JP2015106118A - 感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板 - Google Patents

感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化チタンを含有するソルダーレジスト組成物において、スルーホール等の穴部における現像残渣の発生を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ系熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であり、かつ、(C)無機充填物が、酸化チタンを含有する感光性樹脂組成物、それを用いたドライフィルムおよびその硬化物である。
【選択図】なし

Description

本発明は感光性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関し、詳しくは、光重合開始剤の改良に係るアルカリ現像型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
一般に、プリント配線板は、積層板に貼り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成したものであり、電子部品がはんだ付けにより所定の場所に配置されている。このようなプリント配線板においては、必要な部分へのはんだの付着を防止するとともに、回路の導体が露出して酸化や湿気により腐食されることを防止するための保護膜として、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域に、ソルダーレジストが形成される。ソルダーレジストは回路基板の永久保護膜としても機能するので、ソルダーレジストには、密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などの種々の性能を備えることが要求される。
基板上に所望のパターンのソルダーレジストを形成する方法の一つとして、フォトリソグラフィ技術を利用した形成方法が用いられている。例えば、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物からなる感光性ソルダーレジストを、パターンマスクを通して露光した後、アルカリ現像することにより、露光部と非露光部とに生じたアルカリ現像液への溶解性の差を利用してパターンを形成することができる。
例えば、特許文献1には、白色顔料を含有しながら、露光に要する光量が抑制され、且つ高い光反射性を有するソルダーレジスト層が形成可能なソルダーレジスト組成物を提供することを目的として、感光性樹脂、白色顔料、波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤、及び蛍光染料を配合したソルダーレジスト組成物が開示されている。
特開2011−227343号公報(特許請求の範囲等)
ところで、ソルダーレジスト組成物中には、組成物を白色に着色するために、酸化チタンを多量に含有させる場合がある。しかし、酸化チタンを多量に含有する組成物は流動度が低いことから、スルーホール等の穴部に入ってしまうと除去しにくく、現像残渣が残ってしまうという問題があった。
本発明の目的は、酸化チタンを含有するソルダーレジスト組成物において、スルーホール等の穴部における現像残渣の発生を抑制できる技術を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、組成物中に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、組成物中に含まれるエポキシ基の当量を1.0以下とすることで、酸化チタンを多量に含有する場合であっても、スルーホール等における現像残渣の発生を抑制することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ系熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であり、かつ、前記(C)無機充填物が、酸化チタンを含有することを特徴とするものである。
本発明の組成物においては、前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が、20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂のうちの少なくとも一種以上を含有することが好ましい。また、本発明の組成物において、前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量と、前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量との比は、好適には0.8以下である。さらに、本発明の組成物においては、前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、スチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものであることが好ましい。
また、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
さらに、本発明の硬化物は、上記本発明の感光性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの前記樹脂層を、光照射により硬化して得られることを特徴とするものである。
さらにまた、本発明のプリント配線板は、上記本発明の硬化物を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、酸化チタンを含有するソルダーレジスト組成物において、スルーホール等の穴部における現像残渣の発生を抑制できる技術を実現することが可能となった。
エポキシ樹脂の液状判定に使用される2本の試験管を示す概略側面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、本発明の感光性樹脂組成物の各成分について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂を含有する。(A)カルボキシル基含有樹脂としては、公知のカルボキシル基を含む樹脂を用いることができる。カルボキシル基の存在により、組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、本発明の組成物を光硬化性にすることや耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いることもできる。(A)カルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有しても有さなくてもよい。(A)カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、熱や光による劣化を抑制する効果が得られるため、好ましい。
本発明の組成物に用いることができるカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。このカルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、不飽和カルボン酸および不飽和基含有化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物および酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート若しくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、多官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、2官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、多官能オキセタン樹脂、ジカルボン酸および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、エポキシ化合物、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物、不飽和基含有モノカルボン酸および多塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
