキシル基を有する第1の共重合体を得、第2段階の反応において、得られた第1の共重合体をメチルメタクリレート(cm1)に加え、該溶液中で、第1の共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートをエステル化反応により付加させて樹脂(c−2)を得る方法が好ましい。
第1段階の反応において懸濁重合する際の重合温度は70〜98℃の範囲であることが好ましく、重合時間は2〜5時間程度であることが好ましい。
第2段階の反応における反応温度は90〜95℃が好ましく、反応時間は1〜4時間程度が好ましい。
該水性懸濁液には分散剤を添加することが好ましい。
分散剤は、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカなどの水難溶性無機化合物;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体などのノニオン系高分子化合物;ポリ(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチル共重合物のアルカリ金属塩などのアニオン系高分子化合物などを挙げることができる。
分散剤の添加量は懸濁液に対し0.005〜5質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
また、前記懸濁重合時の懸濁液に、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガンなどの電解質を含有させることが好ましい。電解質を含有させれば、分散安定性を向上させることができる。
電解質の添加量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
重合開始剤としては特に限定されず、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエード、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどの有機過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の添加量や添加方法は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
前記懸濁重合において連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤を用いると、単官能アクリル系単量体の重合反応を容易に制御できる。
連鎖移動剤としてチオール化合物が好適に用いられる。
チオール化合物は特に限定されず、例えば、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;チオフェノールチオナフトールなどの芳香族メルカプタン:チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチルなどのチオグリコール酸アルキル等が挙げられる。
連鎖移動剤の添加量や添加方法は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
エステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミンなどのアミン類;テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウウム塩類;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
エステル化触媒の添加量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
第2段階の反応において重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を添加すると第2段階の反応をより安定に行うことができる。
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤の添加量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
該質量平均分子量が前記下限値以上であると硬化物の強度が充分に高くなりやすい。該質量平均分子量が前記上限値以下であると樹脂組成物を取り扱うときの作業性が良好となる。
なお、本明細書における質量平均分子量は、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と記す。)により測定した分子量をポリスチレン換算したものである。
この酸価(単位:mgKOH/g)は1以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
本明細書における酸価の値は、重合体をトルエンに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、0.1NのKOHエタノール溶液を用いて滴定して求めた値である。
200,000<樹脂(c−2)のMw×樹脂(c−2)の含有量<1,600,000 ・・・(4)
式(4)中、「樹脂(c−2)の含有量」は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計を100質量部としたときの樹脂(c−2)の含有量(質量部)である。
樹脂(c−2)が、樹脂(c−2−1)、(c−2−2)・・・の混合物である場合は、下記式(4’)を用いる。
200,000<{樹脂(c−2−1)のMw×樹脂(c−2−1)の含有量}+{樹脂(c−2−2)のMw×樹脂(c−2−2)の含有量}+・・・<1,600,000 ・・・(4’)
200,000<{樹脂(c−1)のMw×樹脂(c−1)の含有量}+{樹脂(c−2)のMw×樹脂(c−2)の含有量}+・・・<1,600,000 …(5)
樹脂(c−3)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー、スチレン・イソプレン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーである。構造としては、直鎖状、分岐状、グラフト状、コア/シェル状のいずれでもよい。
樹脂組成物における樹脂(c−3)の配合量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計を100質量部としたときの質量%が、3〜30質量部であることが好ましく、かつ下記式(6)を満たす範囲内であることが好ましい。下記式(6)を満たせば、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、塗工作業性を良好に維持できる。
200,000<樹脂(c−3)のMw×樹脂(c−3)の含有量<1,600,000 ・・・(6)
式(6)中、「樹脂(c−3)の含有量」は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計を100質量部としたときの樹脂(c−3)の含有量(質量部)である。
200,000<{樹脂(c−1)のMw×樹脂(c−1)の含有量}+{樹脂(c−2)のMw×樹脂(c−2)の含有量}+{樹脂(c−3)のMw×樹脂(c−3)の含有量}・・・<1,600,000 ・・・(6’)
ウレタンアクリレートオリゴマー(D)としては、例えば、多価イソシアネート成分(u−a)、ポリオール成分(u−b)及び水酸基含有(メタ)アクリレート成分(u−c)を主成分として得た樹脂等が挙げられる。
中でも、ウレタン(メタ)アクリレート合成時の意図的な分子設計の容易さ点から、トリレンジイソシアネート(TDI)が特に好ましい。
ポリオール成分(u−b)としては、柔軟性を発揮出来る点から、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレート成分(u−c)は、樹脂組成物中の他の成分との相溶性や各種物性の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
不活性溶媒としては、例えば、水酸基等を有していない(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
(i)(ii)の樹脂組成物においては、(D)成分を含まなくてもよい。
前記樹脂組成物には、硬化反応中において塗膜表面の空気を遮断して表面硬化性を向上させるために、ワックス(E)を含有させることが好ましい。ワックス(E)は、(A)成分、(B)成分及び(G)成分に溶解しない。
ワックス(E)としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等、既知の各種ワックスが挙げられる。
