JP2015199635A - 窒化ガリウム自立基板、発光素子及びそれらの製造方法 - Google Patents

窒化ガリウム自立基板、発光素子及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価で且つ大面積化にも適した、窒化ガリウム単結晶基板の代替材料として有用な窒化ガリウム自立基板の提供。
【解決手段】窒化ガリウム自立基板12と、この基板上に形成される発光機能層14とを備えてなる発光素子10において、窒化ガリウム自立基板12は、略法線方向に単結晶構造を有する複数の窒化ガリウム系単結晶粒子で構成される板からなっており、配向多結晶焼結体上に、窒化ガリウムからなる種結晶層を、配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成した後、種結晶層上に厚さ20μm以上の窒化ガリウム系結晶から構成される層を、種結晶層の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成し、配向多結晶焼結体を除去することで、窒化ガリウム自立基板を製造ができ、発光機能層14も、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一以上有する発光機能層14。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化ガリウム自立基板、発光素子及びそれらの製造方法に関する。
単結晶基板を用いた発光ダイオード(LED)等の発光素子として、サファイア(α−アルミナ単結晶)上に各種窒化ガリウム(GaN)層を形成したものが知られている。例えば、サファイア基板上に、n型GaN層、InGaN層からなる量子井戸層とGaN層からなる障壁層とが交互積層された多重量子井戸層(MQW)、及びp型GaN層が順に積層形成された構造を有するものが量産化されている。また、このような用途に適した積層基板も提案されている。例えば、特許文献1(特開2012−184144号公報)には、サファイア下地基板と、該基板上に結晶成長せしめて形成された窒化ガリウム結晶層とを含む、窒化ガリウム結晶積層基板が提案されている。
もっとも、サファイア基板上にGaN層を形成する場合、GaN層は異種基板であるサファイアとの間で格子定数及び熱膨張率が一致しないため転位を生じやすい。また、サファイアは絶縁性材料であるため、その表面に電極を形成することができず、それ故、素子の表裏に電極を備えた縦型構造の発光素子を構成できない。そこで、窒化ガリウム(GaN)単結晶上に各種GaN層を形成したLEDが注目されている。GaN単結晶基板であれば、GaN層と同種の材質であることから、格子定数及び熱膨張率が整合しやすく、サファイア基板を用いる場合よりも性能向上が期待できる。例えば、特許文献2(特開2010−132556号公報)には、厚みが200μm以上の自立したn型窒化ガリウム単結晶基板が開示されている。
特開2012−184144号公報 特開2010−132556号公報
しかしながら、単結晶基板は一般的に面積が小さく且つ高価なものである。特に、大面積基板を用いたLED製造の低コスト化が求められてきているが、大面積の単結晶基板を量産することは容易なことではなく、その製造コストはさらに高くなる。そこで、窒化ガリウム等の単結晶基板の代替材料となりうる安価な材料が望まれる。
本発明者らは、今般、窒化ガリウム単結晶基板の代替材料として、安価で且つ大面積化にも適した窒化ガリウム自立基板を作製できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、安価で且つ大面積化にも適した、窒化ガリウム単結晶基板の代替材料として有用な窒化ガリウム自立基板を提供することにある。
本発明の一態様によれば、略法線方向に単結晶構造を有する複数の窒化ガリウム系単結晶粒子で構成される板からなる、窒化ガリウム自立基板が提供される。
本発明の他の一態様によれば、本発明による窒化ガリウム自立基板と、
該基板上に形成され、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一以上有する発光機能層と、
を備えた、発光素子が提供される。
本発明のさらに他の一態様によれば、配向多結晶焼結体を用意する工程と、
前記配向多結晶焼結体上に、窒化ガリウムからなる種結晶層を、前記配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する工程と、
前記種結晶層上に、厚さ20μm以上の窒化ガリウム系結晶から構成される層を、前記種結晶層の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する工程と、
前記配向多結晶焼結体を除去して、窒化ガリウム自立基板を得る工程と、
を含む、窒化ガリウム自立基板の製造方法が提供される。
本発明のさらに別の一態様によれば、本発明による窒化ガリウム自立基板を用意する、又は本発明の方法により前記窒化ガリウム自立基板を用意する工程と、
前記窒化ガリウム自立基板に、前記窒化ガリウム基板の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一つ以上形成して発光機能層を設ける工程と、
を含む、発光素子の製造方法が提供される。
本発明の窒化ガリウム自立基板を用いて作製された縦型発光素子の一例を示す模式断面図である。 例4において測定された窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングである。 例4において測定された窒化ガリウム結晶の板面(表面)の逆極点図方位マッピングである。 例4において測定された窒化ガリウム結晶と配向アルミナ基板との界面付近の結晶粒マッピングである。 例4及び5において考察される窒化ガリウム結晶の成長挙動の概念図である。 例5において測定された窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングである。
窒化ガリウム自立基板
本発明の窒化ガリウム基板は自立基板の形態を有しうる。本発明において「自立基板」とは、取り扱う際に自重で変形又は破損せず、固形物として取り扱うことのできる基板を意味する。本発明の窒化ガリウム自立基板は発光素子等の各種半導体デバイスの基板として使用可能であるが、それ以外にも、電極(p型電極又はn型電極でありうる)、p型層、n型層等の基材以外の部材又は層として使用可能なものである。なお、以下の説明においては、主たる用途の一つである発光素子を例に本発明の利点を記述することがあるが、同様ないし類似の利点は技術的整合性を損なわない範囲内で他の半導体デバイスにも当てはまる。
本発明の窒化ガリウム自立基板は、略法線方向に単結晶構造を有する複数の窒化ガリウム系単結晶粒子で構成される板からなる。すなわち、窒化ガリウム自立基板は、水平面方向に二次元的に連結されてなる複数の半導体単結晶粒子で構成されており、それ故、略法線方向には単結晶構造を有することになる。したがって、窒化ガリウム自立基板は、全体としては単結晶ではないものの、局所的なドメイン単位では単結晶構造を有するため、発光機能等のデバイス特性を確保するのに十分な高い結晶性を有することができる。そうでありながら、本発明の窒化ガリウム自立基板は単結晶基板ではない。前述のとおり、単結晶基板は一般的に面積が小さく且つ高価なものである。特に、近年、大面積基板を用いたLED製造の低コスト化が求められてきているが、大面積の単結晶基板を量産することは容易なことではなく、その製造コストはさらに高くなる。これらの欠点が本発明の窒化ガリウム自立基板によれば解消される。すなわち、本発明によれば、安価で且つ大面積化にも適した、窒化ガリウム単結晶基板の代替材料として有用な窒化ガリウム自立基板を提供することができる。また、p型ないしn型ドーパントの導入により導電性を持たせた窒化ガリウムを基板とすることで、縦型構造の発光素子を実現することができ、それにより輝度を高めることができる。その上、面発光照明等に用いられる大面積な面発光素子も低コストで実現可能となる。特に、本発明の窒化ガリウム自立基板を用いて縦型LED構造を作製する場合、自立基板を構成する複数の窒化ガリウム系単結晶粒子が略法線方向に単結晶構造を有するため、電流パス中に高抵抗な粒界が存在しなくなり、その結果、好ましい発光効率が見込まれる。この点、法線方向にも粒界が存在する配向多結晶基板の場合には、縦型構造としても電流パス上に高抵抗な粒界が存在するため、発光効率が低くなるおそれがある。これらの観点から、本発明の窒化ガリウム自立基板は縦型LED構造にも好ましく用いることができる。
好ましくは、自立基板を構成する複数の窒化ガリウム系単結晶粒子は、略法線方向に概ね揃った結晶方位を有する。「略法線方向に概ね揃った結晶方位」とは、必ずしも法線方向に完全に揃った結晶方位とは限らず、自立基板を用いた発光素子等のデバイスが所望のデバイス特性を確保できるかぎり、法線ないしそれに類する方向にある程度揃った結晶方位であってよいことを意味する。製法由来の表現をすれば、窒化ガリウム系単結晶粒子は、窒化ガリウム自立基板の製造の際時に下地基材として使用した配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣って成長した構造を有するともいえる。「配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣って成長した構造」とは、配向多結晶焼結体の結晶方位の影響を受けた結晶成長によりもたらされた構造を意味し、必ずしも配向多結晶焼結体の結晶方位に完全に倣って成長した構造であるとは限らず、自立基板を用いた発光素子等のデバイスが所望のデバイス特性を確保できるかぎり、配向多結晶焼結体の結晶方位にある程度倣って成長した構造であってよい。すなわち、この構造は配向多結晶焼結体と異なる結晶方位に成長する構造も含む。その意味で、「結晶方位に概ね倣って成長した構造」との表現は「結晶方位に概ね由来して成長した構造」と言い換えることもでき、この言い換え及び上記意味は本明細書中の同種の表現に同様に当てはまる。したがって、そのような結晶成長はエピタキシャル成長によるものが好ましいが、これに限定されず、それに類する様々な結晶成長の形態であってもよい。いずれにしても、このように成長することで、窒化ガリウム自立基板は略法線方向に関しては結晶方位が概ね揃った構造とすることができる。
したがって、窒化ガリウム自立基板は、法線方向に見た場合に単結晶と観察され、水平面方向の切断面で見た場合に粒界が観察される柱状構造の窒化ガリウム系単結晶粒子の集合体であると捉えることも可能である。ここで、「柱状構造」とは、典型的な縦長の柱形状のみを意味するのではなく、横長の形状、台形の形状、及び台形を逆さにしたような形状等、種々の形状を包含する意味として定義される。もっとも、上述のとおり、窒化ガリウム自立基板は法線ないしそれに類する方向にある程度揃った結晶方位を有する構造であればよく、必ずしも厳密な意味で柱状構造である必要はない。柱状構造となる原因は、前述のとおり、窒化ガリウム自立基板の製造に用いられる配向多結晶焼結体の結晶方位の影響を受けて窒化ガリウム単結晶粒子が成長するためと考えられる。このため、柱状構造ともいえる窒化ガリウム単結晶粒子の断面の平均粒径(以下、断面平均径という)は成膜条件だけでなく、配向多結晶焼結体の板面の平均粒径にも依存するものと考えられる。窒化ガリウム自立基板を発光素子の発光機能層の一部として用いる場合、粒界があることにより断面方向の光の透過率が悪く、光が散乱ないし反射する。このため、法線方向に光を取り出す構造の発光素子の場合、粒界からの散乱光により輝度が高まる効果も期待される。
上述したとおり、本発明の窒化ガリウム自立基板を用いて縦型LED構造とする場合、発光機能層が形成されることになる自立基板表面と、電極が形成されることになる自立基板裏面とは粒界を介さずに連通していることが好ましい。すなわち、窒化ガリウム自立基板の表面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子が、窒化ガリウム自立基板の裏面に粒界を介さずに連通してなるのが好ましい。粒界が存在すると通電時に抵抗をもたらすため、発光効率を低下させる要因となる。
ところで、気相や液相を介したエピタキシャル成長を用いて窒化ガリウム結晶を成長させる場合、成膜条件にもよるが、法線方向だけでなく、水平方向にも成長が生じる。このとき、成長の起点となる粒子やその上に作製した種結晶の品質にばらつきがあると、個々の窒化ガリウム結晶の成長速度が異なり、例えば図5に概念的に示されるように、高速成長する粒子が成長速度の遅い粒子を覆うようにして成長する場合がある。このような成長挙動をとる場合、基板裏面側よりも、基板表面側の粒子の方が大粒径化しやすくなる。この場合、成長が遅い結晶は成長が途中で停止しており、ある一断面で観察すると法線方向にも粒界が観測されうる。しかし、基板表面に露出した粒子は基板裏面と粒界を介さずに連通しており、電流を流す上での抵抗相はない。換言すれば、窒化ガリウム結晶を成膜後、基板表面側(製造時に下地基板である配向多結晶焼結体と接していた側と反対側)に露出した粒子は、粒界を介さずに裏面に連通している粒子が支配的になるため、縦型構造のLEDの発光効率を高める観点では基板表面側に発光機能層を作製することが好ましい。一方、基板裏面側(製造時に下地基板である配向多結晶焼結体と接していた側)は基板表面側と連通していない粒子も混在するため(例えば図5を参照)、基板裏面側に発光機能層を作製すると発光効率が低下するおそれがある。また、上述のとおり、このような成長挙動の場合は成長に伴って大粒径化するため、窒化ガリウム自立基板の表裏面は窒化ガリウム結晶の粒径が大きい方が基板表面側、小さい方が基板裏面側とも言い換えることができる。すなわち、窒化ガリウム自立基板において、縦型構造のLEDの発光効率を高める観点では、窒化ガリウム結晶の粒径が大きい側(基板表面側)に発光機能層を作製することが好ましい。なお、下地基板にc面等に配向した配向多結晶アルミナ焼結体を用いる場合、基板表面側(製造時に下地基板である配向多結晶アルミナ焼結体と接していた側と反対側)がガリウム面となり、基板裏面側(製造時に下地基板である配向多結晶アルミナ焼結体と接していた側)が窒素面となる。すなわち、窒化ガリウム自立基板のガリウム面は、粒界を介さずに裏面に連通している粒子が支配的となる。このため、縦型構造のLEDの発光効率を高める観点では、ガリウム面側(基板表面側)に発光機能層を作製することが好ましい。
