JP2015100968A - 粘稠性を有する内容物を収容するための包装容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粘稠性を有する内容物を収納するためのプラスチック製包装容器であって、内容物と接触する面に液層5が形成されており、中間層として、液層5からの液体の浸透拡散を防止するための液拡散防止層1と、酸素バリア性樹脂層3とが設けられており、液拡散防止層1は、酸素バリア性樹脂層3に比して内面側に位置していると共に、液拡散防止層1及び酸素バリア性樹脂層3は、何れもエチレン−ビニルアルコール共重合体を含有していることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
即ち、これらは、何れも内容物と非混和性の液体による液層を形成することにより内容物に対する滑り性を従来公知のものに比して格段に向上させることに成功したものであり、容器を倒立或いは傾倒せしめることにより、容器内壁に付着・残存させることなく、内容物を速やかに容器外に排出することが可能となっている。
このように表面に液層を形成した構造の成形体は、容器の形態に限らず、フィルム等の形態を有する成形体にも適用できるものであり、液体の種類を適宜選択することにより、表面の性質を大幅に改質することができる。
このような問題が解決された多層構造容器として、本出願人は先に、プラスチック製下地層の表面に液層を有していると共に、前記下地層の下側には、前記液層を形成する液体の拡散を抑制もしくは遮断する液拡散防止層が設けられている多層構造容器を提案した(特開2013−109059号)。かかる多層構造容器では、十分な酸素バリア性が得られないという問題があった。即ち、上記の液拡散防止層は、酸素バリア性樹脂として代表的なエチレン−ビニルアルコール共重合体により形成することができるため、本来、十分な酸素バリア性を確保することができるのであるが、本発明者等が行った実験によると、内面に液層が形成されている態様では、容器内に水分を含む内容物を充填した場合、酸素バリア性が著しく低下してしまっていることが判った。
内容物と接触する面に液層が形成されており、
中間層として、前記液層からの液体の浸透拡散を防止するための液拡散防止層と、酸素バリア性樹脂層とが設けられており、
前記液拡散防止層は、前記酸素バリア性樹脂層に比して内面側に位置していると共に、該液拡散防止層及び酸素バリア性樹脂層は、何れもエチレン−ビニルアルコール共重合体を含有していることを特徴とするプラスチック製包装容器が提供される。
(1)前記液拡散防止層と酸素バリア性樹脂層との間隔をd1、容器の全体厚みをDとしたとき、d1/Dの比が30乃至70%であること、
(2)前記液拡散防止層と酸素バリア性樹脂層との間に、ポリオレフィン系樹脂層が形成されていること、
(3)前記液拡散防止層の厚みは、前記酸素バリア性樹脂層の厚みの50〜300%の範囲にあること、
(4)前記液層が、0.2〜10g/m2の量で形成されていること、
(5)前記液層を支持している内面下地層が、該液層を形成している液体を含んでいること、
が好ましい。
本発明の包装容器の層構造の一例を示す図1を参照して、全体として20で示す容器壁は、液拡散防止層1及び酸素バリア層3を中間層として有しており、酸素バリア層3は、液拡散防止層1の外面側に位置していると共に、この容器壁20の内表面には、液層5が形成されている。
さらに、この層構造においては、液層5は、下地層7上に形成されており、液層5と液拡散防止層1との間に下地層7が存在するようになっている。また、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間には、中間介在層9が存在しており、酸素バリア層3の外側には所定の容器基材樹脂からなる外面層11が設けられている。
液拡散防止層1は、液層5を形成する液体の浸透・拡散を遮断するものであり、このような層を形成することにより、液層5により付与される表面特性が長期間にわたって安定に維持されることとなる。
即ち、液層5は、種々の手段によって形成されるが(この手段については後述する)、どのような手段により液層5が形成されていたとしても、液層5を形成する液体が下地層7を通って容器壁20の内部に浸透・拡散してしまう。即ち、一定の量の液体で液層5が形成されていたとしても、該液体が容器壁20の内部に徐々に移行していくため、その液量が経時と共に減少し、この結果、液層5により付与される表面特性が経時と共に失われていくこととなる。しかるに、本発明では、液拡散防止層1の存在により、液層5からの液の浸透拡散が遮断されるため、液層5の液量減少が有効に抑制され、表面特性の経時的損失を回避することが可能となる。
酸素バリア層3は、酸素の容器内への透過を遮断し、これにより内容物の酸化劣化を防止するというものである。
このような酸素バリア層3は、酸素バリア性樹脂の中でも特に優れた酸素バリア性を示すエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)から形成される。このEVOHは、前述した液拡散防止層1の形成に使用されるEVOHと同じである。例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適に使用される。
