JP2015214988A - 自動変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸方向寸法の大型化を回避しつつ多段化を可能とした自動変速機を提供する。【解決手段】同一軸心上に3つのクラッチ31〜33を径方向に重ねて配置する。上記軸心と直交する平面に沿って形成された壁部5xを有し、3つのクラッチ31〜33で共用される共用回転部材5を軸方向の所定位置に配置する。3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33p及びピストン31p〜33pを挟んで作動油圧室31a〜33aと対向する遠心バランス室31j〜33jの構成部材31k〜33kを共用回転部材5に径方向に重ねて配置するように支持する。遠心バランス室構成部材31k,32kは軸方向延設部と径方向延設部とを有し、軸方向延設部を共用回転部材5の壁部5xに結合する。ピストン31p,32pは遠心バランス室構成部材31k,32k及び共用回転部材5の壁部5xにより画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容する。【選択図】図9

Description

本発明は、自動変速機、特に、多段化が図られた自動変速機に関する。
自動車等の車両に搭載される自動変速機は、プラネタリギヤセット(遊星歯車機構)と複数の摩擦締結要素とを備え、摩擦締結要素を選択的に締結することによって複数の変速段が達成される。近年、燃費性能向上等のため、変速機の多段化が図られている。例えば特許文献1には、4つのプラネタリギヤセットと3つのクラッチと2つのブレーキとを備えて前進8段が達成される自動変速機が開示されている。
プラネタリギヤセットは入力軸上に配置される。そのため、多段化に伴いプラネタリギヤセットの数が増えると変速機の軸方向の寸法(軸長)が長くなる。これは変速機の車両への搭載性を悪くする。
そこで、特許文献2に開示されるように、同一軸心上に複数のクラッチを径方向に重ねて配置することが提案される。こうすれば、全てのクラッチを軸方向に並べて配置する場合と比べて変速機の軸長が短くなる。
WO2013/117369(図1〜5) 特開2010−48318号公報(図3)
特許文献2に開示される自動変速機では、2つのクラッチの摩擦板は、軸方向視で相互に重複せずに(つまり径方向に離間して)径方向に重ねて配置されている。しかし、摩擦板を押圧するピストンは、径方向に重ねて配置されているものの、その一部が軸方向視で相互に重複しているため、軸方向にも並べて配置された状態である。そして、ピストンを押圧するための油圧が供給される作動油圧室や、ピストンを挟んで作動油圧室と対向する遠心バランス室の構成部材もまた軸方向に並べて配置されている。そのため、これらのピストンや遠心バランス室構成部材が変速機の軸長短縮を阻害し、自動変速機の軸方向寸法が十分には短縮できないという不具合がある。
本発明は、自動変速機における上記のような不具合に対処するもので、複数のクラッチを軸方向にコンパクトにレイアウトして変速機の軸方向寸法の大型化を回避しつつ多段化を可能とした自動変速機の提供を目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、同一軸心上に複数のクラッチが径方向に重ねて配置された自動変速機であって、軸方向の所定位置に配置され、上記軸心と直交する平面に沿って形成された壁部を有し、上記複数のクラッチで共用される共用回転部材と、上記共用回転部材に径方向に重ねて配置されるように支持された上記複数のクラッチのピストン及び上記ピストンを挟んで作動油圧室と対向する遠心バランス室の構成部材とを備え、上記遠心バランス室構成部材は、軸方向に延びる軸方向延設部と、上記軸方向延設部の一端部から径方向外周側に延びる径方向延設部とを有し、上記軸方向延設部の他端部が上記共用回転部材の壁部に結合され、上記ピストンは、上記遠心バランス室構成部材及び上記共用回転部材の壁部により画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容されていることを特徴とする。
本発明によれば、軸心と直交する平面に沿って形成された共用回転部材の壁部に複数のクラッチの遠心バランス室構成部材が径方向に重ねて配置されるように結合されているので、上記遠心バランス室構成部材は軸方向に並べて配置された状態とならない。また、複数のクラッチのピストンが上記遠心バランス室構成部材及び上記共用回転部材の壁部により画成される収容空間内に収容されているので、上記ピストンもまた軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、複数のクラッチをピストン及び遠心バランス室構成部材を含めて軸方向にコンパクトにレイアウトして変速機の軸方向寸法の大型化を回避しつつ多段化を可能とした自動変速機が提供される。
本発明においては、好ましくは、上記共用回転部材の壁部の内周部に変速機ケースのボス部に外嵌される円筒部が上記ピストン及び遠心バランス室構成部材の配置側に軸方向に延設され、上記複数のクラッチの遠心バランス室構成部材のうち内周側のクラッチの遠心バランス室構成部材は、軸方向に延びる軸方向延設部と、上記軸方向延設部の一端部から径方向内周側に延びる内周側径方向延設部と、上記軸方向延設部の他端部から径方向外周側に延びる外周側径方向延設部とを有し、上記内周側径方向延設部の内周側端部が上記円筒部に結合され、上記複数のクラッチのピストンのうち内周側のクラッチのピストンは、上記遠心バランス室構成部材、上記共用回転部材の壁部、及び上記円筒部により画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容されている。
この構成によれば、内周側のクラッチの遠心バランス室構成部材が共用回転部材の円筒部に結合され、他のクラッチの遠心バランス室構成部材が共用回転部材の壁部に結合される場合であっても、複数のクラッチをピストン及び遠心バランス室構成部材を含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
本発明においては、好ましくは、上記ピストンは、径方向に延び、上記収容空間を軸方向に仕切るA部と、上記A部の一端部から摩擦板側に軸方向に延び、摩擦板を押圧するB部とを有し、上記共用回転部材の壁部と上記A部との間に上記作動油圧室が形成され、上記遠心バランス室構成部材と上記A部との間に上記遠心バランス室が形成されている。
この構成によれば、ピストンの構造がピストンとして最小限必要な基本的構造のみを備えた簡単な構造となる。
本発明においては、好ましくは、上記ピストンは、上記A部の他端部から軸方向に延びるC部をさらに有する。
この構成によれば、上記収容空間内に収容されたピストンは、上記C部の存在により、遠心バランス室構成部材又は円筒部との接触面積が拡大する。そのため、ピストンの支持が安定し、クラッチの締結・解放時に、ピストンが傾いたり拗れたりせず、安定・円滑に軸方向に移動する。
本発明においては、好ましくは、上記ピストンは、上記A部の一端部から反摩擦板側に軸方向に延びるD部をさらに有する。
この構成によれば、摩擦板を押圧するB部と反対側に延びる上記D部の存在により、A部で仕切られる作動油圧室と遠心バランス室とが軸心と直交する平面に対して対称となる。そのため、作動油圧室と遠心バランス室とがピストンを挟んで常に適正に対向してバランスよくレイアウトされる。
本発明においては、好ましくは、上記作動油圧室内に上記D部に常時圧接するシールプレートが配設されている。
この構成によれば、作動油圧室がピストンの移動中も安定してシールされる。また、このシールプレートによってピストンが支持されるので、ピストンの支持がより一層安定する。
本発明においては、好ましくは、上記共用回転部材の壁部の外周部に所定の回転部材との連結部が上記ピストン及び遠心バランス室構成部材の配置側に突設され、上記複数のクラッチのピストンのうち外周側のクラッチのピストンは、上記遠心バランス室構成部材、上記共用回転部材の壁部、及び上記連結部により画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容されている。
この構成によれば、外周側のクラッチの上記収容空間内には共用回転部材の壁部の外周部から連結部が突出しているのに対し、上記収容空間内に収容されるピストンは上記D部を持たないので上記連結部との干渉が回避される形状である。そのため、外周側のクラッチのピストンは、上記収容空間内に連結部が突出しているけれども、上記連結部と接触することなく、上記収容空間内で円滑・良好に解放側に移動することができる。
