以下に、本発明における空気弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明の空気弁の第1実施形態を示しており、図2においては、図1におけるA部拡大断面図、図3は、図1の空気弁の分離断面図を示している。
図1に示すように、本発明の空気弁は、弁箱1、案内体2、フロート弁体3、遊動弁体4、着脱蓋5、固定蓋7、仮連結部8、9を有している。空気弁は、例えば、図示しない水道本管の配管路などに設けられ、水道水に含まれる空気泡や空気溜まりによる空気を外部に排出可能に設けられる。特に好ましい空気弁の設置場所としては、管路の敷設勾配が変化するときの最頂部、直線状の水平管路に対して一定間隔(例えば、300〜500m)ごと、水管路の中央部、管路の主弁前後の空気の供給や排気の必要な箇所などがある。
弁箱1は、例えばダクタイル鋳鉄製からなり、この弁箱1内には、例えばエボナイトなどの樹脂製のフロート弁体3と、ポリプロピレンなどの樹脂製の遊動弁体4とを収納した、例えばABS樹脂などの樹脂製からなる案内体2が配設され、弁箱1の上方には開口部6が形成され、この開口部6には、CAC406などの金属製の着脱蓋5が適宜の固定手段11を介して常時固定された状態になっており、この着脱蓋5には大空気孔12が設けられている。図3に示すように、この空気弁において、必要に応じて着脱蓋5と、フロート弁体3と遊動弁体4とを収納した案内体2を弁箱1の開口部6より取り出し、かつ、取り出した状態の弁箱1の開口部6に大空気孔12を有する着脱蓋5が固定可能に設けられる。
図1、図2に示した仮連結部8、9は、着脱蓋5と案内体2とを接続保持できる構造に設けられており、この仮連結部8、9の分離時に着脱蓋5を開口部6より取り出す際に、着脱蓋5とともにフロート弁体3と遊動弁体4とを収納した案内体2を引き上げて、取り出すことができるように設けられる。
仮連結部8、9の構造は、フロート弁体3と遊動弁体4とを収納した案内体2の自重を支えて保持でき、かつ開口部6より取り出した後は、着脱蓋5と案内体2とを簡単に取り外せる保持力を備えた構造になっている。
具体的には、図2において、仮連結部8、9は着脱蓋5の下部内周と案内体の上部外周に設けたプレスフィット構造にて芯出ししながら連結可能な凹凸部位であり、これらの仮連結部8、9を嵌合させることで着脱可能になっている。本実施形態においては、仮連結部8、9を構成する凹凸部位として、案内体2の上部に配置された複数の切欠き部13によって上部に凸状部14が形成される。これにより、複数の凸状部14の弾性を利用して、着脱蓋5への係合着脱を容易におこなうことができる。
図では着脱蓋5の内側に案内体2の外側が嵌るように保持される構成としているが、図4(a)の他例に示すように、仮連結部8、9が着脱蓋5の下部外周と案内体2の上部内周に設けられ、着脱蓋5の外側に案内体2の内側が嵌るようになっていてもよい。この場合にも、図2と同様にフロート弁体3、遊動弁体4を収納した案内体2の自重を支えて保持でき、取出し後に着脱蓋5と案内体2とを簡単に取り外せる保持力を発揮する。
さらに、図4(b)、図4(c)に示すように、着脱蓋5の下部と案内体2の上部との間にOリング10が装着され、このOリング10を介して仮連結部8、9が連結されていてもよい。この場合、図4(b)において、着脱蓋5の外周に環状溝16を設け、この環状溝16にOリング10を装着するか、又は図4(c)に示すように、案内体2の内周に環状凹状溝17を設け、この環状凹状溝17にOリング10を装着すればよく、何れの場合にも、着脱蓋5と案内体2との保持力が向上する。図4(c)の案内体2側にOリング10を装着する場合には、その肉厚を考慮して強度を確保する必要がある。
仮連結部8、9はプレスフィット構造に限ることなく、さまざまな構造に設けることもでき、例えば、図示しない簡易的なねじ構造や圧入構造、或は、バヨネット構造により着脱蓋5と案内体2とを着脱するようにしてもよい。
