JP2015056222A - 非水系二次電池用正極活物質、非水系二次電池用正極活物質の製造方法、非水系二次電池用正極および非水系二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温保存時のMn溶出が抑制されるとともに、高容量、高レート特性の非水系二次電池の提供。【解決手段】非水系二次電池用正極活物質は、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+B(式中、A、BおよびXはそれぞれ0.02<A<0.40、0.006<B<0.100、0.6≰X<1であり、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、V及びZrから選ばれる一種以上の金属原子である)で表わされるリチウム複合酸化物であって、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物中にLi3PO4を含む。【選択図】図6
Description
本発明は、非水系二次電池用正極活物質、その製造方法、その正極活物質を用いた非水系二次電池用正極および非水系二次電池に関する。
非水系二次電池として、非水系電解液を用い、リチウムイオンを充放電反応に用いるリチウムイオン二次電池が実用化されている。リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素電池等と比べてエネルギー密度が大きく、例えば、携帯電子機器の電源として用いられている。近年では、さらに、ハイブリット自動車、電気自動車、定置無停電電源、電力平準化用途等、中・大型用途への適用が進められている。一方、リチウムイオン二次電池の発熱・発火事故が起きており、安全性の向上が必要である。
現在、正極活物質には、LiCoO2等の層状酸化物系正極活物質が用いられている。層状酸化物系正極活物質は、リチウム原子自体が結晶構造を支えており、充電によりLi原子が脱離すると構造が不安定となる。
そこで、安全性に優れるオリビン構造を有するLiMPO4(Mは金属)で表されるオリビン系正極活物質に、高い関心が寄せられている。オリビン系正極活物質は、オリビン構造であるため、充電によりLi原子が脱離しても構造が安定であり、かつ、酸素とリンが共有結合しているため酸素が放出され難く安全性が高い。
オリビン系正極活物質には、鉄を構成元素とするオリビン鉄系正極活物質や、マンガンを構成元素とするオリビンマンガン系正極活物質等が知られている。オリビン鉄系正極活物質は実用化されているが、反応電位が3.4V(vs.Li/Li+)と低いためエネルギー密度が低く、導電性・Liイオン拡散性は低い。一方、オリビンマンガン系正極活物質は、反応電位が4.1V(vs.Li/Li+)と高く、エネルギー密度が高いため注目を集めている。しかし、オリビンマンガン系正極活物質は、オリビン鉄系正極活物質と比較しても導電性・Liイオン拡散性が低く、そのため低容量や、低レート特性となる。
特許文献1には、オリビンマンガン系正極活物質であって、Feおよび過剰のLiにより、充電時に生成されるMn3+に起因するヤーン・テラー効果を希釈し、結晶構造の歪みを抑制して、容量の低下を抑制することが提案されている。
また、非特許文献1では、オリビンマンガン系正極活物質を高温(55℃)で保存するとマンガンが溶出し、その結果、高温(55℃)で充放電を行うと容量低下が起きることが報告されている。非特許文献1には、炭素被覆源であるアセチレンブラック量を増やすことでMnの溶出量が抑制され、高温中充放電での容量低下が抑制されることが報告されている。
Seung-Min Oh,Sung−Woo Oh, Chong−Seung Yoon,Bruno Scrosati, Khalil Amine, Yang−Kook Sun "High Performance Carbon−LiMnPO4 Nanocomposite Cathode for Litium Batteries" ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS.2010, 20号, 3260頁〜3265頁
このように、従来のオリビンマンガン系正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、低容量で放電時の電流密度が低く、低レート特性となる課題があった。その上、高温保存時にマンガンが溶出して容量低下が生じるという問題もあった。結晶構造の歪みを抑制する方法としては特許文献1があるが、高容量を維持しつつ、さらに高温保存特性を改善することが望まれる。マンガン溶出を抑制する方法としては、非特許文献1に記載の方法があるが、炭素被覆に用いるアセチレンブラック量が30質量%と過多であり、その結果、容量低下を招くという問題があった。
