以下、本発明による紙幣取扱装置の実施例について、図面を用いて説明する。
[実施例1]
図1は実施例1の紙幣取扱装置としての自動取引装置(ATM)10の構成を概略的に示す説明図、図2はATM10の背面をその扉を開けた状態で概略的に示す背面側外観図、図3はATM10の構成を機能的に示す説明図である。ATM10は、例えば金融機関や小売店、公共施設等に設置され、顧客の操作に従い、金融機関等の提供する現金出納等のサービスを自動で提供する装置である。ATM10は、現金自動預け払い機とも呼ばれる。
図1〜図3に示すように、ATM10は、顧客の取引カードや取引明細票を処理するカード・明細票処理装置210と、通帳を処理する通帳処理装置220と、硬貨を取り扱う硬貨処理装置230と、紙幣を取り扱う紙幣処理装置100と、取引に必要な情報を表示すると共に顧客の操作を受け付けるユーザーインターフェースとしての顧客操作部240と、係員の操作のための係員操作部250と、ATM10の各部を制御する本体制御部400と、を備えている。係員操作部250は、後述のジャム紙幣計数処理等の際に、係員に作業に必要な情報を表示するすると共に係員の操作を受け付けるユーザーインターフェースとして構成されている。ATM10は、その背面側に背面扉12を開閉自在に備え、当該扉と装置筐体内に、上記の紙幣処理装置100と、明細票処理装置210と、通帳処理装置220と、硬貨処理装置230と、係員操作部250の他、後述の紙幣処理装置制御部190を備える。
紙幣処理装置100の備える紙幣処理装置制御部190は、CPUとプログラムやデータ等を記憶するメモリーとを有し、本体制御部400による制御の下、紙幣の装填、入金(収納)、出金(繰り出し)、ジャム紙幣計数処理、精査といった処理を行なう。なお、紙幣処理装置制御部190は、本体制御部400の制御の下、本発明における紙幣からの紙幣情報取得、および枚数計数や正損判定結果等の紙幣管理、これらに伴う紙幣搬送としての機能を果たす搬送制御部192と、搬送ジャム紙幣についての枚数計数や正損判定を行うようにする機能を果たす除去紙幣識別実行部194を備える。
図4は実施例における紙幣処理装置100の構成を概略的に示す説明図である。紙幣処理装置100は、紙幣Sの入口および出口としての紙幣受入部110と、搬送路(L1〜L6等)を有し搬送路に沿って紙幣Sを搬送する搬送機構170と、図示しない撮像部を有し搬送路上を搬送される紙幣Sの真偽・金種の識別、記番号の読み取り取得、計数、および紙幣の正損判定といった処理を行う識別部120と、紙幣Sを一時的に保持する一時保留部130と、紙幣Sを金種別に収納する3つの金種別カセット140と、識別部120により損券と判定された紙幣S(リジェクト紙幣)を回収する損券収納カセット150と、金種別カセット140に補充する紙幣Sや金種別カセット140から回収した紙幣Sを収納する補充回収カセット160と、カセットへの収納或いはカセットからの繰り出しの際に搬送ジャムを起こした紙幣(ジャム紙幣JS)が係員により収納される再計数紙幣投入部300と、識別部120により正損の判定が不明とされた紙幣S(不明券)を回収する不明券保管カセット320とを備えている。上記のリジェクト紙幣は、識別部120で真正な真券とされたもの破れ等の損傷により今後の入出金運用に不的確な紙幣、折れ曲がったりして真偽が不明な紙幣、カセットからの繰り出しの際に重なり合った紙幣などをいう。不明券は、搬送ジャムにより係員により一旦、搬送機構170の搬送路から除外された紙幣Sのうち、識別部120による正損の判定が不明とされた紙幣をいう。なお、図4では、紙幣処理装置制御部190(図3参照)の図示は省略している。
金種別カセット140は、紙幣Sを入出金可能な状態で搬送路と接続され、搬送路から紙幣Sを受け入れて収納すると共に、紙幣Sを繰り出して搬送路上に送り出す。本実施例では、三つの金種別カセット140を一群として、第1金種カセット140A〜第3金種カセット140Cで構成し、第1金種カセット140Aは万円札専用のカセットとされ、第2金種カセット140Bは五千円札専用のカセットとされ、第3金種カセット140Cは千円札専用のカセットである。以下、第1金種カセット140A〜第3金種カセット140Cを総称する際には、金種別カセット140と称し、金種ごとのカセットについては、第1金種カセット140A、第2金種カセット140B、第3金種カセット140Cと個別に称する。
金種別カセット140は、搬送路との接続位置から見て奥側(カセット底部側)から手前側(カセット天井側)に向けて順に紙幣Sを並べて収納し、手前側から奥側に向けて順に紙幣Sを1枚ずつ繰り出す。従って、金種別カセット140からの紙幣Sの繰り出しは、金種別カセット140への紙幣Sの収納順序と逆の順序で(金種別カセット140への収納順がより後である紙幣Sほど先に繰り出されるように)実行される。
損券収納カセット150は、紙幣Sの入金のみが可能な状態で搬送路と接続され、搬送路からリジェクト紙幣を受け入れて収納する。補充回収カセット160は、セパレータ162によって、補充する紙幣Sや回収した紙幣Sを収納する補充回収部163と、紙幣を金種別カセット140に補充する紙幣装填処理の際に補充回収部163から繰り出された紙幣Sのうちで識別部120により異常と識別された紙幣S(補充リジェクト紙幣)を収納する補充リジェクト部164と、に分割されている。補充回収部163は、紙幣Sを入出金可能な状態で搬送路と接続され、紙幣Sを1枚ずつ繰り出して搬送路上に送り出すと共に、搬送路から紙幣Sを受け入れて収納する。補充リジェクト部164は、紙幣Sの入金のみが可能な状態で搬送路と接続され、搬送路から補充リジェクト紙幣を受け入れて収納する。搬送機構170は、例えばローラーやベルト、搬送経路を切り替えるゲート等を用いて構成され、上記の各カセットへの紙幣収納や各カセットからの紙幣繰り出しに関与する搬送路L1〜L6を形成する。図4には、搬送機構170の各搬送路における紙幣Sの搬送方向を矢印で示している。そして、搬送機構170は、図示した搬送路L1〜L6ごとの搬送経路の他、適宜な搬送路を繋げた搬送経路を形成して、紙幣受入部110から入金した紙幣Sの金種ごとのカセットへの収納搬送や、金種ごとのカセットから繰り出した紙幣Sを紙幣受入部110に搬送する出金搬送、紙幣受入部110から入金した紙幣Sの内で識別部120にて真偽不明或いは損券とされた紙幣Sの返却搬送、後述する除去紙幣の識別搬送等を行う。
