JP2022016897A - 水回収方法および水回収装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】尿素を含む被処理水からの水回収において、除濁膜での生物等による閉塞を抑制することができ、かつ生物活性炭における閉塞を抑制し、尿素分解菌の生成を大きく抑制することなく、尿素の除去が可能である水回収方法および水回収装置を提供する。【解決手段】尿素を含む被処理水について逆浸透膜処理を行い水回収する水回収方法であって、逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行い、除濁膜処理の前段において殺菌剤を添加する水回収方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、尿素を含む被処理水からの水回収方法および水回収装置に関する。
近年では、水不足を背景として、飲料用や産業用の用途を問わず河川や地下水等からの取水が制限されてきている。半導体産業等の水を多量に使用する業種の工場においては特にその傾向が強く、天然水の代替として下水処理水等を工場給水等に利用する動きが見られる。
下水処理水等の有機物を多く含む水からの水回収方法としては、例えば下水の二次処理水(標準活性汚泥等による生物処理水)を、限外ろ過膜等の除濁膜で除濁処理した後に逆浸透膜(RO膜)に通水して透過水を得る方法等が取られることがある。この方法では、除濁膜の生物等による閉塞を抑制するために、被処理水中に次亜塩素酸を添加する方法が取られることが普通である(特許文献1参照)。
下水処理水等の有機物含有水を水回収するにあたり、RO透過水の水質が重要である。特に、半導体工場の給水として利用する場合はTOCの濃度が重要である。TOC濃度は低いほど好ましく、十分にTOCが低減された水(例えば、TOC10μg/L以下、好ましくは2μg/L以下)であれば、純水の原水としての再利用可能性があり、工場の取水量の削減に大きく貢献できる場合がある。
通常のTOC源となる有機物は前述の除濁膜、逆浸透膜でその大部分が除去される。場合によっては、逆浸透膜の後段にさらにUVやオゾンによる処理等が設けられる場合もある。しかし、下水処理水等の中に含まれる尿素(尿素濃度/5=TOC濃度)は上記のいずれの単位操作での除去率も低いため、回収水中のTOC源として残存し、回収先が制限されてしまうという課題がある。
一方で、活性炭上に尿素分解菌を担持させて生物活性炭とすることによって、尿素を分解することが可能であることが知られている(特許文献2参照)。特許文献2の方法では、生物活性炭の被処理水中に結合塩素剤を注入することによって尿素を分解する菌種を優先菌種として尿素を分解している。被処理水中に次亜塩素酸を注入すると、この次亜塩素酸が生物活性炭に流入するために、尿素分解菌の生成が抑制され、尿素を効率的に除去することが困難であった。被処理水中に結合塩素剤を注入すれば活性炭と接触しても結合塩素が分解されにくいとしているが、活性炭処理水中の残留塩素濃度を0.02~0.1mg/Lに調整して尿素分解菌が死滅しないように調整する必要があり、制御が難しく装置が複雑になる。また、被処理水の水質が変動した場合には、追従することが困難である。活性炭を複数段にして前段の活性炭で次亜塩素酸を除去する方法もあるが、設備が大きくなる。
特開昭55-013103号公報 特許第5604913号公報
本発明の目的は、尿素を含む被処理水からの水回収において、除濁膜での生物等による閉塞を抑制することができ、かつ生物活性炭における閉塞を抑制し、尿素分解菌の生成を大きく抑制することなく、尿素の除去が可能である水回収方法および水回収装置を提供することにある。
本発明は、尿素を含む被処理水について逆浸透膜処理を行い水回収する水回収方法であって、前記逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行い、前記除濁膜処理の前段において殺菌剤を添加する、水回収方法である。
前記水回収方法において、前記殺菌剤が、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であることが好ましい。
前記水回収方法において、前記除濁膜処理で得られる除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02~0.5mg-Cl/Lの範囲となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を添加することが好ましい。
前記水回収方法において、前記被処理水が下水処理水であり、前記逆浸透膜処理の透過水を半導体工場の純水製造の原水として回収することが好ましい。
前記水回収方法における前記逆浸透膜処理の後段において、第2の逆浸透膜処理、UV処理、または、イオン交換処理のうちの少なくとも1つを行うことが好ましい。
本発明は、尿素を含む被処理水について逆浸透膜処理を行い水回収する逆浸透膜処理手段を備える水回収装置であって、前記逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行う除濁膜処理手段および生物活性炭処理手段と、前記除濁膜処理の前段において殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段と、を備える、水回収装置である。
前記水回収装置において、前記殺菌剤が、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であることが好ましい。
