JP2015073485A - 核酸増幅方法、核酸抽出用デバイス、核酸増幅反応用カートリッジ、及び核酸増幅反応用キット - Google Patents
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Abstract
【課題】核酸増幅方法、核酸抽出用デバイス、核酸増幅反応用カートリッジ、及び核酸増幅反応用キットを提供する。【解決手段】核酸を含む試料に、カオトロピック物質を含有する吸着液および微粒子を混合して、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着工程と、前記核酸が吸着した微粒子を第1洗浄液で洗浄する洗浄工程と、前記微粒子に吸着した核酸を、溶出液中に溶出させる溶出工程と、前記溶出液中の核酸に対し、核酸増幅反応を行う核酸増幅工程と、を含む核酸増幅方法であって、前記吸着液がアルコールを含み、第1洗浄液のpHが酸性である、核酸増幅方法とし、この方法を実施できる核酸抽出用デバイス、核酸増幅反応用カートリッジ、及び核酸増幅反応用キットとする。【選択図】図1
Description
本発明は、核酸増幅方法、核酸抽出用デバイス、核酸増幅反応用カートリッジ、及び核酸増幅反応用キットに関する。
近年、遺伝子の利用技術の発展により、遺伝子診断や遺伝子治療など遺伝子を利用した医療が注目されている。また農畜産分野においても品種判別や品種改良に遺伝子を用いた手法が多く開発されている。遺伝子を利用するための技術として、PCR(Polymerase Chain Reaction)などの技術が広く普及している。今日では、PCRは生体物質の情報解明において必要不可欠な技術となっている。PCRは、増幅の対象とする核酸(標的核酸)及び試薬を含む溶液(反応液)に熱サイクルを施すことで、標的核酸を増幅させる手法である。PCRの熱サイクルとしては、2段階又は3段階の温度で熱サイクルを施す手法が一般的である。
一方、医療の現場におけるインフルエンザに代表される感染症の診断は、現状ではイムノクロマト等の簡易検査キットを用いることが主流である。しかしこのような簡易検査では、精度が不十分となる場合があり、より高い検査精度を期待できるPCRを感染症の診断に適用することが望まれている。また、医療機関における一般外来等では、診察の時間が制限される関係から、検査に費やすことのできる時間は短時間に制限される。そのため、例えばインフルエンザの検査は、検査の精度を犠牲にして、簡易的なイムノクロマト等の検査により短時間化して行われているのが現状である。
このような事情から、医療の現場で、より高い精度を期待できるPCRによる検査を実現するためには反応に要する時間を短縮する必要があった。PCRの反応を短時間で行うための装置として、例えば特許文献1には、反応液と、反応液と混和せず反応液よりも比重の小さい液体とが充填された生体試料反応用チップを、水平方向の回転軸の周りに回転させることで、反応液を移動させて熱サイクルを施す生体試料反応装置が開示されている(特許文献1)。また、PCRの一手法として、磁性ビーズを用いた方法(特許文献2)や、磁性ビーズを液滴の移動手段として用い、基板上の温度変化領域での液滴を移動させることによりPCRの熱サイクルを行う方法(特許文献3)等の開示がある。
本発明は、核酸増幅方法、核酸抽出用デバイス、核酸増幅反応用カートリッジ、及び核酸増幅反応用キットを提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係る核酸増幅方法は、核酸を含む試料に、カオトロピック物質を含有する吸着液および微粒子を混合して、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着工程と、前記核酸が吸着した微粒子を第1洗浄液で洗浄する洗浄工程と、前記微粒子に吸着した核酸を、溶出液中に溶出させる溶出工程と、前記溶出液中の核酸に対し、核酸増幅反応を行う核酸増幅工程と、を含む核酸増幅方法であって、前記吸着液がアルコールを含み、第1洗浄液のpHが酸性である、核酸増幅方法である。
本発明の他の実施形態に係る核酸増幅方法は、核酸を含む試料に、カオトロピック物質を含有する吸着液および微粒子を混合して、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着工程と、前記核酸が吸着した微粒子を第2洗浄液で洗浄する洗浄工程と、前記第2洗浄液で洗浄後の前記核酸が吸着した微粒子を第1洗浄液で洗浄する洗浄工程と、前記微粒子に吸着した核酸を、溶出液中に溶出させる溶出工程と、前記核酸を増幅する核酸増幅工程と、を含む核酸増幅方法であって、前記第2洗浄液がアルコールまたはアセトニトリルを含み、第1洗浄液のpHが酸性である、核酸増幅方法である。
上記いずれかの核酸増幅方法において、前記アルコールが、メタノールまたはエタノールであってもよい。また、前記吸着液中のアルコール濃度が40%以上50%以下であってもよい。また、前記核酸がリボ核酸(RNA)であり、前記溶出液中に溶出した前記リボ核酸を逆転写し、cDNAを合成する逆転写工程を含み、核酸増幅工程において増幅する核酸が、合成した前記cDNAであってもよい。また、核酸増幅工程における反応系が、前記溶出液を50%以上含んでもよく、特に核酸増幅工程における反応系が、前記溶出液であってもよい。
本発明の一実施形態に係る核酸抽出用デバイスは、長手方向を有し、オイルからなる第1プラグ、オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、オイルからなる第3プラグ、オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、オイルからなる第5プラグ、を、順に内部に備えたチューブと、前記チューブの前記第1プラグが配置された側に接続及び連通可能で、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む容器と、を有する核酸抽出用デバイスであって、前記吸着液はアルコールを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイスである。
本発明の他の実施形態に係る核酸抽出用デバイスは、長手方向を有し、オイルからなる第1プラグ、オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、オイルからなる第3プラグ、オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、オイルからなる第5プラグ、を、順に内部に備えたチューブと、前記チューブの前記第1プラグが配置された側に連通し、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む液溜部と、を有する核酸抽出用デバイスであって、前記吸着液はアルコールを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイスである。
上記いずれかの核酸抽出用デバイスにおいて、前記アルコールが、メタノールまたはエタノールであってもよい。また、前記吸着液中のアルコール濃度が40%以上50%以下であってもよい。
本発明のさらなる他の実施形態に係る核酸抽出用デバイスは、長手方向を有し、オイルからなる第1プラグ、オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第2洗浄液からなる第6プラグ、オイルからなる第7プラグ、オイルと相分離し、前記第2洗浄液で洗浄した前記核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、オイルからなる第3プラグ、オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、オイルからなる第5プラグ、を、順に内部に備えたチューブと、を有する核酸抽出用デバイスであって、前記第2洗浄液はアルコール、またはアセトニトリルを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイスである。ここで、前記チューブの前記第1プラグが配置された側に接続及び連通可能で、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む容器、を有し、前記吸着液はアルコールを含んでもよいが、あるいは、前記チューブの前記第1プラグが配置された側に連通し、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む液溜部、を有し、前記吸着液はアルコールを含んでもよい。なお、前記第2洗浄液に含まれるアルコールが、メタノール、またはエタノールであってもよく、その濃度が70%以上100%以下であってもよい。
本発明の一実施形態に係る核酸増幅反応用カートリッジは、上記いずれかの核酸抽出用デバイスと、前記チューブの前記第5プラグの配置された側に連通し、オイルを含む核酸増幅反応用容器と、を備える、核酸増幅反応用カートリッジである。核酸増幅反応における反応液が、前記核酸が溶出した溶出液を50%以上含んでもよく、核酸増幅反応における反応液が、前記溶出液であってもよい。また、前記チューブの前記第1プラグが配置された側と連通し、前記チューブに前記微粒子を導入するタンクを備えてもよい。
本発明の一実施形態に係る核酸増幅反応用キットは、長手方向を有し、オイルからなる第1プラグ、オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第2洗浄液からなる第6プラグ、オイルからなる第7プラグ、オイルと相分離し、前記第2洗浄液で洗浄した前記核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、オイルからなる第3プラグ、オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、オイルからなる第5プラグ、を、順に内部に備えたチューブと、を有する核酸抽出用デバイスであって、前記第2洗浄液はアルコール、またはアセトニトリルを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイスと、前記チューブに前記微粒子を導入するタンクと、を備える核酸増幅反応用キット。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要素であるとは限らない。
1.核酸抽出用デバイス
本実施形態の核酸抽出用デバイス1000は、チューブ部100と、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30、第4プラグ40及び第5プラグ50と、を有する。
本実施形態の核酸抽出用デバイス1000は、チューブ部100と、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30、第4プラグ40及び第5プラグ50と、を有する。
図1は、本実施形態の核酸抽出用デバイス1000の要部を模式的に示す図である。
1.1.チューブ部
チューブ部100は、核酸抽出用デバイス1000の要部を構成している。核酸抽出用デバイス1000は、チューブ部100の他に、各種の構成を含んでもよい。核酸抽出用デバイス1000は、例えば、図示しないが、チューブ部100に接続される配管、容器、栓、継ぎ手、ポンプ、制御装置などを含んでもよい。
チューブ部100は、核酸抽出用デバイス1000の要部を構成している。核酸抽出用デバイス1000は、チューブ部100の他に、各種の構成を含んでもよい。核酸抽出用デバイス1000は、例えば、図示しないが、チューブ部100に接続される配管、容器、栓、継ぎ手、ポンプ、制御装置などを含んでもよい。
チューブ部100は、内部に空洞を有し、当該空洞内に液体を長手方向に流通させることのできる筒状の部分である。チューブ部100は、長手方向を有するが、屈曲してもよい。チューブ部100の内部の空洞は、内部に収容される液体がチューブ部100内でプラグ形状を維持できれば、大きさ、形状ともに特に限定されない。また、チューブ部100の内部の空洞の大きさや長手方向に垂直な断面の形状は、チューブ部100の長手方向に沿って変化してもよい。液体がチューブ部100内でプラグ形状を維持できるかどうかについては、チューブ部100の材質、液体の種類等の条件に依存するので、チューブ部100の長手方向に垂直な断面の形状は、液体がチューブ部100内でプラグ形状を維持できる範囲内で適宜に設計される。
チューブ部100の外形の長手方向に垂直な断面の形状も限定されない。さらにチューブ部100の肉厚(内部の空洞の側面から外部の表面までの長さ)も特に限定されない。チューブ部100の内部の空洞の長手方向に垂直な断面が円形である場合、チューブ部100の内径(内部の空洞の長手方向に垂直な断面における円の直径)は、例えば、0.5mm以上3mm以下とすることができる。チューブ部100の内径がこの範囲であると、チューブ部100の材質、液体の種類において広範な範囲で液体のプラグを形成しやすいので好ましい。
