JP2015193805A - 水素化コールタールピッチの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 コールタールピッチを水素化して水素化コールタールピッチを製造する方法であって、該水素化を、350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m3当たり200〜700Nm3/m3、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行うことを特徴とする水素化コールタールピッチの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、ニードルコークスの原料として好適に用いることが出来る水素化コールタールピッチを製造する方法に関する。
これらのうち、コールタールピッチから製造されるニードルコークスは特に付加価値の高い製品として重要な位置を占めており、主に電気製鋼用黒鉛電極の骨材に使用される。黒鉛電極の製造工程においては、まずニードルコークス粒とバインダーピッチとを所定の割合で配合し、加熱捏合した後、押し出し成型して生電極を製造する。この生電極を焼成し、黒鉛化した後、加工することにより黒鉛電極製品が得られる。
このパッフィング現象は、主として黒鉛化過程の1500〜2000℃の領域において、ピッチ系ニードルコークスに含まれるヘテロ化合物から窒素が、同様に2500〜2800℃の領域において硫黄が急激に揮散するための異常膨張と考えられている。
特許文献1、2では、1500℃以上でピッチコークスを加熱処理して脱窒素すること
でパッフィングを低減する方法が提案されている。また、特許文献3では、生コークスを予め酸化処理等の前処理をした後に、通常のか焼温度で熱処理する手法が示されている。これらの方法は、前者は高温加熱に伴うエネルギー消費が大きくなり、後者は従来方法に比べて工程が複雑化するという課題がある。
特許文献4には、ディレードコークス法により得た生コークスを、先ず通常のか焼温度より低い温度範囲でか焼し、一旦冷却した後、再び通常の温度範囲でか焼を行うニードルコークスの製造方法が開示されている。この方法は、石油系原料油を使用したニードルコークスの熱膨脹係数の低減には有効であるものの、パッフィングの発生機構の異なるピッチ系(石炭系)ニードルコークスに適用したとしても、パッフィングの低減効果は僅かである。
特許文献5、6では、原油を減圧蒸留したときに残渣油として得られる重質油と、所定の原料油を流動接触分解して得られる硫黄及び窒素含有量の小さい原料油とを混合してコークス化する石油系ニードルコークスの製造方法を示している。しかし、この方法は歩留りが低く、かつ低CTEニードルコークスを製造することを目的としているだけで、パッフィングの低減を目的としたものではない。
特許文献8では、石炭系重質油と石油系重質油とを混合して窒素分、硫黄分を共に特定値以下となるように調整配合した原料より生コークスを製造し、この生コークスを2段か焼することによりパッフィングの低いニードルコークスを得られるとしている。しかしこの方法での効果は限定的であり、かつ2段か焼によるコークス歩留の低下、コークスの多孔質化により黒鉛電極の嵩密度が低下するという懸念がある。
一方、コールタールピッチの水素化に関しては、工業的な実施例が無いばかりか基礎的な研究例も少なく、触媒活性低下による脱硫率及び脱窒素率の挙動についても明らかでない。従って、ピッチ系ニードルコークスの原料として最適なコールタールピッチの水素化処理条件を含めた処理プロセスは未だ確立されていない。
[1] コールタールピッチを水素化して水素化コールタールピッチを製造する方法であって、該水素化を、350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m3当たり200〜700Nm3/m3、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行うことを特徴とする水素化コールタールピッチの製造方法。
[2] 該水素化触媒として、Ni−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒のうち少なくとも何れかを用いる[1]に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
[3]
