JP2015002092A - リチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放電容量の低下を抑制し、且つ放電レート特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】本発明は、LixMnyFe1-y-zMz(PO4)p(式中、Mは、Ti、Mg、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であり、xは、0.8≦x≦1.1の範囲から選択され、yは、0.7≦y≦0.9の範囲から選択され、zは、0.01≦z≦0.05の範囲から選択され、pは、0.8≦p≦1.1の範囲から選択される。)で表される、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を含み、一次粒子から造粒された二次粒子の形態を有し、該二次粒子の表面から二次粒子の平均粒子径の1/10の深さまでの領域における式中のzの値は、該二次粒子全体におけるzの値の1.1以上となるように前記置換金属元素を含有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、コバルト酸リチウムが主流である。現在のところ、コバルト酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池が広く用いられている。しかしながら、コバルト酸リチウムの原料であるコバルトは、産出量が少なく且つ高価である。このため、コバルト酸リチウムの代替材料の開発が求められている。コバルト酸リチウムの代替材料として、スピネル構造を有するマンガン酸リチウム及びニッケル酸リチウムが提案されている。しかしながら、マンガン酸リチウムは、放電容量が十分でないという問題が存在した。また、ニッケル酸リチウムは、高容量が期待できるものの、高温時の熱安定性が十分ではないという問題が存在した。
近年では、車載用及び産業用の用途にも使用し得る、大型のリチウムイオン二次電池の開発が進められている。このような用途の場合、電池の安全性向上はより重要となる。
このため、熱安定性が高く、且つ安全性に優れるオリビン構造を有する化合物(以下、「オリビン型化合物」とも記載する)が、リチウムイオン二次電池用の正極活物質の材料として期待されている。オリビン型化合物は、化学式LiM’PO4(式中、M’は遷移金属元素である)で表される化合物である。オリビン型化合物は、結晶構造中の酸素原子とリン原子との結合が強い。このため、過充電時に結晶構造から酸素原子が放出されにくく、安全性が高い。しかしながら、オリビン型化合物は、電子伝導性が低いという問題が存在した。また、オリビン型化合物を正極活物質に用いた場合、該正極活物質中へのリチウムイオン拡散係数が低いことが報告されている。
オリビン型化合物における前記問題に対し、例えば、特許文献1は、リチウム鉄リン酸化合物からなる粒子の表面にリチウム化合物が添着されてなる、非水電解質リチウムイオン二次電池用正極材料を記載する。当該文献は、電子伝導性を向上させるために、前記粒子の表面に、炭素のような導電性材料がさらに添着され得ることを記載する。
特許文献2は、一般式LipMnqMrPO4(式中、0≦p≦2、0<q≦1、0≦r<1であり、Mは置換金属である)で表されるオリビン構造を有する化合物の製造方法を記載する。当該文献は、前記置換金属として、Co、Ni、Fe、Zn、Cu、Mg、Ti、Sn、Zr、V及びAlを記載する。当該文献は、前記のような置換金属でMnを置換することにより、充放電特性、充放電サイクル特性の優れた電池を与える正極活物質を得ることができると記載する。
非特許文献1は、オリビン型化合物の粒子径を小粒径化して反応面積を増加させ、且つ拡散距離を短縮して、電子伝導性及びイオン伝導性を向上させる技術を記載する。
特開2006-66081号公報 国際公開第2008/018633号
A. Yamada, S. C. Chung, 及びK. Hinokuma, "Optimized LiFePO4 for Lithium Battery Cathodes", Journal of the Electrochemical Society, 第148巻, 2001年, pp. A224-A229.
