ロジウム金属は、高い硬度、大きな摩耗抵抗、低い接触抵抗、空気中での酸化耐性、高い融点による対スパーク安定性等の優れた諸特性を有する。他方、ロジウム金属は高価であるため、ロジウムめっき被膜としてばねコンタクト、リベットコンタクト、ねじ締めコンタクトなどの電気部品の産業分野で利用されている。例えば、ロジウムめっき電極は、海水の電気分解によるソーダ工業で使用され、更に、家庭給水処理用電極としても使用されている。また、ロジウムめっき被膜は高温測定用の熱電対や抵抗線等の素材としてイリジウムを基材に用いたるつぼにも応用されている。また、ロジウムを他の白金族金属に含有させた白金族金属合金としてガスタービンブレードなどにも利用されている。
他方、ロジウムめっき被膜は、ロジウムの特性である、高い硬度、大きな摩耗抵抗、低い接触抵抗、空気中での酸化耐性、高い融点による対スパーク安定性等の優れた諸性質を利用して、電子部品や通信機部品分野の電気接点等の電気部品として重用されている。例えば、ICリードフレーム、プリント配線板、スイッチ、コネクター等の電子・電気部品等の発展にともない、300℃の大気雰囲気下の電気部品の表層または中間層としての需要が増加している。
ロジウムめっきには、電気めっきプロセスと無電解めっきプロセスに大別される。通常は、電気めっきプロセスにより形成され、コンタクト部品形状が複雑な場合は無電解めっきプロセスにより形成されることがある。ロジウムの電解めっき液は、硫酸めっき液とリン酸めっき液とが一般的である。例えば、『めっき技術便覧』(後述する非特許文献1)の「4.11.2ロジウムめっき」の表4.86には「金属ロジウム(硫酸塩またはリン酸塩として)1~4g/Lおよびリン酸40~80mL/L」の電気めっき浴や「金属ロジウム(硫酸塩またはリン酸塩として)4g/Lおよび硫酸20~40mL/L」の電気めっき浴が示されている。
また、特開平11-050295号公報(後述する特許文献1)の明細書0114段落の実施例35には「比較例35のめっき液に0.3g/Lの界面活性剤ポリスターOMを添加して比較例35と同条件でめっきを施した。」ことが記載され、同0113段落の比較例35には「リン酸ロジウム2g/L硫酸30mL/L、浴温45℃、電気密度4A/dm2」のめっき条件が記載されている。
ただし、特開平11-050295号公報(後述する特許文献1)の要約には「特定の界面活性剤の1種又は2種以上を添加したことを特徴とする金、白金、ロジウム、ルテニウム、それらの金属を70%以上含む合金又はパラジウムを70%以上含む合金の電気及び(又は)無電解めっき浴である。」ことが記載されている。
他方、ロジウム無電解めっき浴については、同明細書0122段落の実施例39には「比較例39のめっき液に1g/Lの界面活性剤ペレックスNB-Lを添加して比較例39と同条件でめっきを施した。」ことが記載され、同0121段落の比較例39には「塩化ロジウム 5g/L、塩酸(32%) 7.5g/L、温度30℃」の無電解めっき浴が記載されている。
リン酸電解めっき液では金属ロジウム析出物の陰極析出効率が低いため、市場では硫酸電解めっき液が一般的であった。例えば、特開昭58-048688号公報(後述する特許文献2)には「酸性ロジウムメッキ浴において、該メッキ浴に添加剤として、次亜燐酸塩を含有することを特徴とする黒色ロジウムメッキ浴」が開示されている。同実施例1には「硫酸ロジウム(ロジウム:8g/L)、次亜燐酸ナトリウム(1g/L)および硫酸(遊離10g/L)を混合して得られるメッキ浴に白金メッキしたチタン板を陽極とし、黄銅板を陰極として配置し、浴温25℃、電流密度3A/dm2の条件下に10分間黄銅板に電気メッキを行った。得られた析着物は鏡面光沢を有し黒色を呈していた。厚みは0.3μであり、密着性は良好であった。」ことが記載されている。
しかし、同実施例4の第1表では、耐摩耗性試験の結果、同実施例1の処理前の黒色Rhメッキ板は摩耗量が1.5mg/1000回あり、判定は不良とされている。これは、昭和62年12月16日に増訂最終版が発行された東京鍍金材料協同組合技術委員会編の『めっき技術ガイドブック』(後述する非特許文献2)294頁の「2.黒色ロジウムめっき」章の「黒色ロジウムめっきは、電着した状態ではアモルファスに近い微細な組織になっており、陽極酸化を加えることにより皮膜の物性が強化される。」という記載内容を裏付けている。
当初、ロジウム共析層のめっき被膜は表層に用いられていた。例えば、特開2009-103241号公報(後述する特許文献3)の0011段落には「この図1に示すように、ハウジング1の摺動面S2は、アルミ合金からなる母材1cの表面に、0.5μm厚のジンケート処理膜1d、5μm厚の無電解Ni-P-Bめっき膜1e、0.1μm厚のRhめっき膜1fが順次積層された構造を有する。」ことが記載されている。