顧客操作部240(図2参照)は、タッチパネルを有し、タッチパネル上に必要な操作内容を表示して顧客の操作を案内する。例えば、顧客操作部240は、預け入れ、引き出し、振り込み等の取引種別の入力や、暗証番号、金額の入力等を案内する画面を表示し、顧客により入力された指示を本体制御部400に伝える。
係員操作部250(図2参照)は、銀行の係員等の作業者がATM10を運用、保守するための操作部であり、タッチパネル構成とされている。そして、この係員操作部250は、紙幣の装填や精査、或いは除去紙幣の識別収納などの指示を行なうための入力部や、装置状態、運用モード、装填や精査の処理結果、障害個所等を表示する。表示の態様については後述する。なお、係員操作部250をATM10の背面扉12に実装することもできる。
図5は再計数紙幣投入部300と不明券保管カセット320の構成とその動作を概略的に示す説明図である。図示するように、再計数紙幣投入部300は、搬送機構170が形成する搬送路L6(図4参照)の紙幣入口側に位置し、紙幣付勢板301と、開閉扉302と、搬送案内板304とを備える。紙幣付勢板301は、再計数紙幣投入部300の内部に組み込まれ、上方側のトップ位置301tpから不明券保管カセット320の天井側のボトム位置301bpまでモーター301mにより上下動可能とされている。
開閉扉302は、再計数紙幣投入部300の側壁をなして開閉自在とされ、その開放により、搬送案内板304の上へのジャム紙幣JSの投入口を形成する。開閉扉302の開閉は、係員による手動操作にてなされるが、モーター等を用いて自動開閉とすることもできる。搬送案内板304は、再計数紙幣投入部300の内部に位置して通常は図示するノーマル位置304npに位置し、この位置にあるとき、搬送機構170の搬送路L6における紙幣入口に向けて傾斜する。この紙幣入口には、搬送路上下に搬送ローラー308と搬送ローラー309とが組み込まれており、搬送案内板304は、これらローラーおよび搬送路L6の紙幣入口にジャム紙幣JSを案内する。この場合、搬送案内板304は、ジャム紙幣JSを不明券保管カセット320に直接投入する際、再計数紙幣投入部300の側壁に重なる投入位置304tpに位置する。搬送案内板304は、図示しないクランク機構を介してシリンダー304sと接続され、シリンダー304sの進退駆動により、ノーマル位置304npから投入位置304tpへの回転駆動、およびその逆に駆動する。
不明券保管カセット320は、その天井側に紙幣通過孔321を備え、紙幣処理装置100に対して、着脱自在とされている。そして、この不明券保管カセット320は、搬送機構170の搬送路L6における紙幣出口から上下の搬送ローラー310と搬送ローラー311とで排出されたジャム紙幣JSが紙幣通過孔321を通過するよう、装着される。紙幣処理装置100は、不明券保管カセット320の装着箇所に定位置センサー312と、紙幣検知センサー313とを備える。両センサーは、光学式或いは磁気式の近接センサーとして構成され、その検知信号を紙幣処理装置100の紙幣処理装置制御部190(図3参照)、詳しくは紙幣処理装置制御部190の搬送制御部192や除去紙幣識別実行部194に出力する。定位置センサー312は、ジャム紙幣JSが紙幣通過孔321を通過できる定位置に不明券保管カセット320が装着されたか否かを検知する。そして、除去紙幣識別実行部194は、定位置センサー312にて不明券保管カセット320の装着が検知されない状態では、後述のジャム紙幣計数処理を実行しない。紙幣検知センサー313は、不明券保管カセット320の内部に収納された後述の不明券の収納状態を検知し、紙幣処理装置制御部190は、紙幣検知センサー313による所定枚数の不明券検知により、不明券保管カセット320の内部の不明券取り出し等を、係員やホストコンピューター500に報知する。
上記の再計数紙幣投入部300と不明券保管カセット320におけるジャム紙幣JSの挙動について説明する。開閉扉302が開放されて再計数紙幣投入部300に投入されたジャム紙幣JSは、ノーマル位置304npに位置する搬送案内板304の上に重なって堆積する。紙幣付勢板301は、除去紙幣識別実行部194の制御下でのモーター301mの駆動力を受けて降下し、搬送案内板304に堆積済みのジャム紙幣JSを搬送案内板304に向けて付勢する。これにより、搬送案内板304に堆積済みのジャム紙幣JSは、一枚ずつ、搬送ローラー308と搬送ローラー309の間の搬送路L6の紙幣入口に案内され、搬送路L6に沿って搬送される。この搬送路L6は、図4に示すように、識別部120を経由した後に、金種別カセット140と損券収納カセット150、および不明券保管カセット320に到る搬送経路とされている。よって、再計数紙幣投入部300から搬送機構170の搬送路L6に搬送されたジャム紙幣JSは、識別部120の通過の間にその枚数および正損の判定を受けることになる。そして、ジャム紙幣JSは、正損判定の結果に応じて、後述するように金種別カセット140或いは、損券収納カセット150、もしくは不明券保管カセット320に収納搬送される。
搬送路L6の紙幣入口に搬送案内板304および紙幣付勢板301により案内されたジャム紙幣JSが仮に搬送路L6に搬送不可となると、搬送案内板304は、ノーマル位置304npから投入位置304tpに移動する。よって、この搬送不可のジャム紙幣JSは、再計数紙幣投入部300の下方の不明券保管カセット320に、紙幣通過孔321を経て直接収納される。この際、紙幣付勢板301は、ボトム位置301bpまで降下するので、不明券保管カセット320に到る前に再計数紙幣投入部300の内部に留まったジャム紙幣JSは、強制的に不明券保管カセット320に収納される。上記の紙幣挙動については、紙幣処理装置制御部190が本体制御部400の制御下でなす後述のジャム紙幣JSの計数処理と合わせて説明する。