チューブ部100の材質は、特に限定されないが、例えば、ガラス、高分子、金属などとすることができる。なお、チューブ部100の材質にガラスや高分子などの可視光において透明性を有する材質を選択すると、チューブ部100の外部から内部(空洞内)を観察することができるので好ましい。また、チューブ部100の材質に、磁力を透過する物質や非磁性体を選択すると、チューブ部100に磁性粒子を通過させる場合などに、チューブ部100の外部から磁力を与えることによってこれを行うことが容易化されるためより好ましい。
チューブ部100の内部には、第1のオイルからなる第1プラグ10、オイルと混ぜると相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ20、第1洗浄液と混和しない第2のオイルからなる第3プラグ30、オイルと混ぜると相分離し、核酸が結合した微粒子から核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ40、及び溶出液と混和しない第3のオイルからなる第5プラグ50を、この順で内部に備える。
1.2.第1プラグ、第3プラグ、及び第5プラグ
第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50は、いずれもオイルからなる。第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50のオイルは、互いに異なる種類のオイルであってもよいし、同じ種類のオイルであってもよい。オイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーン系オイル、パラフィン系オイル及びミネラルオイル並びにそれらの混合物から選択される一種を挙げることができる。また、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30、第4プラグ40、及び第5プラグ50の隣り合うプラグを形成する液体は、互いに混和しないように選択される。
第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50は、いずれもオイルからなる。第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50のオイルは、互いに異なる種類のオイルであってもよいし、同じ種類のオイルであってもよい。オイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーン系オイル、パラフィン系オイル及びミネラルオイル並びにそれらの混合物から選択される一種を挙げることができる。また、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30、第4プラグ40、及び第5プラグ50の隣り合うプラグを形成する液体は、互いに混和しないように選択される。
第1プラグ10と第3プラグ30の間には、第2プラグ20が配置される。第1プラグ10の第2プラグ20と反対側の領域には、他の液体のプラグが配置されてもよい。第1プラグ10の中には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第1プラグ10を通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。また、第1プラグ10と第2プラグ20の間には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第1プラグ10から第2プラグ20へと通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。同様に、第2プラグ20と第3プラグ30の間には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第2プラグ20から第3プラグ30へと通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。
第3プラグ30と第5プラグ50の間には、第4プラグ40が配置される。第5プラグ50の第4プラグ40と反対側の領域には、他の液体のプラグが配置されてもよい。第3プラグ30の中には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第3プラグ30を通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。また、第3プラグ30と第4プラグ40の間には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第3プラグ30から第4プラグ40へと通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。同様に、第4プラグ40と第5プラグ50の間には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第4プラグ40から第5プラグ50へと通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。さらに、第5プラグ50の中には、気泡や他の液体がないことが好ましい。
第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50のチューブ部100の長手方向における長さは、プラグが形成可能な範囲であれば、いずれも特に限定されない。第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50のチューブ部100の長手方向における具体的な長さとしては、1mm以上50mm以下であり、粒子等の移動距離を大きくしすぎないように、1mm以上30mm以下が好ましく、5mm以上20mm以下がさらに好ましい。これらのうち第3プラグ30のチューブ部100の長手方向における長さを長くすると、第4プラグ40をチューブ部100の第5プラグ50側の端から吐出する態様を採る場合に、第2プラグ20を吐出しにくくすることができる。この場合、第3プラグ30の具体的な長さとしては、10mm以上50mm以下とすることができる。
第1プラグ10及び第5プラグ50は、チューブ部100の少なくとも一方の端が開放されたとしても、第1洗浄液(第2プラグ20)及び溶出液(第4プラグ40)の、蒸発等の外気との物質交換や、外部からの汚染を防ぐ機能を有している。そのため、チューブ部100の少なくとも一方の端が外気に開放されたとしても、第1洗浄液や溶出液の体積を一定に保つことができ、各液体の濃度の変動や汚染を抑制することができる。これにより、核酸抽出における核酸や各種の薬剤の濃度の精度を高めることができる。
また、第3プラグ30は、第1洗浄液(第2プラグ20)及び溶出液(第4プラグ40)が互いに混合することを抑制する機能を有する。また第3プラグ30は、より高粘度のオイルとすることにより、第1洗浄液(第2プラグ20)との界面で、粒子等を移動させる場合に、オイルによる「ぬぐい効果」を高めることができる。これにより、第2プラグ20の第1洗浄液のプラグから、オイルの第3プラグ30に粒子等を移動させた場合に、粒子等に付着した水溶性の成分を第3プラグ30(オイル)に、より持ち込まれにくくすることができる。
1.3.第2プラグ
第2プラグ20は、チューブ部100内の第1プラグ10と第3プラグ30との間の位置に配置される。第2プラグ20は、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる。第1プラグ10を構成するオイル及び第3プラグ30を構成するオイルのいずれとも混和しない液体である。
第2プラグ20は、チューブ部100内の第1プラグ10と第3プラグ30との間の位置に配置される。第2プラグ20は、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる。第1プラグ10を構成するオイル及び第3プラグ30を構成するオイルのいずれとも混和しない液体である。
第1洗浄液は、酸性溶液である。特に酸性水溶液であることが好ましく、含有する酸は特に限定されないが、クエン酸、酢酸、グリシン塩酸塩などの水溶液が好ましい。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)や、界面活性剤(Triton、Tween、SDSなど)等を含有してもよいが、カオトロピック物質を事実上含まない溶液であるほうが好ましい。pHは、酸性であれば特に限定されないが、下限については、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが最も好ましく、上限については、6以下であることが好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることが最も好ましい。このような第1洗浄液を採用することにより、第1プラグの上流側で、核酸や核酸が吸着した粒子がアルコールを含む溶液と接しても、すなわち後述するアルコールを含む吸着液で核酸を抽出する場合や、アルコールを含む洗浄液で核酸が吸着した粒子を洗浄する場合であっても、第1洗浄液により核酸が吸着した粒子等を効率よく洗浄することができ、かつ下流へのアルコールの持ち込み、いわゆるアルコールのキャリーオーバーを防ぐことができる。
第2プラグ20の体積は、特に限定されず、核酸を吸着させた粒子等の量等を指標として適宜設定することができる。例えば、粒子等の体積が、0.5μLである場合には、第2プラグ20の体積は、10μL以上であれば十分であり、20μL以上50μL以下とすることが好ましく、20μL以上30μL以下とすることがさらに好ましい。第2プラグ20の体積が、この範囲であれば、粒子等の体積が、0.5μLである場合に粒子等の洗浄を十分に行うことができる。なお、粒子等の洗浄には、第2プラグ20の体積は、より大きいことが好ましいが、チューブ部100の長さや太さ、これに依存する第2プラグ20のチューブ部100の長手方向における長さ等を考慮して、適宜に設定することができる。
第2プラグ20は、オイルのプラグによって分割されて複数のプラグから構成されてもよい。第2プラグ20がオイルプラグで分割された複数のプラグからなる場合は、第1洗浄液のプラグが複数形成される。そのため、第2プラグ20がオイルプラグで分割された場合には、洗浄の対象が水溶性物質であれば、分割された第1洗浄液によって到達する水溶性物質の濃度は、分割されていない同体積の第1洗浄液によって到達する水溶性物質の濃度よりも小さくなるためより好ましい。第2プラグ20が分割される数は任意であるが、洗浄の対象が水溶性物質であれば、例えば、等体積で2分割すると、計算上は分割しない場合の1/4の濃度まで水溶性物質の濃度を低下させることができる。第2プラグ20が分割される数は、例えば、チューブ部100の長さや洗浄の対象等を考慮して適宜設定されることができる。
1.4.第4プラグ
第4プラグ40は、チューブ部100内の第3プラグ30と第5プラグ50との間の位置に配置される。第4プラグ40は、核酸が結合した微粒子から核酸を溶出する溶出液からなる。
第4プラグ40は、チューブ部100内の第3プラグ30と第5プラグ50との間の位置に配置される。第4プラグ40は、核酸が結合した微粒子から核酸を溶出する溶出液からなる。
溶出液としては、例えば、滅菌水、蒸留水、イオン交換水等の精製された水、又はバッファーを用いることができる。溶出液を水又は水溶液とすれば、核酸が吸着した粒子等が溶出液に浸漬されることで、粒子等に吸着した核酸を溶出することができる。溶出液は、第3プラグ30を構成するオイル及び第5プラグ50を構成するオイルのいずれとも混和しない液体である。
溶出液は、逆転写反応のために、逆転写酵素、dNTP、及び逆転写酵素用プライマー(オリゴヌクレオチド)を含んでもよく、ポリメラーゼ反応のために、さらに、DNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼ用プライマー(オリゴヌクレオチド)を含んでもよく、TaqManプローブや、Molecular Beacon、サイクリングプローブなどのリアルタイムPCR用プローブやSYBRグリーンなどのインターカレーター用蛍光色素を含んでいてもよい。さらに、反応阻害防止剤として、BSA(ウシ血清アルブミン)またはゼラチンを含有することが好ましい。溶媒は、水であることが好ましく、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶媒およびカオトロピック物質を事実上含まないものがより好ましい。また、逆転写酵素用緩衝液及び/又はDNAポリメラーゼ用緩衝液となるように、塩を含有することが好ましい。緩衝液にするための塩は、酵素反応を阻害しない限り、特に限定されないが、トリス、ヘペス、ピペス、リン酸などの塩が好ましく用いられる。逆転写酵素は特に限定されず、例えば、アビアンミエロブラストウイルス(Avian Myeloblast Virus)、ラスアソシエーテッドウイルス2型(Ras Associated Virus2型)、マウスモロニーミュリーンリューケミアウイルス(Mouse Molony Murine Leukemia Virus)、ヒト免疫不全ウイルス1型(Human Immunodefficiency Virus1型)由来の逆転写酵素などが使用できるが、耐熱性の酵素が好ましい。DNAポリメラーゼも特に限定されないが、耐熱性の酵素やPCR用酵素が好ましく、例えば、Taqポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、あるいはそれらの改良型など、非常に多数の市販品があるが、ホットスタートを行えるDNAポリメラーゼが好ましい。