容器壁20の内表面に形成される液層5は、この容器内容物の種類に応じて滑り性や撥水性が付与されるように、適宜の液体により形成されるが、当然のことながら、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体により液層5が形成されることとなる。揮発性液体により液層5が形成されていると、使用形態によっても異なるが、この液層5が容易に揮散して経時と共に消失し、或いは液層5を形成することが困難となってしまうからである。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
式中、
θは、前記容器壁20の内表面での水接触角であり、
θAは、前記液層5を形成する液体上での水接触角であり、
θBは、液層5を支持する層(後述する下地層7)を形成するプラスチック単体上
での水接触角である、
で算出される液層の被覆率Fが0.5以上、好ましくは0.6以上となるように形成されるべきである。即ち、容器壁20の内表面での水接触角θと液層5上での水の接触角水θAが同じである場合には、被覆率Fは1.0であり、下地層7の全体が液層5で覆われていることになる。
例えば、被覆率Fが上記範囲よりも小さいと、液量が多量にあっても、表面に液体が点在するような形態で液層5が形成され、十分な表面特性を発揮することが困難となってしまう。
cosθ=FAcosθA+FBcosθB
=FAcosθA+(1−FA)cosθB
式中、
A成分の割合はFA、B成分の割合はFB、FA+FB=1
A成分単体上での接触角はθA、B成分単体上での接触角はθBである。
上述した液層5を支持する下地層7は、液拡散防止層1の内面側に隣接しており、表面に形成される液層5が脱落しないように保持するための層である。即ち、液拡散防止層1の上に直接液層5を形成してしまうと、液層5を形成する液体が浸透しないため、液層5の脱落を生じ易くなってしまい、一定の被覆率で液層5を安定に形成することが困難となってしまう。このため、下地層7を設け、この上に液層5を形成することが望ましい。
τ−1=(γa/ρg)1/2
式中、γaは、液体と気体(空気)との間の界面張力であり、
ρは液体の密度であり、
gは重力加速度である。
即ち、毛管長(τ−1)以下の範囲内においては重力に比べ、毛管現象(毛管力)が支配的となる。この毛管長は、上記式から理解されるように、下地層7の材質にかかわらず、液によって一定であり、例えば、水では約2.7mmである。従って、例えば、液浸透性の凹凸面とするためには、凹部の内径を毛管長(τ−1)以下に設定すればよい。この毛管長は、液層5を形成する液体の種類によって異なるが、多くの液体で1mmを超える範囲にあるので、1mm以下の内径を有する凹部を下地層7の表面全体にわたって分布しておけばよい。この場合、凹部の深さやピッチ及び凹部の密度(単位面積当りの凹部の数)などは、液層5を形成する液体の種類によっても異なるが、通常、液層5を形成している液体の量が0.2乃至50g/m2、好ましくは0.2乃至30g/m2、さらに好ましくは0.5至30g/m2、格段に好ましくは0.5乃至10g/m2の範囲に維持されるように設定しておけばよい。
特に、下地層7を形成した後、液体の噴霧や塗布等により液層5を形成する場合には、上記のような凹凸面の形成は特に効果的である。
中間介在層9は、液拡散防止層1と酸素バリア層3との間に設けられるものであり、酸素バリア層3をできるだけ容器壁20の内面(或いは液拡散防止層1)から引き離すことにより、水分によるEVOHの酸素バリア性の低下をより一層効果的に抑制するためのものである。
即ち、この中間介在層9の厚みは、前述した液拡散防止層1と酸素バリア層3との間隔d1に相当する。従って、この厚みは、先の説明から理解されるように、容器の全体厚みDに対し、厚み比d1/Dが、30%以上、特に35乃至70%の範囲にあることが望ましい。
さらに、この中間介在層9は、それ自体公知の酸素吸収性樹脂層を含む多層構造となっていてもよい。この酸素吸収性樹脂層は、酸素バリア性を補足するものであり、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。このような酸素吸収性樹脂層は、中間介在層9の厚みd2の25%以下の厚みを有しており、この酸素吸収性樹脂層と前述したリグラインドの層とにより中間介在層9が形成されていることが、コストと酸素バリア性との点でさらに好適である。
外面層11は、この容器の形態や用途に応じて、そのような容器を形成するための各種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンイソフタレート或いはこれらの共重合体などのポリエステル、前述した下地層7の形成にも使用されるオレフィン系樹脂が代表的であり、粘稠な内容物が収容され、このような内容物を排出するという容器の特性を考慮すると、オレフィン系樹脂が最適である。