したがって、基板表面側の粒子が基板裏面側の粒子より大粒径化するような成長挙動をとる場合、すなわち基板表面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の断面平均径が、基板裏面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の断面平均径よりも大きいと、発光効率が高まるため好ましい(このことは、基板表面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の個数が、基板裏面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の個数よりも少ないことが好ましいと言い換えることもできる)。具体的には、窒化ガリウム自立基板の裏面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の最表面における断面平均径(以下、基板裏面の断面平均径Dという)に対する、窒化ガリウム自立基板の表面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の最表面における断面平均径(以下、基板表面の断面平均径Dという)の比D/Dが1.0よりも大きいのが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、特に好ましくは3.0以上、最も好ましくは5.0以上である。ただし、上記比D/Dが高すぎると逆に発光効率が低下する場合があるため、20以下が好ましく、10以下がさらに好ましい。発光効率が変化する原因は定かではないが、上記比D/Dが高いと大粒径化によって発光に寄与しない粒界面積が減少すること、あるいは大粒径化することで結晶欠陥が低減するためと考えられる。結晶欠陥が減少する原因も定かではないが、欠陥を含む粒子は成長が遅く、欠陥が少ない粒子は高速成長するためではないかとも考えられる。一方、上記比D/Dが高すぎると、基板表面及び基板裏面間で連通する粒子(すなわち基板表面側に露出した粒子)は基板裏面側付近では断面径が小さくなる。この結果、十分な電流パスが得られず発光効率が低下する原因となり得るとも考えられるが、その詳細は定かではない。
もっとも、窒化ガリウム自立基板を構成する柱状構造同士の界面は結晶性が低下するため、発光素子の発光機能層として用いる場合、発光効率が低下し、発光波長が変動し、発光波長がブロードになる可能性がある。このため、柱状構造の断面平均径は大きいほうが良い。好ましくは、窒化ガリウム自立基板の最表面における半導体単結晶粒子の断面平均径は0.3μm以上であり、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは50μm以上、最も好ましくは70μm以上である。窒化ガリウム自立基板の最表面における半導体単結晶粒子の断面平均径の上限は特に限定されないが、1000μm以下が現実的であり、より現実的には500μm以下であり、さらに現実的には200μm以下である。また、このような断面平均径の半導体単結晶粒子を作製するには、窒化ガリウム自立基板の製造に用いられる、配向多結晶焼結体を構成する粒子の板面における焼結粒径を0.3μm〜1000μmとするのが望ましく、より望ましくは3μm〜1000μm、さらに望ましくは10μm〜200μm、特に望ましくは14μm〜200μmである。あるいは、窒化ガリウム自立基板の最表面における半導体単結晶粒子の断面平均径を自立基板の裏面の断面平均径よりも大きくすることを念頭に置く場合には、配向多結晶焼結体を構成する粒子の板面における焼結粒径を10μm〜100μmとするのが望ましく、より望ましくは14μm〜70μmである。
窒化ガリウム自立基板を構成する窒化ガリウム系単結晶粒子は、ドーパントを含まないものであってもよい。ここで、「ドーパントを含まない」とは何らかの機能ないし特性の付与を意図して添加された元素を含まないことを意味し、不可避不純物の含有が許容されるのはいうまでもない。あるいは、窒化ガリウム自立基板を構成する窒化ガリウム系単結晶粒子は、n型ドーパント又はp型ドーパントでドープされていてもよく、この場合、窒化ガリウム自立基板を、p型電極、n型電極、p型層、n型層等の基材以外の部材又は層として使用することができる。p型ドーパントの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)及びカドミウム(Cd)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。n型ドーパントの好ましい例としては、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び酸素(O)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
窒化ガリウム自立基板を構成する窒化ガリウム系単結晶粒子は、バンドギャップの制御のため混晶化されていてもよい。好ましくは、窒化ガリウム単結晶粒子は、AlN及びInNからなる群から選択される1種以上の結晶と混晶化された窒化ガリウムからなるものであってもよく、p型窒化ガリウム及び/又はn型窒化ガリウム単結晶粒子はこの混晶化された窒化ガリウムにp型ドーパント又はn型ドーパントがドープされていてもよい。例えば、窒化ガリウムとAlNの混晶であるAlGa1−xNにMgをドーピングすることでp型基板、AlGa1−xNにSiをドーピングすることでとしてn型基板として使用することができる。自立基板を発光素子の発光機能層として用いる場合、窒化ガリウムをAlNと混晶化することでバンドギャップが広がり、発光波長を高エネルギー側にシフトさせることができる。また、窒化ガリウムをInNとの混晶としてもよく、これによりバンドギャップが狭まり、発光波長を低エネルギー側にシフトさせることができる。
窒化ガリウム自立基板は直径50.8mm(2インチ)以上の大きさを有するのが好ましく、より好ましくは直径100mm(4インチ)以上であり、さらに好ましくは直径200mm(8インチ)以上である。窒化ガリウム自立基板は大きければ大きいほど作製可能な素子の個数が増えるため、製造コストの観点で好ましく、面発光素子用との観点でも素子面積の自由度が増え面発光照明等への用途が広がる点で好ましく、その面積ないし大きさに上限は規定されるべきではない。なお、窒化ガリウム自立基板は上面視で円形状あるいは実質的に円形状であることが好ましいが、これに限定されない。円形状あるいは実質的に円形状ではない場合、面積として、2026mm以上であることが好ましく、より好ましくは7850mm以上であり、さらに好ましくは31400mm以上である。もっとも、大面積を要しない用途については、上記範囲よりも小さい面積、例えば直径50.8mm(2インチ)以下、面積換算で2026mm以下としてもよい。窒化ガリウム自立基板の厚さは基板に自立性を付与できる必要があり、20μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上である。窒化ガリウム自立基板の厚さに上限は規定されるべきではないが、製造コストの観点では3000μm以下が現実的である。
窒化ガリウム自立基板の表面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の最表面における断面平均径Dに対する、窒化ガリウム自立基板の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/Dが0.7以上であるのが好ましく、より好ましくは1.0以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。このアスペクト比がLEDとする場合に発光効率を高める観点から好ましい。発光効率が高まる原因として、高アスペクト比粒子の方が窒化ガリウム中の欠陥密度が低いこと、及び光の取り出し効率が高まること等が考えられるが、その詳細は定かではない。
これまでに述べたとおり、発光効率を高める観点では、(1)発光機能層は自立基板表面側(製造時に下地基板である配向多結晶焼結体に接していた側と反対側)に作製する方が良く、(2)自立基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dが適度な値をとるのが良く、(3)自立基板を構成する粒子の基板最表面における断面平均径が大きい方が良く、(4)自立基板を構成する粒子のアスペクト比T/Dは大きい方が良い。上記(3)及び(4)の観点では断面平均径が大きく且つアスペクト比が大きい方が良く、言い換えると基板表面側の断面平均径が大きく且つ厚い窒化ガリウム結晶が好ましい。また、自立化の観点では窒化ガリウム自立基板の厚さは20μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上である。しかし、前述したとおり窒化ガリウム結晶の厚みが厚くなるとコスト的な観点では好ましくなく、自立する限り薄い方が好ましい。すなわち、窒化ガリウム自立基板の厚みとしては3000μm以下が現実的であり、600μm以下が好ましく、300μm以下が好ましい。したがって、自立化させ且つ発光効率を高める観点とコスト的な観点を両立する厚みとしては50〜500μm程度が好ましく、50〜300μm程度が更に好ましい。
製造方法
本発明の窒化ガリウム自立基板は、(1)配向多結晶焼結体を用意し、(2)配向多結晶焼結体上に、窒化ガリウムからなる種結晶層を、配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成し、(3)種結晶層上に、厚さ20μm以上の窒化ガリウム系結晶から構成される層を、種結晶層の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成し、(4)配向多結晶焼結体を除去して、窒化ガリウム自立基板を得ることにより製造することができる。
(1)配向多結晶焼結体
窒化ガリウム自立基板を作製するための下地基板として、配向多結晶焼結体を用意する。配向多結晶焼結体の組成は特に限定されないが、配向多結晶アルミナ焼結体、配向多結晶酸化亜鉛焼結体、配向多結晶窒化アルミニウム焼結体から選ばれる1種であるのが好ましい。配向多結晶焼結体は、商業的に入手可能な板状粉末を用いて成形及び焼成を経て効率的に製造できるため、低コストで製造できるだけでなく、成形しやすいが故に大面積化にも適する。そして、本発明者らの知見によれば、配向多結晶焼結体を下地基板として用い、その上に複数の半導体単結晶粒子を成長させることで、大面積の発光素子を低コストで製造するのに適した窒化ガリウム自立基板を製造できる。その結果、窒化ガリウム自立基板は、大面積の発光素子を低コストで製造するのに極めて適するものとなる。
配向多結晶焼結体は、多数の単結晶粒子を含んで構成される焼結体からなり、多数の単結晶粒子が一定の方向にある程度又は高度に配向したものである。このように配向された多結晶焼結体を用いることで略法線方向に概ね揃った結晶方位を有する窒化ガリウム自立基板を作製可能であり、窒化ガリウム自立基板上に窒化ガリウム系材料をエピタキシャル成長又はこれに類する結晶成長により形成した場合、略法線方向に結晶方位が概ね揃った状態が実現される。このため、そのような配向性の高い窒化ガリウム自立基板を発光素子用基板として用いれば、発光機能層を同様に略法線方向に結晶方位が概ね揃った状態で形成することができ、単結晶基板を用いた場合と同等の高い発光効率を実現できる。あるいは、この配向性の高い窒化ガリウム自立基板を発光素子の発光機能層として用いた場合であっても、単結晶基板を用いた場合と同等の高い発光効率を実現できる。いずれにしても、このような配向性が高い窒化ガリウム自立基板を作製するには配向多結晶焼結体を下地基板として用いる必要がある。配向多結晶焼結体は、透光性を有しているほうが好ましいが、この限りではない。透光性を有する場合、配向多結晶板を除去する際に、レーザーリフトオフ等の手法を用いることができる。配向多結晶焼結体を得る製法としては、大気炉、窒素雰囲気炉、水素雰囲気炉等を用いた通常の常圧焼結法に加え、熱間等方圧加圧法(HIP)、ホットプレス法(HP)、放電プラズマ焼結(SPS)等の加圧焼結法、及びこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
配向多結晶焼結体は直径50.8mm(2インチ)以上の大きさを有するのが好ましく、より好ましくは直径100mm(4インチ)以上であり、さらに好ましくは直径200mm(8インチ)以上である。配向多結晶焼結体は大きければ大きいほど作製可能な窒化ガリウム自立基板の面積が増え、それにより作製可能な発光素子の個数が増えるため、製造コストの観点で好ましい。また、面発光素子用との観点でも素子面積の自由度が増え面発光照明等への用途が広がる点で好ましく、その面積ないし大きさに上限は規定されるべきではない。なお、窒化ガリウム自立基板は上面視で円形状あるいは実質的に円形状であることが好ましいが、これに限定されない。円形状あるいは実質的に円形状ではない場合、面積として、2026mm以上であることが好ましく、より好ましくは7850mm以上であり、さらに好ましくは31400mm以上である。もっとも、大面積を要しない用途については、上記範囲よりも小さい面積、例えば例えば直径50.8mm(2インチ)以下、面積換算で2026mm以下としてもよい。配向多結晶焼結体の厚さは自立する限り特に限定はないが、厚すぎると製造コストの観点では好ましくない。従って、20μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは100〜1000μmである。一方、窒化ガリウムを成膜する際にアルミナと窒化ガリウムの熱膨張差に起因した応力によって基板全体に反りが生じ、その後のプロセスに支障を来す場合がある。応力は窒化ガリウムの成膜方法や成膜条件、配向多結晶焼結体の材質、膜厚、基板径等によって変化するが、応力による反りを抑制する方法の一つとして、下地基板として厚い配向多結晶焼結体を用いてもよい。例えば下地の配向多結晶焼結体として配向多結晶アルミナ焼結体を用いて、直径50.8mm(2インチ)、厚さ300μmの窒化ガリウム自立基板を作製する際に、配向多結晶アルミナ焼結体の厚みを900μm以上としてもよく、1300μm以上、あるいは2000μm以上としてもよい。このように製造コストの観点と反り抑制の観点などを勘案し、配向多結晶焼結体の厚みを適宜選定すればよい。