本発明においては、好ましくは、上記複数のクラッチの摩擦板が軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている。
この構成によれば、複数のクラッチの摩擦板が相互に径方向に離間しかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されているので、上記摩擦板は軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、複数のクラッチを摩擦板を含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
以上のように、本発明は、複数のクラッチを軸方向にコンパクトにレイアウトして変速機の軸方向寸法の大型化を回避しつつ多段化を可能とした自動変速機を提供するので、特に、多段化が図られた自動変速機の技術の発展・向上に寄与する。
本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。 上記自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。 上記自動変速機に備えられた共用回転部材を図1の矢印A方向から見た図である。 図3の矢印IVに沿う上記自動変速機の反エンジン側端部の断面図である。 図3の矢印Vに沿う上記自動変速機の反エンジン側端部の断面図である。 図3の矢印VIに沿う上記自動変速機の反エンジン側端部の断面図である。 図3の中央部の拡大図である。 上記自動変速機に備えられた共通部材を図1の矢印A方向から見た図である。 図5の要部拡大図である。 図6の要部拡大図である。 (a),(b),(c)はそれぞれ第1・第2・第3クラッチのピストンの単体の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。
以下、図面に基き本発明の実施形態を説明する。
(1)全体構成
図1は、本実施形態に係る自動変速機1の構成を示す骨子図である。自動変速機1は、変速機ケース2内に、相互に同一軸心上に配置された、エンジン側から延びる入力軸3と、出力ギヤ4と、第1〜第4の4つのプラネタリギヤセット(以下「PGS」と表記する)11〜14と、第1・第2の2つのブレーキ21,22と、第1〜第3の3つのクラッチ31〜33とを備える。本実施形態では、反エンジン側が軸方向の一端側、エンジン側が軸方向の他端側である。
変速機ケース2は、外周壁2aと、外周壁2aのエンジン側端部に設けられた第1中間壁2bと、第1中間壁2bの反エンジン側に設けられた第2中間壁2cと、外周壁2aの軸方向中間部に設けられた第3中間壁2dと、外周壁2aの反エンジン側端部に設けられた側壁2eと、側壁2eの中央部からエンジン側に延設されたボス部2fと、第2中間壁2cの内周側端部から反エンジン側に延設された円筒部2gとを有する。
4つのPGS11〜14は、エンジン側から、第1PGS11、相互に径方向に重ねて配置された内周側の第2PGS12及び外周側の第3PGS13、第4PGS14の順に備えられている。4つのPGS11〜14は、いずれも、キャリヤ11c〜14cに支持されたピニオン(図示せず)がサンギヤ11s〜14sとリングギヤ11r〜14rとに直接噛合するシングルピニオン型である。
2段に重ねて配置された第2PGS12のリングギヤ12r及び第3PGS13のサンギヤ13sが溶接や焼嵌め等により一体化されて(一体回転要素7)常時連結されている。第1PGS11のサンギヤ11s及び第2PGS12のサンギヤ12s、第1PGS11のリングギヤ11r及び第4PGS14のキャリヤ14c、第1PGS11のキャリヤ11c及び第3PGS13のキャリヤ13cがそれぞれ常時連結されている。入力軸3が第2PGS12のキャリヤ12cに、出力ギヤ4が第1PGS11のキャリヤ11c及び第3PGS13のキャリヤ13cにそれぞれ常時連結されている。出力ギヤ4はベアリング6を介して変速機ケース2の円筒部2gに回転自在に支持されている。
第4PGS14のサンギヤ14sに第1回転部材81が連結され、反エンジン側に延設されている。第3PGS13のリングギヤ13rに第2回転部材82が連結され、反エンジン側に延設されている。一体回転要素7に第3回転部材83が連結され、反エンジン側に延設されている。第2PGS12のキャリヤ12cに入力軸3を介して第4回転部材84が連結されている。
2つのブレーキ21,22のうち、第1ブレーキ21は変速機ケース2の第1中間壁2bに配設され、第2ブレーキ22は第3中間壁2dに配設されている。第1・第2ブレーキ21,22は、それぞれ、シリンダ21i,22iと、シリンダ21i,22iに嵌合されたピストン21p,22pと、シリンダ21i,22i及びピストン21p,22pで画成される作動油圧室21a,22aとを有し、作動油圧室21a,22aに油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、第1ブレーキ21は第1PGS11のサンギヤ11s及び第2PGS12のサンギヤ12sを変速機ケース2に固定し、第2ブレーキ22は第4PGS14のリングギヤ14rを変速機ケース2に固定する。
3つのクラッチ31〜33は、変速機ケース2内の反エンジン側端部(すなわち自動変速機1の一端部)に配設されている。3つのクラッチ31〜33は、軸方向の同じ位置で、第1クラッチ31の内周側に第2クラッチ32が位置し、第2クラッチ32の内周側に第3クラッチ33が位置するように、相互に径方向に重ねて配置されている。
第1クラッチ31は、第4PGS14のサンギヤ14sと、第3PGS13のリングギヤ13rとを断接する。言い換えると、上記サンギヤ14sに連結された第1回転部材81と、上記リングギヤ13rに連結された第2回転部材82との接続状態を切り換える。
第2クラッチ32は、第4PGS14のサンギヤ14sと、一体回転要素7(すなわち第2PGS12のリングギヤ12r及び第3PGS13のサンギヤ13s)とを断接する。言い換えると、上記サンギヤ14sに連結された第1回転部材81と、上記一体回転要素7に連結された第3回転部材83との接続状態を切り換える。
第3クラッチ33は、第4PGS14のサンギヤ14sと、入力軸3及び第2PGS12のキャリヤ12cとを断接する。言い換えると、上記サンギヤ14sに連結された第1回転部材81と、入力軸3を介して上記キャリヤ12cに連結された第4回転部材84との接続状態を切り換える。
その場合に、第1回転部材81は、第1クラッチ31で第2回転部材82との接続状態が切り換えられ、第2クラッチ32で第3回転部材83との接続状態が切り換えられ、第3クラッチ33で第4回転部材84との接続状態が切り換えられる。つまり、第1回転部材81は、各クラッチ31〜33が接続状態を切り換える2つの回転部材のうちの共通する一方の回転部材である。そのため、第1〜第3クラッチ31〜33よりも反エンジン側に、変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eに近接して、軸心と直交する壁部を有する共用回転部材5を配置し、この共用回転部材5に第1回転部材81を連結している。共用回転部材5は3つのクラッチ31〜33で共用されるものであり、各クラッチ31〜33のシリンダ、ピストン、作動油圧室、作動油圧通路、遠心バランス室、遠心バランス室構成部材等が共用回転部材5に支持される。
以上のように、この自動変速機1は、4つのPGS11〜14と、2つのブレーキ21,22と、3つのクラッチ31〜33とを備え、図2の締結表に示すように、5つの摩擦締結要素から3つの摩擦締結要素を選択的に締結(○印)することにより、前進1〜8速と後退速とが達成される。図2において、CL1〜CL3は第1〜第3クラッチ31〜33を示し、BR1,BR2は第1・第2ブレーキ21,22を示す。
(2)特徴的構成
以下、図3〜図10を参照して本実施形態の特徴部分を説明する。図3は、上記共用回転部材5を図1の矢印A方向から見た図、図4〜図6は、それぞれ図3の矢印IV,V,VIに沿う上記自動変速機1の反エンジン側端部の断面図、図7は、図3の中央部の拡大図、図8は、上記自動変速機1に備えられた共通部材8を図1の矢印A方向から見た図、図9・図10は、それぞれ図5・図6の要部拡大図、図11(a),(b),(c)は、それぞれ第1・第2・第3クラッチのピストンの単体の断面図である。
