JP2015002091A - リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015002091A
JP2015002091A JP2013126282A JP2013126282A JP2015002091A JP 2015002091 A JP2015002091 A JP 2015002091A JP 2013126282 A JP2013126282 A JP 2013126282A JP 2013126282 A JP2013126282 A JP 2013126282A JP 2015002091 A JP2015002091 A JP 2015002091A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
positive electrode
electrode active
active material
ion secondary
lithium ion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013126282A
Other languages
English (en)
Inventor
寛 北川
Hiroshi Kitagawa
寛 北川
崇 中林
Takashi Nakabayashi
崇 中林
秀一 高野
Shuichi Takano
秀一 高野
小林 満
Mitsuru Kobayashi
満 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2013126282A priority Critical patent/JP2015002091A/ja
Publication of JP2015002091A publication Critical patent/JP2015002091A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】高エネルギー密度及び高レート特性を有し、且つ高温保存において長寿命であるリチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】本発明は、組成式LixMnyM1-y(PO4)z(式中、Mは、Fe、Co、Ni、Mg、Ti、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であり、xは、1.0<x<1.3の範囲から選択され、yは、0.5≰y<1の範囲から選択され、zは、1.0<z<1.1の範囲から選択される。)で表される、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子と、該粒子の表面に配置され、正極活物質の総質量に対して0.5〜8質量%の範囲のリン酸リチウム及び0.5〜5質量%の範囲の炭素を含有する複合膜とを有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、コバルト酸リチウムが主流である。現在のところ、コバルト酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池が広く用いられている。しかしながら、コバルト酸リチウムの原料であるコバルトは、産出量が少なく且つ高価である。このため、コバルト酸リチウムの代替材料の開発が求められている。コバルト酸リチウムの代替材料として、スピネル構造を有するマンガン酸リチウム及びニッケル酸リチウムが提案されている。しかしながら、マンガン酸リチウムは、放電容量が十分でないという問題が存在した。また、ニッケル酸リチウムは、高容量が期待できるものの、高温時の熱安定性が十分ではないという問題が存在した。
熱安定性の観点では、結晶構造内にポリアニオン(PO4 3-、BO3 3-又はSiO4 4-のような、1個の典型元素に複数の酸素が結合してなるアニオン)を有するポリアニオン系化合物が優れている。このため、前記ポリアニオン系化合物も、リチウムイオン二次電池用の正極活物質として期待されている。前記ポリアニオン系化合物が熱安定性に優れる理由は、ポリアニオンの結合(P-O結合、B-O結合又はSi-O結合等)が強固であり、高温時も酸素が脱離しないためと考えられる。
しかしながら、ポリアニオン系化合物は、電子伝導性及びイオン伝導性が低く、放電容量を十分に取り出すことができないという問題が存在した。これは、前記の強固なポリアニオン結合に、電子が局在化することに起因すると考えられる。
ポリアニオン系化合物における前記問題に対し、例えば、特許文献1は、AaMmZzOoNnFfの一般式に対応する複合酸化物を含む電極材料であって、Aは、アルカリ金属を包含し、Mは、少なくとも1種の遷移金属、及び随意に少なくとも1種の非遷移金属、又はそれらの混合物を包含し、Zはホウ素、リン、硫黄、ケイ素などであり、Oは酸素であり、ZとOとは前記ポリアニオンを形成し、Nは窒素であり、且つFはフッ素であり、また係数a、m、z、o、n、fはそれぞれ0以上であり且つ電気的中性を確実にするように選択され、ここで、伝導性炭素材料が前記材料の表面に均一に堆積して、この材料の粒子の表面において、実質的に規則的な電場分布が得られる電極材料を記載する。特許文献1に記載の電極材料は、ポリアニオン系化合物の表面を炭素で被覆することにより、電子伝導性を向上させる技術である。
特許文献2は、リチウム鉄リン酸化合物からなる粒子の表面にリチウム化合物が添着されてなる、非水電解質リチウムイオン二次電池用正極材料を記載する。当該文献は、添着されたリチウム化合物として、Li3PO4を記載する。また、当該文献は、前記粒子の表面に、炭素のような導電性材料がさらに添着され得ることを記載する。
非特許文献1は、ポリアニオン系化合物の粒子径を小粒径化して反応面積を増加させ、且つ拡散距離を短縮して、電子伝導性及びイオン伝導性を向上させる技術を記載する。
特開2001-15111号公報 特開2006-66081号公報
A. Yamada, S. C. Chung, 及びK. Hinokuma, "Optimized LiFePO4 for Lithium Battery Cathodes", Journal of the Electrochemical Society, 第148巻, 2001年, pp. A224-A229.
ポリアニオン系化合物の中でも、オリビン構造を有する化合物(以下、「オリビン型化合物」とも記載する)、特にリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4)は、高い安全性を有する。また、リチウム鉄リン酸化合物は、種々の改良を施すことによって、良好な充放電特性を発現させることができる。前記改良手段としては、例えば、電子伝導性の改善を目的とした炭素被覆、及び反応面積の向上を目的とした小粒径化を挙げることができる。
前記改良手段は、LiFePO4以外のオリビン型化合物にも適用することができる。特に、Mnを中心金属として有するオリビン型化合物の場合、平均電位が上昇するため、該オリビン型化合物を正極活物質に用いるリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度となると考えられる。
しかしながら、Mnを50%以上含むオリビン型化合物(以下、「オリビンMn正極活物質」とも記載する)は、LiFePO4と比較してレート特性が良好ではないという問題が存在した。前記の問題に加えて、本発明者らは、オリビンMn正極活物質は高温保存中に正極の抵抗が上昇するという問題が存在することを見出した。オリビンMn正極活物質における抵抗上昇は、LiFePO4の場合と比較して著しく大きい。このため、オリビンMn正極活物質をリチウムイオン二次電池に用いるためには、高温保存特性の改善が必要となる。
それ故、本発明は、高エネルギー密度及び高レート特性を有し、且つ高温保存において長寿命であるリチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、組成式LixMnyM1-y(PO4)z(式中、Mは、Fe、Co、Ni、Mg、Ti及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であり、xは、1.0<x<1.3の範囲から選択され、yは、0.5≦y<1の範囲から選択され、zは、1.0<z<1.1の範囲から選択される。)で表される、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子と、該粒子の表面に配置され、正極活物質の総質量に対して0.5〜8質量%の範囲のリン酸リチウム(Li3PO4)及び0.5〜5質量%の範囲の炭素を含有する複合膜とを有する。
本発明により、高エネルギー密度及び高レート特性を有し、且つ高温保存において長寿命であるリチウムイオン二次電池用正極活物質、リチウムイオン二次電池を提供することが可能となる。
前記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、本発明の正極活物質の形態を示す模式図である。 図2は、実施例1の正極活物質のXRDスペクトルを示す図である。 図3は、比較例1の正極活物質のXRDスペクトルを示す図である。 図4は、実施例1及び比較例1の正極活物質のXPSスペクトル基づき決定された、該正極活物質の表面からの深さとその深さ位置における各元素の存在比との関係を示す図である。 図5は、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態を示す模式図である。 図6は、本発明のリチウムイオン二次電池モジュールの一実施形態を示す模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。
