JP2004002949A - 軟磁性合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、角形比が高く、保磁力が低く、高周波帯域での磁束密度が高い軟磁性合金の提供を目的の1つとする。
【解決手段】本発明は、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以下であり、かつ、B含有量が8原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、非晶質相と平均結晶粒径が50nm以下のbccFeの微細結晶相とDO3型規則合金相とを主体とした混相組織とされたものである。
【選択図】    図16

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟磁性合金に関するものであり、特に、可飽和リアクトル用磁心等の磁心に用いて好適な軟磁性合金及び磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ヘッド、トランス、チョークコイル等に用いられる軟磁性合金において一般的に要求される諸特性は以下の通りである。
▲1▼飽和磁束密度が高いこと。▲2▼透磁率が高いこと。▲3▼低保磁力であること。▲4▼薄い形状が得やすいこと。
従ってこの種の軟磁性合金を製造する場合、これらの観点から種々の合金系において材料研究がなされている。従来、上述の用途に対しては、Fe−Al−Si合金、Ni−Fe合金、けい素鋼等の結晶質合金が用いられ、最近ではFe基およびCo基の非晶質合金も使用されるようになってきている。
【0003】
そこで本発明者らは、非晶質合金相とbccFe相の平均結晶粒径50nm以下の微結晶粒を主体とする組織を有し、飽和磁束密度が高い優れた特性のFe系軟磁性合金を提供した。
このFe系軟磁性合金の1つは、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度合金であった。
(Fe1−m
但し、QはCo、Niのいずれかまたは両方であり、M1はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wからなる群から選ばれた1種または2種以上の元素であり、且つ、Zr,Hfのいずれか、又は両方を含み、m≦0.05、n≦93原子%、x=5.0〜8原子%、y=4〜9原子%である。
また、Fe系軟磁性合金の他の1つは、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度合金であった。
Fe
但し、k≦93原子%、x=5.0〜8原子%、y=4〜9原子%である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが近年、高周波機器等の特性向上に伴い、磁歪の更に低い軟磁性材料、比抵抗が高く高周波帯域においてヒステリシス損失が少ない材料、保磁力の低い材料、高角形比を有する軟磁性材料が望まれている。
これらの要望に対応するものとして、従来、Co基のアモルファス合金材料が提供され、100kHzの周波数において角形比(Br/Bm)が0.98程度、保磁力(Hc)が12〜15A/m程度、高周波帯域での磁束密度(Bm)が0.44T程度のものが提供されている。
この種のCo基アモルファス合金材料は、これらの特性面では優れている面を有するが、Coという高価な材料を多量に含有しているので、価格が高い欠点を有している。また、この種のアモルファス合金材料に対して更に特性の優れた材料の開発も望まれている。
【0005】
一方、磁心としてこの種の軟磁性合金を適用するためには、軟磁性合金の薄帯を得、この薄帯を円環状に巻き付けてリング状の磁心とする必要がある。ところが、先のFeを主体とする組成系の軟磁性合金においては、優れた軟磁気特性を得るためには熱処理を施す必要があり、この熱処理によりbccFeを主体とする微細結晶粒を析出させる必要があるが、熱処理後の薄帯は極めて脆く、曲率の小さな環状に加工することが難しい問題があった。
また、熱処理前のアモルファス状態で環状に加工するとしても、この種の合金薄帯は合金溶湯からの急冷法により製造されるので、ある急冷条件か、ある組成においてはアモルファス相中に一部結晶相が生成する場合があり、このような場合には曲率の小さな環状に加工することが難しい問題を有していた。従って熱処理前の状態で加工性に優れた薄帯が望まれていた。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、角形比が高く、保磁力が低く、高周波帯域での磁束密度が高い軟磁性合金の提供を目的の1つとする。また本発明は、Co基のアモルファス合金材料と同程度の角形比と保磁力と高周波帯域での磁束密度を有する上に低コストな軟磁性合金の提供を目的の1つとする。更に本発明は、角形比が高く、保磁力が低く、高周波帯域での磁束密度が高い上に、曲率の小さなコイル状に加工することが容易にできる軟磁性合金の提供を目的の1つとする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の軟磁性合金は、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以下であり、かつ、B含有量が8原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊される曲げ直径が1mm以下であることを特徴とする。
【0008】
非晶質相中に析出相として体心立方格子相の50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。Al含有量が4原子%以下であることにより、薄帯が破壊される曲げ直径を1mm以下とすることができ、さらに2原子%以下とすることで急冷後のアモルファス状態で密着曲げ可能な延性を示し、磁心等の用途に曲げ加工する際に有利となる。また、Alが含有されていることにより平均結晶粒径が小さくなり、組織の微細化、低保磁力化、透磁率の向上に寄与する。特に曲げ直径が1mm以下であることにより、磁心に加工する場合に小さな曲げ直径の環状の磁心としても薄帯が破壊されることがない。
【0009】
本発明の軟磁性合金は、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以下であり、かつ、B含有量が3原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊されない曲げ直径が1mm以下であることを特徴とする。
非晶質相中に析出相として体心立方格子相の50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。Al含有量が4原子%以下であることにより粘さが向上し、磁心等の用途に曲げ加工する際に有利となる。また、Alが含有されていることにより平均結晶粒径が小さくなり、組織の微細化、低保磁力化、透磁率の向上に寄与する。特に曲げ直径が1mm以下であることにより、磁心に加工する場合に小さな曲げ直径の環状の磁心としても薄帯が破壊されることがない。
【0010】
本発明の軟磁性合金は、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%を越える急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊されない曲げ直径が2mm以下であることを特徴とする。
非晶質相中に析出相として体心立方格子相の50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。Alが4原子%を越えて含有されていることにより平均結晶粒径が極めて小さくなり、組織の微細化に一層寄与するとともに、低保磁力化、透磁率の向上に一層寄与する。また、Alを多く含むものではヒステリシスカーブに段部が出現し、異方性が付与される。
【0011】
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、100kHzの保磁力(Hc)が22A/m以下、角形比(Br/Bm)が0.95以上であることを特徴とする。
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、100kHzの保磁力(Hc)が15A/m以下、角形比(Br/Bm)が0.95以上であることを特徴とする。
本発明の軟磁性合金は、100kHzの初透磁率が10000以上であることを特徴とする。
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、熱処理温度が450℃以上、650℃以下であることを特徴とする。
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、急冷薄帯の面内方向に40A/m(0.5Oe)以上、800A/m(10Oe)以下の印加磁場をかけて熱処理されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、前記微結晶相が規則格子を一部含む体心立方格子相を有する組織であることを特徴とする。
非晶質相中に析出相として体心立方格子相の50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。一部に規則格子を含む体心立方格子相が存在することで、更に結晶磁気異方性の小さい相となり、ヒステリシス損失の低減につながる。
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、急冷薄帯の面に垂直な方向に異方性がつけられることを特徴とする。
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、熱処理後の磁歪定数の絶対値が1×10−6以下の値であることを特徴とする。
