JP2015137421A - 電気接点用貴金属被覆材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性金属基体上の最表面に貴金属層が設けられた電気接点用貴金属被覆材であって、導電性金属基体と前記貴金属層との間に1層以上の下地層が形成されており、前記下地層の平均結晶粒径が0.3μm以上である、電気接点用貴金属被覆材。
【選択図】なし
Description
(1)導電性金属基体上の最表面に貴金属層が設けられた電気接点用貴金属被覆材であって、導電性金属基体と前記貴金属層との間に1層以上の下地層が形成されており、前記下地層の平均結晶粒径が0.3μm以上であることを特徴とする電気接点用貴金属被覆材。
(2)前記導電性金属基体が、銅または銅合金、鉄または鉄合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、(1)に記載の電気接点用貴金属被覆材。
(3)前記下地層が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、亜鉛、亜鉛合金、銅、銅合金のうちいずれか1層以上からなる、(1)または(2)に記載の電気接点用貴金属被覆材。
(4)前記貴金属層が、金、金合金、銀、銀合金、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金、ルテニウム、ルテニウム合金、イリジウム、イリジウム合金、オスミウム、オスミウム合金のうち、いずれか1層以上からなる、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電気接点用貴金属被覆材。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の貴金属被覆材を製造する方法であって、電気めっき法にて導電性金属基体上に下地層を形成する際、添加剤中の化合物の硫黄、炭素、窒素、塩素の元素濃度を合計で1000ppm以下とすることを特徴とする、貴金属被覆材料の製造方法。
(6)前記下地層を形成する電気めっきの電流密度を10A/dm2未満とする、(5)に貴金属被覆材料の製造方法。
(7)前記下地層を形成した後、50〜150℃で0.08〜3時間の熱処理を行う、或いは、加工率10%以上で圧延加工する、(5)または(6)に記載の貴金属被覆材料の製造方法。
(8)前記下地層を形成する電気めっきの電流密度を10A/dm2以上とし、
前記下地層を形成した後、50〜150℃で0.08〜3時間の熱処理を行う、或いは、加工率10%以上で圧延加工する、(5)に記載の貴金属被覆材料の製造方法。
<導電性金属基体>
本発明に用いる導電性基体成分としては、銅または銅合金、鉄または鉄合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が好ましく、中でも導電率の良い銅または銅合金が好ましい。例えば銅合金の一例として、CDA(Copper Development Association)掲載合金である「C14410(Cu−0.15Sn、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC−3)」、「C19400(Cu−Fe系合金材料、Cu−2.3Fe−0.03P−0.15Zn)」、および「C18045(Cu−0.3Cr−0.25Sn−0.5Zn、古河電気工業(株)製、商品名:EFTEC−64T)」等を用いることができる。(なお、前記銅合金の各元素の前の数字の単位は銅合金中の質量%を示す。)。これら基体はそれぞれ導電率や強度が異なるため、適宜要求特性により選定されて使用されるが、導電性や放熱性を向上させるという観点からは、導電率が5%IACS以上の銅合金の条材とすることが好ましい。なお、銅または銅合金を金属基体として取り扱う時での本発明の「基体成分」とは、合金の場合は、基金属である銅のことを示すものとする(以下他の合金の場合も同様である)。また、鉄もしくは鉄合金としては、例えば、42アロイ(Fe−42質量%Ni)やステンレスなどが用いられる。このときの基体成分とは、鉄を示すものとする。基体の厚さには特に制限はないが、通常、0.05〜2.00mmであり、好ましくは、0.1〜1.0mmである。