前記のように、オリビン型化合物は、高い安全性を有する。また、オリビン型化合物は、種々の改良を施すことによって、良好な充放電特性を発現させることができる。前記改良手段としては、例えば、電子伝導性の改善を目的とした炭素被覆、及び反応面積の向上を目的とした小粒径化を挙げることができる。
オリビン型化合物を炭素被覆する手段としては、例えば、オリビン型化合物をアセチレンブラック又は黒鉛と混合し、ボールミル等を用いて両者を密着させる方法、或いは、オリビン型化合物を糖、有機酸又はピッチ等の有機物と混合し、該混合物を焼成して有機物を炭化させる方法が知られている。
オリビン型化合物を小粒径化する手段としては、焼成温度の低減、或いは、オリビン型化合物と炭素源との混合による粒子成長の抑制が知られている。
しかしながら、小粒径化されたオリビン型化合物の粒子は、該粒子を電極化する際に充填密度を向上させることが困難である。このため、オリビン型化合物の過度の小粒径化は、実用上の体積エネルギー密度を低下させる可能性がある。また、過度に小粒径化されたオリビン型化合物の粒子は、電極製造の工程において該粒子のスラリーを調製した際、微小粒子が凝集しやすい。このような凝集物を電極に用いると、電極の平滑性及び/又は均一性が低下する可能性がある。また、電極製造の工程において、電極の塗工性を損なう可能性がある。
また、オリビン構造を有する化合物のうち、Mnを主たる遷移金属として有するオリビン型化合物の場合、平均電位が上昇するため、該オリビン型化合物を正極活物質に用いるリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度となると考えられる。
しかしながら、Mnを主たる遷移金属として有するオリビン型化合物、特に一般式LixMnyFe1-y-zMz(PO4)pで表わされるオリビン型化合物であって、金属元素Mn、Fe(以下これらを中心金属元素とする)、及びMのうちMnを原子比で50%以上含む化合物(以下、「オリビンMn正極活物質」とも記載する)は、LiFePO4のような他のオリビン型化合物と比較してレート特性が良好ではないという問題が存在した。
オリビン型化合物の充放電特性、例えば放電レート特性を向上させる手段としては、オリビン型化合物に含有される中心金属元素を他の金属元素で置換する金属元素置換が知られている。しかしながら、金属元素置換された従来のオリビン型化合物の場合、放電容量の低下抑制と放電レート特性向上との両立が困難という問題が存在した。
それ故、本発明は、放電容量の低下を抑制し、且つ放電レート特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池用正極活物質及びそれを用いた正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池モジュール、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、LixMnyFe1-y-zMz(PO4)p(式中、Mは、Ti、Mg、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の置換金属元素であり、xは、0.8≦x≦1.1の範囲から選択され、yは、0.7≦y≦0.9の範囲から選択され、zは、0.01≦z≦0.05の範囲から選択され、pは、0.8≦p≦1.1の範囲から選択される。)で表される、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を含み、一次粒子から造粒された二次粒子の形態を有し、該二次粒子の表面から二次粒子の粒子径の1/10の深さまでの領域における式中のzの値は、該二次粒子全体におけるzの値の1.1倍以上となるように前記置換金属元素Mを含有する。また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明の正極活物質を含む正極合剤層が集電体の表面に配置されたものである。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、該正極と負極と電解液とを備え、本発明のリチウムイオン二次電池モジュールは、該リチウムイオン二次電池を複数備えるものである。
前記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を混合する原料混合工程;原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成して、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子を形成させる仮焼成工程;リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子と追加のMの原料とを混合する、追加の置換金属元素混合工程;追加の置換金属元素混合工程で得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料を含む混合物を造粒して、リチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を形成させる、二次粒子形成工程;二次粒子形成工程で得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を本焼成して、正極活物質を形成させる本焼成工程;を含み、前記原料混合工程で加えられるM元素量と、前記追加の置換金属元素混合工程で加えられるM元素量との合計量に対する追加のM元素量の比が1/5〜1/2の範囲であることを特徴とする、前記方法である。
本発明により、放電容量の低下を抑制し、且つ放電レート特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池用正極活物質及びリチウムイオン二次電池を提供することが可能となる。
前記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