本体制御部400(図2参照)は、CPUとプログラムやデータ等を記憶するメモリーとを有し、CPUが記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各種処理・取引の制御を実現する。また、本体制御部400は、図示しないインターフェースを介してホストコンピューター500に接続され、ホストコンピューター500との間で必要な情報のやりとりを行なう。例えば、本体制御部400は、ATM10の運用状況下や後述のジャム紙幣計数処理を経た際の装置内の計数データ等を、ホストコンピューター500に送信する。よって、ホストコンピューター500の管理部署、例えば銀行では、ATM10における各カセット毎の紙幣収納状況を把握できる。
本実施例のATM10は、その有する紙幣処理装置100において搬送ジャム発生時の紙幣計数について特徴を有するが、紙幣計数の様子を顧客からの預入入金を例に採り説明する。図6は入金処理の流れを示すフローチャートである。この入金処理は、図1や図4に示す顧客操作部240にて顧客が預け入りボタン操作を行ったことを契機に開始される。そして、当該処理は、本体制御部400(図3)の制御の下、紙幣処理装置制御部190(および紙幣処理装置制御部190に制御される紙幣処理装置100の各部)にて実行される。なお、説明の便宜上、紙幣搬送の間に搬送ジャムは起きないことを想定し、搬送ジャムが起きたときの紙幣搬送およびその計数処理については後述する。
紙幣処理装置制御部190は、上記ボタン操作を経て紙幣受入部110の図示しない開閉扉を開放すると共に、顧客による紙幣入金の完了まで待機する(ステップS100)。顧客が顧客操作部240の完了ボタンや扉閉めボタン等を操作すると、紙幣処理装置制御部190は、入金が完了したとして、その入金紙幣を一時保留部130に搬送して一時保管する(ステップS102)。この際、紙幣は、図4に示す搬送路L1を介して一時保留部130に一枚ずつ搬送され、識別部120は、搬送される紙幣を搬送順毎に計数しつつ、紙幣から各種情報を読み込む。具体的には、識別部120は、紙幣に固有の識別情報の他、紙幣の真偽、紙幣の正損に加え、金種も読み込み、これら読み込まれた情報は、紙幣処理装置制御部190にて記憶される。よって、紙幣処理装置制御部190は、顧客から入金を受けた紙幣の総金額、金種ごとの枚数、および紙幣搬送順の紙幣の真偽と正損を記憶できる。このため、既にカセット毎に記憶済みの収納枚数と合算することで、紙幣ことの枚数管理を図ることができる。
一時保留部130への一時保管後、紙幣処理装置制御部190は、一時保管済みの紙幣を金種ごとに金種別カセット140に収納搬送し(ステップS104)、本ルーチンを終了する。このステップS104での紙幣搬送は、一時保留部130から識別部120を経て金種別カセット140の金種ごとのカセット、および損券収納カセット150までの搬送路L2を介して行われる。つまり、搬送ジャムを起こすことなく一時保留部130から識別部120を経て搬送される紙幣(入金紙幣)については、紙幣処理装置制御部190は、この入金紙幣を、識別部120での計数とその真偽や正損等の判定結果に応じて、金種別カセット140の金種ごとのカセット或いは損券収納カセット150に収納搬送する。例えば、真券で且つ正券であれば、この判定結果により、当該紙幣は、その金種に応じた金種別カセット140のカセットに収納搬送される。また、真券ではあるもの、損券とされた紙幣は、損券収納カセット150に収納搬送される。なお、真券でない紙幣や正損の判定が不能な入金紙幣は、一時保留部130から図4の搬送路L5を経て、紙幣受入部110に返却搬送され、顧客に返却される。
次に、紙幣搬送過程で搬送ジャムが起きた場合のジャム紙幣計数処理について説明する。図7はジャム紙幣計数処理の全体の流れを示すフローチャートである。このジャム紙幣計数処理は、本体制御部400(図3)の制御の下、紙幣処理装置制御部190(および紙幣処理装置制御部190に制御される紙幣処理装置100の各部)によって所定時間毎に繰り返し実行される。
ジャム紙幣計数処理が開始されると、紙幣処理装置制御部190は、まず、搬送ジャムが発生しているか否かを判定する(ステップS400)。紙幣処理装置制御部190は、紙幣処理装置100が備える搬送機構170の搬送路中の各種の搬送ローラーの回転状況や紙幣搬送の様子等を光学系や電気系の各種センサーにてスキャンし、そのスキャン結果に基づいてステップS400の判定を行う。ステップS400で搬送ジャムが発生していないと否定判定すれば、紙幣処理装置制御部190は、何の処理も行うことなく本処理を終了し、次回のタイミングでのジャム指定計数処理(ステップS400以降)に備える。
ステップS400にて搬送ジャムが発生したと肯定判定すると、紙幣処理装置制御部190は、係員操作部250にエラー表示を行う(ステップS402)。図8は搬送ジャム発生時における係員操作部250でのエラー表示の様子を示す説明図である。図示するように、このエラー表示には、エラーコード501と、係員第1指示502と、係員第2指示503と、復帰ボタン504と、枚数入力ボタン505とが含まれる。エラーコード501は、ステップS400にて検知した搬送ジャムの発生箇所や発生原因等をコード表示する。係員は、このエラーコード501を見て、ジャム復旧のための必要作業を認知する。係員第1指示502と係員第2指示503は、発生したジャムに対する係員作業の内容を示しており、前者は、搬送機構170からのジャム紙幣JSの除去実行とその後の作業を指示する。後者は、実際に搬送ジャムは発生していないにも拘わらずセンサーがジャム発生と誤検知した場合の作業を指示する。係員は、搬送機構170における搬送ジャムの発生の有無を自らの目で確かめた後に、実際に搬送ジャムが発生していれば、係員第1指示502の指示に従って作業を継続する。搬送ジャムがセンサーの誤検知であれば、係員第2指示503の指示に従って作業を継続する。なお、本実施例では、不明券保管カセット320が定位置センサー312にて正常に紙幣処理装置100に装着されている状況下で、ジャム紙幣JSの計数処理を行う。よって、紙幣処理装置制御部190は、定位置センサー312から正常セットの信号を受け取っている場合に限り、ステップS402以降の処理を行い、定位置センサー312からの正常信号が未了であれば、不明券保管カセット320を正常装着するような報知を係員操作部250に表示するようにできる。
