JP2015202093A - 乳化油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高い起泡力や気泡安定性が得られ、ベーカリー食品にソフト感やしっとり感を付与するとともに、ほどよいコク味を付与する乳化油脂組成物、及び該乳化油脂組成物を使用したソフト感やしっとり感が良好で、ほどよいコク味を有するベーカリー食品を提供することである。
【解決手段】以下の(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する、乳化油脂組成物。
(A)植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して1質量%以上含有する食用油脂 10〜40質量%
(B)飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール 2〜20質量%
(C)プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤 2〜20質量%
(D)水 10〜50質量%
【選択図】なし

Description

本発明は、ベーカリー食品に使用する乳化油脂組成物に関し、特に、ケーキ類を製造するのに好適な乳化油脂組成物に関する。
スポンジケーキ、シフォンケーキ、蒸しケーキ等のケーキ類の大量生産においては、全原料を一度に混合する、所謂オールインミックス法が採られており、ケーキ生地の起泡性向上、あるいは生地の安定性向上、さらには油脂によるしっとり感を付与する目的で、起泡性を有する乳化油脂組成物が用いられている。乳化油脂組成物は、飽和脂肪酸のモノアシルグリセロールとともに、プロピレングリコール脂肪酸エステルや、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を含有し、ケーキ類の製造において、ケーキ生地に、優れた起泡性、乳化性、分散性と焼成時の気泡安定性を付与している。
一般的に乳化油脂組成物には、ケーキ類にソフト感やしっとり感を出すために、ベースの油脂として冷蔵下でも液体である菜種油等の液体油が使用されている。しかしながら、液体油はケーキ類にソフト感やしっとり感を付与する反面、風味があっさりと淡泊であり、コク味に欠けたり、乳化油脂組成物中に多量に使用される乳化剤の好ましくない風味が出やすかったりするという難点がある。
このような課題を解決するために、例えば特許文献1には、HLB値9以上のショ糖脂肪酸エステル1〜10重量%及びグリセリン脂肪酸エステル0.1〜5重量%を含む乳化剤、ならびに水30〜78.8重量%を含む水相部と、15℃以上の融点を有する少なくとも1種の油脂20〜60重量%、ならびに少なくとも1種の油相部乳化剤0.1〜5重量%を含む油相部より形成される、水相部が連続相をなす乳化組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1の乳化組成物を使用したケーキは、焼き立ては口どけが良く、風味良好ではあるが、ややパサついた食感であり、しっとり感に乏しいものであった。
特開平11−225670号公報
従って、本発明の課題は、高い起泡力や気泡安定性が得られ、ベーカリー食品にソフト感やしっとり感を付与するとともに、ほどよいコク味を付与する乳化油脂組成物、及び該乳化油脂組成物を使用したソフト感やしっとり感が良好で、ほどよいコク味を有するベーカリー食品を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、乳化油脂組成物を構成する油脂の構成成分に着目し、油脂中に植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を特定量使用することにより、乳化油脂組成物の物性が軟らかくなり、生地への馴染みがよく、高い起泡力や気泡安定性がある乳化油脂組成物の特性はそのままに、ソフト感やしっとり感が良好で、ほどよいコク味を有するベーカリー食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の態様の1つは、以下の(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する、乳化油脂組成物である。
(A)植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して1質量%以上含有する食用油脂 10〜40質量%
(B)飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール 2〜20質量%
(C)プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤 2〜20質量%
(D)水 10〜50質量%
好ましい態様としては、上記(A)食用油脂が、植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して2〜20質量%含有する食用油脂である、乳化油脂組成物である。
好ましい態様としては、上記(A)食用油脂が、米糠油を含有する食用油脂である、乳化油脂組成物である。
