JP2015147834A - 導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜 - Google Patents

導電性高分子水溶液、及び導電性高分子膜 Download PDF

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Abstract

【課題】低粘度で固形分濃度の増加が可能な新規な導電性高分子水溶液の提供及び前記水溶液を乾燥して、得られる高導電性高分子膜の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する水溶性化合物から選ばれる少なくとも一種の多価アルコール化合物(B)と、を含む導電性高分子水溶液。
Figure 2015147834

Figure 2015147834

及びそれを乾燥させて得られる導電性高分子膜。
【選択図】図2

Description

本発明は、低粘度で固形分濃度の増加が可能な導電性高分子水溶液、及び高い導電性と優れた耐湿性を有する導電性高分子膜に関するものである。
近年、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等に代表されるπ共役系高分子に、電子受容性化合物をドーパントとしてドープした導電性高分子材料が開発され、例えば、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。中でも、化学的安定性の面からポリチオフェンが実用上有用である。
ポリチオフェンとしては、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)の水溶液中で、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させることで得られるPEDOT:PSS水分散体溶液や、水溶性の付与とドーピング作用を兼ね備えた置換基(スルホ基、スルホネート基等)を直接又はスペーサを介してポリマー主鎖中に有する、いわゆる自己ドープ型導電性高分子があり、例えば、スルホン化ポリアニリン、PEDOT−Sなどが知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
上記したPEDOT:PSS水分散体溶液から得られる導電性高分子膜の導電率は高く、例えば、アルミ電解コンデンサの固体電解質への応用が盛んに検討されている。しかしながら、元来数十nm以上の水分散体溶液であることから、誘電体である酸化アルミ(陽極酸化被膜)の微細孔に浸透しづらいため、コンデンサの高容量化・低ESR化(ESR:等価直列抵抗)には必ずしも十分ではなかった。
一方、自己ドープ型の導電性高分子は、その優れた水溶性のため、粒径が極めて小さい特徴があり、そのため微細な構造への浸透性に優れている。そのため、例えば、アルミ電解コンデンサの凹凸のある陽極酸化被膜への浸透性も良いと考えられており、コンデンサの高容量化への寄与が期待されている。このような固体電解コンデンサでは、コンデンサ素子中に搭載された導電性高分子の搭載量を増やすことで、コンデンサの静電容量やESRなどが改善することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、導電性高分子水溶液は固形分濃度の増加とともに粘度が著しく上昇するため、使用上の取扱いやすさ、微細構造への含浸性、溶液の分散安定性の観点からも固形分濃度を低くする必要がある。その結果、コンデンサ中の導電性高分子の搭載量が少なくなるため、搭載量を増やすにはコンデンサ素子中への導電性高分子水溶液の含浸−乾燥を複数回繰り返す必要があり非常に煩雑となっている。そのため、固形分濃度が高く、且つ低粘度の導電性高分子溶液の開発が望まれていた。
本出願人はこれまでに高い導電性と優れた水溶性を兼ね備えた自己ドープ型導電性高分子を報告しているが(例えば、特許文献2参照)、低粘度域で固形分濃度の増加という要求に対しては必ずしも十分ではなかった。
特開2011−199089号公報 国際公開第2014/007299号
Journal of American Chemical Society,112,2801−2803(1990) Advanced Materials,Vol.23(38)4403−4408(2011)
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、
(1)低粘度域で固形分濃度の増加が可能な新規な導電性高分子水溶液の組成物を提供すること、及び
(2)高い導電性と優れた耐湿性を有する導電性高分子膜を提供すること、である。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の水溶性自己ドープ型導電性ポリチオフェン(A)に、特定の水溶性化合物(B)を配合することで得られる水溶液が、従来のポリチオフェン(A)のみの水溶液では達成困難な低粘度で且つ固形分濃度増加が可能であることを見出した。さらにこれらから得られる導電性高分子膜は、導電率が数S/cm以上の導電性を示し、さらにはポリチオフェン(A)のみでは作製困難な耐湿性に優れた膜であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に示すとおりの導電性高分子水溶液の組成物、並びに導電性高分子膜に関するものである。
[1]下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する水溶性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(B)とを含む導電性高分子水溶液。
Figure 2015147834
Figure 2015147834
[上記式(1)及び式(2)中、Lは下記式(3)又は式(4)を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、又はNH(Rを表す。Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
Figure 2015147834
[上記式(3)中、lは6〜12の整数を表す。]
Figure 2015147834
[上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
[2]化合物(B)が、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する多価アルコールであることを特徴とする上記[1]に記載の導電性高分子水溶液。
[3]構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する多価アルコールが、糖アルコールであることを特徴とする上記[2]に記載の導電性高分子水溶液。
[4]糖アルコールが、ソルビトールであることを特徴とする上記[3]に記載の導電性高分子水溶液。