配向多結晶焼結体を構成する粒子の板面における平均粒径は、0.3〜1000μmであるのが好ましく、より好ましくは3〜1000μm、さらに好ましくは10μm〜200μm、特に好ましくは14μm〜200μmである。あるいは、前述したように、窒化ガリウム自立基板の最表面における半導体単結晶粒子の断面平均径を自立基板の裏面の断面平均径よりも大きくすることを考慮する場合には、配向多結晶焼結体を構成する粒子の板面における焼結粒径を10μm〜100μmとするのが好ましく、より好ましくは14μm〜70μmである。配向多結晶焼結体全体の平均粒径は板面の平均粒径と相関があり、これらの範囲内であると焼結体の機械強度の点で優れ、ハンドリングが容易である。また、配向多結晶焼結体を用いて作製した窒化ガリウム自立基板の上部及び/又は内部に発光機能層を形成して発光素子を作製した場合、発光機能層の発光効率の点でも優れる。なお、本発明における焼結体粒子の板面における平均粒径は以下の方法により測定されるものである。すなわち、板状焼結体の板面を研磨し、走査電子顕微鏡にて画像を撮影する。視野範囲は、得られる画像の対角線に直線を引いた場合に、いずれの直線も10個から30個の粒子と交わるような直線が引けるような視野範囲とする。得られた画像の対角線に2本の直線を引いて、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を板面の平均粒径とする。なお、板面の走査顕微鏡像で明瞭に焼結体粒子の界面を判別できない場合は、サーマルエッチング(例えば1550℃で45分間)やケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。
特に好ましい配向多結晶焼結体として、配向多結晶アルミナ焼結体が挙げられる。アルミナは酸化アルミニウム(Al)であり、典型的には単結晶サファイアと同じコランダム型構造を有するα−アルミナであり、配向多結晶アルミナ焼結体は無数のアルミナ結晶粒子が配向された状態で焼結により互いに結合されてなる固体である。アルミナ結晶粒子はアルミナを含んで構成される粒子であり、他の元素として、ドーパント及び不可避不純物を含んでいてもよいし、アルミナ及び不可避不純物からなるものであってもよい。配向多結晶アルミナ焼結体は焼結助剤としての添加物を粒界相として含んでいてもよい。また、配向多結晶アルミナ焼結体も、アルミナ結晶粒子以外に他の相又は上述したような他の元素を含んでいてもよいが、好ましくはアルミナ結晶粒子及び不可避不純物からなる。また、配向多結晶アルミナ焼結体の配向面は特に限定がなく、c面、a面、r面又はm面等であってもよい。
配向多結晶アルミナ焼結体の配向結晶方位は特に限定されるものではなく、c面、a面、r面又はm面等であってもよく、窒化ガリウム自立基板との格子定数マッチングの観点でc面に配向しているのが好ましい。配向度については、例えば、板面における配向度が50%以上であるのが好ましく、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは85%であり、特により好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。この配向度は、XRD装置(例えば、株式会社リガク製、RINT−TTR III)を用い、板状アルミナの板面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定し、以下の式により算出することにより得られるものである。
なお、窒化ガリウム自立基板の構成粒子の結晶性は高くなる傾向があり、転位等の欠陥の密度を低く抑えることができる。このため、発光デバイス等のある種の用途においては、窒化ガリウム自立基板を窒化ガリウム単結晶基板に比べて好ましく用いることすら可能になるものと考えられる。例えば、エピタキシャル成長により窒化ガリウム自立基板上に機能層を作製する場合、機能層は下地の窒化ガリウム自立基板に概ね倣って成長し、柱状構造の集合体となる。エピタキシャル成長では下地の結晶品質を引き継ぐため、機能層を構成する柱状構造の各ドメイン単位では高い結晶品質を得ることができる。窒化ガリウム自立基板を構成する結晶粒子の欠陥密度が低い理由は定かではないが、窒化ガリウム自立基板の作製初期で生じた格子欠陥のうち水平方向に傾いて発展するものが成長に伴って粒界に吸収されて消滅するためと推測される。
窒化ガリウム自立基板中に含まれる転位等の欠陥の密度を下げるという観点においては、窒化ガリウム自立基板を作製する場合に、下地基板となる配向多結晶焼結体の最表面を構成する粒子の一部乃至全てが一定の方位(例えば、c面、a面等の基準方位)よりランダムに若干傾斜した形で配置されたものとするのが、より好ましい。傾斜する粒子はその略全部又は一定量が略一定の角度で傾斜していてもよいし、あるいは一定範囲内(好ましくは0.01〜20°)で分布を有する様々な角度で及び/又は様々な方向で傾斜していてもよい。また、傾斜する粒子と傾斜していない粒子が所望の比率で混在していてもよい。あるいは、配向多結晶アルミナ焼結体の板面を、基準面に対し斜めに研磨し、一定方向に粒子の露出面を傾斜させてもよいし、波状等に加工することにより最表面の粒子の基準方位から若干傾斜した面を露出させてもよい。上記いずれの場合においても、c面、a面等の基準方位に配向した配向多結晶アルミナ焼結体の最表面を構成するアルミナ単結晶粒子の一部乃至全てが、それらの基準方位が基板法線方向より0.5〜20°の範囲内でずれるように傾斜して配置されるのが好ましい。
配向多結晶アルミナ焼結体は、板状アルミナ粉末を原料として用いて成形及び焼結を行うことにより製造することができる。板状アルミナ粉末は市販されており、商業的に入手可能である。板状アルミナ粉末の種類及び形状は緻密な配向多結晶アルミナ焼結体が得られる限り特に限定されないが、平均粒径が0.4〜15μm、厚み0.05〜1μmとしてもよく、この範囲内で異なる平均粒径の原料を2種類以上混ぜたものとしてもよい。好ましくは、板状アルミナ粉末を、せん断力を用いた手法により配向させ、配向成形体とすることができる。せん断力を用いた手法の好ましい例としては、テープ成形、押出し成形、ドクターブレード法、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。せん断力を用いた配向手法は、上記例示したいずれの手法においても、板状アルミナ粉末にバインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等の添加物を適宜加えてスラリー化し、このスラリーをスリット状の細い吐出口を通過させることにより、基板上にシート状に吐出及び成形するのが好ましい。吐出口のスリット幅は10〜400μmとするのが好ましい。なお、分散媒の量はスラリー粘度が5000〜100000cPとなるような量にするのが好ましく、より好ましくは20000〜60000cPである。シート状に成形した配向成形体の厚さは5〜500μmであるのが好ましく、より好ましくは10〜200μmである。このシート状に成形した配向成形体を多数枚積み重ねて、所望の厚さを有する前駆積層体とし、この前駆積層体にプレス成形を施すのが好ましい。このプレス成形は前駆積層体を真空パック等で包装して、50〜95℃の温水中で10〜2000kgf/cmの圧力で静水圧プレスにより好ましく行うことができる。また、シート状に成形した配向成形体、もしくは前駆積層体をロールプレス法(例えば加熱ロールプレスやカレンダーロールなど)による処理を施してもよい。また、押出し成形を用いる場合には、金型内の流路の設計により、金型内で細い吐出口を通過した後、シート状の成形体が金型内で一体化され、積層された状態で成形体が排出されるようにしてもよい。得られた成形体には公知の条件に従い脱脂を施すのが好ましい。上記のようにして得られた配向成形体を大気炉、窒素雰囲気炉、水素雰囲気炉等を用いた通常の常圧焼成に加え、熱間等方圧加圧法(HIP)、ホットプレス法(HP)、放電プラズマ焼結(SPS)等の加圧焼結法、及びこれらを組み合わせた方法にて焼成し、アルミナ結晶粒子を配向して含んでなるアルミナ焼結体を形成する。上記焼成での焼成温度や焼成時間は焼成方法によって異なるが、焼成温度は1000〜1950℃、好ましくは1100〜1900℃、より好ましくは1500〜1800℃、焼成時間は1分間〜10時間、好ましくは30分間〜5時間である。緻密化を促進する観点ではホットプレスにて1500〜1800℃で2〜5時間、面圧100〜200kgf/cmの条件で焼成する第一の焼成工程と、得られた焼結体を熱間等方圧加圧法(HIP)にて1500〜1800℃で30分間〜5時間、ガス圧1000〜2000kgf/cmの条件で再度焼成する第二の焼成工程を経て行われるのがより好ましい。上記焼成温度での焼成時間は特に限定されないが、好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは2〜5時間である。なお、透光性を付与する場合は、高純度な板状アルミナ粉末を原料として使用し、大気炉、水素雰囲気炉、窒素雰囲気炉等にて1100〜1800℃で1分間〜10時間焼成する方法が好ましく例示される。得られた焼結体に対し、熱間等方圧加圧法(HIP)にて1200〜1400℃又は1400〜1950℃にて30分間〜5時間、ガス圧300〜2000kgf/cmの条件で再度焼成する方法を用いてもよい。粒界相は少ない方が良いため、板状アルミナ粉末は高純度である方が好ましく、より好ましくは純度98%以上であり、さらに好ましくは99%以上、特に好ましくは99.9%以上、最も好ましくは99.99%以上である。なお、焼成条件は上記に限定されるものではなく、緻密化と高配向の両立が可能であれば、例えば熱間等方圧加圧法(HIP)による第二の焼成工程は省略してもよい。また、極少量の添加物を焼結助剤として原料中に加えてもよい。焼結助剤の添加は粒界相の減量と逆行するが、光の散乱因子の一つである気孔を減らすことで、結果的に透光性が向上することを目的としたものである。このような焼結助剤として、MgO、ZrO、Y、CaO、SiO、TiO、Fe、Mn、La等の酸化物、AlF、MgF、YbF等のフッ化物などから選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。これらのうち、MgO、CaO、SiO、及びLaが好ましく、MgOが特に好ましい。しかし、透光性の観点では添加物の量は必要最小限に留めるべきであり、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下である。
また、配向多結晶アルミナ焼結体は、微細なアルミナ粉末及び/又は遷移アルミナ粉末に板状アルミナ粉末を適宜加えた混合粉末を原料として用いて成形及び焼結を行うことによっても製造することができる。この製法では板状アルミナ粉末が種結晶(テンプレート)となり、微細アルミナ粉末及び/又は遷移アルミナ粉末がマトリックスとなって、テンプレートがマトリックスを取り込みながらホモエピタキシャル成長する、所謂TGG(Templated Grain Growth)過程を経ることで結晶成長と緻密化が生じる。テンプレートとなる板状アルミナ粒子とマトリックスの粒径はその粒径比が大きい方が粒成長しやすく、例えばテンプレートの平均粒径が0.5〜15μmのとき、マトリックスの平均粒径0.4μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以下である。テンプレートとマトリックスの混合比は粒径比や焼成条件、添加物の有無によっても異なるが、例えばテンプレートに平均粒径2μmの板状アルミナ粉末、マトリックスに平均粒径0.1μmの微細アルミナ粉末を用いた場合、テンプレート/マトリックス比が50/50〜1/99wt%となるようにしてもよい。また、緻密化を進める観点では焼結助剤として、MgO、ZrO、Y、CaO、SiO、TiO、Fe、Mn、La等の酸化物、AlF、MgF、YbF等のフッ化物などから選ばれる少なくとも1種を加えてもよく、MgO、CaO、SiO、及びLaが好ましく、MgOが特に好ましい。このような手法においても前述した大気炉、窒素雰囲気炉、水素雰囲気炉等を用いた通常の常圧焼成に加え、熱間等方圧加圧法(HIP)、ホットプレス法(HP)、放電プラズマ焼結(SPS)等の加圧焼結法、及びこれらを組み合わせた方法で良質な配向多結晶アルミナ焼結体を得ることができる。
こうして得られたアルミナ焼結体は、前述した原料となる板状アルミナ粉末の種類によりc面等の所望の面に配向した多結晶アルミナ焼結体となる。こうして得られた配向多結晶アルミナ焼結体を砥石で研削して板面を平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化して配向アルミナ基板とするのが好ましい。
(2)種結晶層の形成
配向多結晶焼結体上に、窒化ガリウムからなる種結晶層を、配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する。なお、「配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する」とは、配向多結晶焼結体の結晶方位の影響を受けた結晶成長によりもたらされた構造を意味し、必ずしも配向多結晶焼結体の結晶方位に完全に倣って成長した構造であるとは限らず、配向多結晶焼結体と異なる結晶方位に成長する構造も含む。種結晶層の作製方法は特に限定されないが、MOCVD(有機金属気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、HVPE(ハライド気相成長法)、スパッタリング等の気相法、Naフラックス法、アモノサーマル法、水熱法、ゾルゲル法等の液相法、粉末の固相成長を利用した粉末法、及びこれらの組み合わせが好ましく例示される。例えば、MOCVD法による種結晶層の形成は、450〜550℃にて低温GaN層を20〜50nm堆積させた後に、1000〜1200℃にて厚さ2〜4μmのGaN膜を積層させることにより行うのが好ましい。
(3)窒化ガリウム系結晶層の形成
