(A)第1の実施形態
以下では、本発明の現金処理装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
第1の実施形態では、例えば、金融機関等に設けられている自動預け入れ払い機(ATM:Automatic Teller Machine)に本発明を適用する場合を例示する。
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)取引システムの全体構成
図2は、第1の実施形態に係る取引システムの全体構成を示す構成図である。図2において、この実施形態に係る取引システム5は、通信回線3に接続可能な、複数の自動取引装置(ATM)1−1〜1−N、金融機関ホストサーバ2を有する。
通信回線3は、ATM1−n(1≦n≦N)と金融機関ホストサーバ2との間で情報を授受する通信回線である。通信回線3のプロトコルは、ネットワークセキュリティが確保されている通信回線であり、例えば金融機関毎の独自の専用プロトコルや、TCP/IP(インターネットプロトコル)等を適用することができる。
ATM1−nは、例えば金融機関、空港、駅、コンビニエンスストア等に設置されているものであり、顧客操作により種々の取引処理を行うものである。ATM1−nは、顧客操作により入力された取引種別や取引内容情報を含む取引情報を金融機関ホストサーバ2に送信したり、又金融機関ホストサーバ2により実行される取引実行情報を受信したりするものである。
ATM1−nが取り扱うことができる取引種別は、例えば、入金取引、出金取引等がある。入金取引は、顧客から受け取った現金を入金する取引であり、例えば、普通預金口座に現金を預け入れる預け入れ取引や、定期預金口座への現金を預け入れる定期預金入金取引や、所定の口座に現金を振り込む振込取引等がある。出金取引は、顧客に対して現金を支払う取引であり、例えば、口座から現金を引き出す引き出し取引等がある。
金融機関ホストサーバ2は、金融機関の基幹システムのホストサーバである。金融機関ホストサーバ2は、通信回線3を介してATM1−nから受信した取引情報に基づいて取引を実行したり、完了した取引情報を管理したりするものである。
(A−1−2)ATMの詳細な構成
図3は、この実施形態に係るATM1の外観構成を示す外観構成図である。図3において、この実施形態に係るATM1は、操作表示部11、紙幣入出金口12、硬貨入出金口13、通帳入出口14、カード入出口15、レシート排出口16を有する。
操作表示部11は、例えば、取引種類の選択メニュー画面、各取引種類の操作画面、取引内容の確認画面等を表示したり、顧客が入力した入力情報を取り込んだりするものである。操作表示部12は、例えば、タッチパネル方式の操作表示部を適用することができる。なお、操作表示部12は、操作部と表示部とが一体となったタッチパネル方式のものに限らず、操作部と表示部とがそれぞれ物理的に別の構成のものであってもよい。
なお、図3では、顧客が操作を行うための顧客用の操作表示部11を示しているが、ATM1は、オペレータが操作するためのオペレータ用の操作表示部11を備えるようにしても良い。例えば、オペレータ用の操作表示部11は、ATM1の背面などに設けられており、顧客側から見えない側に設けられるようにしても良い。
紙幣入出金口12は、顧客が紙幣を挿入したり又は紙幣を排出したりするものである。
硬貨入出金口13は、顧客が硬貨を投入したり又は硬貨を排出したりするものである。
通帳入出口14は、顧客が通帳を挿入したり又は通帳を排出したりするものである。
カード入出口15は、顧客がキャッシュカードを挿入したり又はキャッシュカードを排出したりするものである。
レシート排出口16は、取引内容を紙などの媒体に印字したレシートを排出する部分である。
図1は、第1の実施形態に係るATM1−nの内部構成を示す内部構成図である。ATM1−nは、例えば制御装置や通信装置や機構部等を有して構成されるものであり、図1は、ATM1−nの内部構成を機能的に示している。
図1において、ATM1は、制御部21、操作表示部22、通信制御部23、カードリーダユニット24、レシートプリンタユニット25、紙幣取扱部26、通信部27を有する。
制御部21は、ATM1の全体的な機能を司る処理部又は装置である。制御部21は、例えば、CPU、メインメモリ、外部記憶装置(HDD)、外部システム接続インタフェース部等を備える。外部記憶装置には、ATM1の取引処理を行うためのソフトウェアや、保守のためのソフトウェアが格納されている。制御部21は、例えば、CPUが外部記憶装置に記憶される処理プログラムを実行することにより、ATM1の機能を実現するものである。なお、処理プログラムは、インストールにより構築することができ、その場合でも機能的には図1に示すことができる。