共用回転部材5は、図3に示すように、円環状の壁部5xを有する。壁部5xの内周部(中央の円形開口の縁部)に、図4に示すように、外側円筒部5dと内側円筒部5eとが形成されている。外側円筒部5dは壁部5xの一方の面から垂直に延設され、内側円筒部5eは壁部5xの他方の面から外側円筒部5dよりも長く垂直に延設されている。変速機ケース2のボス部2fに、外側円筒部5dが反エンジン側に位置し、内側円筒部5eがエンジン側に位置するように、外側円筒部5d及び内側円筒部5eが外嵌されている。これにより、共用回転部材5が変速機ケース2のボス部2fに回転自在に支持されている。また、外側円筒部5dの反エンジン側の端部と変速機ケース2の側壁2eとの間にベアリング9が介設されている。これにより、共用回転部材5がベアリング9を介して変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eで支持されている。なお、ボス部2fの内周面に入力軸3の反エンジン側の端部が回転自在に支持されている。
図3に示すように、壁部5xは、外側円筒部5dが形成された面(反エンジン側の面)において、厚壁部5aと薄壁部5bとを含む。厚壁部5aは壁部5xの内周部から外周部まで径方向に延びる四角柱状に形成され、6つの厚壁部5aが共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(60°間隔)で放射状に配置されている。薄壁部5bは、隣接する厚壁部5aと厚壁部5aとの間の扇形の部分であり、図5に示すように、壁部5xが反エンジン側からエンジン側に凹陥されることにより形成されている。すなわち、壁部5xの反エンジン側の面においては、6つの厚壁部5aが相互に周方向に並ぶように配置され、6つの厚壁部5aと6つの薄壁部5bとが周方向に交互に配置されている。
図3に示すように、壁部5xの外周部に、連結部5cが形成されている。連結部5cは、共用回転部材5が第1回転部材81にスプライン係合によって連結される部分である。連結部5cは、図4に示すように、壁部5xの外周部よりもさらに径方向外側の位置においてエンジン側に突設されている。
図4及び図9に示すように、壁部5xのエンジン側に3つのクラッチ31〜33が配設され、各クラッチ31〜33のシリンダ31i〜33i(図5参照)、ピストン31p〜33p、作動油圧室31a〜33a、作動油圧通路31c〜33c(図3参照)、遠心バランス室31j〜33j、遠心バランス室構成部材31k〜33k等が共用回転部材5に形成され又は支持されている。
すなわち、図1に示すように、第4PGS14のサンギヤ14sに連結された第1回転部材81は、反エンジン側に延設された後、図4及び図5に示すように、変速機ケース2のボス部2fないし共用回転部材5の内側円筒部5eの手前(すなわちエンジン側)で径方向外周側に曲折されて延び(径方向延設部81a)、変速機ケース2の外周壁2aに近接した位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部81b)、変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eに近接した位置で終わっている。そして、この第1回転部材81の上記軸方向延設部81bに共用回転部材5の連結部5cがスプライン係合されて、第1回転部材81に共用回転部材5が連結されている。
ここで、第1回転部材81の上記径方向延設部81aは、軸心近傍から外周側の第1クラッチ31まで延びるので比較的大径である。また、共用回転部材5は、外周側の第1クラッチ31から軸心近傍まで延びるので比較的大径であるうえ、3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pを支持して重量物である。そして、これらの第1回転部材81の径方向延設部81aと共用回転部材5(ピストン31p〜33pを支持する大径の部分)とが第1回転部材81の軸方向延設部81bと共用回転部材5の連結部5cとを介して相互に連結され一体化されている。そのため、共用回転部材5が変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eで支持されることにより、第1〜第3クラッチ31〜33を取り巻く第1回転部材81の部分全体が共用回転部材5と共に上記側壁2eで支持されることになる。
第1回転部材81の軸方向延設部81bは、第1クラッチ31の第1回転部材81側(エンジン側からのトルクの流れの下流側)の摩擦板31xを内周側で保持するドラム部材である。すなわち、第1回転部材81の軸方向延設部81bは、第1回転部材81の径方向延設部81aの外周部と共用回転部材5の外周部とを連結する連結部材としての機能と、第1クラッチ31の第1回転部材81側の摩擦板31xを保持するドラム部材としての機能とを兼ね備えている。そのため、図5に示すように、第1回転部材81の軸方向延設部81bの内周面にスプラインが形成され、図9に示すように、第1回転部材81の軸方向延設部81bに上記摩擦板31xがスプライン係合されて保持されている。これにより、第1クラッチ31に第1回転部材81の回転が入力される。なお、上記スプラインは、第1回転部材81の軸方向延設部81bと共用回転部材5の連結部5cとのスプライン係合に兼用されている。
図1に示すように、第3PGS13のリングギヤ13rに連結された第2回転部材82は、第1回転部材81の内周側で反エンジン側に延設された後、図4及び図5に示すように、第1回転部材81よりもわずかに反エンジン側の位置で径方向外周側に曲折されて延び(径方向延設部82a)、第1回転部材81よりも内周側の位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部82b)、第1回転部材81よりもエンジン側の位置で終わっている。
第2回転部材82の軸方向延設部82bは、第1クラッチ31の第2回転部材82側(エンジン側からのトルクの流れの上流側)の摩擦板31yを外周側で保持するドラム部材である。そのため、図9に示すように、第2回転部材82の軸方向延設部82bに上記摩擦板31yがスプライン係合されて保持されている。これにより、第1クラッチ31に第2回転部材82の回転が入力される。
図1に示すように、一体回転要素7に連結された第3回転部材83は、第2回転部材82の内周側で反エンジン側に延設された後、図4及び図5に示すように、第2回転部材82よりもわずかに反エンジン側の位置で径方向外周側に曲折されて延び(径方向延設部83a)、第2回転部材82よりもわずかに内周側の位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部83b)、第2回転部材82と略同じ位置で終わっている。
第3回転部材83の軸方向延設部83bは、第2クラッチ32の第3回転部材83側(エンジン側からのトルクの流れの上流側)の摩擦板32yを内周側で保持するドラム部材である。そのため、図9に示すように、第3回転部材83の軸方向延設部83bに上記摩擦板32yがスプライン係合されて保持されている。これにより、第2クラッチ32に第3回転部材83の回転が入力される。
図1に示すように、第2PGS12のキャリヤ12cに入力軸3を介して連結された第4回転部材84は、図4及び図5に示すように、第3回転部材83よりもわずかに反エンジン側の位置で径方向外周側に延び(径方向延設部84a)、第3回転部材83よりも内周側の位置で軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部84b)、第3回転部材83と略同じ位置で終わっている。
第4回転部材84の軸方向延設部84bは、第3クラッチ33の第4回転部材84側(エンジン側からのトルクの流れの上流側)の摩擦板33yを外周側で保持するドラム部材である。そのため、図4に示すように、第4回転部材84の軸方向延設部84bに上記摩擦板33yがスプライン係合されて保持されている(図9参照)。これにより、第3クラッチ33に第4回転部材84の回転が入力される。
次に、図5及び図9に示すように、共用回転部材5の壁部5xのエンジン側の面に、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kと、第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kとが設けられている。両構成部材31k,32kとも、軸方向に延びる軸方向延設部311k,321k(図10参照)と、軸方向延設部311k,321kのエンジン側端部(一端部)から径方向外周側に延びる径方向延設部312k,322k(図10参照)とを有し、径方向の断面形状がL字状の環状部材に形成されている。そして、軸方向延設部311k,321kの反エンジン側端部(他端部)が共用回転部材5の壁部5xに溶接等により結合されている。第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kは、比較的大径であり、壁部5xの外周側に配置されている。第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kは、比較的小径であり、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kの内周側に配置されている。