上記の弁箱1は、略筒状に形成され、上方に開口部6、下部に流入口20が設けられ、これらの間には収納室21が設けられる。弁箱1の開口部6側にはこの開口部6よりも縮径した嵌合部22が形成され、この嵌合部22の上部に環状凹溝23が形成されている。環状凹溝23には、例えばシリンダ用の材料で形成されたUパッキン24が装着されている。開口部6と嵌合部22との間に段部25が設けられ、この段部25にはスラストリング26が装着され、開口部6の上面には、ボルト部材27のおねじ28を螺着するためのめねじ29が複数箇所に芯出し加工により設けられる。
弁箱1下部の流入口20は、所定の流入面積が確保されるように設けられ、この流入口20の周囲にはこの流入口20の所定の流入面積を確保可能に、例えば、略90°の間隔で突起30が突出形成されている。突起30は、フロート弁体3、遊動弁体4の直径よりも内径側に設けられ、この突起30にフロート弁体3、遊動弁体4が係止することでこれらの落下が防止される。弁箱1の外周下部にはフランジ31が設けられ、このフランジ31を介して図示しない補修弁等が着脱可能に設けられる。
収納室21は、案内体2を収納可能な内径に設けられ、この収納室21の下部には案内体2載置用の案内台座32が内方に向けて突出形成されている。この案内台座32と、着脱蓋5との間に前記の案内体2が着脱蓋5に仮連結部8、9で連結された状態で配設されている。収納室21の内周側には複数の側面ガイド33が突出形成され、この側面ガイド33は、案内体2を芯出し状態でガイド可能に、案内体2の外周に当接可能な適宜の高さに設けられる。
案内体2は、前記のように上部が着脱蓋5の下面に係合され、下部側が案内台座32に載置可能に設けられ、案内台座32と着脱蓋5の下面5aとの間に挟み込まれるように収納室21に収納されつつ、着脱蓋5と案内台座32との間に図示しない遊びを有する状態で装着される。案内体2の上部には、流体を連通させるための連通部35が複数形成され、底面側の略中央位置には所定径の孔36が設けられる。連通部35は、複数の切欠き部位により等間隔に設けられ、この連通部35により流体通過時の面積が決定される。
案内体2の内部には、フロート弁体3の上方に遊動弁体4が配設された状態でそれぞれ着脱可能に設けられる。
図6においては、図1に示したフロート弁体3と遊動弁体4との斜視図を示している。図6(a)の分離斜視図に示すように、フロート弁体3、遊動弁体4は、ともに短円柱形状で偏平形状に設けられ、図6(b)の積み重ね状態に示すように、案内体2の内部にフロート弁体3の上方に遊動弁体4が配設された状態でそれぞれ着脱可能に設けられる。
遊動弁体4の偏心位置には、上下に貫通した小空気孔37が形成され、この偏心構造の小空気孔37を空気が移動可能になっている。遊動弁体4の上面側には、この遊動弁体4が浮上したときに着脱蓋5の下面5aに当接シール可能なシールリング38が装着されている。これらフロート弁体3、遊動弁体4は、弁箱1内の水位に応じて浮力を受けて案内体2に案内されてスムーズに上下移動可能であり、その動作により水道水に含まれる空気が空気弁の外部に排出される。
図1に示すように、弁箱1の上部にはカバー体60が取付けられる。カバー体60は、例えばステンレスなどの金属製からなり、弁箱1の上部を包囲可能な形状に形成され、空気弁として用いる際に、着脱蓋5の大空気孔12と大気とを連通させた状態で被覆するように着脱蓋5の上部又は弁箱1の上部に着脱可能に設けられる。図示しないが、カバー体60の天面には、固着ボルト61の頭部62を挿脱可能なボルト孔部が形成され、このボルト孔部に続けて、頭部62を係止可能なボルト孔部より細い長穴状の案内孔部が形成されている。カバー体60は、後述の取っ手46の上に載置され、ボルト66を後述の支柱45に形成された雌ねじ部67に螺着することで、この支柱45を介して弁箱1の上部に取り付けられる。これにより、着脱蓋5は、通常の空気弁として作動する状態、或は、着脱蓋5の下部に案内体2、フロート弁体3、遊動弁体4が配設された状態において、大空気孔12と外気で連通する状態でカバー体60によって被蓋される。