図1では、制御部21が実行する主な機能部を示している。図1に示すように、制御部21は、取引処理部211、保守制御部212、記憶部213を有する。
取引処理部211は、ATM1における入金取引や出金取引などを行うものである。出金取引は、顧客に対して現金を支払う取引であり、例えば、引き出し取引等がある。入金取引は、顧客から受け取った現金を入金する取引であり、例えば、預け入れ取引や振り込み取引等がある。
取引処理部211は、操作表示部11を介して、顧客が希望する取引種別の入力情報を受け取ると、その取引種別に応じた手順で取引処理を実行し、通信部27を介して、上位の金融機関ホストサーバ2との間で取引情報を授受して取引を完了させる。また、取引処理211は、完了した各種取引に関する取引情報を記憶部213に記憶するものである。
保守制御部212は、各種取引においてATM1内で搬送される紙幣又は硬貨の状態を管理し、例えば紙幣又は硬貨の詰まり等の障害が発生した場合に、障害を取り除くための保守画面を表示するものである。
ここで、ATM1内で生じ得る障害は、例えば、取引の際に、ATM1内で生じ得る紙幣又は硬貨の詰まり等に代表される搬送機構における障害などとすることができる。
また、この実施形態では、保守制御部212が操作表示部11に保守画面を表示する場合を例示するが、保守制御部212はオペレータ専用の操作表示部に表示するようにしても良い。これにより、取引画面を表示している操作表示部11とは異なる、オペレータ専用の操作表示部に保守画面を表示することができる。
保守制御部212は、搬送制御部31、保守誘導画面表示制御部32、表示制御部34を有する。
搬送制御部31は、取引(例えば、入金取引、出金取引)種別に応じて、ATM1内の紙幣の搬送制御を紙幣取扱部26に指示するものである。取引種別に応じた紙幣の搬送手順については後述する。
保守誘導画面表示制御部32は、障害発生時に、オペレータが障害を取り除くための保守誘導画面を表示するものである。ここで、保守誘導画面表示制御部32は、障害発生の際に、前回の取引状況を把握し、今回発生した障害が今回の取引内で生じたものか又は前回の取引内で生じたものかに応じて、異なる保守誘導画面を表示する。
つまり、保守誘導画面表示制御部32は、今回の取引手順に基づいて、1つの取引(今回の取引)において紙幣詰まり等のジャム(障害)が発生したのか、若しくは、前回の取引で紙幣詰まり等のジャムが発生しており、ATM1内の残留紙幣が除去されないまま今回の取引が行なわれ、前回の取引で生じた障害の影響を受けているのかを判断する。そして、今回の取引手順に基づく障害発生状況に応じた保守画面を、保守誘導画面表示制御部32は表示するようにする。
表示制御部34は、取引種別に応じた顧客用の操作画面や、取引進行に応じた取引確認画面や、障害が発生した際の保守画面等を操作表示部11に表示するものである。
記憶部213は、制御部21が実行する処理プログラム、操作表示部11に表示させる画面情報、取引処理部211が行なった取引に関する情報、各紙幣カセット部56−1〜56−4(図4参照)の設定情報等を記憶するものである。また、記憶部213は、取引処理部211による取引情報のログ情報(履歴情報)を記憶しても良く、1つの取引処理においてジャムが発生したときにはそのジャムに関する障害情報も取引情報の一部として記憶するようにしても良い。なお、記憶部231に記憶される取引情報は、例えば、取引種別、顧客氏名や口座番号等の顧客情報、取引金額、取引日時情報等が含まれる。
操作表示制御部22は、制御部1の制御の下、操作表示部1に表示させる表示画面の表示動作や入力動作等を制御するものである。つまり、操作表示制御部2は、制御部1からの画面情報に基づいて、操作表示部11に画面表示させたり、又操作表示部11から入力された情報を制御部21に与えたりするものである。
通帳制御部23は、制御部21の制御の下、通帳入出口14から通帳を取り込んだり又は排出したりするものである。また、通帳制御部23は、通帳入出口14から挿入された通帳の格納部(例えば磁気格納部等)に格納されている通帳情報を読み取り、その通帳情報を制御部21に与える。
カードリーダユニット24は、制御部21の制御の下、カード入出口15からキャッシュカードを取り込んだり又は排出したりするものである。また、カードリーダユニット24は、カード入出口15から挿入されたキャッシュカードの格納部(例えば、磁気格納部やICチップ等)に格納されているカード情報を読み取り、そのカード情報を制御部21に与える。
レシートプリンタユニット25は、制御部21の制御の下、ATM1が実行した取引内容を媒体(例えば紙媒体)に印字するものである。