図9に示すように、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kと、共用回転部材5の壁部5xと、共用回転部材5の連結部5cとにより画成される第1クラッチ31の収容空間内に、第1クラッチ31のピストン31pが軸方向に移動可能に収容されている。ピストン31pは、図11(a)に示すように、径方向に延びる仕切部(A部)311pと、仕切部311pの外周端部(一端部)から摩擦板31x,31y側に軸方向に延びる押圧部(B部)312pと、仕切部311pの内周端部(他端部)から反摩擦板31x,31y側に軸方向に延びる安定支持部(C部)313pとを有し、径方向の断面形状がS字状の環状部材に形成されている。
仕切部311pは上記第1クラッチ31の収容空間を軸方向に仕切る部分であり、押圧部312pは第1クラッチ31の摩擦板31x,31yを押圧する部分であり、安定支持部313pは第1クラッチ31のピストン31pの支持を安定させる部分である。
ピストン31pが上記第1クラッチ31の収容空間内に収容されることにより、図9に示すように、ピストン31pの仕切部311pと共用回転部材5の壁部5xとの間に第1クラッチ31の作動油圧室31aが形成され、ピストン31pの仕切部311pと遠心バランス室構成部材31kとの間に第1クラッチ31の遠心バランス室31jが形成される。つまり、第1クラッチ31の作動油圧室31aと遠心バランス室31jとは第1クラッチ31のピストン31pを挟んで対向する。
図9に示すように、第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kと、共用回転部材5の壁部5xと、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kとにより画成される第2クラッチ32の収容空間内に、第2クラッチ32のピストン32pが軸方向に移動可能に収容されている。ピストン32pは、図11(b)に示すように、径方向に延びる仕切部(A部)321pと、仕切部321pの外周端部(一端部)から摩擦板32x,32y側に軸方向に延びる押圧部(B部)322pと、仕切部321pの内周端部(他端部)から反摩擦板32x,32y側に軸方向に延びる安定支持部(C部)323pと、仕切部321pの外周端部から反摩擦板32x,32y側に軸方向に延びる対称形成部(D部)324pとを有し、径方向の断面形状がh字状の環状部材に形成されている。
仕切部321pは上記第2クラッチ32の収容空間を軸方向に仕切る部分であり、押圧部322pは第2クラッチ32の摩擦板32x,32yを押圧する部分であり、安定支持部323pは第2クラッチ32のピストン32pの支持を安定させる部分であり、対称形成部(D部)324pは上記仕切部321pで仕切られる第2クラッチ32の作動油圧室32aと遠心バランス室32jとを対称に形成する部分である。
ピストン32pが上記第2クラッチ32の収容空間内に収容されることにより、図9に示すように、ピストン32pの仕切部321pと共用回転部材5の壁部5xとの間に第2クラッチ32の作動油圧室32aが形成され、ピストン32pの仕切部321pと遠心バランス室構成部材32kとの間に第2クラッチ32の遠心バランス室32jが形成される。つまり、第2クラッチ32の作動油圧室32aと遠心バランス室32jとは第2クラッチ32のピストン32pを挟んで対向する。
第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kのエンジン側の面に共通部材8が一体に結合されている。この共通部材8は、第2クラッチ32の第1回転部材81側(エンジン側からのトルクの流れの下流側)の摩擦板32xを保持するドラム部材と、第3クラッチ33の第1回転部材31側(エンジン側からのトルクの流れの下流側)の摩擦板33xを保持するドラム部材とが一体化されたものである。そのため、図8に示すように、共通部材8の外周面と内周面とにスプラインが交互に形成され、共通部材8の外周側に第2クラッチ32の摩擦板32xがスプライン係合されて保持されると共に、共通部材8の内周側に第3クラッチ33の摩擦板33xがスプライン係合されて保持されている。これにより、第2クラッチ32及び第3クラッチ33にそれぞれ第1回転部材81の回転が入力される。なお、図3に、共通部材8の配置位置をそのピッチ円(鎖線)で示した。
図5に示すように、共用回転部材5の内側円筒部5eに、第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kが設けられている。この構成部材33kは、軸方向に延びる軸方向延設部332k(図6参照)と、軸方向延設部332kのエンジン側端部(一端部)から径方向内周側に延びる内周側径方向延設部331k(図6参照)と、軸方向延設部332kの反エンジン側端部(他端部)から径方向外周側に延びる外周側径方向延設部333k(図6参照)とを有し、径方向の断面形状がクランク状の環状部材に形成されている。そして、内周側径方向延設部331kの内周側端部が共用回転部材5の内側円筒部5eにスナップリングにより結合されている。
図5に示すように、第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kと、共用回転部材5の壁部5xと、共用回転部材5の内側円筒部5eと、第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kとにより画成される第3クラッチ33の収容空間内に、第3クラッチ33のピストン33pが軸方向に移動可能に収容されている。ピストン33pは、図11(c)に示すように、径方向に延びる仕切部(A部)331pと、仕切部331pの外周端部(一端部)から摩擦板33x,33y側に軸方向に延びる押圧部(B部)332pと、仕切部331pの外周端部から反摩擦板33x,33y側に軸方向に延びる対称形成部(D部)334pとを有し、径方向の断面形状がT字状の環状部材に形成されている。
仕切部331pは上記第3クラッチ33の収容空間を軸方向に仕切る部分であり、押圧部332pは第3クラッチ33の摩擦板33x,33yを押圧する部分であり、対称形成部(D部)334pは上記仕切部331pで仕切られる第3クラッチ33の作動油圧室33aと遠心バランス室33jとを対称に形成する部分である。
ピストン33pが上記第3クラッチ33の収容空間内に収容されることにより、図5に示すように、ピストン33pの仕切部331pと共用回転部材5の壁部5xとの間に第3クラッチ33の作動油圧室33aが形成され、ピストン33pの仕切部331pと遠心バランス室構成部材33kとの間に第3クラッチ33の遠心バランス室33jが形成される。つまり、第3クラッチ33の作動油圧室33aと遠心バランス室33jとは第3クラッチ33のピストン33pを挟んで対向する。
図4及び図9に示すように、第2・第3クラッチ32,33の作動油圧室32a,33a内にシールプレート32u,33uが配設されている。両シールプレート32u,33uとも、共用回転部材5の壁部5xに溶接等により結合されており、その外周部に装着されたリップシールにより作動油圧室32a,33aを油密にシールする。上記リップシールはピストン32p,33pの対称形成部324p,334pに内周側から常時圧接し、ピストン32p,33pの軸方向の移動中も連続してピストン32p,33pに摺接する。そのため、シールプレート32u,33uはピストン32p,33pの軸方向の移動中も安定して作動油圧室32a,33aをシールする。また、シールプレート32u,33uは、リップシールを介して常時ピストン32p,33pに接触するため、作動油圧室32a,33aをシールする機能に加えて、ピストン32p,33pを支持する機能を併せ持つ。
図4及び図9に示すように、各クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33a及び遠心バランス室31j〜33jは、ピストン31p〜33p、遠心バランス室構成部材31k〜33k、及びシールプレート32u,33uに装着されたリップシールやOリングやシールリング等で油密にシールされている。