着脱蓋5は、短円柱状の形状を有する本体部位を有しており、この本体部位が弁箱1の開口部6に嵌合されて着脱自在に固定される。着脱蓋5の中央には上下に貫通する大空気孔12が形成され、この大空気孔12を介して弁箱1内に空気等の流体が吸入排出可能に設けられている。大空気孔12は、案内体2の開口部位よりも縮径した径、例えば、入り口側がφ42mm程度の径により遊動弁体4よりも小さい径に設けられ、これにより大空気孔12が遊動弁体4で塞がれて止水されるようになっている。この場合、案内体2の開口部位よりも大空気孔12の入り口側が小径であればよく、その形状にはこだわらない。
着脱蓋5の上面には2本の支柱45、45が立設形成され、これらの支柱45、45の間には取っ手46が取付けられている。この取っ手46を把持して回転することで着脱蓋5を着脱可能になっている。
図1、図5において、固定手段11は、弁箱1に設けられた段部25、固定蓋7に設けられたアーム係合片50、案内部52、ストッパ53、ロックピン装置(ロックピン)54を有し、これらにより着脱蓋5が弁箱に着脱可能に設けられる。アーム係合片50は、着脱蓋5の側面に等間隔に突出形成され、段部25に当接可能に設けられている。図示しないが、アーム係合片50は前後側で異なる傾斜角度に形成され、一方側に緩傾斜面、他方側に急傾斜面が形成されている。これらの異なる傾斜角度により、緩傾斜面においては、ロックピン54を没入方向に移動させながら着脱蓋5の回動が可能になり、一方、急傾斜面においては、ロックピン54が完全に内周側に突出して両者が係合することで着脱蓋5の回動ができなくなるようになっている。
ロックピン54は弁箱1に取付けられ、図示しないスプリングの付勢力で着脱蓋5に係合してこの着脱蓋5を所定の位置決め状態に装着可能に設けられる。このロックピン54は、手指で把持して外方に引っ張ることで着脱蓋5への係止を外し、この状態で着脱蓋5を回転することで弁箱1から着脱蓋5を着脱可能になっている。
図5に示した固定蓋7は、着脱蓋5を位置決め固定可能に弁箱1の上面1aに取付け可能に設けられる。固定蓋7の中央には穴部55が形成され、この穴部55に着脱蓋5を挿入可能になっている。固定蓋7のめねじ29が対応する位置には貫通孔56が形成されている。穴部55の一部には、アーム係合片50が通過するための切欠き状の案内部52が形成され、この案内部52に続けて下方に突出するストッパ53が形成され、このストッパ53により着脱蓋5の回動範囲が設定される。
固定蓋7は弁箱上面1aに載置され、貫通孔56からめねじ29におねじ28が螺着されることでボルト部材27が弁箱1に固定される。この場合、めねじ29が芯出し加工されていることにより、芯ずれが防止された状態で固定蓋7が固定される。
前記した着脱蓋5には、ボルト等を用いて案内体2が直接固定されることはなく、取り外し時にこの案内体2をフロート弁体3と遊動弁体4とともに弁箱1から着脱可能になっている。
その際、必要に応じて着脱蓋5と、フロート弁体3と遊動弁体4とを収納した案内体2を開口部6より取り出し、かつ、取り出した状態の開口部6に大空気孔12を有する着脱蓋5を固定することが可能になる。
図示しないが、弁箱1の側面には内部と連通する開閉用コックが設けられていてもよい。コックは、空気弁の分解時において残圧を抜くために設けられ、このコックにより遊動弁体4の小空気孔37の開口状態も確認可能となる。小空気孔37にゴミなどが詰まり閉塞などの異常な状態になった場合には、空気が排出されずに弁内に空気が溜まるため、コックを開けることで空気を排出して異常を確認できる。一方、小空気孔37が閉塞していない正常な場合には、弁内が充水されて正常に働いていることで、コックを開けたときに水が出ることでこの正常な状態を確認できる。
また、空気弁の弁箱1の下部に図示しない補修弁を取付けて通水機能を発揮させるようにしてもよい。この場合、補修弁は一般に用いられているものであればよく、例えば、ボール弁を用いることができ、この場合、ボール弁のステムの90°の回動による開閉が可能になる。ボール弁は、例えば、フランジ31に取付用のボルトで取付けられるが、フランジ以外の部分にボール弁を取付けてもよい。ボール弁を使用する場合、そのボール口径を空気弁の内部流路の口径と略同じにすることが望ましい。