紙幣取扱部26は、ATM1内で搬送される紙幣に関する処理を行う部分である。紙幣取扱部26は、図1に示すように、搬送機構制御部161、搬送機構162、鑑別部263を含むものである。
搬送機構制御部261は、制御部21の制御の下、紙幣を搬送する搬送機構262の搬送動作を制御するものである。
搬送機構262は、搬送機構制御部261の制御を受けて、紙幣を搬送するものである。搬送機構262は、例えば、ローラ、ローラ駆動機構(例えばモータ等)、ソレノイドなどを有して構成される。
鑑別部263は、制御部21の制御の下、入金に係る紙幣又は出金に係る紙幣を1枚ずつ取り込み、紙幣の通貨種別判定や、金種判定や、真偽判定(紙幣が正常な紙幣であるか又は偽造券であるか)、正損判定、計数処理等を行うものである。鑑別部263による判別方法は、既存の判別方法を広く適用することができる。
通貨種別の判定方法は、例えば、イメージセンサや光センサや磁気センサ等により、紙幣の大きさ(寸法)や紙幣の図柄及び特徴情報や紙幣の厚さ等を感知し、これら感知情報と予め設定された通貨種別情報とを比較することにより判定する方法を用いることができる。
紙幣の真偽判定の方法は、例えば、真券と判断するための検査項目や偽造券と判断するための検査項目に基づいて、鑑別部263が通過する紙幣の真偽を判定する方法を用いることができる。偽造券と判断する方法の具体的な例は、例えば、偽造券を特定する記番号の一覧情報を鑑別部263が保持しており、鑑別部263が読み取った紙幣に記番号が偽造券を特定する記番号の一覧情報に含まれているものである場合には、当該紙幣を偽造券と判断する方法や、また例えば、入金又は出金される紙幣の記番号が連続して同じ番号である場合に、当該紙幣を偽造券と判断する方法等を適用することができる。
紙幣状態の正損判定の方法は、従来のATM等の紙幣認識部で利用されている技術を利用することができる。例えば、鑑別部263は、イメージセンサにより撮像された紙幣の画像に基づいて、汚損や落書きや破損等の有無を判定したり、汚損や落書きや破損等の位置を特定したりする方法を適用することができる。具体的には、例えば紙幣に汚れがあった場合、紙幣全体の範囲又は紙幣の特定箇所の範囲において汚損が占める割合や汚損の程度(例えば明度等)を鑑別部263は評価する。例えば、鑑別部263は、検査項目に設定されている1又は複数の判別レベル値(例えば、汚損レベル値等の閾値)とセンシングデータに基づく評価レベル値とを比較して汚損券又は正券を判別する。また例えば、鑑別部263は、イメージセンサにより撮像された紙幣の画像に基づいて、搬送される紙幣の走行状態(すなわち、撮像画面上で搬送方向に垂直な線に対する紙幣端部の傾き状態)が検査項目で設定されている判別レベル値を超えて傾いているときには、紙幣がスキューしていると判定する。また、鑑別部263は、紙幣の厚さに関するセンシングデータが判別レベル値を超えているときには複数枚の紙幣が重なって搬送されていると判定する。また、鑑別部263は、イメージセンサにより撮像された紙幣の画像に基づいて、紙幣のサイズが判別レベル値を超えているときには複数枚の紙幣が重なって搬送されていると判定したりする。
図4は、この実施形態に係るATM1内部における搬送路を説明する説明図である。
図4において、ATM1は、鑑別部263、紙幣入出金口12、媒体収納部としての複数個(図4では4個)の紙幣カセット部56−1〜56−4、搬送路57、一時保留部58、リジェクトカセット部59、センサ61〜70を有する。
ここで、入金取引の際、出金取引の際の紙幣の搬送経路を説明する。
入金取引の際、紙幣入出金部12に投入された紙幣は、1枚ずつ鑑別部263に搬送されて鑑別処理等が行なわれる。鑑別部263を通過した紙幣は一時保留部58に搬送されて一時的に保管される。全ての紙幣が一時保留部58に搬送され、顧客により投入金額が確認されると入金取引が完了する。入金取引が完了した後、一時保留部58に保管されている紙幣は1枚ずつ鑑別部263に搬送される。鑑別部263により金種が判断されると、その金種に対応する金種毎の紙幣カセット部56−1〜56−4に紙幣は搬送される。
出金取引の際、入力された出金情報に基づいて、出金すべき紙幣を、対応する金種の紙幣カセット部56−1〜56−4から、指定された枚数の紙幣が1枚ずつ繰り出される。繰り出された紙幣は鑑別部263に搬送される。鑑別部263は鑑別処理等を行い、紙幣は一時保留部58に保管される。出金すべき全ての金種の紙幣が指定された枚数だけ繰り出されると、一時保留部58に保管されている紙幣は入出金部51に搬送される。
一時保留部58は、紙幣を一時的に保管するものである。一時保留部58は、上述したように、入金取引の際又は出金取引の際、紙幣を一時的に保管する。