その後、ロジウム共析層のめっき被膜は中間層にも用いられるようになってきた。例えば、特開2013-105629号公報(後述する特許文献4)の請求項1には、「燃料電池単位セルが複数積層されたセル積層体の両端に配設されて電流を取り出すのに用いる燃料電池用集電板であって、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材の片側表面に、Niめっき皮膜と、Pd、Pt、Ag、Rh、Ir、Os、及びRuからなる群から選ばれたいずれか1以上の貴金属を含んだ貴金属めっき被膜と、Auめっき皮膜とを備えたことを特徴とする燃料電池用集電板」の発明が開示されている。同0020段落には「また、結晶質の貴金属めっき被膜を得る際には…(中略)…P、B、及びWからなる群から選ばれたいずれか1以上の共析元素を0~3質量%の範囲で含有させるようにしてもよい。すなわち、結晶質の貴金属めっき被膜を得るためには、上記いずれか1以上の共析元素の含有量を0~3質量%の範囲にするのがよい。共析元素の含有量が増え過ぎると貴金属めっき被膜が非晶質になってしまうおそれがあるが、微量に存在すると結晶粒界を小さくして貴金属めっき被膜をより緻密にする効果が期待できる。」ことが記載されている。
また、特開2015-000989号公報(後述する特許文献5)の請求項1には、下地合金層にロジウム無電解めっき浴によるロジウム合金層を設けうることが記載されている。すなわち、同請求項1に「基材と、前記基材上に形成された下地合金層と、前記下地合金層上に形成されたパラジウムめっき層と、を備えるパラジウムめっき被覆材料であって、前記下地合金層が、M1-M2-M3合金(ただし、M1は、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、およびSnから選択される少なくとも1つの元素、M2は、Pd、Re、Pt、Rh、Ag、およびRuから選択される少なくとも1つの元素、M3は、P、およびBから選択される少なくとも1つの元素である。)で形成されていることを特徴とするパラジウムめっき被覆材料」の発明が開示されている。そして、同0024段落には「なお、上記においては、下地合金層20を、Ni-Pd-P合金とする場合を例示したが、下地合金層20を、Ni-Pd-P合金以外で構成する場合においても、同様に、M1、M2、およびM3の各元素を含み、還元剤、錯化剤が添加されためっき浴を適宜調整してなる下地合金無電解めっき浴を用いればよい。」ことが記載されている。
しかし、これまでのロジウム電気めっき被膜は、図2に示すように、ロジウム析出物の内部組織が観察され、この結晶粒は内部応力が高いというロジウム電析物特有の性質を有する。また、ロジウム電気めっき被膜またはロジウム無電解めっき被膜は中間層に用いることができる。その中間層上に上層の白金族金属等の貴金属めっき被膜を形成すると、金属めっきの析出の原理によって中間層のロジウムめっき被膜の結晶粒に沿って界面から上層の貴金属めっき被膜の結晶粒が成長する。このため中間層のロジウムめっき被膜にクラック等が発生すると、表層の貴金属めっき被膜までクラック等が進行してしまう。このようなクラック等があると、貴金属めっき被膜が剥離しないまでも、特に高温の酸化・腐食雰囲気下で使用する工業製品には適応できないものであった。
最近では、電気部品の小型化や高密度化が進展してきた結果、高価なロジウムめっき製品も薄い被膜で厚い膜厚に相当する特性が求められるようになってきた。また、内部応力の低いロジウムめっき被膜も求められるようになってきた。しかし、従来の非特許文献1、2および特許文献1~5に記載されたようなこれまでのロジウムめっき被膜は、結晶質構造である。このため結晶質構造を構成する個々のロジウム結晶粒は強固で頑強であるものの、その内部応力によって表面または表層側の面にクラックが発生しやすく、昨今の厳しい環境基準に耐えることが困難になってきた。
すなわち、貴金属価格の高騰が進行する昨今、接続端子等の電気接点の耐食性も大気雰囲気下での有孔度試験や塩水噴霧試験(NaCl5%および20%×35℃)から電圧を印加したコロードコード試験や加速亜硫酸ガス試験などの厳しい腐食試験の基準が適用され始めてきた。また、ロジウムめっきに使用される基材も薄く変形しやすい条件で製品に組み込まれ始めてきた。このような最近の安価な電子・電気部品の電気接点では、これまでの頑強なロジウム被膜の適用範囲が狭まり、従来のロジウムめっき被膜の採用が困難になってきた。本発明は、上記の課題に対応するためになされたものである。
本発明の工業製品用のロジウムリンめっき被膜は、ロジウム共析層のめっき被膜であって、当該ロジウム共析層はリンの含有量が7~10質量%であり、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒径が0.01μm未満の非晶質構造であることを特徴とする。
また、本発明の電気部品用の複層体材料は、導電性基材と、貴金属または貴金属合金を含む表層と、前記基材と表層との間に設けられる中間層と、ニッケルまたはニッケル合金を含む下層を有する積層体材料において、当該中間層がロジウム共析層の電気めっき被膜であって、当該ロジウム共析層はリンの含有量が7~10質量%であり、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒が0.01μm未満の非晶質構造であることを特徴とする。
