JP2015120483A - サイド補強式ランフラットタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トレッド部と、該トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部と、サイドウォール部に設けられた補強ゴムとを備えるサイド補強式ランフラットタイヤであって、サイド部のタイヤ内面領域の少なくとも一部に接着層を介して固着された短繊維を備え、接着層の耐熱温度が50〜100℃である、ことを特徴とするサイド補強式ランフラットタイヤ。
【選択図】図1
Description
本発明のサイド補強式ランフラットタイヤは、トレッド部と、該トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部と、前記サイドウォール部に設けられた補強ゴムとを備えるサイド補強式ランフラットタイヤであって、サイド部のタイヤ内面領域の少なくとも一部に接着層を介して固着された短繊維を備え、前記接着層の耐熱温度が50〜100℃である、ことを特徴とする。本発明のサイド補強式ランフラットタイヤによれば、ランフラット走行の履歴の確認を容易にすることができ、また、ランフラット走行時に、補強ゴムの熱による劣化を抑制しつつ、通常の走行時に短繊維による空洞共鳴音を低減する効果を得ることができる
また、本発明のサイド補強式ランフラットタイヤによれば、ランフラット走行時に、補強ゴムの熱による劣化を抑制することができ、通常の走行時には、短繊維による空洞共鳴音を低減する効果を得ることができる。
本発明の一例のサイド補強式ランフラットタイヤ1(以下、「タイヤ1」ともいう)は、トレッド部2と、該トレッド部2の両側に連なる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3に連なるビード部4と、を備える。また、タイヤ1は、サイドウォール部3に設けられた断面三日月状の補強ゴム5を備える。
またなお、本発明のサイド補強式ランフラットタイヤの諸寸法は、特に断りのない限り、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧とし、無負荷状態としたときの諸寸法を指す。「適用リム」とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格であり、例えば、アメリカ合衆国では、“THE TIRE AND RIM ASSOCIATION INC.”の“YEAR BOOK”、欧州では、“The European Tyre and Rim Technical Organization”の“STANDARDS MANUAL”、日本では“日本自動車タイヤ協会”の“JATMA YEAR BOOK”等に記載されている適用サイズにおける標準リム(または“Approved Rim”、“Recommended Rim”)をいう。また、「規定内圧」とは、上記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空気圧をいい、「最大負荷能力」とは、上記の規格でタイヤに負荷されることが許容される最大の質量をいう。
更になお、「サイド部のタイヤ内面領域Rs」とは、タイヤ幅方向断面において、トレッド接地端Tw1、Tw2(図1ではTw1のみ示す)を通りタイヤ径方向に平行な直線とタイヤ内面との交点Tw1’、Tw2’からビードトウまでのタイヤ内面領域を指す。ここで、「トレッド接地端Tw1、Tw2」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧とし、静止した状態で平板に対し垂直に置き、所定の荷重を加えたときの平板との接触面におけるタイヤ幅方向両端を指す。
なお、接着層9の「耐熱温度」とは、接着剤9aを熱安定性試験方法(オープン法)により測定された温度を指し、具体的には、(1)外観試験(100時間当該温度に置いた後の硬化物の外観の状態について、試験片に局部的な粉化・割れ・ひび・変形等の発生が無いかを、目視により判定する)、及び(2)付着性試験(金属片に接着剤を塗布し、100時間当該温度に置いた後に剥離しないかを、判定する)を満たす温度を指す。
ここで、本発明のサイド補強式ランフラットタイヤによれば、接着層9の耐熱温度が100℃以下であるため、ランフラット走行時(図2参照)に、サイド部のタイヤ内面領域Rsに接着層9を介して固着された短繊維10が剥離し、補強ゴム5の温度の上昇を抑制することができ、補強ゴム5の熱による劣化を抑制することができる。