図1は、本発明の正極活物質の形態を示す模式図である。 図2は、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態を示す模式図である。 図3は、本発明のリチウムイオン二次電池モジュールの一実施形態を示す模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。
<1. リチウムイオン二次電池用正極活物質>
本発明は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を含み、一次粒子から造粒された二次粒子の形態を有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。本発明において、「オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物」は、酸素原子が六方最密充填構造に、リチウム原子及びリチウムと複合リン酸化物を形成する他の金属元素の原子が六配位八面体構造に、リン原子が四配位四面体構造に、それぞれ配置された結晶構造を有する化合物を意味する。オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物は、リチウムを挿入及び脱離することにより、リチウムイオン二次電池の充放電反応の主体となる材料である。
なお、リチウム複合リン酸化物がオリビン構造を有することは、例えば、該化合物のX線回折(XRD)スペクトルを測定して、オリビン構造に特徴的なピーク(例えば、回折角(2θ)=19〜21°、及び34〜36°)を観測することにより、確認することができる。もちろん、前記化合物の結晶中の原子配置を同定し得る手段であれば、他の測定手段を用いてもよい。これは、他の物性値の測定手段についても同様である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質において、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物は、LixMnyFe1-y-zMz(PO4)pで表される化合物であることが必要である。Mn及びFeを主たる遷移金属として有するオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物は、平均電位が上昇する。それ故、前記化合物を正極活物質に用いることにより、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を製造することができる。
前記式において、Mは、Mn及びFeからなる金属元素に対する置換金属元素である。Mは、Ti、Mg、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の金属元素であることが必要である。Mは、Ti、Mg及びVからなる群より選択される1種類以上の置換金属元素であることが好ましく、Ti及びV又はMg及びVのいずれかであることがより好ましい。本発明において、「置換金属元素」は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の結晶構造において、中心金属元素の少なくとも一部に置き換えられて該結晶構造中に配位される、中心金属元素以外の他の金属元素を意味する。Mが前記の金属元素である場合、高放電レート特性のリチウムイオン二次電池を製造することができる。
前記式において、xは、0.8≦x≦1.1の範囲から選択されることが必要である。yは、0.7≦y≦0.9の範囲から選択されることが必要である。zは、0.01≦z≦0.05の範囲から選択されることが必要である。pは、0.8≦p≦1.1の範囲から選択されることが必要である。zが0.05以下の場合、酸化還元反応によって充放電に寄与する中心金属の割合が高くなる。これにより、結果として得られるリチウム二次電池の容量を向上させることができる。x、y、z及びpが前記範囲である場合、前記式で表される化合物はオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物となる。
なお、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物が前記式で表される元素組成であることは、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、原子吸光光度法又は蛍光X線法により、確認することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を含み、粉体の一次粒子から造粒された粒状体(二次粒子)の形態を有することが必要である。本発明において、「一次粒子」は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を含む(好ましくは該化合物からなる)粒子を意味し、「二次粒子」は、前記一次粒子を造粒することによって形成される、より大きい粒子を意味する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質において、一次粒子の平均粒子径は、10〜500 nmの範囲であることが好ましく、20〜100 nmの範囲であることがより好ましい。また、二次粒子の平均粒子径は、5〜20μmの範囲であることが好ましく、5〜12μmの範囲であることがより好ましい。過度の小粒径化は、体積エネルギー密度を低下させる可能性がある。このため、造粒による二次粒子化が好ましい。二次粒子の平均粒子径が5μm以上の場合、前記正極活物質を用いて形成される正極の充填密度を高くすることができる。二次粒子の平均粒子径が20μm以下の場合、前記正極活物質を用いて正極を形成する際、所定の電極厚さの範囲内に塗布し得る正極活物質の量(二次粒子の数)が増大する。これにより、電極密度を向上させることができる。また、一次粒子の平均粒子径が前記範囲である場合、前記範囲の平均粒子径を有する二次粒子を形成させることができる。本発明は、造粒した二次粒子に置換金属元素を局在化させている。