本発明のまた別の態様の1つは、上記の乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品生地であって、前記ベーカリー食品生地中の穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量が、植物ステロールに換算して0.03〜2質量部である、ベーカリー食品生地である。
本発明のまた別の態様の1つは、上記のベーカリー食品生地を加熱してなる、ベーカリー食品である。
本発明のまた別の態様の1つは、上記の乳化油脂組成物を使用して、穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量が、植物ステロールに換算して0.03〜2質量部であるベーカリー食品生地を調製し、前記ベーカリー食品生地を加熱する、ベーカリー食品の製造方法である。
本発明により、ベーカリー食品生地に馴染みやすく、高い起泡力や気泡安定性があり、ベーカリー食品にソフト感やしっとり感を付与するとともに、ほどよいコク味を付与する乳化油脂組成物を提供できる。また、該乳化油脂組成物を使用したソフト感やしっとり感が良好で、ほどよいコク味を有するベーカリー食品を提供することができる。
以下、本発明に関してより詳細に説明を行う。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、(A)食用油脂、(B)飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール、(C)プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤及び(D)水を含有する、水中油型に乳化された油脂組成物である。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物に使用する(A)食用油脂(以下、成分(A)と略すことがある)は、植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して1質量%以上含有する。ここで成分(A)に含有される植物ステロールは、食品産業において一般的に使用される植物ステロールであり、ブラシカステロール類、カンペステロール類、スティグマステロール類、シトステロール類、イソフコステロール類、デルタ5−アベナステロール類、7−エルゴステロール類等が挙げられるが、その他シトスタノール類、カンペスタノール類、スティグマスタノール類等の類似構造を有する成分も含まれる。
成分(A)に含有される植物ステロールは、天然には、大豆油、菜種油、米油、その他の植物油等に少量含有されており、最も一般的なものにはシトステロール、スティグマステロール、カンペステロールなどがあり、例えば、大豆油、大豆胚芽油、菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、藻類油等の食用植物油脂の脱臭工程で得られた脱臭留出物を濃縮・精製して得られる植物ステロールを好適に使用できる。
なお、植物性ステロールは一般に食用油脂への溶解性が低いため、成分(A)中の植物ステロールの含量は、3質量%未満であることが好ましく、2質量%未満であることがより好ましい。
成分(A)に含有される植物ステロールエステルとは、上述の食品産業において一般的に使用される植物性ステロールと脂肪酸とのエステル体であり、その脂肪酸としては食用油脂由来のものであればよく、飽和、不飽和の区別なく用いることができる。成分(A)中に含有させる場合、植物ステロールエステルが結晶として析出しない不飽和脂肪酸であることが好ましく、特にオレイン酸やリノール酸であることが好ましい。
成分(A)に含有される植物ステロールエステルの製造法としては、脂肪酸による直接エステル化法、脂肪酸メチルエステル又は油脂との酵素又はケミカル触媒によるエステル交換法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。また、植物ステロールエステルは、大豆油、菜種油、コーン油、米油、その他植物油等に少量含まれており、脂肪酸エステルだけでなく、フェルラ酸エステル、配糖体などの形で存在するので、これらをそのまま、または、濃縮等して用いることもできる。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物に使用する食用油脂(成分(A))は、上述の植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して1質量%以上含有する。具体的には、植物ステロール及び植物ステロールエステルは、上述の様に食用植物油脂にも少量含有されるので、上述の食用植物油脂をベースとして成分(A)中に1質量%以上含有する様に、不足分を市場に流通する植物ステロール及び/又は植物ステロールエステルの濃縮物を添加することで調製することができる。また、食用油脂と植物ステロールとをエステル交換した植物ステロールエステル含量が高い食用油脂を適宜使用してもよい。成分(A)は、植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、2〜20質量%含有することが好ましく、2.5〜15質量%含有することがより好ましく、3〜10質量%含有することがさらに好ましい。成分(A)中の植物性ステロール及び植物性ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含有量が上記の範囲にあると、乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品に適度なコク味が付与され好ましい。
