JP2015069704A - 二次電池用非水電解液およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

二次電池用非水電解液およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる難燃性の二次電池用非水電解液、および初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、安全性を有するリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】電解質と液状組成物を含む非水電解液であって、前記電解質の少なくとも1種がリチウム塩であり、前記液状組成物が、特定の含フッ素溶媒(α)と、有機酸無水物等の特定の化合物(β)と、環状カルボン酸エステル化合物とを含む、二次電池用非水電解液。また、該二次電池用非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、二次電池用非水電解液およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池に用いる非水電解液の溶媒としては、リチウム塩を良好に溶解することで高いイオン伝導度を発現できる点、広い電位窓を有する点から、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート等)が広く用いられている。しかし、カーボネート系溶媒は可燃性であるため、難燃性の溶媒として含フッ素溶媒を用いることが提案されている。
たとえば、難燃性であり、電池特性(サイクル特性、放電容量)に優れた非水電解液としては、下記のものが提案されている。
含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物および含フッ素鎖状カーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の含フッ素溶媒と、フッ素原子を有しない環状カーボネート化合物と、フッ素原子を有しない環状カルボン酸エステル化合物と、リチウム塩とを含む非水電解液(特許文献1)。
特開2008−192504号公報
特許文献1の非水電解液について本発明者等が検討したところ、より大きなエネルギーを必要とする電気自動車の車載電源等への適用を考えると、初回充放電効率およびサイクル特性はまだまだ不充分であった。
本発明は、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる難燃性の二次電池用非水電解液、および初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、安全性を有するリチウムイオン二次電池を提供する。
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]電解質と液状組成物を含む非水電解液であって、
前記電解質の少なくとも1種がリチウム塩であり、
前記液状組成物が、含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物および含フッ素鎖状カーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の含フッ素溶媒(α)と、有機酸無水物、下式(5)で表される化合物、下式(6)で表される化合物および下式(7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(β)と、環状カルボン酸エステル化合物とを含む、二次電池用非水電解液。
Figure 2015069704
(ただし、式中、R13〜R20は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基およびリン酸エステル基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4のアルキル基、総炭素数3〜6のシクロアルキル基、総炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、総炭素数3〜6のフッ素化シクロアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する総炭素数2〜6の不飽和炭化水素基、1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のアルキル基、もしくは1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のフッ素化アルキル基である。
21およびR22は、それぞれ独立に塩素原子、または、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基およびリン酸エステル基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4のアルキル基、総炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する総炭素数2〜6の不飽和炭化水素基、もしくは1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のアルキル基である。
は、硫黄原子、窒素原子または炭素原子である。
bは、Xが硫黄原子の場合は0であり、Xが窒素原子の場合は1であり、Xが炭素原子の場合は2である。
cは、1〜3の整数である。)
[2]前記有機酸無水物が、環状有機酸無水物である、前記[1]の二次電池用非水電解液。
[3]前記非水電解液の総質量に対する、前記化合物(β)の質量の割合が0.01〜10質量%である、前記[1]または[2]の二次電池用非水電解液。
[4]前記非水電解液の総質量に対する、前記含フッ素溶媒(α)の質量の割合が30〜80質量%である、前記[1]〜[3]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[5]前記リチウム塩由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、前記環状カルボン酸エステル化合物の総モル数(N)の比率であるN/NLiが1.5〜7.0である、前記[1]〜[4]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[6]前記液状組成物が、飽和環状カーボネート化合物、フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物、飽和環状スルホン化合物(ただし、電解質を除く。)、リン酸トリアルキル化合物およびリン酸トリ(フルオロアルキル)化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(γ)をさらに含む、前記[1]〜[5]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[7]前記リチウム塩由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、前記環状カルボン酸エステル化合物の総モル数(N)と、前記化合物(γ)の総モル数(N)との和の比率である(N+N)/NLiが3.0〜7.0である、前記[6]の二次電池用非水電解液。
[8]前記非水電解液の総質量に対する、前記フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物の質量の割合が30質量%以下である、前記[6]または[7]の二次電池用非水電解液。
[9]前記非水電解液の総質量に対する、前記飽和環状カーボネート化合物の質量と前記フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物の質量との合計質量の割合が30質量%以下である、前記[6]〜[8]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[10]前記含フッ素溶媒(α)が、含フッ素エーテル化合物を含む、前記[1]〜[9]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[11]前記含フッ素エーテル化合物が、下式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[10]に記載の二次電池用非水電解液。
−O−R ・・・(1)
(ただし、式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のアルキル基、または、1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、または1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基である。)
[12]前記含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物が、下式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]〜[11]のいずれかの二次電池用非水電解液。
Figure 2015069704
(ただし、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方はフッ素化アルキル基である。)
[13]前記環状カルボン酸エステル化合物が、下式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]〜[12]のいずれかの二次電池用非水電解液。
Figure 2015069704
(ただし、R〜R12は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜3のアルキル基である。aは0〜3の整数である。)
[14]前記式(4)で表される化合物が、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[13]の二次電池用非水電解液。
[15]前記リチウム塩がLiPFを含む、前記[1]〜[14]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[16]前記非水電解液中の前記リチウム塩の含有量が0.6〜1.8mol/Lである、前記[1]〜[15]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[17]前記非水電解液の総質量に対する前記環状カルボン酸エステル化合物の質量の割合が4〜50質量%である、前記[1]〜[16]のいずれかの二次電池用非水電解液。
[18]リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料を活物質とする正極と、リチウム金属、リチウム合金、ならびにリチウムイオンを吸蔵および放出できる炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を活物質とする負極と、前記[1]〜[17]のいずれかの二次電池用非水電解液と、を有するリチウムイオン二次電池。