紙幣処理装置制御部190は、ステップS402での上記表示に続き、ジャム紙幣JSが搬送機構170に実在するか否かを判定する(ステップS404)。この判定は、図8に示した復帰ボタン504或いは枚数入力ボタン505の係員によるボタン操作により下される。つまり、係員が係員第2指示503の指示に従って復帰ボタン504を操作すれば、紙幣処理装置制御部190は、ジャム紙幣JSは実在しないと否定判定する。一方、係員が係員第1指示502の指示に従って枚数入力ボタン505を操作すれば、紙幣処理装置制御部190は、実際に搬送ジャムが起きて搬送機構170にはジャム紙幣JSが実在すると肯定判定する。
紙幣処理装置制御部190は、係員による復帰ボタン504の操作を受けてジャム紙幣JSが実在しないと判定すると、搬送機構170を含む紙幣搬送系の復旧処理を行い(ステップS406)、本ルーチンを一旦終了する。この復旧処理では、搬送機構170に含まれる各種搬送ローラーの原点復帰のための駆動処理や、センサーの検知信号の初期化処理等がなされ、紙幣処理装置制御部190は、ATM10の運用開始に備える。
紙幣処理装置制御部190は、係員による枚数入力ボタン505の操作を受けてジャム紙幣JSが実在すると判定すると、係員による搬送機構170からのジャム紙幣JSの除去を待機する(ステップS410)。この除去待機は、係員による枚数入力ボタン505のボタン操作にて解かれる。
次いで、紙幣処理装置制御部190は、搬送機構170から実際に除去されたジャム紙幣JSについて、その搬送および計数のための処理を実行する(ステップS500)。紙幣処理装置制御部190は、ステップS500の処理において、ジャム紙幣JSの除去待機後の係員による所定操作と関連した初期処理(ステップS510)と、初期処理を経たジャム紙幣JSの一括処理(ステップS530)、或いは初期処理を経たジャム紙幣JSの逐次処理(ステップS540)を後述するように実行して、本ルーチンを一旦終了する。
図9はジャム紙幣JSの除去待機後の初期処理(ステップS510)の詳細を示すフローチャートである。紙幣処理装置制御部190は、係員による枚数入力ボタン505の操作がなされてジャム紙幣JSの除去待機を解くと、係員操作部250に除去紙幣の金種と金種ごとの枚数の入力を促す入力画面を表示する(ステップS511)。図10はジャム紙幣除去後の係員操作部250での係員入力項目を示す説明図である。図示するように、この入力画面には、係員指示510と、金種表示511と、枚数入力ボックス512と、枚数増減ボタン513と、完了ボタン514とが含まれる。係員指示510は、ジャム紙幣除去後の係員作業の内容を指示する。金種表示511は、ATM10にて取り扱う紙幣の金種と正損の判定不能な不明券とを示し、枚数入力ボックス512には、係員が枚数増減ボタン513を用いて入力した紙幣枚数が表示されることになる。紙幣処理装置制御部190は、この入力された金種ごとの枚数を記憶し、後述の計数管理に用いる。係員は、除去済みのジャム紙幣について、係員指示510の指示に従って、金種ごとの枚数を入力した後、完了ボタン514を操作する。この場合、係員による除去対象となる紙幣は、搬送機構170において搬送ジャムを起こした紙幣の他、搬送機構170での搬送過程にある紙幣とすることができる。より詳しくは、識別部120より下流側に残っている紙幣を、搬送ジャムを起こした紙幣と含めて除去する。こうすれば、識別部120を既に通過してその計数と正損判定済みの紙幣を除去しないようにできる。なお、このように除去しなかった紙幣は、正損や金額の読み込み結果に応じて、金種別カセット140や損券収納カセット150に別途、収納搬送するようにすればよい。また、搬送機構170に残っている全ての紙幣を除去対象とすることもできる。
紙幣処理装置制御部190は、係員による完了ボタン514の操作がなされるまで、除去済みのジャム紙幣JSについての金種ごとの枚数入力と、再計数紙幣投入部300への係員によるジャム紙幣JSの投入とを待機する(ステップS512)。紙幣処理装置制御部190は、上記ボタンの操作を経て枚数入力と紙幣投入の待機を解き、係員操作部250に処理選択画面を表示する(ステップS513)。図11はジャム紙幣投入後の係員の作業内容を係員操作部250に表示した指示画面である。図示するように、この指示画面には、係員第1指示520と、係員第2指示522と、再計数ボタン524と、完了ボタン526とが含まれる。係員第1指示520と係員第2指示522は、再計数紙幣投入部300へのジャム紙幣JSの投入後の係員作業の内容を区別して示し、前者は、投入済みジャム紙幣JSを識別部120による計数と正損等の判定を経て金種別カセット140等に収納搬送する場合の作業を指示する。後者は、投入済みジャム紙幣JSを識別部120による計数と正損等の判定を経ないで、不明券保管カセット320に直接、ジャム紙幣JSを収納する場合の作業を指示する。係員は、除去済みのジャム紙幣JSを再計数紙幣投入部300に投入する際に各紙幣の正損の状況を自らの目で直接認知できるので、搬送ジャムを引き起こすほどの損傷がなければ、係員第1指示520の指示に従って再計数ボタン524を操作する。損傷が著しい等のために、再度、搬送ジャムが起きると危惧されれば、係員は、係員第2指示522の指示に従って完了ボタン526を操作する。
紙幣処理装置制御部190は、ステップS513での処理選択画面の表示に続いて、再計数ボタン524と完了ボタン526のいずれのボタン操作がなされるかを判定する(ステップS514)。そして、紙幣処理装置制御部190は、そのボタン操作に応じて、投入済みジャム紙幣JSの一括処理としての2次処理(ステップS530)、或いは、投入済みジャム紙幣JSの逐次処理としての3次処理(ステップS550)のいずれかに進む。
