JP2015159081A - 負極活物質材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】体積当たりの放電容量、充放電サイクル特性、電極板に用いた際の合剤密度、及び粒子間の電気的接触を改善可能な負極活物質材料を提供する。
【解決手段】 本実施形態の負極活物質材料は、第1の平均粒径を有する大径粉末と、第1の平均粒径と異なる第2の平均粒径を有する小径粉末とを含有する。第1及び第2の平均粒径の比は、第1粒径:第2粒径=1.2:1〜20:1である。大径粉末及び小径粉末の含有量(質量)の比が、大径粉末:小径粉末=25:1〜1:3である。大径粉末及び小径粉末は、合金相を含有する。合金相は金属イオンを放出するとき又は金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極活物質材料に関し、さらに詳しくは、負極活物質材料に関する。
近年、家庭用ビデオカメラ、ノートパソコン、及び、スマートフォン等の小型電子機器等の普及が進み、電池の高容量化及び長寿命化が技術課題となっている。
ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド車、及び、電気自動車がさらに普及するために、電池のコンパクト化も技術課題となっている。
現在、リチウムイオン電池には、黒鉛系の負極活物質材料が利用されている。しかしながら、黒鉛系の負極活物質材料は、上述の技術課題を有する。
そこで、黒鉛系負極活物質材料よりも高容量な合金系負極活物質材料が注目されている。合金系負極活物質材料としては、シリコン(Si)系負極活物質材料、スズ(Sn)系負極活物質材料が知られている。よりコンパクトで長寿命なリチウムイオン電池の実用化のために、上記合金系負極活物質材料に対して様々な検討がなされている。
しかしながら、合金系負極活物質材料の体積は、充放電時に大きな膨張及び収縮を繰り返す。そのため、合金系負極活物質材料は容量が劣化しやすい。例えば、充電に伴う黒鉛の体積膨張収縮率は、12%程度である。これに対して、充電に伴うSi単体又はSn単体の体積膨張収縮率は400%前後である。このため、Sn単体の負極板が充放電を繰り返すと、顕著な膨張収縮が起こり、負極板の集電体に塗布された負極合剤がひび割れを起こす。その結果、負極板の容量が急激に低下する。これは、主に、体積膨張収縮により一部の活物質が遊離して負極板が電子伝導性を失うことに起因する。
米国特許出願公開第2008/0233479号(特許文献1)には、合金系負極活物質材料の上述の課題の解決策が提案されている。具体的には、特許文献1の負極材料は、Ti−Ni系超弾性合金と、超弾性合金中に形成されるSi粒子とを備える。リチウムイオンの吸蔵及び放出に伴って起こるシリコン粒子の大きな膨張収縮変化を、超弾性合金により抑制できる、と特許文献1には記載されている。
米国特許出願公開第2008/0233479号
しかしながら、特許文献1に開示された手法で同二次電池の充放電サイクル特性が十分に向上するかは疑わしい。そもそも、特許文献1で提案された負極活物質材料を実際に製造するのは極めて困難であると思われる。
本発明の目的は、体積当たりの放電容量、充放電サイクル特性、電極板に用いた際の合剤密度、及び粒子間の電気的接触を改善可能な負極活物質材料を提供することである。
本実施形態の負極活物質材料は、第1の平均粒径を有する大径粉末と、第1の平均粒径と異なる第2の平均粒径を有する小径粉末とを含有する。第1及び第2の平均粒径の比は、第1粒径:第2粒径=1.2:1〜20:1である。大径粉末及び小径粉末の含有量(質量)の比が、大径粉末:小径粉末=25:1〜1:3である。大径粉末及び小径粉末は、合金相を含有する。合金相は金属イオンを放出するとき又は金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態する。
本実施形態の負極活物質材料は、体積当たりの放電容量、充放電サイクル特性、電極板に用いた際の合剤密度、及び粒子間の電気的接触を改善可能である。
図1は、DO3構造の斜視図である。 図2Aは、本実施形態の合金相の母相のDO3構造の模式図である。 図2Bは、マルテンサイト相の1種であるγ1’相の2H構造の模式図である。 図2Cは、DO3構造から2H構造への熱弾性型無拡散変態を説明するための結晶面の模式図である。 図2Dは、図2Cと異なる他の結晶面の模式図である。 図2Eは、図2C及び図2Dと異なる他の結晶面の模式図である。 図3は、本発明例1の合金相の充放電前後のX線回折プロファイルと、リートベルト法によるシミュレート結果とを示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
本実施の形態による負極活物質材料は、平均粒径の異なる2種類の合金粉末である大径粉末と小径粉末とを含有する。大径粉末と小径粉末の平均粒径の比は、大径粉末:小径粉末=1.2:1〜20:1である。大径粉末と小径粉末の含有量(質量)の比が、大径粉末:小径粉末=25:1〜1:3である。大径粉末および小径粉末は、合金相を含有する。合金相は、金属イオンを放出するとき又は金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態する。
本明細書にいう「負極活物質材料」は、好ましくは、非水電解質二次電池用の負極活物質材料である。本明細書にいう「熱弾性型無拡散変態」は、いわゆる熱弾性型マルテンサイト変態である。「金属イオン」は、例えば、リチウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン等である。好ましい金属イオンは、リチウムイオンである。
大径粉末及び小径粉末は、上記合金相以外の他の相を含有してもよい。他の相は例えば、シリコン(Si)相、スズ(Sn)相、上記合金相以外の他の合金相(熱弾性型無拡散変態しない合金相)等である。
好ましくは、上記合金相は、大径粉末および小径粉末の主成分(主相)である。「主成分」とは、50%体積以上を占める成分を意味する。合金相は、本発明の主旨を損なわない範囲で不純物を含有してもよい。しかしながら、不純物はできるだけ少ない方が好ましい。
本実施形態の負極活物質材料を用いて形成された負極は、非水電解質二次電池に使用した場合、黒鉛からなる負極よりも高い体積放電容量(体積当たりの放電容量)を有する。さらに、本実施形態の負極活物質材料を含む負極を用いた非水電解質二次電池は、従来の合金系負極を用いた場合よりも、容量維持率が高い。したがって、この負極活物質材料は、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を十分に向上することができる可能性が高い。
高い容量維持率を示すのは、充放電時に発生する膨張収縮による歪が、熱弾性型無拡散変態によって緩和されるためと考えられる。さらに、本実施形態の負極活物質材料は、負極に用いた際の充填密度に優れる。そのため、負極板の合剤密度が向上する。その結果、負極活物質粒子間の電気的接触性に優れる。
大径粉末及び小径粉末が含有する合金相は、次の4つのタイプ1〜タイプ4のいずれのタイプでもよい。以下、大径及び小径粉末を合わせて、特定粉末ともいう。
タイプ1の合金相は、金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態し、金属イオンを放出するときに逆変態する。この場合、合金相は、常態で母相である。
タイプ2の合金相は、金属イオンを吸蔵するときに逆変態し、金属イオンを放出するときに熱弾性型無拡散変態する。この場合、合金相は、常態でマルテンサイト相である。
タイプ3の合金相は、金属イオンを吸蔵するときに補足変形(すべり変形または双晶変形)し、金属イオンを放出するときに元のマルテンサイト相に戻る。この場合、合金相は、常態でマルテンサイト相である。
