以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に従う風呂給湯システムの概略的な全体構成図である。
図1を参照して、本実施の形態に従う風呂給湯システム100は、一次熱交換器20、二次熱交換器30、および燃焼バーナ40等が格納された燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)10と、入水路22と、出湯路23と、バイパス路25と、分配弁50と、流量制御弁55と、マイクロコンピュータによって構成されるコントローラ200とを備える。
缶体10は、入水路22から流入する低温水を加熱する。缶体10による加熱後の高温水は、給湯のための出湯路23へ出力される。入水路22には、水道水等の低温水が供給される。出湯路23には、給湯出口において、出湯の逆流を防止するための逆止弁61が介装配置される。
一方で、バイパス路25は、入水路22および出湯路23の間に、缶体10をバイパスするように設けられる。入水路22およびバイパス路25の間には、流量調整のための分配弁50が配置される。分配弁50の開度に応じて、入水路22への給水量の一部が、入水路22からバイパス路25へ分流されるとともに、残りが缶体10へ流入する。
全体給水量に対する分流の割合は、分配弁50の開度に応じて制御される。以下では、入水路22への全体給水量に対する、缶体10への分流比率をr(0<r≦1.0)とし、バイパス路25への分流比率を(1−r)とする。
缶体10において、燃焼バーナ40は、供給された燃料ガスを燃焼することによって燃焼熱を発生する。燃焼バーナ40に対する燃料ガスの供給は、元ガス電磁弁41、ガス比例弁42および能力切替弁43a〜43cによって制御される。元ガス電磁弁41は、燃焼バーナ40への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。さらに、元ガス電磁弁41の開弁時において、燃焼バーナ40へのガス流量は、ガス比例弁42の開度に応じて制御される。能力切替弁43a〜43cは、複数本のバーナを有する燃焼バーナ40における、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切替えるために開閉制御される。
缶体10での発生熱量は、バーナ本数およびガス流量の組合せによって、すなわちガス比例弁42の開度および能力切替弁43a〜43cの開閉によって制御される。燃焼バーナ40では、供給されたガスと、図示しない送風ファンによって供給される燃焼用空気との混合気が図示しない点火装置によって着火される。これにより、燃焼ガスが燃焼されて燃焼バーナ40からの火炎が生じる。
燃焼バーナからの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器20および二次熱交換器30へ与えられる。一次熱交換器20は、燃焼バーナ40による燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により低温水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器30は、燃焼バーナからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された低温水を熱交換によって加熱する。このように、缶体10によって、「高温水生成部」が形成される。すなわち、燃焼バーナ40での燃料燃焼は、「高温水生成部」による「加熱動作」に対応する。
なお、缶体10には、水抜き栓15がさらに設けられる。水抜き栓15は、ユーザの操作に応じて、缶体10内の通水路から水を抜くために設けられる。たとえば、風呂給湯システム100の電源コードをコンセントから抜く等によって、図示しない凍結防止用ヒータへの電源供給を遮断するときに、水抜き栓15によって缶体10内の水を抜くことによって、凍結防止を図ることができる。水抜き栓15が設けられることにより、風呂給湯システム100を長期間不使用とする場合に、凍結による機器破損を招くことなく、電源供給を遮断することができる。
バイパス路25は、合流点32において出湯路23と合流する。これにより、風呂給湯システム100の運転時に、台所や洗面台等のカラン5や図示しないシャワー等の給湯栓が開栓されることによって、缶体10からの高温水とバイパス路25を経由した低温水とが混合されて、出湯路23から給湯される。すなわち、風呂給湯システム100は、「給湯運転」を実行する。出湯路23には、流量制御弁55が設けられる。流量制御弁55の開度を絞ることによって、出湯路23からの給湯量を制限することができる。
なお、以下では、浴槽8に対する給湯を「注湯」と表記する一方で、浴槽8以外のカラン5やシャワー(図示せず)への給湯を、「一般給湯」または、単に「給湯」と表記することとする。
さらに、風呂給湯システム100は、出湯路23から分岐して浴槽8へ給湯するための注湯路26と、缶体10からの高温水を直接浴槽8へ供給するための差し湯路27とをさらに備える。
注湯路26は、出湯路23上の分岐点33において、出湯路23から分岐される。分岐点33は、バイパス路25との合流点32よりも下流側に設けられる。一方で、差し湯路27は、合流点32よりも上流側の分岐点31において、出湯路23から分岐される。分岐点31および合流点32の間には、逆止弁52が介装される。逆止弁52によって、分岐点31を経由して差し湯路27へ流れる缶体10からの高温水に、バイパス路25を経由した低温水が混合することが回避される。
