JP2015186773A - 造水方法および造水装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バイオファウリング抑制とRO膜劣化防止を同時にかつ経済的に実現するために、半透膜の劣化を抑制しながら殺菌剤を注入しバイオファウリングを抑制することが可能な造水システムおよび造水装置を提供すること。【解決手段】TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水方法であって、前記被処理水を半透膜で処理する前に、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加する造水方法とする。【選択図】図1
Description
本発明は、半透膜処理装置を用いて造水する造水方法および造水装置に関し、詳しくは、半透膜へのダメージを低減することを可能とする造水方法および造水装置に関する。
海水、下水、工業廃水などを原水とし、該原水を半透膜処理することで、塩分や微量汚染物質を除去し、造水、再利用する方法が利用されている。その代表的な造水装置は、逆浸透膜(以下、RO膜)を用いた海水淡水化や下水再利用であり、これらでは、精密濾過膜(以下、MF膜)、限外濾過膜(以下、UF膜)、砂ろ過などにより除濁した後、昇圧しRO膜に供することで、脱塩や微量汚染物質除去を行う。当該装置の安定化にはバイオファウリング対策が必要不可欠である。バイオファウリングとは、例えば、RO膜を備えたRO膜エレメント内に微生物が増殖し、原水流路を閉塞させるなどして、装置性能を著しく低減させる現象を言う。
このようなバイオファウリング対策として、殺菌剤などのバイオファウリング抑制剤を注入することが知られている。殺菌剤には、次亜塩素酸ナトリウムが特に安価かつ効果的であることが知られているが、特に高性能な半透膜の多くはポリアミドを主成分として製作されており、次亜塩素酸ナトリウムに含まれる遊離塩素がポリアミド膜を劣化させるため、実用されていない場合が多い。そこで、ポリアミド膜劣化を発生させないバイオファウリング抑制剤としてDBNPA(2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド)などが利用されているが、高価であると同時に飲料水用途への利用が制限されているなどの課題があった。そこで、安価かつ効果的に利用できるバイオファウリング抑制剤として、例えば特許文献1や特許文献2のように、クロラミンなどの結合塩素によるバイオファウリング抑制が知られ、利用されている。
しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法では、特許文献3に記載の通り、原因は定かではないが半透膜の劣化が発生し、除去率が低下してしまう場合があった。
そこで、本発明は、バイオファウリング抑制とRO膜劣化防止を同時にかつ経済的に実現するために、半透膜の劣化を抑制しながら殺菌剤を注入しバイオファウリングを抑制することが可能な造水システムおよび造水装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、以下の(1)〜(21)の構成をとる。
(1)TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水方法であって、前記被処理水を半透膜で処理する前に、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加することを特徴とする造水方法。
(2)前記殺菌剤がクロラミンであることを特徴とする前記(1)の造水方法。
(3)前記クロラミンは、遊離塩素とアンモニウム塩とを、次亜塩素酸イオンとアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比が[ClO−]:[NH3+NH4 +]=1:1.1〜1:10となるように混合することにより合成されることを特徴とする前記(2)の造水方法。
[ClO−]:次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]
[NH3+NH4 +]:アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L]
(4)前記クロラミンを前記被処理水に1〜50mmol/Lの濃度で添加することを特徴とする前記(2)または(3)の造水方法。
(5)前記次亜塩素酸イオンと前記アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比と前記クロラミンの濃度の関係が、クロラミン濃度[mmol/L]<[NH3+NH4 +]/[ClO−]×5[mmol/L]であることを特徴とする前記(3)または(4)の造水方法。
(6)前記被処理水が臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つの造水方法。
(7)前記被処理水中の前記臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つの濃度が、5mg/L以上であることを特徴とする前記(6)の造水方法。
