本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム>
本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理システムの一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
本実施形態に係る逆浸透膜処理システム1は、被処理水を酢酸セルロース系逆浸透膜に通水して第1濃縮水と第1透過水とを得る第1逆浸透膜処理手段として第1逆浸透膜処理装置10と、第1透過水をポリアミド系逆浸透膜に通水して第2濃縮水と第2透過水とを得る第2逆浸透膜処理手段として第2逆浸透膜処理装置12とを備える。
図1の逆浸透膜処理システム1において、第1逆浸透膜処理装置10の被処理水入口には、被処理水配管14が接続されている。第1逆浸透膜処理装置10の第1透過水出口と第2逆浸透膜処理装置12の第1透過水入口とは、第1透過水配管16により接続され、第1逆浸透膜処理装置10の第1濃縮水出口には、第1濃縮水配管18が接続されている。第2逆浸透膜処理装置12の第2透過水出口には、第2透過水配管20が接続され、第2濃縮水出口には、第2濃縮水配管22が接続されている。被処理水配管14には、殺菌剤添加手段として、殺菌剤添加配管24が接続されている。
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム1の動作について説明する。
被処理水(第1RO被処理水)は、被処理水配管14を通して第1逆浸透膜処理装置10の1次側へ送液され、第1逆浸透膜処理装置10において酢酸セルロース系逆浸透膜に通水されて第1濃縮水と第1透過水とが得られる(第1逆浸透膜処理工程)。第1逆浸透膜処理工程で得られた第1濃縮水は、第1濃縮水配管18を通して排出される。第1濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。
第1透過水は、第2RO被処理水として、第1透過水配管16を通して第2逆浸透膜処理装置12の1次側へ送液され、第2逆浸透膜処理装置12においてポリアミド系逆浸透膜に通水されて第2濃縮水と第2透過水とが得られる(第2逆浸透膜処理工程)。第2逆浸透膜処理工程で得られた第2透過水は、第2透過水配管20を通して排出され、第2濃縮水は、第2濃縮水配管22を通して排出される。第2透過水、第2濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。第2透過水を第1逆浸透膜処理装置10の1次側に送液して第1RO被処理水と混合してもよい。
ここで、被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤(以下、「逆浸透膜用殺菌剤」と呼ぶ場合がある)を存在させる。例えば、逆浸透膜用殺菌剤は、殺菌剤添加配管24を通して被処理水配管14において被処理水に添加される。第1逆浸透膜処理装置10の前段に被処理水を貯留する被処理水槽を別途設け、被処理水槽において逆浸透膜用殺菌剤が添加されてもよい。また、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤を、第1透過水に存在させてもよい。例えば、逆浸透膜用殺菌剤は、殺菌剤添加配管を通して第1透過水配管16において第1透過水に添加される。第1逆浸透膜処理装置10と第2逆浸透膜処理装置12との間に第1透過水を貯留する第1透過水槽を別途設け、第1透過水槽において逆浸透膜用殺菌剤が添加されてもよい。
このように、本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム1では、酢酸セルロース系逆浸透膜を用いて被処理水の第1の逆浸透膜処理を行う際、被処理水に臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む逆浸透膜用殺菌剤を存在させる。本発明者らは、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む逆浸透膜用殺菌剤は、酢酸セルロース系逆浸透膜をほとんど透過しないことを見出した。従来は、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む逆浸透膜用殺菌剤を酢酸セルロース系逆浸透膜に添加した際の、透過側への作用が不明であった。この逆浸透膜用殺菌剤は、従来の次亜塩素酸やクロラミン等の塩素系殺菌剤よりも、逆浸透膜に対して十分な殺菌効果を発揮する。また、透過水中への殺菌剤のリークがほとんどないため、殺菌剤が酢酸セルロース系逆浸透膜を透過するのを抑制しながらも、逆浸透膜のファウリングの抑制が可能となる。
