JP2015081210A - 超電導薄膜作製用ターゲットおよび酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、REBa2Cu3Ox(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末の成形体を焼結してなる焼結体からなり、表面にレーザー光が照射される超電導薄膜作製用ターゲットであって、前記焼結体が前記成形体を焼結した際の収縮率10%未満の焼結体である酸化物超電導薄膜作製用ターゲットに関する。
【選択図】図1
Description
酸化物超電導体の焼結体からなるターゲットは、レーザー光を集光照射した際、極めて短時間に温度上昇が起こり、熱応力が発生するので、ターゲット自身にクラックが生じたり、割れたりする問題がある。
ターゲットの表面にレーザー光を集光照射すると、ターゲットの構成粒子からなるプルームと称される蒸気噴流を発生させることができ、このプルームを基板表面に向けることにより粒子堆積を行い、酸化物超電導体の薄膜を基板上に成長させることができる。
前記事情に鑑み、特許文献1に記載の技術では、結晶粒子にアスペクト比を持たせ、この結晶粒子をターゲット使用面に対し平行に配向させる構造を採用している。
酸化物超電導薄膜製造用のターゲットは、原料となる粉末を圧縮して成形体を得た後、この成形体を高温で焼結することにより製造されている。この高温で焼結する工程において、成形体は収縮するが、この成形体の収縮時にターゲットの内部には微細なクラックや歪などの欠陥が発生していることを知見した。そして、レーザー光をターゲットに集光照射した場合、微細なクラックを含め、欠陥が成長するか結合して大きなクラックを発生させ、ターゲットの割れにつながると考えられる。
焼結した際の収縮率が10%未満の焼結体であるならば、内部に生成しているクラックや歪を含めた欠陥が少ない。このため、レーザー光を集光照射して超電導薄膜を形成し、熱応力を作用させた場合であってもクラックや割れに繋がり難い構造のターゲットを提供できる。
焼結密度が75%以上の焼結体からなるターゲットであるならば、超電導薄膜を成膜する場合の蒸着レートを高いレートにすることが可能となり、必要な膜厚の酸化物超電導薄膜を効率的良く生成することができる。
本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、基材に設けた中間層の上に先のいずれかに記載のターゲットを用いて超電導薄膜を形成することを特徴とする。
先に記載のターゲットを用いて基材の中間層上に超電導薄膜を形成するならば、高いレートで成膜することができ、必要な膜厚の超電導薄膜を備えた酸化物超電導線材を効率良く製造することができる。
本発明に係る酸化物超電導薄膜作製用ターゲットは、パルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いて酸化物超電導薄膜を成膜する際、ターゲットとして用いられるものである。このターゲットは、希土類酸化物超電導焼結体を含み、希土類化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末を混合する混合工程と、混合粉末を仮焼きして仮焼体を得る1回または複数回の仮焼き工程と、仮焼体を粉砕する粉砕工程と、粉砕粉から成形体を形成する成形工程と、この成形体を焼成して焼結体を得る焼結工程とによって製造されたものである。例えば、図1に示すようにターゲット1は円盤状の焼結体からなる。また、図2に焼結前の成形体1Aを示すが、図1に示すターゲット1は図2に示す成形体1Aを焼結して作製される。
なお、ターゲット1は、REBa2Cu3Oxなる組成式で表される焼結体の他、このターゲットを製造する場合に用いた原料としての希土類元素の化合物、Baの化合物、Cuの化合物由来の異相が含有されていても良い。ここで異相とは、母相である目的のREBa2Cu3Oxなる組成式で示される焼結体とは異なる組成比の相、RE1Ba2Cu3Oxの組成比ではないが、REとBaとCuが複合酸化物になっているもの、もしくは、RE、Ba、Cuの個別の酸化物粒子、または、これら元素のうち、2種以上の複合酸化物粒子を意味する。
また、前記ターゲット1を製造する場合、後述するように成形体1Aを高温に加熱して焼結するが、その焼結の際の収縮率が10%未満である必要がある。この規定についてはターゲット1の製造方法と関連付けて後に詳細に説明する。
図3に示す酸化物超電導線材10は、例えばテープ状の金属基材2上に中間層3と酸化物超電導層4と保護層5と金属安定化層6を積層し構成されている。