注湯路26は、出湯路23の分岐点33から浴槽8内の浴槽アダプタ85へ、高温水および低温水が混合された出湯路23の湯を供給する。注湯路26および差し湯路27は、合流点34で合流して、浴槽8内の浴槽アダプタ85へ至る。
注湯路26において、分岐点33および合流点34の間には、注湯路26による通流路を開閉するための注湯電磁弁60が設けられる。すなわち、注湯電磁弁60は、「第1の開閉弁」に対応する。缶体10での加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)の実行時に注湯電磁弁60が開弁されることによって、風呂給湯システム100は、出湯路23から浴槽8へ給湯する「注湯運転」を実行する。
差し湯路27には、通流路を開閉するための差し湯電磁弁75と、差し湯路27の通流量を制御するための差し湯流量制御弁70とが配置される。すなわち、差し湯電磁弁75は、「第2の開閉弁」に対応する。缶体10での加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)の実行時に差し湯電磁弁75が開弁されることによって、風呂給湯システム100は、缶体10から出力された高温水を、低温水と混合することなく浴槽8へ供給する「高温差し湯運転(以下、単に「差し湯運転」とも称する)」を実行する。
合流点34および合流点35および浴槽アダプタ85の間には、逆止弁62および64が二重に配置される。逆止弁62および64によって、浴槽8内の湯水が逆流することを防止できる。
次に、風呂給湯システム100における各種センサの配置を説明する。
風呂給湯システム100には、流量センサ90,95,97が配置される。流量センサ90,95,97は、代表的には、流量に応じて回転速度が変化する回転体(羽根車)を内蔵した羽根車式センサによって構成される。
流量センサ90は、入水路22において、分配弁50よりも下流側(缶体側)に配置されて、缶体10の通流量Qhb(以下、「缶体流量Qhb」とも称する)を検出する。流量センサ97は、注湯路26に配置されて、注湯路26の通流量Qbt(以下、「注湯流量Qbt」とも称する)を検出する。
流量センサ95は、出湯路23において、バイパス路25との合流点32および注湯路26の分岐点33の間に配置される。流量センサ95は、カラン5等への給湯流量と、注湯路26による浴槽への注湯流量との和である、出湯路23のトータル流量Qtlを検出する。
さらに、風呂給湯システム100には、温度センサ82,84,86,88が配置される。温度センサは、代表的には、温度に依存して電気抵抗が変化するサーミスタによって構成される。
温度センサ82は、入水路22に配置されて、缶体10へ入力される低温水の温度Tcw(以下、入水温度Tcwとも称する)を検出する。温度センサ84は、出湯路23において、分岐点31よりも上流側(缶体側)に配置されて、缶体10からの出力温度Thb(以下、「缶体温度Thb」とも称する)を検出する。
温度センサ86は、出湯路23上の合流点32および分岐点33の間に配置されて、出湯路23からの出湯温度Thwを検出する。さらに、温度センサ88は、合流点34よりも下流側(浴槽側)に配置されて、浴槽アダプタ85から浴槽8へ出力される、風呂給湯システム100の浴槽8に対する出口での湯温(Tbt)を検出する。温度センサ88は、「温度検出器」の一実施例に対応する。
コントローラ200は、各センサからの出力信号(検出値)および、図示しないリモコン装置へ入力されたユーザ操作を受けて、風呂給湯システム100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。制御指令には、各弁(各電磁弁および各流量調整弁)の開閉および開度の指令が含まれる。
ユーザ操作には、風呂給湯システム100の運転オン/オフ指令および、設定温度(Tr*)指令が含まれる。運転オン/オフ指令には、給湯運転、注湯運転、差し湯運転および差し水運転のオン/オフ指令が含まれる。また、設定温度Tr*指令は、給湯運転および注湯運転で別個に設定することが好ましい。一般的に、差し湯運転および差し水運転は、ユーザにより温度設定を伴うことなく、当該運転のオン/オフのみがユーザから指示される。
コントローラ200は、風呂給湯システム100の給湯運転、注湯運転または差し湯運転指令がオンされると、流量センサ90によって検出される缶体流量Qhbが最低作動流量(MOQ)を超えるのに応じて、缶体10による加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)を開始する。これにより、給湯運転が実行される。
ユーザによって、浴槽8への湯張りのための注湯運転が指示されると、注湯電磁弁60が開弁された状態で缶体10による加熱動作が実行されることにより、注湯路26によって、出湯路23の湯が浴槽8に供給される。
コントローラ200は、缶体10での加熱動作時には、缶体10での要求発生熱量P*を算出する。要求発生熱量P*は、缶体流量Qhbおよび昇温量ΔTから算出される(P*=Qhb・ΔT)。具体的には、設定温度Tr*に基づき缶体温度Thbの目標値(Thb*)が算出される。缶体10での昇温量ΔTは、缶体温度の上記目標値Thb*から入水温度Tcwを減算することによって求めることができる。