また、本発明の電気部品用の積層体材料は、導電性基材と、貴金属または貴金属合金を含む表層と、前記基材と表層との間に設けられる中間層と、ニッケルまたはニッケル合金を含む下層を有する積層体材料において、当該中間層がロジウム共析層の電気めっき被膜であって、当該ロジウム共析層はリンの含有量が7~10質量%であり、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒が0.01μm未満の非晶質構造であることを特徴とする。
本発明の工業製品用のロジウムリンめっき被膜における好ましい実施態様は、以下の通りである。すなわち、上記めっき被膜がストライクめっき被膜のような薄いめっき層である場合、上記めっき被膜の層厚が0.005~0.3μmであることが好ましい。また、上記めっき被膜が電析物である場合の層厚が0.5~10μmであることが好ましい。さらに、上記めっき被膜は、X線回折装置で観察した時のロジウムの強度解析でロジウム金属固有の回折像が観察されないことが好ましい。
また、本発明の電気部品用の積層体材料または積層体材料における好ましい実施態様は、上記表層がロジウムまたはロジウム合金を含むことである。また、本発明の電気部品用の積層体材料における好ましい実施態様は、上記中間層と下層との間にパラジウムまたはパラジウム合金を含む補助層を有することである。
本発明の工業製品用のロジウムリンめっき被膜において、リンの含有量を所定の範囲としたのは、ロジウム共析層のめっき被膜を得るためである。すなわち、リンの含有量が7質量%未満では安定した非晶質構造を得ることができない。リンの含有量の下限は、7.5質量%未満が好ましく、8質量%未満がより好ましい。また、リンの含有量の上限が10質量%を超えると、非晶質構造であってもガスの発生により高温の酸化・腐食を抑制することができない。リンの含有量は、9.5質量%未満が好ましく、9質量%未満がより好ましい。
本発明の工業製品用のロジウムリンめっき被膜において、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒が0.01μm未満であることとしたのは、ロジウムリンめっき被膜の非晶質構造を特定するためである。すなわち、ロジウムリンめっき被膜の非晶質構造は、通常の顕微鏡によって拡大することができないほどの微細な結晶粒径であるためロジウムの平均結晶粒を0.01μm未満であることとした。本発明の非晶質構造は銀白色を呈する。このロジウムリンめっき被膜をX線回折装置で観察した時ロジウムの強度解析でロジウム金属固有の回折像がまったく観察されない理由は、微細な結晶粒内で、面心立方構造のロジウム格子中にリン原子が入り込み、ロジウムの面心立方構造をひずませているものと推察される。
本発明の工業製品用のロジウムリンめっき被膜において、当該被膜が電気めっきの場合、ロジウム共析層のめっき被膜が強固になるので好ましい。例えば、ロジウムリンめっき被膜を電気部品用の複層体材料(表層または中間層)に用いると、ベース材が銅合金の薄いバネ材であったり、プラスチックの複合材であったりすることがあるので、電気めっきによるロジウムリンめっき被膜の構成が必要になる。なお、ロジウムリンめっき被膜を中間層に用いたときは、ロジウムリンめっき被膜にガス成分があると表層に悪影響を与えるおそれがある。この場合は、高温用途の工業製品を除き、中間熱処理が必要な場合がある。
また、本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜において、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒が0.01μm未満の非晶質構造であることを構成要素とした。微細な非晶質構造によって、電気めっき後の成形加工にも耐えるためである。また、微細な非晶質構造を中間層に用いた場合も、貴金属または貴金属合金を含む表層と導電性基材との間の電気的特性を良好にするためである。
本発明のロジウムリン電気めっき被膜を工業製品に用いた場合、特に高温用途では電析物が実質的に高温熱処理を受け、再結晶される。この工業製品の耐食性が純ロジウム電気めっき被膜と同程度の特性を示したことから、ロジウムリン電気めっき被膜が純粋なロジウム金属の面心立方格子に再配列され、その格子中にリンが安定な位置に配列される構造をとるものと思われる。
特に、本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜を、導電性基材と、貴金属または貴金属合金を含む表層と、前記基材と表層との間に設けられる中間層とを有する複層体材料に用いた場合、貴金属または貴金属合金を含む表層との界面が非晶質構造となり、複層体材料の密着力が向上する。また、この中間層は導電性基材との界面の影響を受けないので、膜厚を薄くしても導電性基材(ベース材)と上層を分離する効果がある。ストライクめっきのような極薄中間層の場合でも、表層の電析物が下層電析物の析出構造の影響を受けていないことから、極薄中間層の存在を推認することができる。