<1. リチウムイオン二次電池用正極活物質>
本発明は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子と、リン酸リチウム及び炭素を含有する複合膜とを有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。本明細書において、「オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物」は、酸素原子が六方最密充填構造に、リチウム原子及びリチウムと複合リン酸化物を形成する他の金属元素の原子が六配位八面体構造に、リン原子が四配位四面体構造に、それぞれ配置された結晶構造を有する化合物を意味する。オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物は、リチウムを挿入及び脱離することにより、リチウムイオン二次電池の充放電反応の主体となる材料である。
なお、リチウム複合リン酸化物がオリビン構造を有することは、例えば、該化合物のX線回折(XRD)スペクトルを測定して、オリビン構造に特徴的なピーク(例えば、CuKα線を用いた場合の回折角(2θ)=16〜18、20〜22、24〜26及び/又は28〜30度)を観測することにより、確認することができる。もちろん、前記化合物の結晶中の原子配置を同定し得る手段であれば、他の測定手段を用いてもよい。これは、他の物性値の測定手段についても同様である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質において、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物は、組成式LixMnyM1-y(PO4)zで表される化合物であることが必要である。Mnを中心金属として有するオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物は、平均電位が上昇する。それ故、前記化合物を正極活物質に用いることにより、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を製造することができる。
前記式において、Mは、Fe、Co、Ni、Mg、Ti、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であることが必要である。Mは、Fe、Mg、Ti、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であることが好ましく、Feであることがより好ましい。Mが前記の金属元素である場合、高レート特性のリチウムイオン二次電池を製造することができる。
前記式において、xは、1.0<x<1.3の範囲から選択されることが必要である。特に、xは、1<x<1.2の範囲から選択されることが好ましい。yは、0.5≦y<1の範囲から選択されることが必要である。yは、エネルギー密度の観点から、0.7<y<0.9の範囲から選択されることが好ましい。zは、1.0<z<1.1の範囲から選択されることが必要である。x、y及びzが前記範囲である場合、前記式で表される化合物はオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物となる。
なお、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物が前記式で表される元素組成であることは、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、原子吸光光度法又は蛍光X線法により、確認することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面に、リン酸リチウム及び炭素を含有する複合膜が配置されていることが必要である。本発明者らは、正極活物質に含まれるリチウム複合リン酸化物の粒子(以下、「核材」とも記載する)の表面に配置された複合膜にリン酸リチウム(Li3PO4)が含有されることにより、該正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、従来技術の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池と比較して、レート特性及び高温保存特性が向上することを見出した。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質が前記のような特性を有する理由は、以下のように説明することができる。なお、本発明は、以下の作用・原理に限定されるものではない。
複合膜に含有されるリン酸リチウムは、高いLiイオン伝導性を有することが知られている。このため、リン酸リチウムを含有する複合膜が核材の表面に配置された本発明の正極活物質は、充放電時の界面抵抗が低くなる。それ故、リン酸リチウムを含有する複合膜を核材の表面に配置することにより、界面抵抗を低下させて、結果としてレート特性を向上させることができる。
前記で説明したように、Mnを50%以上含むオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物(オリビンMn正極活物質)は、高温保存中に正極の抵抗が上昇する。このような現象は、LiFePO4のようなFeを多く含むリチウム複合リン酸化物では観察されない。このため、高温保存中の抵抗上昇は、充電時にMnが3価イオンになった際の不安定性に起因すると考えられる。これに対し、リン酸リチウムを含有する複合膜を核材の表面に配置することにより、核材が電解液及び/又は電解液中の溶質成分と反応することを抑制し得る。それ故、リン酸リチウムを含有する複合膜によって核材のMnが保護され、結果として高温保存中の抵抗上昇を抑制することができる。
正極活物質の核材を炭素で被覆する技術は公知である。炭素は、高い電子伝導性、及びリン酸リチウムに劣るものの一定のLiイオン伝導性を有することが知られている。一方、リン酸リチウムは絶縁性であり、活物質の全面を被覆すると抵抗が上昇してしまう。このため、リン酸リチウムで核材の表面を被覆する場合、電子伝導性を有する材料との複合膜として、電子伝導性を導入する必要がある。それ故、リン酸リチウム及び炭素を含有する複合膜をオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面に配置することにより、リン酸リチウムによる前記効果を発現させ、且つ電子伝導性を向上させることができる。
特に、正極活物質粒子の表面にリン酸リチウム化合物を少なくとも一部、例えば点在又は表面に一部欠損部分を有する状態として、被覆層を形成するとともに、リン酸リチウム化合物の上方から、欠損部分を含む粒子表面を炭素被覆層で覆うことが好ましく、粒子表面全体を炭素被覆層で覆うことが最も好ましい。
本発明の正極活物質の形態を示す模式図を図1に示す。図1に示すように、本発明の一形態のリチウムイオン二次電池用正極活物質2は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子21の表面に、リン酸リチウム及び炭素を含有する複合膜が配置されている。前記複合膜において、リン酸リチウム22は、通常、リチウム複合リン酸化物の粒子21の表面を、典型的には該表面の略全体を被覆するように配置されている。また、炭素23は、通常、正極活物質2の表面を、典型的には該表面の略全体を被覆するように配置されている。より好ましい本発明の形態としては、リチウムイオン二次電池用正極活物質1は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子11の表面に、リン酸リチウム及び炭素を含有する複合膜が配置されている。前記複合膜において、リン酸リチウム12は、リチウム複合リン酸化物の粒子11の表面の一部を被覆するように配置されている。また、炭素13は、正極活物質1の表面を被覆するように配置されている。リン酸リチウム12は、リチウム複合リン酸化物の粒子11の総表面積に対して30〜95%の部分を被覆していることが好ましい。また、炭素13は、正極活物質1の総表面積に対して少なくとも70%を被覆していることが好ましく、85〜100%を被覆していることがより好ましい。リン酸リチウム12の被覆率が前記範囲の場合、核材11の表面の一部がリン酸リチウム12から露出するため、充放電の反応場が拡大する。これにより、核材11の中心金属であるMnの特性を発揮させて、エネルギー密度を向上させることができる。電子伝導性が低いリン酸リチウムによって核材11の表面全体が被覆されないため、電気抵抗の上昇を抑制することができる。また、炭素13の被覆率が前記範囲の場合、十分な放電容量を得ることができる。
なお、前記の被覆率は、例えば、X線光電子分光(XPS)法又は紫外ラマン分光法のような表面分析手段によって、決定することができる。
前記複合膜において、リン酸リチウムは、正極活物質の総質量に対して0.5〜8質量%の範囲で含有されていることが必要である。リン酸リチウムは、正極活物質の総質量に対して1〜5質量%の範囲で含有されていることが好ましい。リン酸リチウムの含有量が0.5質量%以上の場合、前記で説明したより好ましい形態の複合膜の効果を容易に得ることができる。リン酸リチウムの含有量が8質量%以下の場合、リン酸リチウムは、前記で説明したように、核材であるリチウム複合リン酸化物の粒子の表面の一部を被覆するように配置される。これにより、核材の中心金属であるMnの特性を発揮させて、エネルギー密度を向上させることができる。
なお、正極活物質の総質量に対するリン酸リチウムの含有量は、例えば、正極活物質のXRD又は中性子線回折スペクトルを測定し、得られた結果を、Rietveld法に基づき解析することにより、決定することができる。
