JP2015193805A - 水素化コールタールピッチの製造方法 - Google Patents

水素化コールタールピッチの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱膨張係数が小さく且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスが得られる水素化コールタールピッチの製造方法を提供する。
【解決手段】 コールタールピッチを水素化して水素化コールタールピッチを製造する方法であって、該水素化を、350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m当たり200〜700Nm/m、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行うことを特徴とする水素化コールタールピッチの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、コールタールピッチを水素化処理して水素化コールタールピッチを製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、コールタールピッチを水素化処理によって脱硫、脱窒素化して水素化コールタールピッチを製造する方法に関する。
本発明は、ニードルコークスの原料として好適に用いることが出来る水素化コールタールピッチを製造する方法に関する。
石炭乾留時に副生するコールタールは、その大部分が縮合多環芳香族化合物から構成されており、以前から各種の炭素製品用の原料として使用されてきた。コールタール系製品群の構成割合は、約30%が留出油成分から得られるクレオソート油やナフタレン等の製品群、残り70%が非留出分である重質成分のコールタールピッチから得られる製品群である。
これらのうち、コールタールピッチから製造されるニードルコークスは特に付加価値の高い製品として重要な位置を占めており、主に電気製鋼用黒鉛電極の骨材に使用される。黒鉛電極の製造工程においては、まずニードルコークス粒とバインダーピッチとを所定の割合で配合し、加熱捏合した後、押し出し成型して生電極を製造する。この生電極を焼成し、黒鉛化した後、加工することにより黒鉛電極製品が得られる。
この黒鉛電極は過酷な高温条件のもとで使用されるため、極めて高い耐熱衝撃性が要求される。耐熱衝撃性の高い黒鉛電極を製造するためには熱膨張係数が小さいニードルコークス(以下、低CTEニードルコークスと表記する場合がある。)が必要とされる。コールタールピッチを原料とするニードルコークス(以下、ピッチ系ニードルコークスと表記する場合がある。)は、あらゆるコ一クスの中で熱膨張係数が最も小さいので、黒鉛電極の原料としては最も好ましいものである。しかしながら、ピッチ系ニードルコ一クスは良品質な黒鉛電極を与える反面、電極を製造する黒鉛化過程で、いわゆるパッフィングと呼ばれる不可逆膨張現象を起こし易く、急速に黒鉛化した場合には製品に亀裂が発生して歩留りが著しく低下するといった欠点をもっている。
このため黒鉛電極の製造にあたっては、黒鉛化のための昇温を長時間かけて行う必要があり、生産性は著しく低いものであった。
このパッフィング現象は、主として黒鉛化過程の1500〜2000℃の領域において、ピッチ系ニードルコークスに含まれるヘテロ化合物から窒素が、同様に2500〜2800℃の領域において硫黄が急激に揮散するための異常膨張と考えられている。
このようなパッフィング現象を解消するため、黒鉛電極の製造工程においていくつかの手法が取られている。例えば、ピッチ系ニードルコークスと粘結材であるバインダーピッチの混合過程において酸化鉄を少量添加することにより、黒鉛化時にコークス中の硫黄分と鉄の安定化合物を形成させてパッフィングを抑制する方法や、成形工程において黒鉛電極の嵩密度を調整して黒鉛化時に発生するガスを揮散し易くする方法がある。ただし、前者の手法は、硫黄に由来する膨張の低減には一定の効果があるものの、窒素に由来する膨張を低減する効果は見られず、後者は、嵩密度の低下による黒鉛電極の機械的強度の低下につながるという問題があった。
上記以外に、ニードルコークスの製造時にパッフィングを抑制する様々な方法が提案されている。
特許文献1、2では、1500℃以上でピッチコークスを加熱処理して脱窒素すること
でパッフィングを低減する方法が提案されている。また、特許文献3では、生コークスを予め酸化処理等の前処理をした後に、通常のか焼温度で熱処理する手法が示されている。これらの方法は、前者は高温加熱に伴うエネルギー消費が大きくなり、後者は従来方法に比べて工程が複雑化するという課題がある。
ニードルコークスは、ピッチ系ニードルコークス以外に、石油系重質油を原料としても製造される。
特許文献4には、ディレードコークス法により得た生コークスを、先ず通常のか焼温度より低い温度範囲でか焼し、一旦冷却した後、再び通常の温度範囲でか焼を行うニードルコークスの製造方法が開示されている。この方法は、石油系原料油を使用したニードルコークスの熱膨脹係数の低減には有効であるものの、パッフィングの発生機構の異なるピッチ系(石炭系)ニードルコークスに適用したとしても、パッフィングの低減効果は僅かである。
特許文献5、6では、原油を減圧蒸留したときに残渣油として得られる重質油と、所定の原料油を流動接触分解して得られる硫黄及び窒素含有量の小さい原料油とを混合してコークス化する石油系ニードルコークスの製造方法を示している。しかし、この方法は歩留りが低く、かつ低CTEニードルコークスを製造することを目的としているだけで、パッフィングの低減を目的としたものではない。
ピッチ系ニードルコークスについては、特許文献7では実質的にキノリン不溶分を除去したコールタールピッチと石油系重質油を混合し、この混合物を炭化するニードルコークスの製造方法が開示されている。しかしこの方法では、パッフィングの抑制効果は十分とは言えない。
特許文献8では、石炭系重質油と石油系重質油とを混合して窒素分、硫黄分を共に特定値以下となるように調整配合した原料より生コークスを製造し、この生コークスを2段か焼することによりパッフィングの低いニードルコークスを得られるとしている。しかしこの方法での効果は限定的であり、かつ2段か焼によるコークス歩留の低下、コークスの多孔質化により黒鉛電極の嵩密度が低下するという懸念がある。