さらに、固定蓋7を固定した弁箱1に、着脱蓋5を回転することで、着脱蓋5とフロート弁体3、遊動弁体4を収納した案内体2を着脱するようにしているが、これ以外の着脱蓋の着脱構造により案内体2等を収納することもできる。例えば、図示しないが、凹状の係合溝を有する一体型の着脱蓋と、係合溝に係合可能な係合部、操作部を有する回転可能なレバーを有する弁箱とを設け、弁箱に着脱蓋を仮着した状態でレバーを回転させて係合部を係合溝に圧接状態で係合させるか、或はこの状態からレバーを回転させて係合を係合溝から離反させることにより、フロート弁体、遊動弁体を収納した案内体を仮着した着脱蓋を弁箱に着脱できる。この場合、係合部と係合溝との着脱構造により、これらをワンタッチで着脱可能になる。さらには、着脱蓋と案内体との間にガスケットが装着されていてもよく、この場合、ガスケットも着脱蓋等とともに一体に着脱することもできる。
上記実施形態においては、空気弁の下部にフランジ31が一体に設けられた空気弁の例を説明したが、空気弁の下部に流路開閉用のコックやボール弁が一体に設けられた空気弁、いわゆるコック付き空気弁と呼ばれる空気弁あってもよく、この場合にも上記と同様の機能を発揮することができる。
上記空気弁は、水道本管の配管路に設けられ、水道水内に含まれる空気を排出しているが、対象となる流体を水道水以外の液体としてもよく、この液体に含まれる余分な空気などを排出することもできる。この空気弁は、例えば、洗管作業、圧力測定、臨時給水等に適している。
続いて、本発明の空気弁の上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
先ず、空気弁から案内体2、フロート弁体3、遊動弁体4を取り外す場合には、流水路から空気への流路を遮断する。このとき、空気弁内には残圧があるため着脱蓋5が押し上げられて固定蓋7の底面側に密着した状態になり、回動が阻止された状態になる。この状態からコックを開操作すれば、空気弁内の残圧が抜かれ、着脱蓋5への押し上げ力が開放されることで分解可能になる。
次いで、カバー体60を弁箱1から取外すようにする。この場合、固着ボルト61を緩めてカバー体60を緩めた後、このカバー体60を、固着ボルト61の頭部62の位置にボルト孔部を合わせるように回転させ、この状態でカバー体60を上方に引き抜くようにすれば取り外しできる。このとき、支柱45を介して弁箱1の上部にカバー体60を取り付けていることで、外周囲に着脱用の広いスペースを必要とすることがなく弁箱の上方側からカバー体60を着脱でき、カバー体60のコンパクト化も可能になる。
着脱蓋5を取り外す際には、ロックピン54を把持して引っ張って急傾斜面への係止を外しながら、着脱蓋5を取り出し方向に所定角度回転させる。この場合、アーム係合片50が段部25に当接した状態で、スラストリング26により支持されていることで回転がスムーズになる。アーム係合片50の急傾斜面が固定蓋7のストッパ53に当接したときに、着脱蓋5を引き上げるようにすれば抜き取りできる。
このとき、着脱蓋5と案内体2とを仮連結部8、9を介して接続保持し、分離時に着脱蓋5を開口部6より取り出す際に、着脱蓋5とともにフロート弁体3と遊動弁体4とを収納した案内体2を引き上げて取り出すことができるため、着脱蓋5と、案内体2、フロート弁体3、遊動弁体4を別々に弁箱1から取り外す必要がなく、簡単な手順でこれらを一体に取り外し可能となる。この状態で各部品のゴミなどを取り除いたり清掃や点検などを実施すればよい。この清掃、点検時には、固定蓋7を取り外す必要はない。
着脱蓋5を弁箱1に取付ける場合には、フロート弁体3、遊動弁体4を案内体2に収納し、この案内体2を着脱蓋5に嵌め込むようにしながら連結する。このとき、仮連結部8、9が、着脱蓋5の下部内周又は下部外周と案内体2の上部外周又は上部内周とをワンタッチで着脱可能なプレスフィット構造により連結されていることで着脱が容易になり、しかも、このプレスフィット構造や、図4(b)、図4(c)に示すように、着脱蓋5の下部と案内体の上部とをOリング10を介して連結することで、これらの間のガタツキが抑えられ、案内体2が安定した状態で着脱蓋5に取付けられることで、相対的に遊動弁体4、フロート弁体3のガタツキも抑えられ、動作が安定する。