以上のような構成により、本実施形態では、図4及び図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(図4の矢印B参照)。
また、図4及び図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている。
また、図4及び図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33j及び遠心バランス室構成部材31k〜33kは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(図5の矢印E参照)。
また、図4及び図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の摩擦板31x,31y〜33x,33yは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(図5の矢印F参照)。
なお、図9において、符号31z,32z,33zは、リテーナプレートを示している。第2クラッチ32のリテーナプレート32z及び第3クラッチ33のリテーナプレート33zは、単一のスナップリングにより共通部材8に組み付けられている。
次に、第1クラッチ31を例に取り、第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aに油圧を供給するための油路について説明する。
図3及び図4に示すように、共用回転部材5の壁部5xの厚壁部5aの内部に、厚壁部5aと同様、径方向に延びる作動油圧通路31cが形成されている。作動油圧通路31cの外周側に作動油圧室31aに通じる開口31bが設けられている。図4及び図7に示すように、作動油圧通路31cの内周端は接続通路31dに通じている。接続通路31dは共用回転部材5の内側円筒部5e及び外側円筒部5dに亘って形成され、軸方向に延びている。接続通路31dの軸方向の所定位置に内側円筒部5eの内周面に開口する連通路31eが設けられている。
上記連通路31eと同じ軸方向の位置において、変速機ケース2のボス部2fの外周面に周方向に延びる凹溝31f(図6参照)が形成されている。凹溝31fの周方向の所定位置に径方向内周側に延びる導入通路31gが設けられている。導入通路31gの内周端はボス部通路31hに通じている。ボス部通路31hはボス部2fの外周面と内周面との間の周壁部に形成され、軸方向に延びている。
以上のような構成により、図外の油圧回路からボス部通路31hに油圧が供給されると、その油圧は、変速機ケース2側の導入通路31g及び凹溝31f(図6参照)と、共用回転部材5側の連通路31e、接続通路31d、作動油圧通路31c、及び開口31bとを経由して、作動油圧室31aに供給される。この油圧の供給は凹溝31fの存在により共用回転部材5の回転中も途切れることがない。そして、共用回転部材5側の連通路31e、接続通路31d、作動油圧通路31c、及び開口31bは、図3及び図7に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して点対称に(180°間隔で)2組設けられている。
第2クラッチ32及び第3クラッチ33も同様である。すなわち、第2クラッチ32の作動油圧通路32cは、図3において第1クラッチ31の作動油圧通路31cの60°右の厚壁部5aの内部に形成され、第3クラッチ33の作動油圧通路33cは、図3において第2クラッチ32の作動油圧通路32cの60°右の厚壁部5aの内部に形成されている。また、図3及び図4に示すように、第2クラッチ32の開口32bは、第2クラッチ32の作動油圧室32aに通じるように第1クラッチ31の開口31bよりも内周側に位置し、第3クラッチ33の開口33bは、第3クラッチ33の作動油圧室33aに通じるように第2クラッチ32の開口32bよりも内周側に位置している。
変速機ケース2側においては、第2クラッチ32のボス部通路32hは、図7において第1クラッチ31のボス部通路31hの90°右に形成され、第3クラッチ33のボス部通路33hは、図7において第2クラッチ32のボス部通路32hの90°右に形成されている。また、図4及び図6に示すように、第2クラッチ32の導入通路32g及び凹溝32fは、第1クラッチ31の導入通路31g及び凹溝31fよりも軸方向の反エンジン側に位置し、第3クラッチ33の導入通路33g及び凹溝33fは、第2クラッチ32の導入通路32g及び凹溝32fよりも軸方向の反エンジン側に位置している。そして、上記凹溝32f,33fと同じ軸方向の位置に、共用回転部材5側の接続通路32d,33d(図7参照)に通じる第2クラッチ32の連通路32e及び第3クラッチ33の連通路33eがそれぞれ設けられている。
以上のような構成により、図外の油圧回路からボス部通路32h,33hに油圧が供給されると、その油圧は、導入通路32g,33g、凹溝32f,33f、連通路32e,33e、接続通路32d,33d、作動油圧通路32c,33c、及び開口32b,33bを経由して、作動油圧室32a,33aに共用回転部材5の回転中も途切れることなく供給される。
また、以上のような構成により、本実施形態では、図3及び図4に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aに通じる作動油圧通路31c〜33cは、共用回転部材5の壁部5x、より詳しくは厚壁部5aに相互に周方向に並ぶように設けられている(図4の矢印C参照)。
次に、第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jに作動油を供給するための油路について説明する。
図7において、第3クラッチ33のボス部通路33hの90°右に遠心バランス室用のボス部通路34hが形成されている。図6に示すように、第1クラッチ31の凹溝31fよりも軸方向のエンジン側に遠心バランス室用の凹溝34fが位置し、図5及び図7に示すように、上記ボス部通路34hと上記凹溝34fとを遠心バランス室用の導入通路34gが連通している。
図5に示すように、上記凹溝34fと同じ軸方向の位置において、共用回転部材5の内側円筒部5eに連通路34mが形成されている。この連通路34mは、共用回転部材5の内側円筒部5eを内周面側から外周面側に貫通して第3クラッチ33の遠心バランス室33jに開口する。この連通路34mは、図7に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して点対称に(180°間隔で)2つ設けられている。
図9に示すように、第3クラッチ33のピストン33pの上部に、第3クラッチ33の遠心バランス室33jに開口する連通路34nが形成され、第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kの下部に、上記連通路34nに通じ、かつ第2クラッチ32の遠心バランス室32jに開口する連通路34oが形成されている。同様に、第2クラッチ32のピストン32pの上部に、第2クラッチ32の遠心バランス室32jに開口する連通路34tが形成され、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kの下部に、上記連通路34tに通じ、かつ第1クラッチ31の遠心バランス室31jに開口する連通路34vが形成されている。
以上のような構成により、図外の作動油供給源からボス部通路34h(図5参照)に作動油が供給されると、その作動油は、共用回転部材5の回転による遠心力で、導入通路34g、凹溝34f(図6参照)、及び遠心バランス室用連通路34m,34n,34o,34t,34vを経由して、第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jに供給される。
なお、図6に示すように、変速機ケース2のボス部2fの外周面には、以上の4つの凹溝31f〜34fをそれぞれ油密にシールするための5つのシールリングが装着されている。
次に、第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pを解放側に付勢するリターンスプリングについて説明する。
まず、第1クラッチ31については、図5及び図9に示すように、皿バネ40がリターンスプリングとして用いられている。この皿バネ40は共用回転部材5の壁部5xの薄壁部5bに配設されている。より詳しくは、薄壁部5bの反エンジン側の面の外周側において1つの薄壁部5bの周方向の中央部に配設されている。皿バネ40は、図3に示すように、平坦部41と、平坦部41の両端から相互に同じ方向に延びる一対の傾斜部42とを有し、全体形状がコ字状に形成されている。皿バネ40は、図9に示すように、平坦部41が外周側に位置して薄壁部5bから離間し、傾斜部42が内周側に位置してその先端が薄壁部5bに形成された隆起部5hに係止した状態で、厚壁部5a(図5参照)よりも反エンジン側に突出しないように配設されている。