従来の方法では、被処理水中に次亜塩素酸やクロラミン等の塩素系殺菌剤、または次亜臭素酸等の臭素系酸化剤を添加すると、透過水中へこれらの殺菌剤がリークする。これらは後段のポリアミド系逆浸透膜を劣化させるため、後段のポリアミド系逆浸透膜に導入される前に、還元手段によって還元処理する必要があったが、本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム1では、第1透過水を還元処理しなくてもよい。よって、亜硫酸水素ナトリウムやチオ硫酸ナトリウム等の硫黄を含有する還元剤を添加することにより、これらを栄養源とする菌が発生したり、活性炭または活性炭繊維を用いることにより、塩素除去により微粉化した活性炭が膜の表面に吸着したりする懸念がなくなったり、酸化剤を還元した活性炭中に生物が繁殖し、生物またはその代謝物によって逆浸透膜がファウリングすることもなくなり、これらの還元処理により、後段のポリアミド系逆浸透膜のファウリングを助長することがなくなる。さらに、これらの還元手段を設けることによる運転コストの増大を抑制することができる。
「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する殺菌剤であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する殺菌剤であってもよい。「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤」は、「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜塩素酸組成物を含有する殺菌剤であってもよいし、「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜塩素酸組成物を含有する殺菌剤であってもよい。
すなわち、本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理方法は、被処理水中に、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物、または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる方法である。これにより、被処理水中で、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物が生成すると考えられる。
また、本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理方法は、被処理水中に、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物、または「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜塩素酸組成物を存在させる方法である。
具体的には本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理方法は、被処理水中に、「臭素」、「塩化臭素」、「次亜臭素酸」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる方法である。または、被処理水中に、「次亜塩素酸」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる方法である。
また、本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理方法は、被処理水中に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「次亜臭素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させる方法である。または、被処理水中に、「次亜塩素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜塩素酸組成物を存在させる方法である。
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法において、安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤等の従来の殺菌剤と同等以上の殺菌効果を発揮するにも関わらず、塩素系酸化剤等の従来の殺菌剤と比較すると、酢酸セルロース系逆浸透膜をほとんど透過しないため、第1の逆浸透膜処理に酢酸セルロース系逆浸透膜を用い、第2逆浸透膜処理にポリアミド系逆浸透膜を用いる逆浸透膜処理において、逆浸透膜のファウリングの抑制が可能となる。このため、本実施形態に係る逆浸透膜処理方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物は、第1の逆浸透膜処理に酢酸セルロース系逆浸透膜を用い、第2逆浸透膜処理にポリアミド系逆浸透膜を用いる逆浸透膜処理で用いる殺菌剤としては好適である。
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法では、例えば、被処理水中に、「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入してもよい。「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよい。添加は、連続添加でも間欠添加でもよい。
また、例えば、被処理水中に、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」または「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を薬注ポンプ等により注入してもよい。添加は、連続添加でも間欠添加でもよい。
