JP2015216291A - 有機発光素子およびその製造方法 - Google Patents

有機発光素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な電子伝導性を有し、陰極と良好な電気的接触を得ることが可能であり、かつ、機能層への電子注入効率に優れた新規な電子注入層を備える有機発光素子を提供する。
【解決手段】
有機発光素子100は、陰極2と、陽極6と、陰極2と陽極6との間に配置された、発光層4を含む機能層と、陰極2と機能層との間に配置された、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物からなる電子注入層3とを備え、電子注入層3は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、複数の結晶粒の少なくとも一つは、陰極2および機能層の両方と接している。
【選択図】図1

Description

本願は、電気的発光素子である有機電界発光素子(以下「有機EL(Electroluminescence)素子」と称する)およびその製造方法に関する。特に、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲を低電力で駆動するための技術に関する。
有機EL素子は電流駆動型の発光素子であり、陽極および陰極とからなる一対の電極の間に、有機材料を含んでなる機能層を設けた構成を有する。駆動には、電極間に電圧を印加し、陽極から機能層に注入されるホールと、陰極から機能層に注入される電子との再結合によって発生する電界発光現象を利用する。自己発光を行うため視認性が高く、かつ、完全固体素子であるため耐衝撃性に優れるなどの利点を有することから、各種表示装置における発光素子や光源としての利用が注目されている。
有機EL素子を効率よく、低消費電力かつ高輝度で発光させるためには、電極から機能層へキャリア(ホールおよび電子)を効率よく注入することが重要である。一般に、キャリアを機能層へ効率よく注入するために、それぞれの電極と機能層との間に、注入の際のエネルギ障壁を低くするための注入層が設けられる。機能層と陽極との間にはホール注入層、機能層と陰極との間には電子注入層が配設される。
非特許文献1は、電子注入層として酸化チタンを用いることを開示している。また、非特許文献2は、電子注入層として酸化亜鉛を用いることを開示している。非特許文献2では、酸化亜鉛膜を噴霧熱分解で形成している。具体的には、酸化亜鉛膜は、酢酸亜鉛二水和水を含む溶液を陰極上に噴霧した後、500℃で12時間熱処理を行うことによって形成される。
Adv. Funct. Mater. 2008, 18, 145‐150 Appl. Phys. Lett. 2007, 91, 223501 「透明導電膜の技術」、オーム社(2008)
電子注入層には、高い電子伝導性と、陰極に対する良好な電気的接触とを確保しつつ、電子注入効率をさらに向上させることが求められている。
本願の一実施の形態は、良好な電子伝導性を有し、陰極と良好な電気的接触を得ることが可能であり、かつ、機能層への電子注入効率に優れた新規な電子注入層を備える有機発光素子を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、陰極と、陽極と、前記陰極と前記陽極との間に配置された、発光層を含む機能層と、前記陰極と前記機能層との間に配置された、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物からなる電子注入層とを備え、前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、(a)前記複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接しているか、あるいは、(b)前記電子注入層に垂直な断面において、前記複数の結晶粒の少なくとも1つの最大長さは30nm以上である有機発光素子を含む。
本発明の一実施の形態によると、良好な電子伝導性を有し、陰極と良好な電気的接触を得ることが可能であり、かつ、機能層への電子注入効率に優れた新規な電子注入層を備える有機発光素子を提供できる。このような有機発光素子は、長寿命で低消費電力という効果を有する。
実施の形態1に係る有機EL素子100の構成を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、電子注入層3の模式的な拡大断面図である。 酸化亜鉛膜の組成比を示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、熱処理を施していない酸化亜鉛膜(as−depo.膜)の断面TEM像を示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、200℃で熱処理を施した酸化亜鉛膜(200℃アニール膜)の断面TEM像を示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、450℃で熱処理を施した酸化亜鉛膜(450℃アニール膜)の断面TEM像を示す図である。 酸化亜鉛膜(as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜)のXRDスペクトルを示す図である。 酸化亜鉛膜(as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜)のPLスペクトルを示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、熱処理を施されていない酸化亜鉛膜(as−depo.膜)のUPSスペクトルを示す図およびその部分拡大図である。 (a)および(b)は、それぞれ、450℃で熱処理を施した酸化亜鉛膜(450℃アニール膜)のUPSスペクトルを示す図およびその部分拡大図である。 酸化亜鉛膜(as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜)のアニール温度とキャリア密度との関係を示す図である。 実施例および比較例の有機EL素子の印加電圧と電流密度との関係を示す素子特性図である。 (a)および(b)は、それぞれ、実施例および比較例の有機EL素子のエネルギダイアグラムの一例である。 酸化亜鉛膜(as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜)のアニール温度と、X線回折ピークの半値幅との関係を示す図である。
本発明の一態様の概要は以下のとおりである。
本発明の一態様である有機発光素子は、陰極と、陽極と、前記陰極と前記陽極との間に配置された、発光層を含む機能層と、前記陰極と前記機能層との間に配置された、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物からなる電子注入層とを備え、前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、前記複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接している。