本発明における下地層を構成する金属は、所定の厚さで基体成分の拡散を防止でき、耐熱性を付与するものであれば特に制限はない。しかし、安価で被覆の容易なニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、亜鉛、亜鉛合金、銅、銅合金のうちいずれかからなることが好ましい。これらの金属からなる下地層は、密着性向上および基体成分の拡散防止に効果的である。下地層は1層以上形成されていればよく、例えば銅層形成後にニッケル層を形成したり、さらにニッケル層形成後にコバルト層を形成したりするなど、2層以上で形成されていても良い。ただし、生産性やコストを考慮すると、3層以内とするのが望ましい。なお、銅を下地層として採用する際は、銅下地層と貴金属からなる最表層の間に、別の層を形成することが好ましい。これは、基体が銅または銅合金の際の銅成分の拡散防止を目的としているため、銅が貴金属層と直接接することは避ける必要があるためである。
また、本発明の貴金属被覆材の最表層となる貴金属層は、金、金合金、銀、銀合金、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金、ルテニウム、ルテニウム合金、イリジウム、イリジウム合金、オスミウム、オスミウム合金のうち、いずれかから選ばれた金属層を用いる。この貴金属層は、低接触抵抗のため接続信頼性が良好であり、かつ生産性の良い最表層が得られる。特に金、金合金、銀、銀合金、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金が安定した接続信頼性の観点から好ましく、金、金合金、銀、銀合金、パラジウム、パラジウム合金がより一層好ましい。さらに、貴金属層は2層以上も設けられていても良い。貴金属層は、スパッタ法や蒸着法、湿式めっき法など通常の方法で形成できるが、被覆厚の制御容易性や生産性を考慮すれば、特に湿式めっき法を利用するのが好ましく、さらに電気めっき法であることがより好ましい。
<下地層の粒径制御1>
本発明者らは、下地層の平均結晶粒径は、添加剤中の硫黄・炭素・窒素・塩素成分のうちいずれか1種類以上を含有する化合物の濃度によって左右されやすいということを見出した。添加剤が含有されためっき液では析出が微細になるため、これらの成分を極力排除(添加剤中の化合物の硫黄・炭素・窒素・塩素の元素濃度として1000ppm以下)することが重要である。よって、添加剤中の化合物の硫黄・炭素・窒素・塩素の元素濃度が合計で1000ppm以下であるめっき液を使用することで、下地層の形成時点で下地層の平均結晶粒径を0.3μm以上とすることに成功した。このように、硫黄・炭素・窒素・塩素の元素濃度を1000ppm以下にすることで、下地層の平均結晶粒径を0.3μm以上に制御でき、熱処理無しでも拡散防止能力に優れた下地を得ることができる。
本発明によれば、下地層形成直後や下地層および貴金属層形成後に減面加工を行うことで、下地層に再結晶駆動力を導入して再結晶化しやすくすることができる。この場合の減面加工は、冷間圧延加工やプレス加工等の塑性加工で行うことが好ましい。(ここで、冷間圧延加工とプレス加工を併せて圧延加工等と略記する。)この場合、圧延加工等の塑性加工時の加工率(または減面率)が、10%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上であることが好ましい。加工率が高いほど下地層に塑性加工が施されるため、塑性変形による欠陥エネルギーが蓄えられるので、これを解放することにより再結晶化が促進される。なお、再結晶は常温でも進行することがあるため、プレス加工後に必ずしも熱処理を必要とするものではない。ただし、加工率が高すぎると下地層に大きな亀裂が進展し、基体と最表層が接してしまい、逆に拡散が進行しやすくなる。なお、圧延加工等の加工率は、80%を超えると加工時の割れやクラックが生じやすくなることや、エネルギー負荷(圧延やプレスに必要な電力など)も増加するため、80%以下、好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下であることが好ましい。
本発明によれば、下地層の平均結晶粒径の粗大化を促進するために、下地層のめっき後に熱処理を行っても良い。バッチ型あるいは走間型などの手法によって熱処理(調質又は低温焼鈍ともいう)を施すことで、調質するとともに、下地層を再結晶化させることができる。ただし、基体の拡散を進めない程度の熱処理に留める必要がある。このような熱処理の条件は、上記の下地層の平均結晶粒径を0.3μm以上とするように定められる。熱処理の温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは50〜100℃である。熱処理の時間は、好ましくは0.08〜3時間、より好ましくは0.25〜1時間である。この熱処理の温度が高すぎたり時間が長すぎたりすると熱履歴が過剰となり、基体の拡散が進行して接触抵抗を増大させてしまう。上記の熱処理の条件により、目的の下地層の再結晶化を促進することができる。