これによって、大空気孔12の径を大きく拡げるように着脱蓋5を形成することが可能になり、例えば、プレスフィット構造を設けることなく案内体と着脱蓋とを弁箱内に配設したときの大空気孔12の入り口側がφ42mmになる場合に比較して、プレスフィット構造の仮連結部8、9とした場合には大空気孔12の入り口側をφ44mm程度まで拡径しながら設けることができ、その結果、流入部をなだらかにして圧力損失を小さくすることもできるため、流体の排出効率が高まる。
さらには、図2の状態からプレスフィット構造をUパッキン24の周面シール部分と略同じ高さ付近まで設定できるため、この仮連結部8、9を周面シール位置からずらす必要がなくなり、仮連結部8、9の分だけ高さ方向に寸法が延びることを抑えることができる。そのため、同じ案内体2の高さを確保しつつ弁箱1を低く形成でき、空気弁全体のコンパクト化が可能になる。
続いて、案内体2を開口部6から挿入するように着脱蓋5を弁箱1の上方より被せ、アーム係合片50と案内部52との位置を合わせながら着脱蓋5を差し込み、ストッパ53に対してアーム係合片50を係合させる方向に着脱蓋5を所定角度回転させる。この回転により、ロックピン54がアーム係合片50の緩傾斜面により自動的に没入方向に移動する。着脱蓋5がセット位置まで達すると、急傾斜面がロックピン54の位置に到達することでこのロックピン54がスプリングの付勢力で突出して急傾斜面側に係合する。このとき、緩傾斜面がストッパ53の側面部位に衝突することから、アーム係合片50が両側から挟まれて固定保持される。
これにより、着脱蓋5とともにフロート弁体3、遊動弁体4を収納した案内体2が弁箱1の所定位置に装着される。アーム係合片50がストッパ53に係合すると着脱蓋5の基部40の外周側が嵌合部22に嵌合され、弁箱1に着脱蓋5が抜け止めされた状態になる。着脱蓋5の装着後には、仮連結部9の外周側にUパッキン24が装着されることで、弁箱1と着脱蓋5との間の漏れが防がれる。着脱蓋5は、例えば、固定蓋7に対して60°の範囲で回転して着脱される。
空気弁として用いる場合、先ず、図1において、弁箱1内に水が無いときにはフロート弁体3、遊動弁体4は降下して大空気孔12が開放した状態になり、この状態から急速排気や急速吸気の動作がおこなわれる。この場合、フロート弁体3、遊動弁体4は、ともに短円柱形状で偏平形状であることで案内体2内周に対する接触抵抗が少なくなり、確実に落下するようになっている。
急速排気は、図示しない水道本管の管路に充水するときに、管路内の空気を大空気孔12を介して急速に多量に排気するときの動作となる。急速排気時には、遊動弁体4、フロート弁体3はともに浮き上がることなく案内体2の下方に位置するため、大空気孔12が全開状態になる。これにより、管路内の空気が空気弁を介して効率的に外部に排出される。
急速吸気は、管路内の水を排出するときに、空気弁を介して急速に管路内に多量の吸気をおこなうときの動作である。急速吸気時には、遊動弁体4、フロート弁体3が降下した状態となる。この場合、大空気孔12が開口し、この大空気孔12から効率的に吸気して管路内の排水が迅速におこなわれる。このとき、孔36から案内体2内に蓄積した水も排水される。この急速吸気時には、フロート弁体3、遊動弁体4、案内体2が上昇することはない。
これらの急速排気、急速吸気により、水道本管への最初の送水や、水道本管からの排水などの作業を短時間でおこなうことができる。
空気弁内への充水が完了し、管路内が満水状態になって弁箱1内が水で満たされているときには、フロート弁体3、遊動弁体4が浮力によって上昇し、遊動弁体4のシールリング38が着脱蓋5の下面5aに密着して大空気孔12を塞ぎ、かつ、フロート弁体3が遊動弁体4の小空気孔37を塞いた状態となる。これにより、弁箱1内が完全に遮蔽された状態になり、外部への水の流出が防がれる。
この充水時の圧力下において、水道本管内に混入している空気は徐々に空気弁に集まり、弁箱1内に溜まっていく。この空気量が一定に達すると、先ずフロート弁体3のみが降下し、遊動弁体4の小空気孔37が開いた状態になる。これは、大空気孔12と小空気孔37とにおける孔径の大小関係により、遊動弁体4が大空気孔12を有する着脱蓋5の下面5aから離れないためであり、その結果、フロート弁体3のみが自重により降下する。