本発明に係る非水系二次電池用正極活物質は、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+B(式中、A、BおよびXはそれぞれ0.02<A<0.40、0.006<B<0.100、0.6≦X<1であり、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、V及びZrから選ばれる一種以上の金属原子である)で表わされるリチウム複合酸化物であって、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物中にLi3PO4を含む。
なお、Li3PO4の定量は困難であるが、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)測定におけるLi3PO4に帰属される2θ=23.2°のピーク強度が、オリビン化合物に帰属される2θ=25.5°付近のピーク強度の2%以上である場合に有意な効果が得られるため、Li3PO4を含むと判断できる。
また、特許文献1に記載の正極活物質では、過剰LiはMnと置換しているものと考えられ、過剰LiはLi3PO4として析出しない。
また、特許文献1に記載の正極活物質では、過剰LiはMnと置換しているものと考えられ、過剰LiはLi3PO4として析出しない。
上記非水系二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウム複合酸化物を形成するための原料を混合する工程と、混合した原料を仮焼成する工程と、仮焼成により得られる仮焼成体に炭素源を混合する工程と、仮焼成体及び炭素源を混合した混合物を、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物の結晶化温度以上、かつ、前記結晶化温度に400℃を加えた温度以下である焼成温度で本焼成する工程と、を含む。
本発明によれば、高温保存時のMn溶出が抑制され、高容量、高レート特性の非水系二次電池を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(正極活物質)
本発明の非水系二次電池用正極活物質は、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+Bで表わされるリチウム複合酸化物である。式中、A,BおよびXは、それぞれ0.02<A<0.40、0.006<B<0.100、0.6≦X<1であり、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、V及びZrから選ばれる一種以上の金属原子である。このリチウム複合酸化物は、一部または全体がオリビン型構造を有する。
(正極活物質)
本発明の非水系二次電池用正極活物質は、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+Bで表わされるリチウム複合酸化物である。式中、A,BおよびXは、それぞれ0.02<A<0.40、0.006<B<0.100、0.6≦X<1であり、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、V及びZrから選ばれる一種以上の金属原子である。このリチウム複合酸化物は、一部または全体がオリビン型構造を有する。
上述したようにオリビンマンガン系正極活物質を高温で保持するとマンガンが溶出するのは、電解液と水分とが反応して生成されるフッ化水素がMn溶出を引き起こすためである。本発明者らは、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+Bで表わされるリチウム複合酸化物のAおよびBが上記範囲内であればLi3PO4が析出し、その析出したLi3PO4がフッ化水素をトラップし、Mn溶出量を抑制できることを見出した。また、Li3PO4はLiイオン伝導性であるため、上記範囲内であれば、リチウム複合酸化物中に析出したLi3PO4により正極活物質のLiイオン伝導性が良好となり、高容量かつ高レート特性となる。
さらに、式中のA、Bが、0.13<A<0.27、かつ、0.040<B<0.076であることが好ましい。この範囲内であれば析出するLi3PO4量が増加し、Mn溶出量がさらに低減する。また、Li3PO4の増加によりLiイオン伝導性が良好となり、より高容量、高レート特性となる。
さらに、過剰Li量であるAと過剰P量であるBと比(A/B)が、2<(A/B)≦6であることが好ましい。理想的には3とするのが望ましいが、上記のような範囲とすることで、活物質中にLi3PO4が効率的に析出し、副生成物の生成が抑制される。その結果、高容量となる。
また、Li3PO4は粒子表面、粒子内部のいずれにも存在することが好ましく、正極活物質粒子中心部の遷移金属の原子量TCとPの原子量PCとの比(PC/TC)ACと、正極活物質外周部の遷移金属の原子量TSとPの原子量PSとの比(PS/TS)ASとの比(AC/AS)が0.5以上2以下であることが好ましい。Liイオン伝導性のLi3PO4が粒子表面、粒子内部のいずれにも存在することで、Liイオンの拡散抵抗が低減するものと考えられ、レート特性が向上する。