本発明の包装容器は、前述した各層を基本層として有する多層構造により容器壁20が形成されるが、前述した液拡散防止層1や酸素バリア層3の隣接する層に対する接着性を向上し、デラミネーションを防止するという観点から、これらの層1,3の両側には、それぞれ、接着樹脂層(接着層)を設けることが望ましい。即ち、これらの層1,3の形成に使用されるエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、他の熱可塑性樹脂(例えばオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂など)に対する接着性が乏しい。従って、接着樹脂層を設けることにより、層間接着性を高め、デラミネーションを防止することができる。特に、液拡散防止層1や酸素バリア層3がEVOH単独で形成されている場合には、接着樹脂層を設けることが必要である。
また、この包装容器がフィルムを貼り合せた袋状の形態を有するような場合には、接着剤樹脂として、例えば、ドライラミネーション用やアンカーコート用、プライマー用として一般に用いられるものも使用することもできる。例えばそれ自体公知である、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、イソシアネート樹脂などを用いることができる。これら接着剤樹脂は単独で使用してもよいし、また必要に応じ、ブレンドしてもよい。また、基材との密着や濡れが確保できる限り、水系と溶剤系のどちらでも使用できる。また上記成分の他に、接着剤としての性能を損なわない限り、それ自体公知である、硬化促進触媒、充填剤、軟化剤、老化防止剤、シランカップリング剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂などが配合されていてもよい。
本発明の包装容器は、液層5を保持している下地層7の下側に液拡散防止層1が設けられているため、このような液層5の経時的消失が有効に防止されており、液層5を形成し、大気圧下に保持しての液層持続試験を行ったとき、下記式(2):
ΔF=100×(F0−F1)/F0 (2)
式中、
F0は、試験開始から1日後の液層5の被覆率Fであり、
F1は、試験開始から14日経過後での液層5の被覆率Fである、
で表される被覆低下率ΔFが40%以下、特に20%以下、さらに10%以下に抑制されている。即ち、液層5を形成した直後は勿論のこと、液層5を形成してから長期間経過後に上記の液層持続試験を行った場合にも上記のように抑制された被覆低下率ΔFを示す。
従って、本発明では、長期間にわたって液層5により表面特性を安定に発揮させることが可能となり、後述する各種の粘稠な内容物に対する滑り性が長期間にわたって維持され、このような内容物を速やかに排出することができる。
例えば、容器の形態は特に制限されず、カップ乃至コップ状、ボトル状、袋状(パウチ)、シリンジ状、ツボ状、トレイ状等、容器材質に応じた形態を有していてよく、延伸成形されていてもよい。
このような容器は、前述した各層を含む層構造の前成形体をそれ自体公知の方法により成形し、これを、ヒートシールによるフィルムの貼り付け、プラグアシスト成形等の真空成形、ブロー成形などの後加工に付して容器の形態とし、さらに、その形態に応じて、液層5を形成する液体を、スプレー噴霧、浸漬等の手段で内面の下地層7の表面に施すことにより、液層5を内面に備えた多層構造の容器の形態とすることができる。
勿論、下地層7を形成する樹脂に液層5を形成する液体が内添されているのであれば、液体を施す作業は省略することができる。また、ブロー容器にあっては、ブローと同時に液体を供給することにより、下地層7の表面(容器の内面)全体にわたってムラなく液層5の薄膜を形成することもできる。
例えば、ケチャップ、各種ソース類、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液などは、水分を含む親水性物質であり、液層5を形成する液体としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、食用油などの食品添加物として認可されている油性液体が好適に使用される。
さらには、上述した内容物の酸化劣化も有効に防止することができる。
尚、以下の実験例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び包装容器(ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
後述の方法で成形した包装容器(ボトル)の底から50mmの位置での胴部水平断面における層構成を偏光顕微鏡にて観察し、各層の厚みを求めた。断面に対し、0°、90°、180°、270°の位置での構成を観察し、4方向での平均値を容器の層構成とした。得られた値から、全体厚みDに対する、液拡散防止層(A)と酸素バリア性樹脂層(B)との間隔d1の比(d1/D)、ならびに、酸素バリア性樹脂層(B)に対する液拡散防止層(A)の厚み比を算出した。