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法において、「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」または「塩素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
逆浸透膜に接触する全塩素濃度は有効塩素濃度換算で、0.01~100mg/Lであることが好ましい。0.01mg/L未満であると、十分な殺菌効果を得ることができない場合があり、100mg/Lより多いと、逆浸透膜の劣化、配管等の腐食を引き起こす可能性がある。
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭化物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」の製剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」の製剤および「塩化臭素とスルファミン酸」の製剤等に比べて、臭素酸の副生が少なく、逆浸透膜をより劣化させないため、逆浸透膜用の殺菌剤としてはより好ましい。
すなわち、本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理方法は、被処理水中に、臭素と、スルファミン酸化合物とを存在させる(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を存在させる)ことが好ましい。また、被処理水中に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を存在させることが好ましい。
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸またはその塩、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またはその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌル酸またはその塩等が挙げられる。これらのうち、塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩素系酸化剤としては、取り扱い性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
R2NSO3H (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。)
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N-フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6~10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法において、さらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
被処理水としては、特に制限はないが、例えば、工業用水、表層水、水道水、地下水、海水、海水を逆浸透法または蒸発法等によって脱塩した海水淡水化処理水、各種排水、例えば半導体製造工程等で排出される排水等が挙げられる。
被処理水のpHは、例えば、2~12の範囲であり、4~11の範囲であることが好ましい。被処理水のpHが2未満、または12を超えると、逆浸透膜が劣化する場合がある。
被処理水の導電率は、例えば、100~100000μS/cmであり、好ましくは150~10000μS/cmである。被処理水のTDSは、例えば、10~80000ppmであり、好ましくは20~4000ppmである。被処理水のTOCは、例えば、0.01~50ppmである。処理水(第2透過水)の導電率は、例えば、0.1~1000μS/cmであり、TDSは、例えば、0.05~400ppmであり、TOCは、例えば、1ppb~10ppmである。
逆浸透膜処理装置において、被処理水のpH5.5以上でスケールが発生する場合には、スケール抑制のために分散剤を上記殺菌剤と併用してもよい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン酸等が挙げられる。分散剤の被処理水への添加量は、例えば、FO濃縮水中の濃度として0.1~1,000mg/Lの範囲である。
また、分散剤を使用せずにスケールの発生を抑制するためには、例えば、FO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度以下に、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、逆浸透膜処理装置の回収率、水温、pH等の運転条件を調整することが挙げられる。
逆浸透膜処理システムの用途としては、例えば、海水淡水化、純水製造、超純水製造、水回収、下水処理、排水の減容化、有価物の濃縮、食品および飲料の濃縮等が挙げられる。