図9に示すように、第1クラッチ31のピストン31pの反エンジン側の端部(より詳しくは安定支持部313pの反エンジン側の端部)に反エンジン側に延びるピン形状の延設部31qが設けられている。この延設部31qは薄壁部5bに形成された貫通孔5fを挿通して薄壁部5bの反エンジン側に突出し、さらに皿バネ40の平坦部41を貫通している。そして、延設部31qの反エンジン側の端部がカシメられて拡径されることにより(カシメ部31r)、延設部31qの反エンジン側の端部が平坦部41に係止されている。
以上のような構成により、皿バネ40は、延設部31qを介して第1クラッチ31のピストン31pを常に反エンジン側(第1クラッチ31の解放側)に付勢するリターンスプリングとして機能する。そして、皿バネ40は、図3に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(120°間隔)で3つ設けられている。
なお、図9に示すように、薄壁部5bの貫通孔5fを挿通する延設部31qの部分には、作動油圧室31aの油圧の漏れを防ぐためのシール部材31sが巻着されている。また、図9には、作動油圧室31aに油圧が供給されてピストン31pが締結側(エンジン側)に移動したときの皿バネ40が撓んだ状態を仮想線で示してある。
第2クラッチ32も同様である。すなわち、図6及び図10に示すように、第2クラッチ32においても、皿バネ50がリターンスプリングとして用いられている。この皿バネ50は、図3に示すように、第1クラッチ31の皿バネ40よりも内周側に配設されている。皿バネ50は、図10に示すように、平坦部51が外周側に位置して薄壁部5bから離間し、傾斜部52が内周側に位置してその先端が薄壁部5bに形成された隆起部5iに係止した状態で、厚壁部5a(図6参照)よりも反エンジン側に突出しないように配設されている。
図10に示すように、第2クラッチ32のピストン32pの反エンジン側の端部(より詳しくは対称形成部324pの反エンジン側の端部)に反エンジン側に延びるピン形状の延設部32qが設けられている。この延設部32qは薄壁部5bに形成された貫通孔5gを挿通して薄壁部5bの反エンジン側に突出し、さらに皿バネ50の平坦部51を貫通している。そして、延設部32qの反エンジン側の端部がカシメられて拡径されることにより(カシメ部32r)、延設部32qの反エンジン側の端部が平坦部51に係止されている。
以上のような構成により、皿バネ50は、延設部32qを介して第2クラッチ32のピストン32p(図9参照)を常に反エンジン側(第2クラッチ32の解放側)に付勢するリターンスプリングとして機能する。そして、皿バネ50は、図3に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(120°間隔)で3つ設けられている。
なお、図10には、作動油圧室32aに油圧が供給されてピストン32pが締結側(エンジン側)に移動したときの皿バネ50が撓んだ状態を仮想線で示してある。
以上のような構成により、本実施形態では、図5、図6、図9及び図10に示すように、第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pを解放側に付勢する皿バネ40,50が共用回転部材5の壁部5xの薄壁部5bに厚壁部5aの内部に形成された作動油圧通路31c〜33cと軸方向の同じ位置で作動油圧通路31c〜33cと周方向に並ぶように配設されている(図5及び図6の矢印D参照)。
また、以上のような構成により、本実施形態では、図3に示すように、皿バネ40,50と作動油圧通路31c〜33cとが周方向に交互に配設されている。
また、以上のような構成により、本実施形態では、一部繰り返しになるが、図3に示すように、共用回転部材5の壁部5xの厚壁部5a、薄壁部5b、厚壁部5aの内部に形成された作動油圧通路31c〜33c、薄壁部5bに配設された皿バネ40,50が共用回転部材5の回転中心に対して等間隔で配置され、また、種々交互に配置されている。このことは、第1クラッチ31の作動油圧通路31c、第2クラッチ32の作動油圧通路32c、第3クラッチ33の作動油圧通路33c、第1クラッチ31の皿バネ40、第2クラッチ32の皿バネ40についても同様である。
第3クラッチ33については、図4に示すように、コイルスプリング60がリターンスプリングとして用いられている。図4から明らかなように、第3クラッチ33には、径方向において摩擦板33x,33y(図9参照)と内側円筒部5eとの間に軸方向に長いデッドスペースがある。そして、このデッドスペースに合わせて第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kが断面クランク状に形成され、ピストン33pと遠心バランス室構成部材33kとの間の軸方向に長い遠心バランス室33jに軸方向の占有スペースが大きいコイルスプリング60が圧縮された状態で配設されている。このコイルスプリング60は12個が共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(30°間隔)で配置されている。
(3)作用
以上説明したように、本実施形態に係る自動変速機1は、例えば図4に示すように、同一軸心上に第1〜第3の3つのクラッチ31〜33が径方向に重ねて配置されている。そして、上記3つのクラッチ31〜33で共用される共用回転部材5が上記クラッチ31〜33よりも軸方向の反エンジン側に配置され、上記共用回転部材5に、上記3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pと、上記ピストン31p〜33pを挟んで作動油圧室31a〜33aと対向する上記3つのクラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jの構成部材31k〜33k(図5参照)とが、それぞれ、径方向に重ねて配置されるように支持されている。
上記共用回転部材5は上記軸心と直交する平面に沿って形成された壁部5xを有する。そして、3つのクラッチ31〜33のうち第1・第2クラッチ31,32の遠心バランス室構成部材31k,32kは、図10に示すように、軸方向に延びる軸方向延設部311k,321kと、上記軸方向延設部311k,321kのエンジン側端部から径方向外周側に延びる径方向延設部312k,322kとを有し、上記軸方向延設部311k,321kの反エンジン側端部が上記共用回転部材5の壁部5xに結合されている。そして、第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pは、図9に示すように、上記第1・第2クラッチ31,32の遠心バランス室構成部材31k,32k及び上記共用回転部材5の壁部5xにより画成される第1・第2クラッチ31,32の収容空間内に軸方向に移動可能に収容されている。
この構成によれば、軸心と直交する平面に沿って形成された共用回転部材5の壁部5xに第1・第2クラッチ31,32の遠心バランス室構成部材31k,32kが径方向に重ねて配置されるように結合されているので、上記遠心バランス室構成部材31k,32kは軸方向に並べて配置された状態とならない。また、第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pが上記遠心バランス室構成部材31k,32k及び上記共用回転部材5の壁部5xにより画成される第1・第2クラッチ31,32の収容空間内に収容されているので、上記ピストン31p,32pもまた軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、第1・第2クラッチ31,32をピストン31p,32p及び遠心バランス室構成部材31k,32kを含めて軸方向にコンパクトにレイアウトして変速機1の軸方向寸法の大型化を回避しつつ多段化を可能とした自動変速機1が提供される。