後述の方法で成形した包装容器(ボトル)の酸素透過度を評価するため、ボトル内に蒸留水2mLを入れ、初期酸素濃度を0.06%以下とした窒素雰囲気下で、ポリエチレン(内層)/アルミ箔/ポリエステル(外層)からなる蓋材でヒートシールして密封し、30℃−80%RHで14日間保存した。14日後のこの容器内の酸素濃度をガスクロマトグラフィー(GC−14A、(株)島津製作所製)を用いて測定した。容器内の酸素濃度が小さい程、酸素バリア性が優れている。
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)を用いて、容器内面に形成された液層を、液層と混和性の溶剤(ヘプタン)30mLで回収し、エバポレーターを用いて濃縮した後、残留物を蒸発皿へ移し取り、液層成分の重さを求めた。得られた重さを容器内面の面積で除し、ボトル内面における液層被覆量(g/m2)とした。この値が小さい程、容器内面には薄い液層が形成されている。
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)の胴部から10mm×60mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、3μLの純水を試験片にのせ、水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、容器壁内面での液層の被覆率Fを求めた。
F=(cosθ−cosθB)/(cosθA−cosθB) (1)
式中、θは、ボトル内表面での水接触角であり、
θAは、液層を形成する液体上での水接触角であり、
θBは、ボトル内面下地層を形成するプラスチック単体上での水接触角であ
る。
液層の被覆率Fを求めるにあたり、θAとθBの値として、下記水接触角の値を用いた。
θB:100.1°
(高圧法低密度ポリエチレン(MFR=0.3)単体での値)
θA:80.3°
(中鎖脂肪酸トリグリセライド(液体)上での値)
なお、液層被覆率Fが0の場合は、液層が全く形成されていないことを示し、1の場合は、樹脂が表面に露出せずに完全に液体で被覆されていることを示している。
液層の性能を最大限発揮するためには、液層被覆率Fは1に近いことが望ましい。
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)を22℃60%RH(大気圧下)で所定の期間保管した。所定の時間経過した容器を用いて前述の液層の被覆率の測定を行った。
特に、1日後、および14日後における液層の被覆率Fから、下記式(2)より被覆低下率ΔFを求めた。
ΔF=100×(F0−F1)/F0 (2)
式中、
F0は、試験開始から1日後の前記液層の被覆率Fであり、
F1は、試験開始から14日経過後での前記液層の被覆率Fである。
ここで、被覆低下率ΔFが小さいものほど、液層の持続性が高い。
後述の方法で作製した包装容器(ボトル)の胴部から20mmx70mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、70mgの粘稠性を有する内容物を試験片にのせ、45°の傾斜角における滑落挙動をカメラで撮影し、滑落挙動を解析し、移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。この滑落速度を滑落性の指標とした。前記滑落速度の値が大きい程、粘稠性を有する内容物の滑落性が優れている。用いた内容物は下記の通りである。なお、内容物の粘度として、音叉型振動式粘度系SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値も共に示す。
用いた粘稠性を有する内容物;
キユーピーハーフ(キユーピー(株)製、粘度=1260mPa・s)
お好みソース(オタフクソース(株)製、粘度=560mPa・s)
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力;28.8mN/m (23℃)
粘度;33.8mPa・s (23℃)
沸点;210℃以上
引火点;242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm3
<液拡散防止層形成用樹脂>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度;1.20g/cm3
Tg=60℃
エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物
(EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)から
なる組成物)
<接着剤層形成用樹脂>
無水酸変性ポリエチレン
<酸素バリア性層形成用樹脂>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
密度1.20g/cm3
Tg=60℃
エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物
(EVOH/POブレンド、EVOH/変性ポリオレフィン=7/3(重量比)から