本発明の他の一態様である有機発光素子は、陰極と、陽極と、前記陰極と前記陽極との間に配置された、発光層を含む機能層と、前記陰極と前記機能層との間に配置された、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物からなる電子注入層とを備え、前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、前記電子注入層に垂直な断面において、前記複数の結晶粒の少なくとも1つの最大長さは30nm以上である。
前記金属化合物は、例えば酸化亜鉛である。
前記金属化合物の組成式は例えばZnOxで表され、前記組成式におけるxは0.9以上1未満であってもよい。
前記電子注入層は、例えばIIIB族元素でドーピングされている。
本発明の一態様である有機発光素子の製造方法は、陰極を準備する工程と、前記陰極上に、最外殻がd10電子配置を有し得る金属元素を含む金属化合物膜を形成する工程と、前記金属化合物膜を所定の温度で加熱することによって、前記金属元素がd10電子配置を有する電子注入層を得る工程と、前記電子注入層上に発光層を含む機能層を形成する工程と、前記機能層上に陽極を配置する工程とを包含し、前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、前複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接しているか、あるいは、前記電子注入層に垂直な断面において30nm以上の最大長さを有する。
本発明の他の一態様である有機発光素子の製造方法は、陰極を準備する工程と、前記陰極上に、前記陰極を所定の温度で加熱しながら金属化合物膜を形成することにより、d10電子配置を有する金属元素を含む電子注入層を形成する工程と、前記電子注入層上に発光層を含む機能層を形成する工程と、前記機能層上に陽極を配置する工程とを包含し、前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、前記複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接しているか、あるいは、前記電子注入層に垂直な断面において30nm以上の最大長さを有する。
前記金属化合物膜は、例えば酸化亜鉛膜であり、前記所定の温度は200℃以上1000℃以下に設定されてもよい。
以下、図面を参照しながら、本発明による有機EL素子の実施の形態を説明し、続いて、電子注入層の構造および特性について、本発明者の行った検討結果を説明する。
なお、本発明は、その本質的な特徴的構成を除き、以下の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。また、各図面における部材の縮尺は、実際のものとは異なる。
(実施の形態)
(有機EL素子の構成)
図1は、実施の形態に係る有機EL素子100の構成の一部を示す模式的な断面図である。
本実施の形態の有機EL素子100は、電子注入層3と、発光層4を含む機能層8とを積層されてなる積層体が、陰極2および陽極6からなる電極対の間に配置された構成を有する。
具体的には、有機EL素子100は、陰極2と、陽極6と、陰極2および陽極6の間に配置された機能層8と、陰極2と機能層8との間に配置された電子注入層3とを備える。ここでは、機能層8は、発光層4およびホール注入層5を有している。なお、機能層8は発光層4を含んでいればよく、ホール注入層5を有していなくてもよい。また、機能層8は、電子輸送層および/またはホール輸送層を含んでいてもよい。
図1に示す例では、有機EL素子100は、基板10に支持されており、陰極2、電子注入層3、発光層4、ホール注入層5および陽極6が、基板10の片側主面上にこの順に積層された構成を有している。陽極6および陰極2は、外部にある電源11に接続可能に構成されている。これらの電極2、6を電源11に接続することによって外部から有機EL素子100に給電され得る。
本実施の形態における電子注入層3は、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物から形成されている。金属化合物として、例えば酸化亜鉛などのd10電子配置を有し得る金属元素を含む金属化合物が用いられ得る。本明細書において、「最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物」とは、金属元素の最外殻がd軌道であり、このd軌道に電子が10個入っている金属元素を含む金属化合物を指す。例えば、化学量論組成の酸化亜鉛の場合、亜鉛原子の持つ2つの価電子が酸素原子に取られるため、価電子の入っていた4s軌道は完全に空になる。この結果、最外殻となった3d軌道に10個の電子を有するd10電子配置(3d10電子配置と呼ぶ)を有する。従って、酸化亜鉛は、3d10電子配置を有し得る金属元素(亜鉛)を含む金属化合物である。なお、酸化物を形成した際に4d軌道に10個の電子を有し得る(4d10電子配置)金属元素を含む化合物の例として酸化インジウム、酸化錫など、5d軌道に10個の電子を有し得る(5d10電子配置)金属元素を含む化合物の例として酸化鉛などが挙げられる。
また、電子注入層3は、結晶質部分を含んでいる。図2(a)および(b)は、それぞれ、本実施の形態における電子注入層3の模式的な断面図である。電子注入層3は、複数の結晶粒3cと、アモルファス領域3aとを含む。
図2(a)に示すように、結晶粒3cの少なくとも一つは、陰極2および機能層8の両方と接している。あるいは、図2(b)に示すように、電子注入層3に垂直な断面において、結晶粒3cの少なくとも1つの最大長さLは30nm以上である。ここでいう「最大長さL」は、結晶粒3cの断面において、任意の方向に沿った結晶粒3cの長さのうち最大となる長さを意味する。「結晶粒3cの長さ」とは、結晶粒3cの界面(結晶質部分とアモルファス領域3aとの界面)の一部から他の一部までの長さである。なお、本実施の形態では、電子注入層3に垂直な少なくとも1つの断面において結晶粒3cが上記最大長さを有していればよく、電子注入層3に垂直な全ての断面において結晶粒3cが上記最大長さを有していなくてもよい。
本実施の形態によると、電子注入層3として、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物層を用いているため、陰極2から電子注入層3への電子注入効率が高く、陰極2と電子注入層3との間に良好な電気的接触が得られる。また、電子注入層3から機能層8への電子注入効率を高めることができる。さらに、電子注入層3は、高い結晶性を有し、且つ導電性に寄与する伝導帯下端近傍に位置するドナー準位を効果的に形成しているので、電子伝導性に優れている。なお、本明細書では、結晶性が高いとは、結晶の質が高い(欠陥が少なく、結晶粒が大きく、荷電子帯下端近傍に位置するドナー準位が存在している)ことをいう。これらの効果が得られるメカニズムについては、後で詳しく説明する。有機EL素子100は、上記の電子注入層3を備えるので、長寿命で低消費電力という効果を有する。
