JP2015056223A - 非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極活物質の製造方法、非水系二次電池用正極および非水系二次電池 - Google Patents

非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極活物質の製造方法、非水系二次電池用正極および非水系二次電池 Download PDF

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崇 中林
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Abstract

【課題】高容量かつ高レート特性な非水系二次電池用正極活物質の提供。【解決手段】非水系二次電池用正極活物質は、化学式AxMDyOz(Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素であり、Dは、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する典型元素であり、0<x≰2、1≰y≰2、3≰z≰7である。)で表される遷移金属化合物に、炭素被覆が形成された非水系二次電池用正極活物質であって、平均一次粒子径が10nm以上200nm以下の範囲であり、平均一次粒子径の真球を仮定して計算した比表面積に対する前記炭素被覆を除去して測定した比表面積の実測値の比が、1.0以上2.0以下の範囲であって、二次粒子の空隙率が33vol%以上48vol%以下である。好ましくは、遷移金属化合物は、化学式LiMPO4(MはFe、Mn、Co、及びNiのうち少なくとも1つを含む金属元素である。)で表される。【選択図】図1

Description

本発明は、非水系二次電池用正極活物質及びその製造方法、並びにその正極活物質を用いた非水系二次電池用正極および非水系二次電池に関する。
リチウム二次電池用の正極活物質としては、従来はコバルト酸リチウムが主流であり、これを用いたリチウム二次電池が広く用いられている。しかし、コバルト酸リチウムの原料であるコバルトは産出量が少なく高価であり、代替材料が検討されている。代替材料として挙げられているスピネル構造を持つマンガン酸リチウムは、放電容量が十分でなく、高温でマンガンが溶出することが問題となっている。また、高容量が期待できるニッケル酸リチウムは、高温時の熱安定性に課題を有する。
現在、リチウム二次電池を始めとした電池の安全性向上のために、PO 3−を始めとするポリアニオン(PO 3−、BO 3−、SiO 4−など、一種の典型元素と複数の酸素が結合してなるアニオン)を有する活物質(LiMPO、LiMSiO、LiMBOなどであり、Mは金属元素である。以後、「ポリアニオン系活物質」と称する)が提案されている。
特に、熱安定性が高く安全性に優れるオリビン型正極活物質が正極活物質として期待されている。オリビン型正極活物質は、化学式LiMPO(Mは金属元素)で表され、構造内に強固なP−O結合を有し、高温時も酸素が脱離しないためである。
しかし、ポリアニオン系活物質は、電子の局在化のために導電性が悪く、電子伝導性とイオン伝導性に劣るといった欠点を有する。このため、放電容量を十分に取り出すことができないといった課題がある。これは、例えばオリビン型正極活物質には強固なP−O結合が存在するために、電子が局在化してしまうためであり、他のポリアニオン系活物質もアニオンの結合により同様の課題を有する。
このような課題に対し、電子導電性を向上させるために、オリビン型正極活物質の表面を炭素で被覆する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、電子伝導性とイオン伝導性を改善するため、オリビン型正極活物質を小粒径化して、反応面積を増加し拡散距離を短縮する技術が提案されている(例えば、非特許文献1)。
オリビン型正極活物質を炭素被覆する方法には、アセチレンブラックや黒鉛と混合し、ボールミルなどによって密着させる方法や、糖、有機酸、またはピッチなどの有機物と混合し焼成する方法がある。
また、オリビン型正極活物質を小粒径化する手法としては、焼成温度の低減、炭素源との混合による成長抑制がある。
特開2001−15111号公報
A. Yamada, S. C. Chung, and K. Hinokuma "Optimized LiFePO4 for Lithium Battery Cathodes" Journal of the Electrochemical Society 148(2001), pp. A224−A229
しかしながら、電池性能改善のため、更なる電子導電性の向上が望まれており、炭素による活物質の被覆、活物質粒子の小粒径化に加え、もしくは替わりに、更なる改善が必要となる。本発明は、さらにレート特性等を改善する非水系二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