逆浸透膜の阻止率は、一般的には500~2000ppm程度のNaClやMgSO4等の水溶液を0.5~6MPa程度で加圧し、透過水中の溶液濃度を測定することで得られる。第1逆浸透膜処理工程で用いられる酢酸セルロース系逆浸透膜は、NaCl阻止率が94%以上であり、好ましくは95%以上である。NaCl阻止率が92%未満の膜は、一般的にナノろ過膜と呼ばれる。
逆浸透膜処理工程で使用される逆浸透膜としては、純水製造用途や排水回収等の用途に使用される超低圧逆浸透膜、低圧逆浸透膜の他に、海水淡水化等の用途に使用される中圧逆浸透膜や高圧逆浸透膜等が挙げられる。酢酸セルロース系の低圧逆浸透膜としては、HA3110(東洋紡製)、SC4201(東レ製)等が挙げられる。酢酸セルロース系の高圧逆浸透膜としては、HR5355(東洋紡製)等が挙げられる。ポリアミド系の超低圧逆浸透膜、低圧逆浸透膜としては、例えば、ES15(日東電工製)、TM720D(東レ製)、BW30HRLE(ダウケミカル製)、LFC3-LD(Hydranautics製)が挙げられる。高圧逆浸透膜としては、例えば、SWC5-LD(Hydranautics製)、TM820V(東レ製)、XUS180808(ダウケミカル製)が挙げられる。逆浸透膜工程が複数段用いられる場合は、各段の被処理水のTDS、pH、水温等の条件に応じて、異種の膜を選択することができる。
第2逆浸透膜処理工程で用いられるポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる。しかしながら、本実施形態に係る逆浸透膜処理方法では上記逆浸透膜用殺菌剤を用いることにより、殺菌有効成分が酢酸セルロース系逆浸透膜をほとんど透過しないので、後段のポリアミド系高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。
<水処理方法、水処理システム>
次に、上記逆浸透膜処理方法、逆浸透膜処理システムを用いる水処理方法、水処理システムについて説明する。
本発明の実施形態に係る水処理方法の第1の例は、上記逆浸透膜処理方法を含み、第1逆浸透膜処理工程の前段に、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つを除去する前処理工程を含む、水処理方法である。また、本発明の実施形態に係る水処理システムの第1の例は、上記逆浸透膜処理システムを備え、第1逆浸透膜処理手段の前段に、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つを除去する前処理手段を備える、水処理システムである。
本実施形態に係る水処理システムの第1の例の概略構成を図2に示す。図2の水処理システム3は、被処理水を酢酸セルロース系逆浸透膜に通水して第1濃縮水と第1透過水とを得る第1逆浸透膜処理手段として第1逆浸透膜処理装置10と、第1透過水をポリアミド系逆浸透膜に通水して第2濃縮水と第2透過水とを得る第2逆浸透膜処理手段として第2逆浸透膜処理装置12と、第1逆浸透膜処理装置10の前段に、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つを除去する前処理手段として、前処理装置26と、を備える。
図2の水処理システム3において、前処理装置26の被処理水入口には、被処理水配管28が接続され、前処理装置26の被処理水出口と第1逆浸透膜処理装置10の被処理水入口とは、被処理水配管14により接続されている。第1逆浸透膜処理装置10の第1透過水出口と第2逆浸透膜処理装置12の第1透過水入口とは、第1透過水配管16により接続され、第1逆浸透膜処理装置10の第1濃縮水出口には、第1濃縮水配管18が接続されている。第2逆浸透膜処理装置12の第2透過水出口には、第2透過水配管20が接続され、第2濃縮水出口には、第2濃縮水配管22が接続されている。被処理水配管14には、殺菌剤添加手段として、殺菌剤添加配管24が接続されている。水処理システム3は、前処理装置26の前段に、被処理水を水源から取水する取水手段を備えてもよい。
被処理水は、必要に応じて取水手段により水源から取水され、被処理水配管28を通して前処理装置26へ送液される。前処理装置26において、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つが除去される(前処理工程)。
懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つが除去された被処理水(第1RO被処理水)は、被処理水配管14を通して第1逆浸透膜処理装置10の1次側へ送液され、第1逆浸透膜処理装置10において酢酸セルロース系逆浸透膜に通水されて第1濃縮水と第1透過水とが得られる(第1逆浸透膜処理工程)。第1逆浸透膜処理工程で得られた第1濃縮水は、第1濃縮水配管18を通して排出される。第1濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。また、第1濃縮水の少なくとも一部を被処理水配管28において被処理水に合流させ、再度、前処理装置26に導入してもよい。