(8)前記被酸化剤が有機物であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一つの造水方法。
(9)前記被酸化剤がアミノ基を有することを特徴とする前記(8)の造水方法。
(10)前記被酸化剤が1級アミンであることを特徴とする前記(9)の造水方法。
(11)前記被酸化剤がアミノ酸であることを特徴とする前記(10)の造水方法。
(12)前記被酸化剤を前記被処理水に1mmol/L以上の濃度で添加することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一つの造水方法。
(13)前記被処理水にpH調整剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一つの造水方法。
(14)前記被処理水のpHを9以上に調整することを特徴とする前記(13)の造水方法。
(15)前記殺菌剤を添加してから前記被酸化剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一つの造水方法。
(16)前記殺菌剤と前記被酸化剤を混合してから添加することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一つの造水方法。
(17)前記pH調整剤を前記殺菌剤の添加前に添加することを特徴とする前記(13)〜(16)のいずれか一つの造水方法。
(18)前記被酸化剤の添加前に前記殺菌剤より酸化力の強い強酸化物の濃度を測定し、測定値を元に前記被酸化剤の添加量を調整することを特徴とする前記(15)の造水方法。
(19)前記殺菌剤および前記被酸化剤の添加後に前記殺菌剤より酸化力の強い強酸化物の濃度を測定し、測定値を元に前記被酸化剤の添加量を調整することを特徴とする前記(1)〜(17)のいずれか一つの造水方法。
(20)前記半透膜がポリアミドを主成分とする膜であることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか一つの造水方法。
(21)TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水装置であって、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加する装置を、前記半透膜処理装置よりも上流側に設けることを特徴とする造水装置。
(1)TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水方法であって、前記被処理水を半透膜で処理する前に、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加することを特徴とする造水方法。
(2)前記殺菌剤がクロラミンであることを特徴とする前記(1)の造水方法。
(3)前記クロラミンは、遊離塩素とアンモニウム塩とを、次亜塩素酸イオンとアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比が[ClO−]:[NH3+NH4 +]=1:1.1〜1:10となるように混合することにより合成されることを特徴とする前記(2)の造水方法。
[ClO−]:次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]
[NH3+NH4 +]:アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L]
(4)前記クロラミンを前記被処理水に1〜50mmol/Lの濃度で添加することを特徴とする前記(2)または(3)の造水方法。
(5)前記次亜塩素酸イオンと前記アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比と前記クロラミンの濃度の関係が、クロラミン濃度[mmol/L]<[NH3+NH4 +]/[ClO−]×5[mmol/L]であることを特徴とする前記(3)または(4)の造水方法。
(6)前記被処理水が臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つの造水方法。
(7)前記被処理水中の前記臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つの濃度が、5mg/L以上であることを特徴とする前記(6)の造水方法。
(8)前記被酸化剤が有機物であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一つの造水方法。
(9)前記被酸化剤がアミノ基を有することを特徴とする前記(8)の造水方法。
(10)前記被酸化剤が1級アミンであることを特徴とする前記(9)の造水方法。
(11)前記被酸化剤がアミノ酸であることを特徴とする前記(10)の造水方法。