DNAポリメラーゼ用プライマーは、検出するDNAに対し、容易に適切な配列を決めることができる。通常、1種類のDNAを増幅するために、5’側のプライマーと3’側のプライマーのプライマーペアを含めばよい。なお、複数種類のDNAを増幅するために、異なる蛍光色素で標識された複数種のプライマーペアを含ませておくことによって、マルチプレックスPCRにも対応可能である。その場合、適宜、TaqManプローブも複数にすればよい。
反応液に含まれるdNTPや塩の濃度は、用いる酵素について適した濃度にすれば良いが、通常、dNTPを10〜1000μM、好ましくは100〜500μM、Mg2+を1〜100mM、好ましくは5〜10mM、Cl−を1〜2000mM、好ましくは200〜700mM、とすれば良く、総イオン濃度は、特に限定されないが、50mMより高い濃度であってもよく、100mMより高い濃度が好ましく、120mMより高い濃度がより好ましく、150mMより高い濃度がさらに好ましく、200mMより高い濃度がさらに好ましい。上限は、500mM以下が好ましく、300mM以下がより好ましく、200mM以下がさらに好ましい。プライマー用オリゴヌクレオチドは、それぞれ0.1〜10μM、好ましくは0.1〜1μMが用いられる。BSAまたはゼラチンの濃度は、1mg/mL以下では、反応阻害防止効果が少なく、10mg/mL以上だと、逆転写反応やその後の酵素反応を阻害する可能性があるため、1〜10mg/mLが好ましい。ゼラチンを用いる場合、その由来は、牛皮、豚皮、牛骨が例示できるが、特に限定されない。ゼラチンが溶解にしくいときは、加温して溶解させても良い。
溶出液プラグ40の体積は、特に限定されず、核酸を吸着させた粒子等の量などを指標として適宜設定することができる。例えば、粒子等の体積が、0.5μLである場合には、溶出液プラグ40の体積は、0.5μL以上であれば十分であり、0.8μL以上5μL以下とすることが好ましく、1μL以上3μL以下とすることがさらに好ましい。溶出液プラグの体積がこれらの範囲であれば、例えば、微粒子の体積を0.5μLにしても、微粒子から核酸を十分溶出することができる。
1.5.核酸抽出用デバイスの構成等
本実施形態の核酸抽出用デバイスは、チューブ部100と、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30、第4プラグ40、及び第5プラグ50と、を有するが、他の機能を付加する構成を含んでもよい。本実施形態の核酸抽出用デバイスは、以下に説明する構成の組み合わせや、各構成の変形形態を含んでもよい。
本実施形態の核酸抽出用デバイスは、チューブ部100と、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30、第4プラグ40、及び第5プラグ50と、を有するが、他の機能を付加する構成を含んでもよい。本実施形態の核酸抽出用デバイスは、以下に説明する構成の組み合わせや、各構成の変形形態を含んでもよい。
1.5.1.チューブ部の端部
図2は、核酸抽出用デバイスの変形例の一種である核酸抽出用デバイス1010を模式的に示す図である。本実施形態の核酸抽出用デバイスは、例えば、チューブ部100の第5プラグ50側の端が開放されていてもよい。すなわち、図2に示すように、核酸抽出用デバイス1010では、チューブ部100の第5プラグ50側の端が、開放された状態となっている。核酸抽出用デバイス1010によれば、チューブ部100の第1プラグ10側からチューブ部100の内部に圧力を印加することにより、第5プラグ50及び第4プラグ40を順に吐出させることができる。これにより、核酸抽出用デバイス1010を用いて、例えばPCRのための反応容器等に、標的核酸を含む溶出液(第4プラグ40)を容易に分注することができる。
図2は、核酸抽出用デバイスの変形例の一種である核酸抽出用デバイス1010を模式的に示す図である。本実施形態の核酸抽出用デバイスは、例えば、チューブ部100の第5プラグ50側の端が開放されていてもよい。すなわち、図2に示すように、核酸抽出用デバイス1010では、チューブ部100の第5プラグ50側の端が、開放された状態となっている。核酸抽出用デバイス1010によれば、チューブ部100の第1プラグ10側からチューブ部100の内部に圧力を印加することにより、第5プラグ50及び第4プラグ40を順に吐出させることができる。これにより、核酸抽出用デバイス1010を用いて、例えばPCRのための反応容器等に、標的核酸を含む溶出液(第4プラグ40)を容易に分注することができる。
1.5.2.栓
図3は、核酸抽出用デバイスの変形例の一種である核酸抽出用デバイス1020を模式的に示す図である。本実施形態の核酸抽出用デバイスは、図示のように、例えば、チューブ部100の第5プラグ50側の端を封止する、脱着自在の栓110をさらに有してもよい。栓110は、例えば、ゴムやエラストマー、高分子等によりなることができる。栓110によってチューブ部100が封止される場合、栓110は、第5プラグ50と接してもよいし、第5プラグ50と栓110の間に空気等の気体が配置されてもよい。また、栓110は脱着自在であるが、その機構は特に限定されない。図3の例では、栓110の一部がチューブ部100の内部に挿入されて固定される態様を示しているが、栓110はキャップ状であってもよい。
図3は、核酸抽出用デバイスの変形例の一種である核酸抽出用デバイス1020を模式的に示す図である。本実施形態の核酸抽出用デバイスは、図示のように、例えば、チューブ部100の第5プラグ50側の端を封止する、脱着自在の栓110をさらに有してもよい。栓110は、例えば、ゴムやエラストマー、高分子等によりなることができる。栓110によってチューブ部100が封止される場合、栓110は、第5プラグ50と接してもよいし、第5プラグ50と栓110の間に空気等の気体が配置されてもよい。また、栓110は脱着自在であるが、その機構は特に限定されない。図3の例では、栓110の一部がチューブ部100の内部に挿入されて固定される態様を示しているが、栓110はキャップ状であってもよい。
核酸抽出用デバイス1020において、栓110が外された場合には、チューブ部100の第5プラグ50側の端が開放して、上述した図2の核酸抽出用デバイス1010の態様となり、核酸抽出用デバイス1020を用いて、例えばPCRのための反応容器等に、標的核酸を含む溶出液(第4プラグ40)を容易に分注することができる。また、栓110によってチューブ部100の第5プラグ50側の端が封止された状態(図3に示す状態)であれば、各プラグのチューブ部100内での移動を抑制する効果が得られ、これにより、例えば、粒子等をチューブ部100内で移動させる場合に、粒子等の移動に伴ってプラグが移動することを抑制することができる。
1.5.3.容器
図4Aは、核酸抽出用デバイスの構成の一例である核酸抽出用デバイス1030を模式的に示す図である。図4Aに例示するように、核酸抽出用デバイス1030は、チューブ部100の第1プラグ10側の上流端に内部を連通させて接続できる、脱着自在の容器120をさらに有している。
図4Aは、核酸抽出用デバイスの構成の一例である核酸抽出用デバイス1030を模式的に示す図である。図4Aに例示するように、核酸抽出用デバイス1030は、チューブ部100の第1プラグ10側の上流端に内部を連通させて接続できる、脱着自在の容器120をさらに有している。
容器120は、独立した部材とすることができる。容器120は、内部に液体を収容することができる。容器120は、液体や固体を出し入れできる開口121を有する。また、図4Aの例では、容器120の開口121が、チューブ部100の第1プラグ10側の端に内部を連通させて接続される態様となっている。また、容器120は、開口121を複数有してもよく、この場合の開口121の1つをチューブ部100の第1プラグ10側の端に内部を連通させて接続される態様としてもよい。
容器120の内容積は、特に限定されないが、例えば、0.1mL以上100mL以下とすることができる。容器120の開口121は、必要に応じて蓋122によって封止できる構造としてもよい。容器120の材質は、特に限定されず、高分子、金属等とすることができる。
容器120の開口121は、チューブ部100の第1プラグ10側の端に接続することができるが、容器120とチューブ部100との間の接続は、内容物が漏出しない態様である限り特に限定されない。容器120とチューブ部100とが接続された場合には、容器120の内部とチューブ部100の内部とが連通することができる。また、容器120は、必要に応じてチューブ部100から取り外すことができる。
核酸抽出用デバイス1030のように、容器120を備えることにより、容器120内において、例えば、粒子等と、吸着液と、試料と、を収容し、粒子等に核酸を吸着させることができる。その後、容器120をチューブ部100の第1プラグ10側の端に接続すれば、当該粒子等をチューブ部100の第1プラグ10側から容易にチューブ部100内に導入できる状態とすることができる。
吸着液とは、核酸結合性固相担体である微粒子(例えば磁性粒子M)に核酸を吸着させる液体のことをいう。吸着液は、カオトロピック物質を含有すれば特に限定されないが、細胞膜の破壊あるいは細胞中に含まれるタンパク質を変性させる目的で界面活性剤を含有させてもよい。この界面活性剤としては、一般に細胞等からの核酸抽出に使用されるものであれば特に限定されないが、具体的には、Triton−Xなどのトリトン系界面活性剤やTween20などのツイーン系界面活性剤のような非イオン性界面活性剤、N‐ラウロイルサルコシンナトリウム(SDS)等の陰イオン性界面活性剤が挙げられるが、特に非イオン性界面活性剤を、0.1〜2%の範囲となるように使用するのが好ましい。さらに、吸着液には、2−メルカプトエタノールあるいはジチオスレイトール等の還元剤を含有させることが好ましい。吸着液は、緩衝液であってもよいが、pH6〜8の中性であることが好ましい。これらのことを考慮し、具体的には、3〜7Mのグアニジン塩、0〜5%の非イオン性界面活性剤、0〜0.2mMのEDTA、0〜0.2Mの還元剤などを含有することが好ましい。
カオトロピック物質は、水溶液中でカオトロピックイオン(イオン半径の大きな1価の陰イオン)を生じ、疎水性分子の水溶性を増加させる作用を有しており、核酸の微粒子への吸着に寄与するものであれば、特に限定されない。具体的には、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸ナトリウム等が挙げられるが、これらのうち、タンパク質変成作用の強いグアニジンチオシアン酸塩またはグアニジン塩酸塩が好ましい。これらのカオトロピック物質の使用濃度は、各物質により異なり、例えば、グアニジンチオシアン酸塩を使用する場合には、3〜5.5Mの範囲で、グアニジン塩酸塩を使用する場合は、5M以上で使用するのが好ましい。
この吸着液は、アルコール、又はアセトニトリルを含むことが好ましい。この場合、アルコール等の濃度は、特に限定されないが、下限については、10%以上であってもよく、20%以上であってもよく、30%以上であってもよいが、40%以上であることが最も好ましい。上限については、80%以下であってもよく、70%以下であってもよく、60%以下であってもよいが、50%以下であることが最も好ましい。アルコールの種類は特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノールなどが例示できる。吸着液にアルコール等を添加することにより、粒子等に核酸を吸着する効果を高め、核酸抽出用デバイスとしてみた場合には核酸の抽出効率を高めることが可能になる。
容器120は、チューブ部100に接続していない状態で、振とうすることができ、容器120内の液体を十分に撹拌することができる。これにより、迅速に粒子等に核酸を吸着させることができる。容器120は、開口121を封止する蓋122を有してもよい。さらに容器120に導入する試料の量とチューブ部100内の液体(特に第4プラグ40)の体積とを適宜変更することによって、試料中の核酸を第4プラグ40の溶出液において定量的に濃縮することもできる。
容器120の材質にゴム、エラストマー、高分子等の可とう性を有するものを選択すると、容器120をチューブ部100に接続した状態で、容器120を変形させることにより、チューブ部100の内部を加圧することができる。このようにすれば、第4プラグ40の溶出液をチューブ部100の第5プラグ50側の端から吐出させる際に、チューブ部100の第1プラグ10側から圧力を印加することが容易である。これにより、例えばPCRのための反応容器等に溶出液を分注することができる。
1.5.4.液溜部
図4Bは、核酸抽出用デバイスの構成の一例である核酸抽出用デバイス1040を模式的に示す図である。図4Bに例示するように、核酸抽出用デバイス1040は、チューブ部100の第1プラグ10側の端に、チューブ部100に連通する液溜部130が形成されている。液溜部130の内部とチューブ部100の内部とは連通している。