タイプ4の合金相は、金属イオンを吸蔵するときにマルテンサイト相から別のマルテンサイト相となり、金属イオンを放出するときに元のマルテンサイト相に戻る。この場合、合金相は常態でマルテンサイト相である。
タイプ1の合金相の場合、好ましくは、熱弾性型無拡散変態後の合金相の結晶構造がRamsdell表記で2H、3R、6R、9R、18R、M2H、M3R、M6R、M9R及びM18Rのいずれかであり、逆変態後の合金相の結晶構造がStrukturbericht表記でDO3である。さらに好ましくは、熱弾性型無拡散変態後の合金相の結晶構造は上記2Hであり、逆変態後の合金相の結晶構造は上記DO3である。
タイプ1の合金相の場合、好ましくは、合金相は、Cuと、Snとを含有し、熱弾性型無拡散変態後に上記2H構造を含有し、逆変態後に上記DO3構造を含有する。
上記合金相は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種以上と、Snとを含有し、残部はCu及び不純物でもよい。
上記合金相はさらに、サイト欠損を含む、F−Cell構造のδ相と、2H構造のε相と、単斜晶のη’相と、DO3構造を有する相からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
サイト欠損を含むこれらのδ相、ε相、η’相、及びDO3構造を有する相はいずれも、合金相中に、金属イオン(Liイオン等)の貯蔵サイト及び拡散サイトを形成する。そのため、負極活物質材料の体積放電容量及びサイクル特性がさらに改善される。
上記負極活物質材料において、上記合金相の相変態前後の単位胞の体積膨張率又は体積収縮率は、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。単位胞の体積膨張率は下式(1)で定義され、単位胞の体積収縮率は下式(2)で定義される。
(単位胞の体積膨張率)=[(金属イオン吸蔵時の単位胞の体積)−(金属イオン放出時の単位胞の体積)]/(金属イオン放出時の単位胞の体積)×100・・・(1)
(単位胞の体積収縮率)=[(金属イオン吸蔵時の単位胞の体積)−(金属イオン放出時の単位胞の体積)]/(金属イオン吸蔵時の単位胞の体積)×100・・・(2)
式(1)及び式(2)中の「金属イオン放出時の単位胞の体積」には、吸蔵時の単位胞の結晶格子範囲に対応する放出時の単位胞の体積が代入される。
上述の負極活物質材料は、電極、特に非水電解質二次電池の電極(負極)を構成する活物質として使用することができる。非水電解質二次電池は例えば、リチウムイオン二次電池である。
以下、本実施形態による負極活物質材料について詳述する。
<負極活物質材料>
本発明の実施の形態に係る負極活物質材料は、平均粒径の異なる2種類の合金粉末である大径粉末と小径粉末とを含有する。大径粉末と小径粉末の平均粒径の比は、大径粉末:小径粉末=1.2:1〜20:1である。混合粉末中の大径粉末と小径粉末の含有量(質量)の比が、大径粉末:小径粉末=25:1〜1:3である。大径粉末および小径粉末は、合金相を含有する。この合金相は、上述のとおり、Liイオンに代表される金属イオンを放出するとき、又は、金属イオンを吸蔵するとき、熱弾性型無拡散変態する。熱弾性型無拡散変態は、熱弾性型マルテンサイト変態とも呼ばれる。以下、本明細書では、熱弾性型マルテンサイト変態を単に「M変態」といい、マルテンサイト相を単に「M相」という。金属イオンを吸蔵又は放出するときにM変態する合金相を、「特定合金相」ともいう。
(I)合金相について
特定粉末(大径粉末および小径粉末)が含有する特定合金相は、M相及び母相の少なくとも一方を主体とする。特定合金相は、充放電の際に金属イオンの吸蔵及び放出を繰り返す。そして、金属イオンの吸蔵及び放出に応じて、特定合金相はM変態、逆変態、補足変形等する。これらの変態挙動は、金属イオンの吸蔵及び放出時に合金相が膨張及び収縮することにより生じる歪みを緩和する。
特定合金相は、上記タイプ1〜タイプ4のいずれのタイプでもよい。好ましくは、特定合金相は、タイプ1である。つまり、特定合金相は好ましくは、金属イオンを吸蔵するときにM変態し、金属イオンを放出するときに逆変態する。
特定合金相の結晶構造は、特定に限定されるものではない。合金相がタイプ1であって、逆変態後の特定合金相(つまり母相)の結晶構造がβ1相(DO3構造)である場合、M変態後の特定合金相(つまりM相)の結晶構造は例えば、β1'相(単斜晶のM18R1構造、又は、斜方晶の18R1構造)、γ1'相(単斜晶のM2H構造、又は、斜方晶の2H構造)、β1''相(単斜晶のM18R2構造、又は、斜方晶の18R2構造)、α1'相(単斜晶のM6R構造、又は、斜方晶の6R構造)等である。
特定合金相の母相の結晶構造がβ2相(B2構造)である場合、特定合金相のM相の結晶構造は例えば、β2’相(単斜晶のM9R構造、又は、斜方晶の9R構造)、γ2’相(単斜晶のM2H構造、又は、斜方晶の2H構造)、α2’相(単斜晶のM3R構造、又は、斜方晶の3R構造)である。
合金相の母相が面心立方格子である場合、合金相のM相の結晶構造は例えば、面心正方格子、体心正方格子である。
上記2H、3R、6R、9R、18R、M2H、M3R、M6R、M9R、M18R等の記号は、Ramsdellの分類による積層構造の結晶構造の表現法として用いられるものである。H及びRの記号は、積層面に垂直な方向の対称性がそれぞれ六方対称及び菱面対称であることを意味する。先頭にMが付記されていない場合、その結晶構造が斜方晶であることを意味する。先頭にMが付記されている場合、その結晶構造が単斜晶であることを意味する。同じ分類記号であっても積層の順番の違いによって区別する場合がある。例えば、2種類のM相であるβ1'相とβ1''相は、積層構造が異なることから、それぞれ18R1、18R2、又は、M18R1、M18R2等と表記して、区別される場合がある。
一般的に、通常の形状記憶効果や擬弾性効果におけるM変態及び逆変態には、体積収縮あるいは体積膨張を伴うことが多い。本実施の形態に係る負極活物質材料が電気化学的に金属イオン(例えばリチウムイオン)を放出又は吸蔵する場合、それぞれの変態の方向における体積収縮又は体積膨張の現象と整合的に結晶構造が変化する場合が多いと考えられる。
本実施の形態による負極活物質材料では、特定合金相において、金属イオンの吸蔵及び放出に伴ってM変態あるいは逆変態が起こる際、通常の形状記憶効果や擬弾性効果の際に現れる結晶構造以外の結晶構造が生成してもよい。
特定合金相がタイプ3である場合、金属イオンの吸蔵又は放出に伴い特定合金相がすべり変形又は双晶変形する。すべり変形では、格子欠陥として転位が導入されるため、可逆的な変形が困難である。したがって、特定合金相がタイプ3である場合、双晶変形が主体的で起こることが望ましい。
[特定合金相の化学組成]
上述の特定合金相の化学組成は、M変態及び逆変態時の結晶構造が上記結晶構造を含有すれば、特に限定されない。
大径粉末が含む合金相と、小径粉末が含む合金相とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
特定合金相がタイプ1である場合、特定合金相の化学組成は例えば、Cu(銅)とSn(スズ)とを含有する。
特定合金相がタイプ1である場合、好ましくは、金属イオンの放電による逆変態後の特定合金相の結晶構造はDO3構造であり、金属イオンの吸蔵によるM変態後の特定合金相の結晶構造は2H構造である。
好ましくは、特定合金相の化学組成は、Snを含有し、残部はCu及び不純物である。さらに好ましくは、この化学組成は、10〜20at%又は21〜27at%のSnを含有し、残部はCu及び不純物からなり、M変態後に2H構造を含有し、逆変態後にDO3構造を含有する。さらに好ましいSn含有量は、13〜16at%、18.5〜20at%、又は、21〜27at%である。