本発明の二次電池用非水電解液は、難燃性であり、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を与える。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、安全性を有している。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「非水電解液」とは、水を実質的に含まない電解液であり、仮に水を含んでいたとしてもその水分量が該非水電解液を用いた二次電池に性能劣化が見られない範囲の量である電解液を意味する。非水電解液中に含まれ得る水分量は、非水電解液の総質量に対して500質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以下が特に好ましい。水分量の下限値は、0質量ppmである。
「液状組成物」は、含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物および化合物(β)を含む。液状組成物は、化合物(γ)を含んでいてもよい。
すなわち、本発明における液状組成物は、前記含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物および化合物(β)のみからなるか、または、前記含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物、化合物(β)および化合物(γ)からなるかのいずれかである。
リチウム塩、含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物、化合物(β)および化合物(γ)以外の他の化合物(他の溶媒、添加剤等)は、「他の成分」と定義され、リチウム塩および液状組成物とは区別される。
「有機酸無水物」とは、有機酸が分子内で脱水縮合した化合物、または2つの有機酸が分子間で脱水縮合した化合物を意味する。
「環状有機酸無水物」とは、カルボン酸構造もしくはスルホン酸構造から選ばれる2つ以上の有機酸基を有する有機酸が分子内で脱水縮合した、環状構造を有する化合物である。
「含フッ素エーテル化合物」とは、エーテル結合を有し、フッ素原子を有する鎖状または環状の化合物を意味する。
「含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物」とは、鎖状構造中にエステル結合を有し、エステル結合を含む環構造を有さず、フッ素原子を有する鎖状の化合物を意味する。
「含フッ素鎖状カーボネート化合物」とは、鎖状構造中に−O−C(=O)−O−で表されるカーボネート結合を有し、カーボネート結合を含む環構造を有さず、フッ素原子を有する鎖状の化合物を意味する。
「含フッ素アルカン化合物」とは、アルカンの水素原子の1個以上がフッ素原子に置換され、水素原子が残っている化合物を意味する。
「環状カルボン酸エステル化合物」とは、環骨格の一部としてエステル結合を有する環状の化合物を意味する。
「飽和環状カーボネート化合物」とは、環骨格が炭素原子と酸素原子とからなり、環骨格の一部として−O−C(=O)−O−で表されるカーボネート結合を有し、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有さない環状の化合物を意味する。
「不飽和環状カーボネート化合物」とは、環骨格が炭素原子と酸素原子とからなり、環骨格の一部として−O−C(=O)−O−で表されるカーボネート結合を有し、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状の化合物を意味する。
「フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物」とは、鎖状構造中に−O−C(=O)−O−で表されるカーボネート結合を有し、カーボネート結合を有する環構造を有さず、分子内に炭素−炭素不飽和結合およびフッ素原子を有さない鎖状の化合物を意味する。
「フッ素化」および「含フッ素」とは、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換されることを意味する。
「フッ素化アルキル基」とは、アルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換された基を意味する。一部がフッ素化された基の中には、水素原子およびフッ素原子が存在する。
「炭素−炭素不飽和結合」とは、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を意味する。
「不飽和炭化水素基」とは、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する、炭化水素基を意味する。
<二次電池用非水電解液>
本発明の二次電池用非水電解液(以下、単に非水電解液とも記す。)は、電解質と液状組成物とからなり、必要に応じて他の成分を含む。
非水電解液の25℃におけるイオン伝導度の下限値は、0.4S/mであることが好ましい。25℃におけるイオン伝導度が0.4S/m未満である非水電解液を用いた二次電池は、出力特性が悪く、実用性に乏しい。非水電解液の25℃におけるイオン伝導度が0.4S/m以上であれば、二次電池は出力特性が良好となる。
[電解質]
電解質の少なくとも1種は、リチウム塩である。
電解質としては、リチウム塩のみであってもよく、リチウム塩と、リチウム塩以外の電解質との併用であってもよい。リチウム塩以外の他の電解質としては、モノフルオロリン酸ならびにジフルオロリン酸のナトリウム塩およびカリウム塩、NaPF等が挙げられる。リチウム塩は、非水電解液中で解離してリチウムイオンを供給する。
リチウム塩としては、LiPOF、LiPO、LiPF、下記化合物(A)(ただし、kは1〜5の整数である。)、FSON(Li)SOF、CFSON(Li)SOCF、CFCFSON(Li)SOCFCF、CFCFHSON(Li)SOCFHCF、LiClO、下記化合物(B)、下記化合物(C)、下記化合物(D)、下記化合物(E)、LiBF等が挙げられる。
リチウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Figure 2015069704
非水電解液に含まれるリチウム塩は、LiPFを含むことが好ましい。
LiPFは、溶解能が高い溶媒に溶解させた場合には、高いイオン伝導度を発現できるが、CFCFSON(Li)SOCFCF等の他のリチウム塩に比べて含フッ素溶媒に溶解しにくい。しかし、環状カルボン酸エステル化合物と併用することによって、LiPFの含フッ素溶媒への溶解性が向上する。LiPFが含フッ素溶媒に均一に溶解することによって、実用的に充分なイオン伝導度を有する非水電解液を得やすくなる。また、LiPFは、熱分解しやすく電池の熱安定性を低下させやすいが、本発明の非水電解液が環状カルボン酸エステル化合物を含むことによって、LiPFを用いたリチウムイオン二次電池でも熱暴走が起きにくくなる。
化合物(A)としては、たとえば、下記化合物(A−1)〜化合物(A−4)が挙げられる。イオン伝導度の高い非水電解液が得られやすい点から、化合物(A)としては、kが2の化合物(A−2)を含むことが好ましく、kが2の化合物(A−2)のみからなることがより好ましい。
Figure 2015069704
[液状組成物]
液状組成物は、含フッ素溶媒(α)と、環状カルボン酸エステル化合物と、化合物(β)を含み、必要に応じて化合物(γ)を含んでもよい。すなわち、本発明における液状組成物は、前記含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物および化合物(β)のみからなるか、または、前記含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物、化合物(β)および化合物(γ)からなるかのいずれかである。
(含フッ素溶媒(α))
含フッ素溶媒(α)は、含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物および含フッ素鎖状カーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、必要に応じて他の含フッ素溶媒(ただし、含フッ素環状カーボネート化合物を除く。)を含んでもよい。含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物および含フッ素鎖状カーボネート化合物である。これらの化合物は、フッ素原子の導入による化学的安定性、他の化合物との相溶性等の点で類似の特性を有するものであり、同等の化合物として扱うことができる。
含フッ素溶媒(α)は、分子内にフッ素原子を有する溶媒であり、難燃性に優れる。含フッ素溶媒(α)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。含フッ素溶媒(α)が2種以上の場合、その比率は任意に決めることができる。
含フッ素エーテル化合物:
含フッ素溶媒(α)は、リチウム塩の溶解性、難燃性、非水電解液のイオン伝導度が高くなる点から、含フッ素エーテル化合物を含むことが好ましい。含フッ素エーテル化合物としては、リチウム塩の溶解性、難燃性、非水電解液のイオン伝導度が高くなる点から、下記化合物(1)が好ましい。含フッ素エーテル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(1)を含む場合、化合物(1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。含フッ素エーテル化合物が2種以上の場合、その比率は任意に決めることができる。
−O−R ・・・(1)
ただし、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のアルキル基、または、1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、または1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基である。
化合物(1)におけるアルキル基、およびエーテル性酸素原子を有するアルキル基としては、それぞれ、直鎖構造、分岐構造、または部分的に環状構造を有する基(例えば、シクロアルキルアルキル基)が挙げられる。
およびRの一方または両方は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、または1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基である。RおよびRの一方または両方がこれらの基であると、リチウム塩の非水電解液への溶解性および難燃性がさらに向上する。RおよびRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