また、一時保留部58は、紙幣カセット部56−1〜56−4の交換又は紙幣カセット部56−1〜56−4に紙幣の装填等がなされたときに、交換又は装填された紙幣カセット部56−1〜56−4から繰り出されて鑑別部263を通過した紙幣を一時的保管するようにしても良い。なお、一時的に保管された紙幣は、鑑別部263により金種判定されて各紙幣カセット部56−1〜56−4に搬送される。
紙幣カセット部56−1〜56−4はそれぞれ、入金に係る紙幣や出金に係る紙幣を収納する媒体収納部である。紙幣カセット部56−1〜56−4は、入金専用、出金専用、還流型リサイクル機能を有する紙幣カセット部のいずれであっても良い。なお、この実施形態では、全ての紙幣カセット部56−1〜56−4が還流型リサイクル機能を有する紙幣カセット部とする。この実施形態では、紙幣カセット部56−1〜56−4が4台の場合を例示するが、紙幣カセット部の数は特に限定されるものではない。また、紙幣カセット部56−1〜56−4は、それぞれ予め用途や収納する紙幣の金種が決められている。
リジェクトカセット部59は、鑑別部263によりリジェクト判定(異常判定)された紙幣を格納するものである。また、紙幣カセット部56−1〜56−4に設定されている金種以外の金種が入金された場合に、その金種の紙幣を格納する。
搬送路57は、紙幣入出金口12、鑑別部263、一時保留部58、紙幣カセット部56−1〜56−4、リジェクトカセット部59の間で紙幣を相互に搬送する搬送経路である。搬送路57の搬送方向や搬送先は、搬送機構262の動作により決定される。
センサ61〜70は、搬送路57上に配設されており、通過する紙幣枚数を検知して通過する紙幣の枚数を計数するものである。センサ61〜69により検知された紙幣枚数は、搬送路57での紙幣の計数情報として制御部21に通知される。センサ61〜69は、例えば光学センサなどを用いることができる。
例えば、センサ61は、紙幣入出金口61から1枚ずつ繰り出される紙幣を検知して、投入された紙幣枚数を計数する。センサ62は、鑑別部263を通過した後、一時保留部58側又は紙幣入出金口12側に搬送される紙幣枚数を計数する。センサ64は、鑑別部263を通過した後、リジェクトカセット部64に搬送される紙幣枚数を計数する。センサ63は、鑑別部263を通過して、一時保留部58に搬送される紙幣枚数を計数する。センサ70は、鑑別部263を通過して、顧客に返却するために、紙幣入出金口12に搬送される紙幣枚数を計数する。なお、センサ65は、鑑別部263と、各紙幣カセット部56−1〜56−4との間で搬送される紙幣枚数を計数するものである。さらに、センサ66〜69のそれぞれは、各紙幣カセット部56−1〜56−4への入金又は出金される紙幣枚数を計数するものである。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、この実施形態に係るATM1における処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下では、ATM1における取引処理の一例を示す。ここでは、取引処理の一例としてATM1が入金取引を行う場合を例示する。
図5は、実施形態に係るATM1における入金取引処理の動作を示すフローチャートである。
まず、顧客が入金取引を行うため、ATM1の操作表示部11に表示される取引メニュー画面上を通じて顧客により入金取引の選択ボタンが選択され(S101)、顧客によりカード(例えばキャッシュカード等)がカード入出口15に挿入される(S102)。
顧客により入金に係る紙幣が紙幣入出金口12に投入されると(S103)、紙幣入出金口12に投入された紙幣は1枚ずつ分離され、紙幣が鑑別部263に搬送される(図4参照)。
鑑別部263は、搬送路57を介して搬送されてきた紙幣の鑑別処理を行い、紙幣の金種枚数を計数する(S104)。鑑別部263は、紙幣の金種、真偽判定、正損判定、走行状態を鑑別する。
このとき、鑑別部263は、紙幣の金種、枚数、真偽判定、正損判定、走行状態等が鑑別される。鑑別部263によりリジェクト判定された場合、処理はS111に移行し、リジェクト判定でない場合(つまり正常判定の場合)処理はS106に移行する。
S105において、鑑別部263により正常判定された紙幣は、搬送路57を介して一時保留部58に搬送されて一時的に格納される(S106)。紙幣入出金口12に投入された全ての紙幣が鑑別部263に鑑別される。
ここで、紙幣入出金口12に投入された紙幣の入金計数後、入金に係る紙幣を追加的に入金できるようにしても良い。すなわち、1回の入金取引の中で、入金に係る紙幣の投入を許容することができる。このことを追加入金という。例えば、操作表示部11の表示画面上で、追加入金があるか否かを顧客と問い合わせることで実現できる。
そして、顧客操作により追加入金がある場合(S107)、処理はS112に移行し、追加入金がない場合、処理はS108に移行する。