[5]ポリチオフェン(A)と化合物(B)の含有量が、0.01<[化合物(B)の固形分重量]/[ポリチオフェン(A)の固形分重量]<100の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[6]導電性高分子水溶液中の固形分濃度が、0.1〜20重量%の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[7]導電性高分子水溶液の粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
[8]上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の導電性高分子水溶液を乾燥させて得られることを特徴とする導電性高分子膜。
[9]導電性高分子膜の導電率が10S/cm以上であることを特徴とする上記[8]記載の導電性高分子膜。
本発明によれば、新規な導電性高分子水溶液組成物を提供できる。さらに本水溶液から形成される導電性高分子膜は、高い導電性と優れた耐湿性兼ね備えた膜を作製できる。
合成例3で得られた導電性高分子水溶液(2重量%)中の固形分の粒度分布を示す図である。 実施例1で得られた導電性高分子水溶液中の固形分の粒度分布を示す図である。 実施例2で得られた導電性高分子水溶液中の固形分の粒度分布を示す図である。 実施例3で得られた導電性高分子水溶液中の固形分の粒度分布を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性高分子水溶液は、上記式(1)で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する水溶性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(B)とを含む。
本発明におけるポリチオフェン(A)は、上記式(1)で表される構造単位及び上記式)2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む。
上記式(1)又は(2)中、Mは、水素原子、アルカリ金属原子、又はNH(Rを表す。アルカリ金属原子としては、例えば、Li、Na、Kが好ましい。また、置換基Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基において、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基が挙げられる。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基等が例示される。
これらのうち、置換基Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
上記式(1)又は式(2)中、Lは上記式(3)又は式(4)のいずれかで表される。
上記式(3)中、lは6〜12の整数を表し、好ましくは6〜8の整数である。
上記式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。
置換基Rにおいて、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子である。
上記式(4)中、mは1〜6の整数を表し、好ましくは、mは1〜4の整数である。
上記式(2)で表される構造単位は、上記式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
ドーピングにより絶縁体−金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型ポリマーと呼ばれている。
本発明のポリチオフェン(A)は、下記式(5)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に重合させることで製造できる。
Figure 2015147834
[上記式(5)中、M、Lは上記と同じ定義である。]
重合後のポリマーは金属塩であるため、必要に応じて、得られたポリマーを酸性処理することでMを水素原子へ変換可能であり、さらにこれをアミン化合物と反応させることでMがNH(Rで表されるアミン塩への変換が可能である。ここでRは上記と同じ定義である。
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(3)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、具体的には、
6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、6−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸ナトリウム、8−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)オクタン−1−スルホン酸カリウム等が例示される。
上記式(1)又は式(2)において、Lが上記式(4)で表される、本発明のポリチオフェンを得るためのチオフェンモノマーとしては、具体的には、
3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−エチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−プロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ヘキシル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソプロピル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソブチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−イソペンチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸アンモニウム、3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−ブタンスルホン酸カリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸ナトリウム、4−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−フルオロ−1−ブタンスルホン酸カリウム等が例示される。
本発明における化合物(B)は、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する水溶性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である。水溶性化合物の構造中にヒドロキシ基を3つ以上有することで、導電性高分子膜の成膜乾燥時の温度よりも高い沸点を有するため、膜中に残存することになり、乾燥後の固形分量の低下を防ぐことができる。一方、エチレングリコール等に代表される、構造中に2個以下のヒドロキシル基を有する水溶性化合物では、乾燥時に蒸発して固形分量の低下を引き起こす場合がある。