なお、正極活物質粒子中心部とは正極活物質の重心を中心とし、粒子径の50%の長さの直径を有する球の内部であり、正極活物質外周部とは正極活物質表面から粒子径の5%の長さより外側である。なお、Mn溶出抑制用に被覆層が形成されていても構わない。
また、Mとしては高い電位を得ることができるNi、Coが好ましい。また、MとしてFeを用いると、導電性・Liイオン拡散性が向上し、充放電サイクル特性が良好になり好ましい。MとしてMg、Vを用いると、充電時に生成されるMn3+に起因するヤーン・テラー効果を希釈し、結晶構造の歪みを抑制して、容量の低下を抑制され好ましい。なお、式中のXは、エネルギー密度とレート特性との両立性を考えると、0.6≦X<1に設定されるのが好ましい。
本発明の正極活物質は、リチウム複合酸化物である正極活物質粒子の表面の一部又は全体が(すなわち、少なくとも一部が)導電性物質で被覆されていることが好ましい。リチウム複合酸化物の表面の一部又は全体が導電性物質で被覆されていることにより導電性が高くなり好ましい。また、導電性物質は炭素材料であることが好ましい。炭素材料による被覆は、全てが炭素材料である必要はなく、一部が炭素材料以外の材料であっても構わない。
また、正極活物質の炭素含有量は、0.5質量%以上30質量%未満であることが好ましい。炭素含有量を0.5質量%以上とすることで、良好な導電性が得られ容量を高めることができる。特に、炭素含有量は1質量%以上であることがより好ましい。炭素含有量が1質量%以上であると、導電性が良くなりレート特性が改善される。また、炭素含有量が30質量%より多いと、リチウム複合酸化物の減少が大きくなり電池容量が低下する。よって、炭素含有量は5質量%以下であることがより好ましい。炭素含有量が5質量%以下であると、レート特性の向上を図りつつ電極容量の低下をより効果的に抑制することができる。
正極活物質の粒子径は、10nm以上500nm以下であることが好ましい。粒子径dが10nm未満であると後述するプレス等による嵩密度向上がし難くなり、嵩密度が低く体積当たりの容量が低下する。また、粒子径dが500nmを超えるとLiイオンの拡散パスが長くなり、高抵抗となって容量が低下する。特に、粒子径dは30nm以上200nm以下であることがより好ましい。正極活物質が1次粒子として凝集せず、単分散である場合、30nm以上200nm以下であると高容量となり、かつ、高温保存特性が良好となる。なお、正極活物質は、造粒等により二次粒子化していても構わない。
(正極活物質の製造方法)
以上のような非水系二次電池用正極活物質は、リチウム複合酸化物を形成するための原料を混合する工程と、混合した原料を仮焼成する工程と、仮焼成により得られる仮焼成体に炭素源を混合する工程と、仮焼成体及び炭素源を混合した混合物を本焼成する工程とを含む方法により製造することができる。本焼成工程における焼成温度は、リチウム複合酸化物の結晶化温度以上であり、かつ、その結晶化温度に400℃を加えた温度以下であることが好ましい。結晶化温度に400℃を加えた温度以下で本焼成工程を行うことで、粒成長を抑制することができ、小粒子径の正極活物質を得ることができる。さらに、本焼成工程における焼成温度は、結晶化温度に300℃を加えた温度以下であることがより好ましい。結晶化温度に300℃を加えた温度以下で本焼成工程を行うことで、さらに粒成長を抑制することができ、さらに小粒子径の正極活物質を得ることができ、レート特性が向上する。また、低温で焼成するため低コストとなる。
以上のような非水系二次電池用正極活物質は、リチウム複合酸化物を形成するための原料を混合する工程と、混合した原料を仮焼成する工程と、仮焼成により得られる仮焼成体に炭素源を混合する工程と、仮焼成体及び炭素源を混合した混合物を本焼成する工程とを含む方法により製造することができる。本焼成工程における焼成温度は、リチウム複合酸化物の結晶化温度以上であり、かつ、その結晶化温度に400℃を加えた温度以下であることが好ましい。結晶化温度に400℃を加えた温度以下で本焼成工程を行うことで、粒成長を抑制することができ、小粒子径の正極活物質を得ることができる。さらに、本焼成工程における焼成温度は、結晶化温度に300℃を加えた温度以下であることがより好ましい。結晶化温度に300℃を加えた温度以下で本焼成工程を行うことで、さらに粒成長を抑制することができ、さらに小粒子径の正極活物質を得ることができ、レート特性が向上する。また、低温で焼成するため低コストとなる。
仮焼成体と混合する炭素源としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、グルコース、グリコーゲン、デンプン、セルロース、デキストリンなどの糖類、ピッチ系炭素材料等から適宜選択することができる。また、混合する量は、上述の炭素含有量を考慮して定めることができる。