本実施形態では、例えば図4に示すように、上記共用回転部材5の壁部5xの内周部に変速機ケース2のボス部2fに外嵌される内側円筒部5eが上記ピストン31p〜33p及び遠心バランス室構成部材31k〜33kの配置側に軸方向に延設されている。そして、3つのクラッチ31〜33のうち内周側の第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kは、図6に示すように、軸方向に延びる軸方向延設部332kと、上記軸方向延設部332kのエンジン側端部から径方向内周側に延びる内周側径方向延設部331kと、上記軸方向延設部332kの反エンジン側端部から径方向外周側に延びる外周側径方向延設部333kとを有し、上記内周側径方向延設部331kの内周側端部が上記共用回転部材5の内側円筒部5eに結合されている。そして、上記3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pのうち内周側の第3クラッチ33のピストン33pは、図5に示すように、上記第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33k、上記共用回転部材5の壁部5x、及び上記共用回転部材5の内側円筒部5eにより画成される第3クラッチ33の収容空間内に軸方向に移動可能に収容されている。
この構成によれば、内周側の第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kが共用回転部材5の内側円筒部5eに結合され、他の第1・第2クラッチ31,32の遠心バランス室構成部材31k,32kが共用回転部材5の壁部5xに結合される場合であっても、第1〜第3クラッチ31〜33をピストン31p〜33p及び遠心バランス室構成部材31k〜33kを含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
本実施形態では、上記第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pは、図11(a)〜図11(c)に示すように、径方向に延び、第1〜第3クラッチ31〜33の収容空間を軸方向に仕切る仕切部311p,321p,331pと、上記仕切部311p,321p,331pの外周端部から摩擦板31x,31y〜33x,33y側に軸方向に延び、摩擦板31x,31y〜33x,33yを押圧する押圧部312p,322p,332pとを有する。そして、上記共用回転部材5の壁部5xと上記仕切部311p,321p,331pとの間に第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aが形成され、上記遠心バランス室構成部材31k〜33kと上記仕切部311p,321p,331pとの間に第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jが形成されている。
本実施形態では、第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pの構造がピストンとして最小限必要な上記のような基本的構造を備えた上で、上記第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pは、図11(a)及び図11(b)に示すように、上記仕切部311p,321pの内周端部から反摩擦板31x,31y〜32x,32y側に軸方向に延びる安定支持部313p,323pをさらに有する。
この構成によれば、第1・第2クラッチ31,32の収容空間内に収容された第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pは、上記安定支持部313p,323pの存在により、遠心バランス室構成部材31k,32kとの接触面積が拡大する。そのため、ピストン31p,32pの支持が安定し、第1・第2クラッチ31,32の締結・解放時に、ピストン31p,32pが傾いたり拗れたりせず、安定・円滑に軸方向に移動する。
本実施形態では、第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pの構造がピストンとして最小限必要な上記のような基本的構造を備えた上で、上記第2・第3クラッチ32,33のピストン32p,33pは、図11(b)及び図11(c)に示すように、上記仕切部321p,331pの外周端部から反摩擦板32x,32y〜33x,33y側に軸方向に延びる対称形成部324p,334pをさらに有する。
この構成によれば、第2・第3クラッチ32,33においては、摩擦板32x,32y〜33x,33yを押圧する押圧部322p,332pと反対側に延びる上記対称形成部324p,334pの存在により、仕切部321p,331pで仕切られる作動油圧室32a,33aと遠心バランス室32j,33jとが軸心と直交する平面に対して対称に形成される。具体的に、対称形成部324p,334pによって定まる作動油圧室32a,33aの外周側端部の径方向の位置と、押圧部322p,332pによって定まる遠心バランス室32j,33jの外周側端部の径方向の位置とが一致する。そのため、作動油圧室32a,33aと遠心バランス室32j,33jとがピストン32p,33pを挟んで常に適正に対向してバランスよくレイアウトされる。
本実施形態では、図9に示すように、上記第2・第3クラッチ32,33の作動油圧室32a,33a内に上記対称形成部324p,334pに常時圧接するシールプレート32u,33uが配設されている。
この構成によれば、第2・第3クラッチ32,33の作動油圧室32a,33aが第2・第3クラッチ32,33のピストン32p,33pの移動中も安定してシールされる。また、このシールプレート32u,33uによって第2・第3クラッチ32,33のピストン32p,33pが支持されるので、上記ピストン32p,33pの支持がより一層安定する。
本実施形態では、図9に示すように、上記共用回転部材5の壁部5xの外周部に第1回転部材81との連結部5cが上記ピストン31p〜33p及び遠心バランス室構成部材31k〜33kの配置側に突設されている。そして、上記3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pのうち外周側の第1クラッチ31のピストン31pは、上記第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31k、上記共用回転部材5の壁部5x、及び上記共用回転部材5の連結部5cにより画成される第1クラッチ31の収容空間内に軸方向に移動可能に収容されている。ここで、第1クラッチ31のピストン31pは、図11(a)に示すように、仕切部311pと押圧部312pと安定支持部313pとを有し、対称形成部を持たない形状である。
この構成によれば、外周側の第1クラッチ31の収容空間内には共用回転部材5の壁部5xの外周部から連結部5cが突出しているのに対し、上記第1クラッチ31の収容空間内に収容される第1クラッチ31のピストン31pは対称形成部を持たないので上記連結部5cとの干渉が回避される形状である。そのため、外周側の第1クラッチ31のピストン31pは、第1クラッチ31の収容空間内に連結部5cが突出しているけれども、上記連結部5cと接触することなく、第1クラッチ31の収容空間内で円滑・良好に解放側に移動することができる。
要すれば、第1クラッチ31のピストン31pは、連結部5cを考慮した形状とすることで、連結部5cとの干渉を避けることができ、第2・第3クラッチ32,33のピストン32p,33pは、そのような連結部5cとの干渉を避けるという制約がないので、対称形成部324p,334pを持つ形状とすることができる。
本実施形態では、上記3つのクラッチ31〜33の摩擦板31x,31y〜33x,33yが軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(図5の矢印F参照)。
この構成によれば、3つのクラッチ31〜33の摩擦板31x,31y〜33x,33yが相互に径方向に離間しかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されているので、上記摩擦板31x,31y〜33x,33yは軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、3つのクラッチ31〜33を摩擦板31x,31y〜33x,33yを含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
(4)変形例
[i]上記実施形態では、第1クラッチ31のピストン31pを仕切部311pと押圧部312pと安定支持部313pとを有する断面S字状に形成したが、これに限らず、例えば安定支持部313pを持たない、仕切部311pと押圧部312pとだけを有する断面L字状に形成してもよい。その場合、リターンスプリングとしてコイルスプリングを遠心バランス室31jに配設すればよい。