前記金属基材2は、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)に代表されるニッケル合金やステンレス鋼、あるいは、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金が適用される。
中間層3は、Y2O3、ZrO2−Y2O3(YSZ)、MgO、CeO2等の金属酸化物からなる配向層を含み、例えば、IBAD(Ion-Beam-Assisted Deposition)法で形成することが好ましい。
前記構造の酸化物超電導線材10において、酸化物超電導層4を中間層3の上に成膜する場合に後述するレーザー蒸着法を実施し、このレーザー蒸着法に前述の構成のターゲット1を用いることができる。
[1]混合工程
ターゲットを製造するには、製造目的とする酸化物超電導薄膜の組成に応じた原料粉末を用意する。本実施形態で製造目的とする酸化物超電導薄膜は、REBa2Cu3Oxなる組成比の酸化物超電導薄膜であるので、REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物を原料として用い、これらの原料を用いてターゲットを製造する。
REの化合物、Baの化合物、Cuの化合物として用いるのは、原料の入手しやすさ、コスト等を考慮すると、希土類元素の酸化物粉末、Baの炭酸塩粉末、Cuの酸化物粉末が望ましい。
以下にY2O3粉末と、BaCO3粉末とCuO粉末を使用してターゲットを製造する場合を一例として説明する。
原料としてのY2O3粉末と、BaCO3粉末とCuO粉末をY:Ba:Cuが1:2:3の割合、あるいは、これらの割合に近似した割合となるように秤量して混合し、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。
次に、粉砕混合した粉末を大気中などの酸素含有雰囲気において950〜1000℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする仮焼き工程を行う。次に、得られた仮焼体を、湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合する。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度、例えば、6〜24時間程度行うことができる。その後、粉砕混合した粉末を酸素含有雰囲気において950〜1000℃で数時間〜数10時間程度仮焼きする第2の仮焼き工程を必要に応じて行う。なお、本工程で酸素含有雰囲気とは10〜30%程度の酸素を含む雰囲気あるいは大気中で良い。
[3]粉砕工程
この後、仮焼物を再度湿式ボールミル装置などの混合装置で溶媒を添加しつつ粉砕混合することで粉砕粉を得る。この粉砕混合は数時間〜数10時間程度行なうことができる。
次に、粉砕粉を乾燥した後、篩いを用いて分粒し、成形体に供する粉砕粉を採取する。
ここで、この採取した粉砕粉の粒径が最終的に得られる焼結体の結晶粒径に略対応する。粉砕粉として、粒径2μm〜500μmの粒径のものを用いることができる。あるいは、粒径2〜100μmの粉砕粉を用いることができる。
ここで、成形条件(温度・時間、プレス圧力など)は特に限定されない。また、粉砕粉をバインダーと混合して成形しても良い。
前記粉砕粉を金型に収容して加圧する成形処理を行うと、図2に示す円盤状の成形体1Aを得ることができる。
なお、前記仮焼き工程において、Y2O3粉末と、BaCO3粉末とCuO粉末の集合体を仮焼きする場合、通常の酸化物超電導薄膜形成用ターゲットを製造するための仮焼き条件は、Y系では860〜960℃程度で仮焼きすることが好ましい。Y系以外の他の希土類系酸化物を用いる場合においても、概ね、950〜1000℃の範囲で仮焼きすることが好ましい。
焼結工程は、950〜1000℃で数時間〜数10時間程度、酸素含有雰囲気中で行なうことができ、この焼成工程により図1に示す目的のターゲット1を得ることができる。
なお、成形体1Aとターゲット1が円盤状の場合は焼結前後の外径で規定されるが、矩形板状の成形体1Aとターゲット1を用いる場合の収縮率は、100×(1−(焼結後の一辺の長さ)/焼結前の一辺の長さ)の式から算出される値である。矩形板状の成形体が長方形の場合は長辺と短辺の平均長さとする。
ここで説明したように、成形体1Aから焼結によりターゲット1を製造する場合、焼結時の収縮率を10%未満とするならば、得られたターゲット1の内部に微細なクラック、歪などの欠陥を少なくすることができる。