なお、一次粒子の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によって該粒子を観察することにより、測定することができる。二次粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定することができる。
本発明者らは、Mnを50%以上含むオリビン型化合物(オリビンMn正極活物質)において、中心金属元素であるMnの一部を他の金属元素で置換することにより、放電レート特性向上を試みた。本発明者らは、オリビンMn正極活物質の置換金属元素としてTi、Mg、Mo及び/又はVを用いた。そして、前記の置換金属元素でMnを置換したオリビン型化合物の一次粒子を造粒して二次粒子を形成するときに、置換金属元素の原料を添加して、二次粒子の外周領域における置換金属元素の含有率を高めた。その結果、得られたオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の二次粒子は、放電レート特性が向上し得ることを見出した。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質が前記のような特性を有する理由は、以下のように説明することができる。なお、本発明は、以下の作用・原理に限定されるものではない。
本発明の正極活物質の形態を示す模式図を図1に示す。図1に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質1は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の一次粒子によって形成される二次粒子を含む。二次粒子は、置換金属元素の置換量の少ない複数の一次粒子11によって形成される粒子(以下、「内核粒子」とも記載する)と、内核粒子の表面に配置された、置換金属元素の置換量の多い複数の一次粒子12によって形成される外周領域とを有する。
前記のように、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の一次粒子を造粒して二次粒子を形成させるのは、体積エネルギー密度を向上させるためである。このとき、電解質との反応面積の大きい二次粒子の外周部に置換金属元素が局在化することにより、該二次粒子を含む正極活物質の抵抗は低下する。これにより、本発明の正極活物質を用いるリチウムイオン二次電池の放電レート特性を向上させることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、二次粒子の表面から二次粒子の平均粒子径の1/10の深さまでの領域における前記式中のzの値(置換金属元素の置換量)が、該二次粒子全体におけるzの値の1.1以上となるように前記置換金属元素を含有することが必要である。前記比は、1.4〜1.7であることが好ましい。「二次粒子の平均粒子径の1/10の深さ」は、前記で説明した二次粒子の平均粒子径に基づき変動し得るが、0.5〜2μmの範囲であることが好ましく、0.5〜1μmの範囲であることがより好ましい。本明細書において、「二次粒子全体における置換金属元素の置換量」は、二次粒子全体に含有される金属元素(Mn、Fe及びM)の総量に対する置換金属元素(M)の量の原子百分率(原子%)を意味する。また、「二次粒子の表面から二次粒子の平均粒子径の1/10の深さまでの領域における置換金属元素の置換量」は、二次粒子の表面から二次粒子の平均粒子径の1/10の深さまでの領域(以下、「外周領域」とも記載する)に含有される金属元素(Mn、Fe及びM)の総量に対する置換金属元素(M)の量の原子百分率(原子%)を意味する。正極活物質における置換金属元素の置換量を前記範囲にすることにより、本発明の正極活物質を用いるリチウムイオン二次電池の放電レート特性を向上させることができる。
なお、二次粒子全体における置換金属元素の置換量は、例えば、透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光装置(TEM-EDX)により二次粒子の断面全体に亘るリチウム複合リン酸化物の元素組成を分析することによって、決定することができる。また、二次粒子の表面から二次粒子の平均粒子径の1/10の深さまでの領域における置換金属元素の置換量は、TEM-EDXによりランダムに抽出した複数個の二次粒子を観察して、外周領域におけるリチウム複合リン酸化物の元素組成を分析することによって、決定することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の一次粒子の表面に、炭素を含有する膜(以下、「炭素被覆」とも記載する)が配置されていることが好ましい。前記一次粒子の表面が炭素被覆されていることにより、被覆されている炭素が相互に結合することによって、複数の一次粒子が一体化する。これにより、強固な二次粒子を形成することができる。
<2. リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法>
本発明はまた、前記で説明したリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
[2-1. 原料混合工程]
本発明の方法は、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を混合する原料混合工程を含む。本工程は、前記原料を含む原料混合物を得ることを目的とする。
本工程において、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を、Mn、Fe及びMの合計又はPO4に対するLiのモル比、すなわちFe+Mn+Mに対するLiのモル比及びPO4に対するLiのモル比のいずれもが、それぞれ1以上となるように混合することが好ましい。前記のモル比で原料を混合することにより、カチオンミキシングを防ぐとともに、焼成時のLiの揮発を補うことができる。これにより、LixMnyFe1-y-zMz(PO4)pで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を得ることができる。