非特許文献2では、電子注入層として酸化亜鉛膜を形成している。非特許文献2の方法(噴霧熱分解)によると、真空プロセスを用いないために不純物元素が多く混入し、加熱による結晶成長が十分に促進されない。このため、例えば図2(a)および(b)を参照しながら前述したような大きい結晶粒は形成されず、比較的小さい結晶粒を有する酸化亜鉛膜しか得られないと考えられる。また、不純物元素によってバンドギャップ間準位が形成されることにより、電子伝導性が阻害される可能性もある。また、非特許文献1および3は、その組成および結晶欠陥と電子注入特性との関係について何ら記載されておらず、電子注入層の最適な状態にも言及されていない。
電子注入層3の厚さは、特に限定しないが、10nm以上1000nm以下である。なお、結晶粒3cが陰極2および機能層8の両方に接する場合(図2(a))、電子注入層3の厚さは例えば10nm以上50nm以下である。一方、電子注入層3の厚さが30nm超、あるいは50nm超であり、結晶粒3cが陰極2および機能層8の両方と接しない場合でも、結晶粒3cの最大長さLが30nm以上であれば(図2(b))、同様の効果が得られる。
電子注入層3の結晶化度は特に限定しないが、例えば2θが33°〜35°の範囲に現れる酸化亜鉛の(002)面からのX線回折ピークの半値幅が0.576°よりも小さいか、あるいは、加熱を施していない酸化亜鉛膜のX線回折ピークの半値幅に対して67%よりも小さい半値幅を有する膜であることが好ましい。これにより、より効果的に電子伝導性を高めることができる。
電子注入層3は、例えば酸化亜鉛から構成されていてもよい。これにより、上述した効果(陰極2との電気的接触、電子注入効率および電子伝導性に優れるという効果)に加えて、大気に対する安定性および透過率を高めることが可能である。この場合、電子注入層3はできるだけ亜鉛と酸素のみの元素で構成されることが好ましいが、通常レベル、且つ、電子伝導性を阻害しないレベルで混入し得る程度に、極微量の不純物を含んでいてもよい。また、酸素に対する亜鉛の比率(モル比)xが1よりも大きいことが好ましい。このような電子注入層3は、例えば後述する方法で形成することができる。
以下、有機EL素子100における各層の具体的な構成を例示する。
(陰極)
陰極2は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から構成される、厚さ50nmの薄膜である。
(電子注入層)
電子注入層3は、酸化亜鉛から構成され、例えば、厚さ20nmである。
(発光層)
発光層4は、例えば、F8BT(poly(9,9−di−n−octylfluorene−alt−benzothiadiazole))から構成され、厚さ85nmである。
発光層4は、上記の材料からなる構成に限定されず、公知の構成材料を含むように構成することが可能である。たとえば特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物およびアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等を挙げることができる。
(ホール注入層)
ホール注入層5は、例えば、酸化モリブデンから構成され、厚さ20nmである。このようなホール注入層5は、ホール注入性の最適化が成されており、ホール注入効率は良好である。
(陽極)
陽極6は、例えば、アルミニウムから構成され、厚さ100nmである。
(基板)
基板10は、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
(有機EL素子100の製造方法)
以下、図1を参照しながら、有機EL素子100の製造方法の一例を説明する。
まず、基板10の主面上に陰極2を形成する。ここでは、スパッタ成膜装置のチャンバー内に基板10を載置する。この後、チャンバー内に所定のスパッタガスを導入し、反応性スパッタ法で、ITOからなる厚さ50nmの陰極2を基板10の主面上に成膜する。
次に、金属化合物膜を陰極2上に形成する。金属化合物膜は、最外殻がd10電子配置を有し得る金属元素を含む。金属化合物膜の形成は、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法等によって行うことができる。ゾル・ゲル法による金属化合物膜の形成は、電子伝導を阻害する不純物混入が防げる程度の環境下で行うことが好ましい。なお、形成直後の金属化合物膜に含まれる金属元素は、最外殻がd10電子配置を有していなくてもよい。ここでは、スパッタ装置のチャンバー内に基板10を載置したままの状態で、所定のスパッタガスを導入し、反応性スパッタ法で、金属化合物膜として、厚さ20nmの酸化亜鉛膜を形成する。
続いて、金属化合物膜に対して所定の温度で熱処理を行う。熱処理温度は、特に限定しないが例えば200℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは400℃以上である。ここでは、金属化合物膜が形成された基板10をチャンバーから出し、大気中にて200℃以上の所定の温度に設定されたホットプレート上へ配置し、30分間の熱処理を行う。
上記の熱処理により、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含み、かつ、結晶性が高められた電子注入層3が得られる。
なお、電子注入層3の形成方法は、上記方法に限定されない。基板10を所定の温度に加熱した状態で、陰極2上に金属化合物膜を形成してもよい。基板10の温度は、特に限定しないが例えば200℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは400℃以上である。金属化合物膜の形成方法は上記と同様の方法(スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾル・ゲル法等)であってもよい。基板10を加熱した状態で金属化合物膜を形成する場合、その後に熱処理を省略することが可能である。例えば、基板10を200℃以上に加熱した状態で、反応性スパッタ法により、酸化亜鉛からなる厚さ20nmの電子注入層3を陰極2上に形成してもよい。基板10を例えば200℃以上に加熱した状態で酸化亜鉛膜を形成することによって、その後の熱処理を行わなくても、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含み、かつ、結晶性が高められた電子注入層3が得られる。
電子注入層3を形成した後、基板10の温度を室温にし、例えば、スピンコート法により、F8BTからなる厚さ85nmの発光層4を形成する。この後、例えば、抵抗加熱蒸着法により、酸化モリブデンからなる厚さ20nmのホール注入層5、アルミニウムからなる厚さ100nmの陽極6をこの順に積層する。このようにして、有機EL素子100が製造される。
図示しないが、電子の輸送性を向上させる目的で、電子注入層3と発光層4の間に電子輸送機能を有する電子輸送層を設けてもよい。また、ホールの輸送性を向上させる目的で、発光層4とホール注入層5の間にホール輸送機能を有するホール輸送層を設けてもよい。