(13)上記(1)〜(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、上記のうちでも、スチレンまたはスチレン誘導体から誘導された(A)カルボキシル基含有樹脂を用いると、はんだ耐熱性に優れる組成物が得られるため、好ましい。
上記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜180mgKOH/gの範囲である。20〜200mgKOH/gの範囲であると、塗膜の密着性が得られ、アルカリ現像が容易となり、現像液による露光部の溶解が抑えられ、必要以上にラインが痩せたりせずに、正常なレジストパターンの描画が容易となるため好ましい。
また、本発明で用いるカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000〜150,000の範囲が好ましい。この範囲であると、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良く、現像時に膜減りが生じにくい。また、上記重量平均分子量の範囲であると、解像度が向上し、現像性が良好であり、貯蔵安定性が良くなる。より好ましくは、5,000〜100,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
[(B)エポキシ系熱硬化性成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、(B)エポキシ系熱硬化性成分を含有させる。(B)エポキシ系熱硬化性成分としては、熱硬化性樹脂組成物において熱硬化性成分として使用されるもの、具体的には、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち、公知の多官能エポキシ化合物をいずれも使用可能である。
上記多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱化学(株)製のjER828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学(株)製のYX−4000等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;DIC(株)製のRN−695等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業(株)製のTEPIC等の複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;柔軟強靭エポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、2官能のエポキシ樹脂であることが可撓性の観点から好ましい。特に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が難燃性の観点から好ましい。
本発明において、(B)エポキシ系熱硬化性成分の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下となる範囲とすることが必要である。好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量と、(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量との比が、0.1以上0.8以下、特には、0.2以上0.6以下となる範囲とする。ここで、本発明において、カルボキシル基およびエポキシ基の当量とは、それぞれ、反応基としてのカルボキシル基およびエポキシ基の化学当量を意味する。すなわち、本発明においては、組成物(乾燥塗膜)中に含まれる、(B)エポキシ系熱硬化性成分のエポキシ基数を、(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基数よりも少なくする。
通常は、(B)エポキシ系熱硬化性成分の配合量は、硬化被膜におけるカルボキシル基の残存を防止できる範囲とするが、本発明においては、組成物中における(B)エポキシ系熱硬化性成分の配合量を上記範囲として、カルボキシル基の数に対し、反応するエポキシ基の数を少なくすることで、現像性に寄与するカルボキシル基を、熱硬化後においても多く残存させることができる。これにより、酸化チタンを含有する硬化被膜であっても、現像液に対する溶解性を高めることができ、スルーホール等の穴部においても、現像残渣の発生を抑制することが可能となるものである。なお、本発明において、スルーホール等の穴部とは、スルーホールに限られず、ビアホール等の他の穴部も含むものである。穴部が小径であればあるほど残渣が詰まりやすいが、本発明によれば、例えば、内径300mm以下、具体的には内径200mm以上300mm以下の小径の穴部であっても、残渣を生ずることなく現像することが可能である。
本発明においては、(B)エポキシ系熱硬化性成分として、20℃で液状であるエポキシ樹脂、および、40℃で固体状である固形エポキシ樹脂のうちの少なくとも一種以上を含有することが好ましい。ここで、本発明において固体状とは、粉体を含む概念である。(B)エポキシ系熱硬化性成分として、20℃で液状であるエポキシ樹脂を含有すると、粘度が低く流れやすくなるため、スルーホールにおける現像残渣が発生しにくくなる。また、(B)エポキシ系熱硬化性成分として、40℃で粉体である固形エポキシ樹脂を含有すると、粒状であってスルーホール内に詰まりにくいことから、やはり現像残渣が発生しにくくなる。さらに、(B)エポキシ系熱硬化性成分として、40℃で固体状である固形エポキシ樹脂を含有する場合も、粉体の場合と同様に粒状であってスルーホール内に詰まりにくいことから、現像残渣が発生しにくくなる。これに対し、現像時の温度において半固形状のエポキシ樹脂を含有すると、固形状態と液体状態との中間の状態であって粘度が高いため、スルーホール内に現像残渣が入り込みやすく、排出されにくい状態となるものと考えられる。近年では、基板の小型化に伴いスルーホールのサイズについてもより小さくなっているため、特に、このような現象が生じやすい。
ここで、本発明における「液状」の判定方法について説明する。
液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。
(1)装置
恒温水槽:
攪拌機、ヒーター、温度計、自動温度調節器(±0.1℃で温度制御が可能なもの)を備えたもので深さ150mm以上のものを用いる。
なお、後述する実施例で用いたエポキシ樹脂の判定では、いずれもヤマト科学(株)製の低温恒温水槽(型式BU300)と投入式恒温装置サーモメイト(型式BF500)の組み合わせを用い、水道水約22リットルを低温恒温水槽(型式BU300)に入れ、これに組み付けられたサーモメイト(型式BF500)の電源を入れて設定温度(20℃または40℃)に設定し、水温を設定温度±0.1℃にサーモメイト(型式BF500)で微調整したが、同様の調整が可能な装置であれば、いずれも使用できる。
試験管:
試験管としては、図1に示すように、内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製のもので、管底から55mmおよび85mmの高さのところにそれぞれ標線31,32が付され、試験管の口をゴム栓33aで密閉した液状判定用試験管30aと、同じサイズで同様に標線が付され、中央に温度計を挿入・支持するための孔があけられたゴム栓33bで試験管の口を密閉し、ゴム栓33bに温度計34を挿入した温度測定用試験管30bを用いる。以下、管底から55mmの高さの標線を「A線」、管底から85mmの高さの標線を「B線」という。
温度計34としては、JIS B7410(1982)「石油類試験用ガラス製温度計」に規定する凝固点測定用のもの(SOP−58目盛範囲20〜50℃)を用いるが、0〜50℃の温度範囲が測定できるものであればよい。
