ところで、高温差し湯路を通した高温差し湯は、かなりの高温(例えば80℃)の湯を浴槽に差し湯するものであるため、入浴中のユーザーが熱過ぎると感じない程度の差し湯流量、例えばチョロチョロと流入する程度の差し湯流量(例えば4L/min)に抑制する必要があり、前記の切換の過渡期においても、変動を招くことなく、かかる差し湯流量に抑制することが求められる。しかしながら、前記特許文献で提案された給湯装置では、前記の切換の過渡期において高温差し湯路を通してパージされる高温差し湯の流量の抑制が十分ではなく、一定に制御された高温差し湯運転中の差し湯流量から変動を招いたり、一般給湯路を通して流れる給湯温度に変動を招いたり、するおそれが考えられる。すなわち、差し湯流量が増大側に変動すると、入浴中のユーザーに熱過ぎると感じさせることになる一方、差し湯流量が低減側に変動すると、より多くの高温湯が一般給湯路側に流れてしまい、それまで閉止状態であったバイパス路からの混水比率制御による温調が追いつかずにオーバーシュート発生を招いてしまうことになる、という不都合発生のおそれが考えられる。
一方、前記の特許文献1,2で提案された給湯装置では、高温差し湯路を通しての高温差し湯の供給・停止の切換及び供給流量を変更調整するために、流量変更手段としても作用する電磁式の高温給湯弁(特許文献1の段落0015参照)あるいは閉止機能付きの流量調整弁(特許文献2の段落0005参照)というように、いずれも流量変更調整機能付きの1つの弁手段を高温差し湯路に介装させている。しかしながら、停電が発生した場合には、開いた状態になる、又は、開いた状態のままになってしまうことが考えられ、浴槽に対し無制御状態の高温湯等が流れるおそれがある。又、流量調整弁とは別に独立した開閉弁を設けた場合にも、その開閉弁に開故障(閉切換制御したにも拘わらず完全閉止せずに開状態のままになる故障)が万一発生すると、浴槽に対し意図しない高温湯等が流れるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高温差し湯運転の実行中に給湯使用が開始されたとき、高温差し湯運転を停止して給湯運転への切換過渡期において、給湯使用の開始前の差し湯流量とほぼ同じ一定流量で高温湯を浴槽側に確実にパージし、一般給湯路を通しての給湯温度の温調におけるオーバーシュート発生を確実に回避し得る給湯装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明では、給水路からの給水を受けて加熱するための缶体の出湯側において、浴槽に差し湯するための高温差し湯路と、給湯栓に給湯するための一般給湯路とが分岐され、前記高温差し湯路は、差し湯流量を変更調整するための差し湯流量調整弁を備え、前記一般給湯路は、前記缶体で加熱された湯に対し前記給水路から分岐したバイパス路を通して混水可能に構成されるとともに、給湯栓側への給湯流量を変更調整するための給湯流量調整弁を備えてなる給湯装置を対象に、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記高温差し湯路を通して所定の高温湯を差し湯するための高温差し湯運転制御を行う差し湯制御手段を備えることとし、前記差し湯制御手段として、高温差し湯運転開始に際しては一般給湯路を通して給湯栓に給湯される場合の給湯流量を制限するよう前記給湯流量調整弁を所定開度に変更して予め待機させ、高温差し湯運転中は前記缶体で加熱された湯を一定流量で浴槽側に供給するよう前記差し湯流量調整弁を作動制御し、この高温差し湯運転中に前記給湯栓が開かれて給湯使用が生じたときは前記差し湯流量調整弁を前記給湯使用が生じる直前の制御状態における直前開度と同じ開度に維持する制御を行う構成とする。