化合物(1)としては、リチウム塩の液状組成物への溶解度に優れる点から、RおよびRがいずれも炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である化合物(1−A)と、Rが1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基であり、Rが炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である化合物(1−B)と、Rが炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、Rが炭素数1〜10のアルキル基である化合物(1−C)が好ましく、化合物(1−A)および化合物(1−C)がより好ましく、化合物(1−A)が特に好ましい。
化合物(1)の総炭素数は、少なすぎると沸点が低すぎ、多すぎると高粘度化する点から、4〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
化合物(1)の分子量は、小さすぎると沸点が低すぎ、大きすぎると高粘度化する点から、150〜800が好ましく、150〜500がより好ましく、200〜500が特に好ましい。
化合物(1)がエーテル性酸素原子を有する場合、化合物(1)中のエーテル性酸素原子数は、1〜4が好ましく、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。化合物(1)中のエーテル性酸素原子数は、可燃性に影響する。
化合物(1)中のフッ素含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。化合物(1)中のフッ素含有量が高いと、難燃性に優れる。フッ素含有量は、分子量に占めるフッ素原子の総質量の割合である。
化合物(1)としては、リチウム塩の液状組成物に対する溶解度に優れる点から、RおよびRの両方が、アルキル基の水素原子の一部がフッ素化されたアルキル基である化合物が好ましく、RおよびRの一方または両方の末端が−CFHである化合物がより好ましい。
化合物(1−A)および化合物(1−B)の具体例、ならびに化合物(1−A)および化合物(1−B)以外の含フッ素エーテル化合物の具体例としては、たとえば、国際公開第2009/133899号に記載の化合物等が挙げられる。
化合物(1)としては、リチウム塩の液状組成物への溶解度に優れ、難燃性に優れ、粘度が低く、沸点が低すぎないことから、CFCHOCFCHF、CFCHOCFCHFCF、CHFCFCHOCFCHF、CHCHCHOCFCHF、CHCHOCFCHF、およびCHFCFCHOCFCHFCFからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、CFCHOCFCHF、CHFCFCHOCFCHFおよびCHFCFCHOCFCHFCFからなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物:
含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物は、粘度や沸点等の点から、下記化合物(2)を含むことが好ましく、化合物(2)のみからなることがより好ましい。含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(2)を含む場合、化合物(2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物が2種以上の場合、その比率は任意に決めることができる。
Figure 2015069704
ただし、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方は、炭素数1〜3のフッ素化アルキル基である。
化合物(2)におけるアルキル基、フッ素化アルキル基としては、それぞれ、直鎖構造、分岐構造が挙げられる。
およびRの一方または両方は、炭素数1〜3のフッ素化アルキル基である。RおよびRの一方または両方を炭素数1〜3のフッ素化アルキル基にすることによって、化合物(2)の耐酸化性および難燃性が向上する。RおよびRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
としては、粘度や沸点、あるいは化合物の入手性の点から、メチル基、エチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましく、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基がより好ましい。
としては、粘度や沸点、あるいは化合物の入手性の点から、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基が好ましく、メチル基、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
化合物(2)の総炭素数は、少なすぎると沸点が低すぎ、多すぎると高粘度化する点から、3〜8が好ましく、3〜6がより好ましく、3〜5がさらに好ましい。
化合物(2)の分子量は、小さすぎると沸点が低すぎ、大きすぎると高粘度化する点から、100〜300が好ましく、100〜250がより好ましく、100〜200が特に好ましい。
化合物(2)中のフッ素含有量は、難燃性が向上する点から、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
化合物(2)の具体例としては、酢酸(2,2,2−トリフルオロエチル)、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸エチル等が挙げられる。入手容易性、およびサイクル特性等の電池性能に優れる点から、ジフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチルが好ましい。
含フッ素鎖状カーボネート化合物:
含フッ素鎖状カーボネート化合物は、粘度や沸点等の点から、下記化合物(3)を含むことが好ましく、化合物(3)のみからなることがより好ましい。含フッ素鎖状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(3)を含む場合、化合物(3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。含フッ素鎖状カーボネート化合物が2種以上の場合、その比率は任意に決めることができる。
Figure 2015069704
ただし、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方は、炭素数1〜3のフッ素化アルキル基である。
化合物(3)におけるアルキル基、フッ素化アルキル基としては、それぞれ、直鎖構造、分岐構造が挙げられる。
およびRの一方または両方は、炭素数1〜3のフッ素化アルキル基である。RおよびRの一方または両方を炭素数1〜3のフッ素化アルキル基にすることによって、リチウム塩の溶解性および難燃性が向上する。RおよびRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
化合物(3)としては、粘度や沸点、あるいは化合物の入手性の点から、RおよびRの両方が炭素数1〜3のフッ素化アルキル基である化合物が好ましい。RおよびRとしては、CFCH−、CHFCFCH−が好ましい。
化合物(3)の総炭素数は、少なすぎると沸点が低すぎ、多すぎると高粘度化する点から、4〜10が好ましく、4〜7がより好ましい。
化合物(3)の分子量は、小さすぎると沸点が低すぎ、大きすぎると高粘度化する点から、180〜400が好ましく、200〜350がより好ましく、210〜300が特に好ましい。
化合物(3)中のフッ素含有量は、難燃性が向上する点から、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
化合物(3)の具体例としては、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)カーボネート等が挙げられる。粘度、入手容易性、および出力特性等の電池性能の点から、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートが好ましい。
他の含フッ素溶媒:
含フッ素溶媒(α)は、他の含フッ素溶媒として含フッ素アルカン化合物を含んでもよい。含フッ素アルカン化合物を含む場合、非水電解液の蒸気圧が抑制され、難燃性がさらに向上する。
含フッ素アルカン化合物としては、炭素数4〜12の含フッ素アルカン化合物が好ましい。炭素数が4以上の含フッ素アルカン化合物であれば、非水電解液の蒸気圧が低くなる。炭素数が12以下の含フッ素アルカン化合物であれば、リチウム塩の溶解度が良好である。
含フッ素アルカン化合物中のフッ素含有量は、50〜80質量%が好ましい。含フッ素アルカン化合物中のフッ素含有量が50質量%以上であれば、難燃性に優れる。含フッ素アルカン化合物中のフッ素含有量が80質量%以下であれば、リチウム塩の溶解性を保持しやすい。
含フッ素アルカン化合物としては、直鎖構造の化合物が好ましく、例えば、n−CCHCH、n−C13CHCH、n−C13H、n−C17H等が挙げられる。含フッ素アルカン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(環状カルボン酸エステル化合物)
液状組成物は、環状カルボン酸エステル化合物を含む。環状カルボン酸エステル化合物を含むことによって、含フッ素溶媒(α)にリチウム塩が均一に溶解される。また、環状カルボン酸エステル化合物を含むことによって、非水電解液と正極および負極とが反応しにくくなり、二次電池における熱暴走が起きにくくなる。環状カルボン酸エステル化合物は、1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
環状カルボン酸エステル化合物としては、酸化還元反応への安定性の点から、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有しない飽和環状カルボン酸エステル化合物が好ましい。
環状カルボン酸エステル化合物における環構造は、構造の安定性、および粘度の点から、4〜10員環が好ましく、4〜7員環がより好ましく、入手容易な点から、5〜6員環がさらに好ましく、5員環が特に好ましい。また、入手容易な点から、環状カルボン酸エステル化合物の総炭素数は4〜8が好ましく、4〜6がより好ましい。また、環状カルボン酸エステルは、炭素原子、水素原子および酸素原子のみからなることが好ましく、環構造中に含まれる、−C(=O)−O−結合で表わされるエステル結合以外の部分が炭素原子および水素原子のみからなることがより好ましい。
環状カルボン酸エステル化合物の環構造は、粘度の点から、エステル結合を1つ有する環構造が好ましい。
環状カルボン酸エステル化合物は、アルキレン基の水素原子の1個以上を置換基で置換した化合物であってもよい。置換基としては、たとえば、フッ素原子、塩素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は1〜2が好ましく、フッ素化アルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。
環状カルボン酸エステル化合物は、酸化還元反応への安定性、構造の安定性、および粘度の点から、下記化合物(4)を含むことが好ましく、化合物(4)のみからなることがより好ましい。化合物(4)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Figure 2015069704