第1透過水は、第2RO被処理水として、第1透過水配管16を通して第2逆浸透膜処理装置12の1次側へ送液され、第2逆浸透膜処理装置12においてポリアミド系逆浸透膜に通水されて第2濃縮水と第2透過水とが得られる(第2逆浸透膜処理工程)。第2逆浸透膜処理工程で得られた第2透過水は、第2透過水配管20を通して排出され、第2濃縮水は、第2濃縮水配管22を通して排出される。第2透過水、第2濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。第2透過水を第1逆浸透膜処理装置10の1次側に送液して第1RO被処理水と混合してもよい。
ここで、被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤(以下、「逆浸透膜用殺菌剤」と呼ぶ場合がある)を存在させる。例えば、逆浸透膜用殺菌剤は、殺菌剤添加配管24を通して被処理水配管14において被処理水に添加される。前処理装置26と第1逆浸透膜処理装置10との間に被処理水を貯留する被処理水槽を別途設け、被処理水槽において逆浸透膜用殺菌剤が添加されてもよい。
前処理装置26としては、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つを除去することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、凝集沈殿装置、砂ろ過装置、加圧浮上装置、膜ろ過装置、軟化装置等が挙げられる。
図2の水処理システム3は第1逆浸透膜の閉塞物質となり得るTOC成分やイオン類を事前に除去するので、第1逆浸透膜のファウリングを抑制し、膜交換や膜洗浄の頻度を低減することができるという利点がある。
本発明の実施形態に係る水処理方法の第2の例は、上記逆浸透膜処理方法を含み、第1逆浸透膜処理工程で発生するエネルギーを回収するエネルギー回収工程を含む、水処理方法である。また、本発明の実施形態に係る水処理システムの第2の例は、上記逆浸透膜処理システムを備え、第1逆浸透膜処理手段で発生するエネルギーを回収するエネルギー回収手段を備える、水処理システムである。
本実施形態に係る水処理システムの第2の例の概略構成を図3に示す。図3の水処理システム5は、被処理水を酢酸セルロース系逆浸透膜に通水して第1濃縮水と第1透過水とを得る第1逆浸透膜処理手段として第1逆浸透膜処理装置10と、第1透過水をポリアミド系逆浸透膜に通水して第2濃縮水と第2透過水とを得る第2逆浸透膜処理手段として第2逆浸透膜処理装置12と、第1逆浸透膜処理手段で発生するエネルギーを回収するエネルギー回収手段として、エネルギー回収装置30を備える。
図3の水処理システム5において、第1逆浸透膜処理装置10の被処理水入口には、被処理水配管14がエネルギー回収装置30を経由して接続されている。第1逆浸透膜処理装置10の第1透過水出口と第2逆浸透膜処理装置12の第1透過水入口とは、第1透過水配管16により接続され、第1逆浸透膜処理装置10の第1濃縮水出口には、第1濃縮水配管18がエネルギー回収装置30を経由して接続されている。第2逆浸透膜処理装置12の第2透過水出口には、第2透過水配管20が接続され、第2濃縮水出口には、第2濃縮水配管22が接続されている。被処理水配管14におけるエネルギー回収装置30の前段側には、殺菌剤添加手段として、殺菌剤添加配管24が接続されている。
被処理水(第1RO被処理水)は、被処理水配管14を通してエネルギー回収装置30を経由して第1逆浸透膜処理装置10の1次側へ送液され、第1逆浸透膜処理装置10において酢酸セルロース系逆浸透膜に通水されて第1濃縮水と第1透過水とが得られる(第1逆浸透膜処理工程)。第1逆浸透膜処理工程で得られた第1濃縮水は、第1濃縮水配管18を通してエネルギー回収装置30を経由して排出される。第1濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。
第1透過水は、第2RO被処理水として、第1透過水配管16を通して第2逆浸透膜処理装置12の1次側へ送液され、第2逆浸透膜処理装置12においてポリアミド系逆浸透膜に通水されて第2濃縮水と第2透過水とが得られる(第2逆浸透膜処理工程)。第2逆浸透膜処理工程で得られた第2透過水は、第2透過水配管20を通して排出され、第2濃縮水は、第2濃縮水配管22を通して排出される。第2透過水、第2濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。第2透過水を第1逆浸透膜処理装置10の1次側に送液して第1RO被処理水と混合してもよい。
ここで、被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤(以下、「逆浸透膜用殺菌剤」と呼ぶ場合がある)を存在させる。例えば、逆浸透膜用殺菌剤は、殺菌剤添加配管24を通して被処理水配管14におけるエネルギー回収装置30の前段において被処理水に添加される。エネルギー回収装置30の前段に被処理水を貯留する被処理水槽を別途設け、被処理水槽において逆浸透膜用殺菌剤が添加されてもよい。