制御部21の取引処理部211は、入金された金額を含む入金確認画面を操作表示部12に表示し、顧客に入金金額の確認を求める。そして、顧客により入金金額が確認されると(S108)、制御部21の取引処理部211は入金取引を終了して(S109)、挿入されたカードをカード入出口15に排出する(S110)。
入金取引の完了後、制御部21は、一時保留部58に一時的に格納されている全ての紙幣を鑑別部263に搬送させる。そして、鑑別部263により紙幣の金種、枚数が判断されて、判別された金種に基づいて、紙幣は対応する紙幣カセット部56−1〜56−4に搬送されて収納される(S110)。
一方、S105において、鑑別部263によりリジェクト判定されると、紙幣は紙幣入出金口12に返却される。このとき、紙幣入出金口12に返却されたリジェクト紙幣が顧客により抜き取られ(S111)、リジェクト紙幣又は顧客が有する別の紙幣が再投入される(S112)。
このとき、紙幣入出金口12には、紙幣入出金口12内の紙幣を検知するセンサがあり、このセンサによる検知により、紙幣入出金口12内の紙幣の存在が検知される。また、S107において、追加入金がなされる場合も同様に、紙幣入出金口12に追加入金に係る紙幣が投入される。
そして、再度投入された紙幣は、搬送路57を介して鑑別部263に搬送されて、再度入金計数が実行される(S113)。その後の処理は、S105に移行してS105以降の処理が実行される。
ここで、鑑別部263における入金計数の際の保守画面表示制御処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図6は、実施形態に係る鑑別部263による入金計数の際の保守画面表示制御処理を示すフローチャートである。
図6において、鑑別部263に紙幣が搬送されると、鑑別部263は紙幣の鑑別処理を行い金種枚数の計数を行う。
鑑別部263による入金計数の際に、紙幣詰まり等のジャムが発生しない場合には(S201)、処理は終了する。
一方、入金計数の際に、紙幣詰まり等のジャムが発生した場合、鑑別部263は、その入金計数が初回の入金計数であるか又は第2回目以降の入金計数であるかを判断する(S202)。
ここで、初回の入金計数とは、同一の1回の取引(この場合、入金取引)における最初の入金計数をいい、第2回目以降の入金計数とは、同一の1回の取引において行われる第2回目以降の入金計数をいう。
このように、初回の入金計数であるか又は第2回目以降の入金計数であるかを判断する理由は、今回生じたジャム(紙幣詰まり)が、今回の取引中で生じたものか、又は、今回の取引よりも前に実行された取引で生じたものかを判断するためである。
つまり、初回の入金計数でジャムが発生した場合には、今回の取引よりも前の取引で紙幣詰まりが生じた疑いも考えられる。これに対して、第2回目以降の入金計数でジャムが発生した場合には、初回の入金計数ではジャムが発生していないことから、今回の取引で紙幣詰まりが生じた疑いが強くなる。
このように紙幣詰まりのジャムの発生タイミングが、今回の取引の場合と、又今回よりも前の取引の場合とで、オペレータの顧客への応対が異なることになり、更には保守の手順も異なる。
具体的には、ジャムが発生したタイミングが初回の入金計数の場合、制御部21の保守誘導画面表示制御部32は、図7に例示する保守誘導画面を操作表示部11(若しくは、オペレータ専用の操作表示部)に表示する(S203)。
また、ジャムが発生したタイミングが第2回目以降の入金計数の場合、制御部21の保守誘導画面表示制御部32は、図8に例示する保守誘導画面を操作表示部11(若しくは、オペレータ専用の操作表示部)に表示する(S204)。
図7は、実施形態に係る初回の入金計数でジャムが発生したときの保守誘導画面例を説明する画面図である。図8は、実施形態に係る第2回目以降の入金計数でジャムが発生したときの保守誘導画面例を説明する画面図である。
ここで、保守誘導画面表示制御部32は、例えば、図7及び図8に例示する画面をホップアップ表示で表示するようにしても良い。これにより、オペレータに対して注意喚起させることができる。また、保守誘導画面表示制御部32は、図7及び図8に例示する画面を表示する際に、オペレータに注意喚起させるための音出力をさせるようにしても良い。
図7に例示する画面500は、例えば「装置内に残留した紙幣を除去して下さい。前取引の状況とお客様の預け入れ金額を確認し、除去した紙幣を返却してください。」等のオペレータへの保守誘導ガイダンスを含むものである。
図8に例示する画面例510は、例えば「装置内に残留した紙幣を除去して下さい。お客様の預け入れ金額を確認し、除去した紙幣を返却してください。」等のオペレータへの保守誘導ガイダンスを含むものである。なお、図7及び図8は、「閉じるボタン」501、511を含むようにしても良い。