本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜は、銀白色の非晶質の中間層によってこの中間層の上に耐食性のある金めっき被膜やロジウムめっき被膜や白金めっき被膜が形成できる。ロジウムリン電気めっき被膜が薄いめっき層の場合、上記めっき被膜の層厚、すなわち膜厚が0.005~0.3μmであることが好ましい。膜厚が0.05~0.3μmであることがより好ましい。特に、ストライクめっきやフラッシュめっきのような計算上の理論的膜厚が0.01μm以下の薄いめっき層であっても、非晶質構造によって基材と表層とを確実に区画することができる。
また、本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜が電析物である場合の層厚が0.5~10μmであることが好ましい。ロジウムリン電気めっき被膜は平滑性が良いので、膜厚が0.5~10μmの範囲で平坦性は保たれる。また、ロジウムリン電気めっき被膜はクラックの発生が無い銀白色の光沢被膜が得られる。また、ロジウムリン電気めっき被膜を中間層に用いた場合でも、中間層の応力が高くなることはないので、300℃の大気雰囲気下で用いる電気部品の表層にクラック等が入りやすくなることがない。
さらに、本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜を、導電性基材と、貴金属または貴金属合金を含む表層と、前記基材と表層との間に設けられる中間層と、ニッケルまたはニッケル合金を含む下層を有する電気部品用の積層体材料に用いた場合、ロジウム共析層はリンの含有量が7~10質量%含むことが必要である。下層に用いるニッケルまたはニッケル合金の種類によってロジウム共析層中のリンの含有量を適宜調節するためである。
この場合、リンの含有量が7質量%未満では安定した非晶質構造を得にくいので好ましくない。リンの含有量の下限は、7.5質量%未満がより好ましく、8質量%未満が特に好ましい。また、リンの含有量が10質量%を超えると、非晶質構造であってもガスの発生により高温の酸化・腐食を抑制することができないおそれがある。リンの含有量の上限は、9.5質量%未満がより好ましく、9質量%未満が特に好ましい。
さらに、本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜の中間層では、表層はロジウム金属または他の白金族金属を含有するロジウム合金であることがより好ましい。また、ロジウムリン電気めっき被膜の中間層とニッケルまたはニッケル合金を含む下層との間にパラジウムまたはパラジウム合金を含む補助電析層を有することが更に好ましい。中間層と下層との密着力の向上が図れるからである。
本発明の工業製品用のロジウムリン電気めっき被膜は、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒が0.01μm未満の非晶質構造であることを構成要素とした。微細な非晶質構造によって、電気めっき後の成形加工にも耐え、また、貴金属または貴金属合金を含む表層と導電性基材との間の電気的特性を良好にするためである。そして、当該被膜は走査型電子顕微鏡で観察した時のロジウムの平均結晶粒が0.01μm未満の非晶質構造であることも構成要素である。この場合も、表層はロジウムまたはロジウム合金を含むことがより好ましい。
本発明の銀白色の非晶質構造は、基材との界面で基材表面の析出形態に左右されない効果がある。このことは、後述する図1と図2におけるニッケルめっき被膜とロジウムリン電気めっき被膜との接合界面を比較すると、よく理解される。また、本発明の銀白色の非晶質構造は、結晶粒がなく内部応力が低いという効果がある。このため本発明の非晶質構造を塑性変形しても亀裂が入ることはないので、めっき後であっても、複雑な形状まで機械加工による変形プロセスを経ることができる効果がある。
また、本発明の銀白色の非晶質構造を中間層に用いた場合、この中間層は、基材または基材上の下層、および上層との密着力が良い効果がある。また、金属めっきの析出の原理によって本発明の銀白色の非晶質構造の結晶粒に沿って上層の貴金属めっき被膜の結晶粒が成長するので、表層を緻密にできる効果がある。また、本発明の中間層を極薄にしても、表層は基材等の影響を受けないので、基材等の析出構造と表層の析出構造とを区分けできる効果がある。さらに、本発明の銀白色の非晶質構造を高温の工業製品に適用した場合には純ロジウムめっき製品と同程度の耐食性が発揮される効果がある。また、ロジウムリン電気めっき被膜を300℃の大気雰囲気下で用いる電気部品に適用した場合にも、リンを含まないこれまでのロジウムめっき製品と同程度の耐食性が発揮される効果がある。