(非水系二次電池用正極)
本発明の非水系二次電池用正極活物質を用いることにより、高容量かつ高レート特性な非水系二次電池用正極を作製することができる。正極は、従来知られた方法により作製することができ、具体的には、例えば、上記の正極活物質と、導電材及びバインダーとを混練し、N−メチルピロリドン等の分散溶媒を添加して適宜希釈することにより正極合剤スラリーを調製する。その正極合剤スラリーを、正極集電体として用いるアルミニウム箔等の表面に塗布した後、乾燥し、加圧ローラーでプレス等することにより正極合剤層を集電体上に形成して正極を作製する。
本発明の非水系二次電池用正極活物質を用いることにより、高容量かつ高レート特性な非水系二次電池用正極を作製することができる。正極は、従来知られた方法により作製することができ、具体的には、例えば、上記の正極活物質と、導電材及びバインダーとを混練し、N−メチルピロリドン等の分散溶媒を添加して適宜希釈することにより正極合剤スラリーを調製する。その正極合剤スラリーを、正極集電体として用いるアルミニウム箔等の表面に塗布した後、乾燥し、加圧ローラーでプレス等することにより正極合剤層を集電体上に形成して正極を作製する。
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、変性ポリアクリロニトリル、スチレン−ブタジエンゴム等が適用可能である。また、導電材としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンファイバー、金属炭化物等のカーボン材料が適用可能であり、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(非水系二次電池)
そして、上記正極を用いることにより、高容量かつ高レート特性な非水系二次電池を得ることができる。非水系二次電池の構成としては、従来知られた一般的な構成を採用することができる。また、非水系二次電池において、電解液にLiPF6が含まれていることが好ましい。本発明の非水系二次電池用正極活物質を用いることで電解液にLiPF6が含まれていても高温保存特性が良好となり、出力特性が良好なLiPF6を含む電解液を用いることができる。つまり、高容量、かつ、高温保存特性が良好、かつ、出力特性が良好な二次電池を得ることができる。
そして、上記正極を用いることにより、高容量かつ高レート特性な非水系二次電池を得ることができる。非水系二次電池の構成としては、従来知られた一般的な構成を採用することができる。また、非水系二次電池において、電解液にLiPF6が含まれていることが好ましい。本発明の非水系二次電池用正極活物質を用いることで電解液にLiPF6が含まれていても高温保存特性が良好となり、出力特性が良好なLiPF6を含む電解液を用いることができる。つまり、高容量、かつ、高温保存特性が良好、かつ、出力特性が良好な二次電池を得ることができる。
図6に、本発明に係る非水系二次電池の一実施形態の部分断面図を示す。図6の非水系二次電池2は、正極3と負極4との間にセパレータ5が配置される。これら正極3、負極4及びセパレータ5が捲回され、非水電解液(図示せず)と共にステンレス製又はアルミニウム製の電池缶8に封入される。
正極3には正極リード6が設けられ、負極4には負極リード7が設けられており、それぞれ電流が取り出されるように構成されている。正極3と負極リード7との間、負極4と正極リード6との間には、それぞれ絶縁板10が設けられている。また、負極リード7に接触している電池缶8と、正極リード6に接触している密閉蓋部11との間には、電解液の漏れ防止と共にプラス極とマイナス極とを分けるためのパッキン9が設けられている。
次に、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加え、さらに、アセトンを加え遊星型ボールミル装置を用い、粉砕・混合した。そして、得られた溶液を乾燥し、原料粉末を得た。この原料粉末を仮焼成し、仮焼成体を得た。得られた仮焼成体と、炭素源としてのスクロースとを混合した。そして、得られた混合粉末を700℃で10時間本焼成し、目的の正極活物質を製造した。なお、本焼成の際の焼成温度は、核材であるリチウム複合酸化物の結晶化温度より300℃高い温度に相当する。
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加え、さらに、アセトンを加え遊星型ボールミル装置を用い、粉砕・混合した。そして、得られた溶液を乾燥し、原料粉末を得た。この原料粉末を仮焼成し、仮焼成体を得た。得られた仮焼成体と、炭素源としてのスクロースとを混合した。そして、得られた混合粉末を700℃で10時間本焼成し、目的の正極活物質を製造した。なお、本焼成の際の焼成温度は、核材であるリチウム複合酸化物の結晶化温度より300℃高い温度に相当する。