その際、図6に示すように、遊動弁体4の小空気孔37がフロート弁体3の偏心位置に配置されていることで、まず、負圧が発生している小空気孔37の反対側から降下し、フロート弁体3には傾斜する方向の力が加わり、さらに上記のようにフロート弁体3が短円柱状で、かつ偏平形状であることで案内体2内周に対する接触抵抗が少ない。これらのことから、フロート弁体3が遊動弁体4に対して傾きやすくなり、遊動弁体4から離間させて確実に降下させることができる。これにより、フロート弁体3と遊動弁体4との吸着を防いで、開口させた遊動弁体4の小空気孔37から空気弁内の空気をスムーズに外部に排出できる。さらに、フロート弁体3の下部側の角部位をアール状に形成していることで、フロート弁体3がより傾斜しやすくなり、降下しやすくなっている。
空気の排出により弁箱1内の空気量が少なくなると、フロート弁体3が上昇して再び小空気孔37を塞ぐ。以上の動作を繰り返すことにより、空気弁を介して本管内に溜まった空気を自動的に弁外に排出する。
この場合、案内体2は、着脱蓋5に仮連結部を介して接続保持されているため、弁箱1の中心からずれることがない。仮連結部8、9を介してこの上部付近で均等に力を受けるため、例えば、図示しない上部側に挟着用の鍔部を設けた案内体と比較した場合、曲げ応力が加わりにくく、水撃などによる衝撃荷重に対して非常に強い形状になっている。
図7、図8には、本発明の空気弁の第2実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。この実施形態の空気弁では、着脱蓋91の上部に口金15が別体に配設され、着脱蓋91と案内体2とその内部部品を取り出した後にこの口金15を有する着脱蓋91を弁箱1の開口部6に取付けることが可能になっている。
口金15は、固定手段11を介して基部40が弁箱1の開口部6に嵌合されることで着脱自在に固定される。口金15としては、例えば65A町野式口金と呼ばれるタイプが設けられ、着脱蓋91に対してOリング41を介して取付けられる。口金15は、着脱蓋91を介して常時弁箱1に取付けられ、内部部品の清掃や点検などに際して必要に応じて着脱される。
口金15は、前述の町野式口金であれば、差し金具80と押し輪81とを用いて構成される。これら差し金具80と押し輪81とは、例えば、何れもステンレスなどの金属製からなっている。押し輪81は、差し金具80の外周と、差し金具80が螺合された着脱蓋91との間に形成された外周側に、上下動可能に装着される。着脱蓋91の上端は、押し輪81の下方側を位置決めする止め輪に相当し、押し輪81の位置保持機能を有している。着脱蓋5の上端に位置保持された押し輪81と固定蓋7との間には、押し輪81の操作スペースが形成される。
口金15の基部40の中央には大空気孔90が貫通して形成され、この大空気孔90を介して弁箱1内に空気等の流体が吸入排出可能に設けられている。大空気孔90は、案内体2の開口部位よりも縮径して遊動弁体4よりも小さい径に設けられ、これにより大空気孔90が遊動弁体4で塞がれて止水されるようになっている。
この場合にも、前記実施形態の場合と同様に仮連結部8、9をプレスフィット構造や、着脱蓋91の下部と案内体2の上部との間に図示しないOリングを設けることで大空気孔90を大きくしながら口金15を設けることもでき、プレスフィット構造等を設けない場合の大空気孔の入り口部分がφ42mmとなる場合に比較して、φ44mm程度まで大空気孔90の入口部分を拡げることができる。口金15は、着脱蓋91と一体に設けられていてもよい。
前記した空気弁を洗管用や臨時の消火栓として通水機能を発揮させる場合には、フロート弁体3、遊動弁体4、案内体2を抜き出した弁箱1に、口金15を有する着脱蓋91を取付ける。この場合、あらたに口金を必要とすることなく着脱蓋91に設けられた口金15の大空気孔90を介して通水機能が得られる。そのため、空気弁の設置場所に別の部品を持ち運ぶことなく、フロート弁体3、遊動弁体4、案内体2を弁箱1に着脱することで簡単に空気弁と消火栓等とを切換えできる。