ワックス(E)の融点は40℃以上が好ましく、ワックスの融点の上限は120℃であることが好ましい。2種以上の融点が異なるワックスを併用することもできる。
ワックス(E)としては、表面硬化性を向上させる点で、有機溶剤に分散したワックス(E)を使用してもよい。ワックス(E)が有機溶剤に分散状態にあり、微粒子化されていることにより、空気遮断作用を効果的に発現する。この分散状態のワックスは、市販されており、該ワックスをそのまま添加することにより、前記樹脂組成物を調製できる。樹脂組成物は有機溶剤も含有することになる。
分散状態のワックス(E)は、有機溶剤を全く含有せずに、(A)成分、(B)成分及び(G)成分にワックスが分散しているものであってもよい。
ワックス(E)の含有量を前記下限値以上にすれば、樹脂組成物を塗装硬化させた際に充分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。ワックス(E)の含有量を上限値以下にすれば、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることもなく硬化速度や塗膜の物性が良好となる傾向にあり、貯蔵時に樹脂組成物に安定して分散し、また、樹脂組成物を塗装硬化させた際の耐汚染性が良好となる。
前記樹脂組成物を硬化させるためには、硬化促進剤(F)を含有することが好ましい。
硬化促進剤(F)としては、3級アミン、金属石鹸などが挙げられる。
3級アミンの具体例としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、フェニルモルホリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等が挙げられる。
芳香族3級アミンとしては、少なくとも1個の芳香族残基が窒素原子に直接結合しているものが好ましい。
該芳香族3級アミンとしては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N−(2−ヒドロキシエチル)N−メチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン;N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジンまたはN,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
また、p(パラ)体の代わりに、o(オルト)体、m(メタ)体でもよい。
芳香族3級アミンのなかでも、樹脂組成物の反応性、硬化性の点から、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジンが好ましい。
上記3級アミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
3級アミンの添加量は、硬化性とポットライフ(作業性)とのバランス等の点から、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.2〜8質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が特に好ましい。
3級アミンの添加量を前記下限値以上にすれば、表面硬化性が良好となり、前記上限値以下にすれば、適切な可使時間となる。
なお、3級アミンの添加量は、使用する硬化促進剤の種類や温度環境に応じて好ましい範囲は異なり、使用温度に応じて添加量を適宜調整することが好ましい。
金属石鹸の添加量は、硬化性とポットライフ(作業性)とのバランス等の点から、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計100質量部に対して、多価金属石鹸に由来する金属の含有量が、0.3質量部以下が好ましく、0.2質量部以下がより好ましい。
なお、金属石鹸の添加量は、使用する硬化促進剤の種類や温度環境に応じて好ましい範囲は異なり、使用温度に応じて添加量を適宜調整することが好ましい。
前記樹脂組成物を硬化させる際には、前記硬化促進剤に硬化剤を組み合わせてレドックス触媒とすることが好ましい。
硬化剤としては、ラジカル重合を開始させることができる公知の硬化剤が挙げられる。
硬化剤としては、具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
上記硬化剤のなかでも、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびハイドロパーオキサイドが好ましく、ベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。
ベンゾイルパーオキサイドは、取扱性の点から、不活性の液体または固体によって濃度が30〜55質量%程度に希釈された液状、ペースト状または粉末状のものが好ましい。
前記硬化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化剤としてベンゾイルパーオキサイドを用いる場合、その添加量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計100質量部に対して、0.25〜5質量部が好ましく、0.25〜4質量部がより好ましい。ベンゾイルパーオキサイドの添加量を前記下限値以上とすれば、硬化性が良好となり、前記上限値以下とすれば、樹脂組成物の塗工作業性、得られる塗膜の各種物性が向上する傾向にある。
ただし、硬化剤の添加量は、使用温度に応じて適宜調整することが好ましい。
前記樹脂組成物には、表面硬化性の向上を図るために、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーであって、ウレタン(メタ)アクリレート以外のオリゴマーを添加してもよい。
該オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートは、多塩基酸無水物と、水酸基含有(メタ)アクリレートの部分エステル化物と、2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを公知の方法で反応させて得られるものである。2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを反応させた汎用のエポキシ樹脂である。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、多塩基酸またはその無水物と、多価アルコール化合物と、(メタ)アクリル酸付加物またはグリシジル(メタ)アクリレートとを公知の方法で反応させて得られるものである。多塩基酸無水物としては、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
前記樹脂組成物には、樹脂(C)、ウレタンアクリレートオリゴマー(D)及びワックス(E)以外のその他のポリマー成分として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂などを含有させることも可能である。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、重合禁止剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、揺変剤、補強材、可塑剤、骨材、酸化クロム、ベンガラ等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料などを使用することができる。
また、樹脂組成物には、塗工作業性や外観向上等の目的で、消泡剤、脱泡剤、レベリング剤等を含有させることも可能である。
シランカップリング剤の含有量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分との合計100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、硬化性、コストの点から、3質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量を前記上限値以下にすれば、樹脂組成物の無機成分への接着性を向上させつつ、表面硬化性が良好となる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4,4’−ジブトキシベンゾフェノンなどの2―ヒドロキシベンゾフェノンの誘導体或いは2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリイブチルフェニル)ベンゾトリアゾール或いはこれらのハロゲン化物或いはフェニルサリシレート、p−ターシャリイブチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