エネルギー回収装置30は、例えば、第1濃縮水が有する圧力エネルギーを他の流体に伝えることで、他の流体を加圧する装置である。エネルギー回収装置30において発生するファウリングは、エネルギー回収効率を低減させるが、水処理システム5では、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む逆浸透膜用殺菌剤が酢酸セルロース系逆浸透膜をほとんど透過しないので、殺菌剤が含まれた第1濃縮水をエネルギー回収装置30に導入することにより、濃縮側のエネルギー回収装置30を十分に殺菌することができ、ファウリングによるエネルギー回収効率の低減を抑制することができる。従来の次亜塩素酸やクロラミン等の塩素系殺菌剤は酢酸セルロース系逆浸透膜を透過するため、濃縮側のエネルギー回収装置30を十分に殺菌することができない。
エネルギー回収装置30の種類として、ピストン式、タービン式等が挙げられるが、いずれの装置にも好適に用いることができる。
本発明の実施形態に係る水処理方法の第3の例は、上記逆浸透膜処理方法を含み、第2逆浸透膜処理工程の後段に、イオン除去工程、溶存気体除去工程、TOC除去工程のうち少なくとも1つの工程を有する後処理工程を含む、水処理方法である。また、本発明の実施形態に係る水処理システムの第3の例は、上記逆浸透膜処理システムを備え、第2逆浸透膜処理手段の後段に、イオン除去手段、溶存気体除去手段、TOC除去手段のうち少なくとも1つの手段を有する後処理手段を備える、水処理システムである。
本実施形態に係る水処理システムの第3の例の概略構成を図4に示す。図4の水処理システム7は、被処理水を酢酸セルロース系逆浸透膜に通水して第1濃縮水と第1透過水とを得る第1逆浸透膜処理手段として第1逆浸透膜処理装置10と、第1透過水をポリアミド系逆浸透膜に通水して第2濃縮水と第2透過水とを得る第2逆浸透膜処理手段として第2逆浸透膜処理装置12と、第2逆浸透膜処理装置12の後段に、イオン除去手段、溶存気体除去手段、TOC除去手段のうち少なくとも1つの手段を有する後処理手段として後処理装置32と、を備える。
図4の水処理システム7において、第1逆浸透膜処理装置10の被処理水入口には、被処理水配管14が接続されている。第1逆浸透膜処理装置10の第1透過水出口と第2逆浸透膜処理装置12の第1透過水入口とは、第1透過水配管16により接続され、第1逆浸透膜処理装置10の第1濃縮水出口には、第1濃縮水配管18が接続されている。第2逆浸透膜処理装置12の第2透過水出口と後処理装置32とは、第2透過水配管20により接続され、後処理装置32の出口には、処理水配管が接続されている。第2逆浸透膜処理装置12の第2濃縮水出口には、第2濃縮水配管22が接続されている。被処理水配管14には、殺菌剤添加手段として、殺菌剤添加配管24が接続されている。
被処理水(第1RO被処理水)は、被処理水配管14を通して第1逆浸透膜処理装置10の1次側へ送液され、第1逆浸透膜処理装置10において酢酸セルロース系逆浸透膜に通水されて第1濃縮水と第1透過水とが得られる(第1逆浸透膜処理工程)。第1逆浸透膜処理工程で得られた第1濃縮水は、第1濃縮水配管18を通して排出される。第1濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。
第1透過水は、第2RO被処理水として、第1透過水配管16を通して第2逆浸透膜処理装置12の1次側へ送液され、第2逆浸透膜処理装置12においてポリアミド系逆浸透膜に通水されて第2濃縮水と第2透過水とが得られる(第2逆浸透膜処理工程)。第2逆浸透膜処理工程で得られた第2濃縮水は、第2濃縮水配管22を通して排出される。第2透過水、第2濃縮水は、別の逆浸透膜処理や生物処理、物理化学処理等によりさらに処理されてもよいし、回収、再利用されてもよい。第2透過水を第1逆浸透膜処理装置10の1次側に送液して第1RO被処理水と混合してもよい。
第2逆浸透膜処理工程で得られた第2透過水は、第2透過水配管20を通して後処理装置32へ送液される。後処理装置32において、第2透過水からのイオン除去処理(イオン除去工程)、溶存気体の除去処理(溶存気体除去工程)、TOC成分の除去処理(TOC除去工程)のうち少なくとも1つが行われる(後処理工程)。後処理工程が行われた処理水は、処理水配管34を通して排出される。
ここで、被処理水中に、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤(以下、「逆浸透膜用殺菌剤」と呼ぶ場合がある)を存在させる。例えば、逆浸透膜用殺菌剤は、殺菌剤添加配管24を通して被処理水配管14において被処理水に添加される。第1逆浸透膜処理装置10の前段に被処理水を貯留する被処理水槽を別途設け、被処理水槽において逆浸透膜用殺菌剤が添加されてもよい。
後処理装置32としては、第2透過水からのイオン除去処理、溶存気体の除去処理、TOC成分の除去処理等を行うことができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、再生式イオン交換装置、非再生式イオン交換装置、脱気装置、UV酸化装置、膜ろ過装置等が挙げられる。
図4の水処理システム7は、逆浸透膜装置で得られた透過水の水質をさらに向上させることができるという利点がある。
水処理方法は、図2~図4に示した、第1逆浸透膜処理工程の前段の、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つを除去する前処理工程;第1逆浸透膜処理工程で発生するエネルギーを回収するエネルギー回収工程;第2逆浸透膜処理工程の後段の、イオン除去工程、溶存気体除去工程、TOC除去工程のうち少なくとも1つの工程を有する後処理工程;のうちの2つまたは3つを組み合わせて行ってもよい。