(12)前記被酸化剤を前記被処理水に1mmol/L以上の濃度で添加することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一つの造水方法。
(13)前記被処理水にpH調整剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一つの造水方法。
(14)前記被処理水のpHを9以上に調整することを特徴とする前記(13)の造水方法。
(15)前記殺菌剤を添加してから前記被酸化剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一つの造水方法。
(16)前記殺菌剤と前記被酸化剤を混合してから添加することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一つの造水方法。
(17)前記pH調整剤を前記殺菌剤の添加前に添加することを特徴とする前記(13)〜(16)のいずれか一つの造水方法。
(18)前記被酸化剤の添加前に前記殺菌剤より酸化力の強い強酸化物の濃度を測定し、測定値を元に前記被酸化剤の添加量を調整することを特徴とする前記(15)の造水方法。
(19)前記殺菌剤および前記被酸化剤の添加後に前記殺菌剤より酸化力の強い強酸化物の濃度を測定し、測定値を元に前記被酸化剤の添加量を調整することを特徴とする前記(1)〜(17)のいずれか一つの造水方法。
(20)前記半透膜がポリアミドを主成分とする膜であることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか一つの造水方法。
(21)TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水装置であって、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加する装置を、前記半透膜処理装置よりも上流側に設けることを特徴とする造水装置。
本発明では、強酸化物を含有する殺菌剤を半透膜に作用させることで半透膜のバイオファウリングを抑制する際に、半透膜を酸化しダメージを与える強酸化物を消費する被酸化剤を添加することで半透膜が強酸化物によってダメージを受けることを防止することができる。それにより、半透膜のバイオファウリングを抑制しながら該半透膜の寿命を延ばすことができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の造水方法は、TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水方法であって、前記被処理水を半透膜で処理する前に、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤(以下、単に「結合ハロゲン殺菌剤」ともいう)および被酸化剤を添加するものである。なお、本明細書において、「主成分」とは、殺菌剤を構成する成分のうち、50質量%を超えて配合される成分のことを言い、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
本発明の造水方法は、TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水方法であって、前記被処理水を半透膜で処理する前に、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤(以下、単に「結合ハロゲン殺菌剤」ともいう)および被酸化剤を添加するものである。なお、本明細書において、「主成分」とは、殺菌剤を構成する成分のうち、50質量%を超えて配合される成分のことを言い、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
図1は、本発明の造水方法を実施するための造水装置の一例を示す概略図である。
図1において、被処理水1は半透膜処理装置2にて半透膜処理され、透過水3と半透膜を透過しなかった濃縮水4とを得る。本発明において、半透膜処理装置2の上流側において、被処理水1に殺菌剤8をポンプ7などの薬液注入手段で注入し、被酸化剤6をポンプ5などの薬液注入手段で注入する。
図1において、被処理水1は半透膜処理装置2にて半透膜処理され、透過水3と半透膜を透過しなかった濃縮水4とを得る。本発明において、半透膜処理装置2の上流側において、被処理水1に殺菌剤8をポンプ7などの薬液注入手段で注入し、被酸化剤6をポンプ5などの薬液注入手段で注入する。
ここで、被処理水1は、特に限定されないが、海水、かん水、下水、工場排水や、これらの生物処理水、生物処理水の半透膜処理濃縮水、これらの混合水などが例示される。ただし、殺菌剤や被酸化剤が効果的に働くために、被処理水は、TOC(全有機炭素)濃度が10mg/L以下およびTN(総窒素)濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たすことが必要である。TOC濃度やTN濃度が上記を超える場合、バイオファウリングの増殖が激しかったり、添加した殺菌剤を消費したりすることがあるため適当ではない。そのため、特に下水や下水生物処理水の半透膜処理濃縮水等は通常当該濃度が高いため適当ではなく、上記濃度を超える場合は、生物処理や除濁などの処理がなされることが望まれる。有機物による殺菌剤消費防止の観点から、TOC濃度は5mg/L以下であることが好ましく、TN濃度は2mg/L以下であることが好ましい。また、飲料用途として用いるためには、被処理水として海水やかん水、これらの混合水を用いて造水処理することが望ましい。