コントローラ200は、算出された要求発生熱量P*に応じて、燃焼バーナ40への供給ガス量を設定する。コントローラ200は、元ガス電磁弁41を開弁するとともに、設定された供給ガス量に従って、ガス比例弁42の開度および能力切替弁43a〜43cの開閉を制御する。
なお、コントローラ200は、流量制御弁55の開度を制御することによって、出湯路23の通流量を制御することができる。たとえば、燃焼開始直後の加熱能力が不足する期間中において、給湯(一般給湯)および/または注湯(風呂給湯)の流量を絞るように流量制御弁55の開度を制御することによって、出湯温度Thwの低下を防止できる。また、コントローラ200は、燃焼開始直後以外でも、最大号数で運転する場合や、最大許容流量で運転する場合等に、設定温度Tr*に従って出湯するために、流量制御弁55によって出湯流量を絞る制御を実行することができる。
上述のように、本実施の形態に従う風呂給湯システム100は、給湯経路から分岐された浴槽8への注湯路26と、高温水を浴槽8に供給するための差し湯路27とによる風呂給湯機能を具備している。特に、差し湯路27による差し湯運転によって、ポンプおよび熱交換器を含む追焚循環経路を設けることなく、簡易な構成で浴槽湯温の上昇機能を持たせることができる。
図2は、風呂給湯システム100における差し湯運転の制御を説明する図表である。
図2を参照して、給湯運転および注湯運転では、缶体温度目標値Thb*は、Thb*≦T2の範囲内で、注湯運転および給湯運転の設定温度Tr*に対してTr*+α(α:所定値)に制御される。すなわち、T2は、給湯運転および注湯運転時における缶体温度目標値Thb*の上限温度である。たとえば、α=25℃、T2=75℃程度である。これにより、バイパス路25を経由する低温水との混合により、出湯温度Thwが設定温度Tr*に制御されて、カラン5等の給湯栓ないし浴槽8へ供給される。
給湯運転および注湯運転では、差し湯電磁弁75は閉状態に維持される。注湯運転では、注湯電磁弁60が開弁される。
差し湯運転では、缶体温度目標値Thb*は、所定温度T1に設定される。この所定温度T1は、給湯運転および注湯運転時での缶体温度目標値Thb*の上限温度T2よりも高く設定される(T1>T2)。給湯運転および注湯運転時での上限温度T2よりも高く、Thb*=T1(T1>T2)に設定される。たとえば、T1=85℃程度である。差し湯運転では、差し湯電磁弁75が開弁されることにより、缶体10から出力された高温水(Thb=T1)が、バイパス路25からの低温水と混合されることなく、差し湯路27を経由して、浴槽8に対して供給される。さらに、差し湯流量制御弁70によって差し湯路27の流量が制御される。
このように、差し湯運転時には、給湯運転時よりも缶体温度Thbが上昇されるので、給湯運転中には、差し湯運転を非実行とすることが必要である。すなわち、ユーザが、差し湯運転を要求するための差し湯運転スイッチ(図示せず)を操作しても、給湯運転中または注湯運転中には、差し湯運転の開始は待機される。すなわち、風呂給湯システム100では、給湯運転が、差し湯運転よりも優先される。
したがって、差し湯運転の実行中に、カラン5(図1)等の開栓によって給湯運転が開始されると、差し湯運転は一時的に中断される。そして、差し湯運転の待機状態時にカラン5(図1)等の閉栓によって給湯運転が終了されると、差し湯運転が再び実行される。差し湯運転が中断ないし終了されると、差し湯電磁弁75に閉弁指令が発生されるとともに、缶体温度目標値Thb*は、給湯運転時に戻される(Thb*=Tr*+α)。
このため、差し湯機能を有する風呂給湯システム100では、出湯路23からの給湯(一般給湯)が行なわれていることを検出するために、流量センサ95の配置が必要である。図1から理解されるように、差し湯電磁弁75が開状態および閉状態のいずれであっても、カラン5等の開栓による出湯路23からの一般給湯、または、注湯電磁弁60を開弁した注湯運転が実行されると、流量センサ95によって流量の発生が検知できる。
再び図1を参照して、差し湯運転時の終了時には、差し湯電磁弁75に対して閉弁指令が出力される。さらに、差し湯流量制御弁70の開度は、流量を最小とするための最小開度に制御される。ただし、差し湯流量制御弁70を最小開度としても、差し湯流量制御弁70単独では、流量を完全に零とすることができない。
したがって、差し湯電磁弁75に開故障が発生すると、差し湯流量制御弁70の最小開度による最小流量に従って、缶体10から浴槽8への差し湯路27による漏れ流量が継続的に発生してしまう。なお、差し湯流量制御弁70による最小流量は、缶体10の最小作動流量(MOQ)よりは小さい。したがって、缶体10による加熱動作の非実行時には、差し湯電磁弁75の開故障による漏れ流量が発生しても、これにより缶体10が加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)を開始することはない。
しかしながら、一般給湯のための給湯運転中には、差し湯電磁弁75に開故障が発生していると、差し湯路27を経由した上記漏れ流量に従って、缶体10から出力された高温水が、浴槽8へ継続的に供給されてしまう。
これに対して、給湯運転の実行中に缶体10が加熱動作を実行していても、注湯電磁弁60および差し湯電磁弁75が閉状態に制御されていれば、缶体10から出力された高温水が浴槽8へ供給される経路は遮断される。