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、Pを0.1原子%以上、5原子%以下含有し、BとPの含有量の比率をB1−bの式で示した場合に0.35≦b≦0.75の範囲であることを特徴とする。
【0013】
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、Niを0.1原子%以上、5原子%以下含有することを特徴とする。
この系の軟磁性合金に対し、Niが含有されていると、角形比が向上し、保磁力も低くできる。また、電気抵抗が若干上昇するので高周波特性が良好となる。本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、Cuを0.1原子%以上、3原子%以下含有することを特徴とする。
この系の軟磁性合金に対し、Cuを含有させると保磁力が低くなり、角形比が良好となる。ただし、3原子%を越えて添加すると薄帯とした場合に脆くなり易くなる。
【0014】
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、以下の組成式で示されることを特徴とする。
Fe100−x−y−z−t−u−v− SiAlNb(B1−bCuNiCo
(ただし組成比を示すx、y、z、t、u、v、wはいずれも原子%で14≦x≦20、1≦y≦4、2≦z≦5、5≦t≦8、0≦u≦3、0≦v≦5、0≦w≦5.0の範囲、bは0≦b≦1とする。)
本発明の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、以下の組成式で示されることを特徴とする。
Fe100−x−y−z−t−u−v− SiAlNb(B1−bCuNiCo
(ただし組成比を示すx、y、z、t、u、v、wはいずれも原子%で、14≦x≦20、4≦y≦12、2≦z≦5、5≦t≦9、0≦u≦3、0≦v≦5、0≦w≦5.0の範囲、bは0≦b≦1の範囲とする。)
【0015】
本発明の軟磁性合金は、先に記載の軟磁性合金において、0≦u≦1の範囲とされたことを特徴とする。
Cuの含有量については、1原子%以下であることにより、角形比を高い状態で脆くなり難い状態とすることが可能となる。
【0016】
本発明の磁心は先のいずれかに記載の軟磁性合金からなる。
先のいずれかに記載の軟磁性合金からなる磁心であれば、ヒステリシス損失の少ない、磁歪の小さい、比抵抗の高い、優れたものが得られ易い。
本発明の磁心は、先のいずれかに記載の急冷薄帯が合金溶湯を冷却ロールに噴出させて急冷させることにより製造されたものであり、前記冷却ロールに接しつつ急冷された側の薄帯の一面をロール面とし、反対側の面を自由面とした場合、前記薄帯のロール面を外側にしてロール巻きしてコア形状とされた後に熱処理されて得られたことを特徴とする。
急冷により得られた薄帯のロール面側を外側にしてロール巻きした方がロール巻きする際の薄帯に対する負荷は小さくなり、特性の良好な磁心が得られ易い。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明の軟磁性合金の1つは、合金溶湯を急冷して得られた非晶質相を主体とする合金に、熱処理により、50nm以下、この好ましくは30nm以下であり、規則格子を一部含む体心立方格子相を析出させてなり、これら結晶相の粒界に粒界非晶質相を残存させた混相組織とされており、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、B含有量が8原子%以下の組成系の軟磁性合金である。
本発明の軟磁性合金の1つは、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以下であり、かつ、B含有量が8原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊されない曲げ直径が1mm以下の軟磁性合金である。また、好ましくはAl含有量を2原子%以下とすることで、急冷後において確実に密着曲げが可能になる。
【0018】
また、本発明の軟磁性合金の1つは、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、B含有量が3原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、密着曲げが可能である軟磁性合金である。
更に、本発明の軟磁性合金の1つは、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以上である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊されない曲げ直径が2mm以下である軟磁性合金である。
本発明の軟磁性合金は、Fe−Si−Nb−Bからなる合金にAlを添加することにより、合金の高周波帯域における保磁力を低くして、比抵抗を高め、渦電流の発生を低減し、これにより高周波での損失低減をなし得たものである。また、Pおよび/もしくはNiを含むことが更には好ましい。
更に、Coを含むことが磁気特性の温度特性を向上させる点でより好ましい。Coを添加することにより、特に角形比、保磁力の温度特性が向上する。
【0019】
本発明に用いられる軟磁性合金の組成において、主成分であるFeは、磁性を担う主要元素であり、高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を得るために重要である。
また、本発明の軟磁性合金には、微細結晶核の成長速度を小さくするとともに非晶質形成能を向上することにより組織の微細化を図る元素として、Nbが添加される。Nbは、比較的酸化しずらく、α−Feに対してほとんど固溶しないとされるが、合金を急冷して非晶質化することで、Nbを過飽和に固溶させ、この後に施す熱処理によりNbの固溶量を調節して一部結晶化し、微細結晶相として析出させることで、得られる軟磁性合金の軟磁気特性を向上させる作用がある。また、微細結晶相を析出させ、その微細結晶相の結晶粒の粗大化を抑制するには、結晶粒成長の障害となり得る非晶質相を粒界に残存させることが必要であると考えられる。さらに、この粒界非晶質相は、熱処理温度の上昇によってα−Feから排出されるNbを固溶することで軟磁気特性を劣化させるFe−Nb系化合物の生成を抑制すると考えられる。よって、Fe−Nb系の合金にBを添加することが好ましい。
【0020】
Alの含有量は、8原子%以下が好ましく、この範囲の中でも脆さの特性から見ると、8原子%以下であれば2mm以下の曲げ直径で曲げて曲げ加工が可能であり、4原子%以下であれば1mm以下の曲げ直径で曲げて曲げ加工が可能であり、4原子%以上で8原子%以下の範囲であるならば、曲げ加工に耐える程度の脆さを保持しながら特性向上を図ることができる。具体的には、Alを8原子%以下とすることで100kHzの高周波帯域における磁束密度であるBmの値を従来のCo系アモルファス材料(CoFeSiB系)の0.4Tよりも高い0.5T以上にすることが可能となり、保磁力も十分に低く抑えることができる。更に、磁歪λsの値を若干低くさせることができ、比抵抗を大きな値に維持することが可能となる。また、Al含有量を8原子%程度とすることにより、BHループに段が付いて薄帯の面と垂直な方向に異方性が付与される。更に、析出相の結晶粒径はAl含有量を増加するにつれて微細化する。従って保磁力を低くすることが可能となり、透磁率も向上する。
【0021】
Niの含有量は0.1原子%以上、5原子%以下が好ましい。Niを含有させることで結晶粒径が小さくなり組織が微細化し、無磁場あるいは弱い磁場中アニールでも角形比が増加する傾向にあり、磁場中アニールの効果が向上する。これにより従来のCo基アモルファス材料と同程度の優れた低保磁力と高い角形比が得られる。角形比については、例えば可飽和リアクトル用磁心に適用することを考慮すると0.95以上は必要であり、0.97以上が好ましい。
Pの含有量は0.1原子%以上、5原子%以下が好ましい。Pはこの系の軟磁性合金に対して保磁力を下げる効果と脆性を改善し、加工を容易とするとともに、角形比は一定を保つ効果がある。Pを添加する際にはBに置換する形で添加することができる。特にB含有量の低い組成系において粘いものが得られ易い。またPには、液体急冷法における合金溶湯の射出性を向上させる効果がある。従ってPを添加することにより、合金薄帯を容易に製造することができる。
【0022】
Coの含有量は0原子%以上、5原子%以下が好ましい。Coを含有させることで角形比、保磁力及びコアロス等の温度変化に対する変化量が少なくなり、温度特性が向上する。これにより従来のCo基アモルファス材料と同程度の優れた温度特性が得られる。
Bには、軟磁性合金の非晶質形成能を高める効果、結晶組織の粗大化を防ぐ効果、および熱処理工程において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を抑制する効果があると考えられる。Bを少なくすると、粘いものが得られ易くなる反面、非晶質化が難しくなり易いので、Pを含有させることで特性向上を図ることができる。
これらのことから、BとPの含有量の比率をB1−bの式で示した場合に0.35≦b≦0.75の範囲であることが好ましく、この範囲であるならば低保磁力か容易で歪の面でも良好なものが得られ易い。
その他、上記組成系の軟磁性合金において、H、N、O、S等の不可避的不純物については所望の特性が劣化しない程度に含有していても本発明で用いる軟磁性合金の組成と同一とみなすことができるのは勿論である。
【0023】
本実施形態の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、以下の組成式で示される。
Fe100−x−y−z−t−u−v− SiAlNb(B1−bCuNiCo