図12は一括処理としての2次処理の流れを示すフローチャートである。紙幣処理装置制御部190は、ステップS514にて完了ボタン526が操作されたと判定すると、再計数紙幣投入部300に投入済みジャム紙幣JSを、再計数紙幣投入部300から不明券保管カセット320に直接投入する(ステップS531)。つまり、紙幣処理装置制御部190は、図5で説明したように、搬送案内板304をノーマル位置304npから投入位置304tpまでシリンダー304sにより駆動して、ノーマル位置304npの搬送案内板304に堆積済みのジャム紙幣JSの全てを、不明券保管カセット320に紙幣通過孔321から収納する。この場合、紙幣処理装置制御部190は、紙幣付勢板301をモーター301mにてトップ位置301tpからボトム位置301bpまで降下させることで、ジャム紙幣JSが不明券保管カセット320に収納されないまま残ってしまわないようにする。その後、紙幣処理装置制御部190は、紙幣付勢板301をトップ位置301tpまで戻し、搬送案内板304についてもノーマル位置304npまで戻してステップS531の処理を終了する。
紙幣処理装置制御部190は、ステップS531に続き、不明券保管カセット320に直接収納したジャム紙幣JSについての計数・記憶を行う(ステップS532)。ステップS531にて不明券保管カセット320に再計数紙幣投入部300から直接収納されたジャム紙幣JSは、識別部120による計数と正損等の判定を受けていない。よって、本実施例では、識別部120による正損判定の未実施のジャム紙幣JSを、紙幣の正損判定が不能な不明券として扱い、その枚数Cに計数枚数Aをセットして、不明券がC枚存在したと記憶する。この場合の計数枚数Aは、図9のステップS512にて係員より入力された金種ごとのジャム紙幣JSの枚数の総和である。
紙幣処理装置制御部190は、不明券としてジャム紙幣JSを不明券保管カセット320に投入した上で上記のようにその枚数を記憶すると、既述したステップS406と同様に、搬送機構170を含む紙幣搬送系の復旧処理を行い(ステップS533)、本ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS514において、係員の再計数ボタン524の操作を経て紙幣処理装置制御部190がジャム紙幣JSの逐次処理としての3次処理に進むと、次のようになる。図13は逐次処理としての3次処理の流れを示すフローチャートである。紙幣処理装置制御部190は、ステップS514にて再計数ボタン524が操作されたと判定すると、投入済みジャム紙幣JSの逐次処理による識別部120での計数と正損判定に備え、既述したステップS406と同様に、搬送機構170を含む紙幣搬送系の復旧処理を行う(ステップS533)。
紙幣処理装置制御部190は、搬送系の復旧処理に続き、紙幣カウンタnの値を初期値ゼロにセットする(ステップS552)。この紙幣カウンタnは、再計数紙幣投入部300に投入済みのジャム紙幣JSが搬送ローラー308と搬送ローラー309により搬送機構170の搬送路L6に搬送される度に、後述するようにカウントアップされる。よって、紙幣カウンタnの値は、再計数紙幣投入部300に投入済みのジャム紙幣JSの搬送枚数を表すことになる。紙幣処理装置制御部190は、紙幣カウンタnのセットに続き、再計数紙幣投入部300に投入済みのジャム紙幣JSの搬送が完了したか否かを判定する(ステップS553)。このステップS553における肯定判定は、上記の紙幣カウンタnが、図9のステップS512にて係員より入力された金種ごとのジャム紙幣JSの枚数の総和Aに達したこと、或いは、後述するようにジャム紙幣JSが不明券保管カセット320に直接収納されたことにより下される。以下の説明に当たっては、再計数紙幣投入部300に投入済みのジャム紙幣JSが一枚ずつ搬送機構170の搬送路L6に搬送されていることを前提とし、この搬送異常が起きた場合については、後述する。
紙幣処理装置制御部190は、ステップS553にてジャム紙幣JSの搬送は未完了であると否定判定すると、ノーマル位置304npの搬送案内板304に堆積したジャム紙幣JSを一枚ずつ搬送機構170の搬送路L6に繰り出し搬送する(ステップS554)。この繰り出し搬送は、搬送ローラー308と搬送ローラー309をノーマル位置304npの搬送案内板304からジャム紙幣JSを一枚分繰り出しできるよう駆動することでなされる。
次に、紙幣処理装置制御部190は、ジャム紙幣JSの枚様毎の繰り出し搬送が正常になされたか否かを、例えば搬送ローラー308の周辺の光学式或いは磁気式のセンサー等にて判定する(ステップS555)。この判定は、搬送路L6に含まれる識別部120からの計数有無からも下すことができる。そして、紙幣処理装置制御部190は、正常に搬送路L6に繰り出し搬送されたジャム紙幣JSを、搬送路L6の経路に設けた搬送ローラーにて搬送路L6の識別部120を経由するよう搬送する(ステップS556)。次いで、紙幣処理装置制御部190は、識別部120による紙幣情報の読み出し結果に基づいて、ジャム紙幣JSが真券であるか否かを判定する(ステップS557)。ここで、真券であると判定すると、紙幣処理装置制御部190は、紙幣カウンタnを値1だけインクリメントし(ステップS558)、再計数紙幣投入部300から搬送路L6を介して搬送されてきたジャム紙幣JSの金種と正損の結果を記憶する(ステップS559)。
このステップS559では、搬送されてきた総数B枚のジャム紙幣JSごとにその金種と正損の結果が得られる。このため、総数B枚のジャム紙幣JSについて、その搬送が繰り返される毎にデータが蓄積されるので、結果的には、再計数紙幣投入部300に投入されて搬送路L6に搬送された全てのジャム紙幣JS(B枚)についての金種ごとの枚数とその正損判定結果が得られる。図14は再計数紙幣投入部300から搬送される複数枚のジャム紙幣JSについてその搬送順に得られた計数結果と金種ごとに得られた記憶内容を示す説明図である。図示するように、最初に搬送されたジャム紙幣JS(n=1)は、識別部120にて、その金種が1万円であって正券である。2番目に搬送されたジャム紙幣JS(n=2)は、識別部120にて、その金種が5千円であって損券である。こうした搬送順のデータ蓄積により、紙幣処理装置制御部190は、搬送されてきたジャム紙幣JSについて、その金種ごとの正損の判定結果とその枚数を記憶する。