揺変剤としては、ウレタンウレア系、脂肪酸アマイド、有機ベントナイト、酸化ポリエチレンワックスなど有機系揺変剤や微粒子シリカが好ましい。
揺変剤の組み合わせとしては、脂肪酸アマイドと微粒シリカの組み合わせ、有機ベントナイトと微粒シリカの組み合わせ、脂肪酸アマイドと有機ベントナイトと微粒シリカの組み合わせ、酸化ポリエチレンワックスと微粒シリカの組み合わせが挙げられる。
微粒シリカの平均一次粒子径は7〜40μmが好ましい。
揺変剤は樹脂組成物に添加してもよいし、骨材に配合して用いてもよい。揺変剤は、2種類以上を併用して使用してもよい
これにより、JIS−K6833に規定される測定方法で求めたTI値(チキソトロピックインデックス)を1.5以上にすることができ、傾斜面に施工した際に樹脂組成物が流出することを防止できる。
揺変剤の含有量が少なすぎると、添加効果が不充分となる。一方、揺変剤の含有量が多すぎると、樹脂組成物の流動性が低下し、塗工作業性が低下することから、均一な塗装塗膜を得ることができないことがある。
補強材としては、チョップドストランドやロービングネット状のガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類が挙げられる。可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(G)成分の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。可塑剤の含有量を10質量部以下にすると、塗膜の機械的強度を充分に確保でき、塗膜の表面に可塑剤が滲出することを防止できる。
骨材としては、炭酸カルシウム、シリカヒューム、フライアッシュ、タルク、クレー、酸化チタン、水酸化アルミニウム等を挙げることができ、中でも炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
骨材の比表面積は5,000〜15,000cm2/gであることが好ましい。比表面積の上限値は12,000cm2/gであることがより好ましく、10,000cm2/gであることが特に好ましい。ここでいう比表面積はブレーン透過法によって測定した値である。
骨材の比表面積が前記下限値以上であれば、骨材と樹脂成分との分離が生じにくくなり、塗膜厚を確保し易く、可撓性等の物性が良好な塗膜が得られる傾向にある。これは、骨材粒子間に樹脂成分が均等に存在し、樹脂成分の本来の物性を充分に発揮できる。一方、骨材の比表面積が前記上限値以下であれば、骨材と樹脂成分の分離が生じにくくなり、また、硬化物の引張破壊伸度がより高くなる。これは、骨材粒子間に樹脂成分が少なくなりすぎずに均等に存在し、樹脂成分の本来の物性を充分に発揮できるためである。
前記樹脂組成物は、チキソトロピックインデックス(以下、「TI値」という。)が1.5以上であることが好ましい。
TI値は、組成物の温度が23±1℃のときに、BM型粘度計(トキメック社製)を用いて測定される粘度から下記式(7)により求めることができる。
TI値=〔回転数6rpmのときの粘度(mPa・s)〕/〔回転数60rpmのときの粘度(mPa・s)〕 ・・・(7)
TI値が1.5以上であると、塗工作業性が良好であり、また、基盤に傾斜があったり、基盤の表面に凹凸があったりした場合に、樹脂塗装物を塗装した後に流動することを防止できる。そのため、基盤表面に傾斜や凹凸形状があっても、均一に表面を覆うように塗装することができ、均一な塗膜厚を得ることができる。
TI値が1.5未満であると、樹脂組成物を塗装しても流動してしまい、基盤に傾斜があったり、基盤表面に凹凸形状があったりしたときに表面を均一に覆うことができず、均一塗膜厚を得ることができない。そのため、基盤に発生したクラックの開閉に対する追従性が低下する傾向にある。
上塗り層は、プライマー層の表面に、上塗り層用樹脂組成物を塗工することにより形成することができる。
上塗り層用樹脂組成物の塗工方法としては、ローラー、金ゴテ、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機、2液エアレス塗装機等)等を用いる公知の塗工方法を適用することができる。2液エアレス塗装機を用いる場合には、主剤、硬化剤の2液に分け、主剤には硬化促進剤を添加し、硬化剤に例えば過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加することが好ましい。
プライマー層は、基盤に対する上塗り層の接着を向上させる樹脂層である。
また、プライマー層は、JIS K6251:2010に規定される測定方法に従い、試験温度−10℃で測定された引張破断伸度が40%以上、好ましくは50%以上の樹脂硬化物を含む層である。樹脂硬化物の引張破断伸度が前記範囲を満たさない場合には、ひび割れ追従性が不充分となることがあり、特に低温でのひび割れ追従性が低くなる。
プライマー層を構成する樹脂の具体例としては、溶剤系樹脂やエマルション系樹脂、あるいは、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂等の施工後に硬化させる合成樹脂系塗料が挙げられる。
基盤の種類や、形状、施工場所に応じてプライマー層の要求特性は異なるが、常温および低温時に短時間で硬化が可能であり、且つ、塗工作業性に優れる点から、ラジカル重合性の樹脂組成物を塗工し、硬化させたプライマー層が好ましい。
ひび割れ追従性をより向上させるためには、前記単量体(B)は、アルキル(メタ)アクリレートと1個の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤とを含むことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、前記(b−3)及び前記(b−6)において例示したものを使用できる。1個の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、前記(b−10)において例示したものを使用できる。
単量体(B)の含有量は、(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分の合計(プライマー層の樹脂成分)100質量部に対し、55〜85質量部であることが好ましく、60〜85質量部であることがより好ましい。単量体(B)の含有量が前記下限値以上であれば、表面硬化性、塗膜の強度を向上させることができ、塗工作業性も良好になる。一方、単量体(B)の含有量が前記上限値以下であれば、塗膜が硬くて脆くなることを防止できる。
1/(273+TgS)=Σ(WBx/(273+TgBx)) ・・・(8)
式(8)中、「TgS」はラジカル重合型アクリル系樹脂組成物の単量体混合物の硬化物のガラス転移温度(℃)である。前記単量体(B)はx種(x≧1)の単量体(B1)、(B2)・・・(Bx)からなり、「WBx」は単量体(B)中の各単量体の質量分率である(ただし、これらの質量分率は、単量体(B)の合計を100質量%に換算したときの値である。)。
「TgBx」は単量体(B)中の各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)である。
単量体(B)のTgSが−25℃以上であれば、プライマー層用樹脂組成物を表面硬化性が向上すると共に充分な機械的強度を確保できる。一方、単量体(B)のTgSが15℃以下であれば、プライマー層において充分な柔軟性を確保できる。
ただし、スロープや坂道などの傾斜のある基盤や壁面などの立ち面に樹脂組成物を塗装する場合には、粘度が低すぎると、樹脂組成物塗装後に垂れてしまう。そのため、チクソトロピック性付与剤(例えば親水性シリカ、疎水性シリカ等のアエロジル、モンモリロナイト、合成雲母、有機ベントナイト等の無機層状化合物、セピオライト等の繊維状鉱物など)、揺変剤、増粘剤、体質顔料等を配合して増粘させることが好ましい。増粘させることを考慮すると、これらチクソトロピック性付与剤、揺変剤、増粘剤、体質顔料等の含有量は合計で、(B)成分と(C)成分と(D)成分と(G)成分の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部であることが好ましい。
プライマー層は、基盤の表面に、プライマー層用樹脂組成物を塗工することにより形成することができる。
プライマー層用樹脂組成物の塗工方法としては、ローラー、金ゴテ、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機、2液エアレス塗装機等)等を用いる公知の塗工方法を適用することができる。2液エアレス塗装機を用いる場合には、主剤、硬化剤の2液に分け、主剤には硬化促進剤を添加し、硬化剤に例えば過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加することが好ましい。
