JP2014176303A - cDNAの合成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
リボ核酸(RNA)を含む試料に、カオトロピック物質を含有する溶解液および核酸結合性固相担体を混合して、RNAを担体上に吸着させる吸着工程と、担体に吸着したRNAを、逆転写反応液中で担体に吸着させたまま逆転写し、cDNAを合成する逆転写工程と、合成したcDNAを溶出液中に溶出させる溶出工程と、を含むcDNA合成方法とする。
【選択図】 図1
Description
本発明にかかるcDNA合成方法は、RNAを含む試料に、カオトロピック物質を含有する溶解液および核酸結合性固相担体を混合して、RNAを担体に吸着させる吸着工程と、担体に吸着したRNAを、逆転写反応液中で担体に吸着させたまま逆転写し、cDNAを合成する逆転写工程と、合成したcDNAを溶出液中に溶出させる溶出工程と、を含む。逆転写工程の前に、前記RNAを吸着させた前記担体を洗浄液で洗浄する工程をさらに含んでもよい。
具体的には、以下の様にしてcDNAを合成すればよい。
まず、適量の溶解液を、エッペンドルフ・マイクロチューブやプラスティック・チューブなどの目的に合ったチューブに入れ、RNAを抽出する試料及び核酸結合性固相担体を混合し、ホモジェナイザーやボルテックス・ミキサーなどによって試料を破砕し、RNAを担体に吸着させる。
次に、チューブから溶解液を除去し、RNAが吸着した担体に、逆転写反応液を直接添加してもよいが、非特異的に担体に吸着した夾雑物を除去し、溶液を置換することによって前工程からの溶質の持ち込みを減らし、塩濃度を正確に調整するため、RNAが吸着した担体を、適量の洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄回数は特に限定されないが、1回〜数回洗浄すればよい。複数回洗浄する時は、最初にグアニジン塩を含有する洗浄液を用い、最後はグアニジン塩を含有しない洗浄液を用いることが好ましい。例えば、グアニジン塩を含有する洗浄液として、4〜7Mのグアニジン塩、0〜5%の非イオン性界面活性剤を含有する洗浄液を例示することができ、グアニジン塩を含有しない洗浄液として、水または低塩濃度水溶液からなる洗浄液を例示することができる。
次に、チューブから洗浄液を除去し、RNAが吸着した担体に、逆転写反応液を添加し、逆転写反応を行ってcDNAを合成する。逆転写反応液には、逆転写酵素、dNTP、及び逆転写酵素用プライマーが含まれているので、RNAを担体に吸着させたまま、そのまま逆転写反応に用いることができる。逆転写反応には、RNAが吸着した担体を含む逆転写反応液の一部または全部を用いてもよく、一部を用いる場合は、逆転写酵素用に調節したバッファーで希釈するのが好ましい。逆転写酵素用に調節したバッファーは、逆転写反応液と同じ成分の溶液を用いてもよいが、塩濃度が適正に調節されていれば、特に限定されず、逆転写酵素、dNTP、及び逆転写酵素用プライマーは、それぞれ添加されていてもいなくても構わない。本発明の方法では、この逆転写工程において、担体を除去する工程が含まれない。つまり、担体に吸着したRNAを、担体から遊離させないで逆転写反応をすることにより、効率よくその後の反応に用いることができるcDNAを合成することができる。従って、例えば、逆転写反応は低温で行われることが好ましく、50℃未満であればよいが、45℃未満であることが好ましく、40℃未満であることがより好ましく、35℃未満であることがさらに好ましい。また、温度の下限は、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。
この工程の後、チューブから逆転写反応液を除去し、RNAが吸着した担体に、溶出液を直接添加してもよいが、非特異的に担体に吸着した夾雑物を除去し、溶液を置換することによって前工程からの溶質の持ち込みを減らし、塩濃度を正確に調整するため、RNAが吸着した担体を、適量の洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄回数は特に限定されないが、1回〜数回洗浄すればよい。洗浄液は、水または低塩濃度水溶液からなる洗浄液が好ましい。