このとき、一般的な玉形弁構造の消火栓では圧力損失が大きくなることに比較して、この実施形態の空気弁では流路がストレート構造になっていることで、消火栓等で使用する際に大空気孔90の流量を大きくでき、しかも、前記のようにプレスフィット構造により大きい大空気孔90を形成して流量を増加できる。
着脱蓋91の口金15には、図示しない消防用ホース等を接続可能であり、このホースを介して管路内を洗管したり臨時の消火栓として利用可能になる。更に、管路内の水圧測定などの各種の用途にも利用可能となる。着脱蓋91を取付けて消火栓等として使用する場合、前記口金15により例えば口径65Aの流量を確保できる。口金15から消防用ホースを外す際には、作業者が上記の操作スペースに手を入れて、押し輪81を押し上げることにより、ホースを外すことができる。
さらに、フランジ31に補修弁としてボール弁を設けた場合、この補修弁の開閉により流路を確保しながら洗管用や臨時の消火栓に適したものを提供できる。弁箱1の下部に案内台座32を設けていることで、補修弁を介して流れ込む噴流がこの案内台座32に当たり、直接弁外に噴出することが防止される。
この実施形態では、着脱蓋91と案内体2等の内部部品を取り出した後に口金15を有する着脱蓋91を弁箱1の開口部6に取付けたことにより、弁箱1内に開閉弁を設けたり、弁箱1が大型化したり、内部構造が複雑化したりすることがなく、かつ別部品が増加することなく、空気弁に消火栓等の通水機能を発揮することもできるようになる。なお、図示しないが、前述した第1実施形態の空気弁の着脱蓋5を取り外して内部の案内体2、フロート弁体3、遊動弁体4を取り除いた状態で固定蓋7を介して口金15を取付けることにより、同様に通水機能を発揮させることができる。
図9においては、本発明の空気弁の第3実施形態を示している。この実施形態では、着脱蓋100の大空気孔101の内周側にアール形状の内周径部102が形成され、この内周径部102の最小口径部分が大空気孔101の口径となる。内周径部102から大空気孔101の下端入口103には、拡径開口部104が設けられ、かつ大空気孔101の上端出口105に向けては、なだらかな拡径面106が形成されている。
拡径開口部104には、内周径部102から下端入口103に向けて面取り107が施され、この面取り107により内周径部102から下端入口103側に徐々に拡径するように形成される。
面取り107は、R面取りであることが望ましいが、C面取りにより設けるようにしてもよい。何れの形状の面取り107を設ける場合でも、拡径開口部104の開口側がシールリング38のシール径よりも小さくなるようにし、案内体2のセンターに対して遊動弁体4のセンターが遊び分偏心しても、着脱蓋100の下面100aにシールリング38を当接シールできるように形成する必要がある。
このように面取り107が設けられていることで、図10に示した着脱蓋100において、拡径開口部104の開口側内径d1が内周径部102の内径d2よりも大きくなり、これにより拡径開口部104側の面積が内周径部102の面積よりも大きくなり、拡径開口部104側から面取り107を介して内周径部102に流体が案内されるように流れる。さらに、内周径部102からなだらかな拡径面106を介して流体がスムーズに流れるために圧力損失が抑えられる。この場合、特に、低圧時の圧力損失が小さくなって騒音が抑制され、面取り107で内周径部102が絞られているにもかかわらず、優れた流量特性が確保される。面取り107を設ける場合、その大きさと内周径部102の径との関係を適宜設定して圧力損失を低減し、所定の流量を確保できるように設けるようにする。
また、この実施形態におけるカバー体110の下端外周のロックピン54を隠すことができる位置にはフランジ部111が設けられ、このフランジ部111を介してカバー体110が取付け用の部材であるブラケット112により弁箱1の上部に取付け可能に設けられている。ブラケット112は、薄板により略環状に形成され、その外周の2ヶ所に断面略L字状に下方に曲折された突出部113が形成されている。さらに、カバー体110のフランジ部111は、図示しない弁箱1の側面に内部と連通する開閉用コックを覆って保護する機能がある。
