しかしながら、特許文献1に記載された構成では、リテーナと弾性部材とを固定するネジが、外装部品の外側の位置で弾性部材の径方向外側から螺合されているため、ネジの頭およびネジを囲むように張り出したボス部分が外方に露出して、ウインカ装置の外観性に影響を与えるという課題があった。
この課題に対しては、リテーナと弾性部材とを固定するネジを、リテーナの挿通方向に指向させて外装部品の内側から螺合させることで対処できる。しかしながら、この方法では、光源に電力を供給する配線の通し孔に加えて固定用ネジの通し孔を設ける必要が生じ、ウインカ装置の取り付け基部が大型化しやすくなる。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、固定用ネジが外方へ露出しないようにしつつ、取り付け基部の大型化を避けることができるウインカ装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、光源(54)を内装するウインカハウジング(51)を、弾性部材(60)を介して、車体側の固定部(24a)に弾性的に支持するウインカ装置(50)において、前記弾性部材(60)は、該弾性部材(60)の一部を弾性変形させることで前記固定部(24a)に対する嵌合および取り外しが可能に構成されており、前記弾性部材(60)に固定される固定部材(80)と、前記ウインカハウジング(51)と前記弾性部材(60)と前記固定部材(80)とを一体に固定する締結部材(90)とを具備し、前記固定部材(80)に、前記締結部材(90)が挿通する締結孔部(86)と、前記光源(54)に電力を供給する配線(92)が挿通する配線孔部(83)とが隣り合わせで配置されており、前記配線孔部(83)に、該配線孔部(83)の一部を開放する切欠き(83a)が設けられている点に第1の特徴がある。
また、前記固定部材(80)に、前記配線孔部(83)の縁から立設して前記弾性部材(60)に設けられた配線用貫通孔(64)を通る半割筒部(84)が設けられている点に第2の特徴がある。
また、前記固定部材(80)に、前記弾性部材(60)に設けられた締結部材用貫通孔(65)を通る筒状のカラー部材(85)が、前記締結孔部(86)の縁から立設すると共に前記半割筒部(84)と平行をなして設けられている点に第3の特徴がある。
また、前記ウインカハウジング(51)に、前記締結部材(90)が螺合する円筒状のボス(57)が形成されており、前記円筒状のボス(57)に、前記弾性部材(60)に形成された位置決め溝(68)に係合する位置決め突起(59)が設けられている点に第4の特徴がある。
また、前記固定部材(80)に、前記前記ウインカ装置(50)の組み立て後に車体内側に突出する前記配線(92)を案内する配線案内部(82)が設けられている点に第5の特徴がある。
また、前記固定部材(80)に、前記弾性部材(60)に設けられた締結部材用貫通孔(65)を通る筒状のカラー部材(85)が設けられ、前記カラー部材(85)は、前記締結部材(90)を締結することにより、前記ウインカハウジング(51)に設けられたボス(57)に当接するように構成されている点に第6の特徴がある。
また、前記配線用貫通孔(64)と前記締結部材用貫通孔(65)との大きさを異ならせる点に第7の特徴がある。
さらに、前記配線用孔(64)と前記締結用孔(65)とが、車体前後方向に並んで設けられている点に第8の特徴がある。
第1の特徴によれば、弾性部材は、該弾性部材の一部を弾性変形させることで固定部に対する嵌合および取り外しが可能に構成されており、弾性部材に固定される固定部材と、ウインカハウジングと弾性部材と固定部材とを一体に固定する締結部材とを具備し、固定部材に、締結部材が挿通する締結孔部と、光源に電力を供給する配線が挿通する配線孔部とが隣り合わせで配置されており、配線孔部に、該配線孔部の一部を開放する切欠きが設けられているので、配線の端部にコネクタ等が取り付けられている場合でも、配線部分のみを切欠きに通すことで組み立てが可能となり、コネクタ等が挿通可能となるように配線孔部を必要以上に大きくしておく必要がなくなる。これにより、ウインカハウジングを車体側に支持するための締結部材を車体内側から通すために、締結孔部および配線孔部からなる2つの孔を有する構造とした場合でも、配線孔部を小さく形成できることから、ウインカ装置の取り付け基部の大型化を避けることが可能となる。
第2の特徴によれば、固定部材に、配線孔部の縁から立設して弾性部材に設けられた配線用貫通孔を通る半割筒部が設けられているので、弾性部材に対する固定部材の位置決めをしながら、配線をスムーズに案内することが可能となる。