化合物(B)としては、特に限定するものではないが、例えば、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する多価アルコールが挙げられる。これらのうち、3価アルコール、糖アルコール等が好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合してよい。
3価アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、グリセロールが好ましい。
糖アルコールとしては、特に限定するものではないが、例えば、エリトリトール、ソルビトール、アラビトール等が好ましい。より好ましくはソルビトールである。
化合物(B)のより好適な例としては、ソルビトールである。
本発明の上記導電性高分子水溶液において、上記ポリチオフェン(A)と化合物(B)の含有量は、0.01<[化合物(B)の固形分重量]/[ポリチオフェン(A)の固形分重量]<100の範囲であることが好ましく、0.1<[化合物(B)の固形分重量]/[ポリチオフェン(A)の固形分重量]<10の範囲がより好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明のポリチオフェン(A)水溶液又は固体と化合物(B)、必要に応じて水を使用し、これらを任意の順で混合攪拌することにより調製できる。また、予め化合物(B)を溶かした水溶系にポリチオフェン(A)の固体を添加しても良い。好ましくは、ポリチオフェン(A)の水溶液を使用することが望ましい。
ここで、混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温〜加温下で行うことができる。好ましくは0℃以上100℃以下が好ましい。混合する際の雰囲気は特に限定されないが、大気中、不活性ガス中でも良い。本発明の導電性高分子水溶液のpHは1.5〜9までの間で任意に調整することができる。pHを調整する手順としては、ポリチオフェン(A)と化合物(B)とを混合した後、アンモニア水又はアミン系化合物を添加することにより調整することができる。アミン系化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン水溶液、イミダゾール、ピリジン、エタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。より好ましくはアンモニア水である。
本発明の導電性高分子水溶液を混合する際には、スターラーチップ、攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザ−、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液の濃度調整は、配合比で調整しても良いし、配合後に濃縮により調整しても良い。濃縮の方法は、減圧下に溶媒を留去する方法であっても、限外ろ過膜を利用する方法であっても良い。
本発明の導電性高分子水溶液の中の固形分濃度は、ベースとなる導電性高分子水溶液中の導電性高分子単独の固形分濃度よりも増加していれば特に限定するものではないが、例えば、0.1〜20重量%の範囲が好ましく、0.5〜10重量%の範囲がより好ましい。
本発明の導電性高分子水溶液中の固形分の粒径は、特に限定するものではないが、小さいほど水溶性が良好であり、導電性や成膜時の均一な膜形成の観点からも望ましい。例えば、室温又は加温下で調製した導電性高分子水溶液の固形分濃度が10重量%以下の場合、固形分の粒子径(D50)が0.02μm以下であれば、水溶性がより良好となる。
本発明の導電性高分子溶液の粘度(20℃)は、100mPa・s以下であれば特に限定されないが、好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは30mPa・s以下である。
本発明の導電性高分子水溶液から導電性高分子膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の導電性高分子水溶液を、基材に塗布し乾燥することで導電性被膜が簡単に得られる。
基材としては、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、レジスト基板等が挙げられる。
塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
塗膜の乾燥温度は、均一な導電膜が得られる温度であれば特に限定されないが、室温300℃の範囲であり、好ましくは室温〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温〜200℃の範囲である。
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
塗膜の膜厚としては特に限定するものではないが、10−2〜10μmの範囲が好ましい。得られる塗膜の表面抵抗値としては特に限定するものではないが、1〜10Ω/□の範囲のものが好ましい。
本発明で得られる導電性高分子膜の導電率としては、特に限定するものではないが、フィルム状態での導電率(電気伝導度)が10S/cm以上であることが好ましい。
本発明における良好な耐湿性とは、上記した方法で得られた導電性高分子膜を流水中で1分間洗浄しても基材から剥離・溶解せず、さらに再度乾燥した後の導電率の変化がほとんどない程度の耐湿性をいう。
以下に本発明に関する実施例を示す。
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC−2014。
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200。
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP−T600。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV− 1 Prime。
[導電率測定]
導電性ポリマーを含む水溶液0.5mlを25mm角の無アルカリガラス板に塗布し、室温で一晩乾燥した後、ホットプレート上で120℃にて20分、さらに160℃にて10分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗率から、以下の式に基づき算出した。
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])。
[粒径測定]
装置:日機装社製、Microtrac Nanotrac UPA−UT151。
[耐湿性試験]
導電性ポリマーを含む水溶液0.5mlを25mm角の無アルカリガラス板に塗布し、室温で一晩乾燥した後、ホットプレート上で120℃にて20分、さらに160℃にて10分加熱して導電性高分子膜を得た。得られた導電性高分子膜に流水を1分間流し、膜の溶解又は剥離を目視で観察した。さらに、再度塗膜を乾燥して導電率を測定することで試験前後に導電率が変化していないかを調べた。
合成例1(3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(化7)の合成.)