したがって、差し湯運転が正常に終了された場合には、差し湯運転終了後における温度センサ88の検出温度は、図3に示されるように推移する。図3には、注湯電磁弁60および差し湯電磁弁75が閉状態に維持されたときの温度推移が示される。
図3を参照して、横軸には、差し湯運転の終了時における差し湯電磁弁75の閉弁指令が生成されてからの時間経過が示され、縦軸には、温度センサ88による検出温度Tbtが示される。
差し湯電磁弁75の閉弁指令の生成時点(t=0)においては、検出温度Tbtは、差し湯運転における缶体温度目標値T1に従うT1♯である。
差し湯電磁弁75が閉弁指令に応じて正常に閉状態に維持されると、以降では、温度センサ88の配置箇所では、差し湯運転で供給されていた高温水が滞留することになる。滞留した高温水は、配管等からの放熱によって温度が低下する。したがって、検出温度Tbtは、放熱カーブ500に従って、初期値であるT1♯から徐々に低下する。すなわち、放熱カーブ500は、差し湯電磁弁75の閉弁指令の生成時点(t=0)からΔTが経過した時刻txにおける検出予測温度の集合に相当する。
したがって、差し湯電磁弁75の閉弁指令の生成時点(t=0)からΔTが経過した時刻txにおける判定温度T*(tx)を、放熱カーブ500に従う予測温度に対してマージンを有するように設定することができる。判定温度T*(tx)は、経過時間ΔTおよび検出温度の初期値(T1♯)に基づいて設定することができる。
判定温度T*(tx)の集合に相当する判定カーブ505は、放熱カーブ500に対して高温側にマージンを持たせた温度推移を示す。最も単純には、差し湯運転の終了後において、温度センサ88の検出温度が判定温度T*(tx)よりも高くなると、差し湯電磁弁75の開故障を検知することができる。
図4には、差し湯電磁弁75の開故障時における差し湯運転終了後の温度センサの検出温度の推移例が示される。図4において、放熱カーブ500および判定カーブ505は、図3に示したのと同様である。図4においても、注湯電磁弁60は閉状態に維持されているものとする。
図4では、差し湯運転の終了に応じて、給湯運転が開始されるときの温度推移が示されている。
図4を参照して、差し湯運転の終了に応じて、差し湯電磁弁75の閉弁指令が生成されるとともに、缶体10では缶体温度目標値Tbd*がT1から低下される(t=0)。ここでは、給湯運転でのTbd*=T2とする。
差し湯電磁弁75の開故障時には、給湯運転における缶体10からの高温水が、温度センサ88の配置個所を経由して、浴槽8へ継続的に微小流量で供給される。したがって、差し湯運転の終了後に給湯運転が継続的に実行された場合には、温度センサ88による検出温度Tbtは、温度カーブ510に示されるように、経過時間ΔTの増加に応じて、缶体目標温度T2に従うT2♯へ向けて変化する。上述のように、T2<T1であるので、T2♯もT1♯より低い。
この結果、差し湯運転の終了後に、検出温度Tbtと、判定カーブ505に従った判定温度T*(tx)とを比較していくと、時刻ty以降において、Tbt>T*(tx)となることに応じて、差し湯電磁弁75の開故障を検知することができる。すなわち、温度センサ88の検出温度の履歴に基づいて、差し湯電磁弁75の開故障を検知できる。
図5には、実施の形態1に従う差し湯電磁弁の開故障検知のための故障診断の制御処理を示すフローチャートが示される。図5のフローチャートに従う制御処理は、コントローラ200によって繰り返し実行される。
図5を参照して、コントローラ200は、ステップS110により、開状態の差し湯電磁弁75を閉弁するための閉弁指令が発せられたかどうかを判定する。
差し湯電磁弁75が、開状態または閉状態に維持されている場合には、ステップS110はNO判定とされて、以降のステップがスキップされる。すなわち、差し湯電磁弁の故障診断は非実行とされる。
差し湯電磁弁の閉指令発生時(S110のYES判定時)には、コントローラ200は、ステップS115に処理を進めて、診断条件が成立しているかどうかを判定する。実施の形態1において、ステップS115での診断条件は、注湯電磁弁60が閉状態であり、かつ、缶体10による加熱動作が実行されていることである。なお、注湯電磁弁60が閉状態であるか否かは、流量センサ97による検出流量Qbtを用いて判断することができる。
コントローラ200は、診断条件が成立していない場合には(S115のNO判定時)、以降のステップをスキップして、故障診断を非実行とする。
コントローラ200は、差し湯電磁弁75の閉弁指令が発生され、かつ、診断条件が成立している場合(S115のYES判定時)には、ステップS120に処理を進めて、経過時間のタイマ値txおよび監視カウンタ値FCNTを初期化する。すなわちtx=0かつFCNT=0に設定する。さらに、コントローラ200は、ステップS125により、温度センサ88の現在の検出温度を、初期温度Tinとして読込む。コントローラ200は、これらステップS120,S125を、故障診断開始時の初期処理として実行する。
さらに、コントローラ200は、ステップS130〜S170の処理を、タイマ値txが所定値Tdに達するまで繰り返し実行する。