特定合金相の化学組成は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種以上と、Snとを含有し、残部はCu及び不純物であってもよい。
好ましくは、この場合の特定合金相の化学組成は、Sn:10〜35at%と、Ti:9.0at%以下、V:49.0at%以下、Cr:49.0at%以下、Mn:9.0at%以下、Fe:49.0at%以下、Co:49.0at%以下、Ni:9.0at%以下、Zn:29.0at%以下、Al:49.0at%以下、Si:49.0at%以下、B:5.0at%以下、及び、C:5.0at%以下からなる群から選択される1種以上とを含有し、残部はCu及び不純物からなる。上記Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCは任意元素である。
Ti含有量の好ましい上限は、上記のとおり9.0at%である。Ti含有量のさらに好ましい上限は6.0at%であり、さらに好ましくは、5.0at%である。Ti含有量の好ましい下限は、0.1at%であり、さらに好ましくは、0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
V含有量の好ましい上限は、上記のとおり、49.0at%である。V含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。V含有量の好ましい下限は、0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは、1.0at%である。
Cr含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Cr含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Cr含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Mn含有量の好ましい上限は、上記のとおり9.0at%である。Mn含有量のさらに好ましい上限は6.0at%であり、さらに好ましくは5.0at%である。Mn含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Fe含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Fe含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Fe含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Co含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Co含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Co含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Ni含有量の好ましい上限は、上記のとおり9.0at%である。Ni含有量のさらに好ましい上限は5.0at%であり、さらに好ましくは2.0at%である。Ni含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Zn含有量の好ましい上限は、上記のとおり29.0at%である。Zn含有量のさらに好ましい上限は27.0at%であり、さらに好ましくは25.0at%である。Zn含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Al含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Al含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Al含有量の好ましい下限は0.1%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
Si含有量の好ましい上限は、上記のとおり49.0at%である。Si含有量のさらに好ましい上限は30.0at%であり、さらに好ましくは15.0at%であり、さらに好ましくは10.0at%である。Si含有量の好ましい下限は0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
B含有量の好ましい上限は5.0at%である。B含有量の好ましい下限は0.01at%であり、さらに好ましくは0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
C含有量の好ましい上限は5.0at%である。C含有量の好ましい下限は0.01at%であり、さらに好ましくは0.1at%であり、さらに好ましくは0.5at%であり、さらに好ましくは1.0at%である。
好ましくは、特定合金相はさらに、サイト欠損を含有するF−Cell構造のδ相、サイト欠損を含有する2H構造のε相、サイト欠損を含有する単斜晶のη’相、及び、サイト欠損を含有するDO3構造を有する相からなる群から選択される1種以上を含有する。以下、サイト欠損を含有するこれらのδ相、ε相、η’相、及びDO3構造を有する相を、「サイト欠損相」ともいう。ここで、「サイト欠損」とは、結晶構造中の特定の原子サイトにおいて、占有率が1未満の状態であることを意味する。
これらのサイト欠損相は、結晶構造中に複数のサイト欠損を含む。これらのサイト欠損は、金属イオン(Liイオン等)の貯蔵サイト、又は、拡散サイトとして機能する。そのため、特定粉末が、M変態後に2H構造となり、逆変態後にDO3構造となる合金相と、上記サイト欠損相の少なくとも1相とを含有すれば、負極活物質材料の体積放電容量及びサイクル特性がさらに向上する。
特定合金相の化学組成はさらに、放電容量を増大させることを目的として、任意元素として、第2族元素及び/又は希土類元素(REM)を含有してもよい。第2族元素は例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等である。REMは例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等である。
特定粉末(大径粉末および小径粉末)は、上記特定合金相からなるものであってもよいし、上記特定合金相と、金属イオン活性な別の活物質相を含有してもよい。別の活物質相は例えば、スズ(Sn)相、シリコン(Si)相、アルミニウム(Al)相、Co−Sn系合金相、Cu6Sn5化合物相(η’相又はη相)等である。
[特定合金相の体積膨張率及び体積収縮率について]
上記特定合金相が金属イオンの吸蔵及び放出に伴ってM変態又は逆変態する場合、特定合金相の単位胞の好ましい体積膨張収縮率は20%以下である。この場合、金属イオンの吸蔵及び放出に伴う体積変化による歪を十分に緩和することができる。特定合金相の単位胞のさらに好ましい体積膨張収縮率は10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。
特定合金相の体積膨張収縮率は、充放電中のその場X線回折により、測定することができる。具体的には、水分が露点−80℃以下に管理された純アルゴンガス雰囲気中のグローブボックス内で、X線を透過するベリリウム製の窓を備えた専用の充放電セルに、大径粉末または小径粉末を含む電極板、セパレータ、対極リチウム及び電解液を実装して密封する。そして、この充放電セルをX線回折装置に装着する。装着後、充放電過程における初回の充電状態と初回の放電状態における特定合金相のX線回折プロファイルを得る。このX線回折プロファイルから特定合金相の格子定数を求める。特定合金相の結晶格子対応関係を考慮の上、この格子定数から体積変化率を算出することができる。