種結晶層上に、厚さ20μm以上の窒化ガリウム系結晶から構成される層を、種結晶層の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する。窒化ガリウム系結晶から構成される層の形成方法は配向多結晶焼結体及び/又は種結晶層の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有する限り特に限定がなく、MOCVD、HVPE等の気相法、Naフラックス法、アモノサーマル法、水熱法、ゾルゲル法等の液相法、粉末の固相成長を利用した粉末法、及びこれらの組み合わせが好ましく例示されるが、Naフラックス法により行われるのが特に好ましい。Naフラックス法によれば結晶性の高い厚肉の窒化ガリウム結晶層を種結晶層上に効率良く作製できる。Naフラックス法による窒化ガリウム系結晶層の形成は、種結晶基板を設置した坩堝に金属Ga、金属Na及び所望によりドーパント(例えばゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、酸素(O)等のn型ドーパント、又はベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)等のp型ドーパント)を含む融液組成物を充填し、窒素雰囲気中で830〜910℃、3.5〜4.5MPaまで昇温加圧した後、温度及び圧力を保持しつつ回転することにより行うのが好ましい。保持時間は目的の膜厚によって異なるが、10〜100時間程度としてもよい。また、こうしてNaフラックス法により得られた窒化ガリウム結晶を砥石で研削して板面を平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化するのが好ましい。
(4)配向多結晶焼結体の除去
配向多結晶焼結体を除去して、窒化ガリウム自立基板を得ることができる。配向多結晶焼結体を除去する方法は、特に限定されないが、研削加工、ケミカルエッチング、配向焼結体側からのレーザー照射による界面加熱(レーザーリフトオフ)、昇温時の熱膨張差を利用した自発剥離等が挙げられる。
発光素子及びその製造方法
上述した本発明による窒化ガリウム自立基板を用いて高品質の発光素子を作製することができる。本発明の窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の構造やその作製方法は特に限定されるものではない。典型的には、発光素子は、窒化ガリウム自立基板に発光機能層を設けることにより作製され、この発光機能層の形成は、窒化ガリウム基板の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一つ以上形成することに行われるのが好ましい。もっとも、窒化ガリウム自立基板を電極(p型電極又はn型電極でありうる)、p型層、n型層等の基材以外の部材又は層として利用して発光素子を作製してもよい。素子サイズに特に規定はなく、5mm×5mm以下の小素子としてもよいし、10cm×10cm以上の面発光素子としてもよい。
図1に、本発明の一態様による発光素子の層構成を模式的に示す。図1に示される発光素子10は、窒化ガリウム自立基板12と、この基板上に形成される発光機能層14とを備えてなる。発光機能層14は、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一以上有してなる。この発光機能層14は、電極等を適宜設けて電圧を印加することによりLED等の発光素子の原理に基づき発光をもたらすものである。特に、本発明の窒化ガリウム自立基板12を用いることで、窒化ガリウム単結晶基板を用いた場合と同等の発光効率を有する発光素子を得ることも期待でき、大幅な低コスト化が実現できる。また、p型ないしn型ドーパントの導入により導電性を持たせた窒化ガリウムを基板とすることで、縦型構造の発光素子を実現することができ、それにより輝度を高めることができる。その上、大面積な面発光素子も低コストで実現可能となる。
発光機能層14が基板12上に形成される。発光機能層14は、基板12上の全面又は一部に設けられてもよいし、後述するバッファ層が基板12上に形成される場合にはバッファ層上の全面又は一部に設けられてもよい。発光機能層14は、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一以上有してなり、電極及び/又は蛍光体を適宜設けて電圧を印加することによりLEDに代表される発光素子の原理に基づき発光をもたらす公知の様々な層構成を採りうる。したがって、発光機能層14は青色、赤色等の可視光を放出するものであってもよいし、可視光を伴わずに又は可視光と共に紫外光を発光するものであってもよい。発光機能層14は、p−n接合を利用した発光素子の少なくとも一部を構成するのが好ましく、このp−n接合は、図1に示されるように、p型層14aとn型層14cの間に活性層14bを含んでいてもよい。このとき、活性層としてp型層及び/又はn型層よりもバンドギャップが小さい層を用いたダブルへテロ接合又はシングルへテロ接合(以下、ヘテロ接合と総称する)としてもよい。また、p型層−活性層−n型層の一形態として、活性層の厚みを薄くした量子井戸構造を採りうる。量子井戸を得るためには活性層のバンドギャップがp型層及びn型層よりも小さくしたダブルへテロ接合が採用されるべきことは言うまでもない。また、これらの量子井戸構造を多数積層した多重量子井戸構造(MQW)としてもよい。これらの構造をとることで、p−n接合と比べて発光効率を高めることができる。このように、発光機能層14は、発光機能を有するp−n接合及び/又はへテロ接合及び/又は量子井戸接合を備えたものであるのが好ましい。
したがって、発光機能層14を構成する一以上の層は、n型ドーパントがドープされているn型層、p型ドーパントがドープされているp型層、及び活性層からなる群から選択される少なくとも一以上を含むものであることができる。n型層、p型層及び(存在する場合には)活性層は、主成分が同じ材料で構成されてもよいし、互いに主成分が異なる材料で構成されてもよい。
発光機能層14を構成する各層の材質は、窒化ガリウム自立基板の結晶方位に概ね倣って成長し且つ発光機能を有するものであれば特に限定されないが、窒化ガリウム(GaN)系材料、酸化亜鉛(ZnO)系材料及び窒化アルミニウム(AlN)系材料から選択される少なくとも1種以上を主成分とする材料で構成されるのが好ましく、p型ないしn型に制御するためのドーパントを適宜含むものであってよい。特に好ましい材料は、窒化ガリウム自立基板と同種の材料である、窒化ガリウム(GaN)系材料である。また、発光機能層14を構成する材料は、そのバンドギャップを制御するため、例えばGaNにAlN、InN等を固溶させた混晶としてもよい。また、直前の段落で述べたとおり、発光機能層14は複数種の材料系からなるヘテロ接合としてもよい。例えば、p型層に窒化ガリウム(GaN)系材料、n型層に酸化亜鉛(ZnO)系材料を用いてもよい。また、p型層に酸化亜鉛(ZnO)系材料、活性層とn型層に窒化ガリウム(GaN)系材料を用いてもよく、材料の組み合わせに特に限定はない。
発光機能層14を構成する各層は、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される。すなわち、各層は、水平面方向に二次元的に連結されてなる複数の半導体単結晶粒子で構成されており、それ故、略法線方向には単結晶構造を有することになる。したがって、発光機能層14の各層は、層全体としては単結晶ではないものの、局所的なドメイン単位では単結晶構造を有するため、発光機能を確保するのに十分な高い結晶性を有することができる。好ましくは、発光機能層14の各層を構成する半導体単結晶粒子は、基板12である窒化ガリウム自立基板の結晶方位に概ね倣って成長した構造を有する。「窒化ガリウム自立基板の結晶方位に概ね倣って成長した構造」とは、窒化ガリウム自立基板の結晶方位の影響を受けた結晶成長によりもたらされた構造を意味し、必ずしも窒化ガリウム自立基板の結晶方位に完全に倣って成長した構造であるとは限らず、所望の発光機能を確保できるかぎり、窒化ガリウム自立基板の結晶方位にある程度倣って成長した構造であってよい。すなわち、この構造は配向多結晶焼結体と異なる結晶方位に成長する構造も含む。その意味で、「結晶方位に概ね倣って成長した構造」との表現は「結晶方位に概ね由来して成長した構造」と言い換えることもできる。したがって、そのような結晶成長はエピタキシャル成長によるものが好ましいが、これに限定されず、それに類する様々な結晶成長の形態であってもよい。特にn型層、活性層、p型層等を構成する各層が窒化ガリウム自立基板と同じ結晶方位に成長する場合は、窒化ガリウム自立基板から発光機能層の各層間でも略法線方向に関しては結晶方位が概ね揃った構造となり、良好な発光特性を得ることができる。すなわち、発光機能層14も窒化ガリウム自立基板12の結晶方位に概ね倣って成長する場合は、基板の垂直方向では方位が概ね一定になる。このため、法線方向は単結晶と同等の状態であり、n型ドーパントを添加した窒化ガリウム自立基板を用いた場合、窒化ガリウム自立基板をカソードとした縦型構造の発光素子とすることができ、p型ドーパントを添加した窒化ガリウム自立基板を用いた場合、窒化ガリウム自立基板をアノードとした縦型構造の発光素子とすることができる。
少なくとも発光機能層14を構成するn型層、活性層、p型層等の各層が同じ結晶方位に成長する場合は、発光機能層14の各層は、法線方向に見た場合に単結晶と観察され、水平面方向の切断面で見た場合に粒界が観察される柱状構造の半導体単結晶粒子の集合体であると捉えることも可能である。ここで、「柱状構造」とは、典型的な縦長の柱形状のみを意味するのではなく、横長の形状、台形の形状、及び台形を逆さにしたような形状等、種々の形状を包含する意味として定義される。もっとも、上述のとおり、各層は窒化ガリウム自立基板の結晶方位にある程度倣って成長した構造であればよく、必ずしも厳密な意味で柱状構造である必要はない。柱状構造となる原因は、前述のとおり、基板12である窒化ガリウム自立基板の結晶方位の影響を受けて半導体単結晶粒子が成長するためと考えられる。このため、柱状構造ともいえる半導体単結晶粒子の断面の平均粒径(以下、断面平均径という)は成膜条件だけでなく、窒化ガリウム自立基板の板面の平均粒径にも依存するものと考えられる。発光機能層を構成する柱状構造の界面は発光効率や発光波長に影響を与えるが、粒界があることにより断面方向の光の透過率が悪く、光が散乱ないし反射する。このため、法線方向に光を取り出す構造の場合、粒界からの散乱光により輝度が高まる効果も期待される。
もっとも、発光機能層14を構成する柱状構造同士の界面は結晶性が低下するため、発光効率が低下し、発光波長が変動し、発光波長がブロードになる可能性がある。このため、柱状構造の断面平均径は大きいほうが良い。好ましくは、発光機能層14の最表面における半導体単結晶粒子の断面平均径は0.3μm以上であり、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは50μm以上、最も好ましくは70μm以上である。この断面平均径の上限は特に限定されないが、1000μm以下が現実的であり、より現実的には500μm以下であり、さらに現実的には200μm以下である。また、このような断面平均径の半導体単結晶粒子を作製するには、窒化ガリウム自立基板を構成する窒化ガリウム系単結晶粒子の基板の最表面における断面平均径を0.3μm〜1000μmとするのが望ましく、より望ましくは3μm以上である。
発光機能層14の一部又は全てに窒化ガリウム(GaN)系以外の材料が用いられる場合には、窒化ガリウム自立基板12と発光機能層14の間に反応を抑制するためのバッファ層を設けてもよい。このようなバッファ層の主成分は特に限定されないが、酸化亜鉛(ZnO)系材料及び窒化アルミニウム(AlN)系材料から選択される少なくとも1種以上を主成分とする材料で構成されるのが好ましく、p型ないしn型に制御するためのドーパントを適宜含むものであってよい。
発光機能層14を構成する各層が窒化ガリウム系材料で構成されるのが好ましい。例えば、窒化ガリウム自立基板12上にn型窒化ガリウム層及びp型窒化ガリウム層を順に成長させてもよく、p型窒化ガリウム層とn型窒化ガリウム層の積層順序は逆であってもよい。p型窒化ガリウム層に使用されるp型ドーパントの好ましい例としては、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)及びカドミウム(Cd)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。また、n型窒化ガリウム層に使用されるn型ドーパントの好ましい例としては、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び酸素(O)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。また、p型窒化ガリウム層及び/又はn型窒化ガリウム層は、AlN及びInNからなる群から選択される1種以上の結晶と混晶化された窒化ガリウムからなるものであってもよく、p型層及び/又はn型層はこの混晶化された窒化ガリウムにp型ドーパント又はn型ドーパントがドープされていてもよい。例えば、窒化ガリウムとAlNの混晶であるAlGa1−xNにMgをドーピングすることでp型層、AlGa1−xNにSiをドーピングすることでとしてn型層として使用することができる。窒化ガリウムをAlNと混晶化することでバンドギャップが広がり、発光波長を高エネルギー側にシフトさせることができる。また、窒化ガリウムをInNとの混晶としてもよく、これによりバンドギャップが狭まり、発光波長を低エネルギー側にシフトさせることができる。p型窒化ガリウム層とn型窒化ガリウム層との間に、両層のいずれよりもバンドギャップが小さいGaN、又はAlN及びInNからなる群から選択される1種以上とGaNとの混晶からなる活性層を少なくとも有してもよい。活性層はp型層及びn型層とダブルへテロ接合された構造であり、この活性層を薄くした構成はp−n接合の一態様である量子井戸構造の発光素子に相当し、発光効率をより一層高めることができる。また、活性層は両層のいずれか一方よりもバンドギャップが小さくGaN、又はAlN及びInNからなる群から選択される1種以上とGaNとの混晶からなるものとしてもよい。このようなシングルヘテロ接合にても発光効率をより一層高めることができる。窒化ガリウム系バッファ層は、ノンドープのGaN、又はn型若しくはp型ドーピングされたGaNからなるものであってもよいし、格子定数が近いAlN、InN、或いはGaNとAlN及びInNからなる群から選択される1種以上の結晶と混晶化されたものであってもよい。