この特定事項を備える場合、高温差し湯運転中においては、高温差し湯路に作用する給水路からの給水の供給圧に抗して差し湯流量調整弁を所定開度まで絞ることにより、所定の差し湯流量で一定に維持されて高温差し湯が継続されることになる。そして、この状態から給湯使用が開始されることになったとしても、給湯流量調整弁は給湯流量が制限されるよう所定開度で待機状態になっているため、給湯流量調整弁よりも上流側にある程度の背圧を維持したまま、缶体から出湯される湯が高温差し湯路と一般給湯路との双方に分流されることになる。このため、差し湯流量調整弁の開度を直前開度に維持しておくことで、給湯使用が生じる前とほぼ同じ流量の高温差し湯が高温差し湯路に継続して分流され、これにより、缶体内に残る高温の湯を、高温差し湯路を通して浴槽に対しそれまでと同じほぼ一定の差し湯流量にてパージすることが可能となる。このことにより、前記の缶体内に残る高温の湯が給湯使用の発生により一般給湯路側に一気に流れてしまうという事態の発生が抑制されることになり、この結果、バイパス路を通しての混水も適正に行われ、混水が追いつかずにオーバーシュートが生じてしまうという不都合の発生も回避することが可能となり、切換の過渡期における設定給湯温度への温調の確実化も図り得ることになる。
加えて、前記高温差し湯路に、差し湯流量調整弁に加え、非通電時に閉状態を維持し通電することにより開状態に変換する差し湯電磁弁を差し湯流量調整弁と直列に介装し、差し湯制御手段として、高温差し湯運転中に給湯使用が生じたとき、差し湯流量調整弁が直前開度に維持されている間、差し湯電磁弁を開状態に維持する制御を行うように構成する。この特定事項を備えることにより、高温差し湯運転中に給湯使用が生じたときに高温差し湯を中断又は停止して給湯運転への切換の過渡期における高温の湯の浴槽へのパージを一定の差し湯流量にて確実に行い得るという前記の作用に加え、高温差し湯運転中に例えば停電が発生したとしても、その停電により差し湯電磁弁が自動的に閉状態に戻り、これにより、高温差し湯路を確実に遮断して浴槽側に高温の湯が流れてしまうことを阻止することが可能となる。
さらに加えて、高温差し湯路に、差し湯流量調整弁及び差し湯電磁弁よりも下流側位置に前記浴槽への経路に流れる湯の温度を検出するための温度センサをさらに介装し、差し湯制御手段として、高温差し湯運転中に給湯使用が発生したとき、缶体で加熱する湯の温度を低下させるための缶体出湯温度の低下処理を実行し、前記浴槽への経路に流れる湯の温度が前記高温湯の温度とは明らかに異なる温度として検出し得る程度に設定された設定温度まで温度低下したことが前記温度センサにより検出されることを条件に、差し湯電磁弁を閉状態に切換制御する構成とした(請求項1)。この特定事項を備えることにより、高温差し湯運転の停止中において前記温度センサによる検出温度を監視することで、差し湯電磁弁に開故障が万一発生していれば、その開故障の発生を確実に検知することが可能となる。すなわち、開故障が発生していれば、高温の湯が差し湯電磁弁を通過して下流側に漏れ、その高温の湯が前記温度センサにより検出されることになる。そして、単に缶体内の高温の湯がパージされた段階で差し湯電磁弁を閉切換する場合には前記温度センサの設置位置ではまだ高温の湯が滞留している可能性があり、的確な開故障検知の判定が困難になるのに対し、前記温度センサが温度低下を検出したことを条件に高温差し湯運転を終了するようにしているため、差し湯電磁弁の開故障の検知をより的確に行うことが可能になる。
以上、説明したように、本発明の給湯装置によれば、高温差し湯運転中においては、高温差し湯路に作用する給水路からの給水の供給圧に抗して差し湯流量調整弁を所定開度まで絞ることにより、所定の差し湯流量で一定に維持されて高温差し湯を継続させることができるようになる。そして、この状態から給湯使用が開始されることになったとしても、給湯流量調整弁は給湯流量が制限されるよう所定開度で待機状態になっているため、給湯流量調整弁よりも上流側にある程度の背圧を維持したまま、缶体から出湯される湯が高温差し湯路と一般給湯路との双方に分流させることができるようになる。このため、差し湯流量調整弁の開度を直前開度に維持しておくことで、給湯使用が生じる前とほぼ同じ流量の高温差し湯を高温差し湯路に継続して分流させることができるようになり、これにより、缶体内に残る高温の湯を、高温差し湯路を通して浴槽に対しそれまでと同じほぼ一定の差し湯流量にてパージすることができるようになる。加えて、前記の缶体内に残る高温の湯が、給湯使用が生じて一般給湯路側に一気に流れることを抑制することができることになり、この結果、バイパス路を通しての混水を適正に行うことができ、混水が追いつかずにオーバーシュートが生じてしまうという不都合の発生も回避することができるようになる。このため、切換の過渡期における設定給湯温度への温調の確実化を図ることができるようになる。