図4Bは、核酸抽出用デバイスの構成の一例である核酸抽出用デバイス1040を模式的に示す図である。図4Bに例示するように、核酸抽出用デバイス1040は、チューブ部100の第1プラグ10側の端に、チューブ部100に連通する液溜部130が形成されている。液溜部130の内部とチューブ部100の内部とは連通している。
液溜部130は、内部に液体を収容することができる。液溜部130は、液溜部130内部に外部から物質を導入できる開口131を有する。液溜部130における開口131が形成される位置は特に限定されない。液溜部130は、開口131を複数有してもよい。液溜部130の内容積は、特に限定されないが、例えば、0.1mL以上100mL以下とすることができる。液溜部130の材質は、特に限定されず、高分子、金属等とすることができ、チューブ部100の材質と同じであってもよい。
核酸抽出用デバイス1040のように、液溜部130を備えることにより、液溜部130内において、例えば、粒子等と、吸着液と、試料と、を収容し、粒子等に核酸を吸着させることができる。そして、当該粒子等をチューブ部100の第1プラグ10側から容易にチューブ部100内に導入することができる。
また、液溜部130は、チューブ部100とともに振とうすることができ、液溜部130内の液体を十分に撹拌することができる。これにより、迅速に粒子等に核酸を吸着させることができる。さらに液溜部130に導入する試料の量とチューブ部100内の液体の体積とを適宜変更することによって、試料中の核酸を溶出液において定量的に濃縮することができる。
核酸抽出用デバイス1040のように液溜部130を有する場合、液溜部130の開口131を封止する、脱着自在の蓋132をさらに有してもよい。そして、液溜部130の材質にゴム、エラストマー、高分子等の可とう性を有するものを選択すると、液溜部130に蓋132を装着した状態で、液溜部130を変形させることにより、チューブ部100の内部を加圧することができる。
このようにすれば、核酸が溶出された第4プラグ40の溶出液をチューブ部100の第5プラグ50側の端から吐出させる際に、チューブ部100の第1プラグ10側から圧力を容易に印加することができる。これにより、容器120に試料を導入する工程から、例えばPCRのための反応容器等に容易に溶出液を分注する工程までを行うことができる。また、蓋132を装着すれば、液溜部130をチューブ部100とともに振とうする際の液漏れを抑制することができるため、より粒子等に核酸を吸着させる効率を向上させることができる。
1.5.5.第6プラグ及び第7プラグ
本実施形態の核酸抽出用デバイスは、チューブ部の内部に、第6プラグ及び第7プラグを有してもよい。図5は、チューブ部100の内部に、第6プラグ60及び第7プラグ70を有する核酸抽出用デバイス1100を模式的に示す図である。
本実施形態の核酸抽出用デバイスは、チューブ部の内部に、第6プラグ及び第7プラグを有してもよい。図5は、チューブ部100の内部に、第6プラグ60及び第7プラグ70を有する核酸抽出用デバイス1100を模式的に示す図である。
核酸抽出用デバイス1100は、上述の核酸抽出用デバイスのチューブ部100の内部の第1プラグ10と第2プラグ20との間に、第1プラグ10側から順に、オイルと混ぜると相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第2洗浄液からなる第6プラグ60、及び第4のオイルからなる第7プラグ70を追加した構成を有している。
第6プラグ60は、第2洗浄液からなる。第2洗浄液60は、第1プラグを構成するオイル10及び第7プラグを構成するオイル70のいずれとも、混ぜた時に相分離する液体であればよい。第2洗浄液60は、水または低塩濃度水溶液であることが好ましく、低塩濃度水溶液の場合、緩衝液であることが好ましい。低塩濃度水溶液の塩濃度は、100mM以下が好ましく、50mM以下がより好ましく、10mM以下が最も好ましい。また、低塩濃度水溶液の下限は特に無いが、0.1mM以上であることが好ましく、0.5mM以上であることがさらに好ましく、1mM以上であることが最も好ましい。また、この溶液はTriton、Tween、SDSなどの界面活性剤を含有しても良く、pHは特に限定されない。緩衝液にするための塩は特に限定されないが、トリス、ヘペス、ピペス、リン酸などの塩が好ましく用いられる。カオトロピック物質を含んでいてもかまわない。
さらに、この洗浄液は、洗浄効果を上げるため、アルコールを含むことが好ましい。特に、第1洗浄液を酸性溶液とする効果を高めるためには、少なくとも吸着液と第2洗浄液のいずれかがアルコールを含むのが好ましい。この場合、アルコール濃度は、特に限定されないが、下限については、50%以上であってもよく、60%以上であってもよいが、70%以上であることが最も好ましい。アルコール濃度の上限については、90%以下であってもよく、80%以下であってもよいが、70%以下であることが最も好ましい。アルコールの種類は特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリルなどが例示できる。なお、核酸、及び核酸が吸着した粒子等の洗浄という観点では、上述の吸着液、又は第2洗浄液の少なくとも一方がアルコールを含めば、洗浄効果を高めることができるが、吸着液と第2洗浄液の双方がアルコールを含むと、さらに洗浄効果を高めることができるので好ましい。
第6プラグ60の体積は、特に限定されず、核酸を吸着させた粒子等の量等を指標として適宜設定することができる。例えば、粒子等の体積が、0.5μLである場合には、第6プラグ60の体積は、10μL以上であれば十分であり、20μL以上50μL以下とすることが好ましく、20μL以上30μL以下とすることがさらに好ましい。第6プラグ60の体積が、この範囲であれば、粒子等の体積が、0.5μLである場合に粒子等の洗浄を十分に行うことができる。なお、粒子等の洗浄には、第6プラグ60の体積は、より大きいことが好ましいが、チューブ部100の長さや太さ、これに依存する第6プラグ60のチューブ部100の長手方向における長さ等を考慮して、適宜に設定することができる。
第6プラグ60は、オイルのプラグによって分割されて複数のプラグから構成されてもよい。第6プラグ60がオイルプラグで分割された複数のプラグからなる場合は、各プラグの洗浄液の構成は、同じであっても異なっていても良く、特に限定されないが、上述のように、アルコールを含むのが好ましい。
第7プラグ70は、隣り合う第6プラグ60及び第2プラグ20の液体と混和しないオイルからなる。第7プラグ70のオイルは、第1プラグ10、第3プラグ30、及び第5プラグ50のオイルと同じ種類のオイルであっても異なる種類のオイルであってもよい。オイルとしては、第1プラグ10等において例示したと同様とすることができる。
第7プラグ70の中には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等が第7プラグ70を通過できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。また、第7プラグ70と隣り合う第2プラグ20及び第6プラグ60との間には、気泡や他の液体がないことが好ましいが、核酸を吸着させた粒子等がチューブ部100内を移動できる限りにおいて、気泡や他の液体が存在してもよい。
第7プラグ70のチューブ部100の長手方向における長さは、プラグが形成可能な範囲であれば特に限定されない。第7プラグ70のチューブ部100の長手方向における具体的な長さとしては、1mm以上50mm以下であり、粒子等の移動距離を大きくしすぎないように、1mm以上30mm以下が好ましく、5mm以上20mm以下がさらに好ましい。
また、第7プラグ70は、第2洗浄液(第6プラグ60)及び第1洗浄液(第2プラグ20)が互いに混合することを抑制する機能を有する。また第7プラグ70は、より高粘度のオイルとすることにより、第2洗浄液(第6プラグ60)との界面で、粒子等を移動させる場合に、オイルによる「ぬぐい効果」を高めることができる。これにより、第6プラグ60の第2洗浄液のプラグから、オイルの第7プラグ70に粒子等を移動させた場合に、粒子等に付着した水溶性の成分を第7プラグ70に、より持ち込まれにくくすることができる。
核酸抽出用デバイス1100によれば、核酸が吸着された粒子等を、第2プラグ20に加え、第6プラグ60において洗浄することができる。これにより、粒子等の洗浄効率をさらに高めることができる。
また、核酸抽出用デバイス1100においては、第6プラグ60の第2洗浄液にカオトロピック剤を含有させてもよい。例えば、第2洗浄液にグアニジン塩酸塩を含有させると、第6プラグ60において、粒子等に吸着した核酸の吸着を維持又は強化しつつ粒子等を洗浄することができる。第6プラグ60にグアニジン塩酸塩を含有させる場合の濃度としては、例えば、3mol/L以上10mol/L以下、好ましくは5mol/L以上8mol/L以下とすることができる。グアニジン塩酸塩の濃度がこの範囲であれば、粒子等に吸着された核酸をより安定に吸着させつつ、他の夾雑物等を洗浄することができる。
そして、上述したように、第2プラグ20の第1洗浄液を、酸性溶液とすることで、第6プラグ60において粒子等に吸着したアルコールを、第2プラグ20で効率よく洗浄することができ、溶出液や、その後の逆転写反応系や核酸増幅反応系に、アルコールの持ち込みを減少させることができる。
チューブ部100の内部に、第6プラグ60及び第7プラグ70を有する核酸抽出用デバイス1100であっても、上述した栓、容器、液溜部等を構成に付加することができ、上述と同様の効果が得られることは容易に理解されよう。
1.5.6.核酸増幅反応用容器
本発明の核酸抽出用デバイスは、チューブの下流端と連通し、オイルを含む核酸増幅反応用容器を備えた核酸増幅反応用カートリッジという構成としてもよい。図6に、核酸増幅反応用容器の構成の一例を示し、図8に、核酸増幅反応用カートリッジの全体構成の一例を示す。
本発明の核酸抽出用デバイスは、チューブの下流端と連通し、オイルを含む核酸増幅反応用容器を備えた核酸増幅反応用カートリッジという構成としてもよい。図6に、核酸増幅反応用容器の構成の一例を示し、図8に、核酸増幅反応用カートリッジの全体構成の一例を示す。
図6Aは、初期状態の説明図である。図6Bは、溶出液がチューブ200から押し出された後の状態の説明図である。核酸増幅反応用容器230は、チューブ200から押し出される液体を受け入れる容器であるとともに、熱サイクル処理時に溶出液249を収容する容器である。
核酸増幅反応用容器230は、シール形成部231及び流路形成部235を有する。シール形成部231は、チューブ200が挿入されている部分であり、流路形成部235から溢れるオイルが外部に漏洩することを抑制する部位である。流路形成部235は、シール形成部231よりも下流側の部分であり、液滴状の溶出液249の移動する流路を形成する部位である。核酸増幅反応用容器230は、シール形成部231の上シール部234Aと下シール部234Bの2箇所でチューブ200に対して固定される。
シール形成部231は、オイル受容部232及び段差部233を有する。
オイル受容部232は、筒状の部位であり、流路形成部235から溢れ出るオイルを受容するリザーバーとして機能する。オイル受容部232の内壁と、チューブ200の外壁との間には隙間があり、この隙間が、流路形成部235から溢れるオイルを受容するオイル受容空間232Aとなる。
オイル受容部232の上流側の内壁がチューブ200の環状の凸部と接触することによって、上シール部234Aが形成される。上シール部234Aは、空気の通過は許容しつつ、オイル受容空間232Aのオイルが外部に漏洩することを抑制するシールである。上シール部234Aは、オイルの表面張力によってオイルが漏洩しない程度に、通気口が形成されている。上シール部234Aの通気口は、チューブ200の凸部とオイル受容部232の内壁との間の隙間でも良いし、チューブ200の凸部に形成した穴、溝又は切欠でも良い。また、オイルを吸収するオイル吸収材によって上シール部234Aを形成しても良い。
段差部233は、オイル受容部232の下流側に設けられた段差のある部位である。段差部233の下流部の内径は、オイル受容部232の内径よりも小さい。段差部233の内壁は、チューブ200の下流側の外壁と接触している。段差部233の内壁とチューブ200の外壁が接触することによって、下シール部234Bが形成される。下シール部234Bは、流路形成部235のオイルがオイル受容空間232Aへ流れることを許容しつつ、その流れに抵抗するシールである。下シール部234Bでの圧力損失によって、流路形成部235の圧力が外気圧よりも高くなるので、熱サイクル処理時に流路形成部235の液体が加熱されても、流路形成部235の液体に気泡が発生しにくい。
流路形成部235は、管状の部位であり、液滴状の溶出液249の移動する流路を形成する容器となる。流路形成部235にはオイルが充填されている。流路形成部235の上流側はチューブ200の末端によって閉じられており、流路形成部235に向かってチューブ200の末端が開口している。流路形成部235の内径は、チューブ200の内径よりも大きく、溶出液249が球状になったときの外径よりも大きい。流路形成部235の内壁は、水溶性の溶出液249が付着しない程度の撥水性を有することが望ましい。
図6Aに示すように、初期状態では、核酸増幅反応用容器230の流路形成部235にオイルが充填されている。オイルの界面は、オイル受容空間232Aの比較的下流側に位置している。