そして、接着層9の耐熱温度が50℃以上であるため、補強ゴム5にそれ程大きな荷重負荷がかからない通常の走行時には、接着層9の軟化等が生じることなく、固着された短繊維10による空洞共鳴音を低減する効果を得ることができる。
耐熱温度を上記範囲とすれば、短時間のランフラット走行によっても補強ゴム5部分において短繊維10の剥離が生じ、ランフラット走行の履歴の確認をすることが可能になる。
接着層9には、トレッド部2やサイドウォール部3の繰り返し変形により剥離しない程度の比較的高い破壊強度が求められる。また、上記の高い破壊強度は、タイヤの使用における通常の温度条件、すなわち−30〜80℃、において維持されることも求められる。更に、接着層9は、接着層9の厚さを均一にしながら設けることを可能にする性状を備えることも求められる。これらの特性を備える接着剤として、特に、分子内に水酸基(OH基)を2個以上含有するポリオールとイソシアネート基(NCO基)を含有するイソシアネートとを、イソシアネートに対するポリオールの重量割合を2.5〜3.5として含む混合物が好ましい。
なお、接着剤9aの「耐熱温度」とは、JIS K6833に準拠して測定される「軟化温度」を指す。
この構成によれば、短繊維10による空洞共鳴音の低減の効果を更に高めることができる。
一方、ランフラットタイヤでは、パンクが発生した際、パンク修理液を用いて修理することなく、所定距離の走行が可能となる。短繊維10を固着させたランフラットタイヤでは、トレッド部に対応するタイヤ内面領域R2に、上記理由のために短繊維非固着領域を設ける必要がなく、上記領域R2に短繊維10を固着させることが可能となる。上記構成によれば、パンク修理を容易にするよう構成された、短繊維非固着領域を除いた領域において短繊維10を固着させた通常のタイヤと比較して、短繊維10による空洞共鳴音の低減の効果(吸音効果)を高めることができる。
この構成によれば、ランフラット走行の履歴の確認を容易にする効果、及び補強ゴムの熱による劣化を抑制するという本発明のサイド補強式ランフラットタイヤの効果が得られやすい。
この構成によれば、短繊維10による空洞共鳴音の低減の効果をより一層高めることができる。
またなお、短繊維10の「タイヤ内表面と接していない断面の断面積」とは、短繊維10の長さ方向に直交する断面における断面積をいい、短繊維1本について当該断面の断面積が変化する場合は、その最大の断面積をいう。
短繊維10は、種々の方法により、タイヤ内面6に固着させることができるところ、静電植毛加工を用いて、タイヤ内面6に固着させることが好ましい。静電植毛加工は、電着処理を施した短繊維10に電圧をかけることによって、短繊維10を予め接着層9を形成した対象物に向けて投錨して、短繊維10を対象物に垂直に植毛する技術である。そのため、複雑な形状を有する物体の表面にも、均一に短繊維10を固着させることができ、曲率を有するタイヤ内面6にも容易に短繊維10を固着させることができる。
ランフラットタイヤ(225/50R17)のタイヤ内面に、静電植毛加工を用いて、太さ20デニール(φ50μm)、長さ4.0mmのナイロン製短繊維約100gを耐熱温度70℃の接着剤((株)アルプス化学産業製 EU−4550)(ひまし油変性ポリオールと硬化剤変性イソシアネートとの、配合比(重量部)3:1の混合物を含む。)を用いて固着させた。サイド部のタイヤ内面領域及びトレッド部に対応するタイヤ内面領域を含む、タイヤ内面の約80%の領域に短繊維を固着させた。
上記の通り準備したランフラットタイヤを、JATMA規格に定める適用リム(6.5JJ−16)に装着してリム組みした。
上記リム組みしたランフラットタイヤをドラム試験機において、内圧0kPa、荷重4.4kN、速度80km/時の条件下で、1分間ランフラット走行させた。そして、ランフラット走行後にリムから取り外したランフラットタイヤについて、目視によりランフラット走行の履歴を確認した。また、このランフラットタイヤを同様に10分間ランフラット走行させ、同様にランフラット走行の履歴を確認した。更に、比較対象として、このランフラットタイヤを10分間非ランフラット走行させ、ランフラット走行の履歴を確認した。
評価結果を表1に示す。補強ゴムに対応するタイヤ内面領域に固着させた短繊維が剥離していた一方、他のサイド部のタイヤ内面領域及びトレッド部に対応するタイヤ内面領域に固着させた短繊維は剥離していなかった(図2参照)。補強ゴム付近の短繊維の剥離から、ランフラット走行の履歴を確認した。