又、高温差し湯路に、差し湯流量調整弁に加え、非通電時に閉状態を維持し通電することにより開状態に変換する差し湯電磁弁を差し湯流量調整弁と直列に介装し、差し湯制御手段として、高温差し湯運転中に給湯使用が生じたとき、差し湯流量調整弁が直前開度に維持されている間、差し湯電磁弁を開状態に維持する制御を行う構成としているため、高温差し湯運転中に給湯使用が生じたときに高温差し湯を中断又は停止して給湯運転への切換の過渡期における高温の湯の浴槽へのパージを一定の差し湯流量にて確実に行うことができるという前記効果に加え、高温差し湯運転中に例えば停電が発生したとしても、その停電により差し湯電磁弁が自動的に閉状態に戻り、これにより、高温差し湯路を確実に遮断して浴槽側に高温の湯が流れてしまうことを阻止することができるようになる。
さらに、高温差し湯路に、差し湯流量調整弁及び差し湯電磁弁よりも下流側位置に前記浴槽への経路に流れる湯の温度を検出するための温度センサをさらに介装し、差し湯制御手段として、高温差し湯運転中に給湯使用が発生したとき、缶体で加熱する湯の温度を低下させるための缶体出湯温度の低下処理を実行し、前記浴槽への経路に流れる湯の温度が前記高温湯の温度とは明らかに異なる温度として検出し得る程度に設定された設定温度まで温度低下したことが前記温度センサにより検出されることを条件に、差し湯電磁弁を閉状態に切換制御する構成としているため、高温差し湯運転の停止中において前記温度センサによる検出温度を監視することで、差し湯電磁弁に開故障が万一発生していれば、その開故障の発生を確実に検知することができるようになる。すなわち、開故障が発生していれば、高温の湯が差し湯電磁弁を通過して下流側に漏れ、その高温の湯が前記温度センサにより検出されることになる。そして、単に缶体内の高温の湯がパージされた段階で差し湯電磁弁を閉切換する場合には前記温度センサの設置位置ではまだ高温の湯が滞留している可能性があり、的確な開故障検知の判定が困難になるのに対し、温度センサが温度低下を検出したことを条件に高温差し湯運転を終了するようにしているため、差し湯電磁弁の開故障の検知をより的確に行うことができるようになる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の給湯装置1を示したものである。この給湯装置1は、高温差し湯機能付きに構成されており、缶体2において給水路3からの水を所定の高温(高温差し湯の場合には例えば80℃、給湯の場合には例えば75℃)まで熱交換加熱した後に出湯路4に出湯された湯を、給湯栓51等に至る一般給湯路5と、浴槽6に至る高温差し湯路7とに分岐させて供給可能となっている。一般給湯路5には、その途中位置にバイパス路8の下流端が合流するように接続されており、このバイパス路8を通して、バイパス流量調整弁81により給水路3から分流させた所定流量の水が導入可能となっている。このバイパス流量調整弁81の開度制御に基づく混合比制御により一般給湯路5の高温の湯に対し所定量混水し、給湯栓51への給湯温度を所定の設定給湯温度(例えば40℃)に温調し得るようにされている。又、このバイパス路8の合流位置より下流側位置の一般給湯路5から注湯路9が分岐され、この注湯路9の下流端は浴槽6に対し連通接続されており、設定湯張り温度に温調された湯を浴槽6に注湯して湯張りし得るようになっている。前記の高温差し湯路7の下流端は注湯路9に連通接続され、これにより、高温差し湯路7に流入した高温差し湯が注湯路9を通して浴槽6まで供給されるようになっている。高温差し湯は、湯張り後の浴槽6内の湯水を昇温させて追い焚きと同等の役割を果たすようになっている。以下、各構成要素について、詳細に説明する。