充放電サイクル過程で、半値幅などによりX線回折プロファイルの形状が変化する場合等は、必要に応じて5〜20回程度の充放電を繰り返してから解析を行う。そして、信頼性の高い複数のX線回折プロファイルからその体積変化率の平均値を求める。
[負極活物質材料が含有する合金相の結晶構造の解析方法]
(1)負極活物質材料中の大径粉末および小径粉末が含有する相(合金相を含む)の結晶構造は、X線回折装置を用いて得られたX線回折プロファイルに基づいて、リートベルト法により解析可能である。具体的には、次の方法により、結晶構造を解析する。
負極に使用される前の負極活物質材料については、混合前の大径粉末及び小径粉末のそれぞれに対して、負極活物質材料に対してX線回折測定を実施して、X線回折プロファイルの実測データを得る。得られたX線回折プロファイル(実測データ)に基づいて、リートベルト法により、粉末中の相の構成を解析する。リードベルト法による解析には、汎用の解析ソフトである「RIETAN2000」(プログラム名)及び「RIETAN−FP」(プログラム名)のいずれかを使用する。
(2)電池内の充電前の負極内の負極活物質材料の結晶構造についても、(1)と同じ方法により特定する。具体的には、充電前の状態で、電池をアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で分解し、電池から負極を取り出す。取り出された負極をマイラ箔に包む。その後、マイラ箔の周囲を熱圧着機で密封する。マイラ箔で密封された負極をグローブボックス外に取り出す。
続いて、負極を無反射試料板(シリコン単結晶の特定結晶面が測定面に平行になるように切り出した板)にヘアスプレーで貼り付けて測定試料を作製する。測定試料をX線回折装置に測定試料をセットして、測定試料のX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得る。得られたX線回折プロファイルに基づいて、リートベルト法により負極内の負極活物質材料の結晶構造を特定する。
(3)1〜複数回の充電後及び1〜複数回の放電後の負極内の負極活物質材料の結晶構造についても、(2)と同じ方法により特定する。
具体的には、電池を充放電試験装置において満充電させる。満充電された電池をグローブボックス内で分解して、(2)と同様の方法で測定試料を作製する。X線回折装置に測定試料をセットして、X線回折測定を行う。
また、電池を完全放電させ、完全放電された電池をグローブボックス内で分解して(2)と同様の方法で測定試料を作製し、X線回折測定を行う。
[大径粉末及び小径粉末の粒径比および混合比]
本発明の実施の形態に係る負極活物質材料において、大径粉末と小径粉末とは、次の関係を満たす。
・大径粉末と小径粉末の平均粒径の比は、大径粉末:小径粉末=1.2:1〜20:1である。
・混合粉末中の大径粉末と小径粉末の含有量(質量)の比が、大径粉末:小径粉末=25:1〜1:3である。
本発明において、粒径とは、粒径が最大となる方向で測定した粒径を意味し、平均粒径は体積累積が50%となる粒径である。平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、日機装製マイクロトラックFRA)により求めることができる。
平均粒径の比を、大径粉末:小径粉末=1.2:1〜20:1の範囲とすることにより、有機物バインダを用いた電極を作製した時に、活物質の容量維持率が顕著に向上する。小径粉末の平均粒径が、大径粉末の平均粒径の1/20より小さいか、あるいは1/1.2より大きくなると、活物質の容量維持率はあまり改善されない。例えば、小径粉末の平均粒径が小さすぎると、大径粉末の粒子間の空隙を小径粉末が埋めても、隙間が依然として大きい。そのため、充填密度は向上するものの、電気的接触は改善されない。その結果、活物質の容量維持率はさほど向上しない上、比表面積が増大する。そのため、1サイクル目のクーロン効率が低下する。逆に、小径粉末の平均粒径が大きすぎると、大径粉末の粒子の配置が乱れる。そのため、充填密度が低下する。さらに、大径粉末の粒子間の接触も悪くなり、活物質の容量維持率の向上は得られない。平均粒径比は、好ましくは大径粉末:小径粉末=2:1〜10:1であり、より好ましくは大径粉末:小径粉末=3:1〜5:1である。
大径粉末の平均粒径は特に制限されない。しかしながら、実際の電極の厚みは150μm程度である。そのため、実用的観点より、大径粉末の平均粒径は、20〜170μmが好ましく、30〜90μmがより好ましい。大径粉末の平均粒径が小さすぎると、さらに小さい小径粉末の平均粒径が小さくなりすぎ、比表面積が大きくなり過ぎる。そのため、1サイクル目のクーロン効率が低下してしまう。
この2種類の特定粉末の混合比を、大径粉末:小径粉末の質量比=25:1〜1:3の範囲とする。これにより、有機物バインダの電極での活物質の容量維持率が顕著に向上する。小径粉末の含有量が大径粉末の含有量の1/25より少ないと、大径粉末の粒子間の隙間に入る小径粉末が少な過ぎて、利用率の改善効果を十分得られない。小径粉末の含有量が大径粉末の含有量の1/3より多いと、大径粉末の粒子間の隙間に充填するのに必要な量より小径粉末が多過ぎる。そのため、大径粉末の粒子の配列が乱れて、充填密度が低下する。さらに、比表面積が大きい小径粉末が増加するため、耐食性が劣化し、充放電繰り返し寿命が低下する。この混合比は、好ましくは、大径粉末:小径粉末の質量比=5:1〜1.5:1の範囲である。
このように、大小2種類の特定粉末(大径粉末、小径粉末)を使用する本実施形態の負極活物質材料において、電極特性が改善される適正な平均粒径比および混合比は、充填密度が最大となる平均粒径比および混合比よりかなり広い範囲である。これは、最大充填密度に必要な条件より大径粉末がやや多いか、少なくなっても、不完全な充填状態となるため、かえって一部の接触点では局所的に高い接触面圧で接することになり、この接触点で良好な電気的接触が実現するためと考えられる。
すなわち、最大充填密度が得られる混合条件では、小径粉末が大径粉末の間隙にきれいに納まるために、接触点数が多く、各接触点に加わる圧力がほぼ均等となる。そのため、良好な電気的接触が得られる。一方、最大充填密度が得られる条件より平均粒径比または混合比が少しずれた条件では、粉末間の接触点数は減少するものの、一部の接触点では強い圧力が加わる。そのため、そのような接触点における電気的接触が良好となる。その結果、電極全体の電気伝導性は最大充填密度の場合と同様に改善され、最大充填密度となる混合条件よりも広い範囲で、改善された電極特性を得ることができる。
大径粉末としては球形粉末を使用した方が好ましい。大径粉末が不定形であると充填密度が低下する。そのため、放電容量を十分に高くすることができない上、比表面積が増大する。その結果、耐食性劣化による容量維持率の低下が大きくなる。
大径粉末の間隙に充填される小径粉末は、球形粉末と不定形粉末とのいずれでもよい。小径粉末が不定形粉末であると、球形粉末を使用した場合に比べて、充填密度はやや減少するものの、電極特性はむしろ改善される。これは、粉砕した不定形の粉末粒子には平面が多数あるため、曲面で構成される球形粉末より粉末接触面積が大きくなり、利用率の改善効果の点では球形粉末より優れているためである。すなわち、不定形の小径粉末を使用する場合は、充填性は不明ではあるが、容量維持率が向上する。そのため、電極としての特性は、より充填密度が高くなる小径粉末が球形粉末である場合と同様に、改善することができる。
<負極活物質材料の製造方法>
上記特定合金相を含有する大径粉末及び小径粉末を含む混合物からなる負極活物質材料の製造方法について説明する。