本発明に係る非水系二次電池用正極活物質は、化学式AMD(Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素であり、Dは、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する典型元素であり、0<x≦2、1≦y≦2、3≦z≦7である。)で表される遷移金属化合物に、炭素被覆が形成された非水系二次電池用正極活物質であって、平均一次粒子径が10nm以上200nm以下の範囲であり、平均一次粒子径の真球を仮定して計算した比表面積に対する炭素被覆を除去して測定した比表面積の実測値の比が、1.0以上2.0以下の範囲であって、二次粒子の空隙率が33vol%以上48vol%以下である。好ましくは、遷移金属化合物は、化学式LiMPO(MはFe、Mn、Co、及びNiのうち少なくとも1つを含む金属元素である。)で表される。
本発明に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法は、化学式AMD(Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素であり、Dは、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する典型元素であり、0<x≦2、1≦y≦2、3≦z≦7である。)で表される遷移金属化合物を備える非水系二次電池用正極活物質の製造方法であって、正極活物質を形成するための原料を混合する工程と、混合した原料を、正極活物質の結晶化温度以上、かつ、結晶化温度に200℃を加えた温度以下である仮焼成温度で仮焼成する工程と、仮焼成体に炭素源を混合する工程と、炭素源が混合された仮焼成体を含むスラリーを噴霧乾燥して球状二次粒子を形成する工程と、球状二次粒子を本焼成する工程と、を含む。好ましくは、遷移金属化合物は、化学式LiMPO(MはFe、Mn、Co、及びNiのうち少なくとも1つを含む金属元素である。)で表される。
本発明によれば、高容量かつ高レート特性の非水系二次電池用正極活物質を提供することができる。
本発明を係る非水系二次電池用正極を用いた非水系二次電池を示す図である。 本発明法で合成した正極活物質粉末の外観写真である。 比較例における正極活物質粉末の外観写真である。 実施例における球状に二次粒子化した正極活物質の外観写真である。 実施例および比較例の空隙率およびレート特性の関係を示す図である。
本発明における非水系二次電池用正極活物質は、化学式AMD(Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素である。Dは、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する典型元素であり、0<x≦2、1≦y≦2、3≦z≦7である。)、好ましくは化学式LiMPO(MはFe、Mn、Co、及びNiのうち少なくとも1つを含む金属元素である。)で表される遷移金属化合物を備える。
このようなオリビン型正極活物質を初めとするポリアニオン系正極活物質は電子伝導性が低く、被覆による導電性向上と小粒径化を行うことが好ましい。しかし、過度の小粒径化により粒子が凝集すると、却ってレート特性が低下するおそれがある。
発明者らは、粒子表面の粗さを高め、ラフネスファクターの大きな粒子を合成することにより、容量、レート特性に優れた粒子を得ることができることを見出した。また、噴霧乾燥装置にて球形の二次粒子を作製し、得られた二次粒子の空隙率を最適化(33vol%以上48vol%以下)することによりレート特性の優れた正極活物質を得ることが出来ることを見出した。
本発明の製造方法によれば、仮焼成において比表面積の大きな微結晶体が形成される。そして、本焼成時にこれらの微結晶が複数結合することにより、ラフネスファクターの大きな活物質を得ることができる。ここで、ラフネスファクターとは、次式(1)に示すように、X線回折により得られる平均一次粒子径を直径とする真球を仮定して計算される比表面積に対する実際の比表面積の比である。
Figure 2015056223
ラフネスファクターの値は、粒子表面が粗くなり、凹凸が増えると増加する。また、粒子同士が凝集や焼結をすると、ラフネスファクターの値は低下する。凝集や焼結は粒子の比表面積を低下させ、活物質の反応性を低下させるため、ラフネスファクターによる規制は有効である。
また、本発明が対象とするポリアニオン系正極活物質は、導電性向上のために、炭素被覆など導電性物質による表面被覆を行う必要がある。活物質に炭素など比表面積が大きい物質が付着すると、その影響で、活物質本来の比表面積よりも高い値が測定されてしまうことがある。さらには、被覆量によって比表面積が大きく変化し、比表面積が活物質粒子自体の特性を反映しなくなってしまうおそれがある。
そのため、以下の説明における比表面積測定では、活物質粒子の比表面積を測定する際に、表面被覆を除去した粒子を用いた。除去方法は限定されないが、粒子表面の形状を変化させるものであってはならない。例えば、炭素被覆の場合、450℃空気雰囲気下で1時間加熱することにより、粒子表面の形状に影響を与えない上で炭素被覆を除去できる。
本発明は、オリビン型正極活物質を初めとした、粒子径を200nm以下にして低抵抗化して使用することが必要な活物質を対象としている。しかしながら、過度に小粒径化された粒子は電極化した際の充填密度が上がりにくく、さらに被覆炭素以外の導電助材、結着材の使用量を多くする必要があり、電極の体積エネルギー密度が低下するおそれがある。また、電極作製プロセスにおいてスラリー化した際、凝集を起し易く、電極の平滑性、均一性を損なうおそれがある。特に、粒子径を200nm以下の微粒子では合成時に凝集が起きやすく、凝集により比表面積が低下し、ラフネスファクターが低下しやすい。そのため、ラフネスファクターを大きくするためには、活物質粒子の表面粗さを向上させると共に、凝集、焼結を防ぐ合成法を行う必要がある。
