JP2015102698A - 低複屈折性フィルム及びその製造方法、光学用フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】延伸フィルム等で課題となる複屈折を低減した光学フィルムを提供する。
【解決手段】A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、前記B層はアタクチックポリスチレンを含み、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である、低複屈折性フィルム。
【選択図】図1
【解決手段】A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、前記B層はアタクチックポリスチレンを含み、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である、低複屈折性フィルム。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学分野で用いる低複屈折性フィルム及びその製造方法、光学用フィルムに関する。
液晶表示装置(LCD)を用いた液晶テレビは急速に普及し、高性能化が進んでいる。液晶表示装置の内部は2枚の偏光板が液晶セルを挟む構造をしていて、偏光板はポリビニルアルコール(PVA)製の偏光子と、その両面に偏光子保護フィルムとしてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを積層させた構成を有する光学フィルムである。また、従来、液晶テレビなどのディスプレイー内部に用いられる上記光学フィルムは、さらにポリエチレンテレフタラート(PET)やポリカーボネート(PC)フィルム等の光学用フィルムを積層させる等の二次加工を施されている。
これら光学用として用いられるフィルムのうち、延伸法により作製されたフィルムは、ポリマーを構成する鎖状分子が配向することで、平面方向ならびに厚み方向に複屈折を生じやすい。
例えば、偏光子は光を偏光にする働きをするが、偏光が複屈折を持つ物質を透過すると常光と異常光とに分かれ光路差が生じる。この光路差=複屈折を制御することが光学フィルムの分野において重要な課題になっている。
シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は分子構造上、PETなどの樹脂とは異なる複屈折特性を有することが知られており、特許文献1のように、ポリエステルとの複合化により所望の光拡散を有する光学フィルムとして使用されてきた。特許文献2ではポリスチレン(PS)とポリフェニレンエーテル(PPE)との複合化による位相差フィルムが提案されている。また特許文献3ではSPSとPPEの複合化層とポリメタクリル酸メチル(PMMA)層との積層化による位相差フィルムが提案されている。特許文献2、3ではあくまでPPEとの複合化により位相差を制御するものであって、本発明の目的とする延伸フィルムの複屈折を低減させる(0に近づける)技術ではない。
これら光学用として用いられるフィルムのうち、延伸法により作製されたフィルムは、ポリマーを構成する鎖状分子が配向することで、平面方向ならびに厚み方向に複屈折を生じやすい。
例えば、偏光子は光を偏光にする働きをするが、偏光が複屈折を持つ物質を透過すると常光と異常光とに分かれ光路差が生じる。この光路差=複屈折を制御することが光学フィルムの分野において重要な課題になっている。
シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は分子構造上、PETなどの樹脂とは異なる複屈折特性を有することが知られており、特許文献1のように、ポリエステルとの複合化により所望の光拡散を有する光学フィルムとして使用されてきた。特許文献2ではポリスチレン(PS)とポリフェニレンエーテル(PPE)との複合化による位相差フィルムが提案されている。また特許文献3ではSPSとPPEの複合化層とポリメタクリル酸メチル(PMMA)層との積層化による位相差フィルムが提案されている。特許文献2、3ではあくまでPPEとの複合化により位相差を制御するものであって、本発明の目的とする延伸フィルムの複屈折を低減させる(0に近づける)技術ではない。
本発明は、光学用フィルムとして用いられるフィルムであって、延伸フィルム等で課題となる複屈折を低減したフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、シンジオタクチックポリスチレン及びポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物からなる樹脂層と汎用ポリスチレンであるアタクチックポリスチレンを含む組成物からなる中間層とを備え、特定の物性値を有する多層二軸延伸フィルムを用いることにより、上記課題が達成されることを見出した。
すなわち本発明は以下を含むものである。
1.A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、前記B層はアタクチックポリスチレンを含み、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である低複屈折性フィルム。
2.B層がアタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンとを含み、前記B層中のアタクチックポリスチレンの含有量が60〜90質量%である、1に記載の低複屈折性フィルム。
3.A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物Iから形成され、前記B層はアタクチックポリスチレンを含む樹脂組成物IIから形成され、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物IIIから形成され、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である、低複屈折性フィルム。
4.前記樹脂組成物IIがアタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンとの混合物を含み、前記樹脂組成物II中のアタクチックポリスチレンの含有量が60〜90質量%である、3に記載の低複屈折性フィルム。
5.A層/B層/C層の厚さの比が1/8/1〜2/1/2である、1〜4のいずれかに記載の低複屈折性フィルム。
6.シンジオタクチックポリスチレンがスチレン単独重合体またはスチレンおよびp−メチルスチレンの共重合体である、1〜5のいずれかに記載の低複屈折性フィルム。
7.45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物Iと、アタクチックポリスチレンを含む樹脂組成物IIと、45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物IIIとを溶融共押出後、冷却し、続いて二軸延伸する、3〜6のいずれかに記載の低複屈折性フィルムの製造方法。
8.1〜6のいずれかに記載の低複屈折性フィルムを有する光学用フィルム。
すなわち本発明は以下を含むものである。
1.A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、前記B層はアタクチックポリスチレンを含み、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である低複屈折性フィルム。