洗浄後、洗浄液を除去し、適量の溶出液を加え、ボルテックス・ミキサーなどによって混合し、担体に結合しているcDNAを担体から遊離させる。この際、cDNA溶出を促進するため、溶出液を加熱してもよい。加熱温度は特に限定されないが、40℃より高ければ良く、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。加熱温度の上限は特に限定されないが、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましく、60℃であることが最も好ましい。加熱方法として、予め加熱した溶出液を加えても良く、担体に溶出液を加えた後で加熱してもよい。加熱時間は特に限定されないが、30秒〜10分間程度が好ましい。溶出後、担体を除去することにより、上清が単離できる。こうして合成したcDNAは、PCRを含むポリメラーゼ反応など、様々な用途に効率よく用いることができる。
例えば、溶出液に、10分の1量のDNAポリメラーゼ反応用緩衝液(10倍溶液)などを添加することによってPCR反応を行うことができるが、溶出液の塩濃度が予め酵素反応に最適化され、DNAポリメラーゼ、dNTP、及びDNAポリメラーゼ用プライマーを含んでいることが好ましい。その場合、溶出液を、そのままDNAポリメラーゼ反応に用いることができる。この際、DNAポリメラーゼ反応には、反応液の一部または全部を用いても良く、一部を用いる場合は、DNAポリメラーゼ用に調節したバッファーで希釈してもよい。DNAポリメラーゼ用に調節したバッファーは、溶出液と同じ成分の溶液を用いてもよいが、塩濃度が適正に調節されていれば特に限定されず、DNAポリメラーゼ、dNTP、及びDNAポリメラーゼ用プライマーは、それぞれ添加されていてもいなくても構わない。
本発明のcDNA合成キットは、(1)4〜7Mのグアニジン塩、0〜5%の非イオン性界面活性剤、及び0〜0.2Mの還元剤を含有する中性溶解液、(2)核酸結合性固相担体、(3)4〜7Mのグアニジン塩、及び0〜5%の非イオン性界面活性剤を含有する第1の洗浄液、(4)水または低塩濃度水溶液からなる第2の洗浄液、(5)逆転写酵素、及びdNTPを含む逆転写反応液、(6)DNAポリメラーゼ、及びdNTPを含むDNA増幅液、を含む。本キットによって、逆転写反応液に目的の遺伝子に対応する逆転写用プライマーを、DNA増幅液にDNA増幅用プライマーを添加するだけで、容易に、効率よく、本発明にかかるcDNA合成と、それに引き続くcDNA増幅を行うことができる。
(1)吸着工程
1.5mLエッペンドルフ・マイクロチューブ(Eppendorf microcentrifuge tube)に入った血清サンプル(インフルエンザA型に罹患した患者から採取)150μLに、350μLの溶解液(5.5Mグアニジンチオシアン酸塩、2%Triton−X100、0.15M 2−メルカプトエタノール)を加えて、十分に混合し、血液細胞を溶解した。この溶解液に、磁性シリカ粒子(NPK−401、東洋紡績社製)を20μL添加し、室温で5分間、ボルテックス・ミキサー(Vortex mixer)で撹拌した。その後、マイクロチューブを磁気スタンド(MGS−101、東洋紡績社)に設置して磁気シリカ粒子を集め、上清を除去した。
次に、マイクロチューブを磁気スタンドから外し、350μLの洗浄液I(7Mグアニジン塩酸塩)を加えて、十分混合した後、再度磁気スタンドに設置して、磁性シリカ粒子を集め、上清を除去することにより、磁気ビーズを洗浄した。次に、同様にして450μLの洗浄液II(5mMトリス塩酸緩衝液)で粒子を洗浄し、最後に上清を除去した。
上清を除去して集めた粒子に20μLの逆転写反応液を添加し、粒子を懸濁した。そして、マイクロチューブをチューブヒーターで40℃で10分間加熱し、逆転写反応を行った。その後、マイクロチューブを磁気スタンドに設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を除去した。
このサンプルに450μLの洗浄液IIを添加し、室温で10秒間ボルテックス・ミキサーにて撹拌した後、磁気スタンドに設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を除去することにより粒子を洗浄した。
(4)で上清を除去して集めた粒子に20μLの水を添加し、粒子を懸濁し、2分間、65℃に加熱し、室温で5秒間ボルテックス・ミキサーにて撹拌した後、マイクロチューブを磁気スタンドに設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を回収した。