前記缶体2は、送風ファン21からの燃焼用空気及び燃料供給系22からの燃料ガスの供給を受けて燃焼する燃焼バーナ23と、この燃焼バーナ23の燃焼熱により熱交換加熱される熱交換器24,25とが内蔵されている。燃焼バーナ23は、例えば3つの領域が互いに独立にあるいは任意に組み合わせて燃焼可能に構成され、又、熱交換器としては、燃焼ガスの顕熱により熱交換加熱するための主熱交換器24と、主熱交換器24通過後の燃焼排ガスの潜熱回収により予熱するための副熱交換器25とで構成されている。そして、前記副熱交換器25の入口には、水道管又は水道タンクに接続されて上水を給水する給水路3の下流端が接続され、副熱交換器を通過した後に主熱交換器24を通過する間に熱交換加熱された湯が、主熱交換器24の出口に接続された出湯路4の上流端に出湯されるようになっている。なお、熱交換器として2種類のもの24,25を備えている点や、燃焼バーナ23が独立燃焼可能な3つの領域を備えている点などは、本発明において必須のものではなく、缶体としては給水を受けて加熱し得るものであれば本発明を適用することができる。
前記給水路3には、バイパス路8の分岐位置よりも下流側(缶体2側)において缶体2に給水される水の給水流量を検出する缶体流量センサ31と、その給水温度を検出する給水温度センサ32とがそれぞれ介装されている。そして、缶体2で熱交換加熱されて昇温した高温湯の出湯温度を検出するための缶体温度センサ41が出湯路4に介装されている。
前記一般給湯路5には、バイパス路8の合流位置の上流側位置に逆止弁52が介装される一方、前記合流位置の下流側であって前記注湯路9の分岐位置よりも上流側に、過流出防止弁とも呼ばれる給湯流量調整弁53と、給湯栓51又は注湯路9に供給される給湯温度を検出する給湯温度センサ54と、給湯流量を検出する給湯流量センサ55とがそれぞれ介装されている。
前記高温差し湯路7には、非通電状態で閉状態を維持し通電すると開切換する電磁開閉弁により構成され浴槽6に対し高温差し湯をするか停止するかの開閉切換可能な差し湯電磁弁71と、開度調整による差し湯流量を変更調整可能な差し湯流量調整弁72とがそれぞれ介装されている。このような差し湯電磁弁71と、差し湯流量調整弁72とを互いに独立して設置していることにより、例えば停電が発生したとしても、高温差し湯路7を確実に遮断して浴槽6側に高温湯が流れてしまうことを阻止することができる。すなわち、例えば閉止機能付きの流量調整弁を用いて、高温差し湯路7の開閉機能と流量調整機能との双方を1つの機器で実現させた場合、高温差し湯運転中に停電が万一発生すると、その開いた状態のままとなってしまうという不都合が考えられる。これに対し、前記の如く差し湯電磁弁71と、差し湯流量調整弁72とを互いに独立して設置することで、差し湯電磁弁71がたとえ開状態に制御されて高温差し湯運転中であったとしても、停電が発生すれば、差し湯電磁弁71を自動的に閉状態に戻すことができ、高温差し湯路7を確実に遮断状態に切換ることができるようになる。
さらに、前記注湯路9には、その開閉により注湯して湯張りを行うか否かに切換える電磁開閉弁により構成された湯張り弁91と、注湯流量を検出するための注湯流量センサ92とが介装されている。さらに、前記注湯路9には、前記高温差し湯路7の下流端の合流位置よりも下流側に、負圧を破壊して逆流防止するためのバキュームブレーカ93と、浴槽6への経路に流れる湯の温度(ふろ経路温度)を検出するためのふろ経路温度センサ94とが介装されている。このふろ経路温度センサ94は、高温差し湯路7を通して浴槽6側に流れる湯の温度を検出するためのものであるため、注湯路9ではなくて高温差し湯路7の適所、例えば注湯路9との合流位置よりも上流側であって前記差し湯電磁弁71よりも下流側位置に介装させることもできる。