大径粉末及び小径粉末を、それぞれ以下に述べる方法で製造し、所定の混合比で混合することにより、本実施形態の負極活物質材料を得ることができる。
特定合金相を含む粉末の原料の溶湯を製造する。例えば、上述の化学組成を有する溶湯を製造する。溶湯は、アーク溶解又は抵抗加熱溶解等の通常の溶解方法で素材を溶解して製造される。次に、溶湯を用いて造塊法によりインゴット(バルク合金)を製造する。
または、好ましくは、前記溶湯を急冷凝固させることにより、薄鋳片または粒子を製造する。この方法を急冷凝固方法という。急冷凝固方法は例えば、ストリップキャスティング法、メルトスピン法、ガスアトマイズ法、溶湯紡糸法、水アトマイズ法、油アトマイズ法等である。
溶製によって得られたバルク合金(インゴット)を(1)切断したり、(2)ハンマーミル等で粗く破砕したり、(3)ボールミルや、アトライタ、ディスクミル、ジェットミル、ピンミル等で機械的に微粉砕したりして、必要な平均粒径に調整する。バルク合金が延性を有し、通常の粉砕が困難な場合、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだグラインダーディスク等により、バルク合金を切削粉砕してもよい。これらの粉砕工程において、応力誘起によるM相が生成する場合、合金設計や、熱処理、粉砕条件などを適宜組み合わせて、その生成比率を必要に応じて調整する。アトマイズ法による粉末が溶製のまま或いは熱処理を施した状態で使用することができる場合には、特に粉砕工程を必要としない場合もある。また、ストリップキャスティング法により溶製材を得る場合においてその延性により破砕が困難である場合には、シャーリングなどの機械的な裁断によってその溶製材を所定のサイズに調整する。また、かかる場合、必要な段階においてその溶製材を熱処理等してM相や母相の比率等を調整してもよい。
熱処理により特定合金相の構成比率などを調整する場合には、その材料を必要に応じて不活性雰囲気中で所定の温度及び時間で保持した後に急冷してもよい。この際、材料のサイズに応じて水、塩水、油、液体窒素等の焼き入れ媒体を選択し、その焼き入れ媒体を所定の温度に設定することによって、冷却速度を調整してもよい。また、この焼入れ後、直ちに液体窒素サブゼロ処理してもよい。この液体窒素サブゼロ処理により、特定合金相の構成比率を調整したり、マルテンサイト変態温度を調整できる。
<負極の製造方法>
本発明の実施の形態に係る負極活物質材料を用いた負極は、当業者に周知の方法で製造することができる。
例えば、本発明の実施の形態による負極活物質材料の特定粉末に対して、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダを混合し、さらに負極に十分な導電性を付与するために天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等の炭素材料粉末を混合する。これにN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、水などの溶媒を加えてバインダを溶解した後、必要であればホモジナイザ、ガラスビーズを用いて十分に攪拌し、スラリ状にする。このスラリを圧延銅箔、電析銅箔などの活物質支持体に塗布して乾燥する。その後、その乾燥物にプレスを施す。以上の工程により、負極板を製造する。
混合するバインダは、負極の機械的強度や電池特性の観点から5〜10質量%程度であることが好ましい。支持体は、銅箔に限定されない。支持体は例えば、ステンレス、ニッケル等の他の金属の薄箔や、ネット状のシートパンチングプレート、金属素線ワイヤーで編み込んだメッシュなどでもよい。
<電池の製造方法>
本実施形態による非水電解質二次電池は、上述の負極と、正極と、セパレータと、電解液又は電解質とを備える。電池の形状は、円筒型、角形であってもよいし、コイン型、シート型等でもよい。本実施形態の電池は、ポリマー電池等の固体電解質を利用した電池でもよい。
本実施形態の電池の正極は、好ましくは、金属イオンを含有する遷移金属化合物を活物質として含有する。さらに好ましくは、正極は、リチウム(Li)含有遷移金属化合物を活物質として含有する。Li含有遷移金属化合物は例えば、LiM1−xM’xO2、又は、LiM2yM’O4である。ここで、式中、0≦x、y≦1、M及びM’はそれぞれ、バリウム(Ba)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)の少なくとも1種である。
ただし、本実施形態の電池は、遷移金属カルコゲン化物;バナジウム酸化物及びそのリチウム(Li)化合物;ニオブ酸化物及びそのリチウム化合物;有機導電性物質を用いた共役系ポリマー;シェプレル相化合物;活性炭、活性炭素繊維等、といった他の正極材料を用いてもよい。
本実施形態の電池の電解液は、一般に、支持電解質としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水系電解液である。リチウム塩は例えば、LiClO4,LiBF4,LiPF6,LiAsF6,LiB(C65),LiCF3SO3,LiCH3SO3,Li(CF3SO22N,LiC49SO3,Li(CF2SO22,LiCl,LiBr,LiI等である。これらは、単独で用いられてもよく組み合わせて用いられてもよい。有機溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステル類が好ましい。但し、カルボン酸エステル、エーテルをはじめとする他の各種の有機溶媒も使用可能である。これらの有機溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
セパレータは、正極及び負極の間に設置される。セパレータは絶縁体としての役割を果たす。セパレータはさらに、電解質の保持にも大きく寄与する。本実施形態の電池は周知のセパレータを備えればよい。セパレータは例えば、ポリオレフィン系材質であるポリプロピレン、ポリエチレン、又はその両者の混合布、もしくは、ガラスフィルターなどの多孔体である。
以下、実施例を用いて上述の本実施形態の負極活物質材料、負極及び電池をより詳細に説明する。なお、本実施形態の負極活物質材料、負極及び電池は、以下に示す実施例に限定されない。
次の方法により、表1に示す本発明例1〜本発明例10及び比較例1〜比較例4の粉状の負極活物質材料、負極、コイン電池を製造した。そして、負極活物質材料の充放電による結晶構造の変化を確認した。さらに、負極活物質材料のタップ密度(充填密度の指標)、負極の電極板上における合剤密度、電池の放電容量(体積当たりの放電容量)、初回クーロン効率、及び、サイクル特性(容量維持率)を調査した。
[本発明例1]
[負極活物質材料の製造]
以下の通り、大径粉末及び小径粉末を作製し、これらの粉末を表1記載の含有量比で混合した。この混合物を、本発明例1の負極活物質材料とした。
(大径粉末及び小径粉末)
負極活物質材料の最終的な化学組成が、表1中の「化学組成」欄に記載の化学組成となるように、複数の素材(元素)の混合物をアルゴンガス雰囲気中のアルミナ製溶解ルツボ中で高周波溶解させ、溶湯を製造した。
溶湯を、周速300m/分で回転する銅製の水冷ロール上に接触させることにより急冷凝固させて、薄片状の鋳片を得た(ストリップキャスティング(SC)法)。得られた鋳片を粉砕機(名称:シェーカーミル,Willy A.Bachofen社製,TC2型)で粉砕した後、106μm、75μm、63μm、45μm、32μm、20μmの篩を組み合わせて、分級器(名称:ロータップ,吉田製作所製)で篩分けにより分級した。以上の工程により、表1記載の平均粒径の大径粉末及び小径粉末を得た。この大径粉末と小径粉末の化学組成は、表1中の「化学組成」欄に記載のとおりであった。