前記水回収装置において、前記殺菌剤添加手段は、前記除濁膜処理で得られる除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02~0.5mg-Cl/Lの範囲となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を添加することが好ましい。
前記水回収装置において、前記被処理水が下水処理水であり、前記逆浸透膜処理の透過水を半導体工場の純水製造の原水として回収することが好ましい。
前記水回収装置において、前記逆浸透膜処理手段の後段に、第2の逆浸透膜処理手段、UV処理手段、または、イオン交換処理手段のうちの少なくとも1つを備えることが好ましい。
本発明では、尿素を含む被処理水からの水回収において、除濁膜での生物等による閉塞を抑制することができ、かつ生物活性炭における閉塞を抑制し、尿素分解菌の生成を大きく抑制することなく、尿素の除去が可能である水回収方法および水回収装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る水回収装置の一例を示す概略構成図である。 実施例1,2におけるRO透過水中の尿素濃度(μg/L)を示すグラフである。 実施例1,2における除濁膜の通水差圧(MPa)の推移を示すグラフである。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る水回収装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
図1に示す水回収装置1は、尿素を含む被処理水について逆浸透膜処理を行い水回収する逆浸透膜処理手段として、逆浸透膜処理装置20と、逆浸透膜処理装置20の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行う除濁膜処理手段として除濁膜処理装置12および生物活性炭処理手段として生物活性炭処理装置16と、除濁膜処理の前段において殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段として、殺菌剤添加配管50と、を備える。水回収装置1は、被処理水を貯留する被処理水槽10と、除濁膜処理で得られた除濁膜処理水を貯留する除濁膜処理水槽14と、生物活性炭処理で得られた活性炭処理水を貯留する活性炭処理水槽18と、を備えてもよい。
水回収装置1において、被処理水槽10の被処理水入口には、被処理水配管30が接続されている。被処理水槽10の出口と除濁膜処理装置12の入口とは、ポンプ22を介して被処理水配管32により接続されている。除濁膜処理装置12の二次側の出口と除濁膜処理水槽14の入口とは、除濁膜処理水配管34により接続されている。除濁膜処理水槽14の除濁膜処理水出口と生物活性炭処理装置16の入口とは、ポンプ24を介して除濁膜処理水配管36により接続されている。生物活性炭処理装置16の出口と活性炭処理水槽18の入口とは、活性炭処理水配管38により接続されている。活性炭処理水槽18の出口と逆浸透膜処理装置20の入口とは、ポンプ28を介して活性炭処理水配管40により接続されている。逆浸透膜処理装置20の透過水出口には、透過水配管42が接続され、濃縮水出口には、濃縮水配管44が接続されている。除濁膜処理水槽14の逆洗水出口と除濁膜処理水配管34の途中とは、ポンプ26を介して逆洗水配管46により接続されている。除濁膜処理装置12の一次側の逆洗排水出口には、逆洗排水配管48が接続されている。被処理水槽10の殺菌剤入口には、殺菌剤添加配管50が接続されている。
本実施形態に係る水回収方法および水回収装置1の動作について説明する。
尿素を含む被処理水は、被処理水配管30を通して必要に応じて被処理水槽10へ貯留される。被処理水槽10において、被処理水へ殺菌剤添加配管50を通して殺菌剤が添加される(殺菌剤添加工程)。殺菌剤が添加された被処理水は、ポンプ22により被処理水配管32を通して除濁膜処理装置12へ送液される。除濁膜処理装置12において、逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理が行われ、被処理水中の濁質等が除去される(除濁膜処理工程)。
殺菌剤は除濁膜処理の前段において添加されればよく、被処理水配管30において添加されてもよいし、被処理水配管32において添加されてもよい。
除濁膜処理により得られた除濁膜処理水は、除濁膜処理水配管34を通して必要に応じて除濁膜処理水槽14へ貯留される。除濁膜処理水は、ポンプ24により除濁膜処理水配管36を通して生物活性炭処理装置16へ送液される。生物活性炭処理装置16において、逆浸透膜処理の前処理として生物活性炭処理が行われ、除濁膜処理水中の有機物、尿素等が除去され、有機物、尿素等の量が低減される(生物活性炭処理工程)。
生物活性炭処理により得られた活性炭処理水は、活性炭処理水配管38を通して必要に応じて活性炭処理水槽18へ貯留される。活性炭処理水は、ポンプ28により活性炭処理水配管40を通して逆浸透膜処理装置20へ送液される。逆浸透膜処理装置20において、逆浸透膜処理が行われ、透過水と濃縮水とが得られる(逆浸透膜処理工程)。透過水は、透過水配管42を通して排出され、例えば半導体工場の純水製造の原水として回収される。濃縮水は、濃縮水配管44を通して排出される。
除濁膜の洗浄が必要になった場合には、例えば、除濁膜処理水槽14から除濁膜処理水が逆洗水としてポンプ26により逆洗水配管46、除濁膜処理水配管34を通して除濁膜処理装置12の二次側へ供給され、除濁膜の逆洗が行われる(逆洗工程)。逆洗排水は、除濁膜処理装置12の一次側から逆洗排水配管48を通して排出される。