さらに、図示しないが、有機EL素子100が大気に曝されるのを抑制する目的で、陽極6の表面にさらに封止層を設けるか、あるいは有機EL素子100全体を空間的に外部から隔離する封止缶を設けることができる。封止層は、例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)、水分や酸素の大気雰囲気に含む元素の進入を防ぐ機能を有する樹脂等の材料で形成でき、有機EL素子100全体を内部封止するように設ける。封止缶を用いる場合は、封止缶は例えば基板10と同様の材料で形成でき、水分などを吸着するゲッターを密閉空間内に設ける。
有機EL素子100が酸化亜鉛からなる電子注入層3を備える場合、次のような利点を有する。
酸化亜鉛からなる電子注入層3では、酸素に対する亜鉛の比率が高く、格子間亜鉛が存在している。このため、格子間亜鉛に由来するドナー準位によって電子伝導能力が向上している。加えて、電子注入層3の結晶性が高く、電子注入層3の大部分が結晶質部分である。従って、ほぼ完全なd10電子配置を形成している酸化亜鉛中に、一部余剰に存在する亜鉛が格子間に存在することによって、格子間亜鉛となっている。このような格子間亜鉛に由来するドナー準位に注入された電子は、Zn4s軌道からなる電子伝導性に優れたドナー準位を伝導し、隣接した発光層4へ容易に電子が注入される。また、電子注入層3に含まれる亜鉛の大部分はd10電子配置を有している。このため、広いバンドギャップの性質は維持したままで、高い透明性を有する。さらに、酸化亜鉛は、大気に対して高い安定性を有するので、大気中の酸素や水分による劣化を抑制できる。従って、電子注入効率、電子輸送効率、発光効率および透過性に優れ、かつ、大気中で高い安定性を有する有機EL素子100が得られる。
電子注入層3の金属化合物は、ZnOxで示される組成式を有していてもよい。組成式におけるxは0.9以上1未満であることが好ましい。これにより、電子注入層3中の格子間亜鉛が増加する。この結果、酸化亜鉛からなる電子注入層3にドナー準位が形成され、酸化亜鉛の伝導帯最下端のエネルギがフェルミレベルに近付く。このため、陰極2と電子注入層3との間の電子注入障壁がさらに小さくなり、陰極2から電子注入層3への電子注入効率をより効果的に向上できる。
電子注入層3は、IIIB族元素でドーピングされていてもよい。これにより、電子注入層3中にドーピングされたIIIB族元素によるドナー準位が増加する。このため、電子が電子注入層3を伝導する際、ドーピングされたIIIB族元素によるドナー準位を伝導する確率が高くなるので、電子注入層3の電子伝導性をより効果的に向上できる。
(金属酸化物膜の構造および特性の検討)
本発明者は、電子注入層として用いる金属酸化物膜の構造および特性の検討を行った。ここでは、酸化亜鉛膜を例に、熱処理条件の異なる金属酸化物膜の構造および特性、および、これらの金属酸化物膜を用いた有機EL素子の特性を調べたので、その方法および結果を説明する。
[酸化亜鉛の膜組成と膜構造について]
熱処理条件の異なる酸化亜鉛膜のサンプルを作製し、これらの膜の組成および構造を調べたので、その方法及び結果を説明する。
ITO(酸化インジウム錫)基板上に、スパッタ法により、厚さ20nmの酸化亜鉛膜を形成した。ここでは、ターゲットとして、純度99.99%の酸化亜鉛(フルウチ化学社製)を用い、不純物元素の濃度が100ppm以下の酸化亜鉛膜を得た。得られた酸化亜鉛膜を、熱処理を施していない比較例の酸化亜鉛膜のサンプル(「as−depo.膜」と表記する)とした。
また、as−depo.膜と同様の方法で形成された酸化亜鉛膜を、それぞれ、200℃、300℃、450℃で熱処理を行うことにより、熱処理が施された実施例の酸化亜鉛膜のサンプル(それぞれ、「200℃アニール膜」、「300℃アニール膜」、「450℃アニール膜」と表記する)を作製した。熱処理は、前述した方法で行った。なお、上記温度での熱処理によってITO基板が変質しないことを、別の実験により確認している。
1.XPS測定
上記の方法で作製した酸化亜鉛膜のサンプルに対し、X線光電子分光(XPS)測定を行った。ここで、一般的にXPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける、元素の化学状態と濃度換算値として組成情報を反映する。
(XPS測定条件)
使用機器:X線・紫外光電子分光装置
PHI5000 VersaProbe(アルバック・ファイ社製)
光源:Alkα線単色光(1486.6 eV)
光電子出射角:基板法線方向
測定エネルギ分解能:0.05eV
図3は、各酸化亜鉛膜の亜鉛と酸素の比率を示す棒グラフである。横軸は、各サンプル名とし、縦軸は、亜鉛と酸素との合計濃度を100%にしたときの亜鉛の元素濃度比率と酸素の元素濃度比率とを示す。図3に示すグラフから、酸化亜鉛膜のサンプル間において亜鉛と酸素の比率が大きく変化していないことがわかる。また、いずれのサンプルでも、亜鉛の元素濃度が酸素の元素濃度よりも僅かに高い。これらのサンプルでは、組成式ZnOxにおけるxの値は0.9以上1未満(0.94〜0.96程度)である。従って、熱処理の有無や加熱温度にかかわらず、過剰な亜鉛が有意に存在することが分かる。
2.TEM観察
as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜の膜構造を調べるために、透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。
まず、TEM観察用のas−depo.膜のサンプルを、Si基板上にスパッタ法によって酸化亜鉛膜(厚さ20nm)を形成した。また、TEM観察用の200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のサンプルを、それぞれ、Si基板上にスパッタ法によって酸化亜鉛膜(厚さ20nm)を形成した後、所定の温度で熱処理を行うことによって作製した。これらのサンプルの各酸化亜鉛膜を、コーティング材(カーボン)で被覆した。なお、Si基板上に形成された酸化亜鉛膜と、ITO基板上に成膜された酸化亜鉛膜とは、同様の膜質を有することを、別の手法により確認している。
TEM観察では、観察する面に対する厚さを小さくし観察を行う。本実施の形態での薄片化は、観察する断面(Si基板に垂直な断面)からの深さ方向の厚さを、収束イオンビーム(以下、FIBと記載)装置を用いてサンプル加工し、50nm程度に薄くした。
FIB加工とTEM観察の条件は以下の通りである。
(FIB加工条件)
装置:SII−3050SE(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)
加速電圧:30kV(粗加工)、5kV(仕上げ加工)
薄片膜厚:50nm
(TEM観察条件)
観察方法:高分解能電子顕微鏡法
装置:電界放出形分析電子顕微鏡 HF−2200(日立製作所社製)
加速電圧:200kV
図4〜図6は、それぞれ、as−depo.膜、200℃アニール膜および450℃アニール膜の断面TEM像を示す図である。各図のスケールを、図面内に記載したスケールバーで表示している。また、図4〜図6の(a)はTEM観察写真における明視野像を示し、図4〜図6の(b)はTEM観察写真における暗視野像を示している。図4〜図6のそれぞれにおいて、(a)の明視野像と(b)の暗視野像との視野範囲は同じである。