第3の特徴によれば、固定部材に、弾性部材に設けられた締結部材用貫通孔を通る筒状のカラー部材が、締結孔部の縁から立設すると共に半割筒部と平行をなして設けられているので、弾性部材に対する固定部材の位置決めをより容易に行うことができる。
第4の特徴によれば、ウインカハウジングに、締結部材が螺合する円筒状のボスが形成されており、円筒状のボスに、弾性部材に形成された位置決め溝に係合する位置決め突起が設けられているので、ウインカハウジングと弾性部材との間の誤組を、簡単な構成によって防ぐことができる。これにより、例えば、弾性部材に設けられた水抜き孔が上方を向いてしまうような誤組が防止される。
第5の特徴によれば、固定部材に、ウインカ装置の組み立て後に車体内側に突出する配線を案内する配線案内部が設けられているので、配線案内用の別部品を設けることなく、車体内側に突出する配線を所定の方向へ案内することができる。これにより、配線が他の部品に干渉することを防ぎ、また、車体側から配線が引っ張られた場合でも、配線が引っ張られる力を配線案内部で受け止めて配線の接続基部を保護することが可能となる。
第6の特徴によれば、固定部材に、弾性部材に設けられた締結部材用貫通孔を通る筒状のカラー部材が設けられ、カラー部材は、締結部材を締結することにより、ウインカハウジングに設けられたボスに当接するように構成されているので、カラー部材によって固定部材とウインカハウジングとの距離が規定され、確実な締結が可能となる。
第7の特徴によれば、配線用貫通孔と締結部材用貫通孔との大きさを異ならせるので、締結部材と固定部材とを組み付ける際の誤組を防止することができる。
第8の特徴によれば、配線用孔と締結用孔とが、車体前後方向に並んで設けられているので、弾性部材の上下寸法を低減して、車体の前後方向から見た際に、ウインカ取り付け部を細身に見せることが可能となる。これにより、ウインカ装置の外観性を向上させると共に、走行時の空気抵抗の低減も図ることができる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るウインカ装置50を適用した自動二輪車1の右側面図である。また、図2は、自動二輪車1を後方から見た一部拡大図である。
車体フレーム10の前端部にはヘッドパイプ10aが設けられている。ヘッドパイプ10aには、前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク3が操舵自在に取り付けられている。フロントフォーク3には、前輪WFを覆うフロントフェンダ2、ヘッドライト5および左右一対の前側ウインカ装置50(図示は右側のウインカ装置50FRのみ)が取り付けられている。さらに、フロントフォーク3の上部には、メータ装置6、左右一対の操向ハンドル8およびバックミラー7が取り付けられている。
車体フレーム10のピボット19には、駆動輪としての後輪WRを回転自在に軸支するスイングアーム18が揺動自在に軸支されている。スイングアーム18は、リヤクッション10bによって車体フレーム10に吊り下げられている。
車体フレーム10のピボット19の車体前方の位置には、エンジン22が取り付けられている。エンジン22の上部で車体フレーム10の車幅方向外側の位置には、左右一対のラジエータ23およびラジエータカバー4が配設されている。エンジン22の下部には、アンダカバー21が設けられており、アンダカバー21に覆われた排気管は、足乗せステップ20の後方でマフラ17に接続されている。
車体フレーム10のピボット19の上方には、燃料タンク11が配設されており、燃料タンク11の前方上方は、燃料タンクカバー9で覆われている。燃料タンクカバー9の後部には、運転者用シート12が取り付けられており、後輪WRを覆うリヤフェンダ15の上部には、同乗者用シート13および左右一対のグラブバー14が取り付けられている。
リヤフェンダ15の後端下部には、リヤフェンダ24が設けられており、このリヤフェンダ24に尾灯装置16および本発明に係る後側ウインカ装置50(以下、単にウインカ装置50と示す。図示は右側のウインカ装置50RRのみ)が取り付けられている。なお、前後のウインカ装置50は共通の構造とすることができる。
図2を参照して、所定の車体色に塗装されたリヤフェンダ15には、同乗者用シート13を固定するための位置決め孔28および締結部材用の貫通孔29が左右一対で設けられている。リヤフェンダ25は、黒色の樹脂等で形成された板状の一体部品であり、車体前後方向に表裏面が指向する後面部に尾灯装置16が埋設されると共に、車幅方向に表裏面が指向する側面部にウインカ装置50(50RL,50RR)が取り付けられている。尾灯装置16の下部にはライセンスライト25が設けられており、その下方には、ライセンスプレート27を固定するための固定用金具26が取り付けられている。