ただし、R〜R12は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、または1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜3のアルキル基である。aは、0〜3の整数である。R〜R12は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
〜R12としては、酸化還元反応への安定性、粘度および化合物の入手性の点から、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましい。
aは、粘度および化合物の入手性の点から、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
化合物(4)としては、たとえば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物、および該環状エステル化合物の環を形成する炭素原子に結合する水素原子の1個以上が、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、または1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜3のアルキル基に置換された化合物が挙げられる。化合物(4)としては、入手容易な点、および熱暴走の抑制効果が高い点から、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
(化合物β)
化合物(β)は、有機酸無水物、下記化合物(5)、下記化合物(6)および下記化合物(7)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。本発明の非水電解液が化合物(β)を含むことによって、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
化合物(β)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(β)が2種以上の場合、その比率は任意に決定できる。
Figure 2015069704
ただし、式中、R13〜R20は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基およびリン酸エステル基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4のアルキル基、総炭素数3〜6のシクロアルキル基、総炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、総炭素数3〜6のフッ素化シクロアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する総炭素数2〜6の不飽和炭化水素基、1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のアルキル基、もしくは1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のフッ素化アルキル基である。
21およびR22は、それぞれ独立に塩素原子、または、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基およびリン酸エステル基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4のアルキル基、総炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する総炭素数2〜6の不飽和炭化水素基、もしくは1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のアルキル基である。
は、硫黄原子、窒素原子または炭素原子である。
bは、Xが硫黄原子の場合は0であり、Xが窒素原子の場合は1であり、Xが炭素原子の場合は2である。
cは、1〜3の整数である。
13〜R22において挙げたアルキル基、シクロアルキル基、フッ素化アルキル基、フッ素化シクロアルキル基、不飽和炭化水素基、1個以上のエーテル性酸素原子を有するアルキル基、1個以上のエーテル性酸素原子を有するフッ素化アルキル基は、それぞれ前記置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
有機酸無水物:
有機酸無水物としては、優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が得られやすいことから、環状有機酸無水物が好ましい。
環状有機酸無水物としては、たとえば、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水アジピン酸、無水フタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水マレイン酸、無水1,2−シクロペンタンジカルボン酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、無水1,2−シクロヘプタンジカルボン酸、無水cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水オクタヒドロナフタル酸、無水メチルオクタヒドロナフタル酸等が挙げられる。
有機酸無水物は、前記した環状有機酸無水物以外の有機酸無水物を用いてもよい。たとえば、同一種類の2つの有機酸が分子間で脱水縮合した対称酸無水物(無水酢酸、ベンゼンスルホン酸無水物等)、異なる2種類の有機酸が分子間で脱水縮合した混合酸無水物(ギ酸と酢酸の無水物、メタンスルホン酸とベンゼンスルフィン酸の無水物等)を用いてもよい。
有機酸無水物としては、入手性、および、優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が得られやすいことから、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、ベンゼンスルホン酸カルボン酸無水物誘導体が好ましく、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸がより好ましい。
有機酸無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(5):
が炭素原子でbが2の場合、2つのR15は同一であってもよく、異なっていてもよい。
13〜R15としては、優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が得られやすいことから、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数2〜6の不飽和炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ビニル基がより好ましい。
が硫黄原子で、bが0である化合物(5)の具体例としては、たとえば、チオ酢酸、チオプロピオン酸メチル等が挙げられる。
が窒素原子で、bが1である化合物(5)の具体例としては、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジアリルアセトアミド等が挙げられる。
が炭素原子で、bが2である化合物(5)の具体例としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
化合物(5)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(6):
16〜R20としては、優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が得られやすいことから、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数2〜6の不飽和炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ビニル基、アリル基がより好ましい。
cは、1または2が好ましい。
化合物(6)の具体例としては、たとえば、N−メチルスクシンイミド、N−ビニルスクシンイミド等が挙げられる。
化合物(6)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(7):
21およびR22におけるアルキル基、シクロアルキル基、不飽和炭化水素基、1個以上のエーテル性酸素原子を有するアルキル基は、フッ素原子を有さない基である。
21およびR22としては、入手性、および優れたサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池が得られやすいことから、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数2〜6の不飽和炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基がより好ましい。
化合物(7)の具体例としては、たとえば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル等が挙げられる。
化合物(7)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(化合物(γ))
液状組成物は、リチウム塩の溶解性、イオン伝導度に優れる点から、飽和環状カーボネート化合物、フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物(以下、非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物とも記す。)、飽和環状スルホン化合物(ただし、電解質を除く。)、リン酸トリアルキル化合物およびリン酸トリ(フルオロアルキル)化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(γ)をさらに含んでいることが好ましい。
飽和環状カーボネート化合物としては、たとえば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物としては、たとえば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等が挙げられる。
飽和環状スルホン化合物としては、たとえば、スルホラン、3−メチルスルホラン等が挙げられる。
リン酸トリアルキル化合物としては、たとえば、リン酸トリメチル等が挙げられる。
リン酸トリ(フルオロアルキル)化合物としては、たとえば、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられる。
液状組成物は、非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物を含むことが好ましい。非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物を含むと、非水電解液の粘度を下げることができ、非水電解液におけるリチウムイオン拡散係数や、非水電解液のイオン伝導度を高くしやすい。
