JP2015089617A - 印面形成装置および印面形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材及び印面材を着脱可能に保持する保持体を有する印面材ホルダの印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体と、発熱体の発熱状態を制御する駆動回路と、が設けられ、印面材ホルダに保持された印面材を押圧しながら印面材に印面を形成する印面形成部と、駆動回路に印加する通電信号を補正して、印面材の発熱体配列方向における長さが小さいものほど、発熱体の発熱量を減らすように、印面形成部の駆動回路を制御する制御部とを有する。
【選択図】図10
Description
加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材及び該印面材を着脱可能に保持する保持体を有する印面材ホルダの前記印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体と、該発熱体の発熱状態を制御する駆動回路と、が設けられ、前記印面材ホルダに保持された印面材を押圧しながら前記印面材に印面を形成する印面形成部と、
前記駆動回路に印加する通電信号を補正して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど、前記発熱体の発熱するドット単位の発熱量を減らすように、前記印面形成部の前記駆動回路を制御する制御部と
を有する。
加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材を着脱可能に保持する印面材ホルダを、前記印面材に熱を加えて印面を形成する印面形成部に対して、相対的に移動させつつ、前記印面材ホルダの前記印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体および該発熱体の発熱状態を制御する駆動回路により前記印面材に印面を形成する際に、前記駆動回路に印加する通電信号を補正して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど、前記発熱体の発熱するドット単位の発熱量を減らすように、前記印面形成部の前記駆動回路を制御する印面形成工程
を有する。
とりわけ、印面材の幅、すなわち発熱体の配列方向についての印面材の長さの違いに関わらず、カスレや潰れのない印面を形成することができる。
以下、本発明の実施形態を説明するにあたって、重要な概念・用語の定義を与える。
印面形成装置は、印面材に対して所望の像を形成する装置である。本発明にあっては、いわゆるサーマルプリンタを用いることができる。サーマルプリンタは、サーマルヘッドを有し、複数の発熱体及びそれらを駆動する駆動回路(ドライバ)により、個々の発熱体を選択的に加熱することができる。また、サーマルヘッドは、その近傍に温度センサ(サーミスタ)を有し、環境温度(主にサーマルヘッドの発熱に起因して上昇する温度)を測定し、後述する制御部に環境温度の情報を与え、制御部は、それに基づいて駆動回路を制御する。
印面材は、液状のインクを含浸可能な多孔質のスポンジ体からなり加熱により非多孔質化する熱可塑性の部材である。例えば、多孔質エチレン酢酸ビニル・コポリマー(EVA)を用いることができる。
印面材ホルダは、印面材に対して所望の像を形成すべく印面形成装置に通すために用いる治具である。例えば、印面材を印面材ホルダに保持した状態のものが印面形成装置のユーザに供給される。本明細書にあっては、便宜上、印面材ホルダは、印面材と、それを保持する保持体とを有するものとする。
保持体は、例えば、コートボールからなる厚板紙により構成される。印面形成後、印面材ホルダから印面材を取り出した後は、廃棄される部材である。
印刷(サーマルプリンタによる印刷)は、インクを用いる印刷ではなくて、画像データに応じて、サーマルヘッドの発熱体が選択的に加熱されることにより、印面材の表面を所定の大きさ(サーマルヘッドの発熱体の大きさ)のドットごとに、非多孔質化するか、しないかの処理をすることを意味する。
通電信号は、サーマルヘッドの駆動回路に与える信号であり、サーマルヘッドを発熱させる電力を印加する信号である。
通電テーブルは、通電時間を設定するために制御部が参照するテーブルであり、例えば、サーマルヘッドの近傍に設けられたサーミスタにより測定される環境温度に対応付けて、サーマルヘッドに通電すべき通電時間の長さを決定するために用いられる。