ここで、明視野像は、TEM観察面に垂直方向に入射させた電子の、透過波を含む複数の回折波を、対物絞りで選んで結像した像を示している。回折を起こしている部分は透過波から電子線が少なくなるために暗く見え、一方、回折を起こしていない部分は、電子線が多くなるために明るく見える性質を持っている。
暗視野像は、TEM観察面に垂直方向に入射させた電子の、限定した回折波を、対物絞りで選んで結像した像である。電子線透過方向に対する結晶の向きに依存するコントラストを発生させることが可能になり、明視野像に比べて特定の結晶粒のみを観察するのに適している。
図4(a)、図5(a)および図6(a)に示す明視野像から、Si基板20上に形成された酸化亜鉛膜(as−depo.膜22A、200℃アニール膜22Bまたは450℃アニール膜22C)が明確に確認される。これらの酸化亜鉛膜の下面は基板20と接しており、上面はコーティング材24で覆われている。
図4(b)、図5(b)および図6(b)に示す暗視野像から、各サンプルの酸化亜鉛膜の結晶状態について次のことがわかる。
図4(b)のas−depo.膜22Aでは、明部の領域で示される結晶粒22Acが複数確認される。しかしながら、Si基板20と接し、かつ、as−depo.膜22Aの上面(コーティング材24側の表面)とも接している結晶粒は確認されない。また、各結晶粒22Ccのサイズは小さく、30nm以上の最大長さを有する結晶粒も確認されない。
これに対し、図5(b)の200℃アニール膜22Bでは、明部の領域で示される結晶粒22Bcが複数確認される。結晶粒22Bcの少なくとも1つは、Si基板20と接し、かつ、200℃アニール膜22Bの上面とも接していることが確認される。同様に、図6(b)の450℃アニール膜22Cでは、明部の領域で示される結晶粒22Ccが複数確認される。結晶粒22Ccの少なくとも1つは、Si基板20と接し、かつ、450℃アニール膜22Cの上面とも接していることが確認される。なお、200℃アニール膜22Bまたは450℃アニール膜22Cを、図1に示す有機EL素子100の電子注入層3に適用すると、上記の結晶粒は基板10および機能層8の両方に接する。図示していないが、300℃アニール膜でも同様の結果が得られる。
上述した結果から、本実施の形態における電子注入層3は、例えば、基板10上に堆積した酸化亜鉛膜を所定の温度で加熱することによって形成され得ることが確認された。これにより、酸素よりも亜鉛の元素濃度比率が高く、かつ、結晶粒の少なくとも1つは、基板および機能層の両方と接する電子注入層3が得られる。
なお、この例では、200℃アニール膜22Bまたは450℃アニール膜22Cにおける少なくとも1つの結晶粒の最大長さは、酸化亜鉛膜の厚さ(20nm)によって20nmに制限されているが、酸化亜鉛膜を厚くすると、例えば30nm以上になり得る。
3.XRD測定
as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜および450℃アニール膜の結晶化度を調べるために、X線回折(XRD)測定を行った。
まず、XRD測定用のas−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のサンプルを、TEM観察用のサンプルと同様の方法で作製した。なお、Si基板上に形成された酸化亜鉛膜は、ITO基板上に成膜された酸化亜鉛膜と同様の膜質を有することを、別の手法により確認している。
XRD測定の条件は以下の通りである。
(XRD測定条件)
装置:自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab (リガク社製)
照射光源:Cukα線単色光(8.048keV)
測定方法:2θ/θ法(Out−of−Plane測定)
図7に、as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のXRDスペクトルを示す。2θ/θ法では、サンプル表面に対する入射角度をθとした時に、入射X線の照射方向に対して2θ方向に回折するX線を検出している。図4の横軸に2θを示し、縦軸に回折X線の強度を任意の単位で示している。また、各XRDスペクトルは、切片を任意に平行移動させて表示している。
図7に示す結果から、アニール温度が200℃以上において、酸化亜鉛の(200)面の回折パターンピークが確認されることが分かる。また、アニール温度が上昇するにつれて大きくなり、ピークの強度は大きく、ピークの形状はより鋭くなることが分かる。これは、アニール温度の上昇によって酸化亜鉛膜の結晶性が向上していることを表している。従って、アニール温度を高くにつれて、各結晶粒のサイズも拡大する。
XRD測定の結果からas−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜において2θが33°〜35°の範囲に現れる酸化亜鉛の(002)面からのX線回折ピークの半値幅(FWHM)を求めたところ、それぞれ、0.855°、0.576°、0.443°および0.395°であり、as−depo.膜の半値幅に対するアニール膜の半値幅の割合R(FWHM)は67%、52%および46%であった。
図14は、アニール温度と、上記のアニール膜の半値幅の割合R(FWHM)との関係を示すグラフである。図14では、as−depo.膜のアニール温度を25℃として示している。この結果から、アニール温度を高くすると、酸化亜鉛膜の結晶性を向上できることが確認できる。
[酸化亜鉛の電子状態について]
4.PL測定
as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜および450℃アニール膜のバンドギャップと、バンドギャップ内準位を調べるために、フォトルミネッセンス(PL)測定を行った。
まず、PL測定用のas−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のサンプルを、TEM観察用のサンプルと同様の方法で作製した。なお、Si基板上に形成された酸化亜鉛膜は、ITO基板上に成膜された酸化亜鉛膜と同様の膜質を有することを、別の手法により確認している。
PL測定の条件は以下の通りである。
(PL測定条件)
装置:LabRAM HR−800 (堀場製作所社製)
励起光源:He−Cdレーザー
励起波長:325nm
検出方法:モノクロメーターで分光してCCDで検出
図8に、as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のPLスペクトルを示す。横軸はPL発光の光のエネルギ、縦軸はPL発光強度であり、1秒あたりに受光した光子の検出数を示している。各PLスペクトルは、切片を任意に平行移動させて表示している。
図8に示す結果から、300℃アニール膜と、450℃アニール膜において3.26eVをピークトップとするバンド端遷移発光に由来するピークが確認される。また、200℃アニール膜では、前記バンド端遷移発光に由来するピークは明確に確認されないものの、as−depo.膜におけるブロードなバンド端遷移発光ピークと比較すると、3.26eV付近でわずかに急峻性が向上していることがわかる。
また、as−depo.膜には、1.5〜3.0eVのエネルギ範囲において、複数のブロードなピークの複合ピークである、バンドギャップ内の不純物準位に由来する発光ピークが明確に確認される。これに対し、200℃以上の温度で熱処理されたアニール膜では、バンドギャップ内の不純物準位に由来する発光ピークの強度が低減していることが確認される。