2.B層がアタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンとを含み、前記B層中のアタクチックポリスチレンの含有量が60〜90質量%である、1に記載の低複屈折性フィルム。
3.A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物Iから形成され、前記B層はアタクチックポリスチレンを含む樹脂組成物IIから形成され、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物IIIから形成され、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である、低複屈折性フィルム。
4.前記樹脂組成物IIがアタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンとの混合物を含み、前記樹脂組成物II中のアタクチックポリスチレンの含有量が60〜90質量%である、3に記載の低複屈折性フィルム。
5.A層/B層/C層の厚さの比が1/8/1〜2/1/2である、1〜4のいずれかに記載の低複屈折性フィルム。
6.シンジオタクチックポリスチレンがスチレン単独重合体またはスチレンおよびp−メチルスチレンの共重合体である、1〜5のいずれかに記載の低複屈折性フィルム。
7.45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物Iと、アタクチックポリスチレンを含む樹脂組成物IIと、45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物IIIとを溶融共押出後、冷却し、続いて二軸延伸する、3〜6のいずれかに記載の低複屈折性フィルムの製造方法。
8.1〜6のいずれかに記載の低複屈折性フィルムを有する光学用フィルム。
本発明の多層二軸延伸フィルムは、従来の延伸フィルムと比べて、面方向及び厚み方向の複屈折を大きく低減することができる。
以下、本発明の低複屈折性フィルムを図面を参考にしながら説明する。図1は本発明の低複屈折性フィルムの一態様を示す斜視図であり、後述する方向nx、ny、nzを記載している。図2は、図1のフィルムの断面図である。ここで、本発明の複屈折性フィルムというときは、本発明の第一の低複屈折性フィルムと、後述する本発明の第二の低複屈折性フィルムの双方を意味する。
本発明の第一の低複屈折性フィルムは、図2に示すようにA層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下であることを特徴とする。
本発明の第一の低複屈折性フィルムは、図2に示すようにA層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下であることを特徴とする。
[A層]
上記A層は、45〜96質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%のシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))、及び55〜4質量%、好ましくは55〜10質量%、より好ましくは55〜15質量%のポリフェニレンエーテル(PPE)を含む。SPSの質量分率が96質量%を超え、PPEの質量分率が4質量%未満であると、延伸フィルムの複屈折を低減させることが困難である。また、SPSの質量分率が45質量%未満であり、PPEの質量分率が55質量%を超えると、フィルムの耐溶剤性等が不十分となり、光学保護フィルムとして用いられる場合に耐溶剤性が不十分であり、液状接着剤等の浸食による透明性の低下等の問題を生じることがある。
上記A層は、45〜96質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%のシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))、及び55〜4質量%、好ましくは55〜10質量%、より好ましくは55〜15質量%のポリフェニレンエーテル(PPE)を含む。SPSの質量分率が96質量%を超え、PPEの質量分率が4質量%未満であると、延伸フィルムの複屈折を低減させることが困難である。また、SPSの質量分率が45質量%未満であり、PPEの質量分率が55質量%を超えると、フィルムの耐溶剤性等が不十分となり、光学保護フィルムとして用いられる場合に耐溶剤性が不十分であり、液状接着剤等の浸食による透明性の低下等の問題を生じることがある。
(1)シンジオタクチックポリスチレン(SPS)
SPSにおけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、その立体規則性(タクティシティー)は同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個のモノマー単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明に言うSPSとは、通常は75%以上、好ましくは85%以上のラセミダイアッド、又は30%以上、好ましくは50%以上のラセミペンダットのシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体及びこれらの混合物、またはこれらを主成分とする共重合体を指す。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(tert−ブチルスチレン)などが挙げられる。ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)が、ポリ(ビニルスチレン)としては、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などが挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などが挙げられる。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)など、またポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、及びポリ(エトキシスチレン)などが挙げられる。
SPSにおけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、その立体規則性(タクティシティー)は同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個のモノマー単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明に言うSPSとは、通常は75%以上、好ましくは85%以上のラセミダイアッド、又は30%以上、好ましくは50%以上のラセミペンダットのシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体及びこれらの混合物、またはこれらを主成分とする共重合体を指す。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(tert−ブチルスチレン)などが挙げられる。ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)が、ポリ(ビニルスチレン)としては、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などが挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などが挙げられる。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)など、またポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、及びポリ(エトキシスチレン)などが挙げられる。