詳細は後述するが、本発明における正極活物質の合成方法は固相合成法であって、正極活物質の合成において2回以上の固相焼成工程を有し、最後の焼成工程以外の焼成工程(以下、仮焼成と記す)は、固相反応における結晶化温度以上かつそれを大きく超えない温度で行うことを特徴とする。さらに、最後の焼成工程(以下本焼成と記す)では、有機炭素源が炭化する600℃から急速に粒成長が始まる900℃の範囲で焼成することが望ましい。
なお、仮焼成においては、微結晶中への炭素の混入による欠陥の生成を防ぐために、炭素源と混合しない状態で焼成することが望ましい。さらには原料由来炭素成分を除去するために酸化雰囲気下で行うことが望ましい。
このような手法で合成された粒子(一次粒子)は、ラフネスファクターが大きいので、同一粒子径のラフネスファクターが小さい粒子と比べると、比表面積が大きく、反応性に優れる。また、粒子径を大きくした場合には、小粒径化の弊害を抑えつつ、反応抵抗を下げることが可能である。逆に、粒子径を小さくした場合には、より低抵抗な粒子を得ることができる。
固相合成法であっても、結晶化温度より低い温度で仮焼成した場合は仮焼成で多量の未反応物が生じる。これら未反応物は本焼成において活物質相に転移するが、その際に複数の粒子同士を結合してしまい、粒子の凝集や焼結を招く。粒子の凝集や焼結が起きると、比表面積が低下し、反応性が下がる。そこで、本発明における合成法では、仮焼成において結晶化温度より高い温度で焼成し、原料を全て目的活物質相にする。さらに、粒子の周囲を炭素被覆で覆って孤立させることにより、凝集や焼結を抑え、比表面積を高く保つことができる。なお、仮焼成温度が高すぎる温度の場合は結晶が粗大化する場合がある。また、炭素被覆状態が不十分であったり本焼成温度が高すぎたりする場合も同様である。
なお、また固相法以外の合成法としては水熱合成法が挙げられる。水熱合成法では不純物のない、分散した一次粒子が得られる。しかし、水熱合成法で作製した粒子は表面が平滑になる。これは結晶面の成長速度に応じた核成長をするためである。このような平滑な粒子に比べ、本発明における合成法による一次粒子は、同じ粒子径での比表面積が大きく、反応性に優れる。
発明者らは粒子径が200nm以下の粒子においてラフネスファクターの値を1.0以上にすることにより、低抵抗と電極作成時の扱いやすさとを両立した粒子が得られることを見出した。ラフネスファクターの値が3以上になると粒子の形状が球から大きく外れるために、充填密度に問題を生じる。そのため、ラフネスファクターは、1.0以上2以下とするのが望ましい。粒子径は10nm以上200nm以下が望ましい。粒子径が200nmよりも大きくなると、十分な反応性が得られない。逆に、粒子径が10nmよりも小さくなると、合成上困難なことに加え、凝集が起きやすく、実用上問題がある。
本明細書においては、平均一次粒子径(以下、単に粒子径と記す)とは、X線回折(XRD)測定結果における積分幅を用いて求める物性値を意味する。なお、XRD測定には、リガク社製RINT2000を用いた。測定は集中法で行い、X線はCuKα線を用い、出力を40kV、40mAとした。ステップ幅が0.03°、1ステップ当たりの測定時間が15秒という測定条件での測定データをSavitzky−Goley法によりスムージングした後、バックグラウンド及びKα線を除去し、その時の(101)ピーク(空間群をPmnaとした)の積分幅βexpを求めた。さらに、同一装置、同一条件で標準Siサンプル(NIST標準試料640d)を測定したときの積分幅βiを求め、次式(2)により積分幅βを定義した。
Figure 2015056223
この積分幅βを用い、次式(3)に示すScherrerの式を用いて結晶子径Dを求めた。ここでλはX線源の波長、θは反射角、KはScherrer定数であり、K=4/3とした。
Figure 2015056223
比表面積はBEL社製、BELSORP miniを用いてBET法により測定した。平均二次粒子径はレーザー回折式粒度分布計(HORIBA社製LA−920)にて平均粒径を測定した。二次粒子の空隙率はQuanta Chrome.Co.社製、Pore Master 60−GTにて測定した。
なお、本発明における合成法は、オリビン型正極活物質だけでなく、ケイ酸塩やホウ酸塩など他のポリアニオンを有する正極活物質AMDに関しても適用可能である。ここで、Aはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素であり、Dは酸素と共有結合を形成する典型元素であり、Oは酸素であり、0<x≦2、1≦y≦2、3≦z≦6である。DとOが結合してアニオンを形成する。
これらのポリアニオンを有する正極活物質は、オリビン型正極活物質と同様に、電子伝導性が低いという特徴があり、そのために小粒径化と炭素被覆が必須である。しかしながら、小粒径化と炭素被覆は結晶性の低下を招くおそれがある。
しかしながら、後述するような合成法を適用することにより、オリビン型正極活物質を含むポリアニオン系活物質を小粒子径、高導電率、かつ高結晶性とすることができるとともに、その一次粒子を用い、スラリー濃度、添加剤、乾燥条件などの製造条件を適切に調整することで、良好な空隙率を有する二次粒子を得ることができる。その結果、高容量かつ高レート特性のリチウム二次電池(非水系二次電池)用正極とリチウム二次電池(非水系二次電池)を提供することができる。