(負極活物質材料)
製造された大径粉末及び小径粉末を、表1に示す含有量比(質量比)で混合して、負極活物質材料とした。
[負極の製造]
上述の粉末状の負極活物質材料と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)(2倍希釈液)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、質量比75:15:10:5(配合量は1g:0.2g:0.134g:0.067g)で混合した。そして、混練機を用いて、スラリ濃度が27.2%となるように混合物に蒸留水を加えて負極合剤スラリを製造した。スチレンブタジエンゴムは水で2倍に希釈されたものを使用しているため、秤量上、0.134gのスチレンブタジエンゴムが配合された。
製造された負極合剤スラリを、アプリケータ(150μm)を用いて金属箔上に塗布した。スラリが塗布された金属箔を、100℃で20分間乾燥させた。乾燥後の金属箔は、表面に負極活物質材料からなる塗膜を有した。塗膜を有する金属箔に対して打ち抜き加工を実施して、直径13mmの円板状の金属箔を製造した。打ち抜き加工後の金属箔を、プレス圧500kgf/cm2で押圧して、板状の負極を製造した。結晶構造の特定以外の負極活物質材料の評価・測定に用いる負極では、金属箔は銅箔とした。
結晶構造の特定に用いる負極では、金属箔はニッケル箔とした。
[電池の製造]
製造された負極と、電解液としてEC−DMC−EMC−VC−FECと、セパレータとしてポリオレフィン製セパレータ(φ17mm)と、正極材として板状の金属Li(φ19×1mmt)とを準備した。準備された負極、電解液、セパレータ、正極を用いて、2016型のコイン電池を製造した。コイン電池の組み立てをアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で行った。
[結晶構造の特定]
負極に使用する前の大径粉末及び小径粉末と、初回充電前の負極中の負極活物質材料の大径粉末及び小径粉末と、1〜20回充放電した後の負極中の負極活物質材料の大径粉末及び小径粉末の結晶構造を、次の方法により特定した。対象となる負極活物質材料に対してX線回折測定を実施して、実測データを得た。そして、得られた実測データに基づいて、リートベルト法により、対象となる負極活物質材料に含まれる結晶構造を特定した。さらに具体的には、次の方法により結晶構造を特定した。
(1)負極に使用される前の大径粉末及び小径粉末の結晶構造解析
負極に使用される前の大径粉末及び小径粉末の混合粉末(負極活物質材料)に対してX線回折測定を実施して、X線回折プロファイルの実測データを得た。
具体的には、リガク製の製品名SmartLab(ロータターゲット最大出力9KW;45kV−200mA、)を用いて、負極活物質材料の大径粉末及び小径粉末の混合粉末のX線回折プロファイルを取得した。
得られたX線回折プロファイル(実測データ:図3中の(e))に基づいて、リートベルト法により、大径粉末及び小径粉末の混合粉末中の合金相の結晶構造を解析した。
DO3規則構造は、図2Aに示されるような規則構造である。Cu-Sn系の合金では、図2A中、黒丸の原子サイトに主にCuが存在し、白丸の原子サイトに主にSnが存在する。第3元素の添加によって、それぞれのサイトが置換される場合もある。このような結晶構造は、空間群の分類上、International Table(Volume−A)のNo.225(Fm−3m)となることが知られている。この空間群番号の結晶構造の格子定数や原子座標は、表2に示される通りとなる。
そこで、この空間群番号の構造モデルをリートベルト解析の初期構造モデルとして、リートベルト解析によりこの化学組成のβ1相(DO3構造)の回折プロファイルの計算値(以下、計算プロファイルという)を求めた。リートベルト解析にはRietan−FP(プログラム名)を用いた。
さらに、γ1’相の結晶構造の計算プロファイルも求めた。γ1’の結晶構造は、Ramsdell記号の表記では2H構造であり、空間群はInternational Table(Volume−A)のNo.59−2(Pmmn)である。No.59−2(Pmmn)の格子定数及び原子座標を表3に示す。
上記表3の空間群番号の結晶構造をリートベルト解析の初期構造モデルとして、RIETAN−FPを用いて、計算プロファイルを求めた。図3中の(d)はDO3構造の計算プロファイルであり、(c)は2H構造の計算プロファイルである。
解析の結果、本発明例1の大径粉末及び小径粉末の混合粉末には、M相の1種であるγ1’相(2H構造)と、その母相であるβ1相(DO3構造)と、図3中の(e)の44degree近傍の回折線に対応する別の相とが混在した。
(2)負極中の負極活物質材料の結晶構造解析
充電前の負極内の負極活物質材料の大径粉末及び小径粉末の混合粉末の結晶構造についても、(1)と同じ方法により特定した。実測のX回折プロファイルは、次の方法で測定した。
充電前の状態で、上述のコイン電池をアルゴン雰囲気中のグローブボックス内で分解し、コイン電池からニッケル箔に塗布された状態の板状の負極を取り出した。取り出された負極をマイラ箔(デュポン社製)に包んだ。その後、マイラ箔の周囲を熱圧着機で密封した。マイラ箔で密封された負極をグローブボックス外に取り出した。
続いて、負極をリガク製無反射試料板(シリコン単結晶の特定結晶面が測定面に平行になるように切り出した板)にヘアスプレーで貼り付けて測定試料を作製した。
後述の(4)に記載のX線回折装置に測定試料をセットして、後述の(4)に記載の測定条件で、測定試料のX線回折測定を行った。
(3)充電後及び放電後の負極中の負極活物質材料の結晶構造の解析
1〜20回の充電後及び1〜20回の放電後の負極内の負極活物質材料の大径粉末及び小径粉末の混合粉末の結晶構造についても、(1)と同じ方法により特定した。実測のX回折プロファイルは、次の方法で測定した。
上述のコイン電池を充放電試験装置において満充電させた。満充電されたコイン電池をグローブボックス内で分解して、(2)と同様の方法で測定試料を作製した。後述(4)に記載のX線回折装置に測定試料をセットして、後述(4)の測定条件で測定試料のX線回折測定を行った。
また、上述のコイン電池を完全放電させた。完全放電されたコイン電池をグローブボックス内で分解して(3)と同様の方法で測定試料を作製した。後述(4)に記載のX線回折装置にこの測定試料をセットして、後述(4)の測定条件で測定試料のX線回折測定を行った。
コイン電池で充放電を繰り返した後の負極についても、同様の方法によりX線回折測定を行った。
(4)X線回折装置と測定条件
・装置:リガク製 SmartLab
・X線管球:Cu−Kα線
・X線出力:45kV,200mA
・入射側モノクロメータ:ヨハンソン素子(Cu−Kα2線及びCu−Kβ線をカット)
・光学系:集中法
・入射平行スリット:5.0degree
・入射スリット:1/2degree
・長手制限スリット:10.0mm
・受光スリット1:8.0mm
・受光スリット2:13.0mm
・受光平行スリット:5.0degree
・ゴニオメータ:SmartLabゴニオメータ
・X線源−ミラー間距離:90.0mm
・X線源−選択スリット間距離:114.0mm
・X線源−試料間距離:300.0mm
・試料−受光スリット1間距離:187.0mm
・試料−受光スリット2間距離:300.0mm
・受光スリット1−受光スリット2間距離:113.0mm
・試料−検出器間距離:331.0mm
・検出器:D/Tex Ultra
・測定範囲:10−120degreeまたは10−90degree
・データ採取角度間隔:0.02degree
・スキャン方法:連続
・スキャン速度:2degree/min.または、2.5degree/min.