また、水処理システムは、図2~図4に示した、第1逆浸透膜処理手段の前段の、被処理水中の懸濁物質、TOC成分、微生物、およびイオンのうち少なくとも1つを除去する前処理手段;第1逆浸透膜処理手段で発生するエネルギーを回収するエネルギー回収手段;第2逆浸透膜処理手段の後段の、イオン除去手段、溶存気体除去手段、TOC除去手段のうち少なくとも1つの手段を有する後処理手段;のうちの2つまたは3つを組み合わせて備えてもよい。
水処理システムの被処理水としては、特に制限はないが、例えば、工業用水、表層水、水道水、地下水、海水、海水を逆浸透法または蒸発法等によって脱塩した海水淡水化処理水、下水、下水処理水、各種排水、例えば半導体製造工程等で排出される排水等が挙げられる。
水処理システムの用途としては、例えば、海水淡水化、純水製造、超純水製造、水回収、下水処理、排水の減容化、有価物の濃縮、食品および飲料の濃縮等が挙げられる。
水処理システムの被処理水の導電率は、例えば、100~100000μS/cmであり、好ましくは150~10000μS/cmである。被処理水のTDSは、例えば、10~80000ppmであり、好ましくは20~4000ppmである。被処理水のTOCは、例えば、0.01~50ppmである。処理水(第2透過水)の導電率は、例えば、0.1~1000μS/cmであり、TDSは、例えば、0.05~400ppmであり、TOCは、例えば、1ppb~10ppmである。
<逆浸透膜用殺菌剤>
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、「臭素系酸化剤または塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物または安定化次亜塩素酸組成物を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
また、本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物、または「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜塩素酸組成物を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜塩素酸組成物の市販品としては、例えば、栗田工業株式会社製の「クリバーターIK-110」が挙げられる。
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤としては、逆浸透膜をより劣化させないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を含有するもの)、例えば、臭素とスルファミン酸化合物とアルカリと水との混合物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するもの、例えば、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物と、アルカリと、水との混合物が好ましい。
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤のうち、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する殺菌剤、特に臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する殺菌剤は、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む殺菌剤(クロロスルファミン酸等)と比較すると、酸化力が高く、スライム抑制力、スライム剥離力が著しく高いにもかかわらず、同じく酸化力の高い次亜塩素酸のような著しい膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、殺菌剤としては最適である。
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、次亜塩素酸等の殺菌剤とは異なり、逆浸透膜をほとんど透過しないため、希薄誘引溶液への影響がほとんどない。また、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
逆浸透膜用殺菌剤のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。逆浸透膜用殺菌剤のpHが13.0以下であると逆浸透膜用殺菌剤中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
逆浸透膜用殺菌剤中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。逆浸透膜用殺菌剤中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、希薄誘引溶液の臭素酸イオンの濃度が高くなる場合がある。
<逆浸透膜用殺菌剤の製造方法>