コントローラ200は、ステップS130により、差し湯電磁弁75の閉弁指令発生時点からの経過時間(タイマ値tx)に応じた、判定温度T*(tx)を設定する。判定温度T*(tx)は、図3および図4に示した判定カーブ505に従って設定される。なお、判定カーブ505については、初期温度Tinに対する比率を示すように正規化することが好ましい。
さらに、コントローラ200は、ステップS140により、温度センサ88による検出温度Tbtを取得するとともに、ステップS150により、検出温度Tbtと判定温度T*(tx)とを比較する。
コントローラ200は、検出温度TbtがT*(tx)よりも高いとき(S150のYES判定時)には、ステップS155により、監視カウンタ値FCNTをインクリメントする。一方で、Tbt≦T*(tx)のとき(S150のNO判定時)には、監視カウンタ値FCNTは、インクリメントされず現在の値に維持される。
コントローラ200は、ステップS150の判定後、ステップS160によりタイマ値txをカウントアップするとともに、ステップS170により、カウントアップされたタイマ値txを所定値Tdと比較する。Tdは、開故障診断の所定の診断時間に対応するカウント値に相当する。
コントローラ200は、tx<Tdの間、すなわち、差し湯電磁弁75の閉弁指令発生からの経過時間が所定の診断時間(Td相当)に達するまでの間(S170のNO判定時)、ステップS130〜S160の処理を繰返し実行する。
コントローラ200は、タイマ値txが所定値Tdに達すると(S170のYES判定時)、ステップS180に処理を進める。この時点で、監視カウンタ値FCNTは、診断期間(tx=0〜Td)においてTbt>T*(tx)となった期間長を示している。
コントローラ200は、ステップS180では、監視カウンタ値FCNTを判定値Ftと比較する。そして、コントローラ200は、監視カウンタ値FCNTが判定値Ftよりも小さいとき(S180のYES判定時)には、ステップS190により、差し湯電磁弁75の開故障を検知しない。すなわち、差し湯電磁弁75は正常であると診断する。
一方、コントローラ200は、監視カウンタ値FCNTが判定値Ft以上であるとき(S180のNO判定時)には、コントローラ200は、ステップS195に処理を進めて、差し湯電磁弁75の開故障を検知する。
コントローラ200は、開故障検知時(S195)には、缶体10による加熱動作、具体的には、燃焼バーナ40による燃料燃焼を禁止することが好ましい(ステップS196)。缶体10による加熱動作を禁止すると、差し湯電磁弁75の開故障によって高温水が浴槽8へ供給されることを回避できる。さらに、コントローラ200は、ステップS197により、ユーザに対して、差し湯電磁弁75の開故障が発生していることを報知する警告メッセージを出力することが好ましい。たとえば、図示しないリモコン装置の表示画面(液晶画面等)に、所定の表示コードを表示することによって、当該警告メッセージをユーザに出力することができる。
このように本実施の形態に従う風呂給湯システムによれば、注湯電磁弁60および差し湯電磁弁75に閉弁指令が発生された状態で缶体10が高温水を出力する場合に、差し湯電磁弁75の開故障時と正常時(閉状態)との間で湯温の挙動が異なる部位に温度センサ88が配置されている。したがって、差し湯電磁弁75の閉指令が発生されてからの温度センサ88による検出温度の履歴に基づいて、流量センサが配置されていない差し湯経路27に介装された差し湯電磁弁75の開故障を検出することができる。具体的には、差し湯電磁弁75の閉弁指令発生後に給湯運転が継続的に実行された場合に、缶体10からの高温水が浴槽8へ供給されることによって、放熱カーブ500よりも高温側の温度が温度センサ88によって検出されることに応じて、差し湯電磁弁75の開故障を検知することができる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、差し湯電磁弁75の閉弁指令後に給湯運転が実行された場合に、温度センサ88の配置箇所に滞留する高温水の放熱カーブとの比較に基づいて開故障を検知する故障診断を説明した。
しかしながら、給湯運転時における缶体温度は、差し湯運転終了時における温度センサ88の検出温度よりも低いため、実施の形態1に従う故障診断では、図4にも示されるように、開故障を検知するまでに比較的に長期間を要する。
したがって、実施の形態2では、比較的短時間で差し湯電磁弁75の開故障を検知するための故障診断について説明する。なお、実施の形態2において、風呂給湯システム100の構成および制御は実施の形態1同様であり、差し湯電磁弁75の故障診断の処理のみが実施の形態1と異なる。
図6は、本発明の実施の形態2に従う開故障診断のための差し湯運転終了時のパージ処理を示すフローチャートである。
図6を参照して、コントローラ200は、ステップS210により、差し湯運転の終了指令が発生されたか否かを判定する。たとえば、差し湯運転の実行中に、差し湯スイッチ(図示せず)をユーザがオフした場合、あるいは、カラン5等の開栓による一般給湯が開始された際に、ステップS210はYES判定とされる。
差し湯運転の実行あるいは非実行中が維持される間は、ステップS210はNO判定とされて、以降のステップS220〜S240の処理はスキップされる。
コントローラ200は、差し湯運転の終了指令が発生されると(S210のYES判定時)、差し湯電磁弁75の閉弁指令を生成する前に、ステップS220により、温度センサ88の配置箇所に、低温の湯水を通過させるパージ処理を実行する。パージ処理では、給湯運転時における缶体温度Thbよりも低温の湯水を通流させる。