(5)X線回折測定データの解析結果
(1)及び(3)で得られたX線回折データを図3に示す。図3中の(e)は、(1)で求めた負極活物質材料の粉末のX線回折プロファイルである。(f)は1回目の充電後の負極活物質材料のX線回折プロファイルであり、(g)は1回目の放電後のX線回折プロファイルである。図3中の(a)は、マイラー箔単独について同様のX線回折を行った、X線回折実測プロファイルである。図3中の(b)は、集電体に用いたNi箔の回折線を識別するために計算したNiのX線回折プロファイルである。図3中の(c)は、本実施例の化学組成における2H構造の計算プロファイルであり、図3中の(d)は、本実施例の化学組成におけるDO3構造の計算プロファイルである。
(5−1)
(1)、(2)及び(3)で得られたX線回折データから、負極活物質材料と電解液との間で大きな化学反応が進行していないことを確認できた。
(5−2)
「充電後の負極活物質材料」(図3(e))、及び、「放電後の負極活物質材料」(図3(f))のX線回折プロファイルをそれぞれ比較した。その結果、回折角2θが43.3°近傍(M相(γ1'相)に起因する位置)の位置(以下、M相の最強回折線という)において、回折線が繰り返し可逆的に変化した。すなわち、構造変化が示された。
(5−3)
そこで、「充電後の負極活物質材料」及び「放電後の負極活物質材料」の結晶構造をリートベルト法を用いて特定した。
例えば、負極活物質材料において、図1及び図2Aに示す母相のDO3構造では、図2Dに示す結晶面Aと、図2Cに示す結晶面Bとが交互に積層する。DO3構造と、M相の一種であるγ1'相との間で相変態が起こる場合、図2A及び図2Bに示すとおり、結晶面Bがせん断応力により規則的にシャフリングを起こして結晶面B'の位置にずれる。この場合、ホスト格子の拡散を伴わずして相変態(M変態)が起こる。M変態後の2H構造では、図2Dに示す結晶面Aと、図2Eに示す結晶面B’とが交互に積層する。
そこで、充電後及び放電後の負極活物質材料のX線回折プロファイルの実測データと、β1相(DO3構造)の計算プロファイル(図3(d):代表的な回折線の2θ角度位置に●(黒丸)印を表記)と、γ1'相(2H構造)の計算プロファイル(図3(c):代表的な回折線の2θ角度位置に■(黒四角)印を表記)とを対比して、本実施例の負極中の負極活物質材料の結晶構造がM変態を伴うものであるか、そうでないもの(つまり、充放電時にホスト格子の拡散を伴うもの)かを判断した。
図3(f)を参照して、X線回折プロファイルでは、初回の充電により、43.3°近傍のM相の最強回折線の強度が増加し、続く放電により、その強度が低下した。この回折線はRIETAN−FPの計算プロファイルから、次に説明するとおり、M変態によりM相(γ1')が形成されたことに由来すると判断できた。
具体的には、(f)に示すとおり、2H構造では、1回目の充電後のX線回折プロファイルにおいて、43.3°のM相の最強回折線をはじめとする図3(c)の2H構造に対応する2θ角度位置(■(黒四角)印)のピーク強度が増加した。一方、DO3構造に対応する●(黒丸)印のピーク強度のいくつかは減少した。一方、1回目の放電後のX線回折プロファイルでは、■(黒四角)印の2H構造に対応する回折線のいくつかの強度が低下し、●(黒丸)印のDO3構造に対応する回折線の強度が増加した。特にに、43.3°近傍の強度ピークは、2H以外の他の結晶構造のX線プロファイル(シミュレート結果)に現れるものではなかった。活物質以外に測定時に現れる構成部材のX線回折線については、図3中の(a)および(b)に、それぞれ、マイラー箔の実測回折プロファイルと、集電体のニッケルの計算プロファイルを示し、主要な回折線の2θ角度位置には、それぞれ◇印と△印を示した。図3中の(f)及び(g)の実測プロファイルには、これらの部材に由来する回折線が現れるため、対応する位置に◇(白菱形)印と△(白三角)印を示した。
以上より、本実施例の負極は、充電によりM変態してM相(2H構造)となり、放電により母相(DO3構造)となる合金相を含有した。すなわち、本実施例の負極は、金属イオンであるリチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する合金相を含有した。
本実施例の負極では、充電時にM変態、放電時に逆変態が繰り返されていた。
[タップ密度]
大径粉末と小径粉末の混合物である負極活物質材料のタップ密度を、ホソカワミクロン社製パウダーテスタ(登録商標)を用いて、次の条件で測定した。内径2cm、内容積50cm3の円筒状タップセルに、負極活物質材料を充填した後、ストローク長5mmのタップを500回行ない、タップ後の体積と質量から密度を求め、この密度をタップ密度とした。このように測定して得られたタップ密度は、表1に示す通りであった。
[負極電極の合剤密度]
上記[負極の製造]で得られた直径13mmの板状の負極について、合剤層の密度(合剤密度)を求めた。具体的には、直径2mmの平型ダイヤルゲージを用いて、負極板の厚みを測定し、銅箔の厚みを差し引いた負極合剤層の厚みと、塗布した負極活物質合剤の質量測定値から、合剤密度を算出した。厚みの測定は、直径13mmの負極板の中央と周辺4か所について行い、それら5箇所の平均値を合剤密度算出に用いた。
[コイン電池の充放電性能評価]
次に、本発明例1の電池の初回クーロン効率、放電容量、及び容量維持率を評価した。
対極に対して電位差0.005Vになるまで0.1mAの電流値(0.075mA/cm2の電流値)又は、1.0mAの電流値(0.75mA/cm2の電流値)でコイン電池に対して定電流ドープ(電極へのリチウムイオンの挿入、リチウムイオン二次電池の充電に相当)を行った。その後、0.005Vを保持したまま、7.5μA/cm2になるまで定電圧で対極に対してドープを続け、ドープ容量を測定した。
次に、0.1mAの電流値(0.075mA/cm2の電流値)又は、1.0mAの電流値(0.75mA/cm2の電流値)で、電位差1.2Vになるまで脱ドープ(電極からのリチウムイオンの離脱、リチウムイオン二次電池の放電に相当)を行い、脱ドープ容量を測定した。
ドープ容量、脱ドープ容量は、この電極をリチウムイオン二次電池の負極として用いた時の充電容量、放電容量に相当する。したがって、測定されたドープ容量を充電容量と定義し、測定された脱ドープ容量を放電容量と定義した。
得られた放電容量及び充電容量の値を用い、次の式により、1サイクル目のクーロン効率を求めた。
クーロン効率(%)=(放電容量(mAh)/充電容量(mAh))×100
上述と同一条件で、充放電を20回繰り返した。そして、「20サイクル目の脱ドープ時の放電容量」を「1サイクル目の脱ドープ時の放電容量」で除して100を乗じたものを、容量維持率(%)とした。
本発明例1のコイン電池において、初回のクーロン効率、初回の放電容量、20サイクル目の放電容量、および容量維持率は、表1に記載のとおりであった。
[本発明例2〜3,比較例1〜2について]