図3は、ウインカ装置50の正面図である。以下では、後部右側のウインカ装置50RRを単にウインカ装置50として説明する。後部左側のウインカ装置50RLも対称形状とされる。ウインカ装置50は、LEDによる光源54を車幅方向に2つ並べて実装する基板53を、2つのネジ55によってウインカハウジング51に固定し、基板53が挿入される開口部をレンズ52で覆った構成を有する。ウインカハウジング51は、黒色等の樹脂で形成することができる。また、レンズ52は、光源54に橙色のLEDを適用したうえで白色透明の樹脂等で形成することができる。
ウインカハウジング51の車幅方向内側には、ウインカ装置50を車体側に弾性的に支持するための弾性部材60が設けられている。ゴム等で形成された弾性部材60は、板状のリヤフェンダ24に形成された開口からなる車体側の固定部(以下、単に固定部と示すこともある)24aに嵌合されている。弾性部材60は、車体外方に露出する本体部61と、固定部24aに嵌合される小径部63と、この小径部63より断面積の大きな鍔部62とを有する。固定部24aの開口は、小径部63の形状と略同じ形状とされる。
弾性部材60を車体側の固定部24aに嵌合させる際には、弾性部材60の一部である鍔部62を一時的に弾性変形させて固定部(開口)24aを通す。これにより、小径部63が固定部24aの内側に収まり、弾性部材60の位置決めが完了する。
そして、この鍔部62に接する板状の固定部材80を、締結部材としてのボルト90を螺合することで所定位置に固定すると、ウインカハウジング51、弾性部材60および固定部材80が一体に固定されると共に、固定部材80の本体部81が近接配置されることで鍔部62の変形が妨げられ、これにより、弾性部材60が固定部24aから抜けなくなる。
締結部材90と固定部材80との間には、ワッシャ91が設けられている。固定部材80の下部には、リヤフェンダ24との間に配線92(図4参照)の通路82aを形成するための配線案内部82が設けられている。
図4は、ウインカ装置50の左側面図である。固定部材80の本体部81は、弾性部材60の鍔部61より一回り小さい横長の略長方形とされている。固定部材80の本体部81には、2本の配線92が通る配線孔部83と、締結部材90が挿通する締結孔部86とが形成されている。このうち、配線孔部83は、締結孔部86のような円形ではなく、切欠き83aを有することで、その一部が外方に開放された形状とされている。本実施形態では、切欠き83aが締結孔部86から離間する方向に設けられている。
図5は、車体後方側から見たウインカ装置50の取り付け基部の構成を示す斜視図である。また、図6は車体前方側から見た同斜視図であり、図7は弾性部材60および固定部材80を車幅方向外側から見た斜視図であり、図8は弾性部材60の斜視図である。
ウインカ装置50の車体側への取り付けは、弾性部材60を車体側の固定部24aに嵌合させたうえで、ウインカハウジング51の開口部に弾性部材60を差し込み、車体内側から固定部材80を差し込んでからワッシャ91を介して締結部材90を螺合することで行われる。
ウインカハウジング51の開口部には、インサートナット58が埋設された円筒状のボス57が設けられている。ボス57の側面には、ボス57の径方向外側に立設する板状の位置決め突起59が設けられている。また、ボス57の車体前方側には、上下方向に略対称に設けられた板状のリブ75,76によって、係合孔77が形成されている。一方、弾性部材60側には、係合孔77に係合される係合突起66と、ボス57の上方から側方下方までを囲むように配設される防水リブ67とが設けられている。
弾性部材60には、配線92が通る配線用貫通孔64と、締結部材90が通る締結部材用貫通孔65とが形成されている。一方、前記したように、固定部材80の本体部81には、切欠き83aを有する配線孔部83および円形の締結孔部86が形成されている。そして、固定部材80の本体部81には、配線孔部83の縁から立設する半割筒部84と、該半割筒部84と平行をなして締結孔部86の縁から立設する筒状のカラー部材85とが設けられている。
弾性部材60に対して固定部材80を組み付ける際には、半割筒部84が配線用貫通孔64に挿入されると共に、カラー部材85が締結部材用貫通孔65に挿入される。この半割筒部84およびカラー部材85は、共にウインカ取り付け基部の剛性を高める機能を有する。