特許文献9には、水素化したコールタール系原料を使用するとパッフィングが減少したニードルコークスが得られることが記載されている。これは、コールタール系原料の水素化精製による硫黄及び窒素の除去という直接的な効果に加えて、縮合多環芳香族化合物の構造変化によるニードルコークスの品質改善が期待されるプロセスである。しかしながら、ここで開示されている水素化処理は、石油精製工業における常圧残油を原料油とする水素化脱硫プロセスの反応条件を適用したものであるため製造コストが高く、コークス歩留りも低いといった課題が未だ残されている。
特開昭60−33208号公報 特開昭60−208392号公報 特開昭63−135486号公報 特開昭52−29801号公報 特開2008−150399号公報 特開2008−156376号公報 特開平3−250090号公報 特開平5−163491号公報 特開昭59−122585号公報
石油精製工程において常圧残油を原料油とする水素化脱硫プロセス(以下、HDS)は、低硫黄重油の製造、流動接触分解に供給する原料油の前処理、灯油および軽油の増産を目的とした水素化分解など使用形態が多様化している。また、HDSプロセスにより原料油中の硫黄分だけでなく、窒素分も低減できることが知られている。HDSプロセスに適用する高性能触媒の開発もなされており、アルミナに担持されたコバルト−モリブデン触媒やニッケル−モリブデン触媒が広く用いられているが、触媒活性低下の挙動は原料油種、触媒種およびHDS処理条件等により著しく異なることが知られている。
一方、コールタールピッチの水素化に関しては、工業的な実施例が無いばかりか基礎的な研究例も少なく、触媒活性低下による脱硫率及び脱窒素率の挙動についても明らかでない。従って、ピッチ系ニードルコークスの原料として最適なコールタールピッチの水素化処理条件を含めた処理プロセスは未だ確立されていない。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、熱膨張係数が小さく且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスが得られる水素化コールタールピッチを提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題について鋭意検討した結果、ピッチ系原料の水素化脱硫及び水素化脱窒素処理工程を特定の条件下で行うことにより、得られた水素化コールタールピッチが、熱膨張係数が十分に小さく且つパッフィングが抑制されたニードルコークスの原料となることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[7]を要旨とする。
[1] コールタールピッチを水素化して水素化コールタールピッチを製造する方法であって、該水素化を、350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m当たり200〜700Nm/m、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行うことを特徴とする水素化コールタールピッチの製造方法。
[2] 該水素化触媒として、Ni−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒のうち少なくとも何れかを用いる[1]に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
[3]
得られる水素化コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ)が0.4〜2.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ)が0.2〜2.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.80〜1.2、硫黄分が0.05〜0.20重量%、窒素分が0.20〜0.70重量%、15℃の比重が1.0〜1.2である[1]又は[2]に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
[4] 原料コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ)が1.6〜6.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ)が2.0〜8.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.50〜0.70、硫黄分が0.4〜0.8重量%、窒素分が0.9〜1.5重量%、15℃の比重が1.15〜1.4である[1]〜[3]の何れか1項に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
[5] [1]〜[4]の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチ。
[6] [1]〜[4]の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチをコークス化して得られるピッチ系ニードルコークス。
[7] 熱膨張係数(CTE)が3.2×10−7/℃以下、2600℃迄のパッフィングが3.0%以下であるピッチ系ニードルコークス。
本発明により、熱膨張係数が小さく、且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスの原料として好適な水素化コールタールピッチを提供することができる。
本発明の水素化コールタールピッチを原料として製造されたピッチ系ニードルコークスは、電気製鋼用黒鉛電極の骨材などの用途に好適である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。以下において「質量%」と「重量%」、及び「質量部」と「重量部」とは、それぞれ同義である。
なお、本発明において「ピッチ系」と「石炭系」は同義の語として扱うものとする。
本発明でいう「硫黄分」とは、コールタールピッチについてはJIS M8813、石油系油についてはJIS K2541、コークスについてはJIS M8813に従い測定される値を、それぞれ意味する。