前記複合膜において、炭素は、正極活物質の総質量に対して0.5〜5質量%の範囲で含有されていることが必要である。炭素は、正極活物質の総質量に対して2〜4質量%の範囲で含有されていることが好ましい。炭素の含有量が0.5質量%以上の場合、十分な電子伝導性を得ることができる。炭素の含有量が5質量%以下の場合、十分な放電容量を得ることができる。
なお、正極活物質の総質量に対する炭素の含有量は、例えば、高周波燃焼‐赤外線吸収法により、決定することができる。
前記複合膜は、所望により、Al2O3、ZrO2又はAlF3のようなさらなる化合物を含有してもよい。前記複合膜がAl2O3を含有する場合、電解液による正極活物質表面の還元を抑制することができる。
本発明の正極活物質は、一次粒子の形態であってもよく、該一次粒子が複合化した二次粒子の形態であってもよい。いずれの形態であっても本発明の正極活物質に包含される。本発明の正極活物質が二次粒子の形態である場合、各一次粒子の表面に配置された前記複合膜中の炭素が相互に結合することによって、複数の一次粒子が一体化する。これにより、強固な二次粒子を形成することができる。
前記一次粒子の形態の場合、一次粒子の平均粒子径は、10〜500 nmの範囲であることが好ましく、20〜200 nmの範囲であることがより好ましい。また、前記二次粒子の形態の場合、二次粒子の平均粒子径は、0.5〜100μmの範囲であることが好ましく、2〜50μmの範囲であることがより好ましい。一次粒子の平均粒子径が前記範囲である場合、電極の抵抗を低減することができる。また、二次粒子の平均粒子径が前記範囲である場合、電極塗工性及び/又は電極密度を向上することができる。
なお、一次粒子及び二次粒子の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によって該粒子を観察することにより、測定することができる。
<2. リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法>
本発明はまた、前記で説明したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
[2-1. 原料混合工程]
本発明の方法は、Li、Mn、M及びPO4の原料を混合する原料混合工程を含む。本工程は、前記原料を含む原料混合物を得ることを目的とする。
本工程において、Li、Mn、M及びPO4の原料を、MnとMとの和に対するLi及びPO4のモル比、すなわちMnとMとの和に対するLiのモル比、並びにMnとMとの和に対するPO4のモル比のいずれもが、それぞれ1以上となるように混合することが必要である。MnとMとの和に対するLiのモル比は、1.05〜1.30の範囲であることが好ましい。MnとMとの和に対するPO4のモル比は、1〜1.15の範囲であることが好ましい。前記のモル比で原料を混合することにより、組成式LixMnyM1-y(PO4)zで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を得ることができる。
本工程において、Li、Mn、M及びPO4の原料を、PO4に対するLiのモル比が1.05以上となるように混合することが好ましい。特に、PO4に対するLiのモル比は、1.05〜1.15の範囲であることが好ましい。本工程において、前記のモル比で原料を混合する実施形態を、「前添加」又は「前添加の実施形態」と記載する場合がある。前記のモル比で原料を添加(すなわち前添加)することにより、以下の仮焼成工程において、組成式LixMnyM1-y(PO4)zで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面にリン酸リチウムを付着させて、該表面の一部がリン酸リチウムによって被覆された正極活物質の前駆体粒子を得ることができる。
或いは、本工程において、Li、Mn、M及びPO4の原料を、PO4に対するLiのモル比が略量論比となるように混合することもできる。このとき、PO4に対するLiのモル比は、1〜1.05の範囲であることが好ましい。本工程において、前記のモル比で原料を混合する実施形態を、「後添加」又は「後添加の実施形態」と記載する場合がある。後添加の実施形態の場合、以下において説明するように、炭素源混合工程において追加のLi及びPO4の原料を添加(すなわち後添加)する。本工程において前記のモル比で原料を混合し、且つ炭素源混合工程において追加のLi及びPO4の原料を後添加することにより、以下の本焼成工程において、組成式LixMnyM1-y(PO4)zで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面にリン酸リチウム及び炭素を付着させて、該表面の一部がリン酸リチウムによって被覆され、且つ表面が炭素によって被覆された正極活物質の粒子を得ることができる。
本工程において、Li、Mn、M及びPO4の原料を、実質的に均質な状態となるように混合することが好ましい。前記原料を混合する手段としては、ビーズミルのような粉砕装置を用いて該原料を機械的に粉砕して混合する方法、又は酸、アルカリ若しくはキレート剤等を用いて該原料を溶解させ、得られる溶液を乾燥させることによって混合する方法が好ましい。前記のように混合することにより、以下の仮焼成工程において正極活物質の前駆体粒子の結晶が粗大化し、且つ/又はMn若しくはFeの酸化物若しくはMnP2O7のような異相が形成されることを抑制することができる。
Li、Mn、M及びPO4の原料としては、以下の仮焼成工程において残留しないLi、Mn、M及びPO4の塩が好ましい。例えば、Liの原料は、酢酸リチウム、炭酸リチウム又は水酸化リチウム等が好ましい。Mn又はMの原料は、Mn又はMの酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩又は酒石酸塩等が好ましい。PO4の原料は、リン酸又はその塩(アンモニウム塩若しくはリチウム塩等)、例えば、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウム等が好ましい。前記の原料は、Li、Mn、M及びPO4のそれぞれについて1種類の化合物であってもよく、前記の群より選択される複数の化合物の組み合わせであってもよい。
[2-2. 仮焼成工程]
本発明の方法は、原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成する仮焼成工程を含む。本工程は、正極活物質の前駆体粒子を形成させることを目的とする。
本明細書において、「正極活物質の前駆体(粒子)」は、原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成することによって形成される粒子であって、具体的には、組成式LixMnyM1-y(PO4)zで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面の少なくとも一部がリン酸リチウムによって被覆された粒子を意味する。本工程により、前記式で表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面にリン酸リチウムを付着させて、好ましくは該表面の一部がリン酸リチウムによって被覆された正極活物質の前駆体粒子を得ることができる。
本工程において、仮焼成する温度は、400〜600℃の範囲であることが好ましい。400℃以上の温度で仮焼成することにより、未反応の各原料の残留を減少させることができる。また、結果として得られる正極活物質の一次粒子の平均粒子径を好ましい範囲まで大きくすることができる。600℃以下の温度で仮焼成することにより、結果として得られる正極活物質の一次粒子の粗大化を防止することができる。これにより、正極活物質の比表面積が減少して、該正極活物質と電解液との反応面積が減少することを防止することができる。
本工程において、仮焼成は、酸化雰囲気、不活性雰囲気及び還元雰囲気のいずれの条件で実施してもよい。
本工程は、1回のみ実施してもよく、複数回実施してもよい。
[2-3. 炭素源混合工程]
本発明の方法は、正極活物質の前駆体粒子と炭素原料とを混合する炭素源混合工程を含む。本工程は、前駆体粒子及び炭素原料を少なくとも含む混合物を得ることを目的とする。
前添加の実施形態の場合、本工程において、正極活物質の前駆体粒子と炭素原料とを混合する。これにより、前記正極活物質の前駆体粒子の表面に炭素原料が付着した、前駆体粒子及び炭素原料を含む混合物を得ることができる。
後添加の実施形態の場合、本工程において、正極活物質の前駆体粒子と炭素原料と追加のLi及びPO4の原料とを混合する。PO4に対するLiのモル比は、1.05〜1.15の範囲となるように混合することが好ましい。前記のモル比で正極活物質の前駆体粒子と炭素原料と追加のLi及びPO4の原料とを混合することにより、以下の本焼成工程において、組成式LixMnyM1-y(PO4)zで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面にリン酸リチウム及び炭素を付着させて、該表面の一部がリン酸リチウムによって被覆され、且つ表面が炭素によって被覆された正極活物質の粒子を得ることができる。
本工程において、正極活物質の前駆体粒子と炭素原料と場合により追加のLi及びPO4の原料とを、実質的に均質な状態となるように混合することが好ましい。前記原料を混合する手段としては、ボールミル又はビーズミルのような粉砕装置を用いて該原料を機械的に粉砕して混合する方法が好ましい。前記のような手段で混合することにより、正極活物質の前駆体粒子及び炭素原料を微細化することができる。