図6Bに示すように、溶出液249がチューブ20から押し出されても、流路形成部235には予めオイルが充填されているので、流路形成部235に気体は流入しない。
溶出液249がチューブ200から押し出される前には、まず、チューブ200の最も下流にあるオイルプラグ内のオイルが流路形成部235に流入し、流入分のオイルが流路形成部235からオイル受容空間232Aに流れ込み、オイル受容空間232Aのオイル界面が上昇する。このとき、下シール部234Bの圧力損失によって、流路形成部235の液体の圧力が高くなる。最も下流にあるオイルプラグがチューブ200から押し出された後、溶出液249がチューブ200から流路形成部235に流入する。溶出液プラグ249に増幅させる核酸と核酸増幅反応を行う試薬が含まれている場合、流入した溶出液プラグ249が、液滴状になり、そのままPCRに用いられる。
このような一体型の核酸増幅反応用カートリッジは、例えば、特開2012−115208で原理が開示されているような回転式PCR装置に対し、好適に用いることができる。
2.核酸抽出用キット
図7Aは、本実施形態の核酸抽出用キットの一例を示す模式図である。図7Aに例示した核酸抽出用キット2000は、上述した核酸抽出用デバイスの要部を構成する部品を含む。「1.核酸抽出用デバイス」の項において説明した構成と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
図7Aは、本実施形態の核酸抽出用キットの一例を示す模式図である。図7Aに例示した核酸抽出用キット2000は、上述した核酸抽出用デバイスの要部を構成する部品を含む。「1.核酸抽出用デバイス」の項において説明した構成と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態の核酸抽出用キット2000は、オイルからなる第1プラグ10、オイルと混和しない第1洗浄液からなる第2プラグ20、オイルからなる第3プラグ30、オイルと混和しない溶出液からなる第4プラグ40、及びオイルからなる第5プラグ50、が当該順で内部に配置されたチューブ200と、チューブ200の第1プラグ10側の端に内部を連通させて接続可能な容器120と、を含む。
チューブ200は、核酸抽出用デバイス1000のチューブ部100の両端が開放された態様のものであり、内部に空洞を有し、当該空洞内に液体を長手方向に流通させることのできる筒状の形状を有する。チューブ200の内部形状、外形形状、大きさ、性質、材質等は、核酸抽出用デバイス1000のチューブ部100と同様である。チューブ200の内部に配置されるプラグは、核酸抽出用デバイス1000のチューブ部100に配置されるプラグと同様である。また、チューブ200の両端は、脱着自在の栓110によって封止されてもよい。チューブ200の両端が栓110によって封止されている場合、例えば、核酸抽出用キット2000の保管、移送がより容易になる。さらに、チューブ200の使用時に、栓110がチューブ200の第5プラグ50側の端を封止した状態とすれば、チューブ200の内部で粒子等を移動させる際に、各プラグのチューブ200内での移動を抑制することができるので、洗浄、抽出をさらに容易化することができる。その上、当該栓110は、脱着自在であるため、チューブ200の第5プラグ50側の端を開放することができ、核酸が溶出された第4プラグ40の溶出液をチューブ200の第5プラグ50側の端から吐出させることが容易である。
容器120は、核酸抽出用デバイス1000の項で説明した容器120と同様である。
図7Aの例では、チューブ200の両端が、脱着自在の栓110によって封止されている。また、核酸抽出用キット2000は、容器120の開口121を脱着自在に封止する蓋122を含んでもよく、容器120の開口121が脱着自在の蓋122によって封止されてもよい。さらに、核酸抽出用キット2000では、吸着液の成分の一部又は全部が容器120に収容されていてもよい。
また、核酸抽出用キット2000では、容器120は、吸着液及び磁性粒子を収容していてもよい。このようにすれば、試料を容器120に導入した際、試料に含まれる核酸を磁性粒子に吸着させる工程を、容器120において行うことができる。これにより、他の容器を用意する必要がなく、さらに迅速にPCRの前処理を行うことができる。またこの場合、容器120の開口121は、必要に応じて脱着自在の蓋122によって封止されてもよい。磁性粒子については後に詳述する。
また、容器120を、既に述べたように、可とう性を有する材質とすれば、容器120をチューブ200に接続した状態で、容器120を変形させることにより、チューブ200の内部を加圧することができる。このようにすれば、核酸が溶出された第4プラグ40の溶出液をチューブ200の第5プラグ50側の端から吐出させる際に、チューブ200の第1プラグ10側から圧力を容易に印加することができる。これにより、例えばPCRのための反応容器等に容易に溶出液を分注することができる。
核酸抽出用キット2000には、チューブ200及び容器120の他に、例えば、栓、蓋、取扱説明書、試薬、ケース等の他の構成が含まれてもよい。またここではチューブ200内に5つのプラグが配置されている例を示したが、「1.6.核酸抽出用デバイス」の項において説明したと同様に、チューブ200(チューブ部100)内には、第6プラグ60、第7プラグ70等や、必要に応じてその他のプラグが配置されてもよいことは容易に理解されよう。
本実施形態の核酸抽出用キット2000は、チューブ200の第1プラグ10側の端に内部を連通させて接続可能な容器120を有するため、容器120内において、粒子等と試料とを収容すれば、粒子等に核酸を吸着させることができ、容器120をチューブ200の第1プラグ10側の端に接続すれば、当該粒子等をチューブ200の第1プラグ側から容易にチューブ200内に導入することができる。また、本実施形態の核酸抽出用キット2000は、容器120を有するため、容器120を振とうすることができ、容器120内の液体を十分に撹拌することができる。これにより迅速に粒子等に核酸を吸着させることができる。
また、チューブ200に容器120を接続することにより、核酸が吸着された粒子等をチューブ200の第1プラグ10側の端から導入して、第4プラグ40まで移動させることが容易である。これにより、核酸の抽出をきわめて短時間で容易に行うことができる。核酸抽出用キット2000は、核酸が吸着された粒子等をチューブ200内において移動させることによって、高い純度で核酸を含有する溶出液を得ることができる。そのため、核酸抽出用キット2000によれば、PCRのための前処理に要する時間と手間を大幅に削減することができる。
3.核酸抽出方法
上述した核酸抽出用デバイス、核酸抽出用キット及びそれらの変形形態、並びに後述する核酸抽出用装置は、いずれも本実施形態の核酸抽出方法に好適に利用することができる。以下、本実施形態の核酸抽出方法の一例として、上述の核酸抽出用キット2000を利用した方法を述べる。
上述した核酸抽出用デバイス、核酸抽出用キット及びそれらの変形形態、並びに後述する核酸抽出用装置は、いずれも本実施形態の核酸抽出方法に好適に利用することができる。以下、本実施形態の核酸抽出方法の一例として、上述の核酸抽出用キット2000を利用した方法を述べる。
本実施形態の核酸抽出方法は磁性粒子Mなどの微粒子及び吸着液が収容された可とう性を有する容器120に、核酸を含む試料を導入する工程と、容器120を揺動して核酸を磁性粒子Mに吸着させる工程と、オイルからなる第1プラグ10、オイルと混和しない第1洗浄液からなる第2プラグ20、オイルからなる第3プラグ30、オイルと混和しない溶出液からなる第4プラグ40及びオイルからなる第5プラグ50、が当該順で内部に配置されたチューブ200の第1プラグ10側の端に、容器120内部とチューブ200内部を連通させて容器120を接続する工程と、磁力を印加して容器120内部からチューブ200内部を通過させて第4プラグ40の位置まで、磁性粒子Mを移動させることによって、核酸を吸着した微粒子を第1洗浄液で洗浄し、第4プラグ40の溶出液に対して微粒子から核酸を溶出させる工程と、を含む。
本実施形態の核酸抽出方法では、吸着液を用いて核酸を吸着させることのできる粒子であって、チューブ200内を移動させることのできる粒子であれば、各種(例えばシリカ粒子、ポリマー粒子、磁性粒子等)の粒子を用いることができるが、以下に説明する核酸抽出方法の一実施形態では、磁性体を含有する粒子であって、粒子表面に核酸を吸着できる磁性粒子Mを使用する。なお、磁性粒子M以外の粒子等をチューブ内で移動させる場合は、例えば、重力や電位差を利用してこれを行うことができる。
本実施形態の核酸抽出方法では、容器120及びチューブ200に磁力を透過する材質を選び、容器120及びチューブ200の外部から磁力を印加することによって磁性粒子Mを容器120及びチューブ200の内部で移動させる。
試料には標的となる核酸が含まれている。以下、これを単に標的核酸ということがある。標的核酸は、本実施形態の核酸抽出方法によって試料から抽出され、溶出液に溶出された後、例えば核酸がmRNAであれば、cDNAに逆転写され、PCRの鋳型として利用され、核酸がcDNAやゲノムDNAであれば、そのままPCRの鋳型として利用される。試料としては、血液、鼻腔粘液、口腔粘膜、各種の生体試料のほか、一部精製された核酸溶液などでもかまわない。
3.1.容器に試料を導入する工程
容器120に試料を導入する工程は、例えば、綿棒に試料を付着させ、容器120の開口121から、当該綿棒を差し入れ、吸着液にこれを浸漬して行うことができる。また、試料は、ピペット等によって容器120の開口121から導入してもよい。また試料がペースト状や固体状であれば、例えば、容器120の開口121から匙やピンセット等により容器120の内壁に付着させたり投入してもよい。
容器120に試料を導入する工程は、例えば、綿棒に試料を付着させ、容器120の開口121から、当該綿棒を差し入れ、吸着液にこれを浸漬して行うことができる。また、試料は、ピペット等によって容器120の開口121から導入してもよい。また試料がペースト状や固体状であれば、例えば、容器120の開口121から匙やピンセット等により容器120の内壁に付着させたり投入してもよい。
3.2.核酸を磁性粒子に吸着させる工程
核酸を吸着させる工程は、容器120を揺動させて行われる。この工程は、容器120の開口121を封止する蓋122があれば、これを用いて容器120を封止して行うとより効率的に行うことができる。この工程により、標的核酸は、カオトロピック剤の作用により、磁性粒子Mの表面に吸着される。この工程では、磁性粒子Mの表面には、標的核酸の他に標的核酸以外の核酸や蛋白質が吸着してもよい。
核酸を吸着させる工程は、容器120を揺動させて行われる。この工程は、容器120の開口121を封止する蓋122があれば、これを用いて容器120を封止して行うとより効率的に行うことができる。この工程により、標的核酸は、カオトロピック剤の作用により、磁性粒子Mの表面に吸着される。この工程では、磁性粒子Mの表面には、標的核酸の他に標的核酸以外の核酸や蛋白質が吸着してもよい。
容器120を揺動させる方法としては、ボルテックスシェイカーなどの装置を用いてもよいし、作業者の手で振り混ぜてもよい。また、磁性粒子Mの磁性を利用して、外部から磁場を与えながら容器120を揺動してもよい。容器120を揺動させる時間は、適宜設定されうるが、例えば容器120のおよその形状が、直径が20mm高さが30mm程度の円筒状である場合には、容器120を10秒間手で振って揺動する程度で十分に撹拌され、核酸が磁性粒子Mの表面に吸着する。
3.3.チューブに容器を接続する工程
次に図7Bに示すように、チューブ200の第1プラグ10側の端に容器120を接続する。チューブ200内の各プラグは、第1プラグ10側の栓110を外しても、第7プラグ70側の栓110がなされているため、チューブ200内を移動しにくくなっている。この工程は、チューブ200の第1プラグ10側の端に栓110が取り付けられている場合には該栓110を外して行う。そして、容器120及びチューブ200は、内容物が漏出しないように接続され、容器120内部とチューブ200の内部との間で内容物が流通可能なように連通される。
次に図7Bに示すように、チューブ200の第1プラグ10側の端に容器120を接続する。チューブ200内の各プラグは、第1プラグ10側の栓110を外しても、第7プラグ70側の栓110がなされているため、チューブ200内を移動しにくくなっている。この工程は、チューブ200の第1プラグ10側の端に栓110が取り付けられている場合には該栓110を外して行う。そして、容器120及びチューブ200は、内容物が漏出しないように接続され、容器120内部とチューブ200の内部との間で内容物が流通可能なように連通される。
3.4.磁性粒子を移動させる工程