[他の成分]
非水電解液は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、リチウム塩、含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物、化合物(β)および化合物(γ)以外の他の化合物(他の溶媒、添加剤等)を含んでいてもよい。
(他の溶媒)
非水電解液は、含フッ素溶媒(α)、環状カルボン酸エステル化合物、化合物(β)および化合物(γ)以外の他の溶媒を含んでもよい。
(添加剤)
非水電解液には、非水電解液の機能を向上させるために、必要に応じて従来公知の添加剤を含ませてもよい。添加剤としては、たとえば、過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤、特性改善助剤、界面活性剤等が挙げられる。
過充電防止剤:
過充電防止剤としては、たとえば、芳香族化合物(ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等)、芳香族化合物の部分フッ素化物(2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等)、含フッ素アニソール化合物(2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニオール等)が挙げられる。過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脱水剤:
脱水剤としては、たとえば、モレキュラーシーブス、芒硝、硫酸マグネシウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウムアルミニウム等が挙げられる。非水電解液に用いる液状組成物や他の溶媒としては、脱水剤で脱水を行った後に精留を行ったものが好ましい。また、精留を行わずに前記脱水剤による脱水のみを行ったものであってもよい。
特性改善助剤:
特性改善助剤は、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するためのものである。特性改善助剤としては、たとえば、不飽和環状カーボネート化合物(ジメチルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−アセチニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、3−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ビス(2−メチルビニル)エチレンカーボネート等)、含硫黄化合物(エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等)、炭化水素化合物(ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等)、含フッ素芳香族化合物(フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン等)が挙げられる。特性改善助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤:
界面活性剤は、電極合材やセパレータへの非水電解液の含浸を助けるものである。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよく、入手が容易で界面活性効果が高い点から、アニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤としては、耐酸化性が高く、サイクル特性、レート特性が良好な点から、含フッ素界面活性剤が好ましい。界面活性剤は1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
[各成分の割合]
(リチウム塩の割合)
非水電解液中のリチウム塩の含有量の上限値は、特に限定されないが、1.8mol/Lが好ましく、1.6mol/Lがより好ましく、1.4mol/Lがさらに好ましい。非水電解液中のリチウム塩の含有量の下限値は、特に限定されないが、0.6mol/Lが好ましく、0.7mol/Lが好ましく、0.8mol/Lがより好ましい。
質量基準に換算すると、非水電解液の総質量に対するリチウム塩の質量の割合は、5〜20質量%が好ましく、7〜17質量%がより好ましく、9〜14質量%がさらに好ましい。
リチウム塩の割合が前記下限値以上であれば、非水電解液のイオン伝導度が高くなる。リチウム塩の割合が前記上限値以下であれば、リチウム塩が液状組成物に均一に溶解しやすく、また低温条件でもリチウム塩が析出しない。また、リチウムイオンが非水電解液中に拡散しやすくなり、リチウムイオン拡散係数が大きくなる。
本発明の非水電解液は、リチウム塩として少なくともLiPFを含むことが好ましい。非水電解液に含まれるリチウム塩の総モル数に対する、LiPFのモル比の下限値は、40mol%が好ましく、50mol%がより好ましく、65mol%がさらに好ましく、80mol%が特に好ましい。非水電解液に含まれるリチウム塩の総モル数に対する、LiPFのモル比の上限値は100mol%である。リチウム塩の総モル数に対する、LiPFのモル比が前記下限値以上であれば、イオン伝導度に優れ、実用性の高い非水電解液となる。
(含フッ素溶媒(α)の割合)
非水電解液の総質量に対する含フッ素溶媒(α)の質量の割合は特に限定されないが、非水電解液の総質量に対する含フッ素溶媒(α)の質量の割合の下限値は、30質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、45質量%が特に好ましい。前記含フッ素溶媒(α)の割合の上限値は、80質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、73質量%がさらに好ましく、70質量%が特に好ましい。
含フッ素溶媒(α)の割合が前記下限値以上であれば、非水電解液は、難燃性に優れ、正極反応性および負極反応性が小さく、熱暴走を起こしにくく、耐高電圧特性を有する。含フッ素溶媒(α)の割合が前記上限値以下であれば、リチウム塩が均一に溶解し、また低温下においてリチウム塩が析出しにくい。
液状組成物の総質量に対する含フッ素溶媒(α)の質量の割合は、30〜90質量%が好ましく、35〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましく、45〜75質量%が特に好ましい。
含フッ素溶媒(α)の割合が前記下限値以上であれば、非水電解液は、難燃性に優れ、正極反応性および負極反応性が小さく、熱暴走を起こしにくく、耐高電圧特性を有する。含フッ素溶媒(α)の割合が前記上限値以下であれば、リチウム塩が均一に溶解し、また低温下においてリチウム塩が析出しにくい。
含フッ素溶媒(α)は、リチウム塩の溶解性、非水電解液の難燃性およびイオン伝導度が高くなる点から、含フッ素エーテル化合物を含むことが好ましい。
含フッ素溶媒(α)の総質量に対する含フッ素エーテル化合物の質量の割合は、25〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がより好ましく、60〜100質量%がさらに好ましく、70〜100質量%が特に好ましい。含フッ素溶媒(α)は、含フッ素得エーテル化合物のみからなることが最も好ましい。
非水電解液の総質量に対する含フッ素エーテル化合物の質量の割合は、10〜80質量%が好ましい。前記含フッ素エーテル化合物の割合の下限値は、20質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、40質量%が特に好ましく、45質量%が最も好ましい。また、前記含フッ素エーテル化合物の割合の上限値は、75質量%がより好ましく、73質量%がさらに好ましく、70質量%が特に好ましい。
含フッ素溶媒(α)が含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物を含む場合、含フッ素溶媒(α)の総質量に対する含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物の質量の割合は、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜40質量%がより好ましく、0.01〜30質量%がさらに好ましく、0.01〜20質量%が特に好ましい。
含フッ素溶媒(α)が含フッ素鎖状カーボネート化合物を含む場合、含フッ素溶媒(α)の総質量に対する含フッ素鎖状カーボネート化合物の質量の割合は、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜40質量%がより好ましく、0.01〜30質量%がさらに好ましく、0.01〜20質量%が特に好ましい。
含フッ素溶媒(α)が含フッ素アルカン化合物を含む場合、非水電解液の総質量に対する含フッ素アルカン化合物の質量の割合は、0.01〜5質量%が好ましい。
含フッ素アルカン化合物の割合が0.01質量%以上であれば、非水電解液の難燃性に優れる。含フッ素アルカンの割合が5質量%以下であれば、リチウム塩の溶解度を維持しやすい。
含フッ素溶媒(α)として、含フッ素エーテル化合物と、含フッ素鎖状カルボン酸エステル、含フッ素鎖状カーボネート化合物および含フッ素アルカン化合物から選ばれる1種以上を併用する場合、それらの比率は任意に決めることができる。
(環状カルボン酸エステル化合物の割合)
非水電解液の総質量に対する環状カルボン酸エステル化合物の質量の割合は、4〜50質量%が好ましく、7〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましく、15〜35質量%が特に好ましい。
環状カルボン酸エステル化合物の割合が前記下限値以上であれば、非水電解液は、リチウム塩を均一に溶解し、かつ非水電解液と正極および負極との反応性が小さく、熱暴走が起こりにくい。環状カルボン酸エステル化合物の割合が前記上限値以下であれば、非水電解液は難燃性に優れる。
非水電解液に含まれる、リチウム塩由来のリチウム原子の総モル数NLiに対する環状カルボン酸エステル化合物の総モル数Nの比率N/NLiは、特に限定されないが、1.5〜7.0が好ましい。前記N/NLiの下限値は、2がより好ましく、2.5がさらに好ましく、3が特に好ましい。また、前記N/NLiの上限値は、6.5が好ましく、6がより好ましく、5がさらに好ましく、4.5が特に好ましく、4.2が最も好ましい。
/NLiが前記範囲内であれば、下記の理由から、リチウム塩を均一に溶解させて充分なイオン伝導度を得つつ、非水電解液と正極および負極との反応性を小さくでき、二次電池の熱暴走が起きることを抑制できる。