本実施形態に係る水回収方法および水回収装置1では、下水二次処理水等の尿素を含む被処理水を除濁膜、生物活性炭、逆浸透膜の順で水回収する方法において、除濁膜処理の前段で殺菌剤を添加する。
尿素を含む被処理水からの水回収において、逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行い、除濁膜処理の前段で被処理水中に殺菌剤を添加することによって、除濁膜での生物等による閉塞を抑制することができ、かつ生物活性炭における閉塞を抑制し、尿素分解菌の生成を大きく抑制することなく、尿素の除去が可能であることがわかった。本方法によれば、RO透過水中の尿素濃度を低減することができ、回収水を純水原水に使用することも可能となり、工場の取水量の削減に大きく貢献することができる。
殺菌剤としては、次亜塩素酸、クロロスルファミン酸(結合塩素剤)、次亜臭素酸、安定化次亜臭素酸組成物等のハロゲン系殺菌剤等が挙げられ、生物活性炭における尿素分解菌の生成、繁殖を抑制しにくい等の点から、安定化次亜臭素酸組成物が好ましい。
安定化次亜臭素酸組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含むものである。「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよい。
すなわち、本実施形態に係る水回収方法では、除濁膜処理の前段において尿素を含む被処理水中に、例えば「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を添加する。これにより、被処理水中で、安定化次亜臭素酸組成物が生成すると考えられる。
また、本実施形態に係る水回収方法では、除濁膜処理の前段において尿素を含む被処理水中に、例えば「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を添加する。
具体的には本実施形態に係る水回収方法では、除濁膜処理の前段において尿素を含む被処理水中に、例えば、「臭素」、「塩化臭素」、「次亜臭素酸」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を添加する。
また、本実施形態に係る水回収方法では、除濁膜処理の前段において尿素を含む被処理水中に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「次亜臭素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を添加する。
安定化次亜臭素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤等の殺菌剤と同等以上の殺菌効果を発揮するにも関わらず、塩素系酸化剤等の殺菌剤と比較すると、尿素分解菌の生成を大きく抑制することなく、除濁膜、逆浸透膜への劣化影響も低いため、除濁膜、逆浸透膜でのファウリングを抑制しながら、除濁膜、逆浸透膜の酸化劣化を抑制できる。このため、本実施形態に係る水回収方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、除濁膜処理、生物活性炭処理、逆浸透膜処理の順で処理を行う水回収で用いる殺菌剤としては好適である。
本実施形態に係る水回収方法のうち、「臭素系酸化剤」が、臭素である場合、塩素系酸化剤が存在しないため、除濁膜、逆浸透膜への劣化影響が著しく低い。
本実施形態に係る水回収方法では、除濁膜処理の前段において尿素を含む被処理水中に、例えば、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入すればよい。「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよい。
また、除濁膜処理の前段において尿素を含む被処理水中に、例えば、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を薬注ポンプ等により注入してもよい。
安定化次亜臭素酸組成物において、「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、除濁膜、逆浸透膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」の酸化剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」の酸化剤および「塩化臭素とスルファミン酸」の酸化剤等に比べて、臭素酸の副生が少なく、酸化剤としてはより好ましい。
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭素化合物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
NSOH (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。)
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N-フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6~10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