本工程において、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を、Feに対するMnのモル比(Mn/Fe)が1.5以上となるように混合することが好ましく、1.5〜4.5となるように混合することがより好ましい。前記のモル比で原料を混合することにより、LixMnyFe1-y-zMz(PO4)pで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を得ることができる。
本工程において、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を、金属元素(Mn、Fe及びM)の総量に対するMのモル比(置換金属元素量)が5原子%以下となる総仕込量を算出し、その少なくとも一部の量(以下、「前添加量」とも記載する)を混合することが好ましい。前記置換金属元素量は、金属元素(Mn,FeおよびM)の総量に対するMのモル比が2〜5原子%の範囲であることが好ましい。また、前添加量は、総仕込量に対する比として、1/2〜4/5の範囲であることが好ましい。前記置換金属元素量が5原子%以下の場合、生成物であるリチウム複合リン酸化物において、酸化還元反応によって充放電に寄与する遷移金属の割合が高くなる。これにより、結果として得られるリチウム二次電池の容量を向上させることができる。また、前添加量が前記範囲の場合、以下で説明する追加の置換金属元素混合工程において残りの仕込量を添加することにより、リチウム複合リン酸化物の二次粒子の外周部に置換金属元素を局在化させることができる。
本工程において、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を、実質的に均質な状態となるように混合することが好ましい。前記原料を混合する手段としては、ビーズミルのような粉砕装置を用いて該原料を機械的に粉砕して混合する方法、並びに酸、アルカリ若しくはキレート剤等を用いて該原料を溶解させ、得られる溶液を乾燥させることによって混合する方法を挙げることができる。原料を分子レベルで混合できることから、原料を溶液の形態で混合する方法が好ましい。溶液の形態で混合する場合、該溶液を乾燥させる手段としては、例えば、スプレードライヤー及びスラリードライヤーを挙げることができる。均質な乾燥粉末を簡便に得られることから、スプレードライヤーを用いることが好ましい。前記のように混合することにより、以下の仮焼成工程において正極活物質の一次粒子の結晶が粗大化し、且つ/又はMn若しくはFeの酸化物若しくは異相が形成されることを抑制することができる。
Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料としては、以下の仮焼成工程において残留しないLi、Mn、Fe、M及びPO4の塩が好ましい。例えば、Liの原料は、酢酸リチウム、炭酸リチウム又は水酸化リチウム等が好ましい。Mn、Fe又はMの原料は、Mn、Fe又はMの酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩又は酒石酸塩等が好ましい。PO4の原料は、リン酸又はその塩(アンモニウム塩若しくはリチウム塩等)、例えば、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素アンモニウム又はリン酸水素二アンモニウム等が好ましい。前記の原料は、Li、Mn、Fe、M及びPO4のそれぞれについて1種類の化合物であってもよく、前記の群より選択される複数の化合物の組み合わせであってもよい。
[2-2. 仮焼成工程]
本発明の方法は、原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成する仮焼成工程を含む。本工程は、正極活物質の前駆体粒子を形成させることを目的とする。
本明細書において、「正極活物質の前駆体の一次粒子」は、原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成することによって形成される一次粒子であって、具体的には、LixMnyFe1-y-zMz(PO4)pで表されるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の微結晶を意味する。本工程により、Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を反応させて、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の微結晶を得ることができる。
本工程において、原料混合物を仮焼成する温度は、400〜600℃の範囲であることが好ましく、420〜500℃の範囲であることがより好ましく、440〜500℃の範囲であることが特に好ましい。400℃以上の温度で仮焼成することにより、420℃付近に結晶化温度を有するオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を結晶化させることができる。これにより、未反応の各原料の残留を減少させることができる。また、結果として得られる正極活物質の一次粒子の平均粒子径を好ましい範囲まで大きくすることができる。さらに、原料混合物に含有される有機物及び添加炭素を燃焼させて、反応系から除去することができる。440℃以上の温度で仮焼成することにより、原料混合物中に温度ムラが生じた場合であっても、該原料混合物全体を前記結晶化温度以上とすることができる。600℃以下の温度で仮焼成することにより、結果として得られる正極活物質の一次粒子の粗大化を防止することができる。これにより、正極活物質の比表面積の減少にともなう該正極活物質と電解質との反応面積減少を防止することができる。500℃以下の温度で仮焼成することにより、結果として得られる正極活物質の一次粒子の粗大化を防止して、平均粒子径を好ましい範囲内にすることができる。