(ただし組成比を示すx、y、z、t、u、v、wはいずれも原子%で14≦x≦20、1≦y≦4、2≦z≦5、5≦t≦8、0≦u≦3、0≦v≦5、0≦w≦5の範囲、bは0≦b≦1とする。)
本実施形態の軟磁性合金は、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、以下の組成式で示される。
Fe100−x−y−z−t−u−v− SiAlNb(B1−bCuNiCo
(ただし組成比を示すx、y、z、t、u、v、wはいずれも原子%で、14≦x≦20、4≦y≦12、2≦z≦5、5≦t≦9、0≦u≦3、0≦v≦5、0≦w≦5の範囲、bは0≦b≦1の範囲とする。)
【0024】
本発明のFe基軟磁性合金を製造するには、上述の組成にて示される組成の非晶質合金あるいは非晶質相を含む結晶質合金を、アーク溶解、高周波誘導溶解等の手段で溶解してから急冷し、非晶質相を主体とする長尺のリボン状の薄帯を作製する。ここで上記の組成からなる薄帯を作製する具体的方法としては、特開平4−323351号公報に記載されているような液体冷却法や、単ロールを用いた急冷法等を採用できる。
上記の単ロール法を採用する場合には、合金溶湯の急冷を不活性ガス雰囲気中で行っても良く、大気雰囲気中で行っても良い。
また、大気雰囲気中で行う場合には、溶湯を急冷する際に、使用するるつぼのノズルの先端部にのみ不活性ガスを供給し、ノズルとその近傍における合金溶湯及び薄帯の酸化を防止しつつ、ノズルから冷却ロール等の冷却面に溶湯を噴出させることにより行っても良い。
【0025】
ついで、作製した薄帯を熱処理(アニール処理)することにより、上記薄帯の非晶質相の中の一部が結晶化し、非晶質相と、平均粒径50nm以下(好ましくは30nm以下)の微細であり、規則格子を一部含む体心立方格子相を有する組織が得られ、目的とする軟磁性合金が得られる。ここでのアニール処理は組成系に応じて若干異なるが、いずれの組成系においても450〜650℃の範囲、より好ましくは500〜550℃の範囲である。
熱処理により平均結晶粒径50nm以下の微細な規則格子を一部含む体心立方格子相が析出したのは、急冷状態の非晶質合金薄帯等が非晶質相を主体とする組織となっており、これを加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が50nm以下のFeを主成分とし、規則格子を一部含む体心立方格子相を主体とする結晶粒からなる微細結晶相が析出するからである。
これらの微細結晶相が析出する温度は、合金の組成によるが450℃〜650℃)、好ましくは500℃〜550℃の範囲である。
【0026】
例えば、上記の熱処理温度まで昇温するときの昇温速度は、20〜200K/分の範囲が好ましく、40〜200K/分の範囲とするのがより好ましい。
昇温速度が遅いと製造時間が長くなるので昇温速度は速い方が好ましいが、加熱装置の性能上、200K/分程度が上限とされる。
また、非晶質合金薄帯等を上記保持温度に保持する時間は、0〜180分間とすることができ、合金の組成によっては0分、すなわち、昇温後直ちに降温させて保持時間無しとしても、目的とする効果を得ることができる。また、保持時間は180分より長くしても磁気特性は向上せず、製造時間が長くなり生産性が悪くなる。
【0027】
以上の製造方法により得られた軟磁性合金薄帯は、環状に加工して磁心とする必要があるので、熱処理する以前の非晶質状態、あるいは、ほぼ非晶質状態で環状に巻き付けし、目的の円環状の磁心形状とした後で結晶化のためのアニール処理することが好ましい。
アニール処理により結晶化した後で巻き付け加工すると、薄帯が脆くなっているので好ましくない。熱処理することにより結晶化した磁心は所望の特性のものが得られる。例えば、Co系アモルファス材料と同程度の磁気特性を発揮しながらコストが易い磁心を提供できる。これは、本実施形態の合金系においては、Fe、Si、Alが主要構成元素であり、いずれの元素も低廉であるので、従来のCo系アモルファス材料よりも確実に安くすることが可能となる。
【0028】
以上説明した合金薄帯からなる磁心は、コモンモードチョークコイルや可飽和リアクトル等の磁心として供することができる。可飽和リアクトルとは、磁気的なスイッチとして動作する磁心としてスイッチング電源等に組み込まれうマグアンプ用のもの、あるいは、ビーズコアとしてダイオードやICの足の部分の導体に挿通されてノイズ除去のために逆電流防止用として使用されるもの等がある。スイッチング用の可飽和リアクトルとは、例えば飽和の時にスイッチオン、未飽和の時にスイッチオフとして作動する。
【0029】
【実施例】
(試料の製造)
FeとSiとAlとNbとBとCuの含有量を試料に応じて適宜変更した原料を調整し、それらをArガス雰囲気中で高周波溶解し、溶解した原料を鋳型に流し込み母合金を得た。
室温で0.21×10PaのArガス雰囲気中において、石英製の溶湯ノズルから上記母合金を溶解した合金溶湯を高速回転している銅ロールの冷却面に吹き出させて急冷する液体急冷法を用いて、各種の合金薄帯を得た。
次に、得られた各種組成の合金薄帯から試料を切り出し、以下に説明する各試験に供した。
図1は得られたFe74−xSi15.5AlNb6.5Cuの組成の薄帯試料について無磁場中アニール(525℃加熱)後の磁束密度(100kHzにおける磁束密度)Bm(単位T)の値のAl含有量依存性と、コアロス(W:kW・m−3)の値のAl含有量依存性と、保磁力(Hc:A・m−1)の値のAl含有量依存性を測定した結果を示す。
【0030】
図1に示す結果から、飽和磁化についてはAl含有量が増加するにつれて徐々に低下する傾向にあるが、Co基のアモルファス合金が0.4Tであることを考慮すると、Alを8原子%含有する試料においても0.7T以上が確保できる。Alについては8原子%程度まで含有していても磁気特性上は何ら差し支えないことが明らかである。また、コアロスと保磁力についてもAl含有量が多いほど低い値を示すので問題はない。特に保磁力についてはAl含有量2〜8%の範囲まで20A/m前後の低い値を示し、それよりもAl含有量が多い範囲では更に保磁力が低くなる傾向にあるため、必要に応じてAlを12原子%程度まで加えても良い。
【0031】
図2は先の製造方法で得られたFe74−xSi15.5AlNb6.5Cuの組成の薄帯試料について無磁場中アニール(525℃加熱)後の磁歪(λs:10−6)の値のAl含有量依存性と、比抵抗(ρ:μΩ・m)の値のAl含有量依存性を測定した結果を示す。
図2に示す結果から磁歪λsについてAl含有量が増加してもほぼ同じで若干低下する傾向にあり、小さな磁歪を維持できていると思われる。また、比抵抗の値についてはAl含有量が2〜8原子%の範囲において増加するにつれて徐々に上昇している。比抵抗が高いということは薄帯を用いて磁心を構成した場合に高周波特性において渦電流損失を低減することが可能となるので高周波帯域における損失低減の面において好ましい。
【0032】
図3は先の方法で得られたFe66Si15.5AlNb6.5Cuの組成の薄帯試料(Al=8原子%の試料)について直流B−Hループを測定した結果を示し、図4はFe74Si15.5Nb6.5Cuの組成の薄帯試料(Al=0の試料)について直流B−Hループを測定した結果を示す。磁場は薄帯長手方向へ印加して測定を行った。
図3に示す結果と図4に示す結果を比較すると明らかなように、Alを含有していない試料のB−Hループが滑らかな曲線を示すのに対し、Alを8原子%含有している試料のB−Hループには段がつき、飽和しずらくなっていることが明らかである。このようにB−Hループに段が付き、(Br/Bs)の値が低い特性が得られた場合は、合金薄帯試料の長手方向に磁化困難軸が向いていると判断される。
【0033】
以下の表1は、Fe74−xSi15.5AlNb6.5Cuの組成の薄帯試料において、X=0の場合の組成の薄帯試料のEDS(エネルギー分散型分光法)分析値とX=4原子%の場合の組成の薄帯試料のEDS分析値とX=8原子%の場合の組成の薄帯試料のEDS分析値を併記したものである。表1の結晶相の欄の測定結果は、組織を顕微鏡観察し、顕微鏡観察により結晶相が析出している領域を5カ所選定して分析した結果の平均値を示し、非晶質相の欄の測定結果は、組織を顕微鏡観察し、顕微鏡観察により非晶質相(アモルファス相)が析出している領域を5カ所選定して分析した結果の平均値を示す。
また、図5にX=4原子%の組成の合金薄帯試料の金属組織写真の模式図を示すが、この組成の薄帯試料の金属組織は不定形の規則格子を一部含む体心立方格子相とこれらの粒界を取り囲む非晶質相3からなる混相組織を呈していた。
これらの測定結果から、FeとSiとAlとNbとCuを含有してなる組成系の薄帯試料では結晶相とアモルファス相のいずれにおいてもこれら全ての含有元素が存在していることが判明した。これらのことより、少なくとも結晶相はFe、Si、Alを含有する相であり、DO構造を形成すれば、良好な軟磁気特性が期待できる。
【0034】
【表1】
Figure 2004002949
【0035】
図6は先の方法で得られたFe74−xSi15.5AlNb6.5Cuの組成の合金薄帯試料において、結晶相の平均結晶粒径のAl含有量依存性を測定した結果を示す。
図6に示す結果からAlを多く含有させることで平均結晶粒径が小さくなることが明らかであり、この系の合金に対してAlを含有させることは金属組織の微細化に寄与することが明らかである。このようにAlを含有させることが金属組織の微細化に寄与することから、本発明組成系の合金にAlを含有させることにより、低保磁力化に寄与し、しかも透磁率を高めることができるものと推定することができる。
【0036】
以下の表2はFeAlSiNbBCu系合金にNiを添加した組成系の合金を用いて先に説明した急冷法により製造した合金薄帯において印加磁場(A/mまたはOe)と100kHzにおける磁束密度(Bm)と角形比を示すBr/Bmの値と保磁力Hc(A/m)の値を測定した結果を示す。なお、表2の印加磁場とは、500〜525℃で行うアニール処理の場合に印加した磁場の強さを示す。