本発明における貴金属層は、導電性基材或いは下地層上の少なくとも貴金属皮膜の特性を必要とする部分(例えば、低接触抵抗、半田濡れ性、耐磨耗性、ワイヤボンディング性確保などを目的として使用される箇所)の表面に形成されていればよい。貴金属皮膜の特性を必要としない他の部分においては、貴金属層を設ける必要はなく、例えば電気めっき法であれば、片面のみのめっきや、ストライプめっき、スポットめっきなどの部分めっきで形成されていても良い。貴金属層が部分的に形成される貴金属被覆材を製造することは、高価な貴金属層が不要となる部分の貴金属使用量を削減できるので、経済的でコストダウンに寄与する。さらには環境負荷が少ない方法で貴金属被覆材を得ることができる。
なお、本発明における平均結晶粒径の測定は、断面観察により判定する。対象となる貴金属被覆材料において、圧延平行断面をFIBにて切断することで、断面を露出した後、倍率を8000〜15000倍としてその断面をSIM観察する。次いで、得られた画像において、形成されている下地層部分の厚さ方向の中央部から基体平面方向に5μmの長さを線引きし、その線を下地層の結晶粒界が何本交差するかを観察し、5μmをその数で割ることにより結晶粒径と定義する。これを1視野当り任意箇所を3回測定し、合計で3視野、9箇所について行い数平均する。さらに下地層が複数層ある場合は、それぞれの層について測定を行い、その平均結晶粒径がいずれかの層が満足していればよい。これは、基体成分の拡散については結晶粒界が少ないことが拡散防止に効果的であることによる。従って平均結晶粒径が粗大である層が下地層として一層以上形成されていることが必要である。
本発明にて得られた貴金属被覆材料は、特に耐熱性に優れるので、結果的に各製造工程での熱履歴経過後の表層汚染が少なく、かつ長期信頼性に優れる。このため、コネクタ、摺動接点、タクトスイッチ、シートスイッチ、摺動接点などの電気的接続を必要とする電気接点に適用することで、長期信頼性に優れた電気接点材料として活用することができる。また、表層の基体成分の拡散が抑制されるため、例えばIC用リードフレームやQFN用リードフレームなどの半導体装置向けリードフレームや、LED、フォトカプラ・フォトインタラプタ用リードフレームなど、ワイヤボンディング性や半田濡れ性、さらには輝度劣化防止が望まれる光半導体装置用リードフレームにも好適に使用することができる。
厚さ0.2mm、幅50mmの表1に示す導電性金属基体に対して、下記に示す前処理(電解脱脂・酸洗工程)を行った。その後、表1に示す下地層および貴金属層を下記に示す条件で施して表1に示す発明例を得た。ただし、銀めっきを行うものについては、銀ストライクめっきを行った。なお、下地層の結晶粒径の制御は、下地層を設ける際のめっき液において、添加剤中の化合物の硫黄・炭素・窒素・塩素の元素濃度を合計で1000ppm以下とすることによって行った。また、加えて、一部の試料には、圧延処理や熱処理を行った。
比較例1では、厚さ0.2mm、幅50mmの表1に示す導電性金属基体に対して、下記に示す前処理(電解脱脂・酸洗工程)を行った。その後、表1に示す下地層および貴金属層を下記に示す条件で施して表1に示す比較例を得た。このとき、下地層の結晶粒径の制御は、下地層を設ける際のめっき液において、添加剤中の化合物の硫黄・炭素・窒素・塩素の元素濃度を合計で1000ppm以上とすることによって行った。添加剤には、上村工業社製のPCニッケルを用いた。また従来例1は、特許文献1の実施例11を模擬して形成したものであり、また従来例2は、特開2011−214066に記載の実施例3の形態に金めっきしたものを準備した。
[カソード電解脱脂]
脱脂液:NaOH 60g/リットル
脱脂条件:2.5A/dm2、温度60℃、脱脂時間60秒
[酸洗]
酸洗液:10%硫酸
酸洗条件:30秒 浸漬、室温
[Agストライクめっき]
めっき液:KAg(CN)2 4.45g/リットル、KCN 60g/リットル
めっき条件:電流密度 5A/dm2、温度 25℃
[Niめっき]
めっき液:Ni(SO3NH2)2・4H2O 500g/リットル、NiCl2 30g/リットル、H3BO3 30g/リットル
めっき条件:温度 50℃
[Coめっき]
めっき液:Co(SO3NH2)2・4H2O 500g/リットル、CoCl2 30g/リットル、H3BO3 30g/リットル
めっき条件:温度 50℃
[Auめっき]
めっき液:KAu(CN)2 14.6g/リットル、C6H8O7 150g/リットル、K2C6H4O7 180g/リットル
めっき条件:温度 40℃
[Pdめっき]
めっき液:Pd(NH3)2Cl2 45g/リットル、NH4OH 90ミリリットル/リットル、(NH4)2SO4 50g/リットル