印字データは、印面を形成しようとするユーザが所望する印面を印面材の上に形成するためのデータである。サーマルヘッドによる印刷が、インクの通過を禁止する処理であることに留意すると、印字データは、ユーザが作った印面により押印する印影から見ると、白黒反転および左右反転した画像データである。
搬送部は、印面材ホルダを搬送する機構部分であり、例えばプラテンローラとそれを動かすステッピングモータにより構成することができる。
制御部とは、印面形成装置の制御部(CPU)をいう。印面形成装置の制御部は、有線通信(USB(登録商標))又は無線通信(Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、WLAN(登録商標)など)により、パソコン(PC)、スマートフォン、タブレットコンピュータなどと接続されて、連携して機能することができる。
印面材保持は、印面材が印面材ホルダに保持された状態でユーザに供給される場合には、印面材ホルダを製造する工場においてなされる。
印面形成工程は、印面形成装置のユーザが印面材ホルダを用いて印面形成を実行する際になされる工程である。
本発明の課題は、上述したように印面材を印面材ホルダに保持した状態で印面形成をする印面形成装置、印面形成方法を提供することである。そして、とりわけその場合に、印面材の幅の違いによる加熱量の制御についてのものである。
以下、本発明に係る印面形成装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印面形成装置を印面材ホルダとともに示す概略斜視図である。ここで、図1(a)は、本実施形態に係る印面形成装置の外観斜視図であり、図1(b)は、そのX−Z面(搬送方向を含む鉛直面)における断面構造を示す斜視断面図である。図2は、本実施形態に係る印面形成装置の印面材ホルダの排出口周辺の構造を示す概略図である。ここで、図2(a)は、図1(b)に示したIIA部(本明細書においては、図1(b)中に示したローマ数字の「2」に対応する記号として便宜的に「II」を用い、ローマ数字の「5」に対応する記号として便宜的に「V」を用いる。以下、同様。)における断面構造を示す要部断面図である。図2(b)は、排出口を含む印面製版装置の外観を示す正面図である。図3は、本実施形態に係る印面形成装置に適用される印面形成部の要部を示す斜視図である。図4は、本実施形態に係る印面形成装置に適用される印面形成部の要部構成の平面図及び断面図である。図4(a)は、印面形成部の平面図であり、図4(b)は、そのX−Z面(搬送方向を含む鉛直面)における断面構造を示す概略断面図である。
次に、本実施形態に係るプリンタ1の機能構成、すなわち制御部(CPU)によって制御されて機能する機能構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る印面形成装置(プリンタ1)のシステム構成のブロック図である。
図5に示すように、プリンタ1は、中央制御回路2を備え、中央制御回路2には、センサ3、サーマルヘッド4、電源回路5、モータードライバ8、表示画面制御回路47、メモリ制御回路48、UI(ユーザインターフェイス)制御回路49、USB制御回路40、Bluetooth(登録商標)モジュール・無線LANモジュール41を有している。
また、モータードライバ8にはステッピングモータ9が接続され、表示画面制御回路47には表示デバイス43が接続され、USB制御回路40には、PC(パーソナルコンピュータ)44が接続されている。
なお、センサ3は、本例の場合、反射型光学センサで構成されており、印面材ホルダに設けられた切欠の検出を行う。中央制御回路2は、センサ3からの信号を検出することで、印字開始位置やメディアサイズなどの検出・通電制御を行う。
また、表示デバイス43、表示画面制御回路47、UI制御回路49、USB通信制御回路(USB通信制御回路)40、又はBluetooth(登録商標)モジュール・無線LANモジュール41等は、必ずしも全てが必要な訳ではない。
メモリ制御回路48は、ROM(read only memory)やRAM(Random Access Memory)等のデバイスを含み、それらの制御を行っている。表示デバイス43は、例えばLCD(liquid crystal display)等の表示装置を指し、表示画像制御回路47では、表示デバイス43へのデータ転送等やバックライトの点灯、消灯等の制御をしている。
また、さまざまな機能を実現するために必要なコンピュータプログラムは、ROM等に格納されており、必要に応じてRAMに書き込まれて参照され、利用される。この印面形成装置は、パソコン(又はスマートフォン)側にドライバソフトおよびアプリケーションプログラムをインストールし、USB接続などにより連携して動作するものである。したがって、印面形成装置内のコンピュータプログラムと、パソコンなどの外部機器にインストールされたコンピュータプログラムとが連携してさまざまな機能を実現する。