【0037】
【表2】
Figure 2004002949
【0038】
表2に示す測定結果から、FeAlSiNbBCu系にNiを添加することにより、角形比を向上できることが明らかであり、磁場強度を最適化することにより保磁力を増大させることなく角形比を改善することができるとともに、Alを8原子%含有した合金薄帯試料では磁場中熱処理の効果が減少していることが分かる。
【0039】
図7は先の方法で得られたFe74−x−yNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値を測定した結果を示す。これらの薄帯試料は525℃×30分の無磁場アニールを施した試料であり、測定条件としての周波数はf=100kHz、Hm=60A/mである。
図7に示すように無磁場アニール処理した試料において、Niの含有量が4原子%以下の範囲において、Ni含有量の増加に伴って角形比の値は上昇し、y=8原子%のもので、Niが4原子%で0.98となる。保磁力の値は低くなって改善される傾向にあり、20A/m以下の値が得られている。
【0040】
図8は先の方法で得られたFe68−xNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)と(Pcv:コアロス)Pcv;kWm−3の各値に対する印加磁場の依存性を測定した結果を示す。
これらの薄帯試料は525℃×30分の磁場中アニールを施した試料であり、測定条件として周波数f=100kHz、Hm=60A/mである。
図8からアニール時の印加磁場を調節することにより、BmとHcとPcvの各値を一定に保持したまま角形比(Br/Bm)を向上できることが分かる。また、Niの含有量を増加すると、弱い磁場でも角形比が増える傾向にあり、磁場中アニールの効果が向上することが分かる。角形比においては磁心としての利用としては0.95以上が必要であるが、Niを含有させていない試料では80A/m(1.0Oe)の磁場中でアニール処理するならば、0.95を越える角形比を得ることが容易であり、Niを含有させた試料では40A/m(0.5Oe)以上の磁場中でアニール処理するならば、0.98を越える優れた角形比を得ることが容易である。
【0041】
図9は先の製法で得られたFe74−x−yNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値のNi濃度依存性を測定した結果を示す。これらの薄帯試料は525℃×30分、40A/m(0.5Oe)の条件の磁場中アニールを施して得られた試料であり、飽和磁化の測定条件は周波数f=100kHz、Hm=60A/mである。
図9に示す結果から、Ni含有量を1〜2原子%とした薄帯試料において保磁力を低くすることができ、その上に角形比(Br/Bm)を向上できることが分かる。また、Niを2〜4原子%の範囲とすることでほぼ1.0の特に優れた角形比を得ることができた。
【0042】
図10は先の製法で得られたFe74−x−yNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料における磁歪(λs;×10−6)と比抵抗(ρ;μΩm)と平均結晶粒径(D;nm)の各値のNi濃度依存性を測定した結果を示す。これらの薄帯試料は525℃×30分、無磁場アニールで得られた試料である。Ni含有量の増加により平均結晶粒径が小さくなる傾向にあり、これにより組織の微細化が進むので透磁率μが向上する。また、電気抵抗は若干上昇する傾向にあり磁歪もほとんど変化なく、若干低下する傾向にある。
【0043】
図11は先の製法で得られたFe74−xSi15.5AlNb6.5Cu1なる組成の合金薄帯試料におけるアニール処理前の破壊歪におけるAl含有量依存性を測定した結果を示す。
ここで示す破壊歪とは、λf=d/(R−d)の関係式(この式においてdは薄帯の板厚、Rは曲げ直径を示す)から求められる値である。簡略して言えば破壊歪の値(λf)とは薄帯を曲げた場合に折れるときの直径Rと見ることができる。
図11においてフリー面外側の試料とは、急冷法により回転している銅ロールに合金溶湯を吹き付けて合金薄帯を製造した場合、合金薄帯には通常でロールに接触する側の面を外側にしてロールに接触していないフリー面を内側にするようなカールが自然に付されており、このカールに沿って自然に曲げた場合の破壊歪の測定結果を示す。これに対して、フリー面外側の試料とは、薄帯のフリー面を外側にロール面を内側にして先の自然なカール方向とは逆方向に曲げた場合の破壊歪を示す。
図11の縦軸の数値において10の値の場合約2mm程度の直径まで曲げることができることを意味し、縦軸1000の場合に180゜曲げ(密着曲げ)できることを意味する。図11に示す結果ではロール面外側の曲げの方が曲げに強く、より小さな曲率半径での曲げ加工が可能で、小型の磁心に適用可能であることが分かる。また、曲げ直径は薄帯の板厚が薄くなると小さくなる傾向があるが、板厚に影響されないλfの値はAlの添加量が2原子%以下では1000×10−3(フリー面外側)、4原子%以下ではλfに30×10−3以上、4原子%よりも多くてもλf=10×10−3以上の値が得られており、良好な破壊歪の値を示している。
【0044】
図12はFebalSi14AlNbCuなる組成の合金薄帯試料の保磁力におけるB含有量の依存性とP含有量の依存性と(Fe+Si+Al+Nb+Cu)含有量(Si=14、Al=8、Nb=3、Cu=1)の依存性を示す三角組成図である。
図13はFebalSi14AlNbCuなる組成の合金薄帯試料の破壊歪におけるB含有量の依存性とP含有量の依存性と(Fe+Si+Al+Nb+Cu)含有量(Si=14、Al=8、Nb=3、Cu=1)の依存性を示す三角組成図である。この値は、各組成の薄帯の任意の部分を3点選び、破壊歪みを測定後、平均することで求めた。
図12と図13に示す測定結果において、破壊歪λfの値は最小で19.5×10−3以上、最大で452×10−3が得られており、特に●印で示す各試料は部分的に密着曲げ可能な試料(薄帯を曲げていって2つ折り状態に密着すように曲げが可能な粘い試料)であり、これらの曲げ特性を考慮すればB含有量は3原子%以下が好ましいが、B含有量を3原子%以下にすると合金薄帯を急冷法で製造する場合にアモルファスになり難いのでPを含有させることでアモルファス化を促進し、破壊歪の値を向上させ、特性向上および加工性向上を図ることが好ましい。
【0045】
図14はFebalSiAlNb6.5−yCuなる組成の合金薄帯試料の保磁力におけるSi含有量依存性とP含有量の依存性と(Fe+Si+Al+Nb+Cu)含有量(Al=8、Nb=3、Cu=1)の依存性を示す三角組成図である。
図15はFebalSiAlNb6.5−yCuなる組成の合金薄帯試料の破壊歪におけるSi含有量依存性とP含有量の依存性と(Fe+Si+Al+Nb+Cu)含有量(Al=8、Nb=3、Cu=1)の依存性を示す三角組成図である。
図14に示す測定結果はBとPのトータル量が6.5原子%であることを意味するが、保磁力がより低い範囲になるようにPの含有量を選定すると、B1−bとすると、0.35≦b≦0.75の範囲、この範囲の中でもPが1.7原子%以上、4.25原子%以下の範囲が好ましい。また、図15から破壊歪λfの値は、最小で17×10−3、最大で421.9×10−3と大きな値を示している。
【0046】
図16はFe74Si15.5Nb6.5Cuなる組成の薄帯試料と、Fe70Si15.5AlNb6.5Cuなる組成の薄帯試料と、Fe66Si15.5AlNb6.5Cuなる組成の薄帯試料と、Fe62Si15.5Al12Nb6.5Cuなる組成の薄帯試料のX線回折試験結果を示す。
図16に示す試験結果から明らかなように回折角2θが30〜40゜の範囲においてAlを含有させた薄帯試料が規則格子に起因するピーク(矢印部分)が明瞭に確認できるようになっていることが明らかである。従ってFeSiNbBCu系の合金にAlを添加すると規則格子を一部に含む体心立方格子相が析出されていることが明らかになった。
【0047】
図17はFe65AlSi15.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料の保磁力と、Fe63AlSi17.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料の保磁力と、Co基アモルファス材料の薄帯試料の保磁力と、Alを添加していないFe−Si系のFe基(ナノ)微結晶材料からなる薄帯試料の各々の保磁力の周波数依存性を測定した結果を示す。
図17に示す結果から明らかなように本発明組成に係る2つの薄帯試料の方が従来のFe−Si系ナノ結晶材料の薄帯試料よりもCo基アモルファス材料に近い低い保磁力となっていることが明らかである。中でもSi含有量が高い薄帯試料の方がCo基アモルファス材料により近い低い保磁力を示した。
【0048】
図18はFe65AlSi15.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料のコアロスと、Fe63AlSi17.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料のコアロスと、Co基アモルファス材料の薄帯試料のコアロスと、Fe−Si系のFe基ナノ結晶材料の薄帯試料のコアロスの周波数依存性を測定した結果を示す。図18に示す結果から明らかなように本発明組成に係る2つの薄帯試料の方がFe−Si系ナノ結晶材料の薄帯試料とCo基アモルファス材料のいずれよりも低いコアロスとなっていることが明らかである。
【0049】
図19はFe63AlSi17.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料の実効透磁率と、Co基アモルファス材料の薄帯試料の実効透磁率の周波数依存性を測定した結果を示す。