ステップS220によるパージ処理は、たとえば、差し湯電磁弁75を開弁したままで、缶体10での缶体温度目標値Thb*を通常の給湯運転時または注湯運転時よりも低下させる処理、あるいは、缶体10での加熱動作を停止する処理によって実現することができる。なお、パージ処理時には、注湯電磁弁60をさらに開弁することが好ましい。注湯電磁弁60が開弁されると、バイパス路25の低温水と混合された湯が、注湯路26によって温度センサ88の配置個所まで導かれるからである。
コントローラ200は、ステップS230により、パージ処理(S220)の終了条件が成立しているか否かを判定する。終了条件が成立するまでの間(S230のNO判定時)、パージ処理(S220)が継続される。
たとえば、パージ処理の実行時間が所定時間に達したときに、ステップS230をYES判定とすることができる。また、パージ処理中に注湯電磁弁60を開弁する場合には、流量センサ97による検出流量Qbtの積算値が所定値を超えたときに、ステップS230をYES判定としてもよい。
なお、図1に示した、差し水路28による差し水運転を一時的に実行して、入水路22の低温水を、差し水路28および合流点35を経由して、浴槽アダプタ85へ導入することによっても、ステップS220のパージ処理を実現することができる。この場合には、差し水運転の実行時間が一定時間を超えたときに、ステップS230をYES判定とすることができる。あるいは、より直接的に、温度センサ88による検出温度Tbtが判定温度よりも低下したことに応じて、ステップS230をYES判定としてもよい。
コントローラ200は、パージ処理の終了条件が成立すると(S230のYES判定時)、パージ処理を終了して、ステップS240に処理を進める。コントローラ200は、ステップS240により、パージ処理の実行後に、差し湯電磁弁75の閉弁指令を発生する。
このように、実施の形態2に従う差し湯電磁弁75の故障診断では、差し湯運転終了時には、パージ処理(S220)によって、温度センサ88による検出温度Tbtが低下した状態となってから、差し湯電磁弁75の閉弁指令が発生される。
図7は、実施の形態2に従う差し湯電磁弁75の開故障検知のための故障診断の制御処理を説明するフローチャートである。
図7を参照して、コントローラ200は、ステップS310により、給湯運転を実行中であるか否かを判定し、ステップS320により、診断条件が成立しているかどうかを判定する。実施の形態2において、ステップS320での診断条件は、診断条件が成立しているか否か、具体的には、差し湯電磁弁75および注湯電磁弁60が閉弁指令中であるか否かを判定する。さらに、注湯電磁弁60が正常に閉状態であることも、診断条件に加えることが好ましい。注湯電磁弁60が正常に閉状態であるか否かは、流量センサ97の検出流量Qbtを用いて判定することができる。
コントローラ200は、給湯運転が実行中であり、かつ、差し湯電磁弁75および注湯電磁弁60が閉弁指示中の期間(S320のYES判定時)には、ステップS330により、温度センサ88の検出温度Tbtを取得するとともに、ステップS340により、パージ処理時と比較して検出温度Tbtが上昇しているか否かを判定する。
コントローラ200は、ステップS340により、検出温度Tbtの上昇が検知されると、ステップS350により、差し湯電磁弁75の開故障を検知する。なお、開故障の誤検知を回避するためには、検出温度Tbtが、出湯温度Thw(温度センサ86)よりも上昇したことに応じて、差し湯電磁弁75の開故障を検知することが好ましい。
また、図7では図示を省略しているが、開故障検知時(S350)には、ステップS196(図5)と同様に、缶体10による加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)を禁止することが好ましい。また、ステップS197(図5)と同様に、ユーザに対して、差し湯電磁弁75の開故障が発生していることを報知する警告メッセージを出力することが好ましい。
コントローラ200は、所定時間(Td相当)の間、ステップS340によって検出温度Tbtの上昇が検知されない場合(S360のYES判定時)には、ステップS370により、差し湯電磁弁75に開故障が発生していない(すなわち、正常である)と診断する。所定時間(Td相当)が経過するまでの間(S360のNO判定時)には、ステップS320〜S340、S360の処理が繰り返し実行される。
なお、ステップS310またはS320がNO判定であるとき、すなわち、給湯運転の非実行時または、注湯電磁弁60および差し湯電磁弁75のいずれかが開弁されている場合には、上述の故障診断は非実行とされる。また、図7に示された故障診断は、パージ処理が実行される毎に実行することが好ましい。たとえば、パージ処理が実行される毎にオンされる一方で、ステップS370によって正常と診断される毎にオフされる診断要求フラグを導入するとともに、当該診断要求フラグがオフであるときには、ステップS310またはS320をNO判定とすることによって、実施の形態2に従う故障診断の実行頻度を適正化することができる。
なお、「差し湯電磁弁75が正常である(S370)」旨の検知は必ずしも必要ではない。したがって、検出温度Tbtの上昇が検知されない場合(S360のYES判定時)には、ステップS310およびS320の両方がYES判定となる状態が継続する限り、S360の判定を所定周期で繰り返し実行することによって開故障検知のみを実行してもよい。