以下、本発明による正極活物質の製造方法を詳しく説明する。
<原料の混合>
結晶化温度以上でかつ結晶化温度を大幅に超えない温度で仮焼成を行うことにより、微結晶を析出させることができる。ここで、大幅に超えない温度とは、正極活物質の結晶化温度以上、かつ、結晶化温度に200℃を加えた温度以下であることを指す。後述する420℃以上600℃以下が好ましく、特に420℃〜500℃が好ましい。この時、微結晶の大きさは原料の粒子径に依存するため、微結晶を小さくするには正極活物質の原料の粒子径は小さいほど望ましい。また、原料が均一に混合していない場合、仮焼成時に析出する結晶が粗大化したり、異相が発生したりするため、より均一に混合されていることが望ましい。
具体的には、ビーズミルなどを用いて機械的に原料を粉砕して混合する方法や、酸、アルカリ、キレート剤などを用いて原料を溶液状態にしたものを乾燥させることにより混合する方法が挙げられる。特に、溶液状態を経たものは、原料が分子レベルで混合するため、微結晶の析出に有利である。
正極活物質の原料としては、焼成後に残留しない塩を用いることが望ましい。原料の金属源としては、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩などのうち、少なくとも1つを用いることができる。なお、金属とは、本明細書中のAMDにおけるM(遷移金属)に相当する。Mは、Fe、Mn、Co、Niなどの遷移元素の少なくとも1つを含む金属元素である。さらに、Mには、それぞれが10mol%を超えない範囲で、Mg、Al、Zn、Sn、Caなどの典型元素を含めることができる。10%を超えると酸化還元反応によって充放電に寄与する元素の割合が減り、容量が低下するため望ましくない。リチウム源としては、酢酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムなどを用いる。リン酸イオン源としては、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムなどを用いる。
<仮焼成>
仮焼成温度は、結晶を析出させるために、結晶化温度以上であることが必要である。仮焼成温度が結晶化温度より低いと結晶が発生しないため、仮焼成体はアモルファス状となる。この場合、種結晶が存在しないため、その後、粉砕して本焼成をしても、粒子が粗大になったり凝集を招いたりするおそれがある。また、仮焼成温度の増加量を調整することによって合成後の粒子径を制御することができるが、仮焼成温度があまり高すぎると粒子の粗大化を招いてしまう。
仮焼成温度の範囲は、活物質によって結晶化温度及び成長速度が違うために、活物質により異なる。オリビン型正極活物質においては、結晶化温度が420℃付近であるため、420℃以上で焼成することが必要である。また、結晶化温度に200℃を加えた温度以下で、粒子の粗大化を抑制することができる。特に、600℃以下であれば、粒子成長を抑えることができる。600℃以上では、結晶成長が大きく促進される場合があり、製造条件に留意する必要がある。
望ましい仮焼成温度の範囲は、オリビン型正極活物質においては、440℃以上500℃以下である。440℃以上であれば、試料中に多少温度むらがある場合でも、全体が結晶化温度以上になる。また、500℃以下であれば粒子径が100nm以下となり、この仮焼成体を粉砕、本焼成することにより100nm以下の微粒子の合成が可能となる。
また、仮焼成の雰囲気は酸化雰囲気が好ましく、酸化雰囲気としては、酸素を含有したガスを用いるのが簡便である。コストを考慮すると、空気を用いることが望ましい。
また、酸化雰囲気で仮焼成を行うと、前述したように有機物や添加炭素が燃焼により消失するが、仮焼成温度が適当ならば、消失後に生じた空間が微結晶の成長を抑制する。さらに、炭素が消失することにより、炭素の結晶内部への混入を防ぐことができる。従って、酸化雰囲気で仮焼成を行った場合には、不活性雰囲気や還元雰囲気で焼成した場合よりも、結晶性を高めることができる。
特に、溶液状態を経て均一に混合した場合には、炭素源と原料が均一に混ざっているので、不活性雰囲気や還元雰囲気では炭素が取り込まれやすい。このため、酸化雰囲気での焼成は、結晶性を高めるためにより有効である。炭素を十分に除去するために、仮焼成温度は、400℃以上であることが望ましい。
このような仮焼成を行って製造した微結晶を、以下に示す手順で炭素被覆し、本焼成する。これにより、炭素被覆された微粒子の、結晶性を向上させることができる。
<炭素源との混合、被覆>
仮焼成によって生じた微結晶(仮焼成体)は結晶性が低いので、結晶性向上のためには、より高温での焼成が必要である。しかし、単に高温で本焼成した場合、微結晶同士が結合し、成長してしまう。本発明では、仮焼成で生じた微結晶と、有機物またはアセチレンブラックなどの微細な炭素(炭素源)とを混合することにより、微結晶の周囲に有機物や炭素を密着させて、微結晶を有機物や炭素で被覆するようにした。その結果、本焼成時の結晶の成長を抑えることができる。
また、微結晶同士の一部が結合し網目構造となっている場合も、網目構造が500nm以下の細い構造であるならば、機械的圧力を加えることで容易に網目構造を破壊し、微結晶の微細化が可能である。効率よく被覆及び微細化する手法としては、ボールミルやビーズミルを用いて機械的圧力を加えることが望ましい。