もっとも、発光機能層14は窒化ガリウム(GaN)系材料、酸化亜鉛(ZnO)系材料、窒化アルミニウム(AlN)系材料から選ばれる複数の材料系で構成してもよい。例えば窒化ガリウム自立基板12上にp型窒化ガリウム層、n型酸化亜鉛層を成長させてもよく、p型窒化ガリウム層とn型酸化亜鉛層の積層順序は逆であってもよい。窒化ガリウム自立基板12を発光機能層14の一部として用いる場合は、n型又はp型の酸化亜鉛層を形成してもよい。p型酸化亜鉛層に使用されるp型ドーパントの好ましい例としては、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、カーボン(C)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、銀(Ag)及び銅(Cu)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。また、n型酸化亜鉛層に使用されるn型ドーパントの好ましい例としては、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びシリコン(Si)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
発光機能層14及びバッファ層の成膜方法は、窒化ガリウム自立基板の結晶方位に概ね倣って成長する方法であれば特に限定されないが、MOCVD、MBE、HVPE、スパッタリング等の気相法、Naフラックス法、アモノサーマル法、水熱法、ゾルゲル法等の液相法、粉末の固相成長を利用した粉末法、及びこれらの組み合わせが好ましく例示される。例えばMOCVD法を用いて窒化ガリウム系材料からなる発光機能層14を作製する場合においては、少なくともガリウム(Ga)を含む有機金属ガス(例えばトリメチルガリウム)と窒素(N)を少なくとも含むガス(例えばアンモニア)を原料として基板上にフローさせ、水素、窒素又はその両方を含む雰囲気等において300〜1200℃程度の温度範囲で成長させてもよい。この場合、バンドギャップ制御のためインジウム(In)、アルミニウム(Al)、n型及びp型ドーパントとしてシリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)を含む有機金属ガス(例えばトリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム、モノシラン、ジシラン、ビス−シクロペンタジエニルマグネシウム)を適宜導入して成膜を行ってもよい。
また、発光機能層14及びバッファ層に窒化ガリウム系以外の材料を用いる場合は、窒化ガリウム自立基板上に種結晶層を成膜してもよい。種結晶層の成膜方法や材質に限定は無いが、結晶方位に概ね倣った結晶成長を促すものであればよい。例えば、酸化亜鉛系材料を発光機能層14の一部又は全てに用いる場合、MOCVD法、MBE法、HVPE法、スパッタリング法等の気相成長法を用いて極薄い酸化亜鉛の種結晶を作製してもよい。
発光機能層14の上に電極層16及び/又は蛍光体層をさらに備えていてもよい。上述のとおり、導電性を有する窒化ガリウム自立基板12を用いた発光素子は縦型構造を採ることができるため、図1に示されるように窒化ガリウム自立基板12の裏面にも電極層18を設けることができるが、窒化ガリウム自立基板12を電極そのものとして使用してもよく、その場合には窒化ガリウム自立基板12にはn型ドーパントを添加されているのが好ましい。電極層16,18は公知の電極材料で構成すればよいが、発光機能層14上の電極層16は、ITO等の透明導電膜、又は格子構造等の開口率が高い金属電極とすれば、発光機能層14で発生した光の取り出し効率を上げられる点で好ましい。
発光機能層14が紫外光を放出可能なものである場合には、紫外光を可視光に変換するための蛍光体層を電極層の外側に設けてもよい。蛍光体層は紫外線を可視光に変換可能な公知の蛍光成分を含む層であればよく特に限定されない。例えば、紫外光により励起されて青色光を発光する蛍光成分と、紫外光により励起されて青〜緑色光を発光する蛍光成分と、紫外光により励起されて赤色光を発光する蛍光成分とを混在させて、混合色として白色光を得るような構成とするのが好ましい。そのような蛍光成分の好ましい組み合わせとしては、(Ca,Sr)(POCl:Eu、BaMgAl1017:Eu、及びMn、YS:Euが挙げられ、これらの成分をシリコーン樹脂等の樹脂中に分散させて蛍光体層を形成するのが好ましい。このような蛍光成分は上記例示物質に限定されるものではなく、他の紫外光励起蛍光体、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)やシリケート系蛍光体、酸窒化物系蛍光体等の組み合わせでもよい。
一方、発光機能層14が青色光を放出可能なものである場合には、青色光を黄色光に変換するための蛍光体層を電極層の外側に設けてもよい。蛍光体層は青色光を黄色光に変換可能な公知の蛍光成分を含む層であればよく特に限定されない。例えばYAG等の黄色発光する蛍光体との組み合わせたものとしてもよい。このようにすることで、蛍光体層を透過した青色発光と蛍光体からの黄色発光は補色関係にあるため、擬似的な白色光源とすることができる。なお、蛍光体層は、青色を黄色に変換する蛍光成分と、紫外光を可視光に変換するための蛍光成分との両方を備えることで、紫外光の可視光への変換と青色光の黄色光への変換との両方を行う構成としてもよい。
用途
本発明の窒化ガリウム自立基板は、上述した発光素子のみならず、各種電子デバイス、パワーデバイス、受光素子、太陽電池用ウェハー等の種々の用途に好ましく利用することができる。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード00610)を用意した。板状アルミナ粒子100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)7重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)3.5重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(2−エチルヘキサノール)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後150枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cmの圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1600℃で4時間、面圧200kgf/cmの条件で焼成した。得られた焼結体を熱間当方圧加圧法(HIP)にてアルゴン中1700℃で2時間、ガス圧1500kgf/cmの条件で再度焼成した。
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは1nmであった。
(2)配向アルミナ基板の評価
(配向度の評価)
得られた配向アルミナ基板の配向度を確認するため、XRDにより本実験例における測定対象とする結晶面であるc面の配向度を測定した。XRD装置(株式会社リガク製、RINT−TTR III)を用い、配向アルミナ基板の板面に対してX線を照射したときの2θ=20〜70°の範囲でXRDプロファイルを測定した。c面配向度は、以下の式により算出した。この結果、本実験例におけるc面配向度の値は97%であった。
(焼結体粒子の粒径評価)
配向アルミナ基板の焼結体粒子について、板面の平均粒径を以下の方法により測定した。得られた配向アルミナ基板の板面を研磨し、1550℃で45分間サーマルエッチングを行った後、走査電子顕微鏡にて画像を撮影した。視野範囲は、得られる画像の対角線に直線を引いた場合に、いずれの直線も10個から30個の粒子と交わるような直線が引けるような視野範囲とした。得られた画像の対角線に引いた2本の直線において、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を板面の平均粒径とした。この結果、板面の平均粒径は100μmであった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
(3a)種結晶層の成膜
次に、加工した配向アルミナ基板の上に、MOCVD法を用いて種結晶層を形成した。具体的には、530℃にて低温GaN層を40nm堆積させた後に、1050℃にて厚さ3μmのGaN膜を積層させて種結晶基板を得た。
(3b)Naフラックス法によるGeドープGaN層の成膜
上記工程で作製した種結晶基板を、内径80mm、高さ45mmの円筒平底のアルミナ坩堝の底部分に設置し、次いで融液組成物をグローブボックス内で坩堝内に充填した。融液組成物の組成は以下のとおりである。
・金属Ga:60g
・金属Na:60g
・四塩化ゲルマニウム:1.85g
このアルミナ坩堝を耐熱金属製の容器に入れて密閉した後、結晶育成炉の回転が可能な台上に設置した。窒素雰囲気中で870℃、4.0MPaまで昇温加圧後、50時間保持しつつ溶液を回転することで、撹拌しながら窒化ガリウム結晶を成長させた。結晶成長終了後、3時間かけて室温まで徐冷し、結晶育成炉から育成容器を取り出した。エタノールを用いて、坩堝内に残った融液組成物を除去し、窒化ガリウム結晶が成長した試料を回収した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.5mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。このGeドープ窒化ガリウム結晶の板面を#600及び#2000の砥石によって研削して板面を平坦にし、次いでダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、厚さ約300μmのGeドープ窒化ガリウム自立基板を得た。なお、平滑化加工においては、砥粒のサイズを3μmから0.1μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。窒化ガリウム自立基板表面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
なお、本例では、ゲルマニウムドーピングしてn型半導体としたものを作製したが、用途、構造によっては異なる元素をドーピングしてもよく、ノンドープとしてもよい。
(体積抵抗率の評価)
ホール効果測定装置を用い、窒化ガリウム自立基板の面内の体積抵抗率を測定した。その結果、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。
(窒化ガリウム自立基板の断面平均径の評価)
窒化ガリウム自立基板の最表面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を測定するため、自立基板の表面を走査電子顕微鏡にて画像を撮影した。視野範囲は、得られる画像の対角線に直線を引いた場合に、10個から30個の柱状組織と交わるような直線が引けるような視野範囲とした。得られた画像の対角線に2本の直線を任意に引き、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を、窒化ガリウム自立基板の最表面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径とした。この結果、断面平均径は約100μmであった。なお、本例では表面の走査顕微鏡像で明瞭に界面を判別できたが、サーマルエッチングやケミカルエッチングによって界面を際立たせる処理を施した後に上記の評価を行ってもよい。
(4)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
(4a)MOCVD法による発光機能層の成膜
MOCVD法を用いて、窒化ガリウム自立基板上にn型層として1050℃でSi原子濃度が5×1018/cmになるようにドーピングしたn−GaN層を1μm堆積した。次に発光層として750℃で多重量子井戸層を堆積した。具体的にはInGaNによる2.5nmの井戸層を5層、GaNによる10nmの障壁層を6層にて交互に積層した。次にp型層として950℃でMg原子濃度が1×1019/cmになるようにドーピングしたp−GaNを200nm堆積した。その後、MOCVD装置から取り出し、p型層のMgイオンの活性化処理として、窒素雰囲気中で800℃の熱処理を10分間行った。発光機能層の再表面における単結晶粒子の断面平均径を測定するため、発光機能層の表面を走査電子顕微鏡にて画像を撮影した。視野範囲は、得られる画像の対角線に直線を引いた場合に、10個から30個の柱状組織と交わるような直線が引けるような視野範囲とした。得られた画像の対角線に2本の直線を任意に引き、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を、発光機能層の最表面における単結晶粒子の断面平均径とした。この結果、断面平均径は約100μmであった。
(4b)発光素子の作製
フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、窒化ガリウム自立基板のn−GaN層及びp−GaN層とは反対側の面にカソード電極としてのTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、p型層に透光性アノード電極としてNi/Au膜をそれぞれ6nm、12nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、透光性アノード電極としてのNi/Au膜の上面の一部領域に、アノード電極パッドとなるNi/Au膜をそれぞれ5nm、60nmの厚みにパターニングした。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
(4c)発光素子の評価