非水電解液を二次電池に用いた場合、特に正極において、環状カルボン酸エステル化合物が電極活物質上に安定な被膜を形成し、該被膜によって電極と非水電解液との反応が抑制され、これに伴って熱暴走が抑制されるものと推定される。N/NLiが前記下限値以上であれば、非水電解液中に環状カルボン酸エステル化合物が充分に含まれるため、被膜が充分に形成され、電極と非水電解液との反応の抑制効果が充分に発揮されることによって、充分な熱暴走の抑制効果が得られると考えられる。また、環状カルボン酸エステル化合物は、リチウム塩との親和性が高く、リチウム塩の溶媒への溶解を促進すると考えられる。N/NLiが前記下限値以上であれば、リチウム塩が溶媒に充分に溶解しやすくなり、実用上充分なイオン伝導度を持つ電解液を得やすい。なお、含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物、含フッ素鎖状カーボネート化合物等の含フッ素化合物は、リチウム塩との親和性が低いと考えられ、リチウム塩の溶媒への溶解を促進する効果も非常に小さい傾向にある。
電極活物質上に形成された被膜は、極性の高い溶媒に溶解しやすいと考えられ、極性が高い溶媒中では被膜が形成されても溶解してしまうことによって、被膜形成が不充分となりやすいと推定される。N/NLiが前記上限値以下であれば、非水電解液中の環状カルボン酸エステル化合物の含有量が過多にならず、非水電解液全体の極性が適切な範囲となることによって、電極活物質上に形成された被膜の溶解が起こりにくくなると考えられる。電極活物質上に充分な被膜が維持されることによって、電極と非水電解液とによる発熱反応が起こりにくくなり、熱暴走も起こりにくくなると考えられる。なお、含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物、含フッ素鎖状カーボネート化合物等の含フッ素化合物は、極性が低いため、被膜を溶解させる効果は非常に低いと考えられる。また、可燃性の高い環状カルボン酸エステル化合物の含有量が少なくなることによって、非水電解液の難燃性も向上する。
(化合物(β)の割合)
非水電解液の総質量に対する化合物(β)の質量の割合の下限値は、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましい。化合物(β)の質量の割合が下限値以上であれば、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られやすい。
非水電解液の総質量に対する化合物(β)の質量の割合の上限値は、10質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、3質量%が特に好ましい。化合物(β)の質量の割合が上限値以下であれば、化合物(β)の過剰な分解による高抵抗化を抑制しやすい。
(化合物(γ)の割合)
液状組成物が化合物(γ)を含む場合、非水電解液の総質量に対する化合物(γ)の質量の割合の上限値は、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。非水電解液の総質量に対する化合物(γ)の質量の割合の下限値は0質量%である。
化合物(γ)の割合が前記上限値以下であれば、化合物(γ)と電極との反応を抑制しやすく、安定性に優れた非水電解液が得られる。また、含フッ素溶媒(α)の含有量を多くすることができるため、難燃性に優れた非水電解液が得られやすい。
液状組成物が飽和環状カーボネート化合物を含む場合、非水電解液の総質量に対する飽和環状カーボネート化合物の質量の割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.01〜15質量%がさらに好ましく、0.1〜15質量%が特に好ましく、1〜15質量%が最も好ましい。
飽和環状カーボネート化合物の割合が前記上限値以下であれば、飽和環状カーボネート化合物と電極とが反応しにくく、非水電解液は安定性に優れ、難燃性に優れる。
液状組成物が非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物を含む場合、非水電解液の総質量に対する非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物の質量の割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.01〜15質量%がさらに好ましく、0.1〜15質量%が特に好ましく、1〜15質量%が最も好ましい。
非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物の割合が前記上限値以下であれば、非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物と電極とが反応しにくく、非水電解液は安定性に優れ、難燃性に優れる。
液状組成物が飽和環状カーボネート化合物および非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物を含む場合、非水電解液の総質量に対する飽和環状カーボネート化合物と非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物との合計質量の割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.01〜15質量%がさらに好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。
前記合計質量の割合が前記上限値以下であれば、飽和環状カーボネート化合物および非フッ素系飽和鎖状カーボネート化合物を用いた場合でも、前述の溶媒の極性が高くなることによる、環状カルボン酸エステル化合物の被膜の溶解を抑制することができ、それらと電極との反応性を低く抑えることができ、優れた安定性の非水電解液としやすい。また、可燃性の化合物の含有量を低く抑えることによって、優れた難燃性を有する非水電解液としやすい。
液状組成物がリン酸トリアルキル化合物およびリン酸トリ(フルオロアルキル)化合物の少なくとも一方を含む場合、非水電解液の総質量に対するリン酸トリアルキル化合物およびリン酸トリ(フルオロアルキル)化合物の合計質量の割合は、0.01〜5質量%が好ましい。
リン酸エステル化合物の割合が前記上限値以下であれば、リン酸トリアルキル化合物およびリン酸トリ(フルオロアルキル)化合物と電極とが反応しにくく、非水電解液は安定性に優れ、難燃性に優れる。
液状組成物中の環状カルボン酸エステル化合物と化合物(γ)の合計質量に対する環状カルボン酸エステル化合物の質量の割合は、30〜100質量%が好ましく、35〜100質量%がより好ましく、40〜100質量%がさらに好ましく、45〜100質量%がさらに好ましく、50〜100質量%が特に好ましい。
環状カルボン酸エステル化合物の割合が前記範囲内であれば、非水電解液と正極および負極との反応性を小さくでき、二次電池の熱暴走が起きることを抑制できる。
液状組成物が化合物(γ)を含む場合、リチウム塩由来のリチウム原子の総モル数NLiに対する、環状カルボン酸エステル化合物の総モル数Nと化合物(γ)の総モル数Nとの和の比率(N+N)/NLiは、3.0〜7.0が好ましい。前記(N+N)/NLiの下限値は、3.2がより好ましく、3.5がさらに好ましい。また、前記(N+N)/NLiの上限値は、6.5がより好ましく、6がさらに好ましく、5.5が特に好ましく、4.5が最も好ましい。
化合物(γ)は、環状カルボン酸エステル化合物と同様にリチウム塩との親和性が高く、リチウム塩の溶媒への溶解を促進する効果があると考えられる。(N+N)/NLiが前記下限値以上、すなわちリチウム塩の溶解促進効果が高いと考えられる環状カルボン酸エステル化合物と化合物(γ)の合計量がリチウム塩の量に対して一定以上であれば、含フッ素溶媒(α)に対するリチウム塩の溶解性が向上することによって非水電解液のイオン伝導度が向上し、特にフッ素系溶媒に溶解しにくいLiPF等のリチウム塩を用いる場合においてもフッ素系溶媒に溶解させることができ、実用的に充分なイオン伝導度が得られやすい。
溶媒の極性が高いと、電極活物質上に形成された環状カルボン酸エステル化合物の被膜が溶解し、被膜形成が不充分となりやすい。化合物(γ)も極性が高いため、被膜を溶解する作用を示すと考えられる。(N+N)/NLiが前記上限値以下、すなわち被膜を溶解する作用を示す環状カルボン酸エステル化合物と化合物(γ)の合計量がリチウム塩に対して一定以下であれば、被膜の溶解性が低く、被膜形成が不充分となりにくくなると考えられる。その結果、非水電解液と正極および負極との反応性がより小さくなり、二次電池の熱暴走がより起きにくくなると推定される。また、非水電解液中の可燃性の高い環状カルボン酸エステル化合物や化合物(γ)の含有量が少なくなることによって、非水電解液の難燃性も向上する。
特に、LiPFを含むリチウム塩を用いて、N/NLiおよび(N+N)/NLiを前記範囲内に制御することによって、実用的に充分なイオン伝導度と、熱暴走が起きにくい優れた安定性とを兼ね備えた非水電解液が得られやすい。
(他の成分の割合)
非水電解液が他の溶媒を含む場合、非水電解液の総質量に対する他の溶媒と化合物(γ)との合計質量の割合は、0.01〜30質量が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。他の溶媒と化合物(γ)との合計質量の割合が前記上限値以下であれば、他の溶媒および化合物(γ)と電極との反応を抑制しやすく、安定性に優れた非水電解液が得られる。また、含フッ素溶媒(α)の含有量を多くすることができるため、難燃性に優れた非水電解液が得られやすい。
非水電解液が過充電防止剤を含む場合、非水電解液の総質量に対する過充電防止剤の質量の割合は、0.01〜5質量%が好ましい。
過充電防止剤の割合が前記範囲内であれば、過充電による二次電池の破裂および発火を抑制することがさらに容易になり、二次電池をより安定に用いることができる。
非水電解液が特性改善助剤を含む場合、非水電解液の総質量に対する特性改善助剤の質量の割合は、0.01〜5質量%が好ましい。
非水電解液が界面活性剤を含む場合、非水電解液の総質量に対する界面活性剤の質量の割合は、0.05〜5質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましい。
[作用効果]
以上説明した本発明の非水電解液にあっては、化合物(β)を含むため、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。この効果が得られる機構は必ずしも明らかではないが、化合物(β)が負極上で分解して、界面抵抗が小さくリチウムイオン伝導性に優れ、また電解液の分解を抑制しうる良好な被膜を形成するためであると考えられる。
また、本発明の非水電解液は、含フッ素溶媒(α)および環状カルボン酸エステル化合物を含むため、正極および負極と非水電解液との反応性が小さく、それらの反応による発熱量が低減されるため、熱暴走を起こしにくいリチウムイオン二次電池を得ることができる。
また、本発明の非水電解液は、含フッ素溶媒(α)を含むため、難燃性である。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、本発明の非水電解液とを有するものである。
[正極]
正極としては、正極活物質と導電付与剤と結着剤とを含む正極層が、集電体上に形成されてなる電極が挙げられる。