得られた正極活物質は、X線回折で測定したところ、核材が組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物のピークと、組成式Li3PO4に帰属される2θ=23.2°付近のピークとが見られた。また、ラマン測定したところ、活物質粒子の表面が炭素材料で被覆されているのが観測された。
得られた正極活物質を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)により元素分析した。遷移金属原子の合計量を1とし、Li,P,Mn,Feのモル比を各々Li量,P量,Mn量,Fe量としたときのそれぞれの量を、表1に示す。また、正極活物質の炭素含有量は3.6質量%であった。
(実施例2〜8)
実施例2〜8では、原料に用いるリン酸リチウムの量を実施例1の場合と異なる量に変えて、Li量、P量が異なる正極活物質を作製した。なお、リン酸リチウムの量を変えた以外は、上記実施例1と同様の方法により正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で測定したところ、核材が組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物のピークと、組成式Li3PO4に帰属される2θ=23.2°付近のピークとが観測された。実施例2〜5のX線回折測定結果を図5に示す。
実施例2〜8では、原料に用いるリン酸リチウムの量を実施例1の場合と異なる量に変えて、Li量、P量が異なる正極活物質を作製した。なお、リン酸リチウムの量を変えた以外は、上記実施例1と同様の方法により正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で測定したところ、核材が組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物のピークと、組成式Li3PO4に帰属される2θ=23.2°付近のピークとが観測された。実施例2〜5のX線回折測定結果を図5に示す。
また、ラマン測定したところ、活物質粒子の表面が炭素材料で被覆されているのが観測された。得られた正極活物質をICP−AESにより元素分析した結果を、表1に示す。炭素含有量は3.6質量%〜3.7質量%であった。
さらに、実施例2については走査型顕微鏡観察(SEM)を行い、その結果を図1に示す。図9は、図1の範囲Jの部分を模式的に示したものである。なお、図9では活物質の形状が鮮明な部分を中心に図示し、形状が不鮮明な部分は図示を省略した。また、実施例4については、透過型エネルギー分散型X線分析法(TEM−EDX)により正極活物質の中心部と外周部の元素分析を実施した。TEM−EDXによるリンの分析では、定量性は低いものの、深さ方向中心の元素量に差異があるかどうかが判断可能である。測定部位を示すTEM像を図7に、TEM−EDXの分析結果を表2に示す。
(実施例9)
実施例9では、原料としてクエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、及び酢酸リチウムを使用し、実施例1で用いたリン酸リチウムを省略した。これらの原料をジルコニア製ポットに加え、さらに、アセトンを加え遊星型ボールミル装置を用い、粉砕・混合した。そして、得られた溶液を乾燥し、原料粉末を得た。この原料粉末を仮焼成し、仮焼成体を得た。得られた仮焼成体と、炭素源として用いられるスクロースとを混合し、得られた混合粉末を700℃で10時間本焼成し、目的の正極活物質を製造した。なお、本焼成の際の焼成温度は、核材であるリチウム複合酸化物の結晶化温度より300℃高い温度に相当する。
実施例9では、原料としてクエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、及び酢酸リチウムを使用し、実施例1で用いたリン酸リチウムを省略した。これらの原料をジルコニア製ポットに加え、さらに、アセトンを加え遊星型ボールミル装置を用い、粉砕・混合した。そして、得られた溶液を乾燥し、原料粉末を得た。この原料粉末を仮焼成し、仮焼成体を得た。得られた仮焼成体と、炭素源として用いられるスクロースとを混合し、得られた混合粉末を700℃で10時間本焼成し、目的の正極活物質を製造した。なお、本焼成の際の焼成温度は、核材であるリチウム複合酸化物の結晶化温度より300℃高い温度に相当する。
得られた正極活物質をX線回折で測定したところ、核材が組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物のピークと、組成式Li3PO4に帰属される2θ=23.2°付近のピークとが見られた。ラマン測定したところ、活物質粒子の表面が炭素材料で被覆されていた。炭素含有量は3.6質量%であった。
(実施例10〜14)