上記工程を経ると、容器120内の核酸が吸着した磁性粒子Mがチューブ200に流通できる状態となっている。核酸が吸着した磁性粒子Mをチューブ200に導く手法としては、重力や遠心力を利用する方法を用いてもよく、特に制限されないが、本実施形態では容器120及びチューブ200の外部から磁力を印加して行う。磁力は、例えば、永久磁石、電磁石等により印加することができるが、発熱等を生じない点で、永久磁石を用いて印加することがより好ましい。また、永久磁石を用いる場合には、作業者の手で磁石を動かして行ってもよいし、機械装置等を利用して行ってもよい。磁性粒子Mは、磁力によって引き寄せられる性質を有しているため、この性質を利用して、容器120及びチューブ200と、永久磁石の相対的な配置を変化させて、容器120内からチューブ200に移動させる。これにより、第1プラグ10から順に、各プラグを通って、第4プラグ40まで磁性粒子Mが移動される。磁性粒子Mが各プラグを通過するときの各プラグにおける滞在時間は特に限定されないし、同一プラグ内でチューブ200の長手方向に沿って往復するようにして移動させてもよい。
上記工程を経ると、容器120内の核酸が吸着した磁性粒子Mがチューブ200に流通できる状態となっている。核酸が吸着した磁性粒子Mをチューブ200に導く手法としては、重力や遠心力を利用する方法を用いてもよく、特に制限されないが、本実施形態では容器120及びチューブ200の外部から磁力を印加して行う。磁力は、例えば、永久磁石、電磁石等により印加することができるが、発熱等を生じない点で、永久磁石を用いて印加することがより好ましい。また、永久磁石を用いる場合には、作業者の手で磁石を動かして行ってもよいし、機械装置等を利用して行ってもよい。磁性粒子Mは、磁力によって引き寄せられる性質を有しているため、この性質を利用して、容器120及びチューブ200と、永久磁石の相対的な配置を変化させて、容器120内からチューブ200に移動させる。これにより、第1プラグ10から順に、各プラグを通って、第4プラグ40まで磁性粒子Mが移動される。磁性粒子Mが各プラグを通過するときの各プラグにおける滞在時間は特に限定されないし、同一プラグ内でチューブ200の長手方向に沿って往復するようにして移動させてもよい。
3.5.核酸を溶出させる工程
磁性粒子Mが第4プラグ40に到達すると、溶出液の作用により、磁性粒子Mに吸着された核酸が、第4プラグ40の溶出液に溶出する。本工程を経ると、試料から溶出液に対して核酸が溶出し、試料から核酸が抽出された状態となる。
磁性粒子Mが第4プラグ40に到達すると、溶出液の作用により、磁性粒子Mに吸着された核酸が、第4プラグ40の溶出液に溶出する。本工程を経ると、試料から溶出液に対して核酸が溶出し、試料から核酸が抽出された状態となる。
3.6.作用効果
本実施形態の核酸抽出方法によれば、核酸の抽出をきわめて短時間で容易に行うことができる。本実施形態の核酸抽出方法は、核酸が吸着された磁性粒子Mをチューブ200内において移動させることによって、高い純度で核酸を含有する溶出液を得ることができる。本実施形態の核酸抽出方法によれば、PCRのための前処理に要する時間と手間を大幅に削減することができる。
本実施形態の核酸抽出方法によれば、核酸の抽出をきわめて短時間で容易に行うことができる。本実施形態の核酸抽出方法は、核酸が吸着された磁性粒子Mをチューブ200内において移動させることによって、高い純度で核酸を含有する溶出液を得ることができる。本実施形態の核酸抽出方法によれば、PCRのための前処理に要する時間と手間を大幅に削減することができる。
3.7.第4プラグをチューブから吐出させる工程
本実施形態の核酸抽出方法は、容器120を変形させて、第5プラグ50及び第4プラグ40をチューブ200の容器120が接続した端と反対側の端から吐出させる工程を含んでもよい。
本実施形態の核酸抽出方法は、容器120を変形させて、第5プラグ50及び第4プラグ40をチューブ200の容器120が接続した端と反対側の端から吐出させる工程を含んでもよい。
本工程は「3.5.核酸を溶出させる工程」の後、容器120を変形させることで行うことができる。第4プラグ40を吐出するときには第5プラグ50が先に吐出される。なお、チューブ200の第5プラグ50側を封止している栓110は、本工程に先立って取り除き、チューブ200の第5プラグ50側の端を開放しておく。
容器120に外力を加えて、内圧を高めるように変形させると、圧力によりチューブ200の第1プラグ10側から第5プラグ50側へと各プラグが移動する。これにより、チューブ200の第5プラグ50側の端から、第5プラグ50及び第4プラグ40の順に吐出される。第3プラグ30は、吐出されてもよいが、第2プラグ20は吐出されないようにする。この場合、例えば、第3プラグ30の体積を他のプラグよりも大きく設定し、第3プラグ30のチューブ200の長手方向の長さを大きくすれば、第2プラグ20を吐出させてしまうことを防止しやすい。
第4プラグ40及び第5プラグ50は、例えば、PCRのための反応容器に対して吐出される。そのため、PCRのための反応容器には、溶出液とオイルが分注されるが、通常オイルは、PCRの反応に影響を与えないため、例えば、PCRの反応容器にあらかじめ第5プラグ50のオイルと同種のオイルを収容しておくこともできる。また、その場合、チューブ200の先端がオイル内にある状態で本工程を行うと、標的核酸が含まれる溶出液を外気に接触させることなくPCRの反応容器に導入することができる。本実施形態の核酸抽出方法が本工程を含む場合には、例えばPCRのための反応容器等に、標的核酸を含む溶出液を容易に分注することができる。
この溶出液を用いてcDNAを増幅させる場合、逆転写工程及び/または核酸増幅工程における反応系が、溶出した核酸を含む溶出液を多量に含めば、微量に含まれる核酸も増幅しやすくなる。従って、それらの反応系は、溶出液を50%以上含むことが好ましく、70%以上含むことがより好ましく、90%以上含むことがさらに好ましく、100%含むこと、すなわち、核酸を溶出するための溶出液に予め反応のための試薬を添加しておくことがもっとも好ましい。
通常、反応系中の溶出液の割合が増えるほど、洗浄工程の直前に用いられる溶液、例えば吸着液及び/又は第2洗浄液に含まれるエタノールの持ち込みが、後の逆転写反応や核酸増幅反応を阻害し、最終的なcDNAの収量が下がるが、本発明の核酸増幅方法では、第1洗浄液を酸性溶液とすることにより、収量の低下を防止することができる。
3.8.変形例
3.8.1.磁性粒子を移動させる工程の変形
図9は、本実施形態の核酸抽出方法の一変形形態を説明するための模式図である。
3.8.1.磁性粒子を移動させる工程の変形
図9は、本実施形態の核酸抽出方法の一変形形態を説明するための模式図である。
上述の「3.4.磁性粒子を移動させる工程」では、磁性粒子Mに対して磁力を外部から印加することによって、磁性粒子Mを第1プラグ10から各プラグを通過させて第4プラグ40まで移動させると説明した。しかし、磁性粒子Mが第2プラグ20に移動されたときに、外部から印加される磁力を変化させて、第2プラグ20内で磁性粒子Mを振動させたり、拡散凝集を繰り返したりして行ってもよい。このようにすれば、第2プラグ20の第1洗浄液による磁性粒子Mの洗浄効果を高めることができる。
具体的には、図9のA、Bに示すように、磁力を印加する手段として、一対の永久磁石410を用いる場合には、永久磁石410によって容器120から磁性粒子Mを移動させ、第1プラグ10を通過させて、第2プラグ20まで磁性粒子Mが到達したときに、一方の永久磁石410をチューブ200から遠ざけ、他方の永久磁石410を、チューブ200に対して対向する側から近づけると、磁性粒子Mを第2プラグ20内でチューブ200の長手方向と交差する方向に振動させることができる(図中A,Bの態様の繰り返し)。このようにすれば、第2プラグ20の第1洗浄液による磁性粒子Mの洗浄効果を高めることができる。このような磁性粒子Mの洗浄は、第2プラグ20を分割した場合や、チューブ200内に第6プラグ60が配置される場合に、複数の第2プラグ20や、第6プラグ60において適用してもよい。
また、図9のCに示すように、永久磁石410を単にチューブ200から遠ざけることにより、第2プラグ20内で磁性粒子Mを拡散させることができる。磁性粒子Mは、表面が親水性であるため、例えば第2プラグ20において、磁力を弱めて拡散されたとしても、第1プラグ10や第3プラグ30のオイルには進入しにくいので、このような態様としてもよい。
具体的には、永久磁石410によって容器120から磁性粒子Mを移動させ、第1プラグ10を通過させて第2プラグ20に磁性粒子Mが到達したときに、永久磁石410をチューブ200から遠ざけ、第2プラグ20内において磁性粒子Mを拡散させる。そして、磁性粒子Mを再び永久磁石410の磁力によって移動させ、第3プラグ30を通過させて、第4プラグ40に導くことができる。
このような外部から印加される磁力を変化させて、磁性粒子Mを振動させたり、拡散凝集を繰り返したりする態様は、容器120内の吸着液に磁性粒子Mが存在する状態や、第4プラグ40(溶出液)に磁性粒子Mが存在する状態において適用してもよい。
3.8.2.核酸を溶出させる工程の変形
上述の「3.5.核酸を溶出させる工程」では、第4プラグ40を加熱して行ってもよい。第4プラグ40を加熱する方法としては、例えば、チューブ200の第4プラグ40に対応する位置に、ヒートブロック等の熱媒体を接触させる方法や、ヒーター等の熱源を用いる方法、電磁加熱による方法などを例示することができる。
上述の「3.5.核酸を溶出させる工程」では、第4プラグ40を加熱して行ってもよい。第4プラグ40を加熱する方法としては、例えば、チューブ200の第4プラグ40に対応する位置に、ヒートブロック等の熱媒体を接触させる方法や、ヒーター等の熱源を用いる方法、電磁加熱による方法などを例示することができる。
第4プラグ40を加熱する場合には、第4プラグ40以外のプラグも加熱されてもよいが、核酸が吸着された磁性粒子Mが、洗浄液のプラグに存在する状態では、当該プラグは加熱されないことが好ましい。第4プラグ40を加熱する場合の到達温度としては、溶出の効率の観点及び溶出液にPCRの酵素を含む場合に該酵素の失活を抑制する観点から、35℃以上85℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以上80℃以下、さらに好ましくは45℃以上75℃以下である。
核酸を溶出させる工程において、第4プラグ40を加熱すると、磁性粒子Mに吸着された核酸を、溶出液に対して、より効率的に溶出させることができる。また、第1洗浄液又は第2洗浄液と、溶出液の組成が同一又は類似していても、洗浄液に対して溶出せずに磁性粒子Mに残って吸着している核酸を溶出液に対して溶出させることができる。すなわち、核酸が吸着した磁性粒子Mを第1洗浄液又は第2洗浄液によって洗浄した後でも、溶出液に対して核酸をさらに溶出させることができる。これにより、洗浄液の組成と、溶出液の組成が同一又は類似していても、十分な洗浄と、溶出液への十分な濃度での溶出とを両立させることができる。
3.8.3.第4プラグをチューブから吐出させる工程の変形
上述の「3.7.第4プラグをチューブから吐出させる工程」を採用する場合、係る工程において、溶出液に対して吸着された核酸を溶出した磁性粒子Mは、第4プラグ40内に存在してもよいが、さらに、磁力を印加することによって、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30のいずれかのプラグ、又は容器120の中まで移動させてから行ってもよい。このようにすれば、溶出液に磁性粒子Mが含まれない状態で、第4プラグ40をチューブ200から吐出することができる。また、磁性粒子Mを移動させる先は、第2プラグ20又は容器120とすれば、磁力を取り去っても、第3プラグ30のオイル内に磁性粒子Mが進入しにくいため、第4プラグ40をチューブ200から吐出することをより容易にすることができる。
上述の「3.7.第4プラグをチューブから吐出させる工程」を採用する場合、係る工程において、溶出液に対して吸着された核酸を溶出した磁性粒子Mは、第4プラグ40内に存在してもよいが、さらに、磁力を印加することによって、第1プラグ10、第2プラグ20、第3プラグ30のいずれかのプラグ、又は容器120の中まで移動させてから行ってもよい。このようにすれば、溶出液に磁性粒子Mが含まれない状態で、第4プラグ40をチューブ200から吐出することができる。また、磁性粒子Mを移動させる先は、第2プラグ20又は容器120とすれば、磁力を取り去っても、第3プラグ30のオイル内に磁性粒子Mが進入しにくいため、第4プラグ40をチューブ200から吐出することをより容易にすることができる。
4.核酸抽出用装置
本実施形態に係る核酸抽出用装置は、上で説明した核酸抽出用デバイス、核酸抽出用キット及び核酸抽出方法に好適に適用することができる。以下では、核酸抽出用キット2000を装着して核酸の抽出を行う核酸抽出用装置3000を一実施形態として説明する。図10は、本実施形態の核酸抽出装置3000を模式的に示す斜視図である。
本実施形態に係る核酸抽出用装置は、上で説明した核酸抽出用デバイス、核酸抽出用キット及び核酸抽出方法に好適に適用することができる。以下では、核酸抽出用キット2000を装着して核酸の抽出を行う核酸抽出用装置3000を一実施形態として説明する。図10は、本実施形態の核酸抽出装置3000を模式的に示す斜視図である。
本実施形態の核酸抽出用装置3000は、長手方向を有し、オイルからなる第1プラグ10、オイルと混和しない第1洗浄液からなる第2プラグ20、オイルからなる第3プラグ30、オイルと混和しない溶出液からなる第4プラグ40、及びオイルからなる第5プラグ50、が当該順で内部に配置されたチューブを装着する装着部300と、装着部300にチューブ200が装着された場合に、チューブ200の側面から磁力を印加する磁力印加部400と、装着部300及び磁力印加部400の相対的な配置を、チューブ200の長手方向に沿って変化させる移動機構500と、を含む。