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料であればよい。正極活物質としては、公知のリチウムイオン二次電池用の正極活物質を採用でき、たとえば、リチウム含有遷移金属酸化物、1種類以上の遷移金属を用いたリチウム含有遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物、オリビン型金属リチウム塩等が挙げられる。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リチウム含有遷移金属酸化物としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO等)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO等)、リチウムマンガン酸化物等(LiMnO、LiMn、LiMnO等)が挙げられる。
リチウム含有遷移金属複合酸化物に含まれる金属としては、Al、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Yb等が好ましい。リチウム含有遷移金属複合酸化物としては、リチウム三元系複合酸化物(Li(NiCoMn)O(ただし、p,q,r≧0、p+q+r=1である。)等)、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Yb等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
リチウム含有遷移金属複合酸化物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
LiMn0.5Ni0.5
LiMn1.8Al0.2
LiNi0.85Co0.10Al0.05
LiMn1.5Ni0.5
LiNi1/3Co1/3Mn1/3
LiMn1.8Al0.2等。
遷移金属酸化物としては、TiO、MnO、MoO、V、V13等が挙げられる。
遷移金属硫化物としては、TiS、FeS、MoS等が挙げられる。
金属酸化物としては、SnO、SiO等が挙げられる。
オリビン型金属リチウム塩は、Li(ただし、XはFe(II)、Co(II)、Mn(II)、Ni(II)、V(II)またはCu(II)であり、YはPまたはSiであり、0≦L≦3、1≦x≦2、1≦y≦3、4≦z≦12、0≦s≦1である。)で表される物質またはこれらの複合体である。
オリビン型金属リチウム塩の具体例としては、下記のものが挙げられる。
LiFePO
LiFe(PO
LiFeP
LiMnPO
LiNiPO
LiCoPO
LiFePOF、
LiMnPOF、
LiNiPOF、
LiCoPOF、
LiFeSiO
LiMnSiO
LiNiSiO
LiCoSiO等。
正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス)、硫酸塩(硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等)、炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)等が挙げられる。
正極活物質に対する表面付着物質の量は、0.1質量ppm以上20質量%以下が好ましく、1質量ppm以上10質量%以下がより好ましく、10質量ppm以上5質量%以下が特に好ましい。表面付着物質によって、正極活物質表面での非水電解液の酸化反応を抑制でき、電池寿命を向上させることができる。
正極活物質としては、放電電圧が高く、かつ電気化学的安定性が高い点から、α−NaCrO構造を母体とするリチウム含有複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiMnO等)、スピネル型構造を母体とするリチウム含有複合酸化物(LiMn等)が好ましい。
(導電付与剤)
導電付与剤としては、炭素材料、金属物質(Al等)、導電性酸化物の粉末等が挙げられる。
(結着剤)
結着剤としては、樹脂バインダー(ポリフッ化ビニリデン等)、ゴム系バインダー(炭化水素ゴム、フッ素ゴム等)が挙げられる。
(集電体)
集電体としては、Al等を主体とする金属薄膜が挙げられる。
[負極]
負極としては、粉末状の負極活物質と導電付与剤と結着剤とを含む負極層が、集電体上に形成されてなる電極が挙げられる。なお、負極活物質が、それ自体で形状を保てる場合(たとえばリチウム金属薄膜である場合)は、負極活物質のみで負極を形成できる。
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、ならびにリチウムイオンを吸蔵および放出できる炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
リチウム合金としては、Li−Al合金、Li−Pb合金、Li−Sn合金等が挙げられる。
炭素材料としては、黒鉛、コークス、ハードカーボン等が挙げられる。
(導電付与剤、結着剤)
負極の結着剤および導電付与剤としては、正極と同様のものを用いることができる。
(集電体)
集電体としては、Cu等を主体とする金属薄膜が挙げられる。
[セパレータ]
正極と負極の間には、短絡を防止するためにセパレータを介在させる。セパレータとしては、たとえば、多孔膜が挙げられる。非水電解液は該多孔膜に含浸させて用いる。また、多孔膜に非水電解液を含浸させてゲル化させたものをゲル電解質として用いてもよい。
多孔膜としては、非水電解液に対して安定であり、かつ保液性に優れるものを用いることができる。多孔膜としては、多孔性シートまたは不織布が好ましい。
多孔膜の材料としては、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー等)、ポリイミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられ、耐酸化性、透気度、入手性等の点から、ポリオレフィンが好ましい。
[電池外装体]
電池外装体の材料としては、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウムまたはその合金、ニッケル、チタン、樹脂材料、フィルム材料等が挙げられる。
[形状]
リチウムイオン二次電池の形状は、用途に応じて選択すればよく、コイン型、円筒型、角型、ラミネート型等のいずれの形状であってもよい。また、正極および負極の形状は、二次電池の形状に合わせて適宜選択することができる。
[充電電圧]
本発明のリチウムイオン二次電池の充電電圧は、3.4V以上が好ましく、4.0V以上がより好ましく、4.2V以上がさらに好ましい。正極活物質が、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物の場合の充電電圧は、4.0V以上が好ましく、4.2V以上がより好ましい。正極活物質がオリビン型金属リチウム塩の場合の充電電圧は、3.2V以上が好ましく、3.4V以上がより好ましい。
[作用効果]
以上説明した本発明のリチウムイオン二次電池にあっては、本発明の非水電解液を用いているため、初回充放電効率が高く、サイクル特性に優れている。また、本発明の非水電解液を用いているため、熱暴走が起きにくく、難燃性であり、安全性に優れている。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜15は実施例、例16〜18は比較例である。
[化合物]
実施例にて用いた化合物および略号は、下記のとおりである。
(リチウム塩)
LPF:LiPF
(含フッ素溶媒(α))
AE3000:CFCHOCFCHF(商品名:AE−3000、旭硝子社製)、
HFE5510:CHFCFCHOCFCHFCF
HFE458:CHFCFCHOCFCHF
MFA:ジフルオロ酢酸メチル。
(環状カルボン酸エステル化合物)
GBL:γ−ブチロラクトン。
(化合物(β))
SA:無水コハク酸、
GA:無水グルタル酸、
PA:無水フタル酸、
MSI:N−メチルスクシンイミド、
VP:プロピオン酸ビニル。
(化合物(γ))
DMC:ジメチルカーボネート。
(他の成分)
VC:ビニレンカーボネート。
[評価方法]
(評価用電極の作製)
1.評価用電極(負極)の作製:
人造黒鉛(4.25g)と、導電材であるカーボンブラック(電気化学工業社製、0.15g)を混合し、自転公転式撹拌機(株式会社シンキー社製、あわとり練太郎AR−E310)を用いて回転数2000rpmで1分間撹拌する工程を3回行った。次いで、1質量%のカルボキシメチルセルロース水溶液(4.25g)を添加し、さらに前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで5分間撹拌する工程を2回行った。さらに、同じカルボキシメチルセルロース水溶液(4.25g)を添加し、前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで10分間撹拌した。その後、固形分濃度を40質量%に調整したスチレン−ブタジエンゴム水性分散ラテックスバインダ(0.13g)を添加し、前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで5分間撹拌して電極塗工用スラリーを得た。
厚み20μmの銅箔上に前記スラリーを塗工し、乾燥した後、直径16mmの円形に打ち抜いて評価用電極(負極)とした。
2.評価用電極(正極)の作製:
LiCoO(AGCセイミケミカル社製、商品名「セリオンC」、32.0g)と、カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名「デンカブラック」、0.80g)とを混合し、前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで1分間撹拌する工程を3回行った。次いで、N−メチル−2−ピロリドン(7.50g)を加えて前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで3分間撹拌する工程を3回行った。次いで、N−メチル−2−ピロリドン(1.0g)を加えて前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで3分間撹拌する工程を3回行った。さらに、ポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液(11質量%、7.45g)を加えて前記撹拌機を用いて回転数2000rpmで1分間撹拌し、スラリーとした。該スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔に塗工し、乾燥した後、直径15mmの円形に打ち抜いて評価用電極(正極)とした。
(充放電試験)
前記正極と前記負極の間に、セパレータとしてポリオレフィン系微多孔膜を存在させ、そこに各例で調製した非水電解液を0.1mL添加し、評価用セルを作成した。
評価用セルを25℃に保たれた恒温槽内に設置し、充放電機に接続し、0.05Cに相当する定電流で3.4V(セル電圧、以下同じ。)まで充電し、さらに0.2Cに相当する定電流で4.35Vまで充電し、さらに充電下限電圧において電流値が0.02Cに相当する電流となるまで充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で3.0Vまで放電した。この1サイクルにおける充放電の容量をそれぞれ初回充電容量および初回放電容量とし、初回充電容量に対する初回放電容量の割合[(初回放電容量)/(初回充電容量)×100]を初回充放電効率(単位:%)とした。