<二次粒子化>
炭素との混合、被覆工程で作製したスラリーたとえばスプレードライヤーで噴霧乾燥させて、平均二次粒子径5〜20μmである球形の二次粒子を作製する。噴霧乾燥とは、乾燥室に微粒子化したスラリーを供給し、乾燥させて球状粒子を得る方法である。球形の二次粒子の平均粒子径が5μm未満であると、電極化した際、充填密度が低くなる傾向がある。平均粒子径が20μm超であると、二次粒子が大きくなり電極厚さや電極表面の平滑性、電極密度に影響を与える場合がある。このようにして得られたほぼ球形の平均二次粒子径5〜20μmの二次粒子は、粒子間の摩擦が低減され、集電体箔上に塗布するとき充填性が高くなり、かつ均一に塗布できるため好ましい。
<本焼成>
本焼成では、有機物を炭化して導電性を向上させると共に、活物質粒子の結晶性向上もしくは結晶化を行う。金属元素の酸化を防ぐと共に炭素被覆を行うため、本焼成は、不活性雰囲気または還元雰囲気で行うことが好ましい 。有機物を炭化して導電性を向上させるためには、本焼成温度は600℃以上が望ましい。また、本焼成は、活物質の熱分解が起きる温度以下で行うことが望ましい。
望ましい本焼成温度の範囲は、オリビン型正極活物質においては、600℃以上850℃以下である。600℃以上ならば、炭素源を炭化して導電性を付与することができる。850℃以下ならば、活物質が分解を起こさない。
さらに望ましくは、700℃以上750℃以下である。この温度範囲では、炭素の導電性を十分に向上できると共に、炭素とオリビン型正極活物質の反応による不純物の生成を抑えることができる。
以下、本発明による非水系二次電池用正極と非水系二次電池について説明する。図1は、本実施の形態に係る非水系二次電池用正極を用いた非水系二次電池の断面概略図である。
非水系二次電池1は、正極板2と負極板3との間にセパレータ4が介在する。これら正極板2、負極板3及びセパレータ4が捲回され、非水電解液と共にステンレス製またはアルミニウム製の電池缶7に封入される。
正極板2には正極リード5が形成され、負極板3には負極リード6が形成されており、それぞれ電流が取り出されるようになっている。正極板2と負極リード6との間、負極板3と正極リード5との間には、それぞれ絶縁板9が設けられている。また、負極リード6に接触している電池缶7と、正極リード5に接触している密閉蓋部10との間には、電解液の漏れ防止と共にプラス極とマイナス極とを分けるパッキン8が設けられている。
以下、正極、負極、セパレータ、及び電解質について詳細に述べる。
(1)正極
本発明による非水系二次電池用正極は、正極活物質、結着剤、及び集電体で構成され、正極活物質と結着剤とを含む正極合材が、集電体上に形成されている。また、電子伝導性を補うために、必要に応じて導電助材を正極合材に加えることもできる。
以下、本発明による正極を構成する部材である正極活物質、結着剤、導電助材、及び集電体の詳細を説明する。
A)正極活物質
本発明による正極活物質には、上述した物性値を有する活物質、または上述した製造方法(合成法)を用いて合成される活物質を使用する。
B)結着剤
結着剤には、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やポリアクリロニトリルなど、一般の結着剤を用いるのが好ましい。十分な結着性を有するならば、結着剤の種類は制限されない。
C)導電助材
正極の構成として、上記のような密着性に優れた結着剤を用いると同時に、導電性付与のために導電助材を混合すると、強固な導電ネットワークが形成される。このため、正極の導電性が改善され、容量やレート特性が改善して望ましい。以下に、本発明による正極に用いる導電助材及びその添加量について示す。
導電助材として、アセチレンブラックや黒鉛粉末などの炭素系導電助材を用いることができる。本発明の正極活物質は高比表面積であるため、導電ネットワークを形成するためには導電助材は比表面積が大きいことが望ましく、具体的にはアセチレンブラックなどが望ましい。正極活物質が炭素被覆されている場合もあるが、この場合には、被覆炭素を導電助材として用いることもできる。
D)集電体
集電体としては、アルミ箔などの導電性を有する支持体を利用できる。
以上のように、高容量かつ高レート特性の正極を得るためには、正極活物質としてポリアニオン系正極活物質を用い、結着剤としてはアクリロニトリル共重合体を用い、導電助材(正極活物質が炭素被覆されている場合は、活物質上の被覆炭素も含む)を用いることが望ましい。
(2)負極
本発明に係る非水系二次電池の負極は、負極活物質、導電助材、結着剤、及び集電体で構成される。
負極活物質としては、充放電により電気伝導性物質となるアルカリ元素及びアルカリ金属を可逆的に挿入脱離できるものならばよく、例えば、炭素材料、金属酸化物、金属硫化物、ケイ素またはケイ素化合物、リチウム 金属等のアルカリ金属、及びリチウム金属等と他種金属との合金を用いることができる。炭素材料としては、黒鉛、非晶質炭素、コークス、熱分解炭素などを用いることができる。
導電助材には、従来公知のものを任意に用いることができ、アセチレンブラック、黒鉛粉末など炭素系導電助材を用いることができる。結着剤も同様に、従来公知のものを任意に用いることができ、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)などを用いることができる。集電体も同様に、従来公知のものを任意に用いることができ、銅箔など導電性を有する支持体を利用できる。