炭素原料としては、アセチレンブラック、黒鉛、糖(例えばスクロース)、有機酸又はピッチ等が好ましく、糖、有機酸又はピッチがより好ましい。炭素原料が糖、有機酸又はピッチの場合、正極活物質の前駆体粒子の表面における炭素原料の密着性を高めることができる。
炭素原料は、微結晶の形態であってもよく、該微結晶同士の一部が結合した網目構造の形態であってもよい。網目構造の形態の場合、500 nm以下の微細な網目構造であることが好ましい。炭素原料の網目構造が前記の範囲の場合、該原料を機械的に粉砕することによって容易に網目構造が破壊される。このため、炭素原料を微細化することができる。
後添加の実施形態の場合、Li及びPO4の原料としては、前記で説明した原料を使用すればよい。或いは、Li3PO4を原料として用いてもよい。
[2-4. 本焼成工程]
本発明の方法は、炭素源混合工程で得られた正極活物質の前駆体粒子、炭素原料、並びに場合により追加のLi及びPO4の原料を含む混合物を本焼成する本焼成工程を含む。本工程は、正極活物質の前駆体粒子に含まれるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の結晶性を向上させるとともに、該前駆体粒子の表面に付着した炭素原料を炭化させて、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子の表面の一部がリン酸リチウムによって被覆され、且つ表面が炭素によって被覆された正極活物質の粒子を形成させることを目的とする。
本工程において、本焼成する温度は、600〜850℃の範囲であることが好ましく、700〜750℃の範囲であることがより好ましい。600℃以上の温度で本焼成することにより、炭素原料を炭化させて、導電性を付与することができる。850℃以下の温度で本焼成することにより、結果として得られる正極活物質のオリビン構造の分解を防止することができる。また、700〜750℃の範囲で本焼成することにより、結果として得られる正極活物質の導電性を向上させ、且つオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物及び炭素の反応による不純物の生成を抑制することができる。
本工程において、本焼成は不活性雰囲気又は還元雰囲気で実施することが好ましい。前記条件で本工程を実施することにより、炭素原料を炭化させ、且つ金属元素の酸化を防止することができる。
[2-5. 造粒工程]
本発明の方法は、所望により、仮焼成工程で得られた正極活物質の前駆体の粒子又は本焼成工程で得られた正極活物質の粒子(一次粒子)を造粒する造粒工程を含んでもよい。本工程により、前記一次粒子を造粒して、所望の平均粒子径を有する二次粒子を形成させることができる。
<3. リチウムイオン二次電池用正極>
本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極材として好適に使用し得る。それ故、本発明はまた、集電体と、本発明の正極活物質を含む正極合剤層とを有する正極に関する。
本発明の正極に使用される集電体は、当該技術分野で通常使用される任意の集電体であればよい。前記集電体の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、チタン及びニッケル等を挙げることができる。例えば、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μmで且つ孔径0.1〜10 mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル又は発泡金属板等が好ましい。
本発明の正極に含まれる正極合剤層は、通常、本発明の正極活物質に加えて、結着剤(バインダ)を含む。前記バインダは、当該技術分野で慣用される任意のバインダであればよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、スチレン-ブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース、並びにこれらの混合物を挙げることができる。前記のようなバインダを用いることにより、正極合剤の密着性を向上させることができる。これにより、正極の導電性を向上させることができる。
本発明の正極に含まれる正極合剤層は、所望により導電助材を含んでもよい。前記導電助材としては、例えば、アセチレンブラック及び黒鉛粉末のような炭素系導電助材を挙げることができる。本発明の正極活物質は高比表面積になりやすい。それ故、正極全体に亘って導電ネットワークを形成するために、導電助材は比表面積が大きい材料が好ましい。例えば、前記導電助材は、アセチレンブラックが好ましい。導電助材としてアセチレンブラックを用いることにより、正極全体に亘って強固な導電ネットワークを形成することができる。これにより、正極の導電性を向上させて、結果として得られるリチウムイオン二次電池の放電容量及びレート特性を向上させることができる。
本発明の正極において、前記正極合剤層は、前記集電体の表面に配置される。例えば、前記正極合剤層が、前記集電体の表面に接着されていることが好ましい。
本発明の正極は、当該技術分野で公知の方法によって作製することができる。本発明の正極活物質は、通常、粒子状又は塊状である。このため、前記で説明した正極活物質とバインダと所望により導電助材とを混合して正極合剤を調製し、正極合剤中で正極活物質及びバインダの粉末同士を結合させる。この際、所望により、正極合剤に増粘剤を加えてもよい。次いで、前記正極合剤を集電体へ付着させて、集電体の表面に正極合剤層を接着させればよい。例えば、前記正極活物質とバインダと所望により導電助材とを溶媒中で混合して、正極合剤の分散液又はスラリを調製する。前記混合及び分散処理は、当該技術分野で公知の混練機又は分散機を用いて実施することができる。正極合剤の分散液又はスラリを調製するための溶媒は、使用されるバインダに基づき適宜選択すればよい。例えば、バインダがPVDFの場合、溶媒として1-メチル-2-ピロリドンを用いることが好ましく、バインダがスチレン-ブタジエンゴムの場合、溶媒として水を、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを用いることが好ましい。前記正極合剤の分散液又はスラリを、ドクターブレード法、ディッピング法又はスプレー法等によって集電体へ付着させる(付着工程)。その後、正極合剤の分散液又はスラリを付着させた集電体を乾燥させることによって、溶媒を蒸発除去させる(乾燥工程)。次いで、ロールプレス等によって集電体及び正極合剤層を加圧成形することにより、正極を作製することができる(成形工程)。前記の方法において、付着工程から乾燥工程までを複数回繰り返すことにより、多層形態の正極合剤層を集電体の表面に配置することもできる。
<4. リチウムイオン二次電池>
本発明の正極は、リチウムイオン二次電池の正極として好適に使用し得る。それ故、本発明はまた、前記の正極と、負極と、電解質とを備えるリチウムイオン二次電池に関する。
本発明の正極を用いて作製したリチウムイオン二次電池の一実施形態を図5に示す。
図5に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池100は、正極110と、負極106と、電解質とを備える。正極110は、前記で説明した本発明のリチウムイオン二次電池用正極である。また、前記リチウムイオン二次電池100は、以下で説明するように、セパレータ107、電池容器105、正極集電タブ103、負極集電タブ109、絶縁板104及び108、ガスケット102、正極外部端子を兼ねる電池蓋101を備えることもできる。
負極106は、集電体と、該集電体の表面に配置された、負極活物質を含む負極合剤層とを有する。前記負極合剤は、通常、負極活物質に加えて、結着剤(バインダ)及び所望により導電助材及び増粘剤を含む。
前記負極活物質は、当該技術分野で通常使用される、リチウムイオンの吸蔵及び放出ができる材料であれば、特に限定されず使用することができる。前記負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、非晶質炭素、難黒鉛化炭素類、活性炭、コークス、熱分解炭素、金属酸化物、金属窒化物、リチウム金属及びリチウム金属合金等、並びにこれらの混合物を挙げることができる。前記材料のうち、非晶質炭素が好ましい。非晶質炭素は、リチウムイオンを吸蔵及び放出するときの体積変化率が少ない材料である。このため、非晶質炭素を負極活物質として用いることにより、充放電のサイクル特性を向上させることができる。
前記集電体及びバインダとしては、前記で説明した正極と同様の材料を使用することができる。
前記導電助材としては、前記で説明した正極と同様の材料だけでなく、導電性高分子材料(例えば、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン又はポリアセチレン等)を使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池に使用される負極は、前記で説明した正極の作製方法と同様の方法によって作製すればよい。
セパレータ107は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、例えば、細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%の多孔体であることが好ましい。セパレータ107の材料としては、例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレンを主成分として含有するポリオレフィン系高分子シート、又はポリオレフィン系高分子及び四フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた多層構造のシート、さらにはセルロース繊維又はポリアクリルニトリルの合成繊維からなる不織布を挙げることができる。電池温度が高くなったときにセパレータ107が収縮しないように、セパレータ107の表面にセラミックス及びバインダの混合物を薄層状に形成させてもよい。