核酸抽出用装置3000の装着部300に装着されるチューブ200は、上述したチューブ200である。核酸抽出用装置3000は、チューブ200を装着する装着部300を有する。なお、チューブ200内には、第1プラグ10ないし第5プラグ50が配置された例とするが、上述した第6プラグ60、第7プラグ70が配置されていてもよい。
装着部300は、チューブ200を装着する部位である。装着部300には、チューブ200とともに、チューブ200に接続された容器120が装着されてもよい。装着部300は、チューブ200及び必要に応じて容器120に対して、磁力印加部400によって磁力が印加できる範囲で、構成や装着するための機構等を適宜設計することができる。装着部300は、チューブ200が可とう性を有して屈曲している場合などに、チューブ200を直線状の形状に伸ばして装着することができるように構成されてもよい。また、図示の例では、装着部300は、チューブ200が沿うように配置される添え板310を有している。添え板310は、必須の構成ではないが、添え板310を設置すると、チューブ200の振動等を抑制することができる場合がある。また、図示の例では、装着部300は、クリップ機構320を有しており、これによりチューブ200を2箇所で固定する態様となっている。
装着部300は、磁力印加部400との位置関係を、チューブ200の長手方向に対して相対的に変化するように構成される。従って、磁力印加部400の移動を行わずに装着部300を磁力印加部400に対して相対的に移動させるように設計する場合には、図示のように、移動機構500として、装着部300を移動させる移動機構360を含んで構成される。また、磁力印加部400が移動機構を含む場合には、装着部300には移動機構360は不要な場合がある。図示の例では、装着部300は、ヒンジ330、ガイドレール340、駆動ベルト350、図示せぬモーターを含んで構成されている。
核酸抽出用装置3000の例では、装着部300は、1つ設けられているが、複数設けられてもよい。その場合は、磁力印加部400も複数設けられることができるが、複数の装着部300は、それぞれ独立していてもよいし、連動するように設けられてもよい。
磁力印加部400は、装着部300にチューブ200が装着された際に、チューブ200及び必要に応じて容器120に磁力を印加する構成である。磁力印加部400は、例えば、永久磁石、電磁石、あるいはこれらの組み合わせを含んで構成される。磁力印加部400は、磁石等を少なくとも1つ備えるが、磁石等は複数備えられてもよい。磁力印加部400に電磁石を用いず、永久磁石を用いると、発熱等が生じにくいため好ましい。永久磁石としては、例えば、ニッケル系、鉄系、コバルト系、サマリウム系、ネオジム系のものを用いることができる。
磁力印加部400は、容器120内及びチューブ200内に存在する磁性粒子Mに対して磁力を印加する機能を有する。そして、装着部300と磁力印加部400との相対的な位置関係を変化させることによって、磁性粒子Mを容器120内及びチューブ200内で移動させることができる。
図示の例では、磁力印加部400は、容器120及びチューブ200を挟んで対向して設けられた一対の永久磁石410を有している。一対の永久磁石410の間は、チューブ200の外径よりも大きい間隔で離間している。永久磁石410の極性の向く方向は、特に限定されない。磁力印加部400は、装着部300との位置関係を、チューブ200の長手方向に対して相対的に変化するように構成される。従って、装着部300の移動を行わずに磁力印加部400を装着部300に対して相対的に移動させるように設計する場合には、移動機構500として、磁力印加部400を移動させる移動機構を含んで構成される。
また、図示の例では、磁力印加部400は、一対の永久磁石410の一方がチューブ200に接近すると他方がチューブ200から離間するように配置されている。そして、モーター420によって、一対の永久磁石410がチューブ200に接近離間するように振動させることができるようになっている。モーター420が駆動することにより、チューブ200内でチューブ200の長手方向と交差する方向に磁性粒子Mを往復移動させることができる。
モーター420は、容器120やチューブ200のどの位置に磁力を印加する場合でも、必要に応じて駆動することができる。しかし、永久磁石410の位置が、チューブ200の第2プラグ20、第4プラグ40の位置にあるときに、駆動すればチューブ200内での磁性粒子Mの洗浄効率や溶出効率を高めることができる。
本実施形態の核酸抽出用装置3000によれば、PCRのための前処理を自動化することが可能であり、前処理に要する時間と手間を大幅に削減することができる。また、本実施形態の核酸抽出用装置3000によれば、磁力印加部400を揺動させることができるため、核酸が吸着した磁性粒子Mの洗浄(精製)をより効率的に行うことができ、PCRの精度をさらに高めることができる。
図11は、核酸抽出用装置の変形例に係る核酸抽出装置3100を模式的に示す斜視図である。核酸抽出装置3100は、上述の核酸抽出装置3000とは、加熱部600を有する点で相違する以外は同様であり、作用機能の共通する部材については、同一の符号を付して説明を省略する。
加熱部600は、装着部300にチューブ200が装着された場合に、チューブ200の一部を加熱する構成である。加熱部600としては、例えば、熱源及びヒートブロック、ヒーター、電磁加熱用のコイルなどを例示することができる。加熱部600の形状としては、チューブ200を挿入することのできる形状や、チューブ200の側面に接触する形状などであり、チューブ200内の液体を加熱することができる限り任意である。
加熱部600によって加熱されるチューブ200の部分は、チューブ200の長手方向のうち、第4プラグ40が存在する部分を含む。加熱部600は、チューブ200のその他の部分を加熱してもよいが、チューブ200の長手方向のうち、第2プラグ20が存在する部分は加熱しないようにすることが好ましい。
図11に示した核酸抽出装置3100では、加熱部600として、添え板310に並列して設けられた、チューブ200の第4プラグ40を含む位置を加熱するヒーター610が備えられている。ヒーター610は、チューブ200の外周の半分程度に対して接触させる形状を有している。
核酸抽出装置3100は、第2プラグ20の第1洗浄液及び第6プラグ60の第2洗浄液の少なくとも一方による洗浄によって、磁性粒子Mに吸着した核酸の量が減少している場合でも、第4プラグ40の溶出液に対して、十分な量の核酸を溶出させることができる。これにより、洗浄効果を高めることができるとともに、PCRのために十分な濃度の核酸を溶出液に対して溶出させることができる。
5.バッチ処理
上述したような吸着液、第1洗浄液、溶出液を用い、そして任意に第2洗浄液を用いれば、上述したような核酸抽出用デバイスや核酸抽出用装置を用いないバッチ処理においても、逆転写反応や核酸増幅反応を効率よく行うことができるようになる。
上述したような吸着液、第1洗浄液、溶出液を用い、そして任意に第2洗浄液を用いれば、上述したような核酸抽出用デバイスや核酸抽出用装置を用いないバッチ処理においても、逆転写反応や核酸増幅反応を効率よく行うことができるようになる。
例えば1本のチューブに、核酸を含む試料を入れ、カオトロピック物質を含有する吸着液および微粒子を混合して、核酸を微粒子に吸着させる。その後、遠心して微粒子を沈殿させ、上清を捨てる。チューブに残っている、核酸を吸着した微粒子に、第1洗浄液を加えて微粒子を懸濁し、再度遠心して、上清を捨てることで、微粒子を洗浄する。第1洗浄液の前に、第2洗浄液で微粒子を洗浄してもよい。
次に、チューブ内の微粒子に溶出液を加え、微粒子に吸着した核酸を、溶出液中に溶出させる。このようにして得られた溶出液を用い、核酸がmRNAの場合、逆転写してcDNAを合成し、合成したcDNAを増幅し、核酸がゲノムDNAやcDNAの場合、そのままDNAを増幅することができる。
6.実施例
6.1.実験例1及び2
本実施例では、バッチ処理を用いた実験例を説明する。
6.1.実験例1及び2
本実施例では、バッチ処理を用いた実験例を説明する。
<RNAの単離>
まず、容量1.5mLのポリエチレン製容器に、700μLの吸着液を入れ、そこに、インフルエンザA陽性検体(鼻腔ぬぐい液)を含んだ140μLの溶液及び25μLの磁性微粒子(磁気ビーズは、直径1〜3μmのシリカ表面を持ち、濃度400mg/mLの吸着液)を入れ、ボルテックスミキサーで5分間、十分に撹拌した。磁石で磁性ビーズを引き付け、吸着液を除去した。次に、洗浄液1を入れ、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した。磁石で磁性微粒子と引き付け、洗浄液1を除去した。洗浄液Aによる洗浄を2回行った後、洗浄液Bで、同様に2回洗浄を行った。洗浄液を除去後、磁性ビーズに溶出液として水を27.5μL入れ、ボルテックスミキサーで、5秒間軽く撹拌した後、65℃で3分間加熱した。最後に、磁性ビーズを磁石で引き付け、溶出液を回収し、RNA溶液とした。
まず、容量1.5mLのポリエチレン製容器に、700μLの吸着液を入れ、そこに、インフルエンザA陽性検体(鼻腔ぬぐい液)を含んだ140μLの溶液及び25μLの磁性微粒子(磁気ビーズは、直径1〜3μmのシリカ表面を持ち、濃度400mg/mLの吸着液)を入れ、ボルテックスミキサーで5分間、十分に撹拌した。磁石で磁性ビーズを引き付け、吸着液を除去した。次に、洗浄液1を入れ、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した。磁石で磁性微粒子と引き付け、洗浄液1を除去した。洗浄液Aによる洗浄を2回行った後、洗浄液Bで、同様に2回洗浄を行った。洗浄液を除去後、磁性ビーズに溶出液として水を27.5μL入れ、ボルテックスミキサーで、5秒間軽く撹拌した後、65℃で3分間加熱した。最後に、磁性ビーズを磁石で引き付け、溶出液を回収し、RNA溶液とした。
[吸着液]
実験例1: グアニジンチオシアン塩酸 60 wt%
Triton X−100 2.0 %
トリス pH7.2 0.6wt%
実験例2: グアニジンチオシアン塩酸 30 wt%
エタノール 45 %
トリス pH7.3 0.3wt%
[洗浄液A]
実験例1: グアニジンチオシアン塩酸 70 wt%
Triton X−100 0.7 %
トリス pH7.2 2.6wt%
実験例2: グアニジンチオシアン塩酸 30 wt%
エタノール 57 %
[洗浄液B]
実験例1: トリス pH7.5 3 wt%
実験例2: トリス pH7.0 0.1wt%
エタノール 70 %
実験例1: グアニジンチオシアン塩酸 60 wt%
Triton X−100 2.0 %
トリス pH7.2 0.6wt%
実験例2: グアニジンチオシアン塩酸 30 wt%
エタノール 45 %
トリス pH7.3 0.3wt%
[洗浄液A]
実験例1: グアニジンチオシアン塩酸 70 wt%
Triton X−100 0.7 %
トリス pH7.2 2.6wt%
実験例2: グアニジンチオシアン塩酸 30 wt%
エタノール 57 %
[洗浄液B]
実験例1: トリス pH7.5 3 wt%
実験例2: トリス pH7.0 0.1wt%
エタノール 70 %
<RT−PCR>
次に、調製したRNA溶液を用いて、RT−PCRを行った。なおRT−PCRはCDC protocol of realtime RTPCR for swine influenza A (H1N1)に従って実施した。具体的には、
0.8μMフォワードプライマー
0.8μMリバースプライマー
0.2μMプローブ
1xSuperScriptIII RT/Platimun Taq Mix
1xPCR Master Mix
を含む溶液を8μL調製し、そこに溶出液2μLを加えて撹拌後、以下の条件でRT−PCRを行った。図12にその結果を示す。
逆転写 50℃ 30分
Taq活性化 95℃ 2分
PCR 95℃ 15秒−55℃ 30秒 50サイクル
次に、調製したRNA溶液を用いて、RT−PCRを行った。なおRT−PCRはCDC protocol of realtime RTPCR for swine influenza A (H1N1)に従って実施した。具体的には、
0.8μMフォワードプライマー
0.8μMリバースプライマー
0.2μMプローブ
1xSuperScriptIII RT/Platimun Taq Mix
1xPCR Master Mix
を含む溶液を8μL調製し、そこに溶出液2μLを加えて撹拌後、以下の条件でRT−PCRを行った。図12にその結果を示す。
逆転写 50℃ 30分
Taq活性化 95℃ 2分
PCR 95℃ 15秒−55℃ 30秒 50サイクル
実験例1と実験例2の結果を比較すると、実験例2の方がRT−PCRの蛍光強度の立ち上がりが早くなった。このことは、吸着液及び洗浄液Aと洗浄液Bにアルコールを添加した方が、RNAの回収効率が向上することを示す。なお、エタノールの代わりに、メタノールあるいはアセトニトリルを使用した場合も、同様に回収率の向上がみられた。