本工程において、仮焼成は、酸化雰囲気、不活性雰囲気及び還元雰囲気のいずれの条件で実施してもよい。本工程は、酸化雰囲気で実施することが好ましい。酸化雰囲気で仮焼成することにより、原料混合物に含有される有機物及び添加炭素を燃焼させて、反応系から除去することができる。これにより、結晶内部への炭素の混入を防止することができる。また、結果として生じる空間により、微結晶の成長を抑制することができる。さらに、酸化雰囲気で仮焼成することにより、不活性雰囲気又は還元雰囲気で仮焼成する場合と比較して、結晶性を高めることができる。特に、前記原料混合工程で溶液の形態の原料を混合する場合、原料が均質に混合されている。このため、不活性雰囲気又は還元雰囲気で仮焼成する場合、正極活物質の前駆体の一次粒子に炭素が取り込まれやすい。それ故、溶液の形態の原料を用いる場合、酸化雰囲気で仮焼成することにより、効果的に結晶性を高めることができる。
酸化雰囲気は、酸素を含有するガスを用いて形成させることができる。空気を用いることが好ましい。これにより、コストを抑えることができる。
本工程は、1回のみ実施してもよく、複数回実施してもよい。
[2-3. 追加の置換金属元素混合工程]
本発明の方法は、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子と追加のMの原料とを混合する追加の置換金属元素混合工程を含む。本工程は、前駆体の一次粒子及びMの原料を少なくとも含む混合物を得ることを目的とする。
本工程において、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子と追加のMの原料とを混合する。追加のMの原料の量(以下、「後添加量」とも記載する)は、原料混合工程において算出した総仕込量から前添加量を差し引いた量に相当する。後添加量は、原料混合工程におけるM元素量と追加のM元素量との合計量(総仕込量)に対する追加のM元素量の比として、1/5〜1/2の範囲であることが好ましい。この場合、前添加での量は総仕込み量から後添加量を除いた量、1/2〜4/5となる。
前記後添加量の原料を添加することにより、一次粒子と追加元素とを混合して造粒すると、溶媒蒸発に伴い表面部に追加した置換金属元素が集中し、リチウム複合リン酸化物の一次粒子から造粒された二次粒子の外周部に置換金属元素を局在化させることができる。
本工程において、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料に加えて、所望により炭素原料を混合してもよい。リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料と炭素原料とを混合することにより、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子(微結晶)の周囲に炭素原料が密着する。これにより、微結晶が炭素原料で被覆され、以下で説明する本焼成工程において、結晶の成長を抑制することができる。
炭素原料としては、アセチレンブラック、黒鉛、糖(例えばスクロース)、有機酸又はピッチ等が好ましく、糖、有機酸又はピッチがより好ましい。炭素原料が糖、有機酸又はピッチの場合、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子の表面における炭素原料の密着性を高めることができる。
炭素原料は、微結晶の形態であってもよく、該微結晶同士の一部が結合した網目構造の形態であってもよい。網目構造の形態の場合、500 nm以下の微細な網目構造であることが好ましい。炭素原料の網目構造が前記の範囲の場合、該原料を機械的に粉砕することによって容易に網目構造が破壊される。このため、炭素原料を微細化することができる。
本工程において、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子と追加のMの原料と、場合により炭素原料とを、実質的に均質な状態となるように混合することが好ましい。前記原料を混合する手段としては、該原料を溶媒中で混合して原料スラリーを形成させる湿式混合、並びにボールミル又はビーズミルのような粉砕装置を用いて該原料を機械的に粉砕して混合する乾式混合を挙げることができる。本発明においては、湿式混合で実施することが好ましい。湿式混合の場合、溶媒としては、水を用いることが好ましい。前記のような手段で混合することにより、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料を微細化することができる。
[2-4. 二次粒子形成工程]
本発明の方法は、追加の置換金属元素混合工程で得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料を含む混合物を造粒して、リチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を形成させる二次粒子形成工程を含む。本工程は、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子を凝集させて、リチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を得ることを目的とする。
本工程において、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料を含む混合物を造粒する手段としては、例えば、スプレードライヤー及び流動層造粒装置を挙げることができる。前記造粒手段は、スプレードライヤーが好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、乾燥の過程で、溶媒中の追加のMの原料が、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子が凝集することによって形成される二次粒子の表面方向に移動する。これにより、リチウム複合リン酸化物の二次粒子の外周部に置換金属元素を局在化させることができる。
前記工程のほか、二次粒子の外周部に置換金属元素を局在化させる手段として、以下の手段を用いることもできる。前記の造粒手段と同様の手順で二次粒子の造粒を行う。但し、乾燥過程で溶媒中にMの原料を追加することをせずに造粒を行う。得られた造粒二次粒子に対し、流動層造粒装置(例えば、アグロマスター、ホソカワミクロン製)を用いて追加のMの原料を含む混合物をコーティングする。これにより、二次粒子の表面部の追加のM元素濃度を高め、リチウム複合リン酸化物の二次粒子の外周部に置換金属元素を局在化させることができる。