本発明でいう「窒素分」とは、コールタールピッチについてはJIS M8819、石油系油についてはJIS K2609、コークスについてはJIS M8819に従い測定される値を、それぞれ意味する。
また、コールタールピッチの比重、キノリン不溶分、360℃以下の留分は何れもJIS K2425に従い測定される値を意味する。
<コールタールピッチ(処理前ピッチ)>
本発明において、水素化処理する前の原料であるコールタールピッチ(以下、「処理前ピッチ」と表記する場合がある。)は限定されないが、後述する特性を有するものであることが好ましい。
処理前ピッチの製造方法は限定されないが、一般的にはコールタール系重質油から予めキノリン不溶分を実質的に除去するか、石油系重質油と混合した後にキノリン不溶分を実質的に除去することによって得ることが出来る。
キノリン不溶分を除去する手段としては公知の方法を適用することができるが、例えばタール系重質油を、芳香族系油や脂肪族系油で処理する方法が挙げられ、これらの混合溶剤で処理することも好ましい。脂肪族系油としては、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式化合物、アセトン、エーテル等のカルボニル基をもつ化合物、軽油等を使用することが出来る。芳香族系油としては、タール系洗浄油、アントラセン油等を使用することが出来る。ピッチと溶剤を適当な条件にて混合、加熱した後に必要により静置し、その後、この混合物を蒸留して低沸点成分を留去することにより、キノリン不溶分を殆ど含まない処理前ピッチとすることが出来る。
上記の処理前ピッチはコークス化の過程においてメソフェースと呼ばれる液晶の成長状態が良好であることが好ましい。メソフェースは、原料油の熱処理に伴い熱分解と重縮合が起こることによって生成する中間生成物であり、同一平面に沿って芳香族環の連なりが発達したものである。このメソフェースが大きく成長して一軸方向に配向すればニードルコークスの熱膨張係数を小さくすることができると考えられている。従って、高度に結晶が発達したメソフェースを生成させることが好ましい。
処理前ピッチのキノリン不溶分は0.2重量%以下であることが好ましい。処理前ピッチのキノリン不溶分が0.2重量%を超えると、コークス化過程におけるメソフェースの成長が抑制されることにより、ニードルコークスの熱膨張係数が大きくなる傾向がある。処理前ピッチのキノリン不溶分の下限値は限定されないが、通常0.0001重量%以上
である。キノリン不溶分が0.0001重量%未満のものは、これを入手することが困難な上、このような処理前ピッチでは本発明における水素化処理を行う効果が発現しづらくなる傾向にある。また、キノリン不溶分は、前記と同様の理由により0.001〜0.1重量%であることがより好ましい。
処理前ピッチは、トルエン不溶分の含有割合(重量%)とクロロホルム不溶分の含有割合(重量%)との差(γ)が1.6〜6.0であることが好ましい。
処理前ピッチのγが1.6未満の場合は、水素化処理後のγが小さくなり歩留りが低くなる傾向がある。一方、処理前ピッチのγが6.0を超えると、水素化反応が起こりにくくなる傾向があり、反応条件を高圧、高温にする必要が生じ、さらに供給する水素量が多くなる傾向がある。またγは、前記と同様の理由により、下限はより好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.0以上であり、上限はより好ましくは4.0以下である。
なお、γは「トルエン不溶分−クロロホルム不溶分」を意味し、後述する実施例に記載した測定方法を採用するものとする。
処理前ピッチは、トルエン不溶分の含有割合(重量%)とモルホリン不溶分の含有割合(重量%)との差(γ)が2.0〜8.0であることが好ましい。
処理前ピッチのγが2.0未満の場合は、水素化処理後のγが小さくなり歩留りが低くなる傾向がある。一方、処理前ピッチのγが8.0を超えると、水素化反応が起こりにくくなる傾向があり、反応条件を高圧、高温にする必要が生じ、さらに供給する水素量が多くなる傾向がある。また、γは、前記と同様の理由により2.0〜6.0であることがより好ましい。
なお、γは「トルエン不溶分−モルホリン不溶分」を意味し、後述する実施例に記載した測定方法を採用するものとする。
コールタールピッチの溶解性は、通常、トルエン、モルホリン、クロロホルムの順に高くなる。溶解性の高い溶媒で溶解すると、より分子量の大きな成分が溶解することとなるため、上記γ、γはコールタールピッチの分子量分布の尺度となり、また、分子量の大きな成分の含有割合を示す尺度でもある。γとγでは、γの方がより分子量の大きな成分に依存した意味を持つものと言える。
なお、上記の処理前ピッチにおけるγ、γと、後述する水素化コールタールピッチにおけるγ、γとは、好適な範囲がそれぞれ異なるが、前者は水素化処理によって水素化コールタールピッチを得るための原料として好適な範囲を意味するものであり、後者は、好適なニードルコークスを得るための原料として好適な範囲を意味するものである。
処理前ピッチは、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.50〜0.70であることが好ましい。
処理前ピッチのH/Cが0.50未満の場合は、水素化反応において消費される水素量が多くなる傾向がある。一方、処理前ピッチのH/Cが0.70を超えると、脂肪族の含有量が多くなり、水素化コールタールピッチから得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)が大きくなる傾向がある。また、H/Cは、前記と同様の理由により0.55〜0.68であることがより好ましい。
なお、「H/C」はJIS M8819に準拠して測定した値を意味し、後述する実施例に記載した測定方法を採用するものとする。
処理前ピッチの硫黄分は、0.4〜0.8重量%であることが好ましい。処理前ピッチの硫黄分が0.8重量%を超えると、水素化処理時後のピッチ中の硫黄分が十分に下がらないため、ニードルコークスのパッフィングを抑制することができない場合がある。また、硫黄分は、前記と同様の理由により0.7重量%以下であることがより好ましく、0.