紙幣処理装置制御部190は、上記の記憶に続き、識別部120を通過したジャム紙幣JSを搬送路L6を介して損券収納カセット150まで搬送し、当該紙幣を損券収納カセット150に収納する(ステップS560)。つまり、本計数処理は、一旦、搬送ジャムを引き起こしたジャム紙幣JSについてのものであるので、ステップS557にて真券且つ正券であっても、ATM10の運用から除外すべく、損券として扱って、損券収納カセット150に収納する。その後は、ステップS553に移行して、再計数紙幣投入部300に投入済みの全てのジャム紙幣JSについて、上記処理を繰り返す。なお、上記のように計数と正損判定の記憶対象となるジャム紙幣JSの枚数Bは、再計数紙幣投入部300に投入済みの全てのジャム紙幣JSについてステップS558以降の処理がなされることで、図9のステップS512にて係員より入力された金種ごとのジャム紙幣JSの枚数の総和(枚数A)まで取り得る。この場合、紙幣カウンタnにあっても、その値は枚数Aと一致する。
上記したステップS553〜ステップS560までの各処理が順次進むのは、再計数紙幣投入部300から搬送路L6に順次繰り出し搬送されるジャム紙幣JSがその繰り出しも搬送も正常になされ、ジャム紙幣JSが真券である場合である。今、B枚のジャム紙幣JSについてステップS553〜ステップS560までの各処理が順次進み、B+1枚目のジャム紙幣JSがステップS557にて真券ではあるもののその正損判定が不能であったとする。そうすると、紙幣処理装置制御部190は、正損不明な紙幣を運用から除外すべく、そのジャム紙幣JSを搬送路L6を介して不明券保管カセット320に収納搬送し(ステップS563)、ステップS553に移行する。この場合の不明券保管カセット320へのジャム紙幣JSの搬送計数は、特段必要としない。これは、先のステップS559にてそれまでのジャム紙幣JSの損券扱い枚数(B)が既知であり、再計数紙幣投入部300から図7のジャム紙幣計数処理の対象となるジャム紙幣JSの全枚数(A)も、係員料力により既知であるので、後述のステップS561にて判明するからである。また、紙幣処理装置制御部190は、ステップS555にてジャム紙幣JSの搬送路L6への繰り出しが正常に起きないと判定すると、既述した図12の一括処理でなすステップS533と同様に、再計数紙幣投入部300に残っているジャム紙幣JSを、再計数紙幣投入部300から不明券保管カセット320に直接投入し(ステップS562)、ステップS553に移行する。この場合についても、上記の理由により、ジャム紙幣計数は特段必要としない。
ステップS562を経てステップS553に移行した場合、および、再計数紙幣投入部300に投入済みの全てのジャム紙幣JS(枚数A)についてステップS554〜560の処理が繰り返されて紙幣カウンタnが枚数Aと一致した場合では、ステップS553にて、否定判定される。紙幣処理装置制御部190は、この否定判定に続いて、今までの処理により不明券保管カセット320に収納搬送した不明券の枚数Cを、計算してこれを記憶し(ステップS561)、本ルーチンを一旦終了する。この不明券の枚数Cは、再計数紙幣投入部300に投入済みの全てのジャム紙幣JSの枚数Aから、識別部120による計数や正損判定を経て搬送路L6を介して損券収納カセット150に収納されたジャム紙幣JSの上記の枚数B(図14参照)を減算することで求まる。そして、紙幣処理装置制御部190は、この不明券の枚数Cについても、既述したジャム紙幣JSについての金種ごとの計数結果と合わせて記憶する。図15は再計数紙幣投入部300から搬送される複数枚のジャム紙幣JSについての金種およびその正損や不明の判定に応じた記憶内容を示す説明図である。
以上説明したように、本実施例のATM10では、その有する紙幣処理装置100における搬送機構170を用いて顧客の入金紙幣を取り扱うに当たり、紙幣の搬送ジャムが起きなければ、搬送される入金紙幣を搬送順に識別部120にて計数しつつ、その真偽や正損等を判定する。そして、紙幣処理装置制御部190は、入金紙幣の総金額、金種ごとの枚数、および紙幣の紙幣を搬送順の真偽と正損を記憶して、既にカセット毎に記憶済みの収納枚数と合算することで、紙幣ことの枚数管理を図る。しかも、本実施例のATM10は、搬送ジャムを起こすことなく識別部120による計数と正損判定を受けた入金紙幣を、紙幣処理装置制御部190にて、識別部120での真偽や正損の判定結果に応じて、金種別カセット140の金種ごとのカセット或いは損券収納カセット150に収納搬送する(ステップS104)。
その一方、本実施例のATM10は、搬送機構170にて搬送ジャムが起きると、その搬送ジャムの起因となった紙幣(ジャム紙幣JS)を含んで係員により搬送機構170から除去し、その除去されたジャム紙幣JSの投入を再計数紙幣投入部300(図5)にて受け付ける。その上で、再計数紙幣投入部300に投入済みのジャム紙幣JSを、再計数紙幣投入部300から搬送機構170の搬送路L6に繰り出し搬送し、この繰り出し搬送したジャム紙幣JSについても、搬送路L6の識別部120にてその計数と正損判定を行う(ステップS556〜559)。そして、このジャム紙幣JSについては、識別部120による紙幣正損の判定不能なものであれば、不明券保管カセット320に搬送路L6を経て収納搬送し(ステップS563)、真券のジャム紙幣JSを損券収納カセット150に収納搬送する(ステップS560)。しかも、搬送機構170から取り除いたジャム紙幣JSの枚数Aと、損券収納カセット150に収納したジャム紙幣JSの枚数Bとから、不明券保管カセット320に収納した不明券であるジャム紙幣JSの枚数についても管理する(ステップS561)。このため、本実施例のATM10によれば、搬送機構170における搬送ジャムの起因となったために搬送機構170から取り除いたジャム紙幣JSを、その枚数に拘わらず、枚数管理や正損の判定管理、詳しくは不明券判定管理を行うことができる。例えば、搬送機構170での紙幣搬送において、複数枚の紙幣が重なって搬送されるいわゆる連れ去りが起き、これにより搬送ジャムが発生することがある。こうした場合には、複数枚の紙幣が必然的に伴うが、こうした搬送ジャムにおいても、本実施例のATM10によれば、搬送ジャムを起こした紙幣を含む搬送途中の複数枚の除去紙幣(ジャム紙幣JS)についての枚数や正損の判定管理ができる。