除濁膜での生物の繁殖を十分に抑制するためには、除濁膜処理で得られる除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02~0.5mg/Lの範囲となるように安定化次亜臭素酸組成物を添加することが好ましく、0.05~0.5mg-Cl/Lの範囲となるように安定化次亜臭素酸組成物を添加することがより好ましく、0.2~0.3mg-Cl/Lの範囲となるように安定化次亜臭素酸組成物を添加することがさらに好ましい。除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02mg/L未満であると、除濁膜での生物等による閉塞を抑制できない場合があり、0.5mg/Lを超えると、生物活性炭における尿素分解菌の生成、繁殖が抑制される場合がある。
また、副次的な効果として、被処理水中にアンモニアが含まれている場合には、通常はアンモニアに次亜塩素酸が消費されて除濁膜の閉塞抑制を十分に行うことができない場合があるが、安定化次亜臭素酸組成物を用いると、被処理水中にアンモニアが含まれている場合でも除濁膜の閉塞を抑制することができるという効果が得られる。また、除濁膜処理水中の残留塩素濃度の調整も容易である。
下水処理場の水温は比較的高く維持されており、通常は被処理水の加温を行わなくてもよいが、冬季に水温が低下すると尿素分解菌の活性が低下するため、被処理水の加温によって20℃以上、好ましくは25℃以上を保つように調整するとよりよい。
除濁膜処理の前段において、尿素を含む被処理水中に、安定化次亜臭素酸組成物にさらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
本実施形態に係る水回収方法は、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜に好適に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる場合がある。しかしながら、酸化剤として安定化次亜臭素酸組成物を用いると、ポリアミド高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。
被処理水としては、尿素を含む水であればよく、特に制限はないが、例えば、下水処理水、地下水、河川水等が挙げられる。逆浸透膜処理の透過水を、例えば、半導体工場の純水製造の原水、設備用水、スクラバー用水として回収することができる。被処理水が下水処理水であり、逆浸透膜処理の透過水を半導体工場の純水製造の原水として回収することが好ましい。
被処理水中の尿素の含有量は、例えば、10~100μg/Lの範囲であり、好ましくは10~50mg/Lの範囲である。
被処理水のTOCは、例えば、1~100mg/Lの範囲であり、好ましくは1~20mg/Lの範囲である。
被処理水はさらにアンモニアを含んでもよく、被処理水中のアンモニアの含有量は、例えば、1~100mg/Lの範囲であり、好ましくは1~50mg/Lの範囲である。殺菌剤として次亜塩素酸や結合塩素剤を用いると、被処理水がアンモニアを含む場合に次亜塩素酸や結合塩素剤が分解されてしまう場合があるが、安定化次亜臭素酸組成物は、被処理水がアンモニアを含んでいてもほとんど分解されない。
本実施形態に係る水回収方法および水回収装置によって、処理水(RO透過水)中の尿素の含有量を、例えば、50μg/L以下、好ましくは10μg/L以下とすることができる。
本実施形態に係る水回収方法および水回収装置によって、処理水(RO透過水)中のTOCを、例えば、10μg/L以下、好ましくは2μg/L以下とすることができる。
被処理水のpHは、例えば、2~12の範囲であり、4~11の範囲であることが好ましい。被処理水のpHの下限は、5.5以上であることが好ましく、6.5以上であることがより好ましく、7.0以上であることがさらに好ましい。被処理水のpHの上限は、9.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましい。被処理水のpHが5.5以上である場合に、本実施形態に係る水回収方法を好適に適用することができる。
除濁膜処理で用いられる除濁膜は、精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)である。限外ろ過膜の公称孔径は、0.01μm以上、0.1μm未満であり、精密ろ過膜の孔径は、0.1μm以上、10μm以下である。分画分子量で表すと、限外ろ過膜の分画分子量は、1,000以上、1,000,000未満である。除濁膜は、平膜タイプでも中空糸タイプであってもよい。
生物活性炭処理で用いられる生物活性炭は、担体である活性炭上に尿素分解菌を担持させたものである。活性炭としては、例えば、粒状活性炭、粉状活性炭等が挙げられ、経済性、操作性等の点から粒状活性炭を用いることが好ましい。例えば、粒状活性炭に尿素を含む水を接触させることによって粒状活性炭上に尿素分解菌を担持させて粒状生物活性炭として用いればよい。生物活性炭処理工程では、例えば、粒状生物活性炭が充填された充填塔に上向流または下向流で除濁膜処理水を通水させればよい。
水道設備等に主に使われる粒状活性炭は、有効径(10%通過径)が0.3~1.3mm、均等係数1.2~2.0である活性炭である。粒状活性炭としては、例えば、オルビーズQHG(オルガノ株式会社製)等を用いることができる。
逆浸透膜処理の後段において、第2の逆浸透膜処理装置、UV処理装置、または、イオン交換処理装置のうち少なくとも1つを備え、逆浸透膜処理の透過水について第2の逆浸透膜処理、UV処理、または、イオン交換処理のうち少なくとも1つの処理を行ってもよい。