65重量%以下であることが更に好ましい。
処理前ピッチの窒素分は、0.9〜1.5重量%であることが好ましい。処理前ピッチの窒素分が1.5重量%を超えると、水素化処理時後のピッチ中の窒素分が十分に下がらないため、ニードルコークスのパッフィングを抑制することができない場合がある。また、窒素分は、前記と同様の理由により1.3重量%以下であることがより好ましく、1.2重量%以下であることが更に好ましい。
水素化処理を高温・高圧下で行なうことにより、ピッチ中の硫黄分及び窒素分を低減することは可能ではあるが、安定的な水素化処理を行なうためには上記の硫黄分、窒素分の範囲内にあるピッチを原料として水素化処理を行なうことが好ましい。
コールタールピッチは、大部分が芳香族化合物で構成されているが、芳香族性を示す指標として芳香族指数がある。芳香族指数は大きいほど好ましく、例えば0.9以上であることが好ましい。コールタールピッチにおいては、芳香族指数が小さくなるとメソフェースの成長が不十分となり、水素化コールタールピッチから得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)の抑制が不十分となる傾向がある。
処理前ピッチの15℃における比重は、1.15〜1.4であることが好ましい。ここで、15℃における比重とは、4℃の水の密度に対する15℃での密度の比を意味する。
処理前ピッチの比重(15℃/4℃)が1.15未満の場合は、コークスの収率が下がる傾向があり、コークスの熱膨張係数が大きくなる傾向がある。一方、処理前ピッチの比重(15℃/4℃)が1.4を超えると、処理前ピッチの粘度が大きくなるため均一な水素化反応が起こりにくくなる傾向があり、水素化処理後のコールタールピッチのコークス化過程におけるメソフェースの成長速度が大き過ぎることにより、ニードルコークスの熱膨張係数が大きくなる傾向がある。また、比重(15℃/4℃)は、前記と同様の理由により1.15〜1.25であることがより好ましい。
処理前ピッチの360℃以下の留分は、5〜30重量%であることが好ましい。処理前ピッチの360℃以下の留分が5重量%未満の場合は、処理前ピッチの粘度が大きくなるため均一な水素化反応が起こりにくい傾向がある。一方、処理前ピッチの360℃以下の留分が30重量%を超えると、処理前ピッチ中の軽沸点成分への水素化反応が集中して起こるため、結果としてコークス中の硫黄及び窒素の低減が不十分となり、パッフィングの抑制が不十分となる傾向がある。このように処理前ピッチの360℃以下の留分は、水素化処理を行なう上でニードルコークスのパッフィング抑制に影響を与える傾向がある。また、360℃以下の留分は、前記と同様の理由により10〜30重量%であることがより好ましい。
なお、上記した処理前ピッチの諸特性は各々独立したものであり、必ずしも全ての特性を兼ね備えている必要は無い。
<石油系重質油>
本発明においては、処理前ピッチを得るに際し、キノリン不溶分を除去する前のコールタールもしくはコールタールピッチに石油系重質油を混合して用いてもよい。また、コールタールピッチから得られた処理前ピッチと石油系重質油とを混合して水素化処理を行ってもよい。
混合して用いる石油系重質油は限定されないが、例えば、流動接触分解油、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、オリノコタール、石炭液化油、エチレンボトム油及びこれらを水素化精製した重質油などが挙げられる。また、上記以外に、直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、脱硫減圧軽油等の比較的軽質な油を更に含有してもよい。これらの中でも特に流動接触分解油、及び常圧蒸留残油は芳香族成分が比較的多く含まれることから好ましい。
石油系重質油の硫黄分は1.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。また、石油系重質油の窒素分は0.7重量%以下であることが好ましく、0.4重量%以下であることがより好ましい。混合する石油系重質油の硫黄分や窒素分が前記上限値を超えると、ニードルコークスのパッフィングを十分に抑制することができない場合がある。
石油系重質油の混合割合は限定されず、コールタール又はコールタールピッチ中の窒素分、硫黄分、石油系重質油中の窒素分、硫黄分より計算して適宜最適化されるが、混合油中の硫黄分が1.0重量%以下、窒素分が0.9重量%以下となる割合に混合することが好ましい。混合油中の各成分の下限値は限定されないが、通常、硫黄分が0.3重量%以上、窒素分が0.1重量%以上となる割合に混合することが好ましい。具体的には、コールタール又はコールタールピッチを50〜80重量%、石油系重質油を50〜20重量%の割合に混合することが好ましい。一般に、石油系重質油はコールタールに較べて窒素分は低く、硫黄分は高い傾向にあるが、両者を混合した後の窒素分や硫黄分を上記の範囲となるように配合して用いることにより、本発明の効果を有効に発揮することができる。
上記の石油系重質油中に飽和炭化水素、特に脂肪族成分が多く含まれると、芳香族成分の重合及び重縮合以外に架橋反応が起こるため、三次元構造の結晶が成長してメソフェースが十分に成長せず、その結果、熱膨張係数が大きくなると考えられている。本発明における処理前ピッチは、コールタールを原料としていることから芳香族性は極めて高く、ニードルコークスの原料として好適であるが、混合原料油に使用する石油系重質油としては、コールタールより芳香族成分の割合は小さいものの、上述の流動接触分解油、及び常圧蒸留残油は芳香族成分が比較的多いことから好ましい。
<水素化処理>
本発明の製造方法では、処理前ピッチまたは処理前ピッチと石油系重質油を混合して得られた混合原料油(以下、「ピッチ系原料油」と表記する場合がある。)を、水素化処理装置に装入して特定の反応条件下にて水素化処理することを特徴とする。