被処理水1は除濁装置により濁質を除去されたものでもよく、当該除濁装置は濁質を除去する機能を有すれば特に方式を限定しないが、砂ろ過、沈殿、凝集、遠心分離、MF膜、UF膜などが例示され、これらから1つを選出する、もしくは2以上を組み合わせるなどが好適に利用される。特に、UF膜やMF膜は、濁質除去性能、維持管理容易性および安定性に優れるため、後段の半透膜処理の安定化に大きく貢献でき、好ましい。
半透膜処理装置2は、RO膜やナノろ過膜(以下、NF膜)などの半透膜を用いて、被処理水1に含まれる塩や有機物を除く機能を有するものであれば特に限定しない。通常、半透膜を収容し、原水と透過水(生産水)とを構造的に分離し、透過水を集水する機能を有する膜分離素子が利用される。膜分離素子の形態は特に限定しないが、中空糸膜の場合は、複数の中空糸を束ねて端部を透過水集水部と接着させた構造、平膜の場合は、複数の平膜を封筒状にし、端部を集水管となる中心パイプと接着し、平膜を巻囲して固定したスパイラル型の構造が挙げられる。さらに1以上の膜分離素子を圧力耐久容器内に収容し、原水(固形分除去水)側から加圧することにより、透過水および濃縮水を得ることができる。その際、複数の圧力耐久容器の接続構成(透過水または濃縮水をさらに異なる圧力耐久容器に接続する構成など)、透過水の回収率や濃縮水の濃縮倍率、処理時間、処理温度等の処理条件などは、装置の規模、生産能力、要求水質などによって種々適宜変更される。
半透膜の材質としては、例えば酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマー等の高分子材料が挙げられる。特に、ポリアミドを用いた半透膜は、透水性、脱塩性ともに優れるため、好適に利用される。またその膜構造としては膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合膜等が挙げられる。
殺菌剤は、結合ハロゲンを主成分とするものであり、例えば、モノクロラミン,ジクロラミン,トリクロラミン等のクロラミンや、クロラミンT(N−クロロ−4−メチルベンゼンスルホンアミド, ナトリウム塩)等のクロラミン類などの結合塩素系や、DBNPA(2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド)などの結合臭素系等が挙げられる。ここで、結合ハロゲンとは、DPD法で測定した場合、結合塩素として検出されるものであり、ブロモアミンなど炭素に結合していてもDPD法で遊離塩素として検出されるものは含まない。本発明において、殺菌効果や毒性の観点から、クロラミン類を用いることが好ましく、中でもクロラミンがより好ましい。
クロラミンは長期間安定していないため、一般的に現場で合成される。クロラミンの合成方法としては、次亜塩素酸ソーダなどの遊離塩素含有液と、硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩とを混合することが知られている。遊離塩素含有液とアンモニウム塩とをそれぞれ別に被処理水1に添加して、クロラミンを生成させてもよく、被処理水1がアンモニア含有水ならば、遊離塩素含有液のみを添加してもよい。
クロラミンを合成する際には、遊離塩素とアンモニウム塩とを、次亜塩素酸イオンとアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比が[ClO−]:[NH3+NH4 +]=1:1.1〜1:10となるように混合することが好ましく、さらに好ましくは、[ClO−]:[NH3+NH4 +]=1:1.5〜1:8である。アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度が次亜塩素酸イオンの1.1倍よりも低い場合、半透膜処理工程で半透膜の損傷や劣化を促進する遊離塩素が残留する可能性があり、アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度が次亜塩素酸イオンの10倍よりも高い場合、バイオファウリングを促進する可能性があるため好ましくない。
なお、上記[ClO−]は次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]であり、[NH3+NH4 +]はアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L]である。
なお、上記[ClO−]は次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]であり、[NH3+NH4 +]はアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L]である。