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、臭素系酸化剤または塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
臭素と、スルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する逆浸透膜用殺菌剤の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、逆浸透膜用殺菌剤中の臭素酸イオン濃度が低くなり、希薄誘引溶液中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
臭素の添加率は、逆浸透膜用殺菌剤全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が逆浸透膜用殺菌剤全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[安定化次亜臭素酸組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg/L asCl2)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0~15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
<実施例1>
酢酸セルロース系逆浸透膜(東レ製、CA製RO膜「SC-4201」)の平膜を用いて、バッチ式平膜試験装置にて通水試験を実施した。被処理水として、塩化ナトリウムの100ppm水溶液中に、上記安定化次亜臭素酸組成物を、全塩素濃度5ppmとなるように添加した後、水酸化ナトリウムを加えてpHを8に調整した。その溶液を、窒素により1MPaまで加圧し、透過水を得た。透過水中の全塩素濃度を測定し、殺菌剤の阻止率を算出した。結果を表1に示す。
<比較例1>
使用する殺菌剤として、安定化次亜臭素酸組成物の代わりに次亜塩素酸ナトリウムを、遊離塩素濃度5ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様にして通水試験を実施した。結果を表1に示す。
[結果]
実施例1における酢酸セルロース系逆浸透膜の殺菌剤阻止率は99%以上であり、ほとんど酢酸セルロース系逆浸透膜を透過しないことがわかった。一方、比較例1において、次亜塩素酸は透過水中に約半分がリークした。
<実施例2>
図1の逆浸透膜処理システムを用い、あらかじめ前処理した工業排水について、1段目の酢酸セルロース系逆浸透膜として東洋紡製RO膜「HA5110」、2段目のポリアミド系逆浸透膜として日東電工製RO膜「ES20-D8」を用いて、逆浸透膜処理を実施した。被処理水の導電率は4200μS/cm、TOCは5.8ppmであった。1段目のセルロース系逆浸透膜の回収率を50%、2段目のポリアミド系逆浸透膜の回収率を85%として処理した。1段目の酢酸セルロース系逆浸透膜の被処理水に、上記安定化次亜臭素酸組成物を、セルロース系逆浸透膜の濃縮水で全塩素濃度0.2ppmClとなるように常時添加した。運転日数60日後の、2段目のポリアミド系逆浸透膜の通水差圧、透過水量比、阻止率(導電率基準:EC阻止率)を評価した。結果を表2に示す。
<比較例2>
図5に示すように、1段目の酢酸セルロース系逆浸透膜を用いる第1逆浸透膜処理装置50、2段目のポリアミド系逆浸透膜を用いる第2逆浸透膜処理装置52により処理を行った。殺菌剤として安定化次亜臭素酸組成物の代わりに次亜塩素酸ナトリウムを、1段目の酢酸セルロース系逆浸透膜の濃縮水で遊離塩素濃度0.2ppmClとなるように常時添加し、酢酸セルロース系逆浸透膜の透過水中に、遊離塩素濃度が検出されなくなる(検出限界:0.01ppm)まで、還元剤として亜硫酸ナトリウム水溶液を添加した以外は、実施例2と同様の運転を実施した。結果を表2に示す。
<比較例3>
殺菌剤として安定化次亜臭素酸組成物の代わりに次亜塩素酸ナトリウムを、1段目の酢酸セルロース系逆浸透膜の濃縮水で遊離塩素濃度0.2ppmClとなるように常時添加した以外は、実施例1と同様の運転を実施した(すなわち、還元剤は非添加)。結果を表2に示す。
[結果]
比較例1ではエレメント1本当たりの通水差圧が0.02MPaから0.08MPaまで上昇し、透過水量は運転初期の79%まで低下した。一般的な8インチスパイラル型エレメントの場合、許容されるエレメント1本あたりの通水差圧は0.08~0.1MPaであるため、膜交換または膜洗浄が必要になる状態である。還元剤として亜硫酸ナトリウムの添加により、2段目のポリアミド系逆浸透膜のファウリングが進行した。比較例2では、酢酸セルロース系逆浸透膜をリークした次亜塩素酸を還元剤により還元しなかったため、透過水量比の上昇、EC阻止率が低下した。これらは、酸化剤による膜劣化の症状である。実施例1では、通水差圧の変化、透過水量の変化ともにほとんど起こらなかった。
このように、実施例では、第1の逆浸透膜処理に酢酸セルロース系逆浸透膜を用い、第2逆浸透膜処理にポリアミド系逆浸透膜を用いる逆浸透膜処理において、殺菌剤が酢酸セルロース系逆浸透膜を透過するのを抑制しながらも、逆浸透膜のファウリングの抑制が可能となった。