上述したように、初回の入金計数の際にジャムが発生した場合には、前の取引でジャムが発生した可能性がある。そこで、図7に例示するように、オペレータには、残留紙幣の除去を促すと共に、前の取引に関する実施状況の確認を促すようにしている。
これに対して、第2回目以降の入金計数の際にジャムが発生した場合には、初回の入金計数でジャムが発生しておらず、今回の取引中にジャムが発生したと確定することができる。そこで、図8に例示するように、オペレータには、今回の取引で生じた残留紙幣の除去を促すようにしている。
これにより、オペレータがATM1内の残留紙幣を除去した上で、顧客が申告した預け入れ金額と入金取引の金額とが一致した場合には、そのまま紙幣を返却する。一方、顧客が申告した預け入れ金額と入金取引の金額とが不一致の場合には、そのまま紙幣を返却するか、または、精査を行い機内有高から入金金額を特定してから顧客に紙幣を返却する。
(A−2)第1の実施形態の動作
以上のように、第1の実施形態によれば、入金計数でジャム等の障害が発生した場合、初回の入金計数では、前取引で残留した紙幣に起因する可能性があるが、第2回目以降の入金計数では前取引の影響はないことから、ATMは、オペレータが初回の入金計数と初回以降の入金計数に応じた保守誘導画面を、操作表示部(若しくはオペレータ専用の操作表示部)に表示して復旧誘導を行うことができる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明の現金処理装置の第2の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に、例えば金融機関等に設けられている自動預け入れ払い機(ATM)に本発明を適用する場合を例示する。
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態は、第1の実施形態のATM1が搭載する制御部の機能構成が異なる。具体的には、制御部21の保守制御部212が第1の実施形態に係る保守制御部212の機能構成と異なる。それ以外の構成要素は第1の実施形態と同一又は対応するものを用いることができるため、第2の実施形態においても、図2〜図4を用いて説明する。
図9は、第2の実施形態に係るATM1の内部構成を示す内部構成図である。
図9において、ATM1は、制御部21、操作表示部22、通信制御部23、カードリーダユニット24、レシートプリンタユニット25、紙幣取扱部26、通信部27を有する。なお、図9において、操作表示部22、通信制御部23、カードリーダユニット24、レシートプリンタユニット25、紙幣取扱部26、通信部27は、第1の実施形態で説明した構成要素と同一又は対応するものである。
制御部21は、ATM1の全体的な機能を司る処理部又は装置である。制御部21は、例えば、CPU、メインメモリ、外部記憶装置(HDD)、外部システム接続インタフェース部等を備える。外部記憶装置には、ATM1の取引処理を行うためのソフトウェアや、保守のためのソフトウェアが格納されている。制御部21は、例えば、CPUが外部記憶装置に記憶される処理プログラムを実行することにより、ATM1の機能を実現するものである。なお、処理プログラムは、インストールにより構築することができ、その場合でも機能的には図9に示すことができる。
図9では、制御部21が実行する主な機能部を示している。図9に示すように、制御部21は、取引処理部211、保守制御部212、記憶部213を有する。
保守制御部212は、第1の実施形態と同様に、各種取引においてATM1内で搬送される紙幣又は硬貨の状態を管理し、例えば紙幣又は硬貨の詰まり等の障害が発生した場合に、障害を取り除くための保守画面を表示するものである。
また、保守制御部212は、搬送制御部31、保守誘導画面表示制御部32、計数状況画面表示制御部33、表示制御部34を有する。なお、搬送制御部31、保守誘導画面表示制御部32、表示制御部34は、第1の実施形態で説明した構成要素である。
計数状況画面表示制御部33は、後述する鑑別部263とATM1内の搬送機構262に設けられているセンサ群(図4参照)による搬送紙幣の計数実施状況に基づいて、今回の取引においてATM1内の紙幣の計数状況を含む画面を表示するものである。
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態に係るATM1における処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下では、ATM1における取引処理の一例を示す。第2の実施形態においても、取引処理の一例としてATM1が入金取引を行う場合を例示する。入金取引の手順は、図5に例示する処理動作を用いることができる。