なお、これらのうちより好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(ジビニルベンゼン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
このようなSPSは、例えば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下で、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62―187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
更に、スチレン系共重合体におけるコモノマーとしては、上述の如きスチレン系重合体のモノマーのほか、エチレン,プロピレン,ブテン,ヘキセン,オクテン等のオレフィンモノマー、ブタジエン,イソプレン等のジエンモノマー、環状ジエンモノマーやメタクリル酸メチル,無水マレイン酸,アクリロニトリル等の極性ビニルモノマー等を挙げることができる。特に、スチレン繰返し単位が80〜100モル%,p−メチルスチレン繰返し単位が0〜20モル%からなるスチレン系重合体が好ましく用いられる。
本発明において、SPSの重量平均分子量は150,000〜300,000であることが好ましい。上記範囲であれば、成膜時の加工性が良好となる。また、本発明におけるSPSは、スチレンのみからなる重合体、又はスチレンとp−メチルスチレンとからなる共重合体が好ましく、成膜時の加工性の面からスチレンとp−メチルスチレンとからなる共重合体がより好ましい。
(2)ポリフェニレンエーテル(PPE)
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、通常、銅アミン錯体、一種または二種以上の二置換もしくは三置換フェノ−ルの存在下で、ホモポリマ−またはコポリマ−を生成する酸化カップリング反応によって調製される。ここで、銅アミン錯体は第一、第二及びまたは第三アミンから誘導される銅アミン錯体を使用できる。ポリフェニレンエ−テルの例としては、ポリ(2,3−ジメチル−6−エチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−クロロメチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−(4’−メチルフェニル)−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−ブロモ−6−フェニル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−6−エチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−6−メチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエ−テル)等が挙げられる。例えば上記ホモポリマーの調製に使用されるようなフェノ−ル化合物の二種またはそれ以上から誘導される共重合体などの共重合体も適切である。また、これらを無水マレイン酸、フマル酸等をはじめとする変性剤で変性したものも好適に用いられる。
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、通常、銅アミン錯体、一種または二種以上の二置換もしくは三置換フェノ−ルの存在下で、ホモポリマ−またはコポリマ−を生成する酸化カップリング反応によって調製される。ここで、銅アミン錯体は第一、第二及びまたは第三アミンから誘導される銅アミン錯体を使用できる。ポリフェニレンエ−テルの例としては、ポリ(2,3−ジメチル−6−エチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−クロロメチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−(4’−メチルフェニル)−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−ブロモ−6−フェニル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−6−エチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−クロロ−6−メチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエ−テル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエ−テル)等が挙げられる。例えば上記ホモポリマーの調製に使用されるようなフェノ−ル化合物の二種またはそれ以上から誘導される共重合体などの共重合体も適切である。また、これらを無水マレイン酸、フマル酸等をはじめとする変性剤で変性したものも好適に用いられる。
A層には、本発明の目的を阻害しない限り、以下に挙げるような各種添加剤を配合してもよい。
(i)アンチブロッキング剤(AB剤)
アンチブロッキング剤としては、下記のような無機粒子又は有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIII族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩並びにそれらの含水化合物,それらを主として含む複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
具体的には、フッ化リチウム、ホウ砂(ホウ酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物、二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等のVIA族元素化合物、塩化マンガン、酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト等のVIII族元素化合物、ヨウ化第一銅等のIB族元素化合物、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ,カオリン,カオリナイト)等のIIIB族元素化合物、酸化珪素(シリカ,シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等のIVB族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ,キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。ここで、用いる無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmのものが好ましい。