ここで、本実施形態に係るウインカ装置50を組み立てる際には、固定部材80を弾性部材60に挿入するより前に、配線92を弾性部材60の配線用貫通孔64に通しておくことが前提とされる。これは、配線92の先端にコネクタ94等の部品が取り付けられていても、半割筒部84を挿入する前の断面積が大きい状態であれば容易に通すことができるためである。換言すれば、配線用貫通孔64は、コネクタ94がぎりぎり通るサイズまで小径化できる。そして、固定部材80の配線孔部83には切欠き83aが設けられているため、弾性部材60と固定部材80とを係合させた状態で配線92を配線孔部83の略中央に収めることができる。
上記した構成によれば、締結部材90を通す孔および配線92を通す孔の両方を設けた場合でも、弾性部材60の配線用貫通孔64および固定部材80の配線孔部83の大径化を防ぎ、ウインカ装置50の取り付け基部の小型化が可能となる。
また、本実施形態では、締結部材90を通す孔および配線92を通す孔を、車体前後方向に並んだ隣り合わせで配置するため、ウインカ装置50の取り付け基部の上下方向の寸法を低減して、ウインカ装置50の正面視または後面視において取り付け基部を細身に見せることができると共に、走行時の空気抵抗の低減を図ることもできる。
図7,8を参照して、ボス57に設けられた位置決め突起59は、弾性部材60の位置決め溝68に係合する。この位置決め溝68は、ボス57の上方から側方下方までを囲むように配設される防水リブ67の切れ目によって形成される。また、防水リブ67の最下部の端部下方リブ71の端部との間には、本体部61の一部を切り欠いた水抜き孔70が設けられている。
上記したようなボス57の位置決め突起59による位置決め構造、係合突起66による位置決め構造、防水リブ67による位置決め構造によれば、例えば、水抜き孔70が上方に位置するような誤組の可能性を低減することができる。
図9は、図3のIX−IX線断面図である。配線92は、ウインカハウジング51側ではゴム等で形成されたグロメット93によって位置決めているのみであるが、本実施形態では、固定部材80に一体に設けられた湾曲板状の配線案内部82によって配線92を車体前後方向に案内できるため、別個に配線案内用の部品を設けることなく、配線92の車幅方向への突出を防ぐことができる。
また、2つの光源54を実装する基板53は、ネジ55によってウインカハウジング51に形成された立設部56に固定されており、配線92は基板53の裏面側に接続されている。配線案内部82は、ウインカ装置50の着脱時等に配線92が外方から引っ張られることがあっても、この引っ張る力を受け止めて基板53との接続部分まで影響が及ばないようにする機能も有している。
ウインカハウジング51のボス57は、ウインカハウジング51の外殻部材の端部より弾性部材60側に突出しており、固定部材80を介して締結部材90を締結すると、固定部材80のカラー部材85がボス57の端面と当接して、3つの部品が互いに隙間なく固定されることとなる。
固定部材80の半割筒部84は、螺合した締結部材90の先端部や弾性部材60の係合突起66と同等の深さでウインカハウジング51側に挿入される。これにより、金属板によって配線92を案内する距離が長くなり、スムーズな取り回しが可能となる。
図10は、弾性部材60を取り外した状態のウインカ装置50の左側面図である。また、図11は、ウインカハウジング51側から見た弾性部材60の正面図である。ウインカハウジング51の開口部は、レンズ52側からハウジング背面側に向かって上下寸法が徐々に小さくなるように形成されている。配線92のグロメット93は、2本の配線92を上下に並べることで前後寸法を低減した形状とされ、これにより、弾性部材60の配線用貫通孔64および締結部材用貫通孔65を互いに近づけることを可能としている。
ウインカハウジング51と弾性部材60との位置決め構造は、位置決め突起59のようにウインカハウジング51側から突出する部分と、係合突起66のように弾性部材60側から突出する部分の両方が適用され、突出する部分を互いに設けることでより確実な位置決めを可能としている。
また、本実施形態では、弾性部材60の締結部材用貫通孔65の直径D1より配線用貫通孔64の直径D2の方が大径に形成され、半割筒部84が締結部材用貫通孔65を通らないように設定されているので、固定部材80を弾性部材60に組み付ける際にも誤組が生じにくい。
なお、ウインカ装置の構造、車体側の固定部、ウインカハウジング、弾性部材、固定部材の形状や材質、ウインカハウジングのボスや弾性部材の位置決め突起、固定部材の半割筒部およびカラー部材の形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、配線を通す孔と締結部材を通す孔とを車体上下方向に並べて配設することもできる。本発明に係るウインカ装置は、自動二輪車のほか鞍乗型の三輪/四輪車両等の各種車両に適用することが可能である。