図19に示す結果から明らかなように本発明組成に係る薄帯試料の方がCo基アモルファス材料よりも1〜500kHzまでの全周波数帯域において実効透磁率が10000以上と高くなっていることが明らかである。実効透磁率の値は磁心の中でも可飽和コアにおいては特別に有効な特性ではないが、500kHzまでの周波数帯域において高いので、Co基アモルファス材料の薄帯試料に対してコモンモードチョークコイル用には有利な特性であるとすることができる。
【0050】
図20はFe74−xAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xCoAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値のAl濃度依存性を測定した結果を示す。これらの薄帯試料は525℃×30分、無磁場アニールを施して得られた試料であり、飽和磁化の測定条件は周波数f=100kHz、Hm=60A/mである。
図20に示す測定結果から、Al含有量を増加させた試料の方が保磁力が低くなる傾向にある。また、Alを含有させた試料では0.6T以上の飽和磁化を有するとともに、22A/m以下の保磁力を有することが明らかとなった。なお、図20に示す角形比については、後述する図21に示すように磁場中アニールを施すことで改善することができる。
【0051】
図21は先の例と同等の組成の試料を用いて40A/m(0.5Oe)の磁場中アニールした後に得られた合金薄帯試料の交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値のAl濃度依存性を測定した結果を示す。
図21に示す結果から、磁場中アニールを行うことで、角形比が向上し、Co基アモルファス材料とほぼ等しい角形比(0.98)が得られる。また、飽和磁化の値はCo基アモルファス材料の値よりも優れた0.6T以上の値が得られ、保磁力についても22A/m以下の値が得られている。
【0052】
図22はFe74−xAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xCoAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料において磁歪(λs;×10−6)と比抵抗(ρ;μΩm)の各値のAl濃度依存性を測定した結果を示す。これらの薄帯試料は525℃×30分、40A/m(0.5Oe)の強さの磁場中アニールを施して得られた試料である。
FeSiNbBCu系に対してAlを添加することで磁歪が下がる傾向が明らかであり、比抵抗が上昇する傾向にあるので、高周波特性の面で特性が向上することが期待できる。また、この傾向についてはNiを含有させた組成系とCoを含有させた組成系においても同様な傾向にあり、FeNiSiNbBCu系あるいはFeCoSiNbBCu系にAlを添加することで磁歪が下がる傾向が明らかであり、比抵抗が上昇する傾向にあるので、高周波特性の面で特性が向上することが期待できる。
【0053】
図23はFe67.5AlSi14Nb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料とFe66AlSi15.5Nb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)と破壊歪(λf;10−3)の各値のP含有量依存性を示す。これらの薄帯試料は500℃×30分、無磁場中アニールを施して得られた試料である。なお、薄帯試料の板厚はd=17μmであり、これより換算するとR=0.5mmでλf=35.2×10−3、R=1mmでλf=17.3×10−3、R=2mmでλf=8.57×10−3となる。
図23に示す結果から、Pを含有させても磁束密度と角形比はほとんど変らず、保磁力は低くなり、Pを2原子%以上添加したものではλfは50×10−3以上の値が得られており、曲げ直径R=0.5mm以下の値が得られていることから、破壊歪から加工性は改善される方向にあると見ることができる。なお、図23に示す角形比については磁場中アニールを施すことで改善することができると思われる。
【0054】
図24はFe64AlNiSi15.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料を用いて外径21mm、内径14mm、厚さ5mmのリング状可飽和リアクトル用コアを作製し、100kHz、60A/mの条件でB−Hループを測定した結果を示す。この例の可飽和リアクトル用コア試料のBmは0.72T、角形比(Br/Bm)は0.98、保磁力(Hc)は16.9A/m、コアロス(PCV)は5400kW/m3であり、優れた値を示した。
図25はFe67AlNiSi15.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料からなる先の例と同じ寸法の可飽和コアの無磁場熱処理後のB−Hループを示し、図26は同一組成の薄帯試料からなる同様の可飽和コアの80A/m(1Oe)の磁場中熱処理後のB−Hループを示す。
図25に示す試料のBmは0.78T、角形比(Br/Bm)は0.88、保磁力(Hc)は19.1A/m、コアロス(PCV)は6200kW/mであり、図26に示す試料のBmは0.82T、角形比(Br/Bm)は0.99、保磁力(Hc)は19.3A/m、PCVは7100kW/mであり、磁場中アニールを行うことで角形比を向上できることが明らかとなった。
【0055】
図27はFe68−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料の飽和磁化の変化量(ΔBm)と保磁力の変化量(ΔHc)の温度依存性を測定した結果を示す。この薄帯試料は500℃×30分、40A/m(0.5Oe)の磁場中アニールを施して得られた試料である。
飽和磁化の変化量ΔBmは温度上昇に伴って若干低下しているが、温度上昇に伴ってBmと保磁力のいずれの値においても低下する割合の小さな概ね良好な温度特性が得られた。
図28はFe68−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料のBmの温度特性の実測値を示す。この薄帯試料は500℃×30分、40A/m(0.5Oe)の磁場中アニールを施して得られた試料である。
飽和磁化Bmは温度上昇に伴って若干低下しているが、温度上昇に伴ってBmと保磁力のいずれの値においても低下する割合の小さな概ね良好な温度特性が得られた。
【0056】
図29はFe65−xNiAlSi15.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料の交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(W:kWm−3)の各値のCu含有量依存性を示し、図30はFe63−xNiAlSi17.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料の同等の値のCu含有量依存性を示す。
図29と図30に示す結果から、角形比が向上する(0.9以上となる)こと、保磁力が低くなることに鑑みるとCuの含有量は1原子%以上、1.5原子%以下の範囲が好ましい。Cuについては3原子%を超えて含有させても薄帯が急冷時に結晶化し易くなり、脆くなり易く、特性の向上も期待できない。なお、角形比が0.8以上であれば良い場合はCuの含有量は1原子%以下でも良く、その場合は脆くなり難いために加工性に優れた薄帯が得られる。
【0057】
図31はFe63−xNiAlSi17.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(W:kWm−3)の各値のアニール温度依存性を測定した結果を示す。
図31に示す結果から、Cuを含有させる場合、最適な熱処理条件は、角形比の観点から475〜525℃の範囲、より好ましくは500〜525℃の範囲であると見ることができる。
【0058】
図32及び図33には、先の方法で得られたFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成と、Fe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において直流磁気特性の磁化(B10;T)と角形比(Br/B10)と保磁力(Hc;A/m)と1kHzにおける透磁率(μ’:×10)の各値に対するP含有量依存性を測定した結果を示す。尚、図32及び図33におけるB10は、10A/mの印加磁界における磁化である。
これらの薄帯試料は525℃〜575℃で30分、400A/mの磁場中アニール及び無磁場中アニールを施した試料である。
図32及び図33に示すように、磁場中アニールと無磁場中アニールとで比較した場合、磁化(B10)及び角形比(Br/B10)には大きな変化はないが、保磁力(Hc)は磁場中アニールによって低減し、また透磁率(μ’)も磁場中アニールによって若干低下することがわかる。直流における保磁力が低下することによって、交流における保磁力の低下が期待され、更に交流のコアロスの低減も期待できる。
【0059】
図34及び図35には、Fe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成と、Fe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料について、交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値に対するP含有量依存性を測定した結果を示す。
尚、図34及び図35中、Br/Bm=0.98、Hc=15A/m、Pcv=3×10kW/mを示す破線は、比較例であるCo基アモルファス材料(CoFeSiB系合金)の角形比、保磁力、コアロスの値を示す線である。