6.2.実験例3及び4
<RNAの単離>
次に、図7に示す核酸抽出用キット2000のうち、チューブ200の内部に、第6プラグ60ないし第7プラグ70を有する核酸抽出用デバイスを使用し、RNAの抽出を行った。試薬は、実験例3が6.1.の実験例1と、実験例4が6.1.の実験例2と、それぞれ同じものを用いたが、溶出液には、予めRT−PCR用試薬を添加し、さらに0.2wt%の牛血清アルブミンを添加した。なお、各プラグの試薬量は以下の通りである。
第6プラグ:洗浄液1 28μL
第2プラグ:洗浄液2 22μL
第4プラグ:溶出液 1.6μL
第1、3、5、7プラグ:オイル 各10μL
<RNAの単離>
次に、図7に示す核酸抽出用キット2000のうち、チューブ200の内部に、第6プラグ60ないし第7プラグ70を有する核酸抽出用デバイスを使用し、RNAの抽出を行った。試薬は、実験例3が6.1.の実験例1と、実験例4が6.1.の実験例2と、それぞれ同じものを用いたが、溶出液には、予めRT−PCR用試薬を添加し、さらに0.2wt%の牛血清アルブミンを添加した。なお、各プラグの試薬量は以下の通りである。
第6プラグ:洗浄液1 28μL
第2プラグ:洗浄液2 22μL
第4プラグ:溶出液 1.6μL
第1、3、5、7プラグ:オイル 各10μL
核酸抽出用デバイスの操作方法を、以下に述べる。まず、容量3mLのポリエチレン製容器120に、700μLの吸着液を入れた。そこに、インフルエンザA陽性検体(鼻腔ぬぐい液)を含む140μLの溶液及び6.1.と同様の磁性微粒子1μLを入れた。容器に蓋をして、30秒間手で振って撹拌した。容器の蓋を外して、チューブの第1プラグ側に接続した。手で永久磁石を動かして、容器内の磁気ビーズをチューブ内に導入した。図9のように磁気ビーズを第6プラグまで搖動させながら移動させた。磁気ビーズがチューブ内の各プラグに存在した時間はおよそ以下の通りであった。なお、第5プラグにおいては、磁気ビーズを揺動させる等の操作は行わなかった。
第1、7、3プラグ:各3秒
第6プラグ:20秒
第2プラグ:30秒
第4プラグ:20秒
第1、7、3プラグ:各3秒
第6プラグ:20秒
第2プラグ:30秒
第4プラグ:20秒
次に、チューブの第4プラグで、50℃に加熱し、30秒間揺動して、磁性ビーズから溶出液中にRNAを抽出した。その後、磁気ビーズを永久磁石によって動かして、第6プラグまで退避させた。チューブの第5プラグ側の栓を取り外し、容器を手で変形させて、第5プラグを容器に吐出し、第4プラグを特開2012−115208で開示されているような回転式PCR装置に吐出して、オイル中に液滴を形成させた。
<RT−PCR>
得られたRNA溶液を用い、以下の条件でリアルタイムPCRを行った。図13にその結果を示す。
逆転写 50℃ 60秒
Taq活性化 100℃ 10秒
PCR 100℃ 10秒−57℃ 30秒 50サイクル
得られたRNA溶液を用い、以下の条件でリアルタイムPCRを行った。図13にその結果を示す。
逆転写 50℃ 60秒
Taq活性化 100℃ 10秒
PCR 100℃ 10秒−57℃ 30秒 50サイクル
実験例3では、正常にDNAの増幅が観察されたにも関わらず、実験例4では、DNAの増幅が検出できなかった。これは、実験例4では吸着液及び洗浄液Aと洗浄液Bにエタノールが入っており、そのキャリーオーバーがPCRを阻害したと考えられた。
6.3.実施例
<RNAの単離>
RNAの単離は、6.2.と同様の装置および手順を用い、以下の溶液を用いて行った。
[吸着液] グアニジンチオシアン酸塩 30 wt%
エタノール 45 %
トリス pH7.3 0.3wt%
[洗浄液B]
トリス pH7.0 0.1wt%
エタノール 70 %
[洗浄液C] クエン酸 pH4.0 0.1wt%
<RNAの単離>
RNAの単離は、6.2.と同様の装置および手順を用い、以下の溶液を用いて行った。
[吸着液] グアニジンチオシアン酸塩 30 wt%
エタノール 45 %
トリス pH7.3 0.3wt%
[洗浄液B]
トリス pH7.0 0.1wt%
エタノール 70 %
[洗浄液C] クエン酸 pH4.0 0.1wt%
本実施例では、6.2.の洗浄液Aに対応するプラグを省略し、代わりに、洗浄液Cのプラグを洗浄液Bのプラグの下流側に設けた。なお、実験2と同様の手順で、洗浄液Aの有無でRT−PCRを行った結果、RNAの回収効率は変化しないことを確認している。ただし、夾雑物が多いなど、より多くの洗浄を必要とする検体(試料)を使用する場合には、洗浄液Aを使用してもよい。
図14に示したように、実験例4では認められなかった、DNAの増幅が観察された。このように、酸性溶液で洗浄工程を行うことによって、エタノールのキャリーオーバーによる逆転写反応及び/又は核酸増幅反応の阻害が回避できた。なお、本実施例において、洗浄液Bによる洗浄工程を省略しても、DNAの増幅が起きることは確認している。
また、6.1のようなバッチ処理において洗浄液Cによる追加洗浄を行っても、実施例2と抽出効率、すなわちリアルタイムPCRにおける増幅曲線の立ち上がりの早さは同等であることは確認している。すなわち、酸性洗浄液を用いることによって、エタノールを含む試薬による抽出効率を向上させ、エタノールの溶出液への持ち込みを防ぐという、2つの効果を達成することができた。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…第1プラグ、20…第2プラグ、30…第3プラグ、40…第4プラグ、50…第5プラグ、60…第6プラグ、70…第7プラグ、100…チューブ部、110…栓、120…容器、121…開口、122…蓋、130…液溜部、131…開口、132…蓋、200…チューブ、230…核酸増幅反応用容器、231…シール形成部、232…オイル受容部、232A…オイル受容空間、233…段差部、234A…上シール部、234B…下シール部、235…流路形成部、249…溶出液、300…装着部、310…添え板、320…クリップ機構、330…ヒンジ、340…ガイドレール、350…駆動ベルト、360…移動機構、400…磁力印加部、410…永久磁石、420…モーター、500…移動機構、600…加熱部、610…ヒーター、1000,1020,1030,1040,1100…核酸抽出用デバイス、2000…核酸抽出用キット、3000,3100…核酸抽出用装置、M…磁性粒子
Claims (23)
- 核酸を含む試料に、カオトロピック物質を含有する吸着液および微粒子を混合して、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着工程と、
前記核酸が吸着した微粒子を第1洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
前記微粒子に吸着した核酸を、溶出液中に溶出させる溶出工程と、
前記溶出液中の核酸に対し、核酸増幅反応を行う核酸増幅工程と、
を含む核酸増幅方法であって、
前記吸着液がアルコールを含み、第1洗浄液のpHが酸性である、核酸増幅方法。 - 前記アルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項1に記載の核酸増幅方法。
- 前記吸着液中のアルコール濃度が40%以上50%以下である、請求項1または2に記載の核酸増幅方法。
- 核酸を含む試料に、カオトロピック物質を含有する吸着液および微粒子を混合して、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着工程と、
前記核酸が吸着した微粒子を第2洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
前記第2洗浄液で洗浄後の前記核酸が吸着した微粒子を第1洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
前記微粒子に吸着した核酸を、溶出液中に溶出させる溶出工程と、
前記核酸を増幅する核酸増幅工程と、
を含む核酸増幅方法であって、
前記第2洗浄液がアルコールまたはアセトニトリルを含み、第1洗浄液のpHが酸性である、核酸増幅方法。 - 前記アルコールが、メタノール、またはエタノールである、請求項4に記載の核酸増幅方法。
- 前記アルコール濃度が70%以上100%以下である、請求項4または5に記載の核酸増幅方法。
- 前記核酸がリボ核酸(RNA)であり、
前記溶出液中に溶出した前記リボ核酸を逆転写し、cDNAを合成する逆転写工程を含み、
核酸増幅工程において増幅する核酸が、合成した前記cDNAである、請求項1から5のいずれか1項に記載の核酸増幅方法。 - 核酸増幅工程における反応系が、前記溶出液を50%以上含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の核酸増幅方法。
- 核酸増幅工程における反応系が、前記溶出液である、請求項8に記載の核酸増幅方法。
- 長手方向を有し、
オイルからなる第1プラグ、
オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、
オイルからなる第3プラグ、
オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、
オイルからなる第5プラグ、
を、順に内部に備えたチューブと、
前記チューブの前記第1プラグが配置された側に接続及び連通可能で、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む容器と、を有する核酸抽出用デバイスであって、
前記吸着液はアルコールを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイス。 - 長手方向を有し、
オイルからなる第1プラグ、
オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、
オイルからなる第3プラグ、
オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、
オイルからなる第5プラグ、
を、順に内部に備えたチューブと、
前記チューブの前記第1プラグが配置された側に連通し、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む液溜部と、を有する核酸抽出用デバイスであって、
前記吸着液はアルコールを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイス。 - 前記アルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項10または11に記載の核酸抽出用デバイス。
- 前記吸着液中のアルコール濃度が40%以上50%以下である、請求項10から12のいずれか1項に記載の核酸抽出用デバイス。
- 長手方向を有し、
オイルからなる第1プラグ、
オイルと相分離し、核酸が結合した微粒子を洗浄する第2洗浄液からなる第6プラグ、
オイルからなる第7プラグ、
オイルと相分離し、前記第2洗浄液で洗浄した前記核酸が結合した微粒子を洗浄する第1洗浄液からなる第2プラグ、
オイルからなる第3プラグ、
オイルと相分離し、前記核酸が結合した微粒子から前記核酸を溶出する溶出液からなる第4プラグ、
オイルからなる第5プラグ、
を、順に内部に備えたチューブと、を有する核酸抽出用デバイスであって、
前記第2洗浄液はアルコール、またはアセトニトリルを含み、前記第1洗浄液はpHが酸性である、核酸抽出用デバイス。 - 前記チューブの前記第1プラグが配置された側に接続可能で、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む容器、を有し、
前記吸着液はアルコールを含む、請求項14に記載の核酸抽出デバイス。 - 前記チューブの前記第1プラグが配置された側に連通し、前記核酸を前記微粒子に吸着させる吸着液を含む液溜部、を有し、
前記吸着液はアルコールを含む、請求項14に記載の核酸抽出デバイス。 - 前記第1洗浄液に含まれるアルコールが、メタノール、またはエタノールである、請求項14から16のいずれか1項に記載の核酸抽出用デバイス。
- 前記第1洗浄液中のアルコールの濃度が70%以上100%以下である、請求項14から17のいずれか1項に記載の核酸抽出用デバイス。
- 核酸増幅反応用カートリッジであって、
請求項10から18までのいずれか1項に記載の核酸抽出用デバイスと、
前記チューブの前記第5プラグの配置された側に連通し、オイルを含む核酸増幅反応用容器と、
を備える、核酸増幅反応用カートリッジ。 - 核酸増幅反応における反応液が、前記核酸が溶出した溶出液を50%以上含む、請求項19に記載の核酸増幅反応用カートリッジ。
- 核酸増幅反応における反応液が、前記溶出液である、請求項20に記載の核酸増幅反応用カートリッジ。
- 前記チューブの前記第1プラグが配置された側と連通し、前記チューブに前記微粒子を導入するタンクを備える、請求項19から21のいずれか1項に記載の核酸増幅反応用カートリッジ。
- 請求項14に記載の核酸抽出用デバイスと、前記チューブに前記微粒子を導入するタンクと、を備える核酸増幅反応用キット。
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