なお、浴槽6には、撹拌アダプタ61が設置されており前記高温差し湯路7の下流端が前記撹拌アダプタ61に接続されている。そして、撹拌アダプタ61は、浴槽6内の湯水を取り込んで高温差し湯と混合・撹拌した後に浴槽6内に吐出させるようになっている。この際、取り込まれた浴槽6内の湯水の温度が浴槽温度センサ62により検出されて、浴室リモコン102を介してコントローラ10に出力されるようになっている。
以上の給湯装置において、給湯栓51へ所定の設定給湯温度で給湯を実行する給湯制御と、浴槽6に対する湯張り制御と、湯張り後の浴槽6内の湯水に対し高温湯を差し湯して追い焚きと同等機能を果たさせる差し湯制御と、差し湯電磁弁71の開故障を検知するための差し湯電磁弁故障検知処理とを含む種々の作動制御が、例えば台所リモコン101や浴室リモコン102等の各種リモコンからの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ(制御手段)10により実行されるようになっている。このような作動制御のために、コントローラ10は、給湯制御を行う給湯制御部103(図2参照)、湯張り制御を行う湯張り制御部104、差し湯制御を行う差し湯制御部105や、差し湯電磁弁故障検知処理を行う差し湯電磁弁故障検知処理部106等を備えている。コントローラ10は、CPUや書き換え可能メモリを備えるマイコンによって主構成されており、メモリに記憶されたプログラム及び各種データに基づいて前記の給湯制御や差し湯制御などを行うようになっている。
前記給湯制御部103は、例えば差し湯制御が行われていない状態で給湯栓51がユーザーにより開かれて給湯流量センサ55が所定の最低作動流量を検出すると、燃焼バーナ23及び燃料供給系22からなる燃焼系を燃焼作動させて給湯用の所定の高温(例えば60〜75℃)の湯を出湯路4及び一般給湯路5に出湯させる一方、給水温度センサ32による検出給水温度、缶体温度センサ41による検出出湯温度、給湯温度センサ54による検出給湯温度やリモコン101に入力設定された設定給湯温度に基づいてバイパス流量調整弁81による混合比制御や、給湯流量調整弁53の開度制御が行われる。この結果、給湯栓51に対し所定の設定給湯温度(例えば40℃)に温調された湯が給湯されることになる。例えばバイパス流量調整弁81の混合比制御により混水量が増加すると缶体2からの高温湯がより低温側に温調される。又、例えば給湯栓51が最大側に開かれて大流量の給水状態に陥ることにより、燃焼系を最大能力で加熱制御したとしても熱交換器24,25において所定温度まで昇温させ得ない場合には、給湯流量調整弁55の開度を所定量絞って所定温度までの昇温を確保するようになっている。
前記湯張り制御部104は、例えば浴室リモコン102の湯張りスイッチ又はふろ自動スイッチがユーザーによりON操作されると、湯張り弁91を開き、前記給湯制御部103の給湯制御と同様に、燃焼系の燃焼作動と、バイパス流量調整弁81及び給湯流量調整弁53の開度制御とを行い、前記浴室リモコン102に設定入力された設定湯張り温度に温調された湯を浴槽6に対し注湯するようになっている。
前記差し湯制御部105は、例えば浴室リモコン102の差し湯スイッチ(熱くするためのスイッチ)がユーザーによりON操作されると、差し湯制御を実行することになる。あるいは、前記のふろ自動スイッチがON操作されている場合には、浴槽温度センサ62が所定温度よりも低下したことを検出すれば、保温のために差し湯制御が自動的に実行されるようになっている。以下、図3,図4のフローチャートを参照しつつ、詳細に説明する。