得られる水素化コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ1)が0.4〜2.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ2)が0.2〜2.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.80〜1.2、硫黄分が0.05〜0.20重量%、窒素分が0.20〜0.70重量%、15℃の比重が1.0〜1.2である[1]又は[2]に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
[4] 原料コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ1)が1.6〜6.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ2)が2.0〜8.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.50〜0.70、硫黄分が0.4〜0.8重量%、窒素分が0.9〜1.5重量%、15℃の比重が1.15〜1.4である[1]〜[3]の何れか1項に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
[5] [1]〜[4]の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチ。
[6] [1]〜[4]の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチをコークス化して得られるピッチ系ニードルコークス。
[7] 熱膨張係数(CTE)が3.2×10−7/℃以下、2600℃迄のパッフィングが3.0%以下であるピッチ系ニードルコークス。
本発明の水素化コールタールピッチを原料として製造されたピッチ系ニードルコークスは、電気製鋼用黒鉛電極の骨材などの用途に好適である。
なお、本発明において「ピッチ系」と「石炭系」は同義の語として扱うものとする。
本発明でいう「窒素分」とは、コールタールピッチについてはJIS M8819、石油系油についてはJIS K2609、コークスについてはJIS M8819に従い測定される値を、それぞれ意味する。
また、コールタールピッチの比重、キノリン不溶分、360℃以下の留分は何れもJIS K2425に従い測定される値を意味する。
本発明において、水素化処理する前の原料であるコールタールピッチ(以下、「処理前ピッチ」と表記する場合がある。)は限定されないが、後述する特性を有するものであることが好ましい。
キノリン不溶分を除去する手段としては公知の方法を適用することができるが、例えばタール系重質油を、芳香族系油や脂肪族系油で処理する方法が挙げられ、これらの混合溶剤で処理することも好ましい。脂肪族系油としては、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式化合物、アセトン、エーテル等のカルボニル基をもつ化合物、軽油等を使用することが出来る。芳香族系油としては、タール系洗浄油、アントラセン油等を使用することが出来る。ピッチと溶剤を適当な条件にて混合、加熱した後に必要により静置し、その後、この混合物を蒸留して低沸点成分を留去することにより、キノリン不溶分を殆ど含まない処理前ピッチとすることが出来る。
である。キノリン不溶分が0.0001重量%未満のものは、これを入手することが困難な上、このような処理前ピッチでは本発明における水素化処理を行う効果が発現しづらくなる傾向にある。また、キノリン不溶分は、前記と同様の理由により0.001〜0.1重量%であることがより好ましい。
処理前ピッチのγ1が1.6未満の場合は、水素化処理後のγ1が小さくなり歩留りが低くなる傾向がある。一方、処理前ピッチのγ1が6.0を超えると、水素化反応が起こりにくくなる傾向があり、反応条件を高圧、高温にする必要が生じ、さらに供給する水素量が多くなる傾向がある。またγ1は、前記と同様の理由により、下限はより好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.0以上であり、上限はより好ましくは4.0以下である。
なお、γ1は「トルエン不溶分−クロロホルム不溶分」を意味し、後述する実施例に記載した測定方法を採用するものとする。
処理前ピッチのγ2が2.0未満の場合は、水素化処理後のγ2が小さくなり歩留りが低くなる傾向がある。一方、処理前ピッチのγ2が8.0を超えると、水素化反応が起こりにくくなる傾向があり、反応条件を高圧、高温にする必要が生じ、さらに供給する水素量が多くなる傾向がある。また、γ2は、前記と同様の理由により2.0〜6.0であることがより好ましい。
なお、γ2は「トルエン不溶分−モルホリン不溶分」を意味し、後述する実施例に記載した測定方法を採用するものとする。