前記電解質は、電解質を有機溶媒に溶解させた電解液の形態で用いることができる。この場合、電解質及び有機溶媒の種類並びに/又は混合比に制限されることなく、当該技術分野で通常使用される任意の電解液を使用することができる。前記電解液に使用される有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリジン、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、クロロエチレンカーボネート及びクロロプロピレンカーボネート等、並びにこれらの混合物から選択される非水溶媒を挙げることができる。本発明のリチウムイオン二次電池に使用される正極又は負極上で分解しない有機溶媒であれば、前記以外の有機溶媒を用いてもよい。
また、前記電解液に使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2、LiClO4、LiCF3CO2、LiAsF6及びLiSbF6等から選択されるリチウム塩を挙げることができる。前記リチウム塩は、単独で用いてもよく、複数のリチウム塩の混合物として用いてもよい。本発明のリチウムイオン二次電池に使用される正極又は負極上で分解しない電解質であれば、前記以外の電解質を用いてもよい。
或いは、前記電解質として、ポリマーゲル電解質又は固体電解質を用いることもできる。固体高分子電解質(ポリマー電解質)を用いる場合、エチレンオキシド、アクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、メタクリル酸メチル、又はヘキサフルオロプロピレンのポリエチレンオキサイド等のイオン導電性ポリマーが好ましい。前記固体高分子電解質を用いることにより、セパレータ107を省略することができる。
電池容器105の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼又はニッケルメッキ鋼等の、非水電解質に対し耐食性のある材料から適宜選択すればよい。また、電池容器105を正極集電タブ103又は負極集電タブ109に電気的に接続する場合、非水電解質と接触している部分において、電池容器の腐食及び/又はリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、集電タブの材料を選定することが好ましい。
次に、図5を参照しながら、前記正極を備える本発明のリチウムイオン二次電池の構成をさらに説明する。
前記で説明した正極110及び負極106の間にセパレータ107を挿入して、正極110及び負極106の短絡を防止する。セパレータ107は、複数の正極110、負極106及びセパレータ107からなる電極群の末端に配置されている電極と電池容器105との間にも挿入して、電池容器105を通じての正極110と負極106との間の短絡を防止する。
正極110、負極106及びセパレータ107からなる積層体は、集電タブを介して外部端子に電気的に接続されている。正極110は、正極集電タブ103を介して電池蓋101に接続されている。負極106は、負極集電タブ109を介して電池容器105に接続されている。集電タブ103及び109は、ワイヤ状(例えばリード線)、箔状又は板状等の任意の形状を採ることができる。電流を流したときにオーム損失を小さくすることのできる構造であり、且つ電解液と反応しない材質であれば、集電タブ103及び109の形状、本数、並びに/又は材質は、電池容器105の構造に応じて任意に選択することができる。
複数の正極110、負極106及びセパレータ107からなる電極群の形状は、捲回形状であってもよく、扁平状などの任意の形状に捲回した形状であってもよく、短冊状の形状であってもよい。種々の形状を採ることができる。また、電池容器の形状は、前記電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状又は角型等の任意の形状を選択することができる。この場合、電池容器は、電池容器105の如く底面の部材と一体となった構成としてもよく、電池容器の底面に電池蓋を取り付け、電池蓋に負極を接続する構成としてもよい。本発明の効果に何ら影響を与えることなく、前記電極群の形状及び/又は端子の取り付け方法に応じて任意の形状及び構成の電池容器を用いることができる。
電池容器105への電池蓋101の取り付けは、かしめ、溶接又は接着等の方法によって行うことができる。
前記電極群を挿入した電池容器105の内部に電解質を注入して、正極110、負極106及びセパレータ107の表面及び細孔内部に電解質を保持させる。前記で説明したように、電解質として、ポリマーゲル電解質又は固体電解質を用いる場合、セパレータ107は不要である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、単独で用いてもよく、複数のリチウムイオン二次電池を接続したモジュールの形態で用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池を用いて作製したリチウムイオン二次電池モジュールの一実施形態を図6に示す。
図6に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池のモジュール201は、複数のリチウムイオン二次電池202を備える。前記複数のリチウムイオン二次電池202の正極外部端子203及び負極外部端子205は、端子204によって互いに接続されることができる。図6の8個のリチウムイオン二次電池202は、直列に接続されている。前記リチウムイオン二次電池のモジュール201に含まれるリチウムイオン二次電池202は、場合によりモジュール容器206により適切な位置に配置される。
また、本発明のリチウムイオン二次電池のモジュール201は、所望により正極外部端子207と、負極外部端子208と、充電回路210と、演算制御部209と、電力線212と、信号線213と外部電力ケーブル214とを備える、リチウムイオン二次電池モジュールの形態とすることもできる。前記モジュールは、外部電源又は外部負荷に接続され(図6では211と表示される)、充放電することができる。
以上詳細に説明したように、本発明の正極活物質及び正極は、高エネルギー密度及び高レート特性を有し、且つ高温保存において長寿命である。このため、本発明の正極を用いたリチウムイオン二次電池及びそのモジュールは、従来品と比較して長寿命のものとすることができる。前記の特性を有することにより、本発明のリチウムイオン二次電池及びそのモジュールは、携帯用電子機器、携帯電話又は電動工具等の民生用品の他、電気自動車、電車、再生可能エネルギーの貯蔵用蓄電池、無人移動車又は介護機器等の電源のような様々な用途に用いることが可能である。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<製造例1:正極活物質の製造>
[実施例1]
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加えた。クエン酸鉄及び酢酸マンガンは、2:8のモル比となるように秤量した。また、リン酸二水素リチウム及び酢酸リチウムは、クエン酸鉄及び酢酸マンガンの合計モル量に対して過剰量となるように加えた。これにより、全体組成におけるLi及びP量が、金属元素量に対して過剰量となるようにした。前記ポットにアセトンを加え、得られた混合物を、遊星型ボールミル装置を用いて粉砕・混合した(原料混合工程)。粉砕後の原料粉末を、470℃で10時間仮焼成することにより、仮焼成体(前駆体粒子)を得た(仮焼成工程)。得られた仮焼成体を、炭素源としてのスクロースと混合した(炭素源混合工程)。得られた混合粉末を、700℃で10時間本焼成することにより、目的の正極活物質を製造した(本焼成工程)。
[実施例2, 3]
実施例1で説明した手順において、原料の全体組成におけるLi及びP量を増減させた他は、実施例1と同様の手順で実施例2及び3の正極活物質を得た。
[実施例4]
実施例1で説明した手順において、被覆工程で炭素源として使用されるスクロース量を増減させた他は、実施例1と同様の手順で実施例4の正極活物質を得た。
[実施例5]
実施例1で説明した手順において、クエン酸鉄及び酢酸マンガンを、5:5のモル比となるように秤量した他は、実施例1と同様の手順で実施例5の正極活物質を得た。
[実施例6]
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、五酸化バナジウム(V2O5)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加えた。クエン酸鉄、酢酸マンガン、水酸化マグネシウム及び五酸化バナジウムは、2:7.8:0.1:0.1のモル比となるように秤量した。以後の操作は実施例1と同様の手順で行い、実施例6の正極活物質を得た。
[実施例7]
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加えた。クエン酸鉄、酢酸マンガン及び水酸化マグネシウムは、2:7.9:0.1のモル比となるように秤量した。以後の操作は実施例1と同様の手順で行い、実施例7の正極活物質を得た。
[実施例8]