この結果から、酸化亜鉛膜を所定の温度で熱処理することにより、熱処理が施されていないas−depo.膜よりもバンドギャップ内の不純物準位を低減でき、かつ、バンド構造を有する電子状態に変化させ得ることが分かる。
なお、前述したように、化学量論組成の酸化亜鉛では、亜鉛原子の持つ2つの価電子が酸素原子に取られるため、価電子の入っていた4s軌道は完全に空になり、10個の電子が入った3d軌道が最外殻になる(d10電子配置)。200℃以上で熱処理を行った酸化亜鉛膜(200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜)は、いずれも、バンド構造を有し、かつ、不純物準位の少ないことから、ほぼ完全なd10電子配置を有する金属元素(亜鉛)を含む金属化合物であると考えられる。
また、バンドギャップ間の不純物準位が極少ないことから、200℃以上で熱処理を行った酸化亜鉛膜(200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜)は、可視光域の光吸収が非常に少なく、着色がほとんどない。従って、このような酸化亜鉛膜を電子注入層として用いると、有機EL素子の透過率を高めることができる。
5.UPS測定
as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜および450℃アニール膜の紫外光電子分光(UPS)測定を行った。一般にUPSスペクトルは、測定対象物の表面から深さ数nmまでにおける、価電子帯などの占有準位の状態を反映する。
まず、UPS測定用のas−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のサンプルを、XPS測定のサンプルと同様の方法で作製した。
UPS測定条件を以下に示す。
(UPS測定条件)
使用機器:X線・紫外光電子分光装置
PHI5000 VersaProbe(アルバック・ファイ社製)
光源:He I線
バイアス:なし
光電子出射角:基板法線方向
測定点間隔:0.05eV
図9(a)および(b)は、as−depo.膜のUPSスペクトルを示す図である。図10(a)および(b)は、450℃アニール膜のUPSスペクトルを示す図である。図9および図10の横軸は結合エネルギを示している。横軸の原点はITO基板のフェルミレベル(酸化亜鉛膜のフェルミレベルと一致する)であり、左方向を正の向き(結合エネルギが大きくなる方向)とする。縦軸は、各UPSスペクトルの最大値で規格化した光電子強度を示している。また、図9(b)および図10(b)は、それぞれ、図9(a)および図10(a)に示すUPSスペクトルにおけるフェルミレベル近傍のエネルギ領域(点線で示す)を拡大した図である。
酸化亜鉛の場合、UPSスペクトルにおけるもっとも大きな立ち上がりがO2p軌道からなる価電子帯の上端である。UPSスペクトルの立ち上がりの変曲点を通る接線(線A1、A2)と横軸との交点を、価電子帯上端の結合エネルギ位置とみなすことができる。
図9(b)に示すように、as−depo.膜では、UPSスペクトルの立ち上がりの変曲点を通る接線(線A1)と、横軸に平行でUSPスペクトルの右縦軸切片を通る線(線B1)との交点の結合エネルギは3.28eVである。図10(b)に示すように、450℃アニール膜では、UPSスペクトルの立ち上がりの変曲点を通る接線(線A2)と横軸に平行でUSPスペクトルの右縦軸切片を通る線(線B2)との交点の結合エネルギは3.56eVである。これらの結合エネルギ位置を、それぞれの酸化亜鉛膜の価電子帯上端の結合エネルギ位置とみなす。この結果から、450℃アニール膜の方が、as−depo.膜よりも、酸化亜鉛膜のフェルミレベル(横軸の原点)と価電子帯上端とのエネルギ差が大きいことが分かる。
前述したように、PL測定における結果(図8)から、バンド端遷移発光ピーク位置から450℃アニール膜におけるバンドギャップは3.26eVであることが確認される。また、バンド端遷移発光ピークの形状は不明瞭であるが、as−depo.膜においても同じエネルギ位置にピークが確認される。従って、as−depo.膜におけるバンドギャップも450℃アニール膜と同様である。バンドギャップが同じであり、かつ、価電子帯上端の結合エネルギが上記の関係にあることから、450℃アニール膜における伝導帯下端のエネルギ位置は、as−depo.膜よりも高結合エネルギであり、フェルミレベルよりも高い結合エネルギの領域に存在していることになる。
図示していないが、200℃アニール膜、300℃アニール膜の価電子帯上端の結合エネルギも、as−depo.膜に比べて高い結合エネルギであることが確認される。また、図8に示すPLスペクトルのバンド端遷移発光ピーク位置も3.26eVである。このことから、200℃アニール膜、300℃アニール膜における伝導帯下端のエネルギ位置も、as−depo.膜よりも高結合エネルギであり、フェルミレベルよりも高い結合エネルギの領域に存在していることが確認される。
このように、PL測定および本UPS測定の結果から、所定の温度で熱処理された酸化亜鉛膜では、バンド構造を有する電子状態(d10電子配置)を有し、かつ、伝導帯下端がフェルミエネルギよりも高い結合エネルギの領域に存在することが分かる。
6.ホール効果測定
as−depo.膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜のキャリア密度を調べるために、ホール効果測定を行った。
まず、ホール効果測定用のas−depo.膜のサンプルは、石英ガラス基板上にスパッタ法によって酸化亜鉛膜(厚さ20nm)を形成することによって作製した。200℃アニール膜、300℃アニール膜および450℃アニール膜のサンプルは、それぞれ、石英ガラス基板上にスパッタ法によって酸化亜鉛膜(厚さ20nm)を形成した後、200℃、350℃および450℃の温度で熱処理を行うことによって作製した。なお、石英ガラス基板上に形成された酸化亜鉛膜とITO基板上に成膜された酸化亜鉛膜とは、同様の膜質を有することを、別の手法により確認している。
ホール測定の条件は以下の通りである。
(ホール効果測定条件)
装置:ResiTest8310(東洋テクニカ社製)
バージョン:Ver.3.97
測定モード:高抵抗モード
測定電流:2.0×10-7
測定磁場:0.3Tesla
測定周波数:20mHz
図11は、酸化亜鉛膜のアニール温度とキャリア密度との関係を示すグラフである。横軸は酸化亜鉛膜のアニール温度、縦軸はキャリア密度を示している。また、本ホール測定結果から、全てのサンプルで検出されたキャリアは電子であることが確認されている。
図11に示すグラフから、酸化亜鉛膜に対するアニール温度が高くなるほど、キャリア密度が高くなることがわかる。また、as−depo.膜と比べて、200℃アニール膜ではキャリア密度が若干高くなり、300℃アニール膜では大幅にキャリア密度が上昇している。このことから、200℃を閾温度として、それよりもアニール温度が高くなると、キャリア密度が増加することがわかる。