また、被処理水1に臭化物イオンが含まれる場合は、アンモニア濃度が高いほど後述の式(3)が進みやすい傾向にあるため望ましくない。
クロラミンを添加する場合、クロラミン濃度を被処理中、1〜50mmol/Lにすることが好ましく、5.5〜50mmol/Lにすることがより望ましい。クロラミン濃度が1mmol/Lよりも希薄であると造水装置が大きくなったり希釈水が大量に必要となったりするため望ましくない。また、クロラミン濃度が50mmol/Lより高濃度である場合は下記(1)式の反応が進むため望ましくない。
3NH2Cl→N2+NH4 ++3Cl−+2H+ ・・・(1)
3NH2Cl→N2+NH4 ++3Cl−+2H+ ・・・(1)
(1)式より分かるようにクロラミン濃度が高いと右辺に進みやすくなり、アンモニア濃度が高いと右辺に進みにくくなる。すなわち、クロラミン濃度が高くてもアンモニア濃度が高ければ、クロラミンは分解しにくくなる。本発明者らは鋭意検討の結果、次亜塩素酸イオンとアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比とクロラミンの濃度の関係が以下の関係式を満たせばクロラミンが分解しにくくなることを見出した。
クロラミン濃度[mmol/L]<[NH3+NH4 +]/[ClO−]×5[mmol/L]
[ClO−]:次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]
[NH3+NH4 +]:アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L]
クロラミン濃度[mmol/L]<[NH3+NH4 +]/[ClO−]×5[mmol/L]
[ClO−]:次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]
[NH3+NH4 +]:アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L]
ここで、クロラミンとは、アンモニア分子の水素原子に塩素原子がそれぞれ1個、2個、3個置換されているモノクロラミン、ジクロラミンおよびトリクロラミンの総称を指すが、本発明では、殺菌力が強くて安定しているモノクロラミンを主成分として生成するように、アンモニアと遊離塩素のモル比やpHを調整することが好ましい。
これらの結合ハロゲン殺菌剤は次亜塩素酸イオンなどの遊離塩素やブロモアミンなどの強酸化物を少量含んだり、被処理水中の物質と反応して強酸化物を生成したりすることがあり、ポリアミド系の半透膜にダメージを与え、半透膜の塩除去率の低下を招くことが知られている。強酸化物発生のメカニズムは完全には明確ではないが、一例として以下の反応が考えられる。
NH4 ++OCl−⇔NH2Cl+H2O ・・・(2)
NH2Cl+Br−⇔NH2Br+Cl− ・・・(3)
(2)式はクロラミン合成反応であり、通常はほぼ右辺へ反応が進んでいると考えられる。しかし、被処理水含有金属が触媒として働き反応が左に寄るなどして強酸化物である遊離塩素が発生することがあり、半透膜にダメージを与える。
(3)式は海水等の臭化物イオンを含んだ水にクロラミンを添加した場合の反応で、強酸化物であるブロモアミンが発生し、半透膜にダメージを与える。ただし、臭化物イオンが5mg/L以下の場合、強酸化物であるブロモアミンはほとんど発生せず、半透膜へのダメージはあまり見られない。
NH4 ++OCl−⇔NH2Cl+H2O ・・・(2)
NH2Cl+Br−⇔NH2Br+Cl− ・・・(3)
(2)式はクロラミン合成反応であり、通常はほぼ右辺へ反応が進んでいると考えられる。しかし、被処理水含有金属が触媒として働き反応が左に寄るなどして強酸化物である遊離塩素が発生することがあり、半透膜にダメージを与える。
(3)式は海水等の臭化物イオンを含んだ水にクロラミンを添加した場合の反応で、強酸化物であるブロモアミンが発生し、半透膜にダメージを与える。ただし、臭化物イオンが5mg/L以下の場合、強酸化物であるブロモアミンはほとんど発生せず、半透膜へのダメージはあまり見られない。
よって、本発明の造水方法では、臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つを含む被処理物に対して有効に用いることができ、臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つの濃度が、5mg/L以上、好ましくは5〜1000mg/Lである被処理物に対してより効果的に処理することができる。
本発明者らは鋭意検討の結果、被酸化剤を添加することで、結合ハロゲン殺菌剤を消去することなく強酸化物を消去することが出来ることを発見した。
被酸化剤としては結合ハロゲン殺菌剤を消去することなく強酸化物を消去するものであれば何でもよく、有機物、中でもアミノ基を有するものが好ましく、更に好ましくは1級アミンが使用できる。特にアミノ酸であれば、健康影響への懸念も低く好ましく使用でき、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンやバリンなどを使用することができる。