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加えた。クエン酸鉄及び酢酸マンガンは、2:8のモル比となるように秤量した。また、リン酸二水素リチウムと、微量の酢酸リチウムとを、クエン酸鉄及び酢酸マンガンの金属の合計モル量に対してリチウム及びリンが焼成後に等モル量となるように加えた。これにより、全体組成におけるLi及びP量が、金属元素量に対して等しくなるようにした。前記ポットにアセトンを加え、得られた混合物を、遊星型ボールミル装置を用いて粉砕・混合した(原料混合工程)。粉砕後の原料粉末を、470℃で10時間仮焼成することにより、仮焼成体(前駆体粒子)を得た(仮焼成工程)。得られた仮焼成体を、Li3PO4及び炭素源としてのスクロースと混合した(炭素源混合工程)。得られた混合粉末を、700℃で10時間本焼成することにより、目的の正極活物質を製造した(本焼成工程)。
[比較例1, 2]
実施例1で説明した手順において、原料の全体組成におけるLi及びP量を増減させた他は、実施例1と同様の手順で比較例1及び2の正極活物質を得た。
[比較例3, 4]
実施例1で説明した手順において、被覆工程で炭素源として使用されるスクロース量を増減させた他は、実施例1と同様の手順で比較例3及び4の正極活物質を得た。
[比較例5]
実施例5で説明した手順において、原料の全体組成におけるLi及びP量を金属元素量に対して略量論比となるようにした他は、実施例5と同様の手順で比較例5の正極活物質を得た。
[比較例6]
クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及び酢酸リチウムをジルコニア製ポットに加えた。リン酸二水素リチウム及び酢酸リチウムは、クエン酸鉄のモル量に対して過剰量となるように加えた。これにより、全体組成におけるLi及びP量が、金属元素量に対して過剰量となるようにした。以後の操作は実施例1と同様の手順で行い、比較例6の正極活物質を得た。
[比較例7]
比較例6で説明した手順において、原料の全体組成におけるLi及びP量を金属元素量に対して略量論比となるようにした他は、比較例6と同様の手順で比較例7の正極活物質を得た。
<正極活物質の分析>
[元素組成分析]
実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質を所定量秤量し、酸を用いて溶解させた。得られた溶液に含まれる各イオンの量を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(OPTIMA 3300XL;パーキンエルマー社製)を用い定量した。得られた定量値に基づき、各正極活物質の元素組成を決定した。
各正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4量は、以下の手順で定量した。X線回折(XRD)装置(RINT2000;RIGAKU社製)を用い、CuKα線を線源に用いた。定時計数法で、ステップ間隔0.03度、計数時間15 s及び2θ範囲15〜120度の条件で、実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質のXRDスペクトルを測定した。得られた結果を、Rietveld法に基づき解析して、Li3PO4量を決定した。
また、各正極活物質の複合膜に含有される炭素量は、高周波燃焼‐赤外線吸収装置(CSLS600;LECO社製)を用いた。
実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質の元素組成分析結果を表1に示す。表中、「元素組成」は、各元素のモル比を、「Li3PO4量」は、正極活物質の総質量に対するLi3PO4の質量%を、「炭素量」は、正極活物質の総質量に対する炭素の質量%を、それぞれ示す。
Figure 2015002091
[粒子径分析]
実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質を、走査型電子顕微鏡(SEM)(S-4300;日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて外観を測定し、粒子径を観察した。全ての正極活物質で、平均粒子径が50〜200 nmの範囲であることを確認した。
[表面構造分析]
X線回折(XRD)装置(RINT2000;RIGAKU社製)を用い、前記と同様の条件で、実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質のXRDスペクトルを測定した。X線光電子分光分析(XPS)装置(PHI 5000 VersaProbe II; ULVAC社製)を用い、実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質のXPSスペクトルを測定した。実施例1及び比較例1の正極活物質のXRDスペクトルを図2及び図3に、それぞれ示す。また、実施例1及び比較例1の正極活物質のXPSスペクトル基づき決定された、SiO2基板上の該正極活物質の表面からの深さとその深さ位置における各元素の存在比との関係を図4に示す。
図2に示すように、実施例1の正極活物質のXRDスペクトルには、20〜21、22〜23及び23.5〜24°付近のオリビン構造に特徴的なピークに加えて、Li3PO4に帰属されるピークが観測された。これに対し、図3に示すように、比較例1の正極活物質のXRDスペクトルには、オリビン構造に特徴的なピークのみが観測された。
図4に示すように、実施例1の正極活物質では、表面付近にLiリッチな領域が存在することが確認された。これに対し、比較例1の正極活物質では、該正極活物質の深さ方向に亘ってLi含有率は略一定だった。実施例1の正極活物質の核材はLiを含有するが、核材のLi含有率と比較して、複合膜のLi3PO4に含まれるLi含有率の方が高い。それ故、図4の結果から、実施例1の正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4は、該正極活物質の表面に被覆されていることが示唆される。
Li3PO4の平均粒子径は、図3のLi3PO4ピークを下記シェラーの式:
D=Kλ/βcosθ (D:粒子径、λ:X線波長、β:半値幅、θ:ピーク位置)
を用いて概算すると、60 nm程度となった。また、SEM観察から得られた活物質粒子径は、200 nm以下であり、球状近似で概算すると、比表面積は、25 m2/g以上となった。仮に、Li3PO4が活物質表面に均一に被覆されているとすると、厚さは0.6 nm程度となり、XRDの実測値と大きく異なる。すなわち、Li3PO4は、活物質表面に均一に被覆されているのではなく、島状に点在していることが示唆される。
また、実施例1及び比較例1の正極活物質のいずれも、該正極活物質の最表面では炭素の含有率が高かった。それ故、図4の結果から、実施例1及び比較例1の正極活物質のいずれも、該正極活物質の最表面は炭素で被覆されていることが示唆される。以上の分析結果から、表面の被覆は、島状に点在しているLi3PO4を炭素が覆っている複合膜であると確認された。なお、実施例1及び比較例1の正極活物質の最表面において、Mnの含有率は約5モル%であった。また、Liの含有率は約25モル%であった。
<製造例2:正極の製造>
実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質、導電助材、バインダ及び溶媒を乳鉢上で混錬して、正極合剤スラリーを調製した。導電助材としては、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック(登録商標))を、バインダとしては、変性ポリアクリロニトリルを、溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、それぞれ用いた。なお、バインダは、NMPに溶解させた溶液の形態で用いた。前記電極材料は、正極活物質、導電助材及びバインダが82.5:10:7.5の質量比となるように加えた。
得られた正極合剤スラリーを、ドクターブレード法を用いて、厚さ20μmの正極集電体(アルミニウム箔)の片面に、塗工量が5〜6 mg/cm2になるように塗布した。前記正極集電体を80℃で1時間乾燥して、該正極集電体の表面に正極合剤層(厚さ38〜42μm)を形成させた。次に、前記正極合剤層を、打ち抜き金具を用いて直径15 mmの円盤状に打ち抜いた。打ち抜かれた正極合剤層を、ハンドプレスを用いて圧縮成形して、リチウムイオン二次電池用正極を得た。実施例1〜8及び比較例1〜7の正極活物質を用いて作製された正極を、実施例1〜8及び比較例1〜7の正極と記載する。
実施例1〜8及び比較例1〜7の正極は、いずれも前記の塗工量及び厚さの範囲内となるよう作製することで、各試料の電極構造を一定に保った。得られた電極を、120℃で乾燥した。なお、水分の影響を排除するため、前記の工程は全てドライルーム内で実施した。
<製造例3:リチウムイオン二次電池の製造>
実施例1〜8及び比較例1〜7の正極を用いて、リチウムイオン二次電池を簡易的に再現した三極式モデルセルを作製した。前記の手順で作製した実施例1〜8及び比較例1〜7の正極(直径15 mm)、アルミニウム集電体、対極用金属リチウム及び参照極用金属リチウムを、電解液を含侵させたセパレータを介して積層させた。前記積層体を、2枚のSUS製端板を用いて挟み込み、ボルトで締め付けた。エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:2の容量比となるように混合して、混合溶媒を調製した。前記混合溶媒に、LiPF6を溶解させて1 Mの溶液とした。得られた溶液に、ビニレンカーボネート(VC)を総質量に対して0.8質量%となるように添加して、電解液を調製した。これをガラスセル中に入れ、三極式モデルセルを作製した。実施例1〜8及び比較例1〜7の正極を用いて作製されたリチウムイオン二次電池を、実施例1〜8及び比較例1〜7のリチウムイオン二次電池又は三極式モデルセルと記載する。