上述したPL測定およびUPS測定結果から、所定の温度で熱処理を施された酸化亜鉛膜は、バンド構造を有する電子状態(d10電子配置)を示し、その伝導帯下端がフェルミエネルギよりも高い結合エネルギの領域に存在していることが分かる。これに加え、本ホール効果測定の結果から、200℃以上の熱処理によって酸化亜鉛膜の電子キャリアの密度が高くなることが分かる。
なお、電子キャリアの密度が高くなる(高密度化)とは、酸化亜鉛の中のドナー準位の高密度化を指す。すなわち、酸化亜鉛のドナー準位の高密度化によって、酸化亜鉛のフェルミレベルと伝導帯下端のエネルギ位置とが近付く。アニールによる、ドナー準位の高密度化が進むことによって、伝導帯下端のエネルギ位置が、フェルミレベルより高結合エネルギの領域に存在し得るよう、電子状態を変化させたとみなすことができる。
また、酸化亜鉛のドナー準位の由来は諸説存在しているが、非特許文献3によると、酸化亜鉛の伝導帯下端近傍に形成されるドナー準位は、酸化亜鉛の格子間に存在する亜鉛によると説明している。つまり、酸素に対する亜鉛の比率が高いこと、結晶化度が高い(結晶粒が大きい)こと、バンドギャップ内の不純物準位を低減されており、バンド構造を有する電子状態(d10電子配置)であることにより、ドナー準位の高密度化が進んでいると考えられる。また、ドナー準位の高密度化によって、伝導帯下端のエネルギ位置が、フェルミレベルよりも高い結合エネルギの領域に存在し得る電子状態を形成すると考えられる。
[素子特性について]
続いて、as−depo膜、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜を電子注入層とした有機EL素子をそれぞれ作製し、素子特性を調べた。as−depo.膜を電子注入層とした比較例の有機EL素子をas−depo−BPDとし、200℃アニール膜、300℃アニール膜、450℃アニール膜を電子注入層とした実施例の有機EL素子を、それぞれ200℃−annealed−BPD、300℃−annealed−BPD、450℃−annealed−BPDと表記する。
作製した各有機EL素子は、図1に示す有機EL素子100と同じ構成を有する。作製方法は前述した通りである。ただし、as−depo−BPDの作製において、電子注入層となる酸化亜鉛膜の形成中の基板温度を室温とした。また、他の有機EL素子は、室温で酸化亜鉛膜を形成した後、大気中で熱処理を行うことによって作製した。
作製した各有機EL素子を直流電源に接続し、各有機EL素子に電圧を印加した。このときの印加電圧を変化させ、電圧値に応じて流れた電流値を素子の単位面積当たりの値(電流密度)に換算した。
図12は、各有機EL素子(as−depo−BPD、200℃−annealed−BPD、300℃−annealed−BPD、450℃−annealed−BPD)の電流密度−印加電圧曲線を示す図である。縦軸は電流密度(mA/cm2)、横軸は印加電圧(V)を示している。
図12に示すように、熱処理を施した酸化亜鉛膜を用いた有機EL素子(200℃−annealed−BPD、300℃−annealed−BPD、450℃−annealed−BPD)は、熱処理を施していない酸化亜鉛膜を用いた有機EL素子(as−depo−BPD)と比較して、電流密度−印加電圧曲線の立ち上がりが早く、低い印加電圧で高い電流密度が得られることがわかる。
従って、所定の温度で熱処理を施した酸化亜鉛膜を電子注入層として用いることにより、熱処理を施していない酸化亜鉛膜を用いた従来の有機EL素子よりも低い電圧で動作できることがわかる。
なお、酸化亜鉛膜に熱処理を行うことにより、結晶粒のサイズが大きくなる理由は次のように考えられる。熱処理において、酸化亜鉛からなる電子注入層では、加熱による熱エネルギによって、アモルファス構造あるいはナノクリスタル形状であった酸化亜鉛の原子が再配列をなし、結晶成長する。これにより、結晶粒のサイズが大きくなり、例えば電子注入層の厚さ方向に亘る結晶粒が形成される。このような結晶粒は、電子注入層の上下に位置する機能層および陰極と接する。あるいは、結晶粒の最大長さが30nm以上となる。
[酸化亜鉛の電子注入・伝導のメカニズムについて]
図13(a)および(b)は、それぞれ、電子注入層としてas−depo.膜を用いた比較例の有機EL素子、および200℃以上の熱処理を施した酸化亜鉛膜を用いた実施例の有機EL素子のエネルギダイアグラムの一例である。
実施例の有機EL素子(200℃−annealed−BPD、300℃−annealed−BPD、450℃−annealed−BPD)が良好な特性を示す理由としては、下記(i)〜(iii)が考えられる。
(i)実施例の有機EL素子では、電子注入層のフェルミレベル(陰極のフェルミレベルと一致する)が伝導帯下端近傍に位置するので、図13(a)および(b)から分かるように、比較例の有機EL素子よりも、陰極2と電子注入層3の間の電子注入障壁が小さい。このため、陰極2から電子注入層3への電子注入効率が高い。
(ii)実施例の有機EL素子では、図13(a)に示すように、電子注入層3の結晶性が高く、伝導可能なドナー準位が高密度で存在している。また、ドナー準位は、陰極2から機能層8までつながっている。このため、電子注入層3内を伝導する電子が、電子伝導性の優れるs軌道を流れるので、良好な電子伝導が成される。これに対し、比較例の有機EL素子では、図13(b)に示すように、電子注入層3の結晶性が低く、電子注入層3内に結晶粒界が多く存在する。このため、ドナー準位が陰極2から機能層8まで連続的につながっていないので、実施例の有機EL素子と比べて電子伝導性に劣る。
(iii)実施例の有機EL素子では、電子注入層3がd10電子配置を有する金属元素(ここでは亜鉛)を含むため、陰極2からs軌道の伝導帯に注入された電子は、閉殻の価電子帯から強い反発を受け、電子注入層3から隣接する機能層8のLUMOに押し出される。従って電子注入層3から機能層8への電子注入効率が高い。
なお、as−depo膜のように結晶性が低い酸化亜鉛からなる電子注入層は、上記(i)を満たさないか、バンド構造ではなくなるために上記(ii)を満たさない、あるいは、バンド内の不純物欠陥が多いために上記(iii)を満たさないと考えられる。これらのことから、本実施の形態の酸化亜鉛膜は、結晶性は高いものの、余剰に存在する亜鉛が格子間に存在することによって高密度なドナー準位を形成して、伝導帯下端がフェルミレベルと同等か、あるいは、それよりも高結合エネルギに位置し、電子注入性の優れた層を形成していると考えられる。結晶性の高さは、TEMで観察される結晶粒のサイズやXRD測定で得られる半値幅などで規定される。
なお、上記では、酸化亜鉛膜の特性および酸化亜鉛膜を電子注入層とする有機EL素子の特性を評価した結果を説明したが、本実施の形態における電子注入層は酸化亜鉛膜に限定されない。
電子注入層として、d10電子配置をとり得る金属元素を含む他の金属化合物膜を使用することができる。他の金属化合物膜を用いる場合でも、例えば成膜時の基板温度を高くする(あるいは成膜後に熱処理を行う)ことにより、陰極および機能層の両方と接する結晶粒か、または最大長さが30nm以上の結晶粒を含む結晶性の高い電子注入層を形成することが可能である。このような電子注入層を用いることにより、酸化亜鉛膜を例に上述した効果と同様の効果が得られる。