窒素雰囲気下、100mlナス型フラスコに60%水素化ナトリウム0.437g(10.9mmol)、トルエン37mlを仕込んだ後、1.52gの(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イル)メタノール1.52g(8.84ml)を添加した。その後、反応液を還流温度に昇温させ同温度で1時間攪拌した。その後、2,4−ブタンスルトン1.21g(8.89mmol)とトルエン10mlとからなる混合液を滴下し、同温度で2時間攪拌した。冷却後、得られた反応液をアセトン160mlに滴下し再沈を行った。得られた粉末を濾過し、真空乾燥させることで1.82gの淡黄色粉末を収率62%で得た。NMR測定から、これが下記式(6)で表される3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウムであることを確認した。
Figure 2015147834
H−NMR(DO)δ(ppm);6.67(s,2H),4.54−4.60(m,1H),4.45(dd,1H,J=12.0,2.2Hz),4.26(dd,1H,J=12.0,6.8Hz),3.90−3.81(m,4H),3.10−3.18(m,1H),2.30−2.47(m,1H),1.77−1.92(m,1H),1.45(d,3H)。
13C−NMR(DO)δ(ppm);14.91,31.22,53.13,66.18,69.18,73.29,73.36,100.81,100.94,140.88,141.06。
合成例2 ポリチオフェン(A)の合成[下記化8又は下記化9で表される構造単位を含む重合体].
500mlセパラブルフラスコに、合成例1に準じて合成した3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 10g(30mmol)と水150gを加えた。溶解後、室温下、無水塩化鉄(III)2.94g(18.1mmol)を加えて20分攪拌した。その後、過硫酸ナトリウム14.5g(60.4mmol)と水100gからなる混合溶液を反応液温度が30℃以下を保持しながら滴下した。室温で3時間攪拌したのち、反応液を800gのアセトンに滴下させ黒色のNa型のポリマーを析出させた。ポリマーを濾過・真空乾燥することで、18.0gの3−[(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−[1,4]ジオキシン−2−イル)メトキシ]−1−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの粗ポリマーを得た。
次に、この粗ポリマー14.5gに水を加え2重量%溶液に調製した水溶液700gを、陽イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100(H型)200mlを充填したカラムに通液(空間速度=1.1)することによりH型のポリマー水溶液を738g得た。更に、本ポリマー水溶液をクロスフロー式限外ろ過(ろ過器=ビバフロー200,分画分子量=5,000、透過倍率=5)により精製することにより下記式(7)又は式(8)で表される構造単位を含む重合体の濃群青色水溶液を698g合成した。本ポリマー水溶液に含まれるポリマー量は0.74重量%であり、又、不純物と考えられる鉄イオン、ナトリウムイオンはICP−MS分析により、各々44ppm,12ppm(対ポリマー)であった。下記本ポリマーの導電率は54S/cmだった。
Figure 2015147834
Figure 2015147834
合成例3 ポリチオフェン(A)の合成[下記式(9)又は下記式(10)で表される構造単位を含む重合体].