(2)試験の実施手順
温度20±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料を、図1(a)に示す液状判定用試験管30aと図1(b)に示す温度測定用試験管30bにそれぞれA線まで入れる。2本の試験管30a,30bを低温恒温水槽にB線が水面下になるように直立させて静置する。温度計は、その下端がA線よりも30mm下となるようにする。
試料温度が設定温度±0.1℃に達してから10分間そのままの状態を保持する。10分後、液状判断用試験管30aを低温恒温水槽から取り出し、直ちに水平な試験台の上に水平に倒し、試験管内の液面の先端がA線からB線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。試料は、設定温度において、測定された時聞が90秒以内のものを液状、90秒を超えるものを固体状と判定する。
20℃で液状であるエポキシ樹脂としては、三菱化学(株)製のjER828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、20℃で液状であるエポキシ樹脂は、20℃未満で液状であってもよいことは勿論である。また、エポキシ樹脂としては、硬化物の好ましい物性等の観点から、芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。なお、本明細書において、芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。従って、20℃で液状であるエポキシ樹脂としては、20℃で液状である芳香族系エポキシ樹脂がより好ましい。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
40℃で固体状である固形エポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学(株)製のYX−4000等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;DIC(株)製のRN−695等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業(株)製のTEPIC等の複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に低い熱膨張性を付与するためには、ナフタレン骨格を含有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
20℃で固体状であり、40℃で液状である半固形エポキシ樹脂(C)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[(C)無機充填物]
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(C)無機充填物を含有する。(C)無機充填物としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン等が挙げられる。これらの無機充填物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうちでも、本発明においては、(C)無機充填物として、酸化チタンを含有する。(C)無機充填物として酸化チタンを含有することで、組成物の硬化物を白色とすることができ、高い反射率を得ることが可能となる。一方で、前述したように、酸化チタンを含有する組成物は流動度が低下することから、スルーホール等において現像残渣が生じやすい問題があったが、本発明においては、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基および(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量比を上記所定の範囲としたことで、現像残渣の問題なしで反射率の高い硬化被膜をえることが可能となったものである。
酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよい。ラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li0.5TiOに化学酸化によるリチウム脱離処理が施されることで得られる。ルチル型酸化チタンは、光照射を起因とする変色を起こしにくいので好ましい。
このような酸化チタンを必須成分として含む(C)無機充填物の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分(感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を除く成分)に対して、好ましくは5〜80質量%の範囲、より好ましくは10〜70質量%の範囲である。
[(D)光重合開始剤]
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤を含有する。(D)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。
(D)光重合開始剤としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,IRGACURE819)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,DAROCUR TPO)等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。以上の光重合開始剤は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部である。(D)光重合開始剤をこの範囲で配合することで、銅上での光硬化性が十分となり、塗膜の硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性が向上し、また、深部硬化性も向上する。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5〜40質量部である。
(希釈剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、希釈剤を含有していてもよい。本発明に用いられる希釈剤は、組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を上げたり、密着性などを向上するために用いられ、光硬化性モノマーなどの反応性希釈剤や公知慣用の有機溶剤が使用できる。
光硬化性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
このような光硬化性モノマーの配合率は、カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは5〜70質量部の割合である。上記配合率の範囲では、光硬化性が向上して、パターン形成が容易となり、硬化膜の強度も向上できる。
有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
(その他の任意成分)
本発明の組成物には、電子材料の分野において公知慣用の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、熱硬化触媒、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、上記以外の充填剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、着色剤、光開始助剤、増感剤等が挙げられる。