図10は、第2の実施形態に係る計数状況画面表示制御部33による計数状況画面の作成処理の動作を示すフローチャートである。
図10において、顧客により紙幣が紙幣入出金口12に投入されると、投入された紙幣が1枚ずつ繰り出されて(S301)、紙幣が鑑別部263に搬送される。なお、S302では、全ての投入紙幣の繰り出しが終了するまで、順次紙幣は1枚ずつ繰り出されて鑑別部263に搬送される。
このとき、図4において、搬送路57上のセンサ61が搬送される紙幣の枚数を検知して、その検知情報が制御部21に与えられる。計数状況画面表示制御部33は、センサ61からの検知情報に基づいて、接客分離枚数に「1」を加える(S303)。ここで、接客分離枚数とは、紙幣入出金口12から繰り出された紙幣枚数をいい、例えば、図4のセンサ61による検知枚数に基づいて求められる。
次に、鑑別部263では、搬送されてきた紙幣の鑑別を行なう(S304)。このとき、鑑別部263による紙幣の金種枚数に関する情報は、制御部21に与えられる。制御部21では、計数状況画面表示制御部33が鑑別済枚数に「1」を加えると共に(S305)、計数状況画面表示制御部33が金種枚数に基づいて、鑑別結果枚数に「1」を加える(S306)。
ここで、鑑別済枚数は、鑑別部263に搬送されてきた紙幣について鑑別部263が鑑別を行った枚数をいう。鑑別結果枚数は、鑑別部263による鑑別結果に応じた枚数であり、例えば、金種毎の紙幣枚数、鑑別不能の紙幣枚数、鑑別したトータル金額等を含むものである。
鑑別部263による鑑別結果により、紙幣が入金可能な紙幣である場合(すなわち、正常判定された場合)、紙幣は鑑別部263から一時保留部58(図4参照)に搬送される(S308)。
図4において、搬送路57上のセンサ62及びセンサ63は、鑑別部263から搬送される紙幣を検知して、その検知情報が制御部21に与えられる。これを受けて、計数状況画面表示制御部33は、鑑別部下流搬送路残留枚数から「1」を差し引き(S309)、搬送路57上のセンサ63の検知情報を受けて、計数状況画面表示制御部33は、一時保留入金金額から対応する金種紙幣の枚数から「1」を加える(S310)。
一方、鑑別部263による鑑別結果により、紙幣が入金可能な紙幣でない場合(すなわち、リジェクト判定された場合)、紙幣は鑑別部263から紙幣入出金口12に搬送される(S311)。
図4において、搬送路57上のセンサ62及びセンサ70は、鑑別部263から搬送される紙幣を検知して、その検知情報が制御部21に与えられる。これを受けて、計数状況画面表示制御部33は、鑑別部下流搬送路残留枚数から「1」を差し引き(S312)、搬送路57上のセンサ70の検知情報を受けて、計数状況画面表示制御部33は、入金リジェクト金額から対応する金種紙幣の枚数から「1」を加える(S313)。
図11は、第2の実施形態に係る計数状況画面表示制御部33による計数状況画面600を説明する画面図である。
図11に示すように、計数状況画面600は、紙幣入出金口12(いわゆる接客口と呼ばれる。)から鑑別部263までの搬送路57上の入金計数結果を示す「鑑別部上流枚数搬送路残留状況」、鑑別部263による鑑別結果を示す「鑑別済金額」、鑑別部263を通過した搬送路57上の入金計数結果を示す「鑑別部下流枚数搬送路残留状況」、鑑別部263から一時保留部58に搬送された正常な紙幣の入金計数結果を示す「一時保留部入金状況」、鑑別部263から一時保留部58に搬送されたリジェクト判定された紙幣の入金計数結果を示す「接客口状況」を含むものである。
「鑑別部上流枚数搬送路残留状況」には、図10のフローチャートに従って、紙幣入出金口12から繰り出された紙幣枚数(接客分離枚数)と、鑑別部263が鑑別を行った枚数(鑑別済枚数)とを含む情報が表示される。これにより、オペレータは、図11の計数状況画面600を見て、接客分離枚数と鑑別済枚数とが一致しないことを検知したとき、紙幣入出金口12から鑑別部263までの搬送路57上で紙幣が残留している(例えば、紙幣詰まりが生じている等)ことを特定することができる。
「鑑別済金額」には、鑑別部263による金種枚数や鑑別不能枚数等を含む情報が表示される。
「鑑別部上流枚数搬送路残留状況」には、図10のフローチャートに従って、鑑別部263から下流側に搬送された紙幣枚数を含む情報が表示される。これにより、オペレータは、「鑑別済金額」と「鑑別部下流搬送路残留状況」とが一致しない場合、鑑別部263の下流側の搬送路57上で紙幣が残留していることを特定することができる。