なお、上記の処理前ピッチにおけるγ1、γ2と、後述する水素化コールタールピッチにおけるγ1、γ2とは、好適な範囲がそれぞれ異なるが、前者は水素化処理によって水素化コールタールピッチを得るための原料として好適な範囲を意味するものであり、後者は、好適なニードルコークスを得るための原料として好適な範囲を意味するものである。
処理前ピッチのH/Cが0.50未満の場合は、水素化反応において消費される水素量が多くなる傾向がある。一方、処理前ピッチのH/Cが0.70を超えると、脂肪族の含有量が多くなり、水素化コールタールピッチから得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)が大きくなる傾向がある。また、H/Cは、前記と同様の理由により0.55〜0.68であることがより好ましい。
なお、「H/C」はJIS M8819に準拠して測定した値を意味し、後述する実施例に記載した測定方法を採用するものとする。
65重量%以下であることが更に好ましい。
処理前ピッチの窒素分は、0.9〜1.5重量%であることが好ましい。処理前ピッチの窒素分が1.5重量%を超えると、水素化処理時後のピッチ中の窒素分が十分に下がらないため、ニードルコークスのパッフィングを抑制することができない場合がある。また、窒素分は、前記と同様の理由により1.3重量%以下であることがより好ましく、1.2重量%以下であることが更に好ましい。
コールタールピッチは、大部分が芳香族化合物で構成されているが、芳香族性を示す指標として芳香族指数がある。芳香族指数は大きいほど好ましく、例えば0.9以上であることが好ましい。コールタールピッチにおいては、芳香族指数が小さくなるとメソフェースの成長が不十分となり、水素化コールタールピッチから得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)の抑制が不十分となる傾向がある。
処理前ピッチの比重(15℃/4℃)が1.15未満の場合は、コークスの収率が下がる傾向があり、コークスの熱膨張係数が大きくなる傾向がある。一方、処理前ピッチの比重(15℃/4℃)が1.4を超えると、処理前ピッチの粘度が大きくなるため均一な水素化反応が起こりにくくなる傾向があり、水素化処理後のコールタールピッチのコークス化過程におけるメソフェースの成長速度が大き過ぎることにより、ニードルコークスの熱膨張係数が大きくなる傾向がある。また、比重(15℃/4℃)は、前記と同様の理由により1.15〜1.25であることがより好ましい。
なお、上記した処理前ピッチの諸特性は各々独立したものであり、必ずしも全ての特性を兼ね備えている必要は無い。
本発明においては、処理前ピッチを得るに際し、キノリン不溶分を除去する前のコールタールもしくはコールタールピッチに石油系重質油を混合して用いてもよい。また、コールタールピッチから得られた処理前ピッチと石油系重質油とを混合して水素化処理を行ってもよい。
混合して用いる石油系重質油は限定されないが、例えば、流動接触分解油、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、オリノコタール、石炭液化油、エチレンボトム油及びこれらを水素化精製した重質油などが挙げられる。また、上記以外に、直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、脱硫減圧軽油等の比較的軽質な油を更に含有してもよい。これらの中でも特に流動接触分解油、及び常圧蒸留残油は芳香族成分が比較的多く含まれることから好ましい。
本発明の製造方法では、処理前ピッチまたは処理前ピッチと石油系重質油を混合して得られた混合原料油(以下、「ピッチ系原料油」と表記する場合がある。)を、水素化処理装置に装入して特定の反応条件下にて水素化処理することを特徴とする。
具体的には、水素化を350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m3当たり200〜700Nm3/m3、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行う。
本発明の製造方法に用いる水素化処理装置は限定されないが、反応性と生産性の観点から連続反応式装置であることが好ましい。触媒層は流動床または固定床のいずれか、またはこれらを組み合わせたもののいずれも本発明に含まれるが、長期運転のしやすいこと、建設費用等の経済性の観点から固定床式が好ましい。すなわち連続固定床式水素化処理装置が本発明には好適である。回分式反応装置は水素化反応率が小さい等の理由により好ましくない場合がある。
の場合は脱硫率及び脱窒素率が低下し、ニードルコークスのパッフィングの抑制が不十分になる。一方、420℃を超えると触媒寿命が低下する等の問題が発生する。また、水素化処理の温度は、上記と同様の理由により、好ましくは350〜400℃である。