カソード電極とアノード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長450nmの発光が確認された。
例2
(1)Mgドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(1)〜(3)と同様の方法で配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、融液組成物を下記組成としたこと以外は例1の(3b)と同様にしてMgドープGaN膜を成膜した。
・金属Ga:60g
・金属Na:60g
・金属Mg:0.02g
得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にMgドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.5mmであった。クラックは確認されなかった。また、得られた窒化ガリウム中のMg濃度は4×1019/cmであり、ホール効果測定装置を用いて測定したホール濃度は1×1018/cmであった。こうして得られた試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Mgドープ窒化ガリウムの単体を得た。このMgドープ窒化ガリウム結晶の板面を#600及び#2000の砥石によって研削して板面を平坦にし、次いでダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、厚さ約150μmのMgドープ窒化ガリウム自立基板を得た。なお、平滑化加工においては、砥粒のサイズを3μmから0.1μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。Mgドープ窒化ガリウム自立基板表面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。なお、例1の(3b)と同様の方法でMgドープ窒化ガリウム自立基板の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約100μmであった。
(2)Mgドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
(2a)MOCVD法によるp型層の成膜
MOCVD法を用いて、基板上にp型層として950℃でMg原子濃度が1×1019/cmになるようにドーピングしたp−GaNを200nm堆積した。その後、MOCVD装置から取り出し、p型層のMgイオンの活性化処理として、窒素雰囲気中で800℃の熱処理を10分間行った。
(2b)RS−MBE法及び水熱法によるn型層の成膜
(2b−1)RS−MBE法による種結晶層の成膜
RS−MBE(ラジカルソース分子線成長)装置にて、金属材料である亜鉛(Zn)とアルミニウム(Al)をクヌーセンセルで照射し、p型層上に供給した。ガス材料である酸素(O)は、RFラジカル発生装置にてそれぞれOガスを原料とし、酸素ラジカルとして供給した。各種原料の純度はZnが7N、Oが6Nのものを用いた。基板は抵抗加熱ヒーターを用いて700℃に加熱し、膜中のAl濃度が2×1018/cmとなり、ZnとO原子濃度の比が1対1となるように各種ガスソースのフラックスを制御しながら厚さ20nmのAlがドープされたn−ZnOからなる種結晶層を成膜した。
(2b−2)水熱法によるn型層の成膜
硝酸亜鉛を純水中に0.1Mとなるように溶解させて溶液Aとした。次に1Mのアンモニア水を準備し、溶液Bとした。次に硫酸アルミニウムを純水中に0.1Mとなるように溶解させて溶液Cとした。これらの溶液を容積比で、溶液A:溶液B:溶液C=1:1:0.01となるように混合及び撹拌して、育成用水溶液を得た。
種結晶層を成膜した窒化ガリウム自立基板を懸垂させて育成用水溶液中1リットル中に設置した。次に、防水加工を施したセラミックス製ヒーターとマグネチックスターラーを水溶液中に設置し、オートクレーブに入れて270℃で3時間の水熱処理を行い、種結晶層上にZnO層を析出させた。ZnO層が析出した窒化ガリウム自立基板を純水洗浄した後、大気中500℃でアニール処理を行い、厚さ約3μmのAlがドープされたn−ZnO層を形成した。試料中に気孔やクラックは検出されず、テスターにてZnO層の導電性が確認された。また、例1の(4a)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の最表面における単結晶粒子の断面平均径は約100μmであった。
(2c)発光素子の作製
フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、n型層にカソード電極としてTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、窒化ガリウム自立基板のp−GaN層及びn−ZnO層とは反対側の面にアノード電極として、Ni/Au膜をそれぞれ50nm、100nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
(2d)発光素子の評価
カソード電極とアノード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長約380nmの発光が確認された。
例3
(1)Mgドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
(1a)RS−MBE法による活性層の成膜
例2の(1)及び(2a)と同様の方法でMgドープ窒化ガリウム自立基板を作製し、基板上にp型層としてp−GaNを200nm体積した。次にRS−MBE(ラジカルソース分子線成長)装置にて、金属材料である亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)をクヌーセンセルで照射し、p型層上に供給した。ガス材料である酸素(O)は、RFラジカル発生装置にてそれぞれOガスを原料とし、酸素ラジカルとして供給した。各種原料の純度はZn、Cdが7N、Oが6Nのものを用いた。基板は抵抗加熱ヒーターを用いて700℃に加熱し、Cd0.2Zn0.8O層となるように各種ガスソースのフラックスを制御しながら厚さ1.5nmの活性層を成膜した。
(1b)スパッタリングによるn型層の成膜
次にRFマグネトロンスパッタ法を用いて、活性層上にn型ZnO層を500nm成膜した。成膜にはAlが2重量部添加されたZnOターゲットを使用し、成膜条件は純Ar雰囲気、圧力0.5Pa、投入電力150W、成膜時間5分間とした。また、例1の(4a)と同様の方法を用いて発光機能層の断面平均径を評価した結果、発光機能層の板面の平均粒径は約100μmであった。
(1c)発光素子の作製
フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、n型層にカソード電極としてTi/Al/Ni/Au膜をそれぞれ15nm、70nm、12nm、60nmの厚みでパターニングした。カソード電極のパターンは、電極が形成されていない箇所から光が取り出せるように開口部を有する形状とした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために、窒素雰囲気中での700℃の熱処理を30秒間行った。さらに、フォトリソグラフィープロセスと真空蒸着法とを用いて、窒化ガリウム自立基板のp−GaN層及びn−ZnO層とは反対側の面にアノード電極として、Ni/Au膜をそれぞれ5nm、100nmの厚みにパターニングした。その後、オーム性接触特性を良好なものとするために窒素雰囲気中で500℃の熱処理を30秒間行った。こうして得られたウェハーを切断してチップ化し、さらにリードフレームに実装して、縦型構造の発光素子を得た。
(1d)発光素子の評価
カソード電極とアノード電極間に通電し、I−V測定を行ったところ、整流性が確認された。また、順方向の電流を流したところ、波長約400nmの発光が確認された。
例4
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
例1の(1)と同様にして円盤状の成形体を得た。得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1700℃で4時間、面圧200kgf/cmの条件で焼成した。
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は99%、平均粒径は18μmであった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を20時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.2mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料のGeドープ窒化ガリウム結晶の板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて窒化ガリウム結晶の厚みが約50μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。次に、試料を切断して板面と垂直方向の面を露出させ、CP研磨機(日本電子株式会社製、IB−09010CP)を用いて研磨した後、電子線後方散乱回折装置(EBSD)(TSLソリューションズ製)にて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施した。図2に逆極点図方位マッピングを示す。また、図3に窒化ガリウム結晶の板面(表面)で測定した逆極点図方位マッピングを、図4に配向アルミナ基板と窒化ガリウム結晶との界面を拡大した結晶粒マッピング像を示す。図2より、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かる。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かる。図3より、窒化ガリウム結晶を構成する各粒子は概ねc面が法線方向に配向していることが示される。また、図4より、下地となる配向アルミナ基板を構成する結晶粒子を起点として窒化ガリウム結晶の粒子が成長していることが分かる。厚膜化に伴って粒径が増大するような成長挙動となる原因は定かではないが、図5に概念的に示されるように、成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進行したためではないかと考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
次に、試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。このGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)にダイヤモンド砥粒によるラップ加工を施し、板表面(配向アルミナ基板と接していた側と反対側)と裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を平滑化した窒化ガリウム自立基板を得た。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
例1の(3)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、表面の断面平均径は約50μm、裏面の断面平均径は約18μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは約2.8となった。また、表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は約1.0であった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約50μmであった。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、カソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。
参考のため、上述した(1)及び(2)と同様にして作製した窒化ガリウム自立基板の表面側を研削して、厚さ20μmとした自立基板も準備した。このときの最表面における単結晶粒子の断面平均径は約35μmであり、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは1.9、アスペクト比は約0.6であった。この自立配向GaN結晶上に上記と同様の発光機能層を作製し、縦型の発光素子とした後に順方向に電流を流したところ、整流性、波長450nmの発光共に確認され、発光輝度もある程度高かったが、上記の素子より発光輝度は低下した。
例5
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード02025)、微細アルミナ粉末(大明化学工業株式会社製、グレードTM−DAR)、及び酸化マグネシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社、グレード500A)を用意し、板状アルミナ粉末5重量部、微細アルミナ粉末95重量部、酸化マグネシウム粉末0.025重量部を混合してアルミナ原料を得た。次に、アルミナ原料100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(キシレンと1−ブタノールを重量比1:1で混合したもの)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後30枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cmの圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cmの条件で焼成した。