また表3及び表4には図34の各プロットの実測値を示し、表5及び表6には図35の各プロットの実測値を示す。
これらの薄帯試料は525℃〜575℃で30分の400A/mの磁場中アニール及び無磁場中アニールを施した試料であり、測定条件として周波数f=100kHz、Hm=60A/mで測定したものである。
図34及び図35に示すように、磁場中アニールと無磁場中アニールとで比較した場合、飽和磁化(Bm)及び保磁力(Hc)及びコアロス(Pcv)には大きな変化はないが、角形比(Br/Bm)は磁場中アニールによって容易に高くなり、具体的にはPが0〜2原子%の範囲で角形比0.99程度を示し、Co基アモルファス材料よりも高くなっていることが分かる。このような高い角形比を有する軟磁性合金は、可飽和リアクトル用磁心として最適である。
【0060】
以上、図32〜35で説明したように、Coを添加した軟磁性合金に対して磁場中アニールを行うことにより、軟磁性合金の角形比が大幅に向上することが分かる。
【0061】
【表3】
Figure 2004002949
【0062】
【表4】
Figure 2004002949
【0063】
【表5】
Figure 2004002949
【0064】
【表6】
Figure 2004002949
【0065】
次に、図36及び図37には、Fe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成と、Fe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料におけるTx1、Tx2、ΔTx、保磁力(Hc;A/m)と磁歪(λs;×10−6)と比抵抗(ρ;μΩm)の各値に対するP含有量依存性を測定した結果を示す。
これらの薄帯試料は525℃で30分の無磁場中アニールを施した試料であり、Hcの測定条件として周波数f=100kHz、Hm=60A/mで測定したものである。
また、図36及び図37において、Tx1は第1結晶化温度であってα−Fe相(bcc−Fe相)または規則相が析出する温度であり、Tx2は第2結晶化温度であってFeB等の化合物相が析出する温度であり、ΔTxはΔTx=Tx2−Tx1で表されるものである。
また表3及び表4には図36の磁歪(λs)及び比抵抗(ρ)の実測値を示し、表5及び表6には図37の磁歪(λs)及び比抵抗(ρ)の実測値を示図35の各プロットの実測値を示す。
図36及び図37に示すように、Tx1はP含有量によらずほぼ一定であるが、Tx2及びΔTxはP含有量の増加とともに低下している。通常、本発明の軟磁性合金のようなナノ結晶材料は、Tx1以上Tx2以下の温度範囲で熱処理を行うことで、微細なbcc−Fe微結晶相を析出させるとともにFeB系化合物相の析出を抑えることができる。ΔTxが100℃以下になると熱処理によって軟磁気特性を劣化させる化合物相が析出しやすくなり、磁気特性が劣化するおそれがある。本実施例の軟磁性合金については、図36及び図37に示すようにPが2原子%のときにΔTxは510〜520℃を示しており、bcc−Fe相または規則相のみを析出させるための必要十分な温度範囲を有していることが分かる。
また、図36及び図37に示すように、保磁力及び磁歪はP含有量の増加に従って低下する傾向にあり、比抵抗はP含有量の増加に従って増大する傾向にあり、交流磁気特性に有利な特性を示すことがわかる。
【0066】
次に、図38には、Fe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値の温度依存性を示す。
また図39には、図38において、20℃を0(基準)とした場合の各磁気特性の変化率(ΔBm、ΔBr/Bm、ΔHc)を示す。
更に表7〜表9には図38における各磁気特性のプロットの実測値を示し、表10〜表12には図39における各磁気特性のプロットの実測値を示す。
これらの薄帯試料は525℃〜575℃、30分間で400A/mの磁場中アニールを施した試料であり、アニール前の薄帯試料を外径19mm、内径15mm、厚さ15mmのリング状に巻回してコアとし、アニール後、このコアに巻線して測定を行った。測定条件は周波数f=100kHz、Hm=60A/mとした。
図38及び図39に示すように、Bm及びHcについては、Pが0〜2原子%の範囲で、Co基アモルファス材料よりも温度変化に対するBm及びHcの変化量が小さくなっている。
またBr/Bmについては、Pが0〜1原子%の範囲で、Co基アモルファス材料に対して若干劣るが十分な温度特性を示していることがわかる。
このように、Alを8原子%添加することによって角形比が0.98以上の高い値を示すとともに、CoとNiとPを同時に添加することによって優れた温度特性を示すことが分かる。
【0067】
【表7】
Figure 2004002949
【0068】
【表8】
Figure 2004002949
【0069】
【表9】
Figure 2004002949
【0070】
【表10】
Figure 2004002949
【0071】
【表11】
Figure 2004002949
【0072】
【表12】
Figure 2004002949
【0073】
次に、図40には、Fe66−xNiSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値の温度依存性を示す。
また図41には、図40において、20℃を0(基準)とした場合の各磁気特性の変化率(ΔBm、ΔBr/Bm、ΔHc、ΔPcv)を示す。
これらの薄帯試料は500℃、30分間で400A/mの磁場中アニールを施した試料であり、アニール前の薄帯試料を外径19mm、内径15mm、厚さ15mmのリング状に巻回してコアとし、アニール後、このコアに巻線して測定を行った。測定条件は周波数f=100kHz、Hm=60A/mとした。
図40及び図41に示すように、Bm、Hc及びPcvについては、Niが1〜4原子%の範囲で、温度変化に対する変化量が比較的小さくなっている。一方、Br/Bmについては、Niが1原子%の場合、100℃を超えたあたりでBr/Bmが大きく低下していることがわかる。
従って、Ni単独でCo及びPを添加しない場合は、Ni量を2原子%以上添加することで、優れた磁気特性及び温度特性を示すことが分かる。
【0074】
次に、図42には、Fe64−xNiCoSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値の温度依存性を示す。
また図43には、図42において、20℃を0(基準)とした場合の各磁気特性の変化率(ΔBm、ΔBr/Bm、ΔHc、ΔPcv)を示す。
更に表13〜表15には図42における各磁気特性のプロットの実測値を示し、表16〜表18には図43における各磁気特性のプロットの実測値を示す。
これらの薄帯試料は500℃〜525℃、30分間で400A/mの磁場中アニールを施した試料であり、アニール前の薄帯試料を外径19mm、内径15mm、厚さ15mmのリング状に巻回してコアとし、アニール後、このコアに巻線して測定を行った。測定条件は周波数f=100kHz、Hm=60A/mとした。
図42及び図43に示すように、Bm、Hc及びPcvについては、Coが0〜2原子%の範囲で、温度変化に対する変化量が比較的小さくなっている。また、Coの添加量に着目すると、特にHc及びPcvは、Co量が多くなるにつれて100℃以上での温度特性が向上していることが分かる。一方、Br/Bmについては、Coが0〜1原子%の場合、120℃を超えた付近からBr/Bmが若干低下していることがわかる。ただし、一般に可飽和リアクトル用の磁心の温度特性は120℃以下の範囲で規定されることから、120℃以下の範囲で温度特性が良好であれば問題のない範囲と考えられる。
従って、Ni及びCoを添加した場合は、Co量を増加するにつれて、優れた温度特性を示すことが分かる。
【0075】
【表13】
Figure 2004002949
【0076】
【表14】
Figure 2004002949
【0077】
【表15】
Figure 2004002949
【0078】
【表16】
Figure 2004002949
【0079】
【表17】
Figure 2004002949
【0080】
【表18】
Figure 2004002949
【0081】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明は、Fe、Si、Al、Nb、Bを主体とし、非晶質相と平均結晶粒径が50nm以下のbccFeの微細結晶相とDO3型規則合金相とを主体とした混相組織としたので、非晶質相中に析出相としてbccFeの50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。
更に、一部に規則格子を含む体心立方格子相が存在することで更に結晶磁気異方性の小さい相となり、ヒステリシス損失の低減につながる。析出相としての一部に規則格子を含む体心立方格子相の微細結晶相と、残留する非晶質相の体積分率を最適化するならば、磁歪の低減と比抵抗の増加が実現できる。Al含有量が4原子%以下であることにより粘さが向上し、磁心等の用途に曲げ加工する際に有利となる。また、Alが含有量されていることにより平均結晶粒径が小さくなり、組織の微細化、低保磁力化、透磁率の向上に寄与する。
【0082】
本発明の軟磁性合金は、Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、Al≦4原子%、B≦8原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊されない曲げ直径が2mm以下であるものは、非晶質相中に析出相として体心立方格子の50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。Al含有量が4原子%以下であることにより粘さが向上し、磁心等の用途に曲げ加工する際に有利となる。また、Alが含有されていることにより平均結晶粒径が小さくなり、組織の微細化、低保磁力化、透磁率の向上に寄与する。特に曲げ直径が2mm以下であることにより、磁心に加工する場合に小さな曲げ直径の環状の磁心としても薄帯が破壊されることがない。