(A2)補強ゴムの耐久性
上記リム組みしたランフラットタイヤをドラム試験機において、内圧0kPa、荷重4.4kN、速度80km/時の条件下で、1分間走行させた(ランフラット走行)。そして、ランフラット走行後にリムから取り外したランフラットタイヤの補強ゴムについて、目視により歪みやシワの有無を確認して、ランフラットタイヤの補強ゴムの耐久性を評価した。評価結果を表1に示す。
(A3)空洞共鳴音評価
上記リム組みしたランフラットタイヤを、ドラム試験機において、内圧220kPa、荷重4.4kN、速度60km/時の条件下で、走行させた(非ランフラット走行)。ここで、ランフラットタイヤの上下方向タイヤ軸力を、タイヤ軸に取り付けたホイール分力計を用いて測定した。タイヤの空洞共鳴現象に起因する周波数である225Hz、240Hz付近に見られるピークにおける音圧レベルの増減を評価した。評価結果を表1に示す。
特に、前述のA×Nの値を変化させたときの吸音効果の変化について、シミュレーションにより検討した。
シミュレーションの条件は以下の通りである。短繊維としては、一定断面の円柱状であり、固着面に対して垂直に延びているものを用いた。また、タイヤの空洞共鳴現象に起因する車内騒音の周波数としては225Hzを用いた。短繊維の長さとしては、4mmを用いた。そして、短繊維の平均直径Dを、35μm(10デニール)、50μm(20デニール)及び60μm(30デニール)とした場合について、短繊維1本の平均断面積A(mm2/本)と、短繊維が固着された領域における該領域1mm2当たりに固着された短繊維の本数N(本/mm2)との積(A×N)を変化させてシミュレーションを行い、吸音率を求めた。なお、吸音率とは、短繊維が固着された固着面に向けて入射した音のエネルギーに対する該固着面から反射されなかった音のエネルギーの割合をいう。なお、吸音率は、前述の短繊維の材質には、実質上影響されないことが判明している。
結果を図3に示す。図3に示すシミュレーションの結果から、A×Nが0.02以上であれば、高い吸音効果が得られることがわかった。一方、A×Nが0.02未満の場合には、吸音効果が急激に低下することがわかった。また、A×Nが0.06よりも大きくなると、吸音率が徐々に低下することがわかった。
短繊維をタイヤ内面に固着させない点以外は実施例1と同様のランフラットタイヤを作製し、実施例1と同様に(A1)〜(A3)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1、2)
接着層の耐熱温度を表1に示す値とした点以外は実施例1と同様のランフラットタイヤを作製し、実施例1と同様に(A1)〜(A3)、(B)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
また、本発明のサイド補強式ランフラットタイヤによれば、ランフラット走行時に、補強ゴムの熱による劣化を抑制しつつ、通常の走行時には、短繊維による空洞共鳴音を低減する効果を得ることができる。
Claims (3)
- トレッド部と、該トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部と、前記サイドウォール部に設けられた補強ゴムとを備えるサイド補強式ランフラットタイヤであって、
サイド部のタイヤ内面領域の少なくとも一部に接着層を介して固着された短繊維を備え、
前記接着層の耐熱温度が50〜100℃である、
ことを特徴とするサイド補強式ランフラットタイヤ。 - 前記トレッド部に対応するタイヤ内面領域の少なくとも一部に接着層を介して固着された短繊維を更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のサイド補強式ランフラットタイヤ。 - 前記短繊維1本の前記タイヤ内面と接していない断面の平均断面積をA(mm2/本)、前記タイヤ内面の短繊維が固着された領域において前記領域1mm2当たりに固着された前記短繊維の本数をN(本/mm2)としたときに、0.02≦A×N≦0.06の関係を満たす
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のサイド補強式ランフラットタイヤ。
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