なる組成物)
<ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂>
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm3
<外面層形成用樹脂>
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm3
内面下地層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着剤層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、酸素バリア層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、液拡散防止層と酸素バリア層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、さらに、包装容器の最内面樹脂層を被覆するための液層形成用材料として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をポンプにて供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成(樹脂層の構成)を上述の方法で測定した。層構成、および各層厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(24)/接着層(3)/液拡散防止層(4)/接着層(2)/ポリオ
レフィン系樹脂層(50)/接着層(3)/酸素バリア層(4)/接着層(2)/
外面層(8)
全体厚み;510μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
内面下地層形成用樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)の重量比が95/5からなる樹脂組成物、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、液拡散防止層と酸素バリア層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(23)/接着層(3)/液拡散防止層(4)/接着層(2)/ポリオ
レフィン系樹脂層(48)/接着層(3)/酸素バリア層(6)/接着層(3)/
外面層(8)
全体厚み;515μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
各層の構成比を変更した以外は実験例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(15)/接着層(3)/液拡散防止層(6)/接着層(2)/ポリオ
レフィン系樹脂層(62)/接着層(2)/酸素バリア層(3)/接着層(1)/
外面層(6)
全体厚み;550μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
液拡散防止層形成用樹脂をエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)に変更し、各層の構成比を変更した以外は実験例1と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(34)/接着層(3)/液拡散防止層(10)/接着層(3)/ポリ
オレフィン系樹脂層(31)/接着層(3)/酸素バリア層(4)/接着層(4)
/外面層(8)
全体厚み;585μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
内面下地層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンのブレンド物(EVOH/POブレンド)、液拡散防止層と酸素バリア性層の間に存在するポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、さらに、包装容器の最内面樹脂層を被覆するための液層形成用材料として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をポンプにて供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(26)/液拡散防止層(10)/ポリオレフィン系樹脂層(52)/
酸素バリア層(8)/外面層(4)
全体厚み;520μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
各層の構成比を変更した以外は実験例5と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(27)/液拡散防止層(6)/ポリオレフィン系樹脂層(58)/酸
素バリア層(4)/外面層(5)
全体厚み;510μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