リン酸二水素リチウム、および、酢酸リチウムの量を変えた以外は、上記実施例9と同様の方法により正極活物質を作製した。得られた正極活物質は、X線回折で測定したところ、核材が組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物のピークと、組成式Li3PO4に帰属される2θ=23.2°付近のピークが見られた。ラマン測定したところ、活物質粒子の表面が炭素材料で被覆されていた。得られた正極活物質をICP−AESにより元素分析し、その結果を表1に示す。炭素含有量は3.6質量%〜3.7質量%であった。
リン酸二水素リチウム、および、酢酸リチウムの量を変えた以外は、上記実施例9と同様の方法により正極活物質を作製した。得られた正極活物質は、X線回折で測定したところ、核材が組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物のピークと、組成式Li3PO4に帰属される2θ=23.2°付近のピークが見られた。ラマン測定したところ、活物質粒子の表面が炭素材料で被覆されていた。得られた正極活物質をICP−AESにより元素分析し、その結果を表1に示す。炭素含有量は3.6質量%〜3.7質量%であった。
さらに、実施例12〜14については走査型顕微鏡観察(SEM)を行った。その結果を図2〜4に示す。また、実施例10の正極活物質のXPSスペクトルに基づき決定された、正極活物質の表面からの深さとその深さ位置における各元素の存在比との関係を図8(実線)に示す。XPS測定とArスパッタを繰り返すことにより深さ方向の元素濃度の変化を知ることができ、図8の横軸は、SiO2換算値での深さ(nm)を表している。
(比較例1、2)
リン酸二水素リチウム及び、酢酸リチウムの量を変えた以外は、上記実施例9と同様の方法により正極活物質を作製した。得られた正極活物質をICP−AESにより元素分析し、その結果を表1に示す。炭素含有量は3.6質量%〜3.7質量%であった。比較例1は、Li量およびP量がほぼ1となっており、A=B=0の場合に相当し、組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物中には、Li3PO4がほとんど析出していないと考えられる。比較例1については、正極活物質のXPSスペクトルに基づき決定された、正極活物質の表面からの深さとその深さ位置における各元素の存在比との関係を図8(破線)に示す。
リン酸二水素リチウム及び、酢酸リチウムの量を変えた以外は、上記実施例9と同様の方法により正極活物質を作製した。得られた正極活物質をICP−AESにより元素分析し、その結果を表1に示す。炭素含有量は3.6質量%〜3.7質量%であった。比較例1は、Li量およびP量がほぼ1となっており、A=B=0の場合に相当し、組成式LiMnFePO4で表されるオリビン型構造を有するリチウム複合酸化物中には、Li3PO4がほとんど析出していないと考えられる。比較例1については、正極活物質のXPSスペクトルに基づき決定された、正極活物質の表面からの深さとその深さ位置における各元素の存在比との関係を図8(破線)に示す。
(正極作製方法)
実施例1〜14および比較例1、2で作製した正極活物質82.5重量部と、導電材としてのアセチレンブラック10重量部と、バインダーとしての変性ポリアクリロニトリル7.5重量部とをN−メチルピロリドンに溶解し、その溶解した溶液を混錬し正極合剤スラリーを調製した。得られた正極合剤スラリーを、アルミニウム箔上に塗布機を用いて均一に塗布した。大気中にて80℃で乾燥後、φ15mmに打抜き加圧して評価用の正極を得た。
実施例1〜14および比較例1、2で作製した正極活物質82.5重量部と、導電材としてのアセチレンブラック10重量部と、バインダーとしての変性ポリアクリロニトリル7.5重量部とをN−メチルピロリドンに溶解し、その溶解した溶液を混錬し正極合剤スラリーを調製した。得られた正極合剤スラリーを、アルミニウム箔上に塗布機を用いて均一に塗布した。大気中にて80℃で乾燥後、φ15mmに打抜き加圧して評価用の正極を得た。
(電極特性評価)
上記により作製したそれぞれの正極について、電極特性を評価した。電解液として、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒にビニレンカーボネートを添加し、これに1M LiPF6を添加したものを用いた。また、負極にはリチウム金属を用いた。
上記により作製したそれぞれの正極について、電極特性を評価した。電解液として、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒にビニレンカーボネートを添加し、これに1M LiPF6を添加したものを用いた。また、負極にはリチウム金属を用いた。
充放電試験は、4.5V(vs.Li/Li+)となるまで定電流定電圧充電を行い、2V(vs.Li/Li+)となるまで定電流放電を行った。充放電電流値は0.1Cとした。3サイクル目の放電容量を初期放電容量とした。また、放電電流値を5Cに設定して測定した放電容量を、5C放電容量とした。また、5C放電容量を初期放電容量で割り、それに100を乗じた値を5C放電維持率とした。その結果を表3に示す。