[2-5. 本焼成工程]
本発明の方法は、二次粒子形成工程で得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を本焼成する本焼成工程を含む。本工程は、前駆体の二次粒子に含まれるオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の結晶性を向上させることを目的とする。また、追加の置換金属元素混合工程において炭素原料を添加する実施形態の場合、前駆体の一次粒子の表面に付着した炭素原料を炭化させて、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物の一次粒子の表面が炭素によって被覆された正極活物質を形成させることを目的とする。
本工程において、本焼成する温度は、600〜850℃の範囲であることが好ましく、700〜750℃の範囲であることがより好ましい。600℃以上の温度で本焼成することにより、炭素原料を炭化させて、導電性を付与することができる。850℃以下の温度で本焼成することにより、結果として得られる正極活物質のオリビン構造の分解を防止することができる。また、700〜750℃の範囲で本焼成することにより、結果として得られる正極活物質の導電性を向上させ、且つオリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物及び炭素の反応による不純物の生成を抑制することができる。
本工程において、本焼成は不活性雰囲気又は還元雰囲気で実施することが好ましい。前記条件で本工程を実施することにより、炭素原料を炭化させ、且つ金属元素の酸化を防止することができる。
<3. リチウムイオン二次電池用正極>
本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極材として好適に使用し得る。それ故、本発明はまた、集電体と、本発明の正極活物質を含む正極合剤層とを有する正極に関する。
本発明の正極に使用される集電体は、当該技術分野で通常使用される任意の集電体であればよい。前記集電体の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、チタン及びニッケル等を挙げることができる。例えば、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μmで且つ孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル又は発泡金属板等が好ましい。
本発明の正極に含まれる正極合剤層は、通常、本発明の正極活物質に加えて、結着剤(バインダ)を含む。前記バインダは、当該技術分野で慣用される任意のバインダであればよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース、並びにこれらの混合物を挙げることができる。前記のようなバインダを用いることにより、正極合剤の密着性を向上させることができる。これにより、正極の導電性を向上させることができる。
本発明の正極に含まれる正極合剤層は、所望により導電助材を含んでもよい。前記導電助材としては、例えば、アセチレンブラック及び黒鉛粉末のような炭素系導電助材を挙げることができる。本発明の正極活物質は高比表面積である。それ故、正極全体に亘って導電ネットワークを形成するために、導電助材は比表面積が大きい材料が好ましい。例えば、前記導電助材は、アセチレンブラックが好ましい。導電助材としてアセチレンブラックを用いることにより、正極全体に亘って強固な導電ネットワークを形成することができる。これにより、正極の導電性を向上させて、結果として得られるリチウムイオン二次電池の放電容量及びレート特性を向上させることができる。
本発明の正極において、前記正極合剤層は、前記集電体の表面に配置される。例えば、前記正極合剤層が、前記集電体の表面に接着されていることが好ましい。
本発明の正極は、当該技術分野で公知の方法によって作製することができる。前記のように、本発明の正極活物質は、リチウム複合リン酸化物の二次粒子を含む。このため、前記で説明した正極活物質とバインダと所望により導電助材とを混合して正極合剤を調製し、正極合剤中で正極活物質及びバインダの粉末同士を結合させる。この際、所望により、正極合剤に増粘剤を加えてもよい。次いで、前記正極合剤を集電体へ付着させて、集電体の表面に正極合剤層を接着させればよい。例えば、前記正極活物質とバインダと所望により導電助材とを溶媒中で混合して、正極合剤の分散液又はスラリーを調製する。前記混合及び分散処理は、当該技術分野で公知の混練機又は分散機を用いて実施することができる。正極合剤の分散液又はスラリーを調製するための溶媒は、使用されるバインダに基づき適宜選択すればよい。例えば、バインダがPVDFの場合、溶媒として1-メチル-2-ピロリドンを用いることが好ましく、バインダがスチレン-ブタジエンゴムの場合、溶媒として水を、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを用いることが好ましい。前記正極合剤の分散液又はスラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法又はスプレー法等によって集電体へ付着させる(付着工程)。その後、正極合剤の分散液又はスラリーを付着させた集電体を乾燥させることによって、溶媒を蒸発除去させる(乾燥工程)。次いで、ロールプレス等によって集電体及び正極合剤層を加圧成形することにより、正極を作製することができる(成形工程)。前記の方法において、付着工程から乾燥工程までを複数回繰り返すことにより、多層形態の正極合剤層を集電体の表面に配置することもできる。
<4. リチウムイオン二次電池>
本発明の正極は、リチウムイオン二次電池の正極として好適に使用し得る。それ故、本発明はまた、前記の正極と、負極と、電解質とを備えるリチウムイオン二次電池に関する。
本発明の正極を用いて作製したリチウムイオン二次電池の一実施形態を図2に示す。