本発明の積層体の表面に舗装を施す場合、上塗り層の上に上塗り層II、粒状物層、舗装層をこの順に設けることが好ましい。また、上塗り層の上に上塗り層II、熱可塑性樹脂シート層、舗装層をこの順に設けることができ、熱可塑性樹脂シート層と舗装層の間には舗装接着剤層を設けてもよい。
上塗り層IIは、JIS−K6251:2010に規定される測定方法で試験温度−10℃における塗膜の引張破断伸度が40%以上であることが好ましく、引張破断伸度が50%以上であることがより好ましい。上塗り層IIの引張破断伸度が前記下限値以上であれば積層した場合でも積層体の低温でのひび割れ追従性を維持できる。
このような引張破断伸度とするためには、上塗り層II用樹脂組成物として、プライマー層と同じ樹脂組成物を使用してもよく、また本発明の上塗り層用樹脂組成物を使用してもよい。
ただし、スロープや坂道などの傾斜のある基材や壁面などの立ち面に樹脂組成物を塗装する場合、粘度が低すぎると樹脂組成物塗装後に垂れてしまうために、チクソトロピック性付与剤(例えば親水性シリカ、疎水性シリカ等のアエロジル、モンモリロナイト、合成雲母、有機ベントナイト等の無機層状化合物、セピオライト等の繊維状鉱物など)、揺変剤、増粘剤、炭酸カルシウム等を配合して増粘させることが好ましい。増粘させることを考慮すると、これらチクソトロピック性付与剤、揺変剤、増粘剤、体質顔料等の含有量は合計で、上塗り層II用樹脂組成物100質量%中、0.5〜10質量部%であることが好ましい。その時の樹脂粘度は30〜3,000mPa・sであることが好ましく、30〜2,000mPa・sであることが更に好ましい。
上塗り層IIの上に粒状物層を設けるには、塗工した上塗り層II用樹脂組成物が硬化する前に骨材、粒状アスファルト、アスファルトで被覆した骨材、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂で被覆した骨材等の粒状物を散布する方法が好ましい。
骨材は、例えば、硅砂、川砂、寒水石、エメリー、大理石などの天然無機鉱石、アルミナ、スラグ、ガラス、セラミック骨材、陶器、磁器、タイル、ガラスビーズ、着色骨材などが挙げられる。これら骨材は1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。骨材粒径は0.5〜3mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることがより好ましい。
粒状アスファルトとは、例えばストレートアスファルトまたはブローンアスファルトを主体としてこれを粒状に粉砕したものが挙げられる。
アスファルトで被覆した骨材は、上記骨材に粒状アスファルトに使用したものを被覆したものである。
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー、スチレン・イソプレン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーやポリエステル系、ポリアミド系、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル共重合体、石油樹脂等の軟化温度が60〜120℃であるペレット状や粉砕されたものを使用することができる。
熱可塑性樹脂で被覆した骨材は、上記骨材に熱可塑性樹脂に使用したものを被覆したものを用いることができる。
上塗り層IIの上に熱可塑性樹脂シート層を設けるには、塗工した上塗り層II用樹脂組成物が硬化する前に熱可塑性樹脂シートを貼り付けて一体硬化させることが好ましい。熱可塑性樹脂シートは、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー、スチレン・イソプレン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーやポリエステル系、ポリアミド系、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル共重合体等の軟化温度が60〜120℃である樹脂のシートが好ましい。
舗装層は粒状物層の上又は熱可塑性樹脂シート層の上に設けられる。粒状物層の上に舗装層を設ける場合には、粒状物層と舗装層の間に舗装接着剤層を設けることが好ましい。舗装層の材料としては、例えば、アスファルトに骨材を混ぜたアスファルト系舗装材、改質アスファルト等を含んだ排水性舗装材、コンクリート系舗装材、樹脂系舗装材等が挙げられる。
本発明の積層体の表面に耐外傷性や耐候性を向上させるためにトップコートを設ける場合、上塗り層の上に直接トップコート層を設けることもできるが、積層体を床材に使用する場合等は上塗り層の上に樹脂モルタル層を設け、その上にトップコート層を設けることが好ましい。
トップコート層の具体例としては、プライマー層及び上塗り層の樹脂組成物と同様に、ラジカル重合性樹脂組成物を塗布して硬化させた層であることが好ましい。また、トップコート層は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の常温硬化型樹脂組成物を塗布して硬化させた層であってもよい。
また、意匠性や外観の点から、トップコート層をフィルム又はシートを用いて形成することも可能である。トップコート層を形成するフィルム又はシートを構成する樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー、スチレン・イソプレン熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル共重合体等で、軟化温度が60〜120℃のものが挙げられる。
樹脂モルタル層は、上塗り層とトップコート層の間に設けることができる。樹脂モルタル層は、反応硬化型樹脂に骨材を配合したものである。反応硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を使用することができる。
以上説明したように、本発明の積層体は、前記上塗り層と前記プライマー層とを有するため、基盤のひび割れに対する追従性が高く、特に、−20℃程度の低温での基盤のひび割れに対する追従性が高い。具体的には、国土交通省北海道開発局発行の「北海道開発局 道路設計要領 第3集 橋梁」(平成25年4月発行)の2.5床版防水工の表2.5.1性能照査方法に記載の「ひび割れ追従性試験I」を、試験温度−20℃で行ったときに、折損の発生を防止できる。
また、前記の上塗り層及びプライマー層は、塗工作業性に優れ、また、硬化速度が適度に速く、さらに、柔軟性と強度を兼ね備えたものとなる。また、前記のプライマー層は基盤との接着性が高く、前記の上塗り層はプライマー層との接着性が高い。
なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
以下の例における「部」はすべて「質量部」を、ケン化度と湿度以外の「%」はすべて「質量%」を示す。
攪拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、脱イオン水135部、および分散剤としてポリビニルアルコール(ケン化度80モル%、重合度1,700)0.4部を加えて攪拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、一旦攪拌を停止した。n−ブチルメタクリレート(以下、「n−BMA」と略す。)60部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略す。)40部、重合開始剤として2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、「AMBN」と略す。)0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(以下、「n−DM」と略す。)0.5部、電解質として炭酸ナトリウム0.1部を加えて再度攪拌し、75℃に昇温して2.5時間反応させた。さらに、98℃に昇温して1.5時間保持した後、反応を終了させた。
40℃に冷却した後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水した後、40℃で16時間乾燥して、粒状ビニル系重合体(重合体P−1)を得た。
得られた粒状ビニル系重合体のガラス転移温度(Tg)は49℃、質量平均分子量は60,000であった。
なお、粒状ビニル系重合体のTgはポリマーハンドブックに記載のホモポリマーのTgから、Foxの式を用いて算出した。
合成例1の反応において、MMAの使用量を40部から80部に変更し、n−BMAの使用量を60部から20部に変更し、n−DMの使用量を0.5部から0.35部に変更した。
それら以外は合成例1の第1の共重合体と同様にして、Tg82℃、質量平均分子量80,000の粒状ビニル系重合体(重合体P−2)を得た。