(難燃剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、リン含有化合物等の難燃剤を含んでもよい。本発明の感光性樹脂組成物では、固形の難燃剤を含む場合でも、穴部における現像残渣の発生を抑制できる。難燃剤としては、金属水酸化物、リン含有化合物などの慣用公知のものを使用可能である。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。リン含有化合物としては、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、環状フォスファゼン化合物、フェノール性水酸基を有するリン含有化合物、オリゴマーもしくはポリマーであるリン含有化合物、フォスファゼンオリゴマー、ホスフィン酸金属塩、下記一般式で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2015106118
上記一般式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子以外の置換基を示す。一般式中、R、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、Rは、水素原子、シアノ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、または3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
フォスファゼンオリゴマーとしては、フェノキシフォスファゼン化合物が有効であり、置換もしくは無置換フェノキシフォスファゼンオリゴマー、または、3量体、4量体、5量体の環状物がある。
難燃剤の配合量は、固形分換算で、上記(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5〜50質量部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜40質量部である。
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に、本発明の組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムの形成は、本発明の組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
キャリアフィルム上に本発明の組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
また、本発明の組成物を、例えば、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により本発明の組成物の層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂層を形成できる。
上記基材としては、あらかじめ回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
本発明の組成物は、例えば、約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
また、本発明の組成物を塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、もしくは、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光して、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、レジストパターンが形成される。
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザーおよび固体レーザーのいずれでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm、好ましくは20〜600mJ/cmの範囲内とすることができる。
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
本発明の組成物は、プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジストや層間絶縁層等の硬化皮膜の形成に適している。また、本発明の組成物は、白色とすることで、照明器具や携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト等において、その光源として使用される発光ダイオード(LED)やエレクトロルミネセンス(EL)から発せられる光を反射する反射板に、好適に使用される。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表中に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散させ、混練して、それぞれ組成物を調製した。なお、表中の配合量は、質量部を示す。
<合成例1(カルボキシル基含有樹脂の調製)>
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管および撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸42質量部、メチルメタクリレート43質量部、スチレン35質量部、ベンジルアクリレート35質量部、カルビトールアセテート100質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部およびアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え、窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させて、共重合体溶液(固形分濃度50質量%)を得た。これに、ハイドロキノン0.05質量部、グリシジルメタクリレート23質量部およびジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え、80℃で24時間付加反応を行った後、カルビトールアセテート35質量部を加えて、芳香環を有する共重合樹脂溶液(固形分濃度50質量%)を得た。
<現像性(スルーホール現像性)>
1.0mm厚の銅張積層板にφ300μmドリルで孔を開け、定法によりスルーホールメッキを行い、実測値約φ260μmのスルーホールを100穴形成した基板を作製した。この基板に、各実施例および比較例の組成物をスクリーン印刷で2回印刷し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ、室温まで放冷した。この基板を、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.2MPaの条件で90秒間現像、水洗し、現像後の基板を得た。得られた基板のスルーホール内を目視およびスコープにより観察して、スルーホール内の現像性の評価を行った。現像残渣がない場合を◎、現像残渣がわずかにあった場合を○、現像残渣はあるがスルーホールは貫通している場合を△、スルーホールに現像残渣が入り貫通していない場合を×とした。
<反射率>
各実施例および比較例の組成物を、100mm×150mmの大きさで1.6mmの厚さのFR−4銅張り積層板に対し、スクリーン印刷法にて、膜厚40μmとなるように、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してベタ(基板全面)でパターンを印刷した。これらを80℃で30分間に渡って熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。さらにプリント配線板用露光機HMW−680GW(株式会社オーク製作所製)を用いて、30mm角のネガパターンを残すように、900mJ/cmの積算光量で紫外線露光した。その後、30℃で1%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、これらをプリント配線板用現像機にて60秒間現像し、続いて150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化を行い、特性試験用の試験片を作製した。
得られた試験片を、色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定して、Y値の値が85以上の場合を○、80以上85未満の場合を△、80未満の場合を×とした。