本実施形態に係る水回収方法において、被処理水のpH5.5以上でスケールが発生する場合には、スケール抑制のために分散剤を上記安定化次亜臭素酸組成物と併用してもよい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン酸等が挙げられる。分散剤の被処理水への添加量は、例えば、RO濃縮水中の濃度として0.1~1,000mg/Lの範囲である。
また、分散剤を使用せずにスケールの発生を抑制するためには、例えば、RO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度以下に、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、逆浸透膜処理の回収率、水温、pH等の運転条件を調整することが挙げられる。
<安定化次亜臭素酸組成物>
本実施形態に係る水回収方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
また、本実施形態に係る水回収方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物としては、除濁膜や、ポリアミド系等の逆浸透膜をより劣化させず、RO透過水への有効ハロゲンのリーク量がより少ないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を含有するもの)、例えば、臭素とスルファミン酸化合物とアルカリと水との混合物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するもの、例えば、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物と、アルカリと、水との混合物が好ましい。
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物、特に臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物は、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤と比較すると、ポリアミド系等の逆浸透膜の殺菌効果を有しながらも、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤のような著しい膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、除濁膜処理、生物活性炭処理、ポリアミド系高分子膜等を用いる逆浸透膜処理の順で処理を行う水回収で用いる殺菌剤としては最適である。
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物は、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤等とは異なり、逆浸透膜をほとんど透過しないため、処理水水質への影響がほとんどない。また、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
安定化次亜臭素酸組成物のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。安定化次亜臭素酸組成物のpHが13.0以下であると安定化次亜臭素酸組成物中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、RO透過水等の臭素酸イオンの濃度が高くなる場合がある。
<安定化次亜臭素酸組成物の製造方法>
本実施形態に係る水回収方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなり、RO透過水等中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
臭素の添加率は、安定化次亜臭素酸組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が安定化次亜臭素酸組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[安定化次亜臭素酸組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg-Cl/L)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0~15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
<実施例1>
図1に示す水回収装置を用い、被処理水として下水二次処理水(平均尿素濃度:60μg/L、TOC:7mg/L、アンモニア濃度:35mg/L)を用いて水回収を行った。この被処理水に対し、除濁膜処理の前段である被処理水槽において殺菌剤として上記方法で調製した安定化次亜臭素酸組成物を1~8mg/L添加し、除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02~0.50mg-Cl/Lとなるようにしながら通水した。生物活性炭は、生物担体としての粒状活性炭「オルビーズQHG、オルガノ株式会社製」を50Lボンベに充填したものを用いた。通水速度SVは5とした。
各条件で約2週間の通水後、逆浸透膜処理の透過水(RO透過水)中の尿素濃度を分析し、結果を図2に示した。
なお、尿素濃度は、LC-MS(ThermoFisherScientific社製)を用いて測定した。TOCは、TOC分析計(島津製作所製、燃焼式)を用いて測定した。アンモニア濃度は、イオンクロマトグラフ(ThermoFisherScientific社製)を用いて測定した。