各層の構成比を変更した以外は実験例5と同様に多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(21)/液拡散防止層(6)/ポリオレフィン系樹脂層(14)/酸
素バリア層(5)/外面層(54)
全体厚み;535μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
内面下地層形成用樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)の重量比が97/3からなる樹脂組成物、液拡散防止層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(15)/接着層(2)/液拡散防止層(5)/接着層(2)/外面層
(76)
全体厚み;420μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
内面下地層形成用樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)と中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)の重量比が97/3からなる樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、接着層形成用樹脂として無水酸変性ポリエチレン、酸素バリア性層形成用樹脂としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、外面層形成用樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)、のペレットをそれぞれ押出機に供給し、温度210℃の多層ダイヘッドにより溶融パリソンを押出、金型温度22℃にて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量20gの多層ボトルを作製した。このボトルの層構成、および各層の厚みの比は下記の通りである。
層構成;
内面下地層(15)/ポリオレフィン系樹脂層(60)/接着層(2)/酸素バリ
ア層(5)/接着層(3)/外面層(15)
全体厚み;400μm
ここで、括弧内の値は、全体の厚みに対する各層の厚み比(%)である。
作製したボトルを用い、酸素透過度測定、液層被覆量の測定、液層持続試験、滑落速度測定を行った。結果をまとめて表1に示す。
また、液層持続試験の結果から、液拡散防止層を設けた実験例1から8においては、14日後の被覆率が0.6以上、かつ、被覆低下率ΔFが20%以下であることが分かる。一方、液拡散防止層を設けない実験例9においては、試験1日後の段階で被覆率が0.34と急激に低下していることが分かる。
さらに、酸素透過度測定の結果から、酸素バリア性樹脂層を設けない実験例8では酸素濃度が1%以上と非常に高く、酸素バリア性が非常に悪いのに対し、酸素バリア性樹脂層を設けた実験例1から7および9では、酸素濃度が1%未満とバリア性が改善されていることが分かる。この中でも、容器の全体厚みDに対する、酸素バリア性樹脂層と液拡散防止層との間隔d1との比d1/Dが30%以上である実験例1から6においては、酸素濃度が0.4%以下と非常に良好な値を示していることが確認できる。
これらのことから、液層を表面に形成し、液拡散防止層を酸素バリア性樹脂層よりも内面側に配置することで、粘稠性内容物の滑落性に優れ、かつ液層の持続性を長期にわたり保てるとともに、高い酸素バリア性を包装容器に同時に付与できることが分かる。
3:酸素バリア層
5:液層
7:下地層
9:中間介在層
11:外面層
Claims (6)
- 粘稠性を有する内容物を収納するためのプラスチック製包装容器であって、
内容物と接触する面に液層が形成されており、
中間層として、前記液層からの液体の浸透拡散を防止するための液拡散防止層と、酸素バリア性樹脂層とが設けられており、
前記液拡散防止層は、前記酸素バリア性樹脂層に比して内面側に位置していると共に、該液拡散防止層及び酸素バリア性樹脂層は、何れもエチレン−ビニルアルコール共重合体を含有していることを特徴とするプラスチック製包装容器。 - 前記液拡散防止層と酸素バリア性樹脂層との間隔をd1、容器の全体厚みをDとしたとき、d1/Dの比が30乃至70%である請求項1に記載のプラスチック製包装容器。
- 前記液拡散防止層と酸素バリア性樹脂層との間に、ポリオレフィン系樹脂層が形成されている請求項1または2に記載のプラスチック製包装容器。
- 前記液拡散防止層の厚みは、前記酸素バリア性樹脂層の厚みの50〜300%の範囲にある請求項1〜3に記載のプラスチック製包装容器。
- 前記液層が、0.2〜10g/m2の量で形成されている請求項1〜4の何れかに記載のプラスチック製包装容器。
- 前記液層を支持している内面下地層が、該液層を形成している液体を含んでいる請求項1〜5の何れかに記載のプラスチック製包装容器。
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