また、本実施例のATM10では、再計数紙幣投入部300に投入したジャム紙幣JSを識別部120による計数と正損判定を経てカセットに収納搬送するに当たり、識別部120にて真券および正券と判定されたジャム紙幣JSについても、識別部120にて損券と判定された紙幣と同様に損券収納カセット150に収納する。搬送ジャムを引き起こしたジャム紙幣JSは、その後の運用において搬送ジャムを再度招くことが危惧されるが、本実施例によれば、こうした事態を未然に防ぐことが可能となる。
また、本実施例のATM10では、識別部120による紙幣の正損の判定が不明とされた不明券については、紙幣取引運用で常用される金種別カセット140や損券収納カセット150とは別の不明券保管カセット320に収納する。このため、正損が不明な不明券は、紙幣取引運用において搬送ジャムを招いたり、金種ごとの紙幣収納枚数や金額の紙幣管理に支障を招きやすいが、本実施例のATM10によれば、こうした事態を未然に防ぐことができる。
また、本実施例のATM10では、搬送機構170で搬送ジャムを起こした紙幣をジャム紙幣JSとして除外した上で、ステップS511〜563までの処理により、その除外したジャム紙幣JSを、紙幣処理装置制御部190の制御の下で、損券収納カセット150と不明券保管カセット320のいずれかに振り分けて収納する。そして、こうしたジャム紙幣JSの振分収納に、係員を介在させない。仮に、搬送機構170から除外したジャム紙幣JSの振分収納先を係員の作業に任せるとすれば、係員の錯誤により、不明券保管カセット320に収納すべき不明券を、本来収納すべきでない損券収納カセット150に収納してしまうことも起き得る。しかしながら、本実施例のATM10によれば、こうした事態を回避できる。
また、本実施例のATM10では、上記したジャム紙幣JSについての識別部120による計数および正損判定を行うほか、再計数紙幣投入部300に投入済みの全てのジャム紙幣JS(図5参照)を、その枚数を求めた上で、直接、不明券保管カセット320に収納する(ステップS531)。搬送ジャムを招いたジャム紙幣JSは、その後の運用において再度、搬送ジャムを引き起こし易いが、再計数紙幣投入部300に投入済みの全てのジャム紙幣JS(図5参照)を不明券保管カセット320に直接収納することで、ジャム紙幣JSの除去後の搬送ジャムの発生を防止できる。しかも、その枚数も既知にするので、不明券保管カセット320に収納済みのジャム紙幣JSの枚数に応じて、当該紙幣の係員処理、例えば、不明券保管カセット320からの取り出し、管理センターへの返却等を促すことができる。
また、本実施例のATM10では、再計数紙幣投入部300から不明券保管カセット320へのジャム紙幣JSの収納を図るに当たり、紙幣付勢板301を不明券保管カセット320における紙幣通過孔321の近傍まで降下させる。よって、ジャム紙幣JSが仮に搬送路L6に搬送不可となったり、不明券保管カセット320に到る前に再計数紙幣投入部300の内部に留まったとしても、これらジャム紙幣JSを強制的に不明券保管カセット320に収納できる。
また、本実施例のATM10では、不明券保管カセット320を紙幣処理装置100に対して着脱自在とした上で、不明券保管カセット320が正常に装着されていなければ、既述したジャム紙幣JSの識別部120による計数や正損判定を行わないようにした。よって、不明券保管カセット320が不完全な装着のまま既述したジャム紙幣計数処理を行わないので、ステップS563において不明券を不明券保管カセット320に収納搬送する際の収納ミスを防止できる。
また、本実施例のATM10では、搬送機構170から除外したジャム紙幣JSについて、識別部120による計数と正損判定をした上で損券収納カセット150に収納搬送したジャム紙幣JSの金種ごとの枚数、および正損が不明であった不明券枚数を記憶する(図14〜図15参照)。しかも、搬送ジャム発生前においては、金種別カセット140や損券収納カセット150における金種ごとの収納枚数を管理している。よって、本実施例のATM10によれば、搬送ジャム発生後の運用時における紙幣管理の適正化を図ることができる。
[実施例2]
本実施例では、再計数紙幣投入部300に投入したジャム紙幣JSを搬送路L6に搬送して識別部120によりその計数と正損判定を行った上で、正損判定に応じてジャム紙幣JSの収納搬送先のカセットを選定する点に特徴がある。図16は実施例2でのジャム紙幣JSの計数処理の要部を示すフロートである。図示するように、この実施例2では、図13で示した逐次処理としての3次処理において、ステップS557の識別部120による紙幣判定に続き、紙幣カウンタnのインクリメント(ステップS558)、ジャム紙幣JSの金種と正損の結果の記憶(ステップS559)を行い、その後に、ジャム紙幣JSが正券であるか損券であるかの判定を行う(ステップS570)。ここで、紙幣処理装置制御部190は、識別部120の判定結果が損券であれば、そのジャム紙幣JSを損券収納カセット150まで搬送して、当該紙幣を損券収納カセット150に収納する(ステップS560)。一方、ジャム紙幣JSが正券であれば、そのジャム紙幣JSを金種に応じた金種別カセット140の第1金種カセット140A〜140Cのいずれかに搬送して、当該紙幣を金種別カセット140に金種に応じて収納する(ステップS571)。こうすれば、搬送機構170から除外したジャム紙幣JSであっても、当該紙幣が正券であれば、今後の運用において搬送ジャムを引き起こしがたいので、その後の紙幣取扱運用に組み込むことができる。しかも、金種別カセット140に収納したジャム紙幣JSの枚数は既知であるので(図14)、紙幣管理上の支障を来すことはない。