まず、第1段階の反応を行った。
すなわち、攪拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、脱イオン水135部、および分散剤としてポリビニルアルコール(ケン化度80%、重合度1,700)0.4部を加えて攪拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、一度攪拌を停止し、MMAを40部、n−BMAを59部、メタクリル酸(以下、「MAA」と略す。)1部、重合開始剤として2,2′−アゾビス2−メチルブチロニトリル(以下、「AMBN」と略す。)0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(以下、「n−DM」と略す。)0.5部、電解質として炭酸ナトリウム0.1部を加えて再度攪拌し、75℃に昇温して2.5時間反応させ、98℃に昇温して1.5時間保持して反応を終了させた。
40℃に冷却後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水後、40℃で16時間乾燥して、粒状ビニル系重合体(第1の共重合体)を得た。
得られた粒状ビニル系重合体のTgは50℃、質量平均分子量は60,000であった。
なお、粒状ビニル系重合体のTgはポリマーハンドブックに記載のホモポリマーのTgから、Foxの式を用いて算出した。
すなわち、攪拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」と略す。)1.65部、エステル化触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド1.5部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、「BHT」と略す。)0.1部、2−エチルヘキシルアクリレート(以下、「2−EHA」と略す。)135.54部、MMA101.65部、を加えた。次いで、攪拌しながら上記で得た粒状ビニル系重合体(第1の共重合体)100部を徐々に投入し、全量投入後90℃に昇温して2時間保持し、酸価0.3mgKOH/gの重合体(C)と2−EHAとMMAを含む組成物S−1(以下、「S−1」と略す。)を得た。
第1段階の反応に用いたMAAの1モルに対して、第2段階の反応で使用したGMAのモル比は1.0/1.0であった。
得られたS−1の組成は次の通りであった。
S−1:第1の共重合体/GMA+(2−EHA+MMA)=100/1.65+(135.54+101.65)(部)。
第1の共重合体=MMA/n−BMA/MAA=40/59/1(部)、Tg:50℃、Mw:60,000。
撹拌機、温度制御装置、コンデンサーを備えた容器に、質量平均分子量810のポリエステルポリオールF7−67(製品名アデカニューエースF7−67、旭電化工業社製)3,139.2部、MMA784部、ジエチルアミノエチルメタクリレート21.3部、BHT3.61部を仕込み、攪拌しながら65℃まで加熱した。この温度を維持した状態で、トリレンジイソシアネート348部を1時間かけて滴下し、次いで、MMA87部を加え、65℃にて更に2時間反応を進行させた。この後、2−ヒドロキシエチルアクリレート120.7部を30分かけて滴下しつつ、90℃まで昇温し、MMA30.2部を加え、90℃を保持したまま反応を進行させた。イソシアネート基の反応率が97%以上となった時点で反応を終了し、冷却してMMAを20質量%含有するウレタンアクリレートオリゴマー組成物(UA−1)を得た。
表1に示す配合でプライマー層用樹脂組成物を調製した。
攪拌機、温度計、冷却管付きの1Lフラスコに、単量体(B)としてMMAを30部、2−EHAを36.5部、KBM−503(製品名KBM−503、信越化学工業社製)を1部、NKエステル14G(製品名NKエステル14G、新中村化学社製)7.5部、重合禁止剤としてBHT0.06部、P−115(製品名パラフィンワックス115、日本精鑞社製、融点47℃)(以下、「P−115」と略す。)を0.3部、P−130(製品名パラフィンワックス130、日本精鑞社製、融点55℃)(以下、「P−130」と略す。)を0.5部、P−150(製品名パラフィンワックス150、日本精鑞社製、融点66℃)(以下、「P−150」と略す。)を0.2部、促進剤としてN,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(以下、「PTEO」と略す。)0.8部、消泡剤としてBYK−1752(ビックケミー・ジャパン社製)(以下、「BYK−1752」と略す。)0.5部、紫外線吸収剤としてJF−77(城北化学社製)(以下、「JF−77」と略す。)を0.2部、を投入した。その後、撹拌しつつ合成例1の重合体P−1を25部さらに加え、60℃、2時間加熱して溶解させた後、冷却してプライマー層用樹脂組成物(PR−1)を得た。
表1に示す配合に変更した以外は、プライマーPR−1の調製方法と同様にして、プライマー層用樹脂組成物(プライマーPR−2,PR−3A,PR−3B)を調製した。
前記の通り調製したプライマー組成物PR−1、PR−2及び菱晃社製アクリシラップDR−90、PR−3A、PR−3Bについて、以下の測定方法によって粘度を測定した。その結果を表1に示す。
粘度は、B型粘度計(BM型、トキメック社製)を用いて、23℃における粘度(60rpmのときの粘度)を測定した。
前記の通り調製したプライマー層用組成物(PR−1),(PR−2)及び菱晃社製アクリシラップDR−90の100部に対して、硬化剤としてBPO−50(製品名BPO−50、化薬アクゾ社製、過酸化ベンゾイル50%品)(以下、「BPO−50」と略す。)2部を添加し、よく混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。
また、前記の通り調製したプライマー層用組成物(PR−3B)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を4部添加し、よく混合して、さらにプライマー層用組成物(PR−3A)の100部を加えて良く混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。
−10℃における硬化特性測定用試料としては、前記の通り調製したプライマー層用組成物(PR−1),(PR−2)及び菱晃社製アクリシラップDR−90の100部に対して、促進剤としてAC−103(製品名アクリシラップAC−103、菱晃社製)(以下、「AC−103」と略す。)1.5部、硬化剤としてBPO−50を8部添加し、よく混合して硬化剤入り樹脂組成物を得た。また、プライマー層用組成物(PR−3B)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を16部添加し、よく混合したものと、これとは別に、プライマー層用組成物(PR−3A)100部に対して促進剤としてAC−103を3部加えて良く混合したものと用意し、それらを良く混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。
硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物について、以下の通り、硬化特性、引張試験を測定・評価した。結果を表1に示す。
<ゲル化時間>
室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、100mlのポリプロピレン製カップに前記各硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を50g投入し、硬化剤添加から樹脂の流動性が無くなるまでに要した時間をゲル化時間とした。
<乾燥時間>
室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内において、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記各硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物をアプリケーターで300μmの厚みに塗装した。得られた塗膜の表面にガーゼを接触させ、ガーゼが塗膜に付かなくなるまでに要した時間を乾燥時間とした。
<ゲル化時間>
−10℃に制御した恒温恒湿槽内で、100mlのポリプロピレン製カップに前記各硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を50g投入し、硬化剤添加から樹脂の流動性が無くなるまでに要した時間をゲル化時間とした。
<乾燥時間>