ブラケット112は、弁箱1上部の固定蓋7の上に配置され、固定蓋7とともにボルト部材27で弁箱1に位置決め固着される。この状態で突出部113にフランジ部111を載置してカバー体110を弁箱1の上部に位置決めし、フランジ部111と突出部113の先端側とをネジ114で螺着する。これによって、ブラケット112を介して弁箱1の外周側でカバー体110を固着して、このカバー体110により弁箱1の上部側を被覆できる。
環状のブラケット112を用いてカバー体110を弁箱1に着脱する場合、このブラケット112を介して弁箱1の外周側でカバー体110を取り付けていることで、カバー体110固着用のボルト部材を支柱として着脱蓋110に設ける必要がない。そのため、カバー体110の取り外し後に、口金15への消防用ホース等の接続や取外す際に、この外部接続部位がブラケット112とカバー体110との接続箇所に干渉して支障が生じるおそれを回避できる。そのため、この外部接続部位が傷付いたりすることを防止できる。例えば、オス型の町野式口金15に図示しないメス型の消防用ホースを接続する場合、このメス型の受け口が外径側に大きいことから、ボルト部材を設けた場合には干渉して接続できなくなるおそれがあるが、ブラケット111を用いたカバー体110の着脱構造の場合には、この干渉を回避できる。さらに、ロックピン54が隠れる位置でフランジ部111を固定していることで、このロックピン54が樹脂製である場合にも耐候性を向上できる。
ここで、この実施形態において、着脱蓋100の面取り107の大きさの違いによる流量を比較するために、異なる形状の大空気孔の着脱蓋の流量を測定した。これら着脱蓋として、図11において、内周径部102(大空気孔101)の内径φ40mmで拡径開口部104にφ44mmの面取り107を有するフランジ一体型の着脱蓋(以下、φ40×φ44面取)、内周径部102内径φ40mmで拡径開口部104にφ42mmの面取り107を有するフランジ一体型の着脱蓋(以下、φ40×φ42面取)、内周径部102内径φ44mmで面取りなしのフランジ一体型の着脱蓋(以下、φ44面取なし)と、比較用として日本水道協会規格JWWA B 103(水道用地下式消火栓)のφ75mm消火栓(以下、JWWA B 103 消火栓)の各水圧下における水の流量を比較した結果を示す。着脱蓋100の内周径部102(大空気孔101)の内径をφ40mmとした理由は、この大きさの大空気孔101と面取り107とを組み合わせたときに、より優れた流量特性が得られたためである。
図11のグラフより、大空気孔101の下端入口103に拡径開口部104を設け、大空気孔101の上端出口105に向けてなだらかな拡径面106を設けた場合、何れの着脱蓋の場合にも特に低圧時の圧力損失を抑え、消火栓と比較して流量の大幅な低下を防ぎつつ、優れた流量特性を全体に渡って発揮でき、消火栓としての機能を十分に有していることが確認された。
φ40×φ44面取とφ44面取なしとを比較した場合、同じ使用圧力に対してφ40×φ44面取の流量がφ44面取なしよりも大きくなっている。このことから、流体入口側の口径が同じである場合、面取り107を有する着脱蓋のほうが大空気孔(内周径部)が小径になるにもかかわらず、面取りなしのストレート形状の大空気孔の着脱蓋よりも圧力損失を抑えて、同じ使用圧力に対してより大流量にすることができる。すなわち、着脱蓋を設ける場合、空気弁としての使用時に、遊動弁体4のシールリング38を密着シール可能な口径に抑えつつ、消火栓としての使用時に、より圧力損失を抑制して大流量を確保するためには、面取りを設けた形状とすることがより望ましいことが確認された。
また、φ40×φ44面取とφ40×φ42面取とを比較した場合、同じ使用圧力に対してφ40×φ44面取の流量がφ40×φ42よりも大きくなっている。このことから、大空気孔101が同じ口径である場合、面取り107をより大きくして拡径開口部104の開口側を大きくすれば、より大流量を確保することが可能になる。