(3)セパレータ
セパレータには、従来公知の材料が使用でき、特に制限はない。ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系多孔質膜や、ガラス繊維シートなどを用いることができる。
(4)電解質
電解質として、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOF)などのリチウム塩など、電気伝導性物質を含む化合物を単独でまたは混合して用いることができる。電解質を溶解する溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート、環状エステル、ニトリル化合物などが挙げられる。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ―ブチロラクトン、n−メチルピロリジン、アセトニトリルなどである。他に、ポリマーゲル電解質や固体電解質も、電解質として使用できる。
以上に示した、正極、負極、セパレータ、及び電解質を用いて、円筒型電池、角型電池、ラミネート型電池など、各種形態の非水系二次電池を構成することができる。
以下に、本発明による非水系二次電池用正極活物質の実施例を説明する。その後、合成した正極活物質を用いて作製した電極の特性(容量とレート特性)の測定結果について記載する。
[実施例1]
金属源として、クエン酸鉄(FeC・nHO)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)、リン酸二水素リチウム、及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加え、さらに、アセトンを加え遊星型ボールミル装置を用い、粉砕・混合した。得た溶液を乾燥し、原料粉末を得た。
この原料粉に対し、箱型電気炉を用いて仮焼成した。焼成雰囲気は空気とし、焼成温度は440℃で、焼成時間は10時間とした。この仮焼成体に対し、炭素源及び粒径制御剤として、100重量部に対して7重量部のスクロースを添加した。これを、スラリー濃度30%になるように調整し、ボールミルを用いて2時間粉砕、混合した。ボールミル工程では、分散媒として純水を用いた。ボールミル混合後、スラリーを4流体ノズルを備えたスプレードライを用いてエア噴霧圧0.3MPaで噴霧乾燥し、二次粒子化を行った。次に、雰囲気制御可能な管状炉を用いて、本焼成を行った。焼成雰囲気はAr雰囲気とし、焼成温度は700℃で、焼成時間は10時間とした。
以上の工程により、オリビン型正極活物質LiFe0.2Mn0.8POを得た。合成した活物質を用いて電極(正極)を作製し、電極の特性、すなわち容量とレート特性を測定した。
以下に電極の作製方法を説明する。正極活物質、導電剤、バインダ、及び溶媒を乳鉢上で混錬して、スラリーを調製した。導電材としてアセチレンブラック、バインダとして変性ポリアクリロニトリル、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた。なお、バインダは、NMPに溶解させた溶液を用いた。電極の組成は、正極活物質、導電材、バインダの重量比が82.5:10:7.5になるようにした。
調整したスラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔上に、ギャップを250μmに設定したブレードを用いて、塗工量が5〜6mg/cmになるように塗工した。これを80℃で1時間乾燥した後に、打ち抜き金具を用いて直径15mmの円盤状に打ち抜いた。打ち抜いた電極は、ハンドプレスを用いて合材を圧縮した。合材厚さは38〜42μmとした。全ての電極は、以上の塗工量と厚さの範囲内に収まるよう作製し、電極構造を一定に保った。モデルセルを組み立たてる前に、120℃で電極を乾燥した。なお、水分の影響を除くため、全ての操作はドライルーム内の作業とした。
容量とレート特性は、電池を簡易的に再現した三極式モデルセルを用いて評価した。三極式モデルセルは、次のようにして作製した。直径15mmに打ち抜いた試験電極、アルミニウム集電体、対極用金属リチウム、及び参照極用金属リチウムを、電解液を含侵させたセパレータを介して積層させた。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:2(容量比)の割合で混合した溶媒にLiPF6を溶解させて1Mとし、0.8mass%のVC(ビニレンカーボネート)を添加したものを用いた。この積層体を、SUS製端板2枚を用いて挟み込み、ボルトで締め付けた。これをガラスセル中に入れ、三極式モデルセルとした。
容量とレート特性の測定試験は、Ar雰囲気のグローブボックスで行った。容量測定では、モデルセルに対して、電流値を0.1mAとして4.5Vまで定電流充電を行い、4.5Vに達した後は、電流値が0.03mAに減衰するまで定電圧充電を行った。その後、2Vまで0.1mAの定電流で放電し、その際の放電容量を容量とした。
上記の充放電サイクルを3サイクル繰り返した後、以下の条件でレート特性を評価した。容量測定と同様に定電流充電と定電圧充電を行ったモデルセルを、5mAの電流値で定電流放電したときの容量を0.1mAの定電流で放電した時の容量で除した値をレート特性とした。なお、全ての試験は、室温(25℃)で行った。
[実施例2]