合成例2で得られたポリチオフェン(A)水溶液を攪拌下、アンモニア水で中和した後、固形分がそれぞれ2重量%、4重量%になるように調整した。下記本ポリマーの導電率はいずれも54S/cmだった。導電性水溶液中の固形分の粒径(D50)は図1に示すように約0.001μmだった。
Figure 2015147834
Figure 2015147834
実施例1.
合成例3で得られたポリチオフェン(A)を2重量%含む水溶液1.50gに、化合物(B)としてソルビトールを15mg加えてよく攪拌混合して固形分濃度を3重量%に増加させた。この導電性高分子水溶液の粘度は5.9mPa・s(20℃)だった。この溶液をガラス上に0.5mLキャストし、室温で一晩乾燥した後、ホットプレート上で120℃にて20分、さらに160℃にて10分加熱して導電性高分子膜を得た。この塗膜の導電率は49S/cmであり、良好な導電率を示した。引き続き、耐湿性試験としてこの塗膜を1分間流水で洗い流して溶解・剥離を観察した結果、溶解、剥離はなく、さらに乾燥後に測定した導電率に低下は無く、耐湿性の向上が見られた。また導電性水溶液中の固形分の粒径(D50)は、図2に示す様に約0.001μmであり、良好な水溶性を示した。結果を表1に示す。
実施例2〜3.
実施例1において、導電性高分子水溶液の組成を変化させた以外は実施例1に準拠して行った。導電性水溶液中の固形分の粒径(D50)を、図3及び図4に示す様に約0.001μmであり、良好な水溶性を示した。その結果を表1に示す。
Figure 2015147834
なお、表1において、「%」は重量%を意味する。
比較例1.
合成例3で得た2重量%ポリチオフェン(A)水溶液のみから高分子膜を作製した以外は実施例1と同じ条件で導電性高分子膜。その高分子膜では、耐湿性試験で膜の溶解又は剥離が一部見られた。
比較例2.
合成例3で得た4重量%ポリチオフェン(A)水溶液の粘度は153mPa・sとなり、著しい導電性の低下が見られた。またこれらから得られた高分子膜は耐湿性試験で膜の溶解又は剥離が一部見られた。
本発明の導電性高分子水溶液は、固形分濃度が高くかつ低粘度であるため、容易に厚膜化、導電性成分の充填が可能であり、作業効率の向上も見込める。また、当該導電性高分子水溶液から得られた高分子膜は、高い導電性を有し、耐湿性に優れていることから長期に安定した導電性を維持できるため、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ等への応用が期待できる。

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する水溶性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(B)とを含む導電性高分子水溶液。
    Figure 2015147834
    Figure 2015147834
    [上記式(1)及び式(2)中、Lは下記式(3)又は式(4)を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、又はNH(Rを表す。Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
    Figure 2015147834
    [上記式(3)中、lは6〜12の整数を表す。]
    Figure 2015147834
    [上記式(4)中、mは1〜6の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又はフッ素原子を表す。]
  2. 化合物(B)が、構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する多価アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子水溶液。
  3. 構造中にヒドロキシ基を3つ以上有する多価アルコールが、糖アルコールであることを特徴とする請求項2に記載の導電性高分子水溶液。
  4. 糖アルコールが、ソルビトールであることを特徴とする請求項3に記載の導電性高分子水溶液。
  5. ポリチオフェン(A)と化合物(B)の含有量が、0.01<[化合物(B)の固形分重量]/[ポリチオフェン(A)の固形分重量]<100の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
  6. 導電性高分子水溶液中の固形分濃度が、0.1〜20重量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
  7. 導電性高分子水溶液の粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性高分子水溶液。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の導電性高分子水溶液を乾燥させて得られることを特徴とする導電性高分子膜。
  9. 導電性高分子膜の導電率が10S/cm以上であることを特徴とする請求項8に記載の導電性高分子膜。
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