−10℃に制御した恒温恒湿槽内において、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記各硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物をアプリケーターで300μmの厚みに塗装した。得られた塗膜の表面にガーゼを接触させ、ガーゼが塗膜に付かなくなるまでに要した時間を乾燥時間とした。
室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、前記の通り調製した各硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を脱泡させた後、型に注入し、硬化・養生した。硬化させた翌日に脱型後、厚さ3mmの注型板(試験サンプル)を得た。
該試験サンプルをJIS−K6251:2010に従って−10℃および−20℃で引張試験し、破壊時の引張破壊強度(N/mm2)を測定した。この引張破壊強度は硬化塗膜の機械的強度の指標の一つである。また、引張試験においては引張破断伸度も測定した。それらの結果を表1に示す。
表2に示す配合で、上塗り層用の樹脂組成物を調製した。
すなわち、撹拌機、温度制御装置、コンデンサーを備えた容器に、単量体(A)として、PBOA−2000:ポリブチレングリコールジアクリレート(ポリブチレングリコールの繰返し単位の質量平均分子量が約2,000)(以下、「PBOA−2000」と略す。)を5部、単量体(B)としてMMAを28部、2−EHAを42部、重合禁止剤としてBHT0.05部、P−115を0.2部、P−130を0.2部、P−150を0.2部、硬化促進剤としてPTEOを0.6部、消泡剤としてBYK−1752を0.5部、紫外線吸収剤としてJF−77を0.2部、を投入した後、撹拌しつつ重合体(P−1)を25部加えた。次いで、60℃、2時間加熱し、溶解させた後、冷却して上塗り層用樹脂組成物(N−1)を得た。
表2に示す配合に変更して、上塗り層用樹脂組成物(N−1)の調製方法と同様に、上塗り層用樹脂組成物(N−2)〜(N−9)を調製した。なお、表2中のBPE−4、APG−700、PBOM−1000、PBOM、TR−2000、SIS−5002は以下のとおりである。
・BPE−4:第一工業製薬社製:商品名ニューフロンティアBPE−4(以下、「BPE−4」と略す。)
・APG−700:新中村化学社製:商品名NKエステルAPG−700(以下、「APG−700」と略す。)
・PBOM−1000:ポリブチレングリコールジメタクリレート(ポリブチレングリコールの繰返し単位の質量平均分子量が約1,000)(以下、「PBOM−1000」と略す。)
・PBOM:ポリブチレングリコールジメタクリレート(ポリブチレングリコールの繰返し単位の質量平均分子量が約650)(以下、「PBOM」と略す。)
・TR−2000:JSR社製:商品名JSR TR−2000(以下、「TR−2000」と略す。)
・SIS−5002:JSR社製:商品名JSR SIS−5002(以下、「SIS−5002」と略す。)
合成例4で得たウレタンアクリレートオリゴマー組成物(UA−1)を用い、表2に示す配合で樹脂組成物N−10を調製した。
なお、表2に記載しているUA−1の配合量(単位:質量部)は、該組成物に含まれるオリゴマー(D)とMMAの合計量であり、併記している( )内の値が、該配合したUA−1中に含まれるオリゴマー(D)の量(単位:質量部)である。
したがって、上塗り層用樹脂組成物(N−10)において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物(UA−1)とは別に配合したMMAは10質量部であるが、上塗り層用樹脂組成物(N−10)に含まれる全MMAの含有量は20部となる。
表3に示す配合に変更して、上塗り層用樹脂組成物(N−1)の調製方法と同様に、上塗り層用樹脂組成物(N−11)〜(N−17)を調製した。なお、表3中の炭酸カルシウムSL−700、揺変剤AG−200、揺変剤BYK−410、可塑剤P−300は以下のとおりである。
・SL−700:竹原化学工業社製:商品名炭酸カルシウムSL−700(以下、「SL−700」と略す。)
・AG−200:菱晃社製:商品名AG−200(以下、「AG−200」と略す。)
・BYK−410:ビックケミー・ジャパン社製BYK−410(以下、「BYK−410」と略す。)
・P−300:ADEKA社製アデカサイザーP−300(以下、「P−300」と略す。)
表4に示す配合に変更して、上塗り層用樹脂組成物(N−1)の調製方法と同様に、上塗り層用樹脂組成物(N−18)〜(N−22),(N−23A),(N−23B)を調製した。
前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−1〜N−22,N−23A,N−23B)について、以下の測定方法によって粘度及びTI値を測定した。その結果をそれぞれ表2、表3、表4に示す。
粘度は、B型粘度計(BM型、トキメック社製)を用いて、23℃における粘度(60rpmのときの粘度)を測定した。
TI値は、B型粘度計(BM型、トキメック社製)を用いて、23℃における粘度を測定した時、測定される粘度から下記式(9)により求めた。
TI値=〔回転数6rpmのときの粘度(mPa・s)〕/〔回転数60rpmのときの粘度(mPa・s)〕 ・・・(9)
前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−1〜N−22)の100部(炭酸カルシウムは除いた部数)に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。
また、前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−23B)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を4部添加し、よく混合して、さらに上塗り層用樹脂組成物(N−23A)を100部加えて良く混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。
−10℃における硬化特性測定用試料としては、前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−1〜N−22)の100部(炭酸カルシウムは除いた部数)に対して、促進剤としてAC−103を1.5部、硬化剤としてBPO−50を8部添加し、よく混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。また、上塗り層用樹脂組成物(N−23B)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を16部添加し、よく混合したものと、これとは別に上塗り層用樹脂組成物(N−23A)100部に対して促進剤としてAC−103を3部加えて良く混合したものと用意し、それらを良く混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。
硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物について、以下の通り、硬化特性を測定・評価した。結果を表2、表3、表4に示す。
<ゲル化時間>
室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、100mlのポリプロピレン製カップに前記各硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を50g投入し、硬化剤添加から樹脂の流動性が無くなるまでに要した時間をゲル化時間とした。
<指触乾燥時間>
室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内において、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記各硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物をアプリケーターで300μmの厚みに塗装した。得られた塗膜の表面にガーゼを接触させ、ガーゼが塗膜に付かなくなるまでに要した時間を指触乾燥時間とした。
<ゲル化時間>
−10℃に制御した恒温恒湿槽内で、100mlのポリプロピレン製カップに前記各硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を50g投入し、硬化剤添加から樹脂の流動性が無くなるまでに要した時間をゲル化時間とした。
<指触乾燥時間>
−10℃に制御した恒温恒湿槽内において、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記各硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物をアプリケーターで300μmの厚みに塗装した。得られた塗膜の表面にガーゼを接触させ、ガーゼが塗膜に付かなくなるまでに要した時間を指触乾燥時間とした。