同様に、Al≦4原子%、B≦3原子%以下である急冷合金薄帯を用いたものにおいても先の発明と同様の効果が得られる。
【0083】
一方、4原子%を越えるAlを含有する急冷合金薄帯を用いたものは、非晶質相中に析出相としてbccFeの50nm以下の例えば数10nmオーダーの微細結晶相が析出することで軟磁気特性に優れた軟磁性合金が得られる。Alが4原子%を越えて含有されていることにより平均結晶粒径が極めて小さくなり、組織の微細化に一層寄与するとともに、低保磁力化、透磁率の向上に一層寄与する。また、Alを多く含むものではヒステリシスカーブに段部が出現し、異方性が付与される。
【0084】
本発明の軟磁性合金によれば、100kHzの保磁力が22A/m以下、角形比が0.97以上であるものが得られる。また、先のいずれかに記載の軟磁性合金において、100kHzの保磁力が15A/m以下、角形比が0.95以上のものが得られる。
【0085】
本発明の軟磁性合金において、Niを0.1原子%以上、5原子%以下含有するものは、角形比が向上し、保磁力も更に低くできる。また、電気抵抗が若干上昇するので高周波特性が良好となる。
本発明の軟磁性合金において、Cuを0.1原子%以上、3原子%以下含有するものは、保磁力が更に低くなり、角形比が良好となる。
【0086】
先に記載の急冷薄帯の冷却ロール製造時にロール面に接する側のロール面を外側にしてロール巻きした磁心の方が薄帯の破壊歪が小さいので、より小さい径の環状磁心として利用可能となる。また、先に記載の軟磁性合金が有する優れた特徴を兼ね備えた磁心を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はFe74−xSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料において、525℃でアニールした場合の100kHzにおける磁束密度(Bm)と、コアロス(W;kW/m)と、保磁力(Hc)の各値のAl含有量依存性について測定した結果を示す図である。
【図2】図2はFe74−xSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料において、525℃でアニールした場合の磁歪(λs;×10−6)と、比抵抗(ρ;μΩ・m)のAl含有量依存性について測定した結果を示す図である。
【図3】図3はFe66Si15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料のB−Hループを示す図である。
【図4】図4はFe74Si15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料のB−Hループを示す図である。
【図5】図5は本発明に係る組成系の合金薄帯試料の金属組織の一例を示す模式図である。
【図6】図6はFe74Si15.5Nb6.5Cu1なる組成の合金薄帯試料において最適熱処理条件の際の平均結晶粒径のAl含有量依存性を示す図である。
【図7】図7はFe74−x−yNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値のNi含有量依存性を示す図である。
【図8】図8はFe68−xNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値に対する印加磁場の依存性を測定した結果を示す。
【図9】図9はFe74−x−yNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値のNi含有量依存性を測定した結果を示す図である。
【図10】図10はFe74−x−yNiSi15.5Nb6.5CuAlなる組成の合金薄帯試料における磁歪(λs;×10−6)と比抵抗(ρ;μΩm)と平均結晶粒径(D;nm)の各値のNi含有量依存性を測定した結果を示す図である。
【図11】図11はFe74−xSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料におけるアニール前の破壊歪におけるAl含有量依存性を測定した結果を示す図である。
【図12】図12はFebalSi14AlNbCuなる組成の合金薄帯試料の保磁力におけるSi含有量の依存性とP含有量の依存性とFe+Si+Al+Nb+Cu含有量の依存性を示す三角組成図である。
【図13】図13はFebalSi14AlNbCuなる組成の合金薄帯試料の破壊歪におけるSi含有量の依存性とP含有量の依存性とFe+Si+Al+Nb+Cu含有量の依存性を示す三角組成図である。
【図14】図14はFebalSiAlNb6.5−yCuなる組成の合金薄帯試料の保磁力におけるSi含有量の依存性とP含有量の依存性とFe+Si+Al+Nb+Cu含有量の依存性を示す三角組成図である。
【図15】図15はFebalSiAlNb6.5−yCuなる組成の合金薄帯試料の破壊歪におけるSi含有量の依存性とP含有量の依存性とFe+Si+Al+Nb+Cu含有量の依存性を示す三角組成図である。
【図16】図16はFe74Si15.5Nb6.5Cuなる組成の薄帯試料と、Fe70Si15.5AlNb6.5Cuなる組成の薄帯試料と、Fe66Si15.5AlNb6.5Cuなる組成の薄帯試料と、Fe62Si15.5Al12Nb6.5Cuなる組成の薄帯試料のX線回折試験結果を示す図である。
【図17】図17はFe65AlSi15.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料の保磁力と、Fe63AlSi17.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料の保磁力と、Co基アモルファス材料の薄帯試料の保磁力と、Fe−Si−B系のFe基ナノ結晶材料の薄帯試料の保磁力の周波数依存性を測定した結果を示す図である。
【図18】図18はFe65AlSi15.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料のコアロスと、Fe63AlSi17.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料のコアロスと、Co基アモルファス材料の薄帯試料のコアロスと、Fe−Si−B系のFe基ナノ結晶材料の薄帯試料のコアロスの周波数依存性を測定した結果を示す図である。
【図19】図19はFe63AlSi17.5Nb6.5CuNiなる組成の薄帯試料の実効透磁率と、Co基アモルファス材料の薄帯試料の実効透磁率の周波数依存性を測定した結果を示す図である。
【図20】図20はFe74−xAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xCoAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化と角形比と保磁力の各値のAl濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図21】図21は先の例と同等の組成の試料を用いて40A/m(0.5Oe)の磁場中アニールした後に得られた合金薄帯試料の交流磁気特性の飽和磁化と角形比と保磁力の各値のAl濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図22】図22はFe74−xAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料とFe73−xCoAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料において磁歪と比抵抗の各値のAl濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図23】図23はFe67.5AlSi14Nb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料とFe66AlSi15.5Nb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化と角形比と保磁力と破壊歪の各値のP含有量依存性を示す図である。
【図24】図24はFe64AlNiSi15.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料を用いて外径21mm、内径14mm、厚さ5mmのリング状可飽和コアを作製し、100kHz、60A/mの条件でB−Hループを測定した結果を示す図である。
【図25】図25はFe67AlNiSi15.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料の無磁場熱処理後のB−Hループを示す図である。
【図26】図26は80A/m(1Oe)の磁場中熱処理後の合金薄帯試料のB−Hループを示す図である。
【図27】図27はFe68−xNiAlSi15.5Nb3B6.5Cuなる組成の合金薄帯試料の磁歪(λs)の温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図28】図27はFe68−xNiAlSi15.5Nb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料の磁歪の温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図29】図29はFe65−xNiAlSi15.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料の交流磁気特性の飽和磁化と角形比と保磁力と破壊歪の各値のCu含有量依存性を示す図である。