本発明の銀白色の非晶質構造の付随的な効果は次の通りである。すなわち、本発明の銀白色の非晶質構造をそのまま高温用の電極、触媒、センサー、プリント配線板などの静的工業製品に用いることができる効果がある。また、本発明の銀白色の非晶質構造は成形加工ができるので、これまでのロジウムめっきよりも用途が広がる効果がある。たとえば、電気接点やコネクター、あるいは、半導体部品等や高温耐食性等を必要とする自動車部品や航空機部品などの分野に用いることができる効果がある。
このような分野の電気部品の電気接点の必要特性に合わせて、本発明の銀白色の非晶質構造はリンの含有量や非晶質構造の膜厚を適宜調整することができる効果がある。例えば、均一な平滑面が得られるので、銀白色の非晶質構造の表層をリードスイッチ接点に応用すると、接触点面積が大きくなる効果がある。また、この表層をスライド接触子に応用すると、高温の摺動特性が良好になり、安定した摩耗特性が得られる効果がある。また、本発明の銀白色の非晶質構造の中間層の表層にロジウム被膜またはロジウム合金被膜を設けた場合、ロジウムまたはロジウム合金の融点および硬度が維持されるにもかかわらず、表層の内部応力は低く、これまでのような内部応力に起因したクラックや摩耗粉が生じない効果がある。
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
(実施例1)
20mm×20mmの銅合金テストピースについてワット浴でニッケルを5μm析出した。次いで、ロジウム(硫酸ロジウムとして)5.3g/L、リン濃度(亜リン酸ナトリウム塩として)0.08g/L、硫酸60ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.3、浴温70℃)を用い、4.5A/dm2の電流密度で0.10μmの厚さまで電気めっきした。
このテストピースを肉眼および金属顕微鏡で観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色であり非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム92.4%、リン7.6%であった。さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したが、微細に区画されすぎて区画がまったく観察できなかった。0.01μm未満の状態であるといえる。
このテストピースの4隅と中央部の膜厚を測定したところ、最大と最小の膜厚のばらつきは0.1μm未満であった。また、X線回折装置による強度解析では、ロジウム金属固有の回折像は全くみられなかった。また、テストピースの断面を断面走査イオン顕微鏡像で観察した。これを図1に示す。
次いで、このテストピースを180度折り曲げ、その折曲げ箇所を断面走査イオン顕微鏡像で観察したが、クラックはみられなかった。他に、このテストピースを300℃に加熱したホットプレート上に置き、針で1mmの深さの溝を10本けがいた。この条痕を走査電子顕微鏡で観察したが、ベース材のニッケルや銅は観察されなかった。
これらの結果から明らかなように、実施例1のロジウム共析層の電気めっき被膜は、微細な非晶質構造であることがわかる。また、ニッケル電気めっきの析出構造がロジウムリン電気めっきの界面に及んでいないことがわかる。また、内部応力が低いことがわかる。このため実施例1のロジウムリン共析層の電気めっき被膜は、高温電解質の電極などに適することがわかる。
次に、このテストピースを陽極とし、40mm×20mmの銅合金テストピースを陰極とし、0.74Vの低電圧をかけ、5%硫酸液中にて30分間有孔度を測定したところ、有孔度1%以下の結果を得た。なお、ロジウムリンめっきを行わなかった試験片を陽極とした場合の有孔度を100%と定義した。
(実施例2)
引き続き、このロジウムリン電気めっき試験片は、引き続きロジウム電気めっきを施した。すなわち、ロジウム(硫酸ロジウムとして)5.3g/L、硫酸40ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.6、浴温60℃)を用い、4A/dm2の電流密度でこのテストピースに、中間層がロジウム共析層の電気めっき被膜上に0.15μmの厚さのロジウム表層を電気めっきした。
このテストピースを実施例1と同様にして有孔度を測定したところ、いずれも有孔度0.5%以下の結果を得た。また、このテストピースをX線回折装置による強度解析をしたところ、Rh(111)、Rh(200)、Rh(220)、Rh(311)などのロジウム金属固有の方向性を持つ回折像が現れた。さらに、このテストピースを180度折り曲げた後曲げ戻してピールテストを行ったところ、剥がれはみられなかった。
最後に、このロジウムリン電気めっき試験片を金電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製オーロボンドTN)液にて0.03μmのめっきをし、また、別のロジウムリン電気めっき試験片を白金電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製プラタネックス3LS)0.05μm施した。これらの断面を断面走査イオン顕微鏡像で観察したところ、上層の電気めっき被膜からピンホールやクラックはみられなかった。これらの結果から、実施例2のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、高温雰囲気下の電気接点や電気接触子などの電気部品に適することがわかる。