被酸化剤としては結合ハロゲン殺菌剤を消去することなく強酸化物を消去するものであれば何でもよく、有機物、中でもアミノ基を有するものが好ましく、更に好ましくは1級アミンが使用できる。特にアミノ酸であれば、健康影響への懸念も低く好ましく使用でき、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンやバリンなどを使用することができる。
なお、一般的に還元剤として知られているもの、例えば亜硫酸水素ナトリウム(SBS)やチオ硫酸ナトリウムなどは還元力が強過ぎ、結合ハロゲン殺菌剤を消去するため好ましくない。還元剤と被酸化剤の区別としては、結合ハロゲン殺菌剤0.013mmol/Lと混合した場を例に挙げると、還元剤を0.026mmol/L添加した場合は5分で90%以上の結合ハロゲン殺菌剤は還元され、被酸化剤を0.026mmol/L添加した場合は5分で10%以下しか結合ハロゲン殺菌剤は還元されない。一方、強酸化物0.013mmol/Lと混合した場合を例に挙げると、還元剤、被酸化剤共に0.026mmol/L添加した場合は3分以内で90%以上の強酸化物を還元する。
被酸化剤は固体でも水溶液でも使用できるが、水溶液で添加する方が被処理水に容易に均一に混ぜることが可能であるので望ましい。被酸化剤を水溶液として添加する場合、添加する被酸化剤の濃度としては、1mmol/L以上であることが望ましい。1mmol/Lより濃度が希薄であると装置が大きくなったり希釈水が大量に必要となったりするため望ましくない。
薬液注入手段は、図1ではポンプ5,7として記載したが、水位差を利用して注入してもよく、流量を調整しながら注入できる手段を備えていれば、特に限定しない。
半透膜処理装置までの配管が長い場合やバイオファウリングしやすい場合は、結合ハロゲン殺菌剤よりも強酸化物の殺菌力の方が強いため、殺菌剤を添加した後に被酸化剤を添加することが望ましい。
また、図2に示したように、殺菌剤中の強酸化物濃度が高い場合などは、被処理水1へ殺菌剤8を添加する前に、殺菌剤8と被酸化剤6とを混合することで、被酸化剤6が強酸化物を消去する速度を速めることが出来るため望ましい。
被酸化剤の中には酸性のものやアルカリ性のものがあるため、被処理水にpH調整剤を加えることが望ましい。pH調整剤としては、被処理水のpHを変えるものならば何でもよく、塩酸や硝酸、硫酸、酢酸、蓚酸といった酸や水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアといったアルカリを使用することができる。
なお、本発明者らは鋭意検討の結果、臭化物イオンを含む水にクロラミンを添加する場合、pHが低いほど(3)式が進むことを見出した。そのため、pHは9以上であることが望ましい。よって、図3に示したように、強酸化物の発生を抑制するために、pH調整剤12は殺菌剤8を添加する前に被処理水1に添加することが望ましい。
図4に示す造水装置では、被処理水1に殺菌剤8および被酸化剤6を添加した後、強酸化物濃度測定器13で強酸化物濃度を測定し、測定値に応じて被酸化剤の添加量を調整している。調整量としては、強酸化物濃度測定器13で検出された強酸化物モル濃度の1.5倍以上のモル濃度の被酸化剤を追加するように添加量を増やすことが望まれる。
強酸化物濃度測定器13は、ガスクロマトグラフィーなどを用いて直接計測してもよいし、DPD(ジエチル−p−フェニレンジアミン)吸光度法によって計測される遊離塩素濃度や、酸化還元電位(ORP)やUV吸光度などを間接指標として用いてもよい。特にORPは、計測が容易かつ安価であり、自動制御もしやすい点で好適である。
図4および図5に示したように、被処理水1は除濁装置14によって除濁処理された後、半透膜処理装置2に供されることが、濁質による半透膜処理装置2内流路の閉塞や半透膜性能低下抑制のために好ましい。
図5の装置では、殺菌剤8を添加した後、強酸化物濃度測定器13で強酸化物濃度を測定し、測定値に応じて被酸化剤6の添加量を調整している。調整量としては、強酸化物濃度測定器13で検出された強酸化物モル濃度の1.5倍以上のモル濃度の被酸化剤6を添加することが望まれる。
なお、被処理水1への添加後の殺菌剤濃度は、0.001〜0.2mmol/Lの範囲であることが好ましい。殺菌剤濃度が0.001mmol/L以下では、バイオファウリング抑制効果が不十分であり、0.2mmol/L以上では、殺菌剤そのもので膜劣化を促進させてしまう可能性が高くなる。
上記した方法により、被処理水を処理することで強酸化物を消費することができるので、半透膜が強酸化物によってダメージを受けることを防止することができる。
1 被処理水
2 半透膜処理装置
3 透過水
4 濃縮水
5 ポンプ
6 被酸化剤
7 ポンプ
8 殺菌剤(結合ハロゲン殺菌剤)
9 ポンプ
10 混合槽
11 ポンプ
12 pH調整剤
13 強酸化物濃度測定器
14 除濁装置
2 半透膜処理装置