<リチウムイオン二次電池の性能評価>
[(a)充放電試験(エネルギー密度試験)]
実施例1〜8及び比較例1〜7の三極式モデルセルを用いて、以下の手順で充放電試験を実施して、各モデルセルの初期容量を評価した。本試験は、Ar雰囲気下のグローブボックス内において、室温(25℃)で行った。電流値を0.1 mAとして、4.5 Vまで定電流充電を行い、4.5 Vに達した後は、電流値が0.03 mAに減衰するまで定電圧充電を行った。その後、2 Vまで0.1 mAの定電流で放電した。このときの放電エネルギー密度を、試験対象のモデルセルのエネルギー密度とした。
[(b)レート特性の評価試験]
実施例1〜8及び比較例1〜7の三極式モデルセルを用いて、(a)の充放電試験を3サイクル繰り返した。その後、各モデルセルのレート特性を評価した。前記の手順で定電流充電と定電圧充電とを行ったモデルセルを、5 mAの電流値で定電流放電した。このときのエネルギー密度を、(a)で測定したエネルギー密度の値で除算した。得られた比を、試験対象のモデルセルのレート特性とした。
[(c)高温保存試験]
実施例1〜8及び比較例1〜7の三極式モデルセルを用いて、(a)の充放電試験を3サイクル繰り返した。その後、再び電流値を0.1 mAとして、4.5 Vまで定電流充電を行い、4.5 Vに達した後は、電流値が0.03 mAに減衰するまで定電圧充電を行った。この状態の正極をモデルセルから取り出した。取り出された正極を、大気と触れないようPFA容器中に電解液と共に密封した。前記正極を、80℃で2週間保持した。その後、正極を取り出し、前記と同様の手順でモデルセルを組み立てた。得られたモデルセルを用いて、(b)と同様の手順でレート特性評価を行った。保存前後のエネルギー密度の比を、試験対象のモデルセルの高温保存特性とした。
実施例1〜8及び比較例1〜7のリチウムイオン二次電池の性能評価結果を表2に示す。
Figure 2015002091
表2に示すように、実施例1〜8及び比較例1〜7のリチウムイオン二次電池のレート特性及び高温保存特性は、それぞれの正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4量(表1)との間に一定の正の相関関係を有することが明らかとなった。例えば、正極活物質の核材の金属元素組成がMn:Fe=8:2で同一であり、炭素量も3.3〜3.4質量%の範囲で略等しい実施例1、2及び3のリチウムイオン二次電池と比較例1のリチウムイオン二次電池とを比較すると、正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4量が多いほど、レート特性及び高温保存特性が高かった。しかしながら、比較例2のように、正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4量が大過剰の場合、該正極活物質を用いて作製したリチウムイオン二次電池は、高温保存特性は良いものの、レート特性は低かった。この理由は、比較例2の正極活物質は、絶縁物であるLi3PO4が該正極活物質の複合膜に大過剰に含有されるため、電気抵抗が上昇したためと推測される。
また、実施例1〜8及び比較例1〜7のリチウムイオン二次電池のエネルギー密度は、正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4量(表1)との間に緩やかな負の相関関係を有することが明らかとなった。この理由は、正極活物質の複合膜に含有されるLi3PO4が充放電に寄与しないためと推測される。
正極活物質の核材の金属元素組成がMn:Fe=8:2で同一であり、Li3PO4量も略等しい実施例1及び5のリチウムイオン二次電池と比較例3及び4のリチウムイオン二次電池とを比較すると、正極活物質の複合膜に含有される炭素量が0.5〜5質量%の範囲内である実施例1及び5のリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度及びレート特性のいずれも良好だった。これに対し、正極活物質の複合膜に含有される炭素量が0.5質量%以下である比較例3のリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度及びレート特性のいずれも実施例1及び5のリチウムイオン二次電池と比較して低かった。この理由は、比較例3の正極活物質は複合膜に含有される炭素量が少ないため、該正極活物質を用いて作製された正極は電気抵抗が高くなり、周辺と電気的に孤立してしまうためと推測される。また、正極活物質の複合膜に含有される炭素量が5質量%以上である比較例4のリチウムイオン二次電池は、比較例3のリチウムイオン二次電池より良好だったものの、エネルギー密度及びレート特性のいずれも実施例1のリチウムイオン二次電池と比較して低かった。この理由は、比較例4の正極活物質は複合膜に含有される炭素量が多いため、電子伝導性は向上するものの、複合膜の膜厚が大きいため、Liイオン伝導性が低下することに起因すると推測される。
次に、実施例1及び5のリチウムイオン二次電池と比較例1及び5〜7のリチウムイオン二次電池とを比較する。前記のように、複合膜にLi3PO4が存在しない比較例1の正極活物質を用いて作製した比較例1のリチウムイオン二次電池は、実施例1のリチウムイオン二次電池と比較してレート特性及び高温保存特性のいずれも低かった。前記の傾向は、Mn:Fe=5:5である実施例5のリチウムイオン二次電池と比較例5のリチウムイオン二次電池との間でも同様に確認された。しかしながら、金属元素がFeのみからなる比較例6及び7の正極活物質を用いて作製されたリチウムイオン二次電池は、実施例1及び5のリチウムイオン二次電池と比較してレート特性は僅かに向上したものの、高温保存特性に差は認められなかった。正極活物質の複合膜におけるLi3PO4の有無と、該正極活物質を用いて作製されたリチウムイオン二次電池の高温保存特性との正の相関関係は、正極活物質の核材のMn組成比が高くなるほど顕著に観察され、Mnを含有しない正極活物質(比較例6及び7)では観察されなかった。
また、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度は、該リチウムイオン二次電池に使用される正極活物質のMn組成比が高くなるほど大きくなった(実施例1及び5)。この理由は、正極活物質の核材の金属元素としてMnを含有すると、該正極活物質を用いて作製されたリチウムイオン二次電池の平均電圧が向上することに起因すると推測される。
実施例6及び7の正極活物質は、正極活物質の核材の中心金属として、Mn及びFe以外の他の金属元素を含有する。表2に示すように、いずれの正極活物質を用いて作製されたリチウムイオン二次電池も、良好な電池性能を発揮した。
実施例8の正極活物質は、Li3PO4の原料を仮焼成工程前に添加せず、仮焼成工程後且つ本焼成工程前に添加して調製された。このような工程で調製された正極活物質を用いて作製されたリチウムイオン二次電池は、実施例1のリチウムイオン二次電池と略同等の電池性能を発揮した。それ故、実施例8の正極活物質も、その表面にLi3PO4及び炭素を含有する複合膜を有すると考えられる。
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除及び/又は置換をすることが可能である。
1…本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質
11…オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子
12…複合膜に含有されるリン酸リチウム
13…複合膜に含有される炭素
2…本発明の他のリチウムイオン二次電池用正極活物質
21…オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子
22…複合膜に含有されるリン酸リチウム
23…複合膜に含有される炭素
100…リチウムイオン二次電池
101…電池蓋
102…ガスケット
103…正極集電タブ
104…絶縁板
105…電池容器
106…負極
107…セパレータ
108…絶縁板
109…負極集電タブ
110…正極
201…モジュール
202…リチウムイオン二次電池
203…リチウムイオン二次電池の正極外部端子
204…端子
205…リチウムイオン二次電池の負極外部端子
206…モジュール容器
207…モジュールの正極外部端子
208…モジュールの負極外部端子
209…演算制御部
210…充電回路
211…給電負荷電源
212…電力線
213…信号線
214…外部電力ケーブル

Claims (7)

  1. 組成式LixMnyM1-y(PO4)z(式中、Mは、Fe、Co、Ni、Mg、Ti、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であり、xは、1.0<x<1.3の範囲から選択され、yは、0.5≦y<1の範囲から選択され、zは、1.0<z<1.1の範囲から選択される。)で表される、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の粒子と、該粒子の表面に配置され、正極活物質の総質量に対して0.5〜8質量%の範囲のリン酸リチウム及び0.5〜5質量%の範囲の炭素を含有する複合膜とを有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記複合膜において、リン酸リチウムが前記リチウム複合リン酸化物の粒子の表面の一部を被覆するように配置されており、且つ前記正極活物質は、表面の一部又は全部に炭素が被覆するように配置されている、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 集電体と、該集電体の表面に配置された、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極合剤層とを有する、リチウムイオン二次電池用正極。