なお、成分(A)中の植物ステロール及び植物ステロールエステルの含量は、例えば、日本油化学会制定 基準油脂分析法(2013年版) 参考法2.3コレステロールの定量法に準拠して、植物ステロールに換算して求めることができる。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物に使用する食用油脂(成分(A))は、上述のように、食用植物油脂をベース油脂として使用できるが、植物ステロール及び/又は植物ステロールエステルにより付与されるコク味との相性が良い(コク味が強調される)という意味で、米糠油、コーン油、綿実油、パームスーパーオレインから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、特に、米糠油を含むことが好ましい。米糠油、コーン油、綿実油、パームスーパーオレインから選ばれる1種以上の、成分(A)中の含量は、40質量%以上であることがこのましく、60質量%以上であることがより好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、(B)飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール(以下、成分(B)と略すことがある)を2〜20質量%含有する。成分(B)の含量は、3〜12質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることがより好ましく、5〜8質量%であることがさらに好ましい。また、上記飽和脂肪酸に特に制限はないが、炭素数14〜22の飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数16〜18、すなわちパルミチン酸、ステアリン酸であることがより好ましい。成分(B)は、1種類の飽和脂肪酸が結合したモノアシルグリセロールからなるものでもよいし、2種類以上の飽和脂肪酸が結合したモノアシルグリセロールからなるものでもよい。本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物に使用する成分(B)が、上記含量及び構成飽和脂肪酸であると、該乳化油脂組成物の使用により、ボリュームのあるベーカリー食品ができるので好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、(C)プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤(以下、成分(C)と略すことがある)を2〜20質量%含有する。成分(C)の含量は、3〜15質量%であることが好ましく、4〜12質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。また、成分(C)は、HLB値が2〜8の乳化剤を2〜15質量%含むことが好ましく、3〜10質量%含むことがより好ましく、4〜8質量%含むことがさらに好ましい。また、成分(C)は、HLB値が9〜20の乳化剤を1〜10質量%含むことが好ましく、2〜8質量%含むことがより好ましく、3〜7質量%含むことがさらに好ましい。成分(C)の乳化剤を構成する脂肪酸に特に制限はないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物に使用する成分(C)が、上記含量であると、該乳化油脂組成物の使用により、ボリュームのあるベーカリー食品ができるので好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、(D)水を10〜50質量%含有する。水(以下、成分(D)と呼ぶことがある)は飲用できれば特に制限はなく、水道水、ミネラルウォーター、脱イオン水、蒸溜水等を使用することができる。本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物における水の含量は、15〜45質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲にあると、乳化が安定し、また、保存性が良いので好ましい。なお、本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物における水の含量は、水として配合する量であり、後述する副素材等に含まれる水分を考慮したものではない。すなわち、配合する水の量と副素材等に含まれる水分とを合計した含量ではない。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記以外のその他の乳化剤を含んでもよい。その他の乳化剤としては、レシチン、有機酸モノアシルグリセロール(有機酸モノグリセリド)、ポリソルベート等が挙げられる。その他の乳化剤の含量は、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましく、0.3〜2質量%であることがさらに好ましい。その他の乳化剤としては、レシチンが好ましい。レシチンは、粗製レシチン、精製レシチン、酵素分解レシチン等から選択される1種以上を使用することが好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記の各種成分以外に、一般的に乳化油脂組成物に使用される副素材を含んでもよい。副素材としては、例えば、アルコール類、糖類、増粘多糖類、澱粉類、無機塩、有機酸塩、乳製品、卵製品、香料、着色料、調味料、酸化防止剤、保存料、pH調整剤等を挙げることができる。
