JP2015148335A - オイルシール - Google Patents

Abstract

【課題】軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールにおいて、オイル側に負圧が生じても軸との接触を保つことのできるオイルシールを提供する。
【解決手段】軸孔１２の内周面に対して固定される固定部２０と、固定部２０から大気側Ａに向かって軸方向に延びる円筒部２４と、円筒部２４の大気側Ａの端２５から径方向内側に延びる径方向部２６と、径方向部２６の径方向内側の端２８からオイルＯに向かって軸方向に延びる、寝かせられたシールリップ３０と、を備え、シールリップ３０が、軸１６の外周面に摺動自在に密着する内周面３３と、ガータースプリング３８が収容された凹部３６が形成された外周面３５とを備える。
【選択図】図１

Description

本発明は、軸と軸孔との間を封止するオイルシールに関する。

現在、クランクケース内圧が比較的に低いエンジンには、摩擦を低くすることによって抵抗力が低下されたリップシールの使用が推奨されている。ここで、オイルシールの径方向の力は、リップシールと軸との接触を保つのに十分でありつつ、摩擦が最小限となるように十分低くされる。しかしながら、ターボ式やスーパーチャージャー式等の過給エンジンの一部では、クランクケース内圧が負圧になることによって、リップシールが軸との接触を保てなくなることがある。これにより、大気側からクランクケース内へ向かう空気の流れが引き起こされる。この空気の流れは、シールリップ、オイル及び軸との相互作用によって、需要者にとって不快な異音（音程の高い異音）を生じ得る。したがって、オイル側に負圧が生じても軸との接触を保ち得る、低摩擦なオイルシールが望まれている。

米国特許第８０６６２８７号公報

本発明の目的は、軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールにおいて、オイル側に負圧が生じても軸との接触を保つことのできるオイルシールを提供することにある。

本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明に係るオイルシールは、
軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールであって、
前記軸孔の内周面に対して固定される固定部と、
前記固定部から前記大気側に向かって軸方向に延びる円筒部と、
前記円筒部の前記大気側の端から径方向内側に延びる径方向部と、
前記径方向部の径方向内側の端から前記オイル側に向かって軸方向に延びる、寝かせられたシールリップと、
を備え、
前記シールリップが、前記軸の外周面に摺動自在に密着する内周面と、ガータースプリングが収容された凹部が形成された外周面とを備える。

このオイルシールによれば、ガータースプリングによって、シールリップが軸の外周面に向かって付勢される。ここで、オイル側に負圧が発生したときには、シールリップに対して軸から持ち上げるような力が作用するが、円筒部に対しては径方向内側に引き寄せるような力が作用する。これら２つの力は相殺されるため、結果的に、オイル側に負圧が発生しているときであっても、ガータースプリングによって、シールリップが軸の外周面に対して密着する状態が維持される。

また、本発明に係る他のオイルシールは、
軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールであって、
前記軸孔の内周面に対して固定される固定部と、
前記固定部から前記大気側に向かって軸方向に延びる円筒部と、
前記円筒部の前記大気側の端から径方向内側に延びる径方向部と、
前記径方向部の径方向内側の端から前記オイル側に向かって軸方向に延びる、前記軸の外周面に摺動自在に密着する内周面を有する、寝かせられたシールリップと、
前記シールリップの外周面に密着する付勢部材と、
を備える。

このオイルシールにおいても、付勢部材によって、シールリップが軸の外周面に向かって付勢される。そして、オイル側に負圧が発生したときには、シールリップに作用する力と、円筒部に対して作用する力とが相殺される。ゆえに、オイル側に負圧が発生しているときであっても、付勢部材によって、シールリップが軸の外周面に対して密着する状態が維持される。

上記のオイルシールは、前記径方向部から、径方向内側に、かつ、前記大気側に向かって軸方向に延びるダストリップを備えてもよい。そして、上記のオイルシールは、前記オイル側に負圧が生じていない場合は、前記シールリップが前記軸の外周面に密着すると共に、前記ダストリップが前記軸の外周面から径方向に離間するように構成され、前記オイル側に負圧が生じて前記シールリップを前記軸の外周面から持ち上げる力が作用した場合は、前記ダストリップを前記軸の外周面に密着させるように、前記円筒部の前記大気側の端が撓むように構成されてもよい。