具体的には、水素化を350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m当たり200〜700Nm/m、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行う。
処理前ピッチまたは処理前ピッチと石油系重質油を混合して得られた混合原料油を水素化処理するための装置とは、高圧の水素存在下において触媒を用いてピッチ系原料油中の硫黄濃度及び窒素濃度を低減させるものであり、このピッチ系原料油の脱硫黄・脱窒素工程から得られる生成物は、さらに生成物中の軽沸点成分を除去する後蒸留工程等の二次処理も含まれる。
本発明の製造方法に用いる水素化処理装置は限定されないが、反応性と生産性の観点から連続反応式装置であることが好ましい。触媒層は流動床または固定床のいずれか、またはこれらを組み合わせたもののいずれも本発明に含まれるが、長期運転のしやすいこと、建設費用等の経済性の観点から固定床式が好ましい。すなわち連続固定床式水素化処理装置が本発明には好適である。回分式反応装置は水素化反応率が小さい等の理由により好ましくない場合がある。
水素化処理に用いられる触媒としては、Ni−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒、或いはこれらを組合せた触媒などが挙げられ、これらは市販品を用いてもよい。これらの中でも、脱硫及び脱窒素の活性が高く、水素消費量が抑えられるという点でNi−Mo系触媒が好ましい。
水素化処理の温度は、350〜420℃で行われる。水素化処理の温度が350℃未満
の場合は脱硫率及び脱窒素率が低下し、ニードルコークスのパッフィングの抑制が不十分になる。一方、420℃を超えると触媒寿命が低下する等の問題が発生する。また、水素化処理の温度は、上記と同様の理由により、好ましくは350〜400℃である。
水素化処理における水素/ピッチ流量比は、ピッチ1m当たり200〜700Nm/mで行われる。水素/ピッチ流量比が200Nm/m未満になると、十分な水素化が行われないことにより、脱硫率、脱窒素率が低下し、ニードルコークスのパッフィングの抑制が不十分になる。更には、γ、γの減少率が低下し、メソフェースの成長が不十分となるため、ニードルコークスのCTEが高くなる。一方、水素/ピッチ流量比が700Nm/m未満を超えると、水素化が過度に進行し、軽質化が進み、コークスの歩留りが低下するため好ましくない。
水素化処理における水素分圧は10〜20MPaで行われる。水素分圧が10MPa未満であると、処理前ピッチの脱硫率及び脱窒素率が小さいため、ニードルコークス中の硫黄・窒素が高い値を示し、結果としてニードルコークスのパッフィング抑制が不十分となる。また、水素分圧が20MPaを超過する場合はピッチ系原料油の分解が進行しすぎるため、コークス化した際のコークスの収率が低下するだけでなく、コークスの熱膨張係数が大きくなる傾向があるため好ましくない。
水素化処理における水素分圧は、上記と同様の理由により、好ましくは11MPa以上、より好ましくは12MPa以上であり、好ましくは18MPa以下、より好ましくは16MPa以下である。
水素化処理における液空間速度(LHSV)は0.3〜1.6h−1で行われる。液空間速度(LHSV)が1.6h−1を超えると十分な水素化が行われないことにより、脱硫率、脱窒素率が低下し、ニードルコークスのパッフィングの抑制が不十分になる。更には、γ、γの減少率が低下し、メソフェースの成長が不十分となるため、ニードルコークスのCTEが高くなる。一方、液空間速度(LHSV)が0.3h−1未満になると水素化が過度に進行し、軽質化が進み、コークスの歩留りが低下するため好ましくない。また、水素化処理における液空間速度は、上記と同様の理由により、好ましくは0.3〜1.3h−1である。
反応温度、水素/ピッチ流量比、水素分圧、液空間速度(LHSV)を上記範囲内とすることにより、コールタールピッチの最適な水素化が進行し、十分にパッフィングが抑制されたニードルコークスが得られる程度の脱硫率、脱窒素率になり、さらに、γ、γが低減し、低い熱膨張係数のニードルコークスを得るに十分なメソフェースの成長を促すことができる。
処理前ピッチに対する水素化処理後のピッチの脱硫率及び脱窒素率は限定されないが、上記の水素化条件等を制御することにより、脱硫率が50%以上、脱窒素率が10%以上となることが好ましい。ここで「脱硫率」「脱窒素率」とは、以下の通り求められるものである。
脱硫率(%)=〔([処理前ピッチ中の硫黄分(重量%)]−[水素化処理後のピッチ中の硫黄分(重量%)])/[処理前ピッチ中の硫黄分(重量%)]〕×100
脱窒素率(%)=〔([処理前ピッチ中の窒素分(重量%)]−[水素化処理後のピッチ中の窒素分(重量%)])/[処理前ピッチ中の窒素分(重量%)]〕×100
<水素化コールタールピッチ>
上記の様に水素化処理して得られる水素化コールタールピッチの諸特性は限定されないが、以下の特性をもつものであることが好ましい。これらの値である水素化コールタールピッチを原料として得られるピッチ系ニードルコークスは、パッフィングが低い値を示す
だけでなく、熱膨張係数も十分に小さい値を示すため好ましい。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、キノリン不溶分が好ましくは0.02重量%以下であり、より好ましくは0.01重量%以下であり、更に好ましくは0.005重量%以下であり、特に好ましくは0.003重量%以下である。キノリン不溶分の含有量を上記の範囲とすることによって、これを原料として得られるピッチ系ニードルコークスが、パッフィングが低い値を示すだけでなく、熱膨張係数も十分に小さい値を示すことができる。