いずれの添加量においても、尿素濃度を十分低減することができていた。また、除濁膜の通水差圧の推移を図3に示す。安定化次亜臭素酸組成物を除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.05mg-Cl/L以上となるように添加した場合は、通水差圧がほとんど上昇しなかった。安定化次亜臭素酸組成物を除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02mg-Cl/Lとなるように添加した場合は、45日目までは通水差圧がほとんど上昇せず、生物等による閉塞を抑制することができていたが、46日目以降は、通水差圧が上昇した。
<実施例2>
殺菌剤として次亜塩素酸を添加し、実施例1と同様にして通水を行った。逆浸透膜処理の透過水中の尿素濃度の測定結果を図2に示す。
除濁膜処理水中の残留塩素濃度が高くなると、生物活性炭における生物の繁殖が阻害されるため、実施例1に比べると尿素濃度が高くなっているが、残留塩素濃度0.05mg/L以下のときは尿素濃度を低減できていた。また、残留塩素濃度を0.02mg/Lとすると、除濁膜での通水差圧が上昇する傾向は実施例1と同様であった。
上記の通り、実施例の水回収方法によれば、尿素を効率的に分解しつつ、除濁膜での差圧上昇を抑制して運転することが可能であることが確認された。
このように、実施例の水回収方法によれば、尿素を含む被処理水からの水回収において、除濁膜での生物等による閉塞を抑制することができ、かつ生物活性炭における閉塞を抑制し、尿素分解菌の生成を大きく抑制することなく、尿素の除去が可能であった。これにより、逆浸透膜処理の透過水を純水の原水として再利用することも可能である。
1 水回収装置、10 被処理水槽、12 除濁膜処理装置、14 除濁膜処理水槽、16 生物活性炭処理装置、18 活性炭処理水槽、20 逆浸透膜処理装置、22,24,26,28 ポンプ、30,32 被処理水配管、34,36 除濁膜処理水配管、38,40 活性炭処理水配管、42 透過水配管、44 濃縮水配管、46 逆洗水配管、48 逆洗排水配管、50 殺菌剤添加配管。

Claims (10)

  1. 尿素を含む被処理水について逆浸透膜処理を行い水回収する水回収方法であって、
    前記逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行い、前記除濁膜処理の前段において殺菌剤を添加することを特徴とする水回収方法。
  2. 請求項1に記載の水回収方法であって、
    前記殺菌剤が、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であることを特徴とする水回収方法。
  3. 請求項2に記載の水回収方法であって、
    前記除濁膜処理で得られる除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02~0.5mg-Cl/Lの範囲となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を添加することを特徴とする水回収方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の水回収方法であって、
    前記被処理水が下水処理水であり、前記逆浸透膜処理の透過水を半導体工場の純水製造の原水として回収することを特徴とする水回収方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の水回収方法であって、
    前記逆浸透膜処理の後段において、第2の逆浸透膜処理、UV処理、または、イオン交換処理のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする水回収方法。
  6. 尿素を含む被処理水について逆浸透膜処理を行い水回収する逆浸透膜処理手段を備える水回収装置であって、
    前記逆浸透膜処理の前処理として除濁膜処理および生物活性炭処理を順に行う除濁膜処理手段および生物活性炭処理手段と、
    前記除濁膜処理の前段において殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段と、
    を備えることを特徴とする水回収装置。
  7. 請求項6に記載の水回収装置であって、
    前記殺菌剤が、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物であることを特徴とする水回収装置。
  8. 請求項7に記載の水回収装置であって、
    前記殺菌剤添加手段は、前記除濁膜処理で得られる除濁膜処理水中の残留塩素濃度が0.02~0.5mg-Cl/Lの範囲となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を添加することを特徴とする水回収装置。
  9. 請求項6~8のいずれか1項に記載の水回収装置であって、
    前記被処理水が下水処理水であり、前記逆浸透膜処理の透過水を半導体工場の純水製造の原水として回収することを特徴とする水回収装置。
  10. 請求項6~9のいずれか1項に記載の水回収装置であって、
    前記逆浸透膜処理手段の後段に、第2の逆浸透膜処理手段、UV処理手段、または、イオン交換処理手段のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする水回収装置。
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