  4. 請求項3に記載の正極と、負極と、電解質とを備えるリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池を複数備えるリチウムイオン二次電池モジュール。
  6. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    Li、Mn、M及びPO4の原料を、MnとMとの和に対するLi及びPO4のモル比がそれぞれ1以上となるように混合する原料混合工程;
    原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成して、正極活物質の前駆体粒子を形成させる仮焼成工程;
    前記正極活物質の前駆体粒子と炭素原料とを混合し混合物を得る、炭素源混合工程;
    前記炭素源混合工程で得られた混合物を本焼成して、正極活物質を形成させる本焼成工程;
    を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    Li、Mn、M及びPO4の原料を、MnとMとの和に対するLi及びPO4のモル比がそれぞれ1以上となるように混合する原料混合工程;
    原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成して、正極活物質の前駆体粒子を形成させる仮焼成工程;
    正極活物質の前駆体粒子と炭素原料と追加のLi及びPO4の原料とを混合し混合物を得る、炭素源混合工程;
    前記炭素源混合工程で得られた混合物を本焼成して、正極活物質を形成させる本焼成工程;
    を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
JP2013126282A 2013-06-17 2013-06-17 リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 Pending JP2015002091A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013126282A JP2015002091A (ja) 2013-06-17 2013-06-17 リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013126282A JP2015002091A (ja) 2013-06-17 2013-06-17 リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015002091A true JP2015002091A (ja) 2015-01-05

Family

ID=52296499

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013126282A Pending JP2015002091A (ja) 2013-06-17 2013-06-17 リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015002091A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6090497B1 (ja) * 2016-03-30 2017-03-08 住友大阪セメント株式会社 リチウムイオン二次電池用正極材料
US20170288226A1 (en) * 2016-03-30 2017-10-05 Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd. Lithium-ion secondary battery
JP2017199643A (ja) * 2016-03-30 2017-11-02 住友大阪セメント株式会社 リチウムイオン二次電池
CN113646391A (zh) * 2019-04-08 2021-11-12 魁北克电力公司 用于锂金属阳极的保护材料、其制备方法及其用途

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6090497B1 (ja) * 2016-03-30 2017-03-08 住友大阪セメント株式会社 リチウムイオン二次電池用正極材料
US20170288226A1 (en) * 2016-03-30 2017-10-05 Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd. Lithium-ion secondary battery
JP2017199643A (ja) * 2016-03-30 2017-11-02 住友大阪セメント株式会社 リチウムイオン二次電池
US10014522B2 (en) 2016-03-30 2018-07-03 Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd. Cathode material for lithium-ion secondary battery
US10566621B2 (en) 2016-03-30 2020-02-18 Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd Lithium-ion secondary battery
US11374221B2 (en) 2016-03-30 2022-06-28 Sumitomo Metal Mining Co., Ltd. Lithium-ion secondary battery
CN113646391A (zh) * 2019-04-08 2021-11-12 魁北克电力公司 用于锂金属阳极的保护材料、其制备方法及其用途
CN113646391B (zh) * 2019-04-08 2024-03-05 魁北克电力公司 用于锂金属阳极的保护材料、其制备方法及其用途

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5255143B2 (ja) 正極材料、これを用いたリチウムイオン二次電池、及び正極材料の製造方法
JP5255138B2 (ja) 蓄電デバイス及び蓄電デバイス用正極
KR101514586B1 (ko) 리튬 이온 2차 전지용 부극 활물질
KR101478873B1 (ko) 양극 활물질, 이의 제조방법 및 이를 이용한 이차전지
WO2013176067A1 (ja) 非水系二次電池用正極活物質
CN105280880B (zh) 非水电解质二次电池用正极、非水电解质二次电池以及其系统
WO2017150020A1 (ja) 非水電解質二次電池
JP2007035358A (ja) 正極活物質及びその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池
JP5928302B2 (ja) リチウム二次電池用正極活物質の製造方法
JP5505479B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極及びその負極を用いたリチウムイオン二次電池
JP5505480B2 (ja) リチウムイオン二次電池用負極及びその負極を用いたリチウムイオン二次電池
JP2015082476A (ja) リチウムイオン二次電池用正極活物質、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池およびリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
JP5915732B2 (ja) 非水二次電池用正極活物質の製造方法、非水二次電池用正極の製造方法及び非水二次電池の製造方法
JPWO2014002584A1 (ja) リチウムイオン二次電池
JP6070222B2 (ja) 非水系二次電池用正極活物質及びその製造方法、並びにその正極活物質を用いた非水系二次電池用正極を有する非水系二次電池
JP5855897B2 (ja) リチウムイオン二次電池
KR101093242B1 (ko) 리튬 이차전지용 혼합 음극재 및 이를 포함하는 고출력리튬 이차전지
KR102227102B1 (ko) 리튬이차전지 전극 코팅 방법, 및 이에 따라 제조한 전극을 포함하는 리튬이차전지
JP2015002091A (ja) リチウムイオン二次電池用正極活物質、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
KR20180083432A (ko) Li 이온 2차 전지용 부극 재료 및 그의 제조 방법, Li 이온 2차 전지용 부극 그리고 Li 이온 2차 전지
KR101578974B1 (ko) 비수 전해질 이차전지용 정극 활물질, 그 제조 방법 및 비수 전해질 이차전지
JP2015002092A (ja) リチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
KR101115390B1 (ko) 리튬 이차전지용 혼합 음극재 및 이를 포함하는 고출력 리튬 이차전지
JP6366908B2 (ja) リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
JP2021157936A (ja) 負極活物質、負極及び二次電池