上記アルコール類としては、例えば、エタノール、プロピレングリコール、洋酒等が挙げられる。上記糖類としては、例えば、上白糖(ショ糖)、ブドウ糖、果糖、乳糖、液糖、水飴、酵素糖化水飴等の糖や、糖を還元処理したソルビトール、還元澱粉糖化物等の糖アルコールが挙げられる。上記増粘多糖類としては、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、セルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。上記澱粉類としては、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉等の澱粉や、澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等を施した化工澱粉等が挙げられる。上記無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、上記有機酸塩としては、脂肪酸、脂肪酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。上記乳製品としては、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー等が挙げられる。上記卵製品としては、例えば、全卵、卵黄、卵白、およびそれらを凍結、乾燥、加糖、加塩、殺菌、酵素処理等の処理をしたものが挙げられる。副素材は、これらの中から選ばれた1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物における上記副素材の含量は、乳化油脂組成物中、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。各個の成分としては、乳化油脂組成物中、例えば、アルコール類は1〜8質量%であることが好ましく、糖類は20〜40質量%であることが好ましく、増粘多糖類は0.02〜0.5質量%であることが好ましく、乳製品は0.5〜5質量%であることが好ましい。副素材の含量が上記範囲にあると、乳化油脂組成物の調製が容易であり、乳化が安定するので好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、油相と水相とを混合乳化する通常の方法により製造することができる。例えば、水に、必要に応じて、水溶性の乳化剤、増粘多糖類、糖類、乳製品、アルコール類等を加えて攪拌しながら加温し、水相部を調製する。並行して、食用油脂に、飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール等の油溶性の乳化剤を加えて加温溶解させ、油相部を調製する。上記油相部を、水相部にゆっくりと加えながら攪拌乳化し、更に攪拌しながら冷却して水中油型の乳化油脂組成物を得ることができる。上記油相部と上記水相部との質量比は、好ましくは1:1〜1:4、より好ましくは、1:1.5〜1:3の範囲にあると、乳化が安定した乳化油脂組成物が得られるので好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、パン・菓子等のベーカリー食品の製造に使用される。ベーカリー食品としては、特に起泡性が必要とされるケーキ類に使用されることが好ましく、特にオールインミックス法により製造されるケーキ類に使用されることが好ましい。オールインミックス法は、卵をあらかじめ起泡させることなく、全材料を同時に加えて泡立てる生地の調製方法である。ケーキ類としては、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スナックケーキ、ブッセ、バターケーキ、蒸しケーキ等が挙げられ、特にスポンジケーキや蒸しケーキに使用されることが好ましい。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物は、生地へ馴染みやすい適度な硬さを有している。乳化油脂組成物の硬さは、レオメーターによる最大荷重が20〜60gであることが好ましく、より好ましくは20〜50gである。レオメーターによる最大荷重は、20℃に調温した乳化油脂組成物を、直径70mm、高さ40mmの円筒形カップに充填し、レオメーター(例えば、株式会社サン科学製、CR500DXなど)を使用して、円筒形プランジャー(直径15mm、高さ50mm)を、進入速度200mm/分で20mmまで進入させることで測定できる。