UI(ユーザインターフェイス)制御回路49は、キーボードやマウス、リモコンやボタン、タッチパネル等の入力デバイスからユーザがパソコンなどを介して、又は本印面形成装置(プリンタ)に設けた入力装置を介して入力した情報をもとに、メニュー画面表示等の制御を行う。電源回路5は、電源IC(integrated circuit)等からなり、各回路に必要な電源を作り出して供給する。
なお、本システムの構成例では、中央制御回路2から他の回路が受け取るのはデータと信号のみであり、印刷に必要な電力は電源回路5から得ている。因みに、本例の装置では、サーマルヘッド4は、200dpi、すなわち200ドット/25.4mmの解像度(1dot当たり0.125mmの解像度)で48mmの有効印字幅を有している。
モータードライバ8は、ステッピングモータ9を駆動する駆動回路であり、中央制御回路2から出力される信号を受け取り、駆動用のパルス信号及び電力をステッピングモータ9に供給する。なお、中央制御回路2から受け取るのは励磁信号のみで、実際の駆動電力は電源回路5から得ている。
本実施形態におけるプリンタ1は、1−2相励磁駆動を採用しており、ギア比は1ライン(0.125mm)当たり16ステップとなるように構成されている。すなわち、1ステップで、0.0078mmの搬送を行う。
なお、制御部2におけるプラテンローラ12による搬送距離の算出を、パルス数に基づいて行わずに他の方法を用いても良い。例えば、プラテンローラ12の回転数をロータリーエンコーダにより検出し、検出された回転数に基づいてプラテンローラ12による搬送距離を算出しても良い。
次に、プリンタ1により印面を形成(製版)する印面材ホルダ20について、図6及び図7を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態に係るプリンタにより印面が形成される印面材ホルダの一例を示す概略図である。図6(a)は、印面材ホルダ20の印面形成側(印面材21を保持する側)を示す平面図である。図6(b)は、図6(a)に示したVIB−VIB線(本明細書においては図6(a)中に示したローマ数字の「6」に対応する記号として便宜的に「VI」を用いる。)に沿った断面構造を示す概略断面図である。図6(c)は、図6(b)に示したVIC部における断面構造を示す要部断面図である。図7は、印面を形成した印面材を貼り付けた押し印の一例を示す概略図である。図7(a)は、印面材側から見た押し印の斜視図であり、図7(b)は、印面材側を底面とした時(押し印として使用する際に紙などに置く時)の押し印の側面図である。
印面材21は、実際に印面となる主面21aを有する。印面材21は、液状のインクを含浸可能な多孔質のスポンジ体、例えば、多孔質エチレン酢酸ビニル・コポリマー(以下、「EVA」と記す。)で構成され、押圧により変形可能となっている。EVAは無数の気泡を有しており、この気泡の中にインクを含浸する。
印面材ホルダ20のうち、保持体22とフイルム24とは、印面材21の印面形成時に用いられる治具であり、印面形成の終了後には印面材21と分離されて廃棄(又は再利用)される。保持体22は、図6(b)、(c)に示すように、コートボールからなる上部厚板紙22cと下部厚板紙22dとを貼り合わせて構成されている。また、図6(a)に示すように、保持体22の一方の側部(図面右方)に切欠22aが形成されている。ここで、保持体22は、センサ3からの光を高い反射率で反射させるために、その表面が例えば、白色に形成されている。
次に、印面材21に印面を形成する原理について説明する。
印面材21は、EVAで構成されている。EVAは熱可塑性の物性を有するので、例えば70℃〜120℃の熱で加熱すると、熱を加えた箇所は軟化し、一度軟化した箇所は冷えると硬化する。そして、硬化した箇所は気泡部分が埋まり非多孔質化され、その部分はインクを通さなくなる。
本実施形態に係るプリンタ1は、この印面材21(EVA)の特性を利用して、サーマルヘッドでEVAの表面の任意の箇所を約1msecから5msec程度加熱することにより、EVAの表面の任意の箇所を非多孔質化させて、その部分のインクの通過を禁止する。なお、印面材21は、熱裁断機によって予め方形に裁断されている。このため、印面材21の4つの側面(端面)は、いずれも裁断の際に加えられた熱によって非多孔質化されており、インクを通過させない。なお、印面材21の裏面21bも加熱処理が施されており、インクを通過させない。これによって、印面となる主面21a以外の面からインクが滲み出ることを防止している。