室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、前記の通り調製した各硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を脱泡させた後、型に注入し、硬化・養生した。硬化させた翌日に脱型後、厚さ3mmの注型板(試験サンプル)を得た。
該試験サンプルをJIS−K6251に従って23℃、−10℃及び−20℃で引張試験し、破壊時の引張破壊強度(N/mm2)を測定した。この引張破壊強度は硬化塗膜の機械的強度の指標の一つである。また、引張試験においては引張破断伸度も測定した。それらの結果を表2,3,4に示す。
<プライマー層の形成>
150mm×30mm×厚み0.5mmの鋼板の表面をアセトンで脱脂し、前記の通り調製したプライマー層用樹脂組成物(PR−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を、前記鋼板の表面に、乾燥塗工量が0.4kg/m2となるように塗工し、硬化させてプライマー層を形成した。
その際、塗工作業性について下記基準に基づいて評価した。結果を表5に示す。
良好(○):樹脂組成物を刷毛で充分に均すことができ、均一に塗布できた。
不良(×):樹脂組成物を刷毛で均す際に、粘度が高く均し難い、あるいは、均一な表面を得るのに長時間を要した。
<上塗り層の形成>
上記プライマー層の表面に、前記の通り調製した上塗り層樹脂組成物(N−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を、プライマー層の表面に、乾燥塗工量が2kg/m2となるように塗工し、硬化させて上塗り層を形成した。
その際、塗工作業性について下記基準に基づいて評価した。結果を表5に示す。
良好(○):樹脂組成物をヘラで充分に均すことができ、均一に塗布できた。
不良(×):樹脂組成物をヘラで均す際に、粘度が高く均し難い、あるいは、均一な表面を得るのに長時間を要した。
前記の鋼板にプライマー層及び上塗り層を形成した積層体をサンプルとし、国土交通省北海道開発局発行の「北海道開発局 道路設計要領 第3集 橋梁」(平成25年4月発行)の2.5床版防水工の表2.5.1性能照査方法に記載の「ひび割れ追従性試験I」(試験温度−20℃)を行って合否を判定した。
−20℃におけるひび割れ追従性試験Iについては、道路橋床版防水便覧:社団法人日本道路協会記載のひび割れ追従性試験I(低温可撓性試験)の試験方法において、試験温度を−20℃に変更したものである。
合否判定は、下記基準に基づく。結果を表5に示す。
合格(○):上塗り層が折損していない。ただし、上塗り層の上部に細かいひび割れが入っている場合も合格とみなす。
不合格(×):上塗り層が折損している。
実施例1の上塗り層用樹脂組成物(N−1)を、表2、表3、表4に記載の上塗り層用樹脂組成物(N−2〜N−12,N−14,N−16,N−17,N−18〜N−21)に変更した以外は、実施例1と同様に積層体を形成し、試験した。結果を表5、表6、表7に示す。
実施例1の上塗り層用樹脂組成物(N−1)を表3、表4に記載の上塗り層用樹脂組成物(N−13,N−15,N−22)にし、BPO−50の添加量を表6,7に示すように変更した以外は、実施例1と同様に積層体を形成し、試験した。その結果を表6、表7に示す。
実施例14の上塗り層用樹脂組成物(N−14)の塗工量を1kg/m2に変更した以外は、実施例1と同様に積層体を形成し、試験した。その結果を表6に示す。
実施例1のプライマー樹脂組成物(PR−1)をプライマー樹脂組成物(PR−2)又はDR−90に変更し、上塗り層用樹脂組成物を表8に示すようにした以外は、実施例1と同様に積層体を形成し、試験した。その結果を表8に示す。
<プライマー層の形成>
150mm×30mm×厚み0.5mmの鋼板の表面をアセトンで脱脂し、前記の通り調製したプライマー層用樹脂組成物(PR−3B)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を4部添加し、よく混合し、さらにプライマー層用樹脂組成物(PR−3A)の100部を加えて良く混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を、前記鋼板の表面に、乾燥塗工量が0.4kg/m2となるように塗工し、硬化させてプライマー層を形成した。
その際、塗工作業性について下記基準に基づいて評価した。結果を表9に示す。
良好(○):樹脂組成物を刷毛で充分に均すことができ、均一に塗布できた。
不良(×):樹脂組成物を刷毛で均す際に、粘度が高く均し難い、あるいは、均一な表面を得るのに長時間を要した。
<上塗り層の形成>
上記プライマー層の表面に、前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−23B)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を4部添加し、よく混合し、さらに上塗り層用樹脂組成物(N−23A)を100部加えて良く混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を、プライマー層の表面に、乾燥塗工量が2kg/m2となるように塗工し、硬化させて上塗り層を形成した。
その際、塗工作業性について下記基準に基づいて評価した。結果を表9に示す。
良好(○):樹脂組成物をヘラで充分に均すことができ、均一に塗布できた。
不良(×):樹脂組成物をヘラで均す際に、粘度が高く均し難い、あるいは、均一な表面を得るのに長時間を要した。
<ひび割れ追従性試験I(−20℃)>
鋼板にプライマー層及び上塗り層を形成した積層体をサンプルとし、実施例1と同様にして、−20℃におけるひび割れ追従性試験Iを評価した。結果を表9に示す。
(基盤の準備)
JIS−R5201に準拠して作製した40mm×120mm×厚み10mmのモルタル板の、積層体を形成する側の面にダイヤモンドカッターにより深さ5mmの切れ込みを入れ、折り曲げて2枚に切断した。次いで、2枚に切断したモルタル板を鋼板上に並べ、それらモルタル板の側面を突き合わせ、その突き合わせた状態のモルタル板の側面全周に粘着テープを巻いて固定して基盤を得た。
[プライマー層の形成]
前記の通り調製したプライマー層用組成物(PR−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を、上記モルタル板の表面に、乾燥塗工量が0.4kg/m2となるように塗工し、硬化させてプライマー層を形成した。
[上塗り層の形成]
前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を、上記プライマー層の表面に、乾燥塗工量が2.0kg/m2となるように塗工し、硬化させて上塗り層を形成した。
[モルタル層の形成]
アクリシラップDR−411(菱晃社製、商品名アクリシラップDR−411(以下、「DR−411」と略す。)100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合し、さらに骨材KC−1A(菱晃社製、商品名アクリトーンフロアーKC−1A(以下、「KC−1A」と略す。))を213部添加し、良く混合して硬化剤入りモルタル層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りモルタル層用樹脂組成物を、上記上塗り層の上面に、乾燥塗工量が3kg/m2となるように塗工し、硬化させてモルタル層を形成した。
上記の順次積層したサンプルについて、国土交通省北海道開発局発行の「北海道開発局 道路設計要領 第3集 橋梁」(平成25年4月発行)の2.5床版防水工の表2.5.1性能照査方法に記載の「ひび割れ追従性試験II」(試験温度−20℃)を行って評価した。結果を表10に示す。
−20℃におけるひび割れ追従性試験IIについては、道路橋床版防水便覧:社団法人日本道路協会記載のひび割れ追従性試験IIの試験方法において、試験温度を−20℃に変更したものである。
実施例20と同様にして表10に記載の積層体を作製し、実施例19と同様に試験した。結果を表10に示す。
[基盤の準備]
JISコンクリート板(JIS−A5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)に規定、30cm×30cm×厚さ6cm)の表面をJIS−R6252「研磨紙」に規定される150番研磨紙により充分に研磨し、これを基盤とした。
[プライマー層の形成]