前記の差し湯スイッチのON操作等が出力されると(ステップS1でYES)、まず、給湯流量調整弁53を所定の設定開度に変更してこれを維持させた上で(ステップS2)、差し湯電磁弁71を開切換して燃焼系22,23の燃焼作動を開始し(ステップS3)、差し湯流量調整弁72の開度を変更調整して所定の差し湯流量で一定になるように差し湯流量制御を実行する(ステップS4)。前記のステップS2は、後述の如く、高温差し湯運転中に給湯使用が割り込んだ場合に高温差し湯運転を中断して給湯運転に切換えるための過渡期の制御のために、予め所定開度まで絞った状態にして待機させておくものである。この待機位置(給湯流量調整弁53の所定の設定開度)としては、全開と全閉との間の中央位置に相当する開度を設定することができ、具体的には、弁がステッピングモータへの指令ステップ数により回転が制御されて全開(0ステップ)〜全閉(3400ステップ)まで弁開度が変化する場合、例えばそのほぼ中央位置に相当する2200ステップの位置を設定することができる。又、所定の差し湯流量とは、浴槽6内にチョロチョロと流入する程度の流量(例えば4L/min)であり、このため、差し湯流量調整弁72の開度をかなり絞り側に調整・設定する。具体的に、差し湯流量制御として、缶体流量センサ31から出力される検出流量に基づいて差し湯流量が前記の所定値になるように差し湯流量調整弁72の開度をフィードバック制御する。
そして、給湯使用がないことを例えば給湯流量センサ55の検出流量がゼロであることにより確認した上で(ステップS5でNO)、高温差し湯運転の終了条件が成立していなければ(ステップS6でNO)、ステップS3に戻り、ステップS3以降の処理を続ける。ここで高温差し湯運転の終了条件とは、浴室リモコン102の差し湯スイッチがOFFに切換操作されたこと、高温差し湯の検出流量値の積算に基づく高温差し湯量が設定湯量に達したこと、又は、浴槽温度センサ62による浴槽内の湯水温度が所定の温度まで昇温したことのいずれかである。又、ステップS5で給湯流量センサ55が最低作動流量以上の流量を検出して給湯使用の開始が検出された場合には(ステップS5でYES)、高温差し湯運転を中断させるべく、後述の過渡期の制御(ステップS10〜S14)を経て中断させることになる。
ステップS6で高温差し湯運転の終了条件が成立すれば(ステップS6でYES)、燃焼系22,23の燃焼作動を停止させた後(ステップS7)、ふろ経路温度センサ94の検出温度が所定の設定温度まで低下するまでの僅かな間(例えば10〜20sec)、差し湯電磁弁71を開状態に維持して浴槽6側への湯水供給を継続させる(ステップS8でNO)。そして、ふろ経路温度センサ94の設置位置での検出温度が前記設定温度まで温度低下すれば(ステップS8でYES)、差し湯電磁弁71を閉切換制御して高温差し湯運転を終了させる(ステップS9)。ふろ経路温度センサ94の設置位置における経路内の湯水温度が前記設定温度まで低下するまで待つのは、後述の差し湯電磁弁の開故障検知のために必要となるためである。前記設定温度としては、高温差し湯の温度とは明らかに異なる温度として検出し得る程度の温度であればよく、好ましくは、高温差し湯が例えば80℃であれば前記設定温度として40℃〜45℃程度の温度を設定することができる。
一方、ステップS5の判定で給湯使用が開始された場合には(ステップS5でYES)、まず、ステップS2で設定した給湯流量調整弁53の開度をそのまま維持した状態で給湯制御を実行するように給湯制御部103に指令を出力する一方、差し湯流量調整弁72の開度を給湯使用が開始される直前の制御開度(直前開度)に維持する(ステップS10)。次に、缶体出湯温度の低下処理を実行する(ステップS11)。すなわち、燃焼系22,23の燃焼量を低減させることにより、缶体2から出湯路4に出湯される湯の温度が、設定給湯温度と同等以上でかつ後述の差し湯流量調整弁71の開故障検知処理の前提となるステップS8の設定温度と同等以下の温度(例えば41℃)に低下するように制御する。なお、燃焼量を低減制御する代わりに、燃焼自体を停止させるように燃焼系22,23の作動制御を行うことにより、缶体2から出湯路4に出湯される湯の温度を前記の如く低下させるようにしてもよい。これをふろ経路温度センサ94の検出温度が前述の如き低下した温度として設定された設定温度まで低下するまでの僅かな間(例えば10〜20sec)、差し湯電磁弁71を開状態に維持して浴槽6側への湯水供給を継続させる(ステップS12でNO)。