(実施例3)
実施例1と同様のニッケルめっき後の銅合金テストピースを用いて次のロジウムストライクめっきをした。すなわち、ロジウム(硫酸ロジウムとして)2g/L、リン濃度(亜リン酸ナトリウム塩として)1g/L、硫酸10ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.6、浴温60℃)を用い、4A/dm2の電流密度で60秒間電気めっきした。比例計算で求めためっき被膜の厚さは0.005μmである。
このテストピースを、実施例2と同様にしてロジウム電気めっきを行った。このテストピースの断面を断面走査イオン顕微鏡像で観察した。図1と同様に、上層のロジウム析出物は下層のニッケル結晶粒の影響を受けていないことがわかった。すなわち、上層と下層とは本発明の中間層によって区画されている。また、このテストピースを実施例1と同様にして有孔度を測定したところ、有孔度0.5%以下の結果を得た。
ロジウムストライクめっきをしたテストピース上に、パラジウム電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製パラデックスADP700)5μm、白金電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製プラタネックス3LS)3μm、またはロジウムルテニウム共析電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製スーパーロジウム2000)2μmをそれぞれの電気めっき液で被覆した。
これらの貴金属めっきしたテストピースを各々180度折り曲げた後曲げ戻してピールテストを行ったところ、いずれも剥がれはみられなかった。また、これらの貴金属めっきしたテストピースの各々を実施例1と同様にして高温のホットプレートに載せ、針で1mmの深さの溝を10本けがいた。この条痕を走査電子顕微鏡で観察したが、いずれもベース材のニッケルや銅は観察されなかった。これらの結果から、実施例2のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適することがわかる。
(実施例4)
20mm×20mmの銅合金テストピースに次亜リン酸塩を還元剤とする酸性無電解ニッケルめっき浴でニッケルリン(10%)を5μm析出した。次いで、次亜リン酸塩を還元剤とする中性無電解ロジウムめっき浴(塩化ロジウム5g/L、エチレンジアミン10g/L、液温50℃)で0.10μmの厚さまで無電解めっきした。
肉眼および金属顕微鏡でこのテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色の非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム90%、リン10%であった。さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したが、微細に区画されすぎて区画がまったく観察できなかった。0.01μm未満の状態であるといえる。これらの結果から、実施例4のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、高温雰囲気下で使用するイリジウムるつぼの被覆膜などに適することがわかる。
(実施例5)
20mm×20mmの銅合金テストピースにスルファミン酸浴でニッケルリン(10%)を5μm析出した。このテストピースをパラジウム電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製パラデックスADP700)液にて0.5μmのめっきをし、下層とした。次いで、ロジウム(硫酸ロジウムとして)2g/L、リン濃度(亜リン酸ナトリウム塩として)1g/L、硫酸10ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.3、浴温60℃)を用い、4A/dm2の電流密度で10μmの厚さまで電気めっきした。
肉眼および金属顕微鏡でテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色の非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム92.0%、リン8.0%であった。さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したが、微細に区画されすぎて区画がまったく観察できなかった。平均結晶粒は0.01μm未満の状態であるといえる。