よって、後述するようにレーザー蒸着法により酸化物超電導層を成膜して酸化物超電導線材を製造する場合、長尺の酸化物超電導線材を製造するために長時間成膜を行ってもターゲット1にクラックを生じ難く、ターゲット1が割れるおそれがない。
レーザー蒸着装置の一例として、図4に示すように、ターゲット1を減圧容器の内部に備え、減圧容器の内部に設けた基材2を供給リール20から巻取リール21にレーンを1つ構成して巻き取るシングルレーン方式のレーザー蒸着装置を挙げることができる。
図2では減圧容器は略しているが、減圧容器の外部に設けたレーザー光源からレーザー光Bをターゲット1に図示略のレンズ系を介して集光照射できるようになっている。また、ターゲット1の上方には基板2を温度調節するためのヒータ装置22が設けられている。
成膜した酸化物超電導薄膜4を被覆するように、必要に応じて保護層5と金属安定化層6を形成することで安定化層付きの酸化物超電導線材を製造することができる。
このため、本実施形態に係るターゲット1を用いて長尺の酸化物超電導線材を製造しても、プルームFの乱れを生じることが無く、酸化物超電導薄膜の均一性に優れ、その膜厚も必要十分な酸化物超電導線材を製造できる。
この混合粉末を乾燥させた後、アルミナ製の焼成容器に入れ、電気炉において大気雰囲気中で仮焼きを行い、YBa2Cu3Oxなる組成の仮焼粉を得た。
得られた仮焼粉末をボールミルにて再度粉砕し、篩を通すことでYBa2Cu3Oxなる組成の混合粉末を得た。
この圧粉成形体を電気炉を用い、大気中において950℃で焼結することによりYBa2Cu3Ox焼結体からなるターゲットを得た。
収縮率は、100×(1−(焼結後のターゲットの直径)/(焼結前の成形体の直径))の式から算出した。焼結密度は、理論密度に対する相対値で表記した。
基板は、ハステロイC−276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mm、長さ100mのテープ状の基板であり、この基板上にスパッタ法によりAl2O3の拡散防止層(膜厚150nm)を形成し、その上にスパッタ法によりY2O3のベッド層(膜厚20nm)を形成した。更に、その上にイオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgOの配向層(膜厚10nm)と、PLD法によりCeO2のキャップ層からなる中間層を形成したテープ状の積層体を用い、この積層体をレーザー蒸着装置に設けた供給リールから巻取リールに移動させている間に上述のターゲットを用いてレーザー蒸着法を実施して酸化物超電導薄膜を形成した。
各ターゲット試料において焼結時の収縮率、焼結密度とレーザー照射による割れの有無の関係、得られた酸化物超電導薄膜の膜厚を調べた。以下の表1に結果を示す。なお、表1において、焼結体外観の欠陥の欄の有無とは、目視可能な大きさのクラックの有無を意味する。
サンプル6は収縮率が13%であり、焼結終了時点において目視で確認できるクラックが見られたため、割れやすくなっていると思われる。収縮率が10.2%のサンプル5は、ターゲット作製時に外観に欠陥は見られなかったものの、レーザー光を照射した際に割れが発生した。このサンプル6は収縮率が大きいために、ターゲット内部に目視できない微細な欠陥が存在し、その欠陥から破壊が進行したと推定できる。
焼結時の収縮率が10%以下のサンプル7、8は、レーザー光の照射による成膜中の割れは生じなかった。
なお、上述の例では950℃において焼結し、製造したターゲットを用いたが、焼結温度については930〜970℃の範囲で変更しても同じ効果を奏するターゲットを得ることができた。
Claims (3)
- REBa2Cu3Ox(REは希土類元素の内から選択される1種以上の元素)で表される希土類酸化物超電導焼結体を含み、RE化合物、Ba化合物、Cu化合物を含む原料粉末の成形体を焼結してなる焼結体からなり、表面にレーザー光が照射される超電導薄膜作製用ターゲットであって、
前記焼結体は前記成形体を焼結した際の収縮率が10%未満であることを特徴とする超電導薄膜作製用ターゲット。 - 前記焼結体の焼結密度が75%以上であることを特徴とする請求項1に記載の超電導薄膜作製用ターゲット。
- 基材に設けた中間層の上に請求項1または請求項2に記載のターゲットを用いて超電導薄膜を形成することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
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