次に、本実施形態に係るプリンタ1において、所望の印面を形成する印面形成動作について説明する。なお、以下に示す各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で制御部2(さらに詳しく言えば、ROM)に格納されており、このプログラムコードにしたがった動作が逐次実行される。なお、図5のシステムブロック図に示されるように、この印面形成装置(プリンタ1)は、通常はパソコンやスマートフォンなどと連携して動作するものである。ここでは、煩雑な説明となるのを防ぐべく、プリンタ1内における動作に限定して説明する。
プリンタ1の印面形成動作においては、まず、制御部2は、入力操作部6が押圧され、入力操作部6からプリンタ1を起動する信号が入力されると、プリンタ1のイニシャル動作を実行する。プリンタ1のイニシャル動作においては、制御部2は、モータードライバ8に駆動信号を送り、ステッピングモータ9を所定時間回転させる。これにより、プラテンローラ12が所定時間回転し、プリンタ1内に印面材ホルダ20が残っていた場合でも、その印面材ホルダ20が排出口10dからプリンタ1外に排出される。
具体的には、制御部2は、入力された画像データに基づいて、印面材ホルダ20の搬送(ステッピングモータ9の回転)と、サーマルヘッド4の複数の発熱体のいずれを発熱されるかと、を連携させながら制御し、印面材21の画像データに応じた位置を選択的に加熱して、インクの透過部分と非透過部分とを画像データに応じて形成することで、印面を形成する。
EVAは1.5mmの厚さを持つ部材であり、高い弾性と摩擦係数を有する。このため、EVAをそのままサーマルプリンタに挿入して搬送を行おうとしても、サーマルヘッドとEVAとの摩擦力が大きく、安定した直進性の搬送を行うことが出来ない。つまり、EVAは摩擦力が大きいことと、ゴムのように柔らかいため、たとえサーマルプリンタ側に直進安定性を得るためのガイドが取り付けられていても、搬送中に少しでも曲がりができると、EVA自体が屈曲してしまい、結果的にすぐに斜行が発生する。
上記のEVAの搬送上の困難は、サーマルヘッドが発熱していない非加熱の状態の場合でも起きる現象であるが、サーマルヘッドが発熱した場合、サーマルヘッドは発熱開始後の数ミリ秒で約200度近くまで温度が上がるため、EVA表面を加熱した瞬間に表面が軟化し、軟化した部分にサーマルヘッドが埋まってしまい、EVAの搬送が全く出来なくなってしまうという現象が生じる。
端面ヘッドを用いる方式や、ヘッドを移動駆動するためにキャリッジを組み込む方式の場合は、上記の問題が起きないが、この方式は、機構の大型化と使用部材のコストの大幅な上昇を招くという不都合がある。
また、印面材21は、上部厚板紙22cの位置決め孔24で位置固定され、下部厚板紙22dにより下面から保持されると共に上面をフイルム24により被覆されているので印面材ホルダ20に保持された状態のままの形を維持し、X方向、Y方向の外力が加わっても変形しない。
したがって、印面材ホルダ20が搬送される通りに印面材21もまた、それにしたがって搬送される。印面材ホルダ20が直進搬送されれば、印面材21もその通りに直進搬送される。また、フイルム24は、印面材21、つまりEVAの溶融点よりも高い温度に耐熱性を有している。
したがって、サーマルヘッド4の発熱で印面材21の表面が溶融してもフイルム24は溶融しない。つまりフイルムとしての被覆性を失うことはない。また、フイルム24は、サーマルヘッド4との摩擦力は極めて低い。
このため、サーマルヘッド4は、フイルム24の被覆性により、溶融して軟化した印面材21の中に埋没することなく、また、フイルム24との間の低摩擦性により、フイルム24の面に沿って容易に発熱印字(印面形成)を続けていくことができる。このようにして印面材21への印面形成が完了する。
このように、印字データを用いてサーマルヘッドでEVA表面を加熱することにより、ユーザ独自の印影を有する印面形成を行うとともに、フイルム24が印面材の形状に沿って、剥がれ易いものとすることができる。印面材を印面形成して出来上がった印面版を印面材ホルダ20から取り出すには、保持体22をミシン目27(図6(a)参照)に沿って折り曲げて、印面材21を引き出すだけでよい。その後、台木52に印面形成後の印面材を貼り付けて、印面を一定時間インクに浸す、あるいはインクの粘性によっては印面に塗り付けて所定時間放置する。それによりインクが印面版の内部に含浸する。ユーザは、印面表面の余剰のインク汚れをふき取る、あるいは何度か試し押しをした後、持ち手51を指で持って、押印対象物に押し付けると、印面から含浸インクが押し出されて印影が押印される。