本発明例2〜3および比較例1〜2では、大径粉末と小径粉末の平均粒径の比を、表1に示す比に変更した以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。
本発明例1と同様にして、結晶構造の特定、及び、タップ密度、負極板の合剤密度、コイン電池の各種充放電性能評価をおこなった。
結晶構造の特定の結果は、本発明例1と同様であった。すなわち、本発明例2〜3及び比較例1〜2の合金相が、リチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する結晶構造を有することが確認された。
タップ密度、負極板の合剤密度、コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。
[本発明例4〜6,比較例3〜4について]
本発明例4〜6および比較例3〜4では、大径粉末と小径粉末の含有量の比を、表1に示す比に変更した以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。
本発明例1と同様にして、結晶構造の特定、及び、タップ密度、負極板の合剤密度、コイン電池の各種充放電性能評価をおこなった。
結晶構造の特定の結果は、本発明例と同様であった。すなわち、本発明例4〜6及び比較例3〜4の合金相が、リチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する結晶構造を有することが確認された。
タップ密度、負極板の合剤密度、コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。
[本発明例7および8]
[負極活物質材料の製造]
以下の方法で大径粉末及び小径粉末を作製し、これらの粉末を表1記載の含有量比で混合し、負極活物質材料とした。本発明例1と同様にして、負極及びコイン電池を製造した。
(大径粉末及び小径粉末)
負極活物質材料の最終的な化学組成が、表1中の「化学組成」欄に記載の化学組成となるように、複数の素材(元素)の混合物をアーク溶解によりアルゴンガス雰囲気で溶解させ、インゴットを製造した。これを600℃で24時間、アルゴン雰囲気中で均一化熱処理し、その後、約5mm程度のサイズに砕いたものを、透明石英封入管に真空状態で封入し、630℃で24時間溶体化処理を施した後、直ちに氷塩水中に焼入れた。この際、石英管を割り、十分に冷却がなされるようにした。その後、直ちに液体窒素中に投入してサブゼロ処理を行い、2時間保持した後、粒状の試料を回収した。得られた粒状の試料を、小型振動ロッドミル(吉田製作所製,型式1045)を用いて粉砕した。その後、本発明例1に示したと同様に篩分け分級し、表1に記載の平均粒径の大径粉末と小径粉末を得た。
本発明例1と同様にして、結晶構造の特定、及び、タップ密度、負極板の合剤密度、コイン電池の各種充放電性能評価をおこなった。
結晶構造の特定の結果は、本発明例1と同様であった。すなわち、本発明例7〜8の合金相が、リチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する結晶構造を有することが確認された。
タップ密度、負極板の合剤密度、コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。
[本発明例9および10]
本発明例9〜10では、大径粉末と小径粉末の最終的な合金相化学組成、大径粉末と小径粉末の平均粒径の比、及び、大径粉末と小径粉末の含有量比を、表1に示すものに変更した以外は、本発明例1と同様にして、負極活物質材料、負極及びコイン電池を製造した。
結晶構造の特定によると、充放電に伴い、合金相は次のように変化した。初回充電前はM相(2H構造)、初回充電後はM相(2H構造)、初回放電後は母相(DO3構造)となり、以降は、充電によりM変態してM相(2H構造)となり、放電により母相(DO3構造)となった。すなわち、本発明例の負極は、金属イオンであるリチウムイオンを吸蔵するときにM変態し、リチウムイオンを放出するときに逆変態する合金相を有することが確認された。
負極活物質材料中の酸素濃度、コイン電池の各種充放電性能評価の結果は、表1の通りであった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (9)

  1. 第1の平均粒径を有する大径粉末と、
    第1の平均粒径と異なる第2の平均粒径を有する小径粉末とを含有し、
    第1及び第2の平均粒径の比が、第1粒径:第2粒径=1.2:1〜20:1であり、
    大径粉末及び小径粉末の含有量(質量)の比が、大径粉末:小径粉末=25:1〜1:3であり、
    前記大径粉末及び前記小径粉末は、合金相を含有し、
    前記合金相は金属イオンを放出するとき又は前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態する、負極活物質材料。
  2. 請求項1に記載の負極活物質材料であって、
    前記合金相は、前記金属イオンを吸蔵するときに熱弾性型無拡散変態し、前記金属イオンを放出するときに逆変態する、負極活物質材料。
  3. 請求項2に記載の負極活物質材料であって、
    熱弾性型無拡散変態後の前記合金相は、Ramsdell表記で2Hである結晶構造を含有し、
    逆変態後の前記合金相は、Strukturbericht表記でDO3である結晶構造を含有する、負極活物質材料。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の負極活物質材料であって、
    前記合金相は、Cuと、Snとを含有する、負極活物質材料。
  5. 請求項4に記載の負極活物質材料であって、
    前記合金相は、10〜20at%又は21〜27at%のSnを含有し、残部はCu及び不純物からなる、負極活物質材料。
  6. 請求項4に記載の負極活物質材料であってさらに、
    前記合金相は、Cuの一部の代えて、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Si、B及びCからなる群から選択される1種以上を含有する、負極活物質材料。
  7. 請求項6に記載の負極活物質材料であって、
    前記合金相は、
    Sn:10〜35at%と、
    Ti:9.0at%以下、V:49.0at%以下、Cr:49.0at%以下、Mn:9.0at%以下、Fe:49.0at%以下、Co:49.0at%以下、Ni:9.0at%以下、Zn:29.0at%以下、Al:49.0at%以下、Si:49.0at%以下、B:5.0at%以下、及び、C:5.0at%以下からなる群から選択される1種以上とを含有し、
    残部はCu及び不純物からなる、負極活物質材料。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の負極活物質材料を含む負極。
  9. 請求項8に記載の負極を備える電池。
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