この構成によれば、負圧が発生したときには、ダストリップが軸の外周面に密着するため、オイルシールの内周側を通過する空気の流れを発達させないようにすることができる。なお、オイルシールは、オイル側に発生した真空によって揺動されることによって、ダストリップが軸に接触して空気の流れを封じることができるように、十分に柔軟に構成されるとよい。また、ダストリップは、シールリップが完全に持ち上がる前に、軸に対して接触するように構成されるとよい。

また、前記シールリップは、内周側にポンプ溝を備えてもよい。

これにより、シールリップと軸との間の接触面の潤滑が維持される。

なお、前記付勢部材は、ガータースプリングであってもよい。また、前記付勢部材は、フィンガースプリングであってもよい。

以上説明したように、本発明によれば、軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールにおいて、オイル側に負圧が生じても軸との接触を保つことのできるオイルシールが提供される。

本発明の実施例に係るオイルシールの構成を示す模式的断面図であって、通常の使用条件下での状態を示している。 本発明の実施例に係るオイルシールの模式的断面図であって、オイル側に負圧が発生しているときの状態を示している。 本発明の実施例に係るオイルシールの模式的断面図であって、代替的な付勢部材を備える構成を示している。

以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に
詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。本実施例に係るオイルシールは、エンジンのクランクケース内の空間を密封するために用いられるものである。

なお、以下の説明において、ある要素や層が、他の要素や層の「上にある」、「密着する」などと表現されている場合は、その要素や層は、直接的に他の要素や層の上にあったり、直接的に密着したりしてよく、あるいは、介在する要素や層が間に存在してもよい。

（実施例）
図１を参照して、本発明の実施例に係る、省エネ型のオイルシール１０について説明する。オイルシール１０は、軸１６と、ハウジング１４の軸孔１２との間を封止して、大気側Ａとオイル側Ｏを隔てるように設計されている。オイルシール１０は、軸孔１２の内周面に対して固定される固定部２０を備えている。本実施例においては、固定部２０は、軸孔１２の内周面に固定された、金属からなる環状部材２２に対して取り付けられている。なお、固定部２０と環状部材２２の形状は、図示された形状以外の形状であってもよい。また、環状部材２２を設けずに、固定部２０が軸孔１２の内周面に対して直接的に密着するように構成してもよい。

オイルシール１０は、固定部２０から大気側Ａに向かって軸方向に延びる円筒部２４と、円筒部２４の大気側Ａの端部２５から径方向内側に延びる径方向部２６とを備えている。径方向部２６の径方向内側の端にはピボット部２８が形成されている。そして、オイルシール１０は、ピボット部２８からオイル側Ｏに向かって軸方向に、且つ、径方向内側に延びる、寝かせられたシールリップ３０を備えている。更に、オイルシール１０は、径方向部２６のピボット部２８から、径方向内側に、かつ、大気側Ａに向かって軸方向に延びるダストリップ３２を備えている。このような構成により、ピボット部２８における、径方向部２６、シールリップ３０及びダストリップ３２のそれぞれを連結する領域の断面は概ねＹ字形状となる。

シールリップ３０は、軸１６の外周面に摺動自在に密着する内周面３３を備えており、内周面３３には複数のポンプ溝３４が形成されている。ポンプ溝３４は、内周面３３と軸１６の外周面との間の潤滑が維持されるように設計されている。またシールリップ３０は、ガータースプリング３８が収容された凹部３６が形成された外周面３５を備えている。ガータースプリング３８は、軸１６に対するシールリップ３０の接触を維持する付勢部材として機能する。なお、ガータースプリング３８に替えて、他の種類のスプリングをシールリップ３０の外周面上に設けることによって、シールリップ３０を軸１６と接触するように付勢することができる。図３に示されるように、フィンガースプリング１３８などの他の種類のスプリングを用いることができる。外周面３５に密着する他の付勢部材としてのフィンガースプリング１３８は、Ｃ字形状の断面を有しており、固定部２０の内周側とシールリップ３０の外周側との間で機能する。フィンガースプリング１３８は、オイル側Ｏの負圧が円筒部２４に作用するように、自身を貫通する通気通路を有していてもよい。オイル側Ｏに負圧が発生していない、あるいは、発生していたとしても極僅かである使用条件下では、図１に示されるように、シールリップ３０が軸１６に密着しているのに対して、ダストリップ３２は軸１６から離間している。