水素化処理における水素分圧は、上記と同様の理由により、好ましくは11MPa以上、より好ましくは12MPa以上であり、好ましくは18MPa以下、より好ましくは16MPa以下である。
脱硫率(%)=〔([処理前ピッチ中の硫黄分(重量%)]−[水素化処理後のピッチ中の硫黄分(重量%)])/[処理前ピッチ中の硫黄分(重量%)]〕×100
脱窒素率(%)=〔([処理前ピッチ中の窒素分(重量%)]−[水素化処理後のピッチ中の窒素分(重量%)])/[処理前ピッチ中の窒素分(重量%)]〕×100
上記の様に水素化処理して得られる水素化コールタールピッチの諸特性は限定されないが、以下の特性をもつものであることが好ましい。これらの値である水素化コールタールピッチを原料として得られるピッチ系ニードルコークスは、パッフィングが低い値を示す
だけでなく、熱膨張係数も十分に小さい値を示すため好ましい。
なお、本発明の水素化コールタールピッチは、キノリン不溶分の下限値は限定されず、より低い値であることが好ましいが、コールタールピッチを原料とする限り0(ゼロ)にすることは困難であるため、通常は0.0001重量%以上である。
本発明の製造方法で得られる水素化コールタールピッチは、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ2)が2.0以下であることが好ましい。水素化コールタールピッチのγ2が2.0を超えると、メソフェースの成長が妨げられ、得られるニードルコークスの熱膨張係数(CTE)が高くなる傾向がある。また、γ2は、前記と同様の理由により0.2〜1.4であることがより好ましい。
なお、本発明の水素化コールタールピッチは、硫黄分の下限値は限定されず、より低い値であることが好ましいが、コールタールピッチを原料とする限り0(ゼロ)にすることは困難であるため、通常は0.05重量%以上である。
なお、本発明の水素化コールタールピッチは、窒素分の下限値は限定されず、より低い値であることが好ましいが、コールタールピッチを原料とする限り0(ゼロ)にすることは困難であるため、通常は0.20重量%以上である。
0〜1.2であることが好ましい。水素化コールタールピッチの比重(15℃/4℃)が1.0未満の場合は、コークス歩留りが低くなる傾向がある。一方、処理前ピッチの比重(15℃/4℃)が1.2を超えると、重質成分の含有量が多く、メソフェースの成長が阻害される傾向がある。また、比重(15℃/4℃)は、前記と同様の理由により1.08〜1.16であることがより好ましい。
なお、上記した水素化コールタールピッチの諸特性は各々独立したものであり、必ずしも全ての特性を兼ね備えている必要は無い。
上記の本発明の製造方法で得られた水素化コールタールピッチは、コークス化することによって、熱膨張係数が小さく且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスを得ることが出来る。以下に、ニードルコークスの製造について説明する。
上記の製造方法で得られた水素化コールタールピッチをコークス化する方法は限定されないが、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法、フレキシコーキング法、ユリカプロセスなどが挙げられ、これらの中でも、得られるコークスの生産性や品質安定性の点からディレードコーキング法が好ましい。
また、このようにして得られるコークスをロータリーキルン、シャフト炉等でか焼することが好ましい。か焼の際の温度は1000〜1500℃が好ましく、時間は1〜6時間が好ましい。
は限定されないが、例えば、前記した水素化処理時に処理前ピッチとともに用いることの出来る石油系重質油として例示したものが挙げられ、中でも特に流動接触分解油、常圧蒸留残油が好ましい。
水素化コールタールピッチと他の原料との混合割合は限定されないが、水素化コールタールピッチを通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上となる割合で用いることが好ましい。
本発明の製造方法で得られた水素化コールタールピッチを用い、上記のようにして得られたピッチ系ニードルコークスは、硫黄分及び窒素分の含有割合が低いため、熱膨張係数が小さく且つパッフィングが十分に抑制されたピッチ系ニードルコークスとすることが出来る。具体的には、ピッチ系ニードルコークスの硫黄分は0.3重量%以下、更には0.15重量%以下、特には0.10重量%以下とすることが出来、窒素分は0.6重量%以下、更には0.5重量%以下、特には0.4重量%以下とすることが出来る。