そして、ふろ経路温度センサ94の設置位置での検出温度が前記設定温度まで温度低下すれば(ステップS12でYES)、差し湯電磁弁71を閉切換制御して高温差し湯運転を中断させるとともに、給湯制御部103に対し通常の給湯制御、つまりステップS10で給湯流量調整弁53を設定開度に維持するという制約を解除して通常の給湯制御への移行を許可する旨の指令を出力する(ステップS13)。この高温差し湯運転の中断を給湯使用が停止されるまで続け(ステップS14でNO)、給湯流量センサ55の検出流量に基づき給湯使用が停止されたと判定されると、ステップS2に戻り高温差し湯運転を再開する(ステップS14でYES)。
以上の差し湯制御の場合、高温差し湯路7に作用する給水路3からの給水の供給圧(例えば水道管又は水道タンクからの供給圧)に抗して差し湯流量調整弁72を所定開度まで絞ることにより、かなり低い所定の差し湯流量(例えば4L/min)で一定に維持されて高温差し湯運転が継続されている状態で、給湯使用が開始されることにより出湯路4に出湯されている高温湯が一般給湯路5にも流れ始めることになったとしても、給湯流量調整弁53が例えば全開と全閉との間の中央位置まで絞られた開度に設定されているため(図4のステップS10)、給湯流量調整弁53よりも上流側にある程度の背圧を維持したまま、出湯路4から高温差し湯路7と一般給湯路5との双方に分流させることができるようになる。このため、差し湯流量調整弁72の開度を直前開度に維持しておくことで(同ステップS10)、給湯使用の開始前とほぼ同じ流量の高温差し湯を高温差し湯路7に対し継続して分流させることができる。これにより、給湯使用が開始された時点から缶体出湯温度の低下処理(図4のステップS11)が開始されるまでに缶体2内(熱交換器24,25内)や出湯路4内に残る高温湯を、高温差し湯路7を通して浴槽6に対し遅すぎずかつ速すぎない、それまでとほぼ同じ一定の差し湯流量にてパージすることができるようになる。一方、前記の缶体2内等に残る高温湯を高温差し湯路7にもそれまでと同様の一定の差し湯流量にて確実に分流させ続けることができるため、前記高温湯が給湯使用の開始により一般給湯路5側に一気に流れることが抑制されることになる。この結果、バイパス流量調整弁81の混合比制御が追いつかずにオーバーシュートが生じてしまうという不都合の発生も回避することができ、バイパス路8を通しての混水により設定給湯温度への温調を確実に行うことができる。そして、ふろ経路温度センサ94が設定温度までの温度低下を検出した上で高温差し湯運転を中断又は停止させているため(ステップS9,S13)、後述の差し湯電磁弁故障検知処理を確実に行うことができることになる。
次に、図5を参照しつつ、差し湯電磁弁故障検知処理部106による差し湯電磁弁71の開故障検知処理について説明する。これは、高温差し湯運転中ではないこと(ステップS21でYES)、及び、注湯運転中ではないこと(ステップS22でYES)を条件に、ふろ経路温度センサ94による検出温度を監視することで(ステップS23)、差し湯電磁弁71の開故障検知を実現させるものである。すなわち、高温差し湯運転の停止や中断は、ふろ経路温度センサ94の設置位置に所定の低温度の湯が到達することで実行されているため(ステップS8でYES,S9、S12でYES,S13)、その後、差し湯電磁弁71に開故障が万一発生し、差し湯電磁弁71を通過して漏れてきた高温湯がふろ経路温度センサ94位置まで到達すれば、このふろ経路温度センサ94によりその高温湯が検出されることになる。このため、ふろ経路温度センサ94がその高温湯に対応する判定温度以上の温度を検出すれば(ステップS23でYES)、差し湯電磁弁71は開故障状態に陥っていると判定して開故障検知処理を実行する(ステップS24)。開故障検知処理としては、リモコン101,102に対し開故障している旨のエラー表示を行う、燃焼系22,23の燃焼作動を強制的に停止する、などのいずれか1の処理を、又は、双方の処理を組み合わせて、実行させるようにすればよい。