第2・第3クラッチ32,33のピストン32p,33pも同様である。すなわち、第2クラッチ32のピストン32pを例えば安定支持部323pを持たない、仕切部321pと押圧部322pと対称形成部324pとを有する断面T字状に形成したり、あるいは、対称形成部324pを持たない、仕切部321pと押圧部322pと安定支持部323pとを有する断面S字状に形成したり、あるいは、これらの両方を持たない、仕切部321pと押圧部322pとだけを有する断面L字状に形成してもよい。また、第3クラッチ33のピストン33pを例えば対称形成部334pを持たない、仕切部331pと押圧部332pとだけを有する断面L字状に形成したり、あるいは、安定支持部をさらに持つ断面h字状に形成してもよい。
第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pが仕切部311p,321p,331pと押圧部312p,322p,332pとだけを有する場合、上記ピストン31p〜33pの構造がピストンとして最小限必要な基本的構造のみを備えた簡単な構造となる。
[ii]上記実施形態では、共用回転部材5を第1〜第3クラッチ31〜33よりも軸方向の反エンジン側に配置したが、これに限らず、例えば共用回転部材5を第1〜第3クラッチ31〜33よりも軸方向のエンジン側に配置してもよい。その場合のレイアウトの1例を図12に示す。図1との主な相違点は次の通りである。
・ピストン31p〜33pが共用回転部材5の反エンジン側に支持される。
・第3中間壁2dが内周側に延設され、この第3中間壁2dで共用回転部材5が支持される。
・第2〜第4回転部材82〜84がピストン31p〜33pの反エンジン側で径方向外周側に曲折される。
・第1回転部材81と第2回転部材82との接続状態を切り換える第1クラッチ31が最も内周側に位置し、第1回転部材81と第3回転部材83との接続状態を切り換える第2クラッチ32が第1クラッチ31の外周側に位置し、第1回転部材81と第4回転部材84との接続状態を切り換える第3クラッチ33が最も外周側に位置する。
[iii]上記実施形態では、3つのクラッチ31〜33のうち内周側の2つのクラッチ32,33のドラム部材を一体化したが、これに代えて、外周側の2つのクラッチ31,32のドラム部材を一体化してもよい。また、ドラム部材を一体化せず、別体のままとしてもよい。
[iv]上記実施形態では、例えば図1において、入力軸3が右側に延び、右側がエンジン側であったが、これに限らず、入力軸3が左側に延び、左側がエンジン側であってもよい。
[v]上記実施形態では、第1回転部材81がエンジン側からのトルクの流れに関して下流側の回転部材、第2〜第4回転部材82〜84が上流側の回転部材であったが、これに限らず、例えば第1回転部材81が上流側の回転部材、第2〜第4回転部材82〜84が下流側の回転部材であってもよい。
[vi]上記実施形態では、第1・第2クラッチ31,32のリターンスプリングとして皿バネを用いたが、これに限らず、コイルスプリングを用いてもよい。また、第3クラッチ33のリターンスプリングとしてコイルスプリングを用いたが、これに限らず、皿バネを用いてもよい。
1 自動変速機
2 変速機ケース
2f ボス部
5 共用回転部材
5c 連結部
5e 内側円筒部
5x 壁部
31〜33 第1〜第3クラッチ
31a〜33a 作動油圧室
31j〜33j 遠心バランス室
31k〜33k 遠心バランス室構成部材
311k 第1クラッチの遠心バランス室構成部材の軸方向延設部
312k 第1クラッチの遠心バランス室構成部材の径方向延設部
321k 第2クラッチの遠心バランス室構成部材の軸方向延設部
322k 第2クラッチの遠心バランス室構成部材の径方向延設部
331k 第3クラッチの遠心バランス室構成部材の内周側径方向延設部
332k 第3クラッチの遠心バランス室構成部材の軸方向延設部
333k 第3クラッチの遠心バランス室構成部材の外周側径方向延設部
31p〜33p ピストン
311p 第1クラッチのピストンの仕切部(A部)
312p 第1クラッチのピストンの押圧部(B部)
313p 第1クラッチのピストンの安定支持部(C部)
321p 第2クラッチのピストンの仕切部(A部)
322p 第2クラッチのピストンの押圧部(B部)
323p 第2クラッチのピストンの安定支持部(C部)
324p 第2クラッチのピストンの対称形成部(D部)
331p 第3クラッチのピストンの仕切部(A部)
332p 第3クラッチのピストンの押圧部(B部)
334p 第3クラッチのピストンの対称形成部(D部)
32u,33u シールプレート
31x〜33x 第1回転部材側の摩擦板
31y〜33y 第2〜第4回転部材側の摩擦板
81 第1回転部材(所定の回転部材)

Claims (8)

  1. 同一軸心上に複数のクラッチが径方向に重ねて配置された自動変速機であって、
    軸方向の所定位置に配置され、上記軸心と直交する平面に沿って形成された壁部を有し、上記複数のクラッチで共用される共用回転部材と、
    上記共用回転部材に径方向に重ねて配置されるように支持された上記複数のクラッチのピストン及び上記ピストンを挟んで作動油圧室と対向する遠心バランス室の構成部材とを備え、
    上記遠心バランス室構成部材は、軸方向に延びる軸方向延設部と、上記軸方向延設部の一端部から径方向外周側に延びる径方向延設部とを有し、上記軸方向延設部の他端部が上記共用回転部材の壁部に結合され、
    上記ピストンは、上記遠心バランス室構成部材及び上記共用回転部材の壁部により画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容されていることを特徴とする自動変速機。
  2. 請求項1に記載の自動変速機において、
    上記共用回転部材の壁部の内周部に変速機ケースのボス部に外嵌される円筒部が上記ピストン及び遠心バランス室構成部材の配置側に軸方向に延設され、
    上記複数のクラッチの遠心バランス室構成部材のうち内周側のクラッチの遠心バランス室構成部材は、軸方向に延びる軸方向延設部と、上記軸方向延設部の一端部から径方向内周側に延びる内周側径方向延設部と、上記軸方向延設部の他端部から径方向外周側に延びる外周側径方向延設部とを有し、上記内周側径方向延設部の内周側端部が上記円筒部に結合され、
    上記複数のクラッチのピストンのうち内周側のクラッチのピストンは、上記遠心バランス室構成部材、上記共用回転部材の壁部、及び上記円筒部により画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容されていることを特徴とする自動変速機。
  3. 請求項1又は2に記載の自動変速機において、
    上記ピストンは、径方向に延び、上記収容空間を軸方向に仕切るA部と、上記A部の一端部から摩擦板側に軸方向に延び、摩擦板を押圧するB部とを有し、
    上記共用回転部材の壁部と上記A部との間に上記作動油圧室が形成され、上記遠心バランス室構成部材と上記A部との間に上記遠心バランス室が形成されていることを特徴とする自動変速機。
  4. 請求項3に記載の自動変速機において、
    上記ピストンは、上記A部の他端部から軸方向に延びるC部をさらに有することを特徴とする自動変速機。
  5. 請求項3又は4に記載の自動変速機において、
    上記ピストンは、上記A部の一端部から反摩擦板側に軸方向に延びるD部をさらに有することを特徴とする自動変速機。
  6. 請求項5に記載の自動変速機において、
    上記作動油圧室内に上記D部に常時圧接するシールプレートが配設されていることを特徴とする自動変速機。
  7. 請求項1から4のいずれか1項に記載の自動変速機において、
    上記共用回転部材の壁部の外周部に所定の回転部材との連結部が上記ピストン及び遠心バランス室構成部材の配置側に突設され、
    上記複数のクラッチのピストンのうち外周側のクラッチのピストンは、上記遠心バランス室構成部材、上記共用回転部材の壁部、及び上記連結部により画成される収容空間内に軸方向に移動可能に収容されていることを特徴とする自動変速機。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の自動変速機において、
    上記複数のクラッチの摩擦板が軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されていることを特徴とする自動変速機。
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