また、得られるピッチ系ニードルコークスは、熱膨張係数(CTE)が3.2×10-7
/℃以下、更には3.0×10-7/℃以下、特には2.8×10-7/℃以下であり、パッフィングが3.0%以下、更には2.5%以下、特には2.2%以下とすることができる。ここでパッフィングの値は、後述する実施例記載の方法で測定した、2600℃迄のパッフィングを意味する。
このため、本発明で得られるピッチ系ニードルコークスは、電炉製鋼用黒鉛電極の骨材として好適に使用することが出来る。
<硫黄分の測定>
処理前ピッチ、水素化コールタールピッチ及びコークス中の硫黄分は、JIS M8813に準拠して測定した。具体的には、試料0.1gを1000℃以上に熱した燃焼炉に投入し、発生したガスを硫酸を1%含む35%過酸化水素水に吸収させ、その電気伝導度の変化により測定した。
処理前ピッチ及び水素化コールタールピッチ中の炭素、水素、窒素の含有率の測定は、JIS M8819に準拠して測定した。具体的には、装置名:Vario Max全自動元素分析装置(エレメンタール社)にサンプルを供することにより測定を行った。
H/Cは、上記測定法にて得た炭素原子と水素原子の含有量をモル数にし、次式により算出した。
H/C=水素原子数/炭素原子数
コークス中の窒素含有率(窒素分)の測定は、JIS M8819に準拠して測定した。具体的には、装置名:NC−22A(住化分析センター社製)にサンプルを供することにより測定を行った。
15℃の比重は、JIS K2425に従い測定した。
<360℃以下の留分の測定>
360℃以下の留分の測定は、JIS K2425に従い測定した。
<キノリン不溶分の測定>
キノリン不溶分(Qi)の測定は、JIS K2425に従い測定した。
試料2.0gをフラスコに精秤(W1)し、このフラスコに溶媒を100ml加え、冷却器を取り付けて、オイルバスに入れた。溶媒としてはトルエン、クロロホルム、モルホリンの何れかを用い、オイルバスでの加熱温度は、それぞれ130℃、80℃、110℃とした。フラスコ内の溶液を攪拌しながら30分間加熱して試料を溶解させた。
予めろ過器を精秤(W2)しておき、これに上記の加熱した溶液を注ぎ、吸引ろ過を行った。ろ過残渣に60℃の溶媒100mlを注ぎ、溶解、洗浄する操作を5回繰り返し行った。
ろ過残渣が入っているろ過器を110℃の乾燥機に入れて60分間乾燥させた後、デシケーター内で30分放冷し、その後、ろ過器の重量を精秤した(W3)。
溶剤不溶分を以下の式により計算した。
溶剤不溶分(重量%)=(溶解後残渣重量/試料重量)×100
=((W3−W2)/W1)×100
γ1及びγ2は以下の式により算出した。
γ1=トルエン不溶分−クロロホルム不溶分
γ2=トルエン不溶分−モルホリン不溶分
か焼コークスを粉砕した後、各サンプルとも一定の粒度に調整した。これに石炭系のバインダーピッチをか焼コークスに対して30重量%加え、各サンプルとも同一の温度で加熱捏合した後、押出し成形機を用いて円柱状の成形体を作製した。
この成形体を焼成炉を用いて1000℃で3時間焼成した後、タンマン炉にて2800℃で黒鉛化して得られた試験片について、その長さ方向の線熱膨張係数(以下、CTE)を測定した。CTEの値が低い方が良好である。
なお、測定に際しては、押し棒式熱膨張計に前述の試験片をセットし、赤外線イメージ炉で30℃から130℃まで昇温し、この間の伸びを測定した(ΔL)。試験片と同サイズの石英を用いて同様に測定し(ΔL’)、次式により熱膨張係数を計算した。
熱膨張係数(×10−7/℃)=(ΔL−ΔL’)/(L×ΔT)+5.1×10−7(上記式中、Lは試験前のテストピースの長さ、ΔTは伸びを測定した温度差(100℃)、「5.1×10−7」は30℃から130℃での石英の熱膨張係数である)
熱膨張係数(CTE)の測定と同様に加熱捏合した後、モールド成形し、成形時の加圧方向へボーリング加工して円柱状の成形体を作製した。この成形体を1000℃で焼成した後、試験片をタンマン炉を用いて昇温速度20℃/分にて室温から2600℃の温度間の円柱体の長さ方向の寸法の伸びを押し棒式熱膨張計にて測定し、下記式により計算してパッフィングとして示した。なお、この成形体の円柱の長さ方向の寸法の伸びは、上記押出し成形体の押出し方向に対し垂直方向に該当する。パッフィングの値が3.0%以下を合格とし、より低い値である方がよい。
パッフィング(%)=(ΔL/L)×100
(上記式中、Lは試験前のテストピースの長さ、ΔLは2600℃までの昇温間の伸びである)
コークス製造設備由来のコールタールを常圧蒸留して得られた重質成分からキノリン不溶分を除去することにより精製コールタールピッチを得て、これを処理前ピッチとした。
処理前ピッチは、キノリン不溶分(Qi)が0.003%、γ1が2.1、γ2が4.