さらに、このロジウムリンめっき試験片をパラジウム電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製パラデックスADP700)液にて0.05μmのめっきをした。実施例1と同様にして、この実施例5の試験片の有孔度を測定したところ、有孔度0.5%以下の結果を得た。実施例5のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適することがわかる。
(実施例6)
20mm×20mmの銅合金テストピースにワット浴でニッケルを5μm析出した。このテストピースをパラジウム電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製パラデックスADP700)0液にて0.5μmのめっきをし、下層とした。次いで、ロジウム(硫酸ロジウムとして)2g/L、リン濃度(亜リン酸ナトリウム塩として)1g/L、硫酸10ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.3、浴温60℃)を用い、4A/dm2の電流密度で0.5μmの厚さまで電気めっきした。
肉眼および金属顕微鏡でテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色の非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム90.3%、リン9.7%であった。さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したが、微細に区画されすぎて区画がまったく観察できなかった。平均結晶粒は0.01μm未満の状態であるといえる。
さらに、このロジウムリンめっき試験片を白金電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製プラタネックス3LS)液にて0.2μmのめっきをした。実施例1と同様にして、この実施例6の試験片の有孔度を測定したところ、有孔度0.1%以下の結果を得た。実施例6のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適することがわかる。
(実施例7)
20mm×20mmの銅合金テストピースに、平均粒径0.01μmのタングステン粉を分散したワット浴でニッケルタングステン(30%)を5μm析出した。このテストピースをパラジウム電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製パラデックスADP700)液にて0.5μmのめっきをし、下層とした。次いで、ロジウム(硫酸ロジウムとして)2g/L、リン濃度(亜リン酸ナトリウム塩として)1g/L、硫酸10ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.3、浴温60℃)を用い、4A/dm2の電流密度で2μmの厚さまで電気めっきした。
肉眼および金属顕微鏡でテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色の非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム91.0%、リン9.0%であった。さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したが、微細に区画されすぎて区画がまったく観察できなかった。平均結晶粒は0.01μm未満の状態であるといえる。
さらに、このロジウムリンめっき試験片を実施例1と同様のロジウム電気めっきを2μm被覆した。実施例1と同様にして、この実施例5の試験片の有孔度を測定したところ、有孔度0.1%以下の結果を得た。実施例7のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適することがわかる。
(実施例8)
20mm×20mmの銅合金テストピースに、平均粒径0.01μmのタングステン粉を分散したスルファミン酸浴でニッケルリンタングステン(リン10%、タングステン30%)を5μm析出した。このテストピースをパラジウム電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製パラデックスADP700)液にて0.5μmのめっきをし、下層とした。次いで、ロジウム(硫酸ロジウムとして)2g/L、リン濃度(亜リン酸ナトリウム塩として)1g/L、硫酸10ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.3、浴温60℃)を用い、4A/dm2の電流密度で8μmの厚さまで電気めっきした。
肉眼および金属顕微鏡でテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色の非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム91%、リン9%であった。さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したが、微細に区画されすぎて区画がまったく観察できなかった。平均結晶粒は0.01μm未満の状態であるといえる。