有機粒子としては、テフロン(登録商標)、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂及びそれらの架橋体が挙げられる。なお、上記のような無機又は有機のAB剤は、一種のみを単独または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
アンチブロッキング剤としては、下記のような無機粒子又は有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIII族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩並びにそれらの含水化合物,それらを主として含む複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
具体的には、フッ化リチウム、ホウ砂(ホウ酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物、二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等のVIA族元素化合物、塩化マンガン、酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト等のVIII族元素化合物、ヨウ化第一銅等のIB族元素化合物、酸化亜鉛、酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ,カオリン,カオリナイト)等のIIIB族元素化合物、酸化珪素(シリカ,シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等のIVB族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ,キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。ここで、用いる無機粒子の平均粒径は0.1〜10μmのものが好ましい。
有機粒子としては、テフロン(登録商標)、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂及びそれらの架橋体が挙げられる。なお、上記のような無機又は有機のAB剤は、一種のみを単独または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ii)酸化防止剤
酸化防止剤としてはリン系、フェノール系、イオウ系等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。さらには、2−〔1−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕なども好適に使用される。
酸化防止剤としてはリン系、フェノール系、イオウ系等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの酸化防止剤は一種のみを単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。さらには、2−〔1−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕なども好適に使用される。
(iii)核剤
SPSの結晶化を促進し、より耐溶剤性を高めるために核剤を添加することができる。核剤としてはアルミニウムジ(p−tert−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等の公知のものから任意に選択して用いることができる。
SPSの結晶化を促進し、より耐溶剤性を高めるために核剤を添加することができる。核剤としてはアルミニウムジ(p−tert−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等の公知のものから任意に選択して用いることができる。
(iv)可塑剤
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの可塑剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの可塑剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(v)離型剤
離型剤としては、ポリエチレンワックス,シリコーンオイル,長鎖カルボン酸,長鎖カルボン酸金属塩等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの離型剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
離型剤としては、ポリエチレンワックス,シリコーンオイル,長鎖カルボン酸,長鎖カルボン酸金属塩等公知のものから任意に選択して用いることができる。なお、これらの離型剤は一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(vi)プロセスオイル
本発明においては、伸度の向上のために、40℃での動粘度が15〜600mm2/sであるプロセスオイルを配合することが好ましい。プロセスオイルは、油種により、パラフィン系オイル,ナフテン系オイル,アロマ系オイルに大別されるが、この中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。プロセスオイルの粘度としては、40℃での動粘度が15〜600mm2/sが好ましく、15〜500mm2/sがより好ましい。プロセスオイルの動粘度が15mm2/s未満では伸度向上効果があるものの、沸点が低くSPSとの溶融混練、及び成形時に白煙、ガス焼け、ロール付着等の発生原因になる。また動粘度が600mm2/sを超えると、白煙ガス焼け等は抑制されるものの、伸度向上効果に乏しい。なおこれらのプロセスオイルは一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、伸度の向上のために、40℃での動粘度が15〜600mm2/sであるプロセスオイルを配合することが好ましい。プロセスオイルは、油種により、パラフィン系オイル,ナフテン系オイル,アロマ系オイルに大別されるが、この中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。プロセスオイルの粘度としては、40℃での動粘度が15〜600mm2/sが好ましく、15〜500mm2/sがより好ましい。プロセスオイルの動粘度が15mm2/s未満では伸度向上効果があるものの、沸点が低くSPSとの溶融混練、及び成形時に白煙、ガス焼け、ロール付着等の発生原因になる。また動粘度が600mm2/sを超えると、白煙ガス焼け等は抑制されるものの、伸度向上効果に乏しい。なおこれらのプロセスオイルは一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の各種添加剤の添加量は、樹脂組成物Iに、必要に応じて、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1.5質量%の範囲で配合すればよい。また、上記の各種添加剤は、使用する重合体を用いてマスターバッチを作製して添加することもできる。
[B層]
前記B層は、汎用ポリスチレン(GPPS)を主成分として含み、SPSを含んでもよい。