3 透過水
4 濃縮水
5 ポンプ
6 被酸化剤
7 ポンプ
8 殺菌剤(結合ハロゲン殺菌剤)
9 ポンプ
10 混合槽
11 ポンプ
12 pH調整剤
13 強酸化物濃度測定器
14 除濁装置
Claims (21)
- TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水方法であって、前記被処理水を半透膜で処理する前に、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加することを特徴とする造水方法。
- 前記殺菌剤がクロラミンであることを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
- 前記クロラミンは、遊離塩素とアンモニウム塩とを、次亜塩素酸イオンとアンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比が[ClO−]:[NH3+NH4 +]=1:1.1〜1:10となるように混合することにより合成されることを特徴とする請求項2に記載の造水方法。
[ClO−]:次亜塩素酸イオンのモル濃度[mmol/L]
[NH3+NH4 +]:アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度[mmol/L] - 前記クロラミンを前記被処理水に1〜50mmol/Lの濃度で添加することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の造水方法。
- 前記次亜塩素酸イオンと前記アンモニアおよびアンモニウムイオンのモル濃度比と前記クロラミンの濃度の関係が、クロラミン濃度[mmol/L]<[NH3+NH4 +]/[ClO−]×5[mmol/L]であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の造水方法。
- 前記被処理水が臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記被処理水中の前記臭化物イオンおよびヨウ化物イオンのうちの少なくとも1つの濃度が、5mg/L以上であることを特徴とする請求項6に記載の造水方法。
- 前記被酸化剤が有機物であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記被酸化剤がアミノ基を有することを特徴とする請求項8に記載の造水方法。
- 前記被酸化剤が1級アミンであることを特徴とする請求項9に記載の造水方法。
- 前記被酸化剤がアミノ酸であることを特徴とする請求項10に記載の造水方法。
- 前記被酸化剤を前記被処理水に1mmol/L以上の濃度で添加することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記被処理水にpH調整剤を添加することを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記被処理水のpHを9以上に調整することを特徴とする請求項13に記載の造水方法。
- 前記殺菌剤を添加してから前記被酸化剤を添加することを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記殺菌剤と前記被酸化剤を混合してから添加することを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記pH調整剤を前記殺菌剤の添加前に添加することを特徴とする請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記被酸化剤の添加前に前記殺菌剤より酸化力の強い強酸化物の濃度を測定し、測定値を元に前記被酸化剤の添加量を調整することを特徴とする請求項15に記載の造水方法。
- 前記殺菌剤および前記被酸化剤の添加後に前記殺菌剤より酸化力の強い強酸化物の濃度を測定し、測定値を元に前記被酸化剤の添加量を調整することを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の造水方法。
- 前記半透膜がポリアミドを主成分とする膜であることを特徴とする請求項1〜請求項19のいずれか一項に記載の造水方法。
- TOC濃度が10mg/L以下およびTN濃度が5mg/L以下のうちの少なくとも一方を満たす被処理水を半透膜処理装置で処理する造水装置であって、前記被処理水に結合ハロゲンを主成分とする殺菌剤および被酸化剤を添加する装置を、前記半透膜処理装置よりも上流側に設けることを特徴とする造水装置。
Priority Applications (1)
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JP2014064367A JP2015186773A (ja) | 2014-03-26 | 2014-03-26 | 造水方法および造水装置 |
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