めっき条件:温度 30℃
[Ptめっき]
めっき液:Pt(NO2)(NH3)2 10g/リットル、NaNO2 10g/リットル、NH4NO3 100g/リットル、NH3 50ミリリットル/リットル
めっき条件:温度 80℃
[Rhめっき]
めっき液:RHODEX(商品名、日本エレクトロプレイティングエンジニヤース(株)製)
めっき条件:温度 50℃
[Agめっき]無光沢めっき浴
めっき液:AgCN 50g/リットル、KCN 100g/リットル、K2CO3 30g/リットル
めっき条件:温度 30℃
(1A)接触抵抗測定:4端子法にて、最表層形成後の接触抵抗測定を実施した。測定は、最表層形成直後および250℃−16hr.の熱処理を大気雰囲気にて高温槽で処理後の2水準とし、熱処理前後の接触特性について評価を行った。評価は、半径2mmのAgプローブを使用し、10mA通電、荷重10gfで測定点10点の平均値を算出して接触抵抗を測定した。
(1B)AES(オージェ)分析:前記加熱試験後の試験片について、最表層の分析をオージェ分光分析装置(アルバック社製)を用いて測定した。測定は、最表層の定性分析を実施し、その表層に拡散して検出された基体成分量を原子%にて表示した。なお、銅または銅合金の場合は銅の濃度を、鉄または鉄合金の場合は鉄の濃度について測定している。
(1C)曲げ加工性:各試料について、曲げ加工半径0.4mmにてV曲げ試験を圧延筋に対して直角方向に実施後、その頂上部をマイクロスコープ(VHX200;キーエンス社製)にて観察倍率200倍で観察を行い、割れが認められなかったものを「優」として「○」で示し、軽微な割れが生じているものを「可」として「△」で示し、比較的大きな割れが生じたものを「不可」として「×」で表1に示した。
比較例1では下地層の平均結晶粒径が0.3μm未満であるので、高温下での接触抵抗が時間の経過によって大きく上昇し、最表層中への基体成分の拡散量が著しく多い。従来例1においても下地層の平均結晶粒径が0.3μmに達せず、接触抵抗が高温下、時間の経過によって大きく上昇し、最表層中への基体成分の拡散量が多い。従来例2において従来例1と同様、接触抵抗が高温下、時間の経過によって大きく上昇した。また最表層中への基体成分の拡散量が著しく多く、加えて、曲げ加工性試験において割れが生じ実用性がない。
Claims (8)
- 導電性金属基体上の最表面に貴金属層が設けられた電気接点用貴金属被覆材であって、
導電性金属基体と前記貴金属層との間に1層以上の下地層が形成されており、前記下地層の平均結晶粒径が0.3μm以上であることを特徴とする電気接点用貴金属被覆材。 - 前記導電性金属基体が、銅または銅合金、鉄または鉄合金、あるいはアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、請求項1に記載の電気接点用貴金属被覆材。
- 前記下地層が、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、亜鉛、亜鉛合金、銅、銅合金のうちいずれか1層以上からなる、請求項1または2に記載の電気接点用貴金属被覆材。
- 前記貴金属層が、金、金合金、銀、銀合金、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、ロジウム、ロジウム合金、ルテニウム、ルテニウム合金、イリジウム、イリジウム合金、オスミウム、オスミウム合金のうち、いずれか1層以上からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気接点用貴金属被覆材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の貴金属被覆材を製造する方法であって、
電気めっき法にて導電性金属基体上に下地層を形成する際、添加剤中の化合物の硫黄、炭素、窒素、塩素の元素濃度を合計で1000ppm以下とすることを特徴とする、貴金属被覆材料の製造方法。 - 前記下地層を形成する電気めっきの電流密度を10A/dm2未満とする、請求項5に貴金属被覆材料の製造方法。
- 前記下地層を形成した後、50〜150℃で0.08〜3時間の熱処理を行う、或いは、加工率10%以上で圧延加工する、請求項5または6に記載の貴金属被覆材料の製造方法。
- 前記下地層を形成する電気めっきの電流密度を10A/dm2以上とし、
前記下地層を形成した後、50〜150℃で0.08〜3時間の熱処理を行う、或いは、加工率10%以上で圧延加工する、請求項5に記載の貴金属被覆材料の製造方法。
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