B層中のGPPSの割合は、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%である。GPPSが60質量%よりも少ないと積層後の透明性が悪化したり、SPSを含む表層樹脂層との密着性が不十分となり、熱加工時に層間剥離が生ずることがある。
本発明で用いるGPPSは、工業的には塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの方法によるラジカル重合で得られるスチレン系重合体である。このようなラジカル重合で得られたポリスチレンは、通常アタクチック構造のもので立体規則性を有していない。また、ここで言うアタクチック構造のポリスチレン(アタクチックポリスチレン)は、一種類以上の芳香族ビニル化合物からなる重合体、あるいは一種類以上の芳香族ビニル化合物と共重合可能な一種類以上の他のビニル単量体の共重合体、これらの重合体の水素化重合体及びこれらの混合物であってもよい。但し、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は除かれる。HIPSに含まれるゴム成分はフィルムの透明性を損なうためである。
前記B層は、汎用ポリスチレン(GPPS)を主成分として含み、SPSを含んでもよい。
B層中のGPPSの割合は、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%である。GPPSが60質量%よりも少ないと積層後の透明性が悪化したり、SPSを含む表層樹脂層との密着性が不十分となり、熱加工時に層間剥離が生ずることがある。
本発明で用いるGPPSは、工業的には塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの方法によるラジカル重合で得られるスチレン系重合体である。このようなラジカル重合で得られたポリスチレンは、通常アタクチック構造のもので立体規則性を有していない。また、ここで言うアタクチック構造のポリスチレン(アタクチックポリスチレン)は、一種類以上の芳香族ビニル化合物からなる重合体、あるいは一種類以上の芳香族ビニル化合物と共重合可能な一種類以上の他のビニル単量体の共重合体、これらの重合体の水素化重合体及びこれらの混合物であってもよい。但し、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は除かれる。HIPSに含まれるゴム成分はフィルムの透明性を損なうためである。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、フェニルスチレン、ビニルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン等があり、これらは一種または二種以上で使用される。これらのうち、好ましい芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンが挙げられる。
共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクロロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド等のマレイミド化合物等がある。
本発明で用いるGPPSは、重量平均分子量が好ましくは220,000以上である。重量平均分子量が220,000未満では共押出時に幅方向に層比分布ムラが発生する。
また、B層には、本発明の目的を阻害しない範囲で各種添加剤を配合してもよい。これらの具体例は、A層に記載したものを用いることができる。その配合割合についても同様である。
[C層]
C層は、45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む。C層におけるシンジオタクチックポリスチレンとポリフェニレンエーテルの割合の好ましい範囲とその理由、具体的記載はA層と同様である。本発明の目的を阻害しない限り、添加しても良い添加剤も同様である。
C層は、45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む。C層におけるシンジオタクチックポリスチレンとポリフェニレンエーテルの割合の好ましい範囲とその理由、具体的記載はA層と同様である。本発明の目的を阻害しない限り、添加しても良い添加剤も同様である。
本発明の第一の低複屈折性フィルムはA層/B層/C層の構成を有する。ここで、A層とC層は、同一であってもよいが、上記の範囲内で互いに異なってもよい。上記低複屈折性フィルムの厚みは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは20〜190μmである。10μm未満であるとフィルム強度が不足し、200μmを越えると強度が高く引き裂きにくくなり、不経済でもある。A層/B層/C層の厚さの比率は、好ましくは1/8/1〜2/1/2であり、より好ましくは1/8/1〜3/4/3であり、さらに好ましくは2/6/2〜2/1/2である。A層及びC層が相対的に薄すぎると、低複屈折性フィルムの力学強度に問題が生じやすく、A層及びC層が相対的に厚すぎると、複屈折が上昇しやすい。
なお、本発明の第一の低複屈折性フィルムは、|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下であるという要件を満たす場合には、A層/B層/C層のそれぞれの間に他の層が適宜介在していてもよい。
なお、本発明の第一の低複屈折性フィルムは、|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下であるという要件を満たす場合には、A層/B層/C層のそれぞれの間に他の層が適宜介在していてもよい。
本発明の第一の低複屈折性フィルムは、従来用いられている種々の方法により製造することができる。なお、以下に述べる本発明の第二の低複屈折性フィルムの製造方法と同様の方法により製造することができることはいうまでもない。
本発明の第二の低複屈折性フィルムは、A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、A層は樹脂組成物Iから形成され、B層は樹脂組成物IIから形成され、C層は樹脂組成物IIIから形成され、厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である。
以下、本発明の第二の低複屈折性フィルムについて、本発明の第一の低複屈折性フィルムと同様の記載は省略し、異なる事項のみ説明する。
A層を形成する樹脂組成物Iは、45〜96質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%のシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))、及び55〜4質量%、好ましくは55〜10質量%、より好ましくは55〜15質量%のポリフェニレンエーテル(PPE)を含む。
B層を形成する樹脂組成物IIは、汎用ポリスチレン(GPPS)を主成分として含み、SPSを含んでもよい。樹脂組成物IIのGPPSの割合は、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%である。
C層を形成する樹脂組成物IIIは、45〜96質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%のシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))、及び55〜4質量%、好ましくは55〜10質量%、より好ましくは55〜15質量%のポリフェニレンエーテル(PPE)を含む。