なお、本発明の水素化コールタールピッチは、キノリン不溶分の下限値は限定されず、より低い値であることが好ましいが、コールタールピッチを原料とする限り0(ゼロ)にすることは困難であるため、通常は0.0001重量%以上である。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ)が2.0以下であることが好ましい。水素化コールタールピッチのγが2.0を超えると、メソフェースの成長が妨げられ、得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)が高くなる傾向がある。また、γは、前記と同様の理由により0.4〜1.4であることがより好ましい。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ)が2.0以下であることが好ましい。水素化コールタールピッチのγが2.0を超えると、メソフェースの成長が妨げられ、得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)が高くなる傾向がある。また、γは、前記と同様の理由により0.2〜1.4であることがより好ましい。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.80以上であることが好ましい。水素化コールタールピッチのH/Cが0.80未満の場合は、ナフテン環の生成が少なく、メソフェース成長時の液相粘度が高くなり、得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)が高くなる傾向がある。また、H/Cは、前記と同様の理由により0.84〜1.2であることがより好ましい。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、硫黄分が好ましくは0.20重量%以下であり、より好ましくは0.18重量%以下であり、更に好ましくは0.16重量%以下であり、特に好ましくは0.14重量%以下である。硫黄分の含有量を上記の範囲とすることによって、これを原料として得られるピッチ系ニードルコークスが、パッフィングが低い値を示すだけでなく、熱膨張係数も十分に小さい値を示すことができる。
なお、本発明の水素化コールタールピッチは、硫黄分の下限値は限定されず、より低い値であることが好ましいが、コールタールピッチを原料とする限り0(ゼロ)にすることは困難であるため、通常は0.05重量%以上である。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、窒素分が好ましくは0.70重量%以下であり、より好ましくは0.65重量%以下であり、更に好ましくは0.60重量%以下であり、特に好ましくは0.50重量%以下である。窒素分の含有量を上記の範囲とすることによって、これを原料として得られるピッチ系ニードルコークスが、パッフィングが低い値を示すだけでなく、熱膨張係数も十分に小さい値を示すことができる。
なお、本発明の水素化コールタールピッチは、窒素分の下限値は限定されず、より低い値であることが好ましいが、コールタールピッチを原料とする限り0(ゼロ)にすることは困難であるため、通常は0.20重量%以上である。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチの15℃における比重は、1.
0〜1.2であることが好ましい。水素化コールタールピッチの比重(15℃/4℃)が1.0未満の場合は、コークス歩留りが低くなる傾向がある。一方、処理前ピッチの比重(15℃/4℃)が1.2を超えると、重質成分の含有量が多く、メソフェースの成長が阻害される傾向がある。また、比重(15℃/4℃)は、前記と同様の理由により1.08〜1.16であることがより好ましい。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチの360℃以下の留分は、40重量%以下であることが好ましい。水素化コールタールピッチの360℃以下の留分が40重量%を超えると、コークス歩留りが低くなる傾向がある。また、360℃以下の留分は、前記と同様の理由により、上限は35重量%以下であることがより好ましい。一方、水素化コールタールピッチの360℃以下の留分の下限は、20重量%以上であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。360℃以下の留分が上記下限値未満であると、メソフェース成長時の液相粘度が上昇し、メソフェースの成長が阻害される傾向がある。
従来は、コールタールピッチを原料とする限り、上記のような諸特性の範囲内であるコールタールを得ることは極めて困難であったが、本発明においては、前記した条件下で水素化処理を行うことによって、上記のキノリン不溶分を満たす水素化コールタールピッチを得ることができる。
なお、上記した水素化コールタールピッチの諸特性は各々独立したものであり、必ずしも全ての特性を兼ね備えている必要は無い。
本発明においては、水素化処理して得られた水素化ピッチ中の軽沸点成分を、更に常圧蒸留または減圧蒸留装置により取り除いてもよい。例えば、350℃にて常圧蒸留することにより10〜30%程度の留分を取り除いた水素化コールタールピッチを得ることができる。このようにして得られる水素化コールタールピッチをコークス化することにより、更にパッフィングが十分に抑制され且つ熱膨張係数の小さいニードルコークスを得ることが出来る傾向がある。
<コークス化>
上記の本発明の製造方法で得られた水素化コールタールピッチは、コークス化することによって、熱膨張係数が小さく且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスを得ることが出来る。以下に、ニードルコークスの製造について説明する。
上記の製造方法で得られた水素化コールタールピッチをコークス化する方法は限定されないが、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法、フレキシコーキング法、ユリカプロセスなどが挙げられ、これらの中でも、得られるコークスの生産性や品質安定性の点からディレードコーキング法が好ましい。