「一時保留部状況」には、図10のフローチャートに従って、一時保留部58に収納された紙幣の金種枚数を含む情報が表示される。「入金済金額」には、一保留部58に収納された紙幣のトータル金額であり、各金種枚数に基づいて求められる。これにより、オペレータは、「一時保留部状況」と「鑑別済金額」とが一致しない場合、鑑別部263から一時保留部58までの搬送路58上で紙幣の残留を特定することができる。
「接客口状況」には、図10のフローチャートに従って、リジェクトされた紙幣の枚数を含む情報が表示される。これにより、オペレータは、リジェクト枚数の確認、「接客口状況」と「鑑別済金額」と「一時保留部状況」等に表示される紙幣枚数から、鑑別部263から紙幣入出金口12までの搬送路58上で紙幣の残留を特定することができる。
例えば、紙幣詰まり等のジャムが発生したときには、計数状況画面表示制御部33は、操作表示部11(若しくはオペレータ専用の操作表示部)に、図11に例示する計数状況画面600をポップアップ表示する。なお、図11の計数状況画面600は、既存の保守画面の一部分に含まれるものであっても良い。また、図11の計数状況画面600を表示する際、注意喚起を促すための音出力を出力するようにしても良い。
これにより、搬送路57上で検知した入金計数情報が含まれる計数状況画面600を表示することにより、紙幣詰まり等が生じた場合でも、オペレータは、搬送路57上での紙幣の残留状況を把握することもできる。
なお、第2の実施形態においても、図7や図8に例示する保守画面を表示するようにしても良く、更に、図11に例示する計数状況画面も同時に表示画面表示できるようにしても良い。また、オペレータの操作を受けて、操作表示部11の画面上で複数のウィンドウを同時表示できるようにしてもよく、図7や図8の保守画面を前面表示したり、または図11の計数状況画面を前面表示したりできるようにしても良い。
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏すると共に、取引の違算を防止することができ、更にATM内の搬送路上での各種計数実施状況を表示することができるため、残留紙幣の除去漏れを防止することもできる。
(C)他の実施形態
上述した各実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態を適用することができる。
(C−1)上述した各実施形態では、図7や図8に例示する保守画面や、図11に例示する計数状況画面を表示する場合を例示した。これら保守画面や計数状況画面は、ポップアップ画面をして表示するようにしても良いし、または、保守画面の一部分の領域に表示されるものであっても良い。
さらに、上述した各実施形態では、図7や図8に例示する保守画面や、図11に例示する計数状況を表示する場合を例示したが、これら画面に含まれる情報をレシートに印字して出力できるようにしても良い。
また、レシートに印字する場合に、保守画面や計数状況画面に含まれる情報をそのまま印刷しても良いが、例えば、そのジャムを特定するコード番号やQRコード(登録商標)等を印刷するようにしても良い。これにより、レシート発行されることにより、計数状況等を顧客に知られることなく、オペレータは顧客から受け取ったレシートに基づいてジャム状況や入金計数状況を知ることができるため、適切な対応をとることができる。
(C−2)上述した第1の実施形態では、紙幣詰まり等の発声タイミングが、1回の取引での初回の入金計数又は第2回目の入金計数であるかに応じて表示する保守画面を変える場合を例示した。しかし、前回の取引において明らかに紙幣詰まり等のジャムが発生していないと特定できない場合には、保守誘導画面表示制御部32は、今回の取引での初回の入金計数であっても、図8に例示する保守画面を表示するようにしても良い。
具体的には、例えば、その日の最初の電源投入時であって初期動作を行った場合には、前回の取引の影響を受けているおそれは少ない。そのような場合、保守誘導画面表示制御部32は、今回の取引での初回の入金計数であっても、図8に例示する保守画面を表示するようにしても良い。
また例えば、保守誘導画面表示制御部32は、紙幣詰まり等のジャムが発生したときに、記憶部213に記憶されるログ履歴を読み出して、今回以前の取引状況を確認する。ログ履歴には、ジャムが発生したか否か等の情報も取引情報の一部として記憶されている。従って、保守誘導画面表示制御部32は、ログ履歴を読み出して、例えば、今回の取引日において1度もジャムが発生してしない、今回の取引の前に行われた数回の取引において1度もジャムが発生していない等の条件を満たしている場合に、今回の取引での初回の入金計数であっても、図8に例示する保守画面を表示するようにしても良い。
(C−3)上述した各実施形態では、取引種別が入金取引の場合のみを例示したが、入金取引に限定されるものではなく、出金取引等の他の取引種別の場合にも同様に適用することができる。