本発明の第二の低複屈折性フィルムは、樹脂組成物Iと樹脂組成物IIと樹脂組成物IIIとを250〜300℃で溶融共押出する方法を用いることにより効率よく製造することができる。共押出方式は、特に制限はないが、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式のいずれでもよく、ダイスはコートハンガーダイ、T−ダイ、円環ダイなどを用いることができる。
本発明の第二の低複屈折性フィルムは、A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、A層は樹脂組成物Iから形成され、B層は樹脂組成物IIから形成され、C層は樹脂組成物IIIから形成され、厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である。
以下、本発明の第二の低複屈折性フィルムについて、本発明の第一の低複屈折性フィルムと同様の記載は省略し、異なる事項のみ説明する。
A層を形成する樹脂組成物Iは、45〜96質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%のシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))、及び55〜4質量%、好ましくは55〜10質量%、より好ましくは55〜15質量%のポリフェニレンエーテル(PPE)を含む。
B層を形成する樹脂組成物IIは、汎用ポリスチレン(GPPS)を主成分として含み、SPSを含んでもよい。樹脂組成物IIのGPPSの割合は、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%である。
C層を形成する樹脂組成物IIIは、45〜96質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%のシンジオタクチック構造を有するポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン(SPS))、及び55〜4質量%、好ましくは55〜10質量%、より好ましくは55〜15質量%のポリフェニレンエーテル(PPE)を含む。
本発明の第二の低複屈折性フィルムは、樹脂組成物Iと樹脂組成物IIと樹脂組成物IIIとを250〜300℃で溶融共押出する方法を用いることにより効率よく製造することができる。共押出方式は、特に制限はないが、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式のいずれでもよく、ダイスはコートハンガーダイ、T−ダイ、円環ダイなどを用いることができる。
溶融共押出後、冷却し、二軸延伸することで表層樹脂層中のSPSの結晶化度を向上させるとともに、透明性を発現させることができる。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸法又は逐次二軸延伸法を用いる。また、その場合の面積延伸倍率は3〜20倍が好ましく、5〜15倍がより好ましい。二軸延伸温度は、40〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。なお二軸延伸後、熱処理を行うことが好ましく、緊張下において、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜240℃で、好ましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒行えばよい。以上の方法により接着剤を用いることなく、層間密着性に優れ、透明性がより高い低複屈折性フィルムを製造することができる。なお、上記以外の方法として、それぞれ単体フィルムを作製した後、接着剤を用いて積層させてもよい。当該低複屈折性フィルムは、層の厚さ比の分布が良好であるため、力学的物性が幅方向で均質で、かつ界面荒れなどがない。
本発明の低複屈折性フィルムは、延伸法で製造されたフィルムが光学用フィルムとして用いられる場合に課題となる複屈折が低減されるという利点を有する。一般的に光学用フィルムの製造法として用いられるキャスティング法と比べて、延伸法はその生産速度等に優れるものである。また、本発明の低複屈折性フィルムは耐溶剤性にも優れ、他の層をさらに積層させる場合にも有利である。光学用フィルムの一例として、本発明の低複屈折性フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)から形成される偏光子の偏光子保護フィルムとして使用できる。
液晶表示装置には、ガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面に、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いた偏光子保護フィルムを接着剤により貼りあわせたものが用いられている。しかしながら、TACは耐湿熱性が十分でなく、TACを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を高温または高湿下において使用すると、偏光度や色相等の偏光板の性能が低下するという欠点がある。そこで、TACに代わる偏光子保護フィルムの材料として透明性の高い熱可塑性樹脂が検討されている。
本発明の低複屈折性フィルムは、複屈折が低く、またA層/B層/C層の構成、すなわちSPS層がGPPS層の外側に配置される構成を有することから耐熱性にも優れる。また、本発明の低複屈折性フィルムは耐溶剤性が高いため、PVAとの接着に用いる接着剤やコーティング剤等の浸食による透明性の低下等の問題を生じることもない。
また、本発明の低複屈折性フィルムは必要に応じてハードコート層や接着層等他の目的に応じた層を積層させた光学用フィルムとしても有用である。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
実施例1
出光興産(株)製シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS、商品名ザレック)のグレード60ZC(SPS1、メルトインデックス(MI):6、融点270℃)と三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリフェニレンエーテル(PPE)のグレードPX−100L(PPE1)を質量分率で95/5質量%、さらに、このSPS/PPE混合物を100質量部としてフェノール系酸化防止剤Irganox1010(BASFジャパン(株)製)、リン系酸化防止剤PEP36((株)ADEKA製)をそれぞれ0.3質量部添加し、二軸混練機にて300℃で溶融混練しA層及びC層用ブレンド材料SPS−aを得た。
PSジャパン(株)製アタクチックポリスチレン樹脂のグレードG9305にIrganox1010とPEP36を0.3質量部添加したものをGPPS1とした。
上記A層及びC層用樹脂組成物(SPS−a)およびB層用樹脂組成物(GPPS1)をそれぞれ75mmφ、50mmφの単軸押出機に投入した後、フィードブロックにより層比がA/B/C=2/6/2となるようにT−ダイより押出し、60℃に設定したキャストロールにより厚み580μmの延伸用原反を得た。この原反を延伸温度120℃に設定した同時二軸延伸機を用いてMD、TDそれぞれが3.4倍となるように二軸延伸した後、220℃の熱風で熱処理を行い50μmの二軸延伸フィルムを得た。