2サイクルから4サイクルまでは、0.2Cに相当する定電流で4.35Vまで充電し、さらに充電下限電圧において電流値が0.02Cに相当する電流となるまで充電を行った。その後、0.2Cに相当する定電流で3.0Vまで放電した。
5サイクル目以降は、1.0Cに相当する定電流で4.35Vまで充電し、さらに充電下限電圧において電流値が0.02Cに相当する電流となるまで充電を行った。その後、1.0Cに相当する定電流で3.0Vまで放電した。
なお、1Cとは、電池の基準容量を1時間で放電する電流量を意味する。
11回目の充放電における放電容量に対する、300回目の充放電における放電容量の比率を放電容量維持率とした。
[例1]
リチウム塩であるLPF(0.15g)を、含フッ素溶媒(α)であるAE3000(1.02g)中に拡散した後、環状カルボン酸エステル化合物であるGBL(0.35g)と、化合物(β)であるSA(0.03g)を混合し、均一な溶液を得た。その後、該溶液に対してVC(0.03g)を加えて非水電解液とした。
[例2〜18]
リチウム塩等の各化合物の組成を表1および表2に示すように変更した以外は、例1と同様にして非水電解液を得た。
各例における放電容量維持率の評価結果を表1および表2に示す。
Figure 2015069704
Figure 2015069704
表1および表2に示すように、含フッ素溶媒(α)、化合物(β)および環状カルボン酸エステル化合物を含む非水電解液を用いた例1〜15では、初回充放電効率が高く、また放電容量維持率が高くサイクル特性に優れていた。
一方、含フッ素溶媒(α)と環状カルボン酸エステル化合物を含むものの、化合物(β)を含まない非水電解液を用いた例16〜18では、例1〜15に比べて初回充放電効率が低く、また放電容量維持率も低くサイクル特性に劣っていた。
本発明の非水電解液は、リチウムイオン二次電池用の非水電解液として有用である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯電話、携帯ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電動工具、ノートパソコン、携帯情報端末、携帯音楽プレーヤー、電気自動車、ハイブリット式自動車、電車、航空機、人工衛星、潜水艦、船舶、無停電電源装置、ロボット、電力貯蔵システム等の様々な用途に適用できる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリット式自動車、電車、航空機、人工衛星、潜水艦、船舶、無停電電源装置、ロボット、電力貯蔵システム等の大型二次電池として特に有用である。

Claims (18)

  1. 電解質と液状組成物を含む非水電解液であって、
    前記電解質の少なくとも1種がリチウム塩であり、
    前記液状組成物が、含フッ素エーテル化合物、含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物および含フッ素鎖状カーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の含フッ素溶媒(α)と、有機酸無水物、下式(5)で表される化合物、下式(6)で表される化合物および下式(7)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(β)と、環状カルボン酸エステル化合物とを含む、二次電池用非水電解液。
    Figure 2015069704
    (ただし、式中、R13〜R20は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基およびリン酸エステル基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4のアルキル基、総炭素数3〜6のシクロアルキル基、総炭素数1〜4のフッ素化アルキル基、総炭素数3〜6のフッ素化シクロアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する総炭素数2〜6の不飽和炭化水素基、1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のアルキル基、もしくは1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のフッ素化アルキル基である。
    21およびR22は、それぞれ独立に塩素原子、または、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基およびリン酸エステル基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4のアルキル基、総炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素−炭素不飽和結合を有する総炭素数2〜6の不飽和炭化水素基、もしくは1個以上のエーテル性酸素原子を有する総炭素数2〜4のアルキル基である。
    は、硫黄原子、窒素原子または炭素原子である。
    bは、Xが硫黄原子の場合は0であり、Xが窒素原子の場合は1であり、Xが炭素原子の場合は2である。
    cは、1〜3の整数である。)
  2. 前記有機酸無水物が、環状有機酸無水物である、請求項1に記載の二次電池用非水電解液。
  3. 前記非水電解液の総質量に対する、前記化合物(β)の質量の割合が0.01〜10質量%である、請求項1または2に記載の二次電池用非水電解液。
  4. 前記非水電解液の総質量に対する、前記含フッ素溶媒(α)の質量の割合が30〜80質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  5. 前記リチウム塩由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、前記環状カルボン酸エステル化合物の総モル数(N)の比率であるN/NLiが1.5〜7.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  6. 前記液状組成物が、飽和環状カーボネート化合物、フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物、飽和環状スルホン化合物(ただし、電解質を除く。)、リン酸トリアルキル化合物およびリン酸トリ(フルオロアルキル)化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(γ)をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  7. 前記リチウム塩由来のリチウム原子の総モル数(NLi)に対する、前記環状カルボン酸エステル化合物の総モル数(N)と、前記化合物(γ)の総モル数(N)との和の比率である(N+N)/NLiが3.0〜7.0である、請求項6に記載の二次電池用非水電解液。
  8. 前記非水電解液の総質量に対する、前記フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物の質量の割合が30質量%以下である、請求項6または7に記載の二次電池用非水電解液。
  9. 前記非水電解液の総質量に対する、前記飽和環状カーボネート化合物の質量と前記フッ素原子を有しない飽和鎖状カーボネート化合物の質量との合計質量の割合が30質量%以下である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  10. 前記含フッ素溶媒(α)が、含フッ素エーテル化合物を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  11. 前記含フッ素エーテル化合物が、下式(1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の二次電池用非水電解液。
    −O−R ・・・(1)
    (ただし、式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のアルキル基、または、1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方は、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基、炭素数3〜10のフッ素化シクロアルキル基、または1個以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のフッ素化アルキル基である。)
  12. 前記含フッ素鎖状カルボン酸エステル化合物が、下式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
    Figure 2015069704
    (ただし、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のフッ素化アルキル基であり、RおよびRの一方または両方はフッ素化アルキル基である。)
  13. 前記環状カルボン酸エステル化合物が、下式(4)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
    Figure 2015069704
    (ただし、R〜R12は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、またはエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜3のアルキル基である。aは0〜3の整数である。)
  14. 前記式(4)で表される化合物が、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項13に記載の二次電池用非水電解液。
  15. 前記リチウム塩がLiPFを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  16. 前記非水電解液中の前記リチウム塩の含有量が0.6〜1.8mol/Lである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  17. 前記非水電解液の総質量に対する前記環状カルボン酸エステル化合物の質量の割合が4〜50質量%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液。
  18. リチウムイオンを吸蔵および放出できる材料を活物質とする正極と、リチウム金属、リチウム合金、ならびにリチウムイオンを吸蔵および放出できる炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を活物質とする負極と、請求項1〜17のいずれか一項に記載の二次電池用非水電解液と、を有するリチウムイオン二次電池。
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