このように、実施の形態2に従う差し湯電磁弁75の故障診断によれば、差し湯運転の終了時に、温度センサ88の検出温度を一旦低下させるためのパージ処理が実行される。したがって、差し湯電磁弁75および注湯電磁弁60が閉弁された状態で缶体10が加熱動作を実行する給湯運転時における温度センサ88による検出温度の履歴に基づいて、具体的には、検出温度の上昇が検知されるか否に従って、比較的短期間で差し湯電磁弁75の開故障の有無を診断することができる。
[実施の形態3]
差し湯電磁弁75の開故障検知に伴って缶体10での加熱運転を禁止することを考慮すると、開故障の検知は最小限に抑制することが好ましい。また、一般的に電磁弁の開故障は、開弁状態から閉弁指令に応じて動作したときに発生する傾向にある。このため、差し湯電磁弁75の開故障による悪影響としては、ユーザ操作による差し湯運転の終了後にも漏れ流量による高温水の供給が継続することによって浴槽湯温が上昇する現象が、代表的なものとなる。
したがって、実施の形態3では、差し湯電磁弁75の開故障によって浴槽温度が所定の上限温度(たとえば、50℃)よりも高くなる運転状況に限定して、差し湯電磁弁75の開故障を検知するための故障診断について説明する。実施の形態3において、風呂給湯システム100の構成および制御は実施の形態1と同様であり、差し湯電磁弁75の故障診断の処理のみが実施の形態1と異なる。
図8は、差し湯運転の終了後における差し湯電磁弁75の開故障による浴槽温度の上昇を示す概念図である。
図8の横軸には、差し湯運転の終了時における差し湯電磁弁75の閉弁指令が生成されてからの時間経過が示され、縦軸には、浴槽8内の湯温が示される。
図8には、差し湯電磁弁75の開故障の発生時における差し湯電磁弁75の閉弁指令後の昇温カーブ550,560が示される。昇温カーブ550,560は、差し湯電磁弁75の閉弁指令の生成時点(t=0)において、風呂自動運転での最低水位の湯(初期湯温T0)が浴槽8内に存在している状態を初期状態として、差し湯電磁弁75の開故障による漏れ流量分の高温水が缶体10から浴槽8に継続的に供給されたときの温度変化を示している。
初期湯温T0は、たとえば、給湯運転における浴槽湯温の設定温度Tr*の上限温度に相当する。一方で、故障診断のための浴槽湯温の上限温度Tlimは、たとえば50℃である。昇温カーブ550,560は、浴槽8からの放熱も考慮して、実機実験やシミュレーション結果に基づいて求めることができる。
昇温カーブ550は、缶体温度Thbが給湯運転における上限温度T2である場合の温度上昇を示す。一方で、昇温カーブ560は、所定時間tlimの経過時に、浴槽湯温がT0から上限温度Tlimまで上昇するときの昇温カーブを示している。昇温カーブ560が得られるときの、缶体温度Tbd=T3とする。なお、所定時間tlimは、予め定められた、缶体10の加熱動作の連続運転が許容される上限時間に相当する。缶体10の加熱動作の継続時間が上限時間tlimに達すると、缶体10の加熱運転(燃焼バーナ40による燃料燃焼)が強制的に終了される。たとえば、上限時間tlimは60分程度である。
昇温カーブ550から、給湯運転時の缶体温度Tbdが上限温度T2である場合には、差し湯路27の漏れ流量の発生が所定時間thを超えると、浴槽温度が上限温度Tlimよりも高くなることが理解される。逆に言えば、差し湯路27の漏れ流量の発生が所定時間thを超えないときには、浴槽温度が上限温度Tlimに達することはない。
一方、昇温カーブ560からは、缶体温度TbdがT3よりも低い場合には、缶体10での連続加熱運転の上限時間tlimが経過しても、浴槽温度が上限温度Tlimまでは達しないことが理解される。
したがって、少なくとも、温度センサ88の検出温度TbtがT3よりも低いとき、および、給湯運転下での漏れ流量の発生時間が所定時間thよりも短い間には、浴槽温度が上限温度Tlimに達することはないため、缶体10の加熱運転禁止に至る差し湯電磁弁75の開故障を検知する必要がない。
実施の形態3では、このような知見に基づいて、差し湯電磁弁75の閉指令が発生されてからの、温度センサ88による検出温度と給湯運転の実行時間とに基づいて、差し湯電磁弁75の開故障が検知される。
図9は、実施の形態3に従う差し湯電磁弁75の開故障検知のための故障診断の制御処理を説明するフローチャートである。図9のフローチャートに従う制御処理は、コントローラ200により周期的に実行される。
図9を参照して、コントローラ200は、ステップS410により、差し湯電磁弁75に対する閉弁指令中であるかどうかを判定する。ステップS410は、差し湯運転の非実行時にYES判定とされる。
コントローラ200は、差し湯運転の非実行時(S410のYES判定時)には、ステップS420により、診断条件が成立しているかどうかを判定する。実施の形態3において、ステップS420での診断条件は、注湯電磁弁60が閉状態で缶体10が加熱動作を実行する給湯運転中であることである。好ましくは、注湯電磁弁60が閉状態であることは、流量センサ97による検出流量Qbtを用いて判定される。