本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物を使用して製造されるベーカリー食品は、本発明の乳化油脂組成物を含み、穀粉を主体としたベーカリー食品生地を加熱することで製造される。特にケーキ類の場合は、本発明の乳化油脂組成物を含み、少なくとも穀粉と、卵製品と、糖類とを含有するケーキ生地を加熱することで製造される。加熱方法としては、焼成または蒸すことが好ましい。良好な食感と風味を得る観点から、ケーキ類は、少なくとも穀粉と、該穀粉100質量部に対して、卵製品50〜300質量部と、糖類20〜250質量部と、本発明の乳化油脂組成物3〜100質量部とを混合して含気させたケーキ生地を調製し、このケーキ生地を焼成または蒸して製造されることが好ましい。より好ましくは、穀粉100質量部に対して、卵製品を80〜250質量部、糖類を50〜180質量部、本発明の乳化油脂組成物を5〜50質量部の割合で混合し、含気させたケーキ生地を焼成または蒸すことで製造される。
上記ベーカリー食品生地原料における穀粉としては、特に限定されるものではないが、例えば、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉)小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。上記ベーカリー食品生地原料における、卵製品、糖類については、本発明の実施の形態に係わる乳化油脂組成物の原料で述べたものと同様のものを使用することができる。上記ベーカリー食品生地は原料として、さらに乳製品、ベーキングパウダー、食用油脂、香料等を含んでいてもよい。
上記ベーカリー食品生地は、生地中の穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量が、植物ステロールに換算して0.03〜2質量部であることが好ましい。生地中の穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量は、植物ステロールに換算して0.06〜1質量部であることがより好ましく、0.06〜0.3質量部であることがさらに好ましく、0.08〜0.22質量部であることが最も好ましい。本発明の乳化油脂組成物を使用することで、ベーカリー食品生地中の穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量が、植物ステロールに換算して少量であっても、ベーカリー食品にほどよいコク味を付与することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、食用油脂中の植物ステロール及び植物ステロールエステルの含量は、日本油化学会制定 基準油脂分析法(2013年版) 参考法2.3コレステロールの定量法に準拠して、植物ステロールに換算して求めた。
<食用油脂の調製>
(油脂A−1)
菜種油(商品名:日清キャノーラ油、日清オイリオグループ株式会社製)と植物ステロール(遊離型フィトステロール、タマ生化学株式会社製)との混合物を、常法に従ってエステル交換、精製し、植物ステロール及び植物ステロールエステルの含量が、植物ステロールに換算して8.1質量%である油脂A−1を得た。
(油脂a−1)
菜種油(商品名:日清キャノーラ油、植物ステロール及び植物ステロールエステルの含量が、植物ステロールに換算して0.8質量%、日清オイリオグループ株式会社製)を油脂a−1とした。
(油脂a−2)
米糠油(植物ステロール及び植物ステロールエステルの含量が、植物ステロールに換算して0.9質量%、築野食品工業株式会社製)を油脂a−2とした。
<乳化油脂組成物の調製>
食用油脂以外の原料として以下のものを使用し、表1の配合に従って、実施例1〜4及び比較例1、2の乳化油脂組成物を調製した。乳化油脂組成物の調製は、油相の原材料と水相の原材料をそれぞれ別々に混合し、加熱溶解して油相と水相を調製し、水相に対して油相を徐々に添加しながら、ホモミキサーを用いて攪拌乳化し、攪拌しながら冷却することにより行った。調製した乳化油脂組成物は、室温にて一晩静置した後、各種評価に供した。
(食用油脂以外の原料)
(成分(B))
ステアリン酸モノアシルグリセロール(商品名:エマルジーMS、HLB値4.3、理研ビタミン株式会社製)
(成分(C))
プロピレングリコールモノベヘン酸エステル(商品名:リケマールPB−100、HLB値3.0、理研ビタミン株式会社製)
ソルビタンモノステアリン酸エステル(商品名:エマゾールS−10V、HLB値4.7、花王株式会社製)
ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:DKエステルF−110、HLB値11、第一工業製薬株式会社製)
(成分(D))
水道水
(その他の成分)
レシチン(商品名:レシチンDX、日清オイリオグループ株式会社製)
エタノール(商品名:アマノールSD、甘槽化学産業株式会社製)
プロピレングリコール(商品名:プロピレングリコール、旭硝子株式会社製)
砂糖(商品名:上白糖、三井製糖株式会社製)
水飴(商品名:ハイマルトースシラップMC−45、日本食品化工株式会社製)
乳清蛋白濃縮物(商品名:ミライ80、独国ミライ社製)
キサンタンガム(商品名:ビストップD−3000−DF、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