この延伸フィルムを大塚電子(株)のレタデーション評価装置RETS−100を用いてレタデーション測定を行い、MD、TDおよび厚み方向の屈折率を算出した。算出した各屈折率より面内の複屈折ΔNp(=|Nx−Ny|)および厚み方向の複屈折ΔNt(=|(Nx+Ny)/2−Nz|)を計算した。ここで先に定義した通り、Nxは厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率、Nyは方向nxに直交する方向nyの屈折率、Nzは厚み方向nzの屈折率である。
またこのフィルム表面にバーコーターを用いてメチルエチルケトン(MEK)を20μm厚となるように塗工し、外観変化を観察した。
出光興産(株)製シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS、商品名ザレック)のグレード60ZC(SPS1、メルトインデックス(MI):6、融点270℃)と三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリフェニレンエーテル(PPE)のグレードPX−100L(PPE1)を質量分率で95/5質量%、さらに、このSPS/PPE混合物を100質量部としてフェノール系酸化防止剤Irganox1010(BASFジャパン(株)製)、リン系酸化防止剤PEP36((株)ADEKA製)をそれぞれ0.3質量部添加し、二軸混練機にて300℃で溶融混練しA層及びC層用ブレンド材料SPS−aを得た。
PSジャパン(株)製アタクチックポリスチレン樹脂のグレードG9305にIrganox1010とPEP36を0.3質量部添加したものをGPPS1とした。
上記A層及びC層用樹脂組成物(SPS−a)およびB層用樹脂組成物(GPPS1)をそれぞれ75mmφ、50mmφの単軸押出機に投入した後、フィードブロックにより層比がA/B/C=2/6/2となるようにT−ダイより押出し、60℃に設定したキャストロールにより厚み580μmの延伸用原反を得た。この原反を延伸温度120℃に設定した同時二軸延伸機を用いてMD、TDそれぞれが3.4倍となるように二軸延伸した後、220℃の熱風で熱処理を行い50μmの二軸延伸フィルムを得た。
この延伸フィルムを大塚電子(株)のレタデーション評価装置RETS−100を用いてレタデーション測定を行い、MD、TDおよび厚み方向の屈折率を算出した。算出した各屈折率より面内の複屈折ΔNp(=|Nx−Ny|)および厚み方向の複屈折ΔNt(=|(Nx+Ny)/2−Nz|)を計算した。ここで先に定義した通り、Nxは厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率、Nyは方向nxに直交する方向nyの屈折率、Nzは厚み方向nzの屈折率である。
またこのフィルム表面にバーコーターを用いてメチルエチルケトン(MEK)を20μm厚となるように塗工し、外観変化を観察した。
実施例2
A層及びC層用樹脂組成物してSPS1およびPPE1を70/30質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−bを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−bとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャストし、延伸温度を140℃として二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
A層及びC層用樹脂組成物してSPS1およびPPE1を70/30質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−bを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−bとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャストし、延伸温度を140℃として二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
実施例3
A層及びC層用樹脂組成物としてSPS1およびPPE1を50/50質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−cを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−cとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャストし、延伸温度を160℃として二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
A層及びC層用樹脂組成物としてSPS1およびPPE1を50/50質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−cを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−cとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャストし、延伸温度を160℃として二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
実施例4
A層及びC層用樹脂組成物として用いられるSPSとして出光興産(株)製シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS、商品名ザレック)のグレード62ZE(SPS2、MI:6、融点250℃)を用い、SPS2およびPPE1を70/30質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−dを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−dとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例2と同様に溶融押出、キャストし、MD、TDそれぞれが3.4倍となるように二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
A層及びC層用樹脂組成物として用いられるSPSとして出光興産(株)製シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS、商品名ザレック)のグレード62ZE(SPS2、MI:6、融点250℃)を用い、SPS2およびPPE1を70/30質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−dを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−dとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例2と同様に溶融押出、キャストし、MD、TDそれぞれが3.4倍となるように二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
実施例5
A層、B層及びC層の厚さの比をA/B/C=1/8/1とした以外は実施例1と同様に延伸フィルムを作製し、同様な評価を実施した。