コントローラ200は、差し湯運転の非実行時であって、かつ、給湯運転中である場合(S420のYES判定時)には、ステップS430により、温度センサ88の検出温度Tbtを判定温度Tthと比較する。判定温度Tthは、図8の昇温カーブ560における缶体温度T3に対応して定められる。
コントローラ200は、Tbt>Tthのとき(S430のYES判定時)には、ステップS440により、カウント値tcntを増加する。一方で、Tbt≦Tthの場合(S430のNO判定時)には、コントローラ200は、ステップS445により、カウント値tcntを増加しない。ステップS445では、カウント値tcntは維持ないし減少される。
なお、カウント値tcntは、差し湯運転の非実行中に、給湯運転が実行されていない期間(S420のNO判定時)には、ステップS470により、浴槽湯温の放熱レートに対応させて減少される。また、カウント値tcntは、差し湯運転の実行に応じて(S410のNO判定時)、ステップS475によりクリアされる(tcnt=0)。
したがって、ステップS430,S440により、カウント値tcntは、差し湯運転の非実行時における給湯運転中に、浴槽8への供給湯温(温度センサ88の検出温度Tbt)が判定温度Tthよりも高い期間の長さに応じた値に設定される。
コントローラ200は、ステップS450により、カウント値tcntを、判定値tthと比較する。判定値tthは、図8の昇温カーブ550における所定時間thに対応して定められる。
コントローラ200は、カウント値tcntが判定値tthよりも大きいとき(S450のYES判定時)には、ステップS460に処理を進めて、差し湯電磁弁75の開故障を検知する。さらに、浴槽湯温のこれ以上の上昇を回避するため、缶体10による加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)を禁止する。また、ステップS197(図5)と同様に、ユーザに対して、差し湯電磁弁75の開故障が発生していることを報知する警告メッセージを出力することが好ましい。
一方で、コントローラ200は、カウント値tcntが判定値tth以下であるとき(S450のNO判定時)には、差し湯電磁弁75の開故障を検知しない。この場合には、缶体10による加熱動作(燃焼バーナ40による燃料燃焼)は禁止されないので、給湯運転が継続可能である。
図10には、実施の形態3に従う故障診断によって開故障が検知される条件を説明するための概念図が示される。
図10の横軸には、カウント値tcntによって示される給湯運転の継続時間が示され、縦軸には、温度センサ88による検出温度Tbtが示される。
図9に示したフローチャートに従う処理では、上述のように、Tbt<Tthの場合には、カウント値tcntが増加されないので、差し湯電磁弁75の開故障は検知されない。また、給湯運転の継続期間が判定値tthに相当する所定時間th(図8)よりも短いときにも、差し湯電磁弁75の開故障は検知されない。
すなわち、図10に示されるように、差し湯電磁弁75に閉弁指令が発せられており、かつ、注湯電磁弁60が閉弁されている給湯運転によって、検出温度Tbt>Tthの期間が、判定値tthに相当する所定時間th(図8)を超えて発生したときに、差し湯電磁弁75の開故障が検知される。
これにより、実施の形態3に従う差し湯電磁弁75の故障診断によれば、図8に示した昇温カーブ550,560に基づいて、差し湯電磁弁75の開故障によって浴槽温度が上限温度Tlimよりも高くなる運転状況に限定して、差し湯電磁弁75の開故障を検知することができる。すなわち、浴槽湯温が上限温度Tlimに達する可能性のある運転状況に限定して、差し湯電磁弁75の開故障検出による缶体10の加熱動作(燃焼バーナ40の燃料燃焼)を禁止することができる。
なお、図8の昇温カーブ550および560の比較から理解されるとおり、差し湯電磁弁75の開故障の下での継続的な給湯運転によって、浴槽湯温が上限温度Tlimに達するまでの時間は、缶体温度Tbdによって異なる。すなわち、Tbd=T2(給湯運転での上限温度)のときには、給湯運転を所定時間th継続すると浴槽湯温が上限温度Tlimに達する一方で、Tbd=T3のときには、給湯運転が上限時間tlim継続されないと、浴槽湯温は上限温度Tlimに達しない。
したがって、図9のステップS450で用いられる判定値tthについては、図10中の特性線600に示されるように、検出温度Tbtに応じて変化させることが好ましい。具体的には、判定値tthについては、継続時間th〜tlimに対応する範囲内で、検出温度Tbtが上昇するほど、短い時間とするように設定することが好ましい。
このようにすると、図10中の領域610では、浴槽湯温が限界温度Tlimに達しないと判定することができる。したがって、差し湯電磁弁75の開故障によって浴槽湯温が上限温度Tlimに達する可能性のある運転状況をさらに厳密に判別して、差し湯電磁弁の開故障検知によって、缶体10の加熱動作(燃焼バーナ40の燃料燃焼)が過剰に禁止されることを回避できる。
なお、本実施の形態では、燃料ガスの燃焼によって缶体で低温水を加熱する構成を例示したが、本発明の適用はこのような例に限定されるものではない。すなわち、缶体における低温水を加熱するための熱源を特に限定することなく、浴槽への高温差し湯のための経路を具備する給湯システムに対して共通に、本実施の形態に従う漏水検知制御を適用することが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。