さらに、このロジウムリンめっき試験片をロジウムルテニウムの共析電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製スーパーロジウム2000)液にて0.5μmのめっきをした。実施例1と同様にして、この実施例5の試験片の有孔度を測定したところ、有孔度0.1%以下の結果を得た。実施例8のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適することがわかる。
(従来例1)
実施例1と同様にして、ニッケル被膜上に純粋なロジウム電解めっき被膜を4.5μm析出させた。この頑強なロジウム被膜の結晶構造を図2に示す。
図2中段のロジウム被膜の接合界面付近は、下段のニッケル被膜の表面形態の影響を受けて結晶組織が形成され、その上方のロジウム被膜は不規則な析出構造をしていることがわかる。さらに図2上段のロジウム被膜の表面形態は、凹凸が激しくなっている。これはめっき液中のロジウムイオンが供給不足になった様子を現すものである。
また、ロジウム被膜のX線回折装置による強度解析(図は省略)では、Rh(111)、Rh(200)、Rh(220)、Rh(311)などのロジウム金属固有の方向性を持つ回折像が現れた。これは本発明のロジウムリン非晶質被膜と明確な相違を示すものである。
(従来例2)
実施例6と同様にして、ロジウム(硫酸ロジウムとして)を5g/Lとし、リン濃度(次亜リン酸ナトリウム塩として)を1g/Lとし、硫酸10ml/L、残部水の電解ロジウムめっき液(pH=0.3、浴温20℃)を用い、1A/dm2の電流密度で0.1μmの厚さまで電気めっきした。
肉眼および金属顕微鏡でテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色の非晶質状態であった。エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製 X-maxN)により、このテストピースのロジウムリン非晶質被膜の割合を求めたところ、ロジウム85%、リン15%であった。
さらに、このテストピースのロジウムリン非晶質構造の平均結晶粒を走査電子顕微鏡で1万倍に拡大して観察したところ、所どころ黒色の濃い部分と薄い部分の不規則な模様が見られた。結晶粒の区画は観察できなかった。
さらに、このロジウムリンめっき試験片を白金電気めっき(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製プラタネックス3LS)液にて0.2μmのめっきをした。実施例1と同様にして、このテストピースを300℃に加熱したホットプレート上に置き、針で1mmの深さの溝を10本けがいた。この条痕を走査電子顕微鏡で観察したところ、表面の鈍い白色が黒色に変色し、条痕の溝はロジウム色を呈していた。従来例2のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適しないことがわかる。
(比較例1)
リンの含有量を5質量%とした以外は実施例1と同様にして、2.5μmの厚さまでロジウムリン電気めっきした。肉眼および金属顕微鏡でテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色で非晶質状態であった。このロジウムリンめっき被膜の断面走査イオン顕微鏡像を図3に示す。図3から明らかなとおり、このロジウムリンめっき被膜の断面構造には濃淡のまだら模様が観察される。また、表層の金ストライク層にはこのロジウムリンめっき被膜の粗さがそのまま反映されていることがわかる。
(比較例2)
リンの含有量を12質量%とした以外は実施例1と同様にして、0.10μmの厚さまでロジウムリン電気めっきした。肉眼および金属顕微鏡でこのテストピースを観察したところ、ロジウムリンめっき試験片の外観は銀白色で非晶質状態であった。実施例1と同様にして、この実施例5の試験片の有孔度を測定したところ、有孔度15%の結果を得た。このため比較例2のロジウムリン共析層の電気めっき被膜は、高温電解質の電極には適さないことがわかる。
このめっき液を用い、実施例3と同様にして4A/dm2の電流密度で60秒間ロジウムストライクめっきをした。実施例2と同様のロジウム電気めっきをこのテストピースに行い、断面走査イオン顕微鏡像で観察したところ、図2と同様に、上層のロジウム析出物は下層のニッケル結晶粒の影響を受けていることがわかった。すなわち、本発明品とは異なり、比較例2の上層と下層は中間層によって区画されていない。また、このテストピースを実施例1と同様にして有孔度を測定したところ、有孔度15%以下の結果を得た。この結果から、比較例2のロジウムリン中間層の電気めっき被膜は、300℃の大気雰囲気下の電気部品にも適さないことがわかる。