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は96%、平均粒径は約20μmであった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料のGeドープ窒化ガリウム結晶の板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて窒化ガリウム結晶の厚み約180μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。次に、試料を切断して板面と垂直方向の面を露出させ、CP研磨機(日本電子株式会社製、IB−09010CP)を用いて研磨した後、電子線後方散乱回折装置(EBSD)(TSLソリューションズ製)にて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施した。図6に逆極点図方位マッピングを示す。図6より、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かる。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かる。このような挙動となる原因は定かではないが、図5で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
次に、試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。このGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)をダイヤモンド砥粒によるラップ加工を施し、板表面(配向アルミナ基板と接していた側と反対側)と裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を平滑化した厚さ約180μmの窒化ガリウム自立基板を得た。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
例1の(3)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、表面の断面平均径は約150μm、裏面の断面平均径は約20μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは約7.5となった。また、表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は約1.2であった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約150μmであった。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、カソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。
参考のため、上記(1)及び(2)と同様にして作製した窒化ガリウム自立基板の表面側を研削し、厚さ50μmとした自立基板と、厚さ20μmとした自立基板を準備した。厚さ50μmの自立基板の最表面における単結晶粒子の断面平均径は約63μmであり、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは3.2、アスペクト比は約0.8であった。この自立配向GaN結晶上に上記と同様の発光機能層を作製し、縦型の発光素子とした後に順方向に電流を流したところ、整流性、波長450nmの発光共に確認され、発光輝度もある程度高かったが、上記の素子より発光輝度が低下した。厚さ20μmの自立基板の最表面における単結晶粒子の断面平均径は約39μmであり、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは2.0、アスペクト比は約0.5であった。この自立配向GaN結晶上に上記と同様の発光機能層を作製し、縦型の発光素子とした後に順方向に電流を流したところ、整流性、波長450nmの発光共に確認され、発光輝度もある程度高かったが、上記2つの素子より更に発光輝度が低下した。
例6
(1)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例5と同様にしてc面配向アルミナ基板を作製し、厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を40時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.4mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料のGeドープ窒化ガリウム結晶の板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて窒化ガリウム結晶の厚み約260μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。次に、例4及び5と同様の方法を用いて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径が大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、図5で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
次に、試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。このGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)をダイヤモンド砥粒によるラップ加工を施し、板表面(配向アルミナ基板と接していた側と反対側)と裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を平滑化した厚さ約260μmの窒化ガリウム自立基板を得た。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
例1の(3)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、表面の断面平均径は約220μm、裏面の断面平均径は約20μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは約11.0となった。また、表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は約1.2であった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約220μmであった。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、カソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。発光輝度はある程度高かったが、例5の素子より低いことがわかった。
例7
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
ホットプレスでの焼成温度を1750℃とした以外は例5と同様にしてc面配向アルミナ基板を作製した。このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は96%、平均粒径は14μmであった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料のGeドープ窒化ガリウム結晶の板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて窒化ガリウム結晶の厚み約90μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。次に、例4〜6と同様の方法を用いて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径が大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、図5で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
次に、試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。このGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)をダイヤモンド砥粒によるラップ加工を施し、板表面(配向アルミナ基板と接していた側と反対側)と裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を平滑化した厚さ約90μmの窒化ガリウム自立基板を得た(例7−1)。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
また、上記と同様にしてGeドープ窒化ガリウム結晶を作製し、その板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて研削して、窒化ガリウム結晶の厚みが70、50、30及び20μmとなる試料をそれぞれ作製し、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。次に、上記と同様にしてアルミナ基板部を除去し、Geドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)をダイヤモンド砥粒によるラップ加工を施し、板表面(配向アルミナ基板と接していた側と反対側)と裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を平滑化した厚さがそれぞれ70、50、30及び20μmとなる窒化ガリウム自立基板を得た(例7−2〜例7−5)。各試料の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaはいずれも0.2nmであった。
例1の(3)と同様の方法で各試料の体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率はいずれも1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、窒化ガリウム自立基板の厚みと表面の断面平均径、裏面の断面平均径、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/D、及び表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は表1のとおりであった。
板ヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化したされた。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定した結果を表1に示す。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、いずれの試料もカソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。発光輝度はいずれもある程度高かったが、例7−1>例7−2>例7−3>例7−4>例7−5の関係であった。
例8
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード02025)、微細アルミナ粉末(大明化学工業株式会社製、グレードTM−DAR)、フッ化アルミニウム(関東化学製)、及び酸化マグネシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社、グレード500A)を用意し、板状アルミナ粉末5重量部、微細アルミナ粉末95重量部、フッ化アルミニウム粉末0.05重量部、酸化マグネシウム粉末0.025重量部を混合してアルミナ原料を得た。次に、アルミナ原料100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(キシレンと1−ブタノールを重量比1:1で混合したもの)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後30枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cmの圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cmの条件で焼成した。
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は92%、平均粒径は約64μmであった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料のGeドープ窒化ガリウム結晶の板面(表面)を#600及び#2000の砥石を用いて窒化ガリウム結晶の厚み約90μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により板面を平滑化した。次に、例4〜7と同様の方法を用いて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径が大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、図5で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
次に、試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。このGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)にダイヤモンド砥粒によるラップ加工を施し、板表面と裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を平滑化した厚さ約90μmの窒化ガリウム自立基板を得た。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