仮焼成体をボールミルを用いて2時間混合、粉砕する時のスラリー濃度を25%とした以外は、実施例1と同様に合成し、LiFe0.2Mn0.8POを得た。容量、レート特性の測定も同様に行った。
[実施例3]
スプレードライを用いてエア噴霧圧0.2MPaで噴霧乾燥した以外は、実施例1と同様に合成し、LiFe0.2Mn0.8POを得た。容量、レート特性の測定も同様に行った。
[実施例4]
仮焼成体をボールミルを用いて2時間混合、粉砕する時のスラリー濃度を20%とした以外は、実施例1と同様に合成し、LiFe0.2Mn0.8POを得た。容量、レート特性の測定も同様に行った。
[比較例1]
比較例1は、二次粒子の空隙率を大きくした例である。本焼成の焼成温度を650℃にした以外は、実施例1と同様に合成し、LiFe0.2Mn0.8POを得た。容量、レート特性の測定も同様に行った。比較例1での焼成温度は実施例1〜4の場合よりも低いが、前述した望ましい本焼成温度(600℃以上)の条件は満足している。
なお、空隙率の調整は、造粒時のスラリー濃度、本焼成の焼成温度や時間を変化させることで可能となる。造粒時のスラリー濃度が高いと空隙は小さく、濃度低いと空隙は大きくなる。また、本焼成温度が高いと焼結が進み、空隙率は小さくなる。本比較例では、本焼成が不十分で、二次粒子の空隙率が大きすぎたため、一次粒子のラフネスファクター等の条件が適正であっても、高いレート特性が達成できなかった。一方、本焼成により一次粒子の粒成長も生じる。比較例1は、実施例1よりも本焼成温度が低いため、一次粒子径も小さくなったと推察される。
[比較例2]
仮焼成温度を380℃にした以外は、実施例1と同様に合成し、LiFe0.2Mn0.8POを得た。容量、レート特性の測定も同様に行った。比較例2の仮焼成温度(380℃)は、オリビン型正極活物質の結晶化温度(420℃)よりも若干低い温度となっている。
[比較例3]
水熱合成法を実施した。原料に水酸化リチウム、リン酸、硫酸マンガン、硫酸鉄を用いた。モル比でLi:PO:Mn:Fe=3:1:0.8:0.2となるように原料を秤量した。硫酸マンガン、硫酸鉄、リン酸を純水に溶解させた溶液を攪拌しながら、その中に水酸化リチウム水溶液を滴下し、沈殿を含む懸濁液を得た。得られた懸濁液に窒素バブリングを行い、耐圧容器に窒素置換しながら封入した。耐圧容器を回転攪拌しながら170℃で5時間加熱し、得られた沈殿物をろ過、洗浄することによりLiFe0.2Mn0.8POを得た。
得られた原料粉に100重量部に対して7重量部の割合でスクロースを添加し、遊星ボールミルを用いて2時間混合した。混合したスラリーを4流体ノズルを備えたスプレードライを用いてエア噴霧圧0.3MPaで噴霧乾燥し、二次粒子化を行った。次に、雰囲気制御可能な管状炉を用いて焼成し、炭素被覆を行った。焼成雰囲気はAr雰囲気とし、焼成温度は700℃で、焼成時間は3時間とした。
以上の工程により、炭素被覆されたLiFe0.2Mn0.8POを得た。容量、レート特性の測定は実施例1と同様に行った。
実施例1〜4、比較例1〜3について、一次粒子径、比表面積、ラフネスファクター、二次粒子の平均粒子径、二次粒子の空隙率、容量、レート特性を示したものを表1に示す。また、実施例および比較例の空隙率およびレート特性をxy座標としてプロットした結果を図5に示す。
Figure 2015056223
表1において、一次粒子径、比表面積およびラフネスファクターは一次粒子に関する特性を示しており、これらは主に容量に影響する。一方、二次粒子の平均粒子径および空隙率は二次粒子に関する特性を示しており、主にレート特性に影響する。
(一次粒子の特性)
実施例1〜4および比較例1,2では、仮焼成温度を500℃以下としているので、一次粒子径は100nmとなっている。比較例2,3のラフネスファクターは1よりも小さく、ラフネスファクターが1よりも大きい実施例1〜4と比べて容量が低くなっている。
一次粒子が理想的な真球で完全に分散していれば、ラフネスファクターは1となる。しかし、実際には、種々の要因でラフネスファクターは1よりも大きくなったり小さくなったりする。ラフネスファクターが増加する原因としては、粒子表面粗さの増加がある。
実施例1〜4では、上述した粒子表面粗さを増加させる合成手法を用いているために、ラフネスファクターが1.0以上2.0以下の望ましい範囲に入っている。一方、比較例2,3では、非表面積が17m/g,14m/gと低く、図3に示すように粒子表面が平滑であるため、これが、ラフネスファクターを1よりも小さくする要因となる。また、粒子同士の凝集、焼結が起きるとラフネスファクターは低下する。
比較例2においては、仮焼成温度が結晶化温度よりも低いため、未反応物が本焼成前に残っていると考えられる。未反応物が残っていると、粒子同士の凝集、焼結を招き、粒子径が小さいように見えても比表面積が低くなり、活性が低下してしまうことになる。比較例3では水熱合成法により一次粒子を作製しており、そのため、粒子は表面が平滑になり(図3参照)、ラフネスファクターが低下する。つまり、同じ一次粒子径だと非表面積が低くなる。
一方、実施例1〜4では、仮焼成は結晶化温度以上の温度で行われているので、未反応物の発生が防止され、本焼成後においても良好な分散状態を保っていると考えられる。そのため、比表面積が高くなっており、ラフネスファクターが1よりも大きくなっている。そして、粒子径と比表面積の値から求められるラフネスファクターが、容量特性に大きな影響を与えることがわかる。