本発明を適用してサーマルヘッドの加熱対象となるのは、印面材ホルダ20(保持体22に保持された印面材21)である。
すなわち、印面材である多孔質EVAとサーマルヘッドの間にPETフイルムを介在させて、熱可塑したEVAを問題なく搬送させるため、及び、弾性率の低いEVAが印刷中に斜行(あるいは屈曲)してしまうことを防ぐために、コートボールを基材とした保持体22にEVAをセットし、PETフイルムで押さえつけるように封入した構造である(図6(b)、(c)参照)。
しかしながら、印面材としてのEVAは1.0mm以上の厚みを有するため、通常であれば、端面ヘッドを用いてプリンタを構成する必要がある。
というのも、仮に印面材が硬質であった場合、図9(a)に示すように、サーマルヘッドの端面が印面材に突き当たってしまい、サーマルヘッドの発熱体が印面材に触れることが出来ないためである。
通常、この様に厚みのあるメディアに対して印刷を行う場合、サーマルヘッドの端面部分に発熱体のある、いわゆる端面ヘッドを用いる。(たとえば、厚みのあるカードへの印刷など)
しかしながら、端面ヘッドは製造コストが高く、搭載した場合には製品価格が大きく上がってしまう。
そこで、本プリンタでは、多孔質EVAが(ゴムのような)低い弾性率を有するという物理的性質を持つことに着目し、高い押圧で押しつけることで、サーマルヘッド端面をEVAの中に押し込み、結果として発熱体をEVAと接触させ、コスト的に有利な通常のサーマルヘッドでの印刷を可能としている(図9(b))。
本発明に係る印面形成装置で用いる印面材ホルダ20に対する印刷においては、印面材21を構成するEVAの幅によってサーマルヘッドからかかる単位長さ当たりの押圧(以下、単に押圧)が変化する。ここで、印面材21(EVA)の幅とは、サーマルヘッドの主走査方向(サーマルヘッドの発熱体が並ぶ方向)についての幅であり、印面材ホルダ20を印面形成装置に挿入する方向(搬送方向)とは直交する向きについての幅である。
図2(a)、図4(b)、図8などに示したように、本発明に係る印面形成装置では、サーマルヘッド4とプラテンローラ12との間隔Hの調整機構32を設けることにより、サーマルヘッド4が印面材21に対して押圧するようになっている。そして、この間隔Hの調整機構32は、例えば、コイルばねによって実現され得る。そしてこのコイルばねは、印面材21全体に対して押圧する力が一定であると考えられるため、その結果として、印面材21に加わる単位長さ当たりの押圧は、印面材の幅の違いにより変化する。
本発明に係る印面形成装置では、サーマルヘッド4とプラテンローラ12との間隔Hの調整機構32により、押圧力をかけることで印面材(EVA)をつぶし、発熱体とEVAを接触させている。しかしながら、EVAの横幅によって、EVAにかかる押圧(線圧)が変化するという課題が発生する。
例えば、本実施形態における印面形成装置(サーマルプリンタ)は、45mm幅のEVAに対し約408g/cmの押圧がかかるように設計されている。30mm幅のEVAでは、612g/cmとなり、15mm幅のEVAでは1225g/cmに達する。
押圧が変化すると、EVAに対する発熱体の当たり方や熱の伝わり方が変化するため、たとえば30mm幅で設定した加熱量のまま他のEVA幅に加熱を行うと、押圧の高くなる狭い幅のEVAだとドットが潰れ気味に、逆に、押圧の低くなる幅の広いEVAだとカスレ気味になる。押圧が高いと、発熱体が完全にEVAの中に埋まるが、押圧が低いと、表面をなぞる程度しか埋まらないためである。
このときの印面材の潰れ量については、上記の押圧を本実施形態における印面材21(EVA)にかけると、EVA潰れ量は15mm幅で約0.5mm程度(保持体(コートボール)22の部分にヘッドが突き当たるため、0.5mmの潰れ量で止まるが、保持体(コートボール)22により保持されていなければ、もっと潰れる可能性がある)、30mm幅では約0.45mm程度、45mm幅では約0.3mm程度である。
そこで本発明に係る印面形成装置では、印刷時に用いる印面材ホルダ20に保持される印面材21(EVA)の幅の違いをセンサ3で読み取って取得する。つまり、印面材ホルダ20に設けられた切欠22aをセンサ3で読み取ることにより、制御部2は、印面材21の幅についての情報を取得する。そしてその幅についての情報によって加熱量(通電時間の長さ)を変化させることで、上記の課題に対応する。