A層、B層及びC層の厚さの比をA/B/C=1/8/1とした以外は実施例1と同様に延伸フィルムを作製し、同様な評価を実施した。
比較例1
SPS1に酸化防止剤を実施例1と同様に添加したもの単体および単層で、実施例1と同様に溶融押出、二軸延伸を行い延伸フィルムを作製した。本延伸フィルムに対し実施例1と同様に評価を行った。
SPS1に酸化防止剤を実施例1と同様に添加したもの単体および単層で、実施例1と同様に溶融押出、二軸延伸を行い延伸フィルムを作製した。本延伸フィルムに対し実施例1と同様に評価を行った。
比較例2
SPS2を用いた以外は比較例1と同様に延伸フィルムを作製し、評価を行った。
SPS2を用いた以外は比較例1と同様に延伸フィルムを作製し、評価を行った。
比較例3
SPS−aのみを単層で、実施例1と同様に溶融押出、二軸延伸を行い延伸フィルムを作製した。本延伸フィルムに対し実施例1と同様に評価を行った。
比較例4
A層及びC層用樹脂組成物としてSPS1およびPPE1を97/3質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−eを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−eとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャスト、二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
SPS−aのみを単層で、実施例1と同様に溶融押出、二軸延伸を行い延伸フィルムを作製した。本延伸フィルムに対し実施例1と同様に評価を行った。
比較例4
A層及びC層用樹脂組成物としてSPS1およびPPE1を97/3質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−eを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−eとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャスト、二軸延伸を行い延伸フィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
比較例5
A層及びC層用樹脂組成物としてSPS1およびPPE1を40/60質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−fを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−fとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャストし、延伸温度170℃で二軸延伸を行ったが、熱処理温度220℃ではフィルムが破断したため、熱処理温度180℃まで下げてフィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
A層及びC層用樹脂組成物としてSPS1およびPPE1を40/60質量%の割合でブレンドしたものに、実施例1と同様に酸化防止剤を加えて溶融混練しSPS−fを得た。このA層及びC層用樹脂組成物SPS−fとB層用樹脂組成物GPPS1を実施例1と同様に溶融押出、キャストし、延伸温度170℃で二軸延伸を行ったが、熱処理温度220℃ではフィルムが破断したため、熱処理温度180℃まで下げてフィルムを得た。
このフィルムについて実施例1と同様に複屈折評価と耐溶剤性評価を行った。
実施例1〜5の評価結果を表1に、比較例1〜5の評価結果を表2に示した。
表1、表2から分かるように、本発明の低複屈折性フィルムは、複屈折が低減され、耐溶剤性に問題のないフィルムである。
1…A層、2…B層、3…C層
Claims (8)
- A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、前記B層はアタクチックポリスチレンを含み、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含み、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である、低複屈折性フィルム。
- B層がアタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンとを含み、前記B層中のアタクチックポリスチレンの含有量が60〜90質量%である、請求項1に記載の低複屈折性フィルム。
- A層/B層/C層を有する多層二軸延伸フィルムであり、前記A層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物Iから形成され、前記B層はアタクチックポリスチレンを含む樹脂組成物IIから形成され、前記C層は45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物IIIから形成され、ここで厚み方向に垂直なフィルム面内の最大屈折率を与える方向nxの屈折率をNx、厚み方向に垂直なフィルム面内の前記方向nxに直交する方向nyの屈折率をNy、さらに厚み方向nzの屈折率をNzとした際に、NxとNyとの差の絶対値|Nx−Ny|が0.05以下であり、かつ屈折率Nx及びNyの平均値と、厚み方向nzの屈折率Nzとの差の絶対値|(Nx+Ny)/2−Nz|が0.05以下である、低複屈折性フィルム。
- 前記樹脂組成物IIがアタクチックポリスチレンとシンジオタクチックポリスチレンとの混合物を含み、前記樹脂組成物II中のアタクチックポリスチレンの含有量が60〜90質量%である、請求項3に記載の低複屈折性フィルム。
- A層/B層/C層の厚さの比が1/8/1〜2/1/2である、請求項1〜4のいずれかに記載の低複屈折性フィルム。
- シンジオタクチックポリスチレンがスチレン単独重合体またはスチレンおよびp−メチルスチレンの共重合体である、請求項1〜5のいずれかに記載の低複屈折性フィルム。
- 45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物Iと、アタクチックポリスチレンを含む樹脂組成物IIと、45〜96質量%のシンジオタクチックポリスチレン及び55〜4質量%のポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物IIIとを溶融共押出後、冷却し、続いて二軸延伸する、請求項3〜6のいずれかに記載の低複屈折性フィルムの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の低複屈折性フィルムを有する光学用フィルム。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013243369A JP2015102698A (ja) | 2013-11-25 | 2013-11-25 | 低複屈折性フィルム及びその製造方法、光学用フィルム |
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JP2013243369A Pending JP2015102698A (ja) | 2013-11-25 | 2013-11-25 | 低複屈折性フィルム及びその製造方法、光学用フィルム |
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