(二次粒子の特性)
実施例1〜4と同じ合成法を用いた比較例1を比較すると、二次粒子の空隙率がレート特性に影響を与えることが分かる。実施例1〜4では、スラリー濃度およびスプレー圧力を調整することで、二次粒子の空隙率を変化させている。表1のデータを、空隙率およびレート特性をxy座標としてプロットすると、特に空隙率33vol%以上48vol%以下の範囲で高いレート特性を示す(図5参照)。これは、二次粒子の空隙率が高いと、二次粒子中の一次粒子同士の接触点が少なくなり、一次粒子間の抵抗が増加してレート特性が低下したと考えられる。逆に、二次粒子の空隙率が低いと、二次粒子中において一次粒子が密に詰まり、電解液が浸みこみづらくなり、レート特性が低下したと考えられる。
一方、実施例1〜4に示すように、空隙率が33vol%以上48vol%以下の範囲内においては、レート特性が約80%以上となり、特に高レート特性が得られる。
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
1…二次電池、2…正極、3…負極、4…セパレータ、5…正極リード、6…負極リード、7…電池缶、8…パッキン、9…絶縁板、10…密閉蓋部

Claims (8)

  1. 化学式AMD(Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素であり 、Dは、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する典型元素であり、0<x≦2、1≦y≦2、3≦z≦7である。)で表される遷移金属化合物に、炭素被覆が形成された非水系二次電池用正極活物質であって、
    平均一次粒子径が10nm以上200nm以下の範囲であり、
    前記平均一次粒子径の真球を仮定して計算した比表面積に対する前記炭素被覆を除去して測定した比表面積の実測値の比が、1.0以上2.0以下の範囲であって、
    二次粒子の空隙率が33vol%以上48vol%以下である非水系二次電池用正極活物質。
  2. 請求項1記載の非水系二次電池用正極活物質において、
    前記遷移金属化合物は、化学式LiMPO(MはFe、Mn、Co、及びNiのうち少なくとも1つを含む金属元素である。)で表されることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。
  3. 請求項1または請求項2に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
    前記平均一次粒子径が10nm以上100nm以下である非水系二次電池用正極活物質。
  4. 化学式AMD(Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、Mは、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属元素であり、Dは、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する典型元素であり、0<x≦2、1≦y≦2、3≦z≦7である。)で表される遷移金属化合物を備える非水系二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む化合物と、金属元素を含む化合物と、酸素Oと共有結合してアニオンを形成する元素を含むアニオン化合物とを混合する工程と、
    前記混合した原料を、前記遷移金属化合物の結晶化温度以上、かつ、前記結晶化温度に200℃を加えた温度以下である仮焼成温度で仮焼成する工程と、
    前記仮焼成体に炭素源を混合する工程と、
    前記炭素源が混合された仮焼成体を含むスラリーを噴霧乾燥して球状二次粒子を形成する工程と、
    前記球状二次粒子を本焼成する工程と、を含み、前記二次粒子の空隙率を33vol%以上48vol%以下とすることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 請求項4記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法において、
    前記遷移金属化合物は、化学式LiMPO(MはFe、Mn、Co、及びNiのうち少なくとも1つを含む金属元素である。)で表されることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 請求項4記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法において、
    前記本焼成する工程は、600℃から900℃の焼成温度で加熱する工程であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非水系二次電池用正極活物質を含む正極合剤と、正極集電体と、を備える非水系二次電池用正極。
  8. 正極、負極、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータ、および電解質を備える非水系二次電池であって、
    前記正極は、請求項7に記載の非水系二次電池用正極であることを特徴とする非水系二次電池。
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