(高温保存後Mn溶出量評価)
上述の各正極について、高温保存後のMn溶出量を評価した。正極を充放電電流値は0.1Cで、4.5V(vs.Li/Li+)となるまで定電流定電圧充電を行い、2V(vs.Li/Li+)となるまで定電流放電を行うというサイクルを3サイクル行った。その後、充電電流値0.1Cで4.5V(vs.Li/Li+)となるまで定電流定電圧充電した。上記により充電した電極をエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒にビニレンカーボネートを添加し、これに1M LiPF6を添加した電解液5ml中に浸漬し、80℃で2週間保存後に電解液中のMn量をICPにより測定した。電解液中のMn量を保存前の正極中のMn量で割り、それに100を乗じた値をMn溶出量とした。その結果を表3に示す。
上述の各正極について、高温保存後のMn溶出量を評価した。正極を充放電電流値は0.1Cで、4.5V(vs.Li/Li+)となるまで定電流定電圧充電を行い、2V(vs.Li/Li+)となるまで定電流放電を行うというサイクルを3サイクル行った。その後、充電電流値0.1Cで4.5V(vs.Li/Li+)となるまで定電流定電圧充電した。上記により充電した電極をエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒にビニレンカーボネートを添加し、これに1M LiPF6を添加した電解液5ml中に浸漬し、80℃で2週間保存後に電解液中のMn量をICPにより測定した。電解液中のMn量を保存前の正極中のMn量で割り、それに100を乗じた値をMn溶出量とした。その結果を表3に示す。
表3に示すように、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+Bの式中Aが0.02<A<0.40、かつ、Bが0.006<B<0.100である実施例1〜14は、Mn溶出量が2.7質量%以下となっている。これらの値は、略量論組成である比較例1のMn溶出量3.4質量%よりも小さく、実施例1〜14ではMn溶出量が低減されている。また、実施例1〜14では、初期放電容量は141Ah/kg以上と高容量であり、5Cでの放電容量も113Ah/kg以上と高容量を維持しており、レート特性も良好である。
これは、前述したように、過剰なLiと過剰なPによりLi3PO4が析出し、そのLi3PO4が電解液中のフッ化水素をトラップすることにより、Mn溶出が抑制されたものと考えられる。また、Li3PO4はLiイオン伝導性であるため、Li3PO4が析出することでLiイオン拡散性が向上し、高容量かつ高レート特性となったものと考えられる。
特に、Aが0.13<A<0.27の範囲で、Bが0.027<B<0.076の範囲である実施例2〜5は、初期放電容量が153Ah/kg以上で、5C放電容量も134Ah/kg以上となっており、さらに高容量、かつ、高レート特性となっている。これは、Li3PO4がLiイオン拡散性を向上させるのに十分、かつ、過剰に析出し、電子伝導性を低下させることもなく有効に機能したためであると考えられる。
一方、組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+Bの式中Aが、0.4≦A、かつ、Bが0.100≦Bである比較例2は、Mn溶出量は実施例1〜14の場合と比べて0.3質量%と低くなっているが、初期容量に関しては139Ah/kgと低容量であった。これは、0.4≦A、かつ、Bが0.100≦Bであるために、Liイオンに対して不活性なLi3PO4が過剰に析出し、低容量となったものと考えられる。
表2に示すように、原料にリン酸リチウムを用いた実施例3では、正極活物質粒子の中心部と外周部にP量の差は見られない。一方、図8に示すように、原料にリン酸リチウムを用いていない実施例10では、比較例1(Li3PO4が析出していない場合)と比べて表面がLiリッチになっている。
このことから、原料にリン酸リチウム(Li3PO4)を用いるとLi3PO4が粒子表面に局在化しておらず、Li3PO4が被覆層を形成していないことがわかる。実施例3と同様に、原料にリン酸リチウムを用いた実施例1〜8は、リン酸リチウムが均一に分布していると考えられる。一方、原料にリン酸リチウムを用いない場合には、Li3PO4の被覆層が形成されている。実施例10と同様に、原料にリン酸リチウムを用いない実施例9〜14、および、比較例2はLi3PO4被覆層が存在すると考えられる。
表3を見ると、Li3PO4が粒子内に均一に分布している実施例1〜8では、初期放電容量が148Ah/kgと高容量で、5C容量維持率も85%と高レート特性である。これは、Liイオン伝導性のLi3PO4が正極活物質粒子内に均一に分布するため、Li拡散抵抗がさらに低くなり、さらに高容量、高レート特性になったものと考えられる。