他の金属化合物として、例えば、亜鉛、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、砒素、アンチモン、ビスマスの中から一つないしは二つ以上選ばれる金属元素と窒素族元素との化合物、あるいは、亜鉛、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、砒素、アンチモン、ビスマスの中から一つないしは二つ以上選ばれる金属元素と酸素族元素との化合物、さらには、亜鉛、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、砒素、アンチモン、ビスマスの中から一つないしは二つ以上選ばれる金属元素とハロゲン元素との化合物であり、かつ、上記金属元素がd10電子配置を有する電子状態を持つ化合物を用いることができる。
また、d10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物に、その金属元素が属する元素の族よりも大きい族に属する金属元素を微量添加することによって、ドナー準位をさらに増加させてもよい。ドナー準位を増加させた金属化合物として、例えば、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムをドーパントとして微量に添加した酸化亜鉛などが挙げられる。
上記の検討結果から分かるように、本実施の形態における電子注入層は、例えばスパッタ法で形成された金属酸化膜に200℃以上の温度で熱処理を行うことによって得られる。あるいは、基板温度を200℃以上に設定した状態で、基板上にスパッタ法で金属酸化膜を形成することによって得られる。しかしながら、本実施の形態における電子注入層の形成方法は、上記の方法に限定されない。
例えば、成膜後、あるいは、成膜中に、金属酸化膜に熱エネルギを与えることが可能であれば、スパッタ法以外にも、例えば真空蒸着法などの他の成膜手法を用いてもよい。このとき、成膜後に熱処理を行うときの温度あるいは成膜中の基板温度(まとめて「加熱温度」)と呼ぶ)は、成膜する金属化合物の結晶化が起こり得る温度に設定されることが望ましい。例えば、厚さが5nm以上80nm以下(例えば20nm)の酸化亜鉛膜において、アモルファス構造を有する酸化亜鉛が六方晶ウルツ型構造に結晶化しやすい温度は200℃以上である。このため、厚さ20nmの酸化亜鉛膜の加熱温度は200℃以上に設定されることが好ましい。一方、加熱温度は例えば1200℃以下に設定されることが好ましい。1200℃以上の高温で加熱を施した場合、酸化亜鉛膜の粒成長が促進されて粒径が増大し、酸化亜鉛膜の表面凹凸が大きくなる。このような酸化亜鉛膜を電子注入層として用いると、リーク電流の増加などの特性低下が生じる可能性がある。なお、金属化合物が結晶化しやすい温度は、金属酸化物膜の材料および厚さによって変動し得るため、金属化合物膜の材料種および設定厚さに対応した温度域に設定することが好ましい。
さらに、図1に示す有機EL素子100はボトムエミッション型であるが、本実施の形態は、トップエミッション型の有機EL素子にも適用され得る。
本開示の有機EL素子は、携帯電話機用のディスプレイやテレビなどの表示素子、各種光源などに利用可能である。いずれの用途においても、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で低電圧駆動される有機EL素子として適用できる。このような高性能により、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種ディスプレイ装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ、照明光源等として、幅広い利用が可能である。
2 陰極
3 電子注入層
3c 結晶粒
3a アモルファス領域
4 発光層
5 ホール注入層
6 陽極
10 基板
11 電源
100 有機EL素子

Claims (8)

  1. 陰極と、
    陽極と、
    前記陰極と前記陽極との間に配置された、発光層を含む機能層と、
    前記陰極と前記機能層との間に配置された、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物からなる電子注入層と
    を備え、
    前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、
    前記複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接している有機発光素子。
  2. 陰極と、
    陽極と、
    前記陰極と前記陽極との間に配置された、発光層を含む機能層と、
    前記陰極と前記機能層との間に配置された、最外殻がd10電子配置を有する金属元素を含む金属化合物からなる電子注入層と
    を備え、
    前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、
    前記電子注入層に垂直な断面において、前記複数の結晶粒の少なくとも1つの最大長さは30nm以上である有機発光素子。
  3. 前記金属化合物は酸化亜鉛である請求項1または2に記載の有機発光素子。
  4. 前記金属化合物の組成式はZnOxで表され、前記組成式におけるxは0.9以上1未満である請求項3に記載の有機発光素子。
  5. 前記電子注入層は、IIIB族元素でドーピングされている請求項1または2に記載の有機発光素子。
  6. 陰極を準備する工程と、
    前記陰極上に、最外殻がd10電子配置を有し得る金属元素を含む金属化合物膜を形成する工程と、
    前記金属化合物膜を所定の温度で加熱することによって、前記金属元素がd10電子配置を有する電子注入層を得る工程と、
    前記電子注入層上に発光層を含む機能層を形成する工程と、
    前記機能層上に陽極を配置する工程と
    を包含し、
    前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、
    前複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接しているか、あるいは、前記電子注入層に垂直な断面において30nm以上の最大長さを有する有機発光素子の製造方法。
  7. 陰極を準備する工程と、
    前記陰極上に、前記陰極を所定の温度で加熱しながら金属化合物膜を形成することにより、d10電子配置を有する金属元素を含む電子注入層を形成する工程と、
    前記電子注入層上に発光層を含む機能層を形成する工程と、
    前記機能層上に陽極を配置する工程と
    を包含し、
    前記電子注入層は、複数の結晶粒と、アモルファス領域とを含み、
    前複数の結晶粒の少なくとも一つは、前記陰極および前記機能層の両方と接しているか、あるいは、前記電子注入層に垂直な断面において30nm以上の最大長さを有する有機発光素子の製造方法。
  8. 前記金属化合物膜は酸化亜鉛膜であり、前記所定の温度は200℃以上1200℃以下に設定される請求項6または7に記載の有機発光素子の製造方法。
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