Figure 2015202093
*食用油脂中の植物ステロール含量換算値
Figure 2015202093
*食用油脂中の植物ステロール含量換算値
<乳化油脂組成物の硬さ評価>
上記で調製した実施例1〜4及び比較例1、2の乳化油脂組成物について、以下の条件にて、レオメーターによる最大荷重(g)測定を行い、硬さを評価した。結果を表4、5に示した。
(レオメーターの測定条件)
20℃に調温した乳化油脂組成物を、直径70mm、高さ40mmの円筒形カップに充填し、レオメーター(株式会社サン科学製、CR500DX)を使用して、円筒形プランジャー(直径15mm、高さ50mm)を、進入速度200mm/分で20mmまで進入し、最大荷重(g)を測定した。
最大荷重(g)が20〜50の硬さであると、生地への馴染みがよい。
<乳化油脂組成物の起泡力評価>
上記で調製した実施例1〜4及び比較例1、2の乳化油脂組成物について、表3のケーキ生地配合を使用して、以下の条件にて、ケーキ生地の比重測定を行い、起泡力を評価した。結果を表4、5に示した。
(ケーキ生地の比重測定条件)
凍結全卵、上白糖、乳化油脂組成物を混合し、これをホバートミキサー(米国ホバート・コーポレーション社製)の低速(50rpm)で攪拌しながら薄力粉とベーキングパウダーを加え、30秒間攪拌する。更に中速(100rpm)に切り替え、10分後の比重(g/ml)を測定した。
Figure 2015202093







*薄力粉の質量を100とした場合の割合
<ケーキの製造及び官能評価>
上記で調製した実施例1〜4及び比較例1、2の乳化油脂組成物について、表3のケーキ生地配合を使用して、以下のオールインミックス法にてケーキを製造し、以下の評価基準に従って官能評価を行った。結果を表4、5に示した。
(ケーキの製造方法)
凍結全卵、上白糖、乳化油脂組成物を混合し、これをホバートミキサー(アメリカ ホバート・コーポレーション社製)の低速(50rpm)で攪拌しながら薄力粉とベーキングパウダーを加え、30秒間攪拌する。更に中速(100rpm)に切り替え、ケーキ生地の比重が0.45(g/ml)になるまで攪拌した後、これを6号のデコレーション型に330g流し入れ、オーブンにて、上火190℃、下火170℃で28分間焼成する。焼成したケーキを一晩室温で保存し、官能評価に供した。
(官能評価基準)
以下の基準に従って、パネラー5名による総合評価を行った。

〔ソフト感・しっとり感〕
ソフトでしっとり感が強い ◎
ソフトでしっとり感が良好 ○
ふつう △
パサつきを感じる ×

〔コク味〕
コク味をしっかりと感じる ◎
コク味を感じる ○
ふつう △
淡泊でコク味に乏しい ×

〔甘味〕
コク味が引き立つ甘味を感じる ◎
コク味が引き立つ甘味をやや感じる ○
ふつう △
淡泊で甘味に乏しい ×
Figure 2015202093
*薄力粉100質量部に対する植物ステロール含量換算値の質量部
Figure 2015202093
*薄力粉100質量部に対する植物ステロール含量換算値の質量部

Claims (6)

  1. 以下の(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する、乳化油脂組成物。
    (A)植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して1質量%以上含有する食用油脂 10〜40質量%
    (B)飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするモノアシルグリセロール 2〜20質量%
    (C)プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の乳化剤 2〜20質量%
    (D)水 10〜50質量%
  2. 前記(A)食用油脂が、植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種を、植物ステロールに換算して2〜20質量%含有する食用油脂である、請求項1に記載の乳化油脂組成物。
  3. 前記(A)食用油脂が、米糠油を含有する食用油脂である、請求項1又は2に記載の乳化油脂組成物。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の乳化油脂組成物を使用したベーカリー食品生地であって、前記ベーカリー食品生地中の穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量が、植物ステロールに換算して0.03〜2質量部である、ベーカリー食品生地。
  5. 請求項4に記載のベーカリー食品生地を加熱してなる、ベーカリー食品。
  6. 請求項1〜3の何れか1項に記載の乳化油脂組成物を使用して、穀粉含量100質量部に対する植物ステロール及び植物ステロールエステルから選ばれる少なくとも1種の含量が、植物ステロールに換算して0.03〜2質量部であるベーカリー食品生地を調製し、前記ベーカリー食品生地を加熱する、ベーカリー食品の製造方法。
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