加熱量の変化について具体的に説明すると、まず45mm幅において、印字カスレなく印刷が出来る通電テーブルを作成する。ここで、通電テーブルとは、主に環境温度の違いに応じて通電時間を設定するためのテーブルである。サーマルヘッド4には、温度センサ(サーミスタ)が設けられており、サーマルヘッド4の発熱に伴い上昇する温度をリアルタイムで測定し、逐一、制御部2に送る。サーマルヘッド4の近傍の温度(環境温度)は、サーマルヘッドの動作状況により大きく変化し得る。例えば、ベタ印刷が連続すると環境温度は常温に比べて著しく上昇する。そこで、一般に、サーマルヘッドを用いるには、その近傍にサーミスタを設けて、環境温度を測定し、逐一、制御部(CPU)に送り、制御部には、通電テーブル(環境温度の違いに対応して通電時間の長さを変化させるための参照テーブル)を備えて、当該通電テーブルを参照して、サーマルヘッドの駆動回路に制御信号を送る。それに基づいて、駆動回路は、通電信号をサーマルヘッドに印加し、発熱体が発熱する。
本発明に係る印面形成装置では、30mm幅では、各ドット(発熱体の単位)において当該通電テーブルに基づく通電時間の長さから約500μsec程度、加熱時間(通電時間)を減少させる。すなわち、500μsecのオフセット値を設ける。
同様に、15mm幅では、各ドットにおいて当該通電テーブルから約1000μsec程度、加熱時間を減少させる。すなわち、1000μsecのオフセット値を設ける。
なお、ここでのオフセット値は計算により理論値を求めることが困難であるため、実験により決定した。また、温度条件によってオフセット値を異なるものとすることもできる。
また、オフセット値を一定値の減算とせずに、通電時間の長さに一定の比率を掛けるものとしてもよい。例えば、45mm幅を100%とするとき、30mm幅に対しては90%とし、15mm幅に対しては85%とする。
なお、ここに掲げた値は、本実施形態に係る印面形成装置における参考値である。設計条件が異なる装置においては、異なる値となる。
ここまでの説明においては、印面材ホルダ20に設けられた切欠22aをセンサ3が読み取って、印面材21の幅(発熱体の配列方向における印面材の長さ)を制御部2が取得して、それを引き金として本発明のオフセットを適用するとしたが、ユーザが印面材21のサイズを指定し、それに基づいて、当該オフセットを適用することとしても良い。
さらに言えば、ユーザが印面形成装置に接続されたパソコンやスマートフォンのアプリケーションソフトを用いて指定した印面材21のサイズ(特に、幅)と、印面形成装置がセンサ3により印面材ホルダ20に設けられた切欠22aを読み取って取得した印面材21のサイズ(特に、幅)とが一致した時にのみ本発明のオフセットを適用して印面形成処理を実行し、一致しない場合は、印面形成処理をしないようにしても良い。これにより、ユーザが指定した印面サイズと挿入した印面材ホルダとが不一致の場合に、印面材ホルダ20(印面材21)を無駄にしなくて済む。
本発明を適応することで、EVA幅により押圧が変化し、発熱体のEVAへの当たり方が変化しても、潰れやカスレのない印面を作成することが可能となる。
すなわち、印面材ホルダを用いて印面形成を行う場合において、EVA幅によって加熱量を変化させる(補正する)ことで、メディア幅変化に伴う押圧の変化を吸収し、メディア幅によらず安定した印刷品位を実現することが可能になった。
加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材及び該印面材を着脱可能に保持する保持体を有する印面材ホルダの前記印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体と、該発熱体の発熱状態を制御する駆動回路と、が設けられ、前記印面材ホルダに保持された印面材を押圧しながら前記印面材に印面を形成する印面形成部と、
前記駆動回路に印加する通電信号を補正して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど、前記発熱体の発熱するドット単位の発熱量を減らすように、前記印面形成部の前記駆動回路を制御する制御部と、
を有する印面形成装置。
前記制御部は、サーマルヘッドへの通電時間を設定するための通電テーブルを有しており、前記補正は、当該通電テーブルで得られた通電時間に対して、前記印面材の前記発熱体配列方向についての長さが小さいものほど大きくオフセットを適用するものであることを特徴とする付記1記載の印面形成装置。
前記オフセットは、所定の長さの時間を減算、又は所定の割合を乗算することによってなされることを特徴とする付記2記載の印面形成装置。