6、H/Cが0.62、硫黄分0.60重量%、窒素分1.19重量%、15℃の密度が1.230g/cm3、360℃以下の留分が23.7重量%であった。
得られた水素化コールタールピッチは、キノリン不溶分が0.002%、γ1が0.8、γ2が0.8、H/Cが0.91、窒素分0.48重量%、硫黄分0.14重量%、15℃における密度が1.131g/cm3、360℃以下の留分が33.2重量%であった。これらの値を表−1に示す。また、精製ピッチの水素化条件を表−1に示す。
得られたか焼コークスについて、熱膨張係数(CTE)及びパッフィングを測定した結果を表−1に示す。
処理前ピッチの水素化処理の条件を表−1に記載の通りとする以外は実施例1と同様にして水素化コールタールピッチを得た。これを実施例1と同様にしてコークス化し、か焼コークスとした。これを実施例1と同様の評価を行った結果を表−1に示す。
[比較例1]
処理前ピッチを水素化処理せずにそのまま使用した以外は実施例1と同様にしてコークス化し、か焼コークスとした。これを実施例1と同様の評価を行った結果を表−1に示す。
Claims (7)
- コールタールピッチを水素化して水素化コールタールピッチを製造する方法であって、該水素化を、350〜420℃、水素/ピッチ流量比がピッチ1m3当たり200〜700Nm3/m3、水素分圧が10〜20MPa、液空間速度が0.3〜1.6h−1の条件下で行うことを特徴とする水素化コールタールピッチの製造方法。
- 該水素化触媒として、Ni−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒のうち少なくとも何れかを用いる請求項1に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
- 得られる水素化コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ1)が0.4〜2.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ2)が0.2〜2.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.80〜1.2、硫黄分が0.05〜0.20重量%、窒素分が0.20〜0.70重量%、15℃の比重が1.0〜1.2である請求項1又は2に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
- 原料コールタールピッチが、トルエン不溶分の含有割合とクロロホルム不溶分の含有割合との差(γ1)が1.6〜6.0、トルエン不溶分の含有割合とモルホリン不溶分の含有割合との差(γ2)が2.0〜8.0、水素原子数と炭素原子数の比(H/C)が0.50〜0.70、硫黄分が0.4〜0.8重量%、窒素分が0.9〜1.5重量%、15℃の比重が1.15〜1.4である請求項1〜3の何れか1項に記載の水素化コールタールピッチの製造方法。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチ。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法で得られる水素化コールタールピッチをコークス化して得られるピッチ系ニードルコークス。
- 熱膨張係数(CTE)が3.2×10−7/℃以下、2600℃迄のパッフィングが3.0%以下であるピッチ系ニードルコークス。
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JPS60149690A (ja) * | 1984-01-17 | 1985-08-07 | Nippon Steel Chem Co Ltd | ニ−ドルコ−クスの製造方法 |
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JPH05214344A (ja) * | 1992-01-31 | 1993-08-24 | Mitsubishi Kasei Corp | ニードルコークスの製造方法 |
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