例1の(3)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、表面の断面平均径は約80μm、裏面の断面平均径は約64μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは約1.3となった。また、表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は約1.1であった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約80μmであった。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、カソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。
例9
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
フッ化アルミニウム粉末の量を0.02重量部とした以外は例8と同様にしてc面配向アルミナ基板を作製した。このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は94%、平均粒径は41μmであった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。次いで#600及び#2000の砥石を用いてGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を約80μm切削した。その後、板面(表面)を窒化ガリウム結晶の厚み約60μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により表面、裏面を平滑化した厚さ約60μmの窒化ガリウム自立基板を得た。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
次に、例4〜8と同様の方法を用いて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、図5で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
例1の(3)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、表面の断面平均径は約81μm、裏面の断面平均径は約61μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは約1.3となった。また、表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は約0.7であった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約81μmであった。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、カソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。しかし、発光輝度はある程度高かったが、例8より弱いことがわかった。
例10
(1)c面配向アルミナ焼結体の作製
原料として、板状アルミナ粉末(キンセイマテック株式会社製、グレード10030)、微細アルミナ粉末(大明化学工業株式会社製、グレードTM−DAR)、及び酸化マグネシウム粉末(宇部マテリアルズ株式会社、グレード500A)を用意し、板状アルミナ粉末5重量部、微細アルミナ粉末95重量部、酸化マグネシウム粉末0.025重量部を混合してアルミナ原料を得た。次に、アルミナ原料100重量部に対し、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)8重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒(キシレンと1−ブタノールを重量比1:1で混合したもの)を混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが100μmとなるように、シート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後30枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、真空パックを行った。この真空パックを85℃の温水中で、100kgf/cmの圧力にて静水圧プレスを行い、円盤状の成形体を得た。
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1800℃で4時間、面圧200kgf/cmの条件で焼成した。
このようにして得た焼結体をセラミックスの定盤に固定し、砥石を用いて#2000まで研削して板面を平坦にした。次いで、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面を平滑化し、口径50.8mm(2インチ)、厚さ1mmの配向アルミナ焼結体を配向アルミナ基板として得た。砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつ、平坦性を高めた。加工後の平均粗さRaは4nmであった。また、例1と同様の方法でc面配向度と板面の平均粒径を評価したところ、c面配向度は99%、平均粒径は約24μmであった。
(2)Geドープ窒化ガリウム自立基板の作製
例1の(3a)と同様にして配向アルミナ基板の上に厚さ3μmのGaN膜を積層させた種結晶基板を作製した。この種結晶基板上に、保持時間を30時間とした以外は例1の(3b)と同様にしてGeドープGaN膜を成膜した。得られた試料は、50.8mm(2インチ)の種結晶基板の全面上にGeドープ窒化ガリウム結晶が成長しており、結晶の厚さは約0.3mmであった。クラックは確認されなかった。
こうして得られた試料の配向アルミナ基板部を砥石による研削加工により除去して、Geドープ窒化ガリウムの単体を得た。次いで#600及び#2000の砥石を用いてGeドープ窒化ガリウム結晶の裏面(配向アルミナ基板と接していた側の面)を約90μm切削した。その後、板面(表面)を窒化ガリウム結晶の厚み約40μmになるまで研削して平坦にした後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により表面、裏面を平滑化して厚さ約40μmの窒化ガリウム自立基板を得た。窒化ガリウム自立基板の表面及び裏面の加工後の平均粗さRaは0.2nmであった。
次に、例4〜9と同様の方法を用いて窒化ガリウム結晶の断面の逆極点図方位マッピングを実施したところ、窒化ガリウム結晶は配向アルミナ基板側より表面側(配向アルミナ基板と反対側)の方が粒径が大きく、窒化ガリウム結晶の形状は断面像上、台形、三角形など、完全な柱状ではないことが分かった。また、厚膜化に伴って粒径が増大して表面まで成長が進む粒子と、表面まで成長が進まない粒子が存在することが分かった。このような挙動となる原因は定かではないが、図5で示したように成長が遅い粒子を成長が速い粒子が覆うようにして成長が進んだ結果と考えられる。したがって、窒化ガリウム結晶を構成する窒化ガリウム粒子のうち、表面側に露出している粒子は裏面と粒界を介さずに連通しているが、裏面側に露出した粒子の一部は途中で成長が停止したものも含まれる。
例1の(3)と同様の方法で体積抵抗率を測定したところ、体積抵抗率は1×10−2Ω・cmであった。また、窒化ガリウム自立基板の表面と裏面におけるGaN単結晶粒子の断面平均径を例1の(3)と同様の方法を用いて測定した結果、表面の断面平均径は約75μm、裏面の断面平均径は約60μmであった。このように断面平均径は表面の方が裏面よりも大きく、基板裏面の断面平均径Dに対する基板表面の断面平均径Dの比D/Dは約1.3となった。また、表面の断面平均径に対するGaN結晶の厚みの比として算出されるGaN単結晶粒子のアスペクト比は約0.5であった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定したところ、断面平均径は約75μmであった。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、カソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。但し、発光輝度はある程度高かったが、例8及び9より弱いことが分かった。
(3)Geドープ窒化ガリウム自立基板を用いた発光素子の作製
例1の(4a)と同様にして窒化ガリウム自立基板上に発光機能層を作製し、最表面における単結晶粒子の断面平均径を測定した結果を表1に示す。また例1の(4b)と同様にして縦型の発光素子を作製した結果、いずれの試料もカソード電極とアノード電極間のI−V測定より整流性が確認され、順方向の通電により波長450nmの発光が確認された。発光輝度はいずれもある程度高かったが、例7−1>例7−2>例7−3>例7−4>例7−5の関係であった。

Claims (25)

  1. 略法線方向に単結晶構造を有する複数の窒化ガリウム系単結晶粒子で構成される板からなる、窒化ガリウム自立基板。
  2. 前記基板の最表面における前記窒化ガリウム系単結晶粒子の断面平均径が0.3μm以上である、請求項1に記載の窒化ガリウム自立基板。
  3. 前記断面平均径が3μm以上である、請求項2に記載の窒化ガリウム自立基板。
  4. 前記断面平均径が20μm以上である、請求項2に記載の窒化ガリウム自立基板。
  5. 20μm以上の厚さを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  6. 直径100mm以上の大きさを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  7. 前記窒化ガリウム系単結晶粒子が、略法線方向に概ね揃った結晶方位を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  8. 前記窒化ガリウム系単結晶粒子がn型ドーパント又はp型ドーパントでドープされている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  9. 前記窒化ガリウム系単結晶粒子がドーパントを含まない、請求項1〜7のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  10. 前記窒化ガリウム系単結晶粒子が混晶化されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  11. 前記窒化ガリウム自立基板の表面に露出している前記窒化ガリウム系単結晶粒子が、該窒化ガリウム自立基板の裏面に粒界を介さずに連通してなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  12. 窒化ガリウム自立基板の裏面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の最表面における断面平均径Dに対する、窒化ガリウム自立基板の表面に露出している窒化ガリウム系単結晶粒子の最表面における断面平均径Dの比D/Dが1.0よりも大きい、請求項1〜11のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  13. 前記窒化ガリウム自立基板の表面に露出している前記窒化ガリウム系単結晶粒子の最表面における断面平均径Dに対する、前記窒化ガリウム自立基板の厚さTの比として規定されるアスペクト比T/Dが0.7以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板と、
    該基板上に形成され、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一以上有する発光機能層と、
    を備えた、発光素子。
  15. 前記発光機能層の最表面における前記半導体単結晶粒子の断面平均径が0.3μm以上である、請求項14に記載の自立した発光素子。
  16. 前記断面平均径が3μm以上である、請求項15に記載の発光素子。
  17. 前記半導体単結晶粒子が、前記窒化ガリウム自立基板の結晶方位に概ね倣って成長した構造を有する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の発光素子。
  18. 前記発光機能層が窒化ガリウム系材料で構成される、請求項14〜17のいずれか一項に記載の発光素子。
  19. 配向多結晶焼結体を用意する工程と、
    前記配向多結晶焼結体上に、窒化ガリウムからなる種結晶層を、前記配向多結晶焼結体の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する工程と、
    前記種結晶層上に、厚さ20μm以上の窒化ガリウム系結晶から構成される層を、前記種結晶層の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように形成する工程と、
    前記配向多結晶焼結体を除去して、窒化ガリウム自立基板を得る工程と、
    を含む、窒化ガリウム自立基板の製造方法。
  20. 前記配向多結晶焼結体が配向多結晶アルミナ焼結体である、請求項19に記載の方法。
  21. 前記配向多結晶焼結体を構成する粒子の板面における平均粒径が0.3〜1000μmである、請求項19又は20に記載の方法。
  22. 前記窒化ガリウム系結晶から構成される層の形成がNaフラックス法により行われる、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記配向多結晶焼結体が透光性を有する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の窒化ガリウム自立基板を用意する、又は請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法により前記窒化ガリウム自立基板を用意する工程と、
    前記窒化ガリウム自立基板に、前記窒化ガリウム基板の結晶方位に概ね倣った結晶方位を有するように、略法線方向に単結晶構造を有する複数の半導体単結晶粒子で構成される層を一つ以上形成して発光機能層を設ける工程と、
    を含む、発光素子の製造方法。
  25. 前記発光機能層が窒化ガリウム系材料で構成される、請求項24に記載の方法。
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