さらに、AとBとの比(A/B)がA/B≦2である実施例12および13は、図2、3に示すように粒子径が大きく、5C放電容量が若干低くなる。一方、A/B>6である実施例14は、図4に示すように微細だが粒成長が不十分となり、初期放電容量、5C放電容量ともに若干低容量となる。これは、Li3PO4が効率的に析出せず、異相が生成しているためと考えられる。つまり、式中のA、Bは、比(A/B)が2<A/B≦6となることが好ましい。
上述した各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
1:正極活物質、2:非水系二次電池、3:正極、4:負極、5:セパレータ、6:正極リード、7:負極リード、8:電池缶、9:パッキン、10:絶縁板、11:密閉蓋部、12:中心部、13:外周部
Claims (11)
- 組成式Li1+AMnXM1−X(PO4)1+B(式中、A、BおよびXはそれぞれ0.02<A<0.40、0.006<B<0.100、0.6≦X<1であり、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、V及びZrから選ばれる一種以上の金属原子である)で表わされるリチウム複合酸化物であって、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物中にLi3PO4を含む、非水系二次電池用正極活物質。
- 請求項1に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
前記AおよびBが、それぞれ0.13<A<0.27、0.040<B<0.076であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項2に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
前記Aと前記Bとの比(A/B)が、2<(A/B)≦6であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項1に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
前記リチウム複合酸化物のX線回折測定で、Li3PO4に帰属される2θ=23.2°のピーク強度が、2θ=25.5°付近に現れるオリビン化合物に帰属されるピーク強度の2%以上であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
正極活物質粒子中心部の遷移金属の原子量TCとPの原子量PCとの比(PC/TC)ACと、正極活物質粒子外周部の遷移金属の原子量TSとPの原子量PSとの比(PS/TS)ASとの比(AC/AS)が0.5以上2以下であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項5に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
正極活物質粒子の表面の少なくとも一部が導電性物質で被覆されていることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項6に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
前記導電性物質は炭素材料であり、
正極活物質の炭素含有量が、0.5質量%以上30質量%未満であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項7に記載の非水系二次電池用正極活物質において、
正極活物質の粒子径が、10nm以上500nm以下であることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の非水系二次電池用正極活物質を製造するための製造方法であって、
前記リチウム複合酸化物を形成するための原料を混合する工程と、
前記混合した原料を仮焼成する工程と、
仮焼成により得られる前記仮焼成体に炭素源を混合する工程と、
仮焼成体及び炭素源を混合した混合物を、オリビン型構造を有するリチウム複合酸化物の結晶化温度以上、かつ、前記結晶化温度に400℃を加えた温度以下である焼成温度で本焼成する工程と、を含む製造方法。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の非水系二次電池用正極活物質を含む正極合剤と、正極集電体と、を備える非水系二次電池用正極。
- 正極、負極、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータ、および電解質を備える非水系二次電池であって、
前記正極は、請求項10に記載の非水系二次電池用正極であることを特徴とする非水系二次電池。
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