加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材を着脱可能に保持する印面材ホルダを、前記印面材に熱を加えて印面を形成する印面形成部に対して、相対的に移動させつつ、前記印面材ホルダの前記印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体および該発熱体の発熱状態を制御する駆動回路により前記印面材に印面を形成する際に、前記駆動回路に印加する通電信号を補正して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど、前記発熱体の発熱するドット単位の発熱量を減らすように、前記印面形成部の前記駆動回路を制御する印面形成工程、
を有する印面形成方法。
前記制御部は、サーマルヘッドへの通電時間を設定するための通電テーブルを有しており、前記補正は、当該通電テーブルで得られた通電時間に対して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど大きくオフセットを適用するものであることを特徴とする付記4記載の印面形成方法。
前記オフセットは、所定の長さの時間を減算、又は所定の割合を乗算することによってなされることを特徴とする付記5記載の印面形成方法。
2 中央制御回路(制御部)
3 センサ
4 サーマルヘッド
4a 押圧部(発熱体)
4b ドライバIC(駆動回路)
4d ヘッド端面
5 電源回路
6 入力操作部
8 モータードライバ(ステッピングモータ駆動回路)
9 ステッピングモータ
12 プラテンローラ
10c 挿入口
10d 排出口
20 印面材ホルダ
21 印面材
21a 主面
21b 裏面
22 保持体
22a 切欠
22c 上部厚板紙
22d 下部厚板紙
22e 位置決め孔
24 フイルム
25、26 両面粘着シート
27 ミシン目
32 間隔H調整機構
40 USB制御回路
41 Bluetooth(登録商標)モジュール・無線LANモジュール
43 表示デバイス
44 PC(パーソナルコンピュータ)
47 表示画面制御回路
48 メモリ制御回路
49 UI(ユーザインターフェイス)制御回路
50 押し印
51 持ち手
52 台木
53 両面粘着シート
Claims (6)
- 加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材及び該印面材を着脱可能に保持する保持体を有する印面材ホルダの前記印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体と、該発熱体の発熱状態を制御する駆動回路と、が設けられ、前記印面材ホルダに保持された印面材を押圧しながら前記印面材に印面を形成する印面形成部と、
前記駆動回路に印加する通電信号を補正して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど、前記発熱体の発熱するドット単位の発熱量を減らすように、前記印面形成部の前記駆動回路を制御する制御部と、
を有する印面形成装置。 - 前記制御部は、サーマルヘッドへの通電時間を設定するための通電テーブルを有しており、前記補正は、当該通電テーブルで得られた通電時間に対して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど大きくオフセットを適用するものであることを特徴とする請求項1記載の印面形成装置。
- 前記オフセットは、所定の長さの時間を減算、又は所定の割合を乗算することによってなされることを特徴とする請求項2記載の印面形成装置。
- 加熱により非多孔質化可能な多孔質の印面材を着脱可能に保持する印面材ホルダを、前記印面材に熱を加えて印面を形成する印面形成部に対して、相対的に移動させつつ、前記印面材ホルダの前記印面材が保持された面に沿う方向に配列された複数の発熱体および該発熱体の発熱状態を制御する駆動回路により前記印面材に印面を形成する際に、前記駆動回路に印加する通電信号を補正して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど、前記発熱体の発熱するドット単位の発熱量を減らすように、前記印面形成部の前記駆動回路を制御する印面形成工程、
を有する印面形成方法。 - 前記制御部は、サーマルヘッドへの通電時間を設定するための通電テーブルを有しており、前記補正は、当該通電テーブルで得られた通電時間に対して、前記印面材の前記発熱体配列方向における長さが小さいものほど大きくオフセットを適用するものであることを特徴とする請求項4記載の印面形成方法。
- 前記オフセットは、所定の長さの時間を減算、又は所定の割合を乗算することによってなされることを特徴とする請求項5記載の印面形成方法。
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