オイル側Ｏに負圧が発生する使用条件下では、図２に示されるように、この負圧によって、シールリップ３０を軸１６から持ち上げるような力（図２中の矢印Ｐ）が作用する。一方、この負圧によって、円筒部２４における径方向部２６寄りの部分を径方向内側に引き寄せるような力（図２中の矢印Ｑ）も作用する。このように作用する二つの力は互いに相殺されるため、ガータースプリング３８の付勢力やシールリップ３０自体の弾性力によ
って、軸１６に対するシールリップ３０の接触が維持される。更に、オイル側Ｏが真空状態となったときには、オイルシール１０は、図２中の矢印Ｒに示されるように、シールリップ３０の先端側がガータースプリング３８によって押圧された状態のまま、シール全体がピボット部２８周りに揺動するように設計されている。即ち、オイルシール１０は、オイル側Ｏに発生した真空によって揺動されることによって、ダストリップ３２が軸１６に接触して空気の流れを封じることができるように、十分に柔軟に構成されている。また、ダストリップ３２は、シールリップ３２が完全に持ち上がる前に、軸１６に対して接触するように構成されている。これにより、ダストリップ３２を軸１６に対して接触させて（図２中の矢印Ｓ）、オイルシール１０の内周側を通過する空気の流れを発達させないようにすることができる。

なお、代替的にフィンガースプリング１３８が設けられたオイルシールにおいても、同様の効果が奏される。

また、シール材料の構成としては、プラスチック、ゴムや、ＰＴＦＥ、ＴＰＥ（熱可塑性エラストマー）、ＴＰＶ（架橋型熱可塑性エラストマー）等の幅広いエラストマーを用いることができる。

１０：オイルシール １２：軸孔 １４：ハウジング １６：軸
２０：固定部 ２４：円筒部 ２６：径方向部 ２８：ピボット部
３０：シールリップ ３２：ダストリップ ３３：内周面 ３５：外周面
３６：凹部 ３８：ガータースプリング １３８：フィンガースプリング
Ａ：大気側 Ｏ：オイル側

Claims (7)

1. 軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールであって、
   前記軸孔の内周面に対して固定される固定部と、
   前記固定部から前記大気側に向かって軸方向に延びる円筒部と、
   前記円筒部の前記大気側の端から径方向内側に延びる径方向部と、
   前記径方向部の径方向内側の端から前記オイル側に向かって軸方向に延びる、寝かせられたシールリップと、
   を備え、
   前記シールリップが、前記軸の外周面に摺動自在に密着する内周面と、ガータースプリングが収容された凹部が形成された外周面とを備える、オイルシール。
2. 軸と軸孔との間を封止して、大気側とオイル側とを隔てるオイルシールであって、
   前記軸孔の内周面に対して固定される固定部と、
   前記固定部から前記大気側に向かって軸方向に延びる円筒部と、
   前記円筒部の前記大気側の端から径方向内側に延びる径方向部と、
   前記径方向部の径方向内側の端から前記オイル側に向かって軸方向に延びる、前記軸の外周面に摺動自在に密着する内周面を有する、寝かせられたシールリップと、
   前記シールリップの外周面に密着する付勢部材と、
   を備えるオイルシール。
3. 前記径方向部から、径方向内側に、かつ、前記大気側に向かって軸方向に延びるダストリップを備える、請求項１または２に記載のオイルシール。
4. 前記オイル側に負圧が生じていない場合は、前記シールリップが前記軸の外周面に密着すると共に、前記ダストリップが前記軸の外周面から径方向に離間するように構成され、
   前記オイル側に負圧が生じて前記シールリップを前記軸の外周面から持ち上げる力が作用した場合は、前記ダストリップを前記軸の外周面に密着させるように、前記円筒部の前記大気側の端が撓むように構成されている、請求項３に記載のオイルシール。
5. 前記シールリップが、内周側にポンプ溝を備える、請求項１から４の何れか一項に記載のオイルシール。
6. 前記付勢部材が、ガータースプリングである、請求項２に記載のオイルシール。
7. 前記付勢部材が、フィンガースプリングである、請求項２に記載のオイルシール。

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