[実施例3]
本実施例では、次のことを想定している。一般に、ジャム紙幣JSの損傷やしわなどが著しいと再度搬送ジャムを引き起こし易い。また、搬送機構170から除去したジャム紙幣JSを、通常の取扱運用で用いる金種別カセット140や損券収納カセット150に係員の手作業で収納したのでは、これら通常運用カセットに、正損が未定の紙幣(即ち、除去済みのジャム紙幣JS)と運用過程での収納紙幣が混在することになる。或いは、係員の錯誤により、誤ったカセットにジャム紙幣JSが収納されることも起き得る。よって、本実施例では、搬送機構170から除去したジャム紙幣JSについては、その全てを一度に不明券保管カセット320に収納搬送することを想定している。図17は実施例3でのジャム紙幣計数処理の全体の流れを示すフローチャート、図18は実施例3でのジャム紙幣JSの除去待機後の初期処理(ステップS510)の詳細を示すフローチャートである。
図17に示すように、実施例3では、図7で説明したステップS400〜410までの処理に続くジャム紙幣JSについての搬送および計数のための処理(ステップS500)において、ジャム紙幣JSの除去待機後の係員による所定操作と関連した初期処理(ステップS510)と、初期処理を経たジャム紙幣JSの一括処理(ステップS530)とを実行する。そして、実施例3では、図18に示すように、図9で説明したジャム紙幣JSの除去待機後の初期処理(ステップS510)において、係員操作部250に除去紙幣の金種と金種ごとの枚数の入力を促す図10の入力画面を表示する(ステップS511)。その後、紙幣処理装置制御部190は、係員による完了ボタン514の操作がなされるまで、除去済みのジャム紙幣JSについての金種ごとの枚数入力と、再計数紙幣投入部300への係員によるジャム紙幣JSの投入とを待機する(ステップS512)。この待機の間に、係員によるジャム紙幣JSの金種ごとの枚数入力と、再計数紙幣投入部300へのジャム紙幣JSの投入がなされ、完了ボタン514の操作があると、紙幣処理装置制御部190は、既述した図12のジャム紙幣JSの2次処理(ステップS530)を実行する。この際、既述した図11の作業指示は不要のため、表示されない。
この実施例3では、再計数紙幣投入部300に投入済みのジャム紙幣JSを全て不明券保管カセット320に直接収納するので、搬送路L6やその出入り口の搬送ローラー308等は不要となる。
また、この実施例3では、搬送機構170で搬送ジャムを起こしたために除外したジャム紙幣JSの全てを、不明券保管カセット320に収納し、ジャム紙幣JSの収納に、係員を介在させない。仮に、搬送機構170から除外したジャム紙幣JSの振分収納先を係員の作業に任せるとすれば、係員の錯誤により、不明券保管カセット320に収納すべき不明券を、本来収納すべきでない損券収納カセット150に収納してしまうことも起き得る。しかしながら、本実施例のATM10によれば、こうした事態を回避できる。
以上、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例では、ジャム紙幣計数処理のステップS555においてジャム紙幣JSの正常繰り出しが不可であると、ステップS562では、その時点で再計数紙幣投入部300に残っているジャム紙幣JSを全て不明券保管カセット320に直接投入したが、次のようにすることもできる。まず、再計数紙幣投入部300の紙幣付勢板301と搬送案内板304とについて、ジャム紙幣JSの搬送路L6への一枚ずつの繰り出しと、その一枚のジャム紙幣JSが繰り出し不要であれば、当該一枚の繰り出し不能のジャム紙幣JSだけを不明券保管カセット320に投入できるよう、機器構成する。その上で、紙幣処理装置制御部190は、ステップS555においてジャム紙幣JSの正常繰り出しが不可であると、ステップS562では、その繰り出し不可であったジャム紙幣JSだけを不明券保管カセット320に直接投入する。そして、その次のジャム紙幣JSについても、ステップS555での繰り出し正否判定を行う。このように構成すれば、搬送ジャムを引き起こしたと想定されるジャム紙幣JSだけを、不明券保管カセット320に収納保管でき、他のジャム紙幣JSについては、損券収納カセット150或いは金種別カセット140に収納して、紙幣取扱運用を図ることができる。
この他、上記の実施例では、再計数紙幣投入部300と不明券保管カセット320とを、既存のATM10で用いられる機器構成に付加したが、再計数紙幣投入部300については、紙幣受入部110を代用できる。この場合には、既述した係員操作部250でのエラー表示(図8)や、入力画面(図10)、指示画面(図11)を、顧客操作部240に表示する。そして、不明券保管カセット320については、紙幣受入部110からの直接のジャム紙幣JSの投入が可能となるよう設置する。その上で、搬送機構170については、搬送機構170から除去されて紙幣受入部110に投入されたジャム紙幣JSが、識別部120を経て、金種別カセット140と損券収納カセット150および不明券保管カセット320に到る搬送路を形成すればよい。
また、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細にその構成等につき説明したのであり、必ずしも実施例に記した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
更に、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計等することによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリーや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体におくことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上、必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。