上清から4μLをPCR反応調製液16μLへ添加し、計20μLの反応液を作製した。この反応液をPCR装置(ロシュ製ライトサイクラー480)にセットし、リアルタイムPCR反応を行い、サイクルごとに輝度を測定した。
(4)で上清を除去して集めた粒子に20μLのPCR反応液を添加し、粒子を懸濁し、2分間、65℃に加熱し、室温で5秒間ボルテックス・ミキサーにて撹拌した後、マイクロチューブを磁気スタンドに設置して、上清を回収した。
こうして得られた20μLのPCR反応液を、そのままPCR装置にセットし、リアルタイムPCR反応を行い、サイクルごとに輝度を測定した。
(2)で上清を除去して集めた粒子に20μLの水を添加し、粒子を懸濁し、5分間、60℃に加熱し、マイクロチューブを磁気スタンドに設置して磁性シリカ粒子を集め、上清を回収した。
上清から4μLを取り出して逆転写反応調整液16μLへ添加し、計20μLの反応液を作製した。チューブヒーターにて40℃で10分間加熱し逆転写反応を行った。
反応後の溶液から4μLを取り出してPCR反応調製液16μLへ添加し、計20μLの反応液を作製した。この反応液をPCR装置にセットし、リアルタイムPCR反応を行い、サイクルごとに輝度を測定した。
実施例1及び2において、逆転写工程後の洗浄工程(4)を省略する以外は、上述した方法と同様の方法で、cDNAを合成し、PCRを行った。
実施例1〜3において、同条件でリアルタイムPCR反応を行った結果を図1に示す。
実施例1(逆転写反応→洗浄→水への溶出)の増幅曲線の立ち上がりサイクル数(Ct値)は、実施例3(従来法)のCt値よりも約2サイクル分、小さかった。また、実施例2(逆転写反応→洗浄→PCR反応液への溶出)のCt値は、実施例1のCt値よりも約2小さく、実施例3のCt値よりも約4小さかった。
従来法よりも高い検出感度が得られているものの、洗浄を行った場合(図1)よりもCt値が大きくなっていた。この原因は、洗浄を省くことにより上清除去で取り切れなかった逆転写反応液がPCR反応を阻害したためであると考えられる。
このように、PCR検出感度が最も高いのは実施例2であり、従来法より高感度で検出するために有効な方法である。それに次いで検出感度が高いのは実施例1であり、実施例2には劣るものの、従来法より高感度で検出できる。
Claims (9)
- リボ核酸(RNA)を含む試料に、カオトロピック物質を含有する溶解液および核酸結合性固相担体を混合して、RNAを前記担体上に吸着させる吸着工程と、
前記担体に吸着したRNAを、逆転写反応液中で前記担体に吸着させたまま逆転写し、cDNAを合成する逆転写工程と、
合成した前記cDNAを溶出液中に溶出させる溶出工程と、
を含むcDNA合成方法。 - 逆転写工程の前に、前記RNAを吸着させた前記担体を、洗浄液で洗浄する工程をさらに含む、請求項1に記載のcDNA合成方法。
- 逆転写工程の後に、前記RNAを吸着させた前記担体を、有機溶媒を含まない洗浄液で洗浄する工程をさらに含む、請求項1または2に記載のcDNA合成方法。
- 前記逆転写反応液が、逆転写酵素、dNTP、逆転写用プライマーを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抽出方法。
- 前記溶出液が、DNAポリメラーゼ、dNTP、及びDNA増幅用プライマーを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抽出方法。
- 前記逆転写反応液及び/又は溶出液が、BSAを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抽出方法。
- 前記逆転写工程において、50℃未満で、前記RNAが逆転写されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記担体が、磁性粒子であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 4〜7Mのグアニジン塩、0〜5%の非イオン性界面活性剤、0〜0.2Mの還元剤を含有する中性溶解液と、
核酸結合性固相担体と、
4〜7Mのグアニジン塩、0〜5%の非イオン性界面活性剤を含有する第1の洗浄液と、
水または低塩濃度水溶液からなる第2の洗浄液と、
逆転写酵素、dNTP、及び逆転写用プライマーを含む逆転写反応液と、
DNAポリメラーゼ、dNTP、及びDNA増幅用プライマーを含むDNA増幅液と、
を含むcDNA合成キット。
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