前記の通り調製したプライマー層用組成物(PR−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を、上記コンクリート板の表面に、乾燥塗工量が0.4kg/m2となるように塗工し、硬化させてプライマー層を形成した。
[上塗り層の形成]
前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を、上記プライマー層の表面に、乾燥塗工量が2.0kg/m2となるように塗工し、硬化させて上塗り層を形成した。
上記の順次積層したサンプルについて、国土交通省北海道開発局発行の「北海道開発局 道路設計要領 第3集 橋梁」(平成25年4月発行)の2.5床版防水工の表2.5.1性能照査方法に記載の「防水性試験I」を行って評価した。結果を表11に示す。
防水性試験Iについては、道路橋床版防水便覧:社団法人日本道路協会記載の防水性試験Iの試験方法である。
上記の順次積層したサンプルについて、道路橋床版防水便覧:社団法人日本道路協会記載のひび開閉負荷試験の試験方法に準じて試験した。結果を表11に示す。
上記の順次積層したサンプルについて、道路橋床版防水便覧:社団法人日本道路協会記載のブリスタリング抵抗性試験の試験方法に準じて試験し、以下の基準で評価した。結果を表11に示す。
良好(○):サンプルにブリスタリング、気泡が発生せず。
不良(×):サンプルにブリスタリング、気泡が発生した。
実施例24と同様にして表11に記載の積層体を作製し、実施例24と同様に試験した。結果を表11に示す。
(基盤の準備)
JIS−R5201に準拠して作製した40mm×120mm×厚み10mmのモルタル板の、積層体を形成する側の面にダイヤモンドカッターにより深さ5mmの切れ込みを入れ、折り曲げて2枚に切断した。次いで、2枚に切断したモルタル板を鋼板上に並べ、それらモルタル板の側面を突き合わせ、その突き合わせた状態のモルタル板の側面全周に粘着テープを巻いて固定して基盤を得た。
[プライマー層の形成]
前記の通り調製したプライマー層用組成物(PR−1)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りプライマー層用樹脂組成物を、上記モルタル板の表面に、乾燥塗工量が0.4kg/m2となるように塗工し、硬化させてプライマー層を形成した。
[上塗り層の形成]
前記の通り調製した上塗り層用樹脂組成物(N−14)の100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、よく混合して硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入り上塗り層用樹脂組成物を、上記プライマー層の表面に、乾燥塗工量が1.0kg/m2となるように塗工し、硬化させて上塗り層を形成した。
[トップコート層の形成]
アクリシラップXD−374(菱晃社製、商品名アクリシラップXD−374(以下、「XD−374」と略す。)100部に対して、硬化剤としてBPO−50を2部添加し、良く混合して硬化剤入りトップコート層用樹脂組成物を得た。その硬化剤入りトップコート層用樹脂組成物を、上記上塗り層の上面に、乾燥塗工量が0.3kg/m2となるように塗工し、硬化させてトップコート層を形成した。
上記の順次積層したサンプルについて、国土交通省北海道開発局発行の「北海道開発局 道路設計要領 第3集 橋梁」(平成25年4月発行)の2.5床版防水工の表2.5.1性能照査方法に記載の「ひび割れ追従性試験II」(試験温度−20℃)を行って評価した。結果を表12に示す。
−20℃におけるひび割れ追従性試験IIについては、道路橋床版防水便覧:社団法人日本道路協会記載のひび割れ追従性試験IIの試験方法において、試験温度を−20℃に変更したものである。
実施例25と同様にして表12に記載の積層体を作製し、実施例25と同様に試験した。結果を表12に示す。
これに対し、比較例1〜5は、プライマー層を構成する樹脂の、硬化時間が適正範囲にあって塗装作業性が良好であり、低温での引張破断伸度が高いが、上塗り層を構成する樹脂の−10℃における引張破壊伸度が低かった。この比較例1〜5はいずれも、−20℃におけるひび割れ追従性試験Iで折損を生じた。
比較例6〜8は、上塗り層を構成する樹脂の、硬化時間が適正範囲にあって塗装作業性が良好であり、低温での引張破断伸度が高いが、プライマー層を構成する樹脂の−10℃における引張破壊伸度が低かった。この比較例6〜8はいずれも、−20℃におけるひび割れ追従性試験Iで折損を生じた。
これに対し、上塗り層を有さない比較例9〜10及び比較例13では、−20℃におけるひび割れ追従性試験IIにおいて、暫定規格値を下回る不良な評価結果であった。
これに対し、−10℃における引張破壊伸度が高い樹脂を含む上塗り層を用いても、プライマー層の−10℃における引張破壊伸度が低い比較例11は、防水試験I及びブリスタリング抵抗性は良好であるものの、ひび割れ開閉負荷試験では、試験途中で亀裂を発生した。すなわち、ひび割れ開閉負荷試験は不良な結果であった。
また、−10℃における引張破断伸度が高いプライマー層を用いても、上塗り層の樹脂の−10℃における引張破壊伸度が低い比較例12は、防水試験I及びブリスタリング抵抗性は良好であるものの、ひび割れ開閉負荷試験では、試験途中のかなり早い段階で亀裂を発生した。すなわち、ひび割れ開閉負荷試験は著しく不良な結果であった。
Claims (6)
- プライマー層と上塗り層とを有し、基盤の表面に形成される積層体であって、
前記プライマー層は、JIS K6251:2010に規定される測定方法に従い、−10℃で測定された引張破断伸度が40%以上であり、
前記上塗り層が、JIS K6251:2010に規定される測定方法に従い、−10℃で測定された引張破断伸度が80%以上である、積層体。 - 前記上塗り層の引張破断伸度が、前記プライマー層の引張破断伸度より大きい、請求項1に記載の積層体。
- 前記上塗り層は、繰り返し単位(C4H8O)n(nは1以上の整数。)の質量平均分子量が1000以上のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)と、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、前記(A)成分及び前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して50質量部以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
- 前記上塗り層は、繰り返し単位(C4H8O)n(nは1以上の整数。)の質量平均分子量が1000以上のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)以外の、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(G)と、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、前記(G)成分及び前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して50質量部以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
- 前記上塗り層は、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、ウレタンアクリレートオリゴマー(D)と、前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して50質量部以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
- プライマー層は、繰り返し単位(C4H8O)n(nは1以上の整数。)の質量平均分子量が1000以上のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(A)以外の、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体(G)と、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体(B)と、前記(B)成分に可溶で、ガラス転移温度が20〜110℃の樹脂(C)とを含む樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物を含み、骨材含有量が、樹脂硬化物100質量部に対して10質量部以下であり、前記単量体(B)は、アルキル(メタ)アクリレートと1個の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
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