ディレードコーキング法においては、水素化コールタールピッチが加熱管中を加熱されながら急速に通過し、コークドラムに導入されてコーキングが起こる。コーキング条件は特に制限されないが、温度は好ましくは400〜600℃、より好ましくは450〜550℃である。コーキング時間は好ましくは18〜72時間、より好ましくは20〜40時間である。
また、このようにして得られるコークスをロータリーキルン、シャフト炉等でか焼することが好ましい。か焼の際の温度は1000〜1500℃が好ましく、時間は1〜6時間が好ましい。
なお、コークス化に用いる原料としては、本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチとともに他の原料を併用してもよい。このような原料は限定されないが、例えば石油系重質油が挙げられる。水素化コールタールピッチと併用して用いる石油系重質油
は限定されないが、例えば、前記した水素化処理時に処理前ピッチとともに用いることの出来る石油系重質油として例示したものが挙げられ、中でも特に流動接触分解油、常圧蒸留残油が好ましい。
水素化コールタールピッチと他の原料との混合割合は限定されないが、水素化コールタールピッチを通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上となる割合で用いることが好ましい。
<ピッチ系ニードルコークス>
本発明の製造方法で得られた水素化コールタールピッチを用い、上記のようにして得られたピッチ系ニードルコークスは、硫黄分及び窒素分の含有割合が低いため、熱膨張係数が小さく且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスとすることが出来る。具体的には、ピッチ系ニードルコークスの硫黄分は0.3重量%以下、更には0.15重量%以下、特には0.10重量%以下とすることが出来、窒素分は0.6重量%以下、更には0.5重量%以下、特には0.4重量%以下とすることが出来る。
また、得られるピッチ系ニードルコークスは、熱膨張係数(CTE)が3.2×10-7
/℃以下、更には3.0×10-7/℃以下、特には2.8×10-7/℃以下であり、パッフィングが3.0%以下、更には2.5%以下、特には2.2%以下とすることができる。ここでパッフィングの値は、後述する実施例記載の方法で測定した、2600℃迄のパッフィングを意味する。
このため、本発明で得られるピッチ系ニードルコークスは、電炉製鋼用黒鉛電極の骨材として好適に使用することが出来る。
本発明で得られるピッチ系ニードルコークスを用いて黒鉛電極製品を製造する方法としては、本発明のニードルコークスにバインダーピッチを適当量添加した原料を加熱捏合した後、成型して得られた生電極を焼成し、黒鉛化した後、加工する方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<硫黄分の測定>
処理前ピッチ、水素化コールタールピッチ及びコークス中の硫黄分は、JIS M8813に準拠して測定した。具体的には、試料0.1gを1000℃以上に熱した燃焼炉に投入し、発生したガスを硫酸を1%含む35%過酸化水素水に吸収させ、その電気伝導度の変化により測定した。
<H/C及び窒素分の測定>
処理前ピッチ及び水素化コールタールピッチ中の炭素、水素、窒素の含有率の測定は、JIS M8819に準拠して測定した。具体的には、装置名:Vario Max全自動元素分析装置(エレメンタール社)にサンプルを供することにより測定を行った。
H/Cは、上記測定法にて得た炭素原子と水素原子の含有量をモル数にし、次式により算出した。
H/C=水素原子数/炭素原子数
コークス中の窒素含有率(窒素分)の測定は、JIS M8819に準拠して測定した。具体的には、装置名:NC−22A(住化分析センター社製)にサンプルを供することにより測定を行った。
<比重の測定>
15℃の比重は、JIS K2425に従い測定した。
<360℃以下の留分の測定>
360℃以下の留分の測定は、JIS K2425に従い測定した。
<キノリン不溶分の測定>
キノリン不溶分(Qi)の測定は、JIS K2425に従い測定した。
<γ及びγの測定>
試料2.0gをフラスコに精秤(W1)し、このフラスコに溶媒を100ml加え、冷却器を取り付けて、オイルバスに入れた。溶媒としてはトルエン、クロロホルム、モルホリンの何れかを用い、オイルバスでの加熱温度は、それぞれ130℃、80℃、110℃とした。フラスコ内の溶液を攪拌しながら30分間加熱して試料を溶解させた。
予めろ過器を精秤(W2)しておき、これに上記の加熱した溶液を注ぎ、吸引ろ過を行った。ろ過残渣に60℃の溶媒100mlを注ぎ、溶解、洗浄する操作を5回繰り返し行った。
ろ過残渣が入っているろ過器を110℃の乾燥機に入れて60分間乾燥させた後、デシケーター内で30分放冷し、その後、ろ過器の重量を精秤した(W3)。
溶剤不溶分を以下の式により計算した。
溶剤不溶分(重量%)=(溶解後残渣重量/試料重量)×100
=((W3−W2)/W1)×100
γ及びγは以下の式により算出した。
γ=トルエン不溶分−クロロホルム不溶分
γ=トルエン不溶分−モルホリン不溶分
<熱膨張係数(CTE)の測定>
か焼コークスを粉砕した後、各サンプルとも一定の粒度に調整した。これに石炭系のバインダーピッチをか焼コークスに対して30重量%加え、各サンプルとも同一の温度で加熱捏合した後、押出し成形機を用いて円柱状の成形体を作製した。
この成形体を焼成炉を用いて1000℃で3時間焼成した後、タンマン炉にて2800℃で黒鉛化して得られた試験片について、その長さ方向の線熱膨張係数(以下、CTE)を測定した。CTEの値が低い方が良好である。
なお、測定に際しては、押し棒式熱膨張計に前述の試験片をセットし、赤外線イメージ炉で30℃から130℃まで昇温し、この間の伸びを測定した(ΔL)。試験片と同サイズの石英を用いて同様に測定し(ΔL’)、次式により熱膨張係数を計算した。