【図30】図30はFe63−xNiAlSi17.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料の同等の値のCu含有量依存性を示す図である。
【図31】図31はFe63−xNiAlSi17.5Nb4.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化と角形比と保磁力と破壊歪の各値のアニール温度依存性を測定した結果を示す図である。
【図32】図32はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において直流磁気特性の磁化(B10;T)と角形比(Br/B10)と保磁力(Hc;A/m)と1kHzにおける透磁率(μ’:×10)の各値のP含有量依存性を示す図である。
【図33】図33はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において直流磁気特性の磁化(B10;T)と角形比(Br/B10)と保磁力(Hc;A/m)と1kHzにおける透磁率(μ’:×10)の各値のP含有量依存性を示す図である。
【図34】図34はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値のP含有量依存性を示す図である。
【図35】図35はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料において交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値のP含有量依存性を示す図である。
【図36】図36はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料におけるTx1、Tx2、ΔTx、保磁力(Hc;A/m)と磁歪(λs;×10−6)と比抵抗(ρ;μΩm)の各値のP含有量依存性を測定した結果を示す図である。
【図37】図37はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料におけるTx1、Tx2、ΔTx、保磁力(Hc;A/m)と磁歪(λs;×10−6)と比抵抗(ρ;μΩm)の各値のP含有量依存性を測定した結果を示す図である。
【図38】図38はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)の各値の温度依存性を示す図である。
【図39】図39はFe62NiCoSi15.5AlNb6.5−xCuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc)の各値の温度依存性を示す図であって、20℃を基準とした場合の変化率(ΔBm、ΔBr/Bm、ΔHc)を示す図である。
【図40】図40はFe66−xNiSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値の温度依存性を示す図である。
【図41】図41はFe66−xNiSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値の温度依存性を示す図であって、20℃を基準とした場合の変化率(ΔBm、ΔBr/Bm、ΔHc、ΔPcv)を示す図である。
【図42】図42はFe64−xNiCoSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm;T)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc;A/m)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値の温度依存性を示す図である。
【図43】図43はFe64−xNiCoSi15.5AlNb6.5Cuなる組成の合金薄帯試料における交流磁気特性の飽和磁化(Bm)と角形比(Br/Bm)と保磁力(Hc)とコアロス(Pcv;kWm−3)の各値の温度依存性を示す図であって、20℃を基準とした場合の変化率(ΔBm、ΔBr/Bm、ΔHc、ΔPcv)を示す図である。
【符号の説明】
1…結晶相、3…非晶質相(アモルファス相)

Claims (19)

  1. Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以下であり、かつ、B含有量が8原子%以下である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊される曲げ直径が1mm以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  2. 前記Al含有量が2原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性合金。
  3. Fe、Si、Al、Nb、Bを必須元素とし、それら元素のうちAl含有量が4原子%以上である急冷合金薄帯を熱処理することにより、平均結晶粒径が50nm以下の微細結晶組織を有し、急冷後において薄帯が破壊される曲げ直径が2mm以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性合金において、100kHzの保磁力(Hc)が22A/m以下、角形比(Br/Bm)が0.95以上であることを特徴とする軟磁性合金。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性合金において、100kHzの保磁力(Hc)が15A/m以下、角形比(Br/Bm)が0.95以上であることを特徴とする軟磁性合金。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性合金において、100kHzの初透磁率が10000以上であることを特徴とする軟磁性合金。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の軟磁性合金において、熱処理温度が450℃以上、650℃以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の軟磁性合金において、急冷薄帯の面内方向に40A/m(0.5Oe)以上、80A/m(10Oe)以下の印加磁場をかけて熱処理されたことを特徴とする軟磁性合金。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の軟磁性合金において、前記微細結晶組織が規則格子を一部含む体心立方格子相を有する組織であることを特徴とする軟磁性合金。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の軟磁性合金において、急冷薄帯の長手方向へ磁場を印加して測定した直流B−Hカーブの(Br/B10)の値が0.5以下であることを特徴とする軟磁性合金。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の軟磁性合金において、熱処理後の磁歪定数の絶対値が1×10−6以下の値であることを特徴とする軟磁性合金。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の軟磁性合金において、Pを0.1原子%以上、5原子%以下含有し、BとPの含有量の比率をB1−bの式で示した場合に0.35≦b≦0.75の範囲であることを特徴とする軟磁性合金。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の軟磁性合金において、Niを0.1原子%以上、5原子%以下含有することを特徴とする軟磁性合金。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の軟磁性合金において、Cuを0.1原子%以上、3原子%以下含有することを特徴とする軟磁性合金。
  15. 請求項1、2、3及び5〜14のいずれかに記載の軟磁性合金において、以下の組成式で示されることを特徴とする軟磁性合金。
    Fe100−x−y−z−t−u−v− SiAlNb(B1−bCuNiCo
    (ただし組成比を示すx、y、z、t、u、v、wはいずれも原子%で14≦x≦20、1≦y≦4、2≦z≦5、5≦t≦8、0≦u≦3、0≦v≦5、0≦w≦5の範囲、bは0≦b≦1とする。)
  16. 請求項4及び5〜14のいずれかに記載の軟磁性合金において、以下の組成式で示されることを特徴とする軟磁性合金。
    Fe100−x−y−z−t−u−v− SiAlNb(B1−bCuNiCo
    (ただし組成比を示すx、y、z、t、u、v、wはいずれも原子%で、14≦x≦20、4≦y≦12、2≦z≦5、5≦t≦9、0≦u≦3、0≦v≦5、0≦w≦5の範囲、bは0≦b≦1の範囲とする。)
  17. 請求項15または16に記載の軟磁性合金において、0≦u≦1の範囲とされたことを特徴とする軟磁性合金。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の軟磁性合金からなることを特徴とする磁心。
  19. 請求項1〜17のいずれかに記載の急冷薄帯が合金溶湯を冷却ロールに噴出させて急冷させることにより製造されたものであり、前記冷却ロールに接しつつ急冷された側の薄帯の一面をロール面とし、反対側の面を自由面とした場合、前記薄帯のロール面を外側にしてロール巻きしてコア形状とされた後に熱処理されて得られたことを特徴とする磁心。
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