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した試験片を、あらかじめ260℃に設定したはんだ槽に30秒で1回浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の剥がれについて評価した。剥がれがなかった場合を○、若干の剥がれが生じた場合を△、著しい剥がれが生じた場合を×とした。
上記の各評価結果を、下記の表中に示す。
Figure 2015106118
※1)合成例1で得られたスチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂(カルボキシル基当量=960)
※2)DPM(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)で44質量%に希釈(ダイセル化学工業(株)製)(カルボキシル基含有樹脂,カルボキシル基当量=806)
※3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂,三菱化学(株)製(20℃で液状,エポキシ基当量=185)
※4)日産化学工業(株)製(40℃で粉体(固体状),エポキシ基当量=100)
※5)ビフェニルタイプエポキシ樹脂(三菱化学(株)製)(40℃で粉体(固体状),エポキシ基当量=182)
※6)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製)(40℃で固体状,エポキシ基当量=210)
※7)石原産業(株)製
※8)昭和電工(株)製
※9)ホスフィン酸アルミニウム塩,クラリアントジャパン(株)製
※10)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※11)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、IRGACURE819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※12)イミダゾール系化合物、四国化成工業(株)製
※13)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
※14)芳香族炭化水素(ソルベッソ150)
※15)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製
※16)乾燥状態(固形分換算)における、組成物中の(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量(数)と、(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量(数)との比(エポキシ基数/カルボキシル基数)である。
Figure 2015106118
上記表中の結果から、各実施例の組成物においては、酸化チタンを含有する場合であっても、スルーホールにおける現像残渣の発生がなく、はんだ耐熱性も良好であることがわかる。これにより、本発明によれば、良好なスルーホール現像性を確保しつつ、高い反射率を有する感光性樹脂組成物が得られることが確かめられた。
Figure 2015106118
※1)合成例1で得られたスチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂(カルボキシル基当量=960)
※2)DPM(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)で44質量%に希釈(ダイセル化学工業(株)製)(カルボキシル基含有樹脂,カルボキシル基当量=806)
※3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂,三菱化学(株)製(20℃で液状,エポキシ基当量=185)
※4)日産化学工業(株)製(40℃で粉体(固体状),エポキシ基当量=100)
※5)ビフェニルタイプエポキシ樹脂(三菱化学(株)製)(40℃で粉体(固体状),エポキシ基当量=182)
※6)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製)(40℃で固体状,エポキシ基当量=210)
※7)石原産業(株)製
※8)昭和電工(株)製
※9)ホスフィン酸アルミニウム塩,クラリアントジャパン(株)製
※10)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※11)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、IRGACURE819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※12)イミダゾール系化合物、四国化成工業(株)製
※13)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
※14)芳香族炭化水素(ソルベッソ150)
※15)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製
※16)乾燥状態(固形分換算)における、組成物中の(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量(数)と、(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量(数)との比(エポキシ基数/カルボキシル基数)である。
Figure 2015106118

Claims (7)

  1. (A)カルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ系熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
    前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し、前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であり、かつ、前記(C)無機充填物が、酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
  2. 前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が、20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂のうちの少なくとも一種以上を含有する請求項1記載の感光性樹脂組成物。
  3. 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量と、前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量との比が、0.8以下である請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
  4. 前記(A)カルボキシル基含有樹脂がスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものである請求項1〜3のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物。
  5. キャリアフィルム上に、請求項1〜4のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
  6. 請求項1〜4のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物、または、請求項5記載のドライフィルムの前記樹脂層を、光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。
  7. 請求項6記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
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