熱膨張係数(×10−7/℃)=(ΔL−ΔL’)/(L×ΔT)+5.1×10−7(上記式中、Lは試験前のテストピースの長さ、ΔTは伸びを測定した温度差(100℃)、「5.1×10−7」は30℃から130℃での石英の熱膨張係数である)
<パッフィングの測定>
熱膨張係数(CTE)の測定と同様に加熱捏合した後、モールド成形し、成形時の加圧方向へボーリング加工して円柱状の成形体を作製した。この成形体を1000℃で焼成した後、試験片をタンマン炉を用いて昇温速度20℃/分にて室温から2600℃の温度間の円柱体の長さ方向の寸法の伸びを押し棒式熱膨張計にて測定し、下記式により計算してパッフィングとして示した。なお、この成形体の円柱の長さ方向の寸法の伸びは、上記押出し成形体の押出し方向に対し垂直方向に該当する。パッフィングの値が3.0%以下を合格とし、より低い値である方がよい。
パッフィング(%)=(ΔL/L)×100
(上記式中、Lは試験前のテストピースの長さ、ΔLは2600℃までの昇温間の伸びである)
[実施例1]
コークス製造設備由来のコールタールを常圧蒸留して得られた重質成分からキノリン不溶分を除去することにより精製コールタールピッチを得て、これを処理前ピッチとした。
処理前ピッチは、キノリン不溶分(Qi)が0.003%、γが2.1、γが4.
6、H/Cが0.62、硫黄分0.60重量%、窒素分1.19重量%、15℃の密度が1.230g/cm、360℃以下の留分が23.7重量%であった。
次に、市販の水素化触媒の存在下、純度99%以上の水素を用い、固定床連続式反応装置にて上記の処理前ピッチを水素分圧13MPa、温度380℃、水素/ピッチ流量比1m当たり500Nm/m、液空間速度(LHSV)が1.0h−1になるようにして水素化処理し、水素化コールタールピッチを得た。
得られた水素化コールタールピッチは、キノリン不溶分が0.002%、γが0.8、γが0.8、H/Cが0.91、窒素分0.48重量%、硫黄分0.14重量%、15℃における密度が1.131g/cm、360℃以下の留分が33.2重量%であった。これらの値を表−1に示す。また、精製ピッチの水素化条件を表−1に示す。
得られた水素化コールタールピッチをステンレス製圧力容器に入れ、加圧下、500℃にて24時間加熱処理を行うことによりコークス化した。生成したコークスを1300℃で2時間焼成してか焼コークスを得た。得られたか焼コークスの硫黄分は0.09重量%、窒素分は0.48重量%であった。これらの値を表−1に示す。
得られたか焼コークスについて、熱膨張係数(CTE)及びパッフィングを測定した結果を表−1に示す。
[実施例2〜4、比較例2]
処理前ピッチの水素化処理の条件を表−1に記載の通りとする以外は実施例1と同様にして水素化コールタールピッチを得た。これを実施例1と同様にしてコークス化し、か焼コークスとした。これを実施例1と同様の評価を行った結果を表−1に示す。
[比較例1]
処理前ピッチを水素化処理せずにそのまま使用した以外は実施例1と同様にしてコークス化し、か焼コークスとした。これを実施例1と同様の評価を行った結果を表−1に示す。
表−1の通り、本発明の製造方法で得られた水素化コールタールピッチを用いて製造されたピッチ系ニードルコークスは、CTE及びパッフィングの何れも顕著に良好であることが明らかである。
Figure 2015193805

Claims (7)

  1. コールタールピッチを水素化して水素化コールタールピッチを製造する方法であって、該水素化を、350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m当たり200〜700Nm/m、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行うことを特徴とする水素化コールタールピッチの製造方法。
  2. 該水素化触媒として、Ni−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒のうち少なくとも何れかを用いる請求項1に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
  3. 得られる水素化コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ)が0.4〜2.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ)が0.2〜2.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.80〜1.2、硫黄分が0.05〜0.20重量%、窒素分が0.20〜0.70重量%、15℃の比重が1.0〜1.2である請求項1又は2に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
  4. 原料コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ)が1.6〜6.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ)が2.0〜8.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.50〜0.70、硫黄分が0.4〜0.8重量%、窒素分が0.9〜1.5重量%、15℃の比重が1.15〜1.4である請求項1〜3の何れか1項に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチ。
  6. 請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチをコークス化して得られるピッチ系ニードルコークス。
  7. 熱膨張係数(CTE)が3.2×10−7/℃以下、2600℃迄のパッフィングが3.0%以下であるピッチ系ニードルコークス。
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