図2に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池100は、正極110と、負極106と、電解質とを備える。正極110は、前記で説明した本発明のリチウムイオン二次電池用正極である。また、前記リチウムイオン二次電池100は、以下で説明するように、セパレータ107、電池容器105、正極集電タブ103、負極集電タブ109、絶縁板104及び108、ガスケット102、密閉蓋部111、正極外部端子を兼ねる電池蓋101を備えることもできる。
負極106は、集電体と、該集電体の表面に配置された、負極活物質を含む負極合剤層とを有する。前記負極合剤は、通常、負極活物質に加えて、結着剤(バインダ)及び所望により導電助材及び増粘剤を含む。
前記負極活物質は、当該技術分野で通常使用される、リチウムイオンの吸蔵及び放出ができる材料であれば、特に限定されず使用することができる。前記負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、非晶質炭素、難黒鉛化炭素類、活性炭、コークス及び熱分解炭素のような炭素材料、金属酸化物、金属窒化物、リチウム金属及びリチウム金属合金等、並びにこれらの混合物を挙げることができる。前記材料のうち、非晶質炭素が好ましい。非晶質炭素は、リチウムイオンを吸蔵及び放出するときの体積変化率が少ない材料である。このため、非晶質炭素を負極活物質として用いることにより、充放電のサイクル特性を向上させることができる。
前記集電体及びバインダとしては、前記で説明した正極と同様の材料を使用することができる。
前記導電助材としては、前記で説明した正極と同様の材料だけでなく、導電性高分子材料(例えば、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン又はポリアセチレン等)を使用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池に使用される負極は、前記で説明した正極の作製方法と同様の方法によって作製すればよい。
セパレータ107は、電池の充放電時にリチウムイオンを透過させる必要があるため、例えば、細孔径が0.01〜10μm、気孔率が20〜90%の多孔体であることが好ましい。セパレータ107の材料としては、例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレンを主成分として含有するポリオレフィン系高分子シート、又はポリオレフィン系高分子及び四フッ化ポリエチレンを代表とするフッ素系高分子シートを溶着させた多層構造のシート、さらにはセルロース繊維又はポリアクリルニトリルの合成繊維からなる不織布を挙げることができる。電池温度が高くなったときにセパレータ107が収縮しないように、セパレータ107の表面にセラミックス及びバインダの混合物を薄層状に形成させてもよい。
前記電解質は、電解質を有機溶媒に溶解させた電解液の形態で用いることができる。この場合、電解質及び有機溶媒の種類並びに/又は混合比に制限されることなく、当該技術分野で通常使用される任意の電解液を使用することができる。前記電解液に使用される有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート、環状エステル及びニトリル化合物を挙げることができる。前記有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、テトラヒドロフラン、クロロエチレンカーボネート及びクロロプロピレンカーボネート等、並びにこれらの混合物から選択される非水溶媒を挙げることができる。本発明のリチウムイオン二次電池に使用される正極又は負極上で分解しない有機溶媒であれば、前記以外の有機溶媒を用いてもよい。
また、前記電解液に使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2F)2、LiClO4、LiCF3CO2、LiAsF6及びLiSbF6等から選択されるリチウム塩を挙げることができる。前記リチウム塩は、単独で用いてもよく、複数のリチウム塩の混合物として用いてもよい。本発明のリチウムイオン二次電池に使用される正極又は負極上で分解しない電解質であれば、前記以外の電解質を用いてもよい。
或いは、前記電解質として、ポリマーゲル電解質又は固体電解質を用いることもできる。固体高分子電解質(ポリマー電解質)を用いる場合、エチレンオキシド、アクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、メタクリル酸メチル、又はヘキサフルオロプロピレンのポリエチレンオキサイド等のイオン導電性ポリマーが好ましい。前記固体高分子電解質を用いることにより、セパレータ107を省略することができる。
電池容器105の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼又はニッケルメッキ鋼等の、非水電解質に対し耐食性のある材料から適宜選択すればよい。また、電池容器105を正極集電タブ103又は負極集電タブ109に電気的に接続する場合、非水電解質と接触している部分において、電池容器の腐食及び/又はリチウムイオンとの合金化による材料の変質が起こらないように、集電タブの材料を選定することが好ましい。
次に、図2を参照しながら、前記正極を備える本発明のリチウムイオン二次電池の構成をさらに説明する。
前記で説明した正極110及び負極106の間にセパレータ107を挿入して、正極110及び負極106の短絡を防止する。セパレータ107は、複数の正極110、負極106及びセパレータ107からなる電極群の末端に配置されている電極と電池容器105との間にも挿入して、電池容器105を通じての正極110と負極106との間の短絡を防止する。
正極110、負極106及びセパレータ107からなる積層体は、集電タブを介して外部端子に電気的に接続されている。正極110は、正極集電タブ103を介して電池蓋101に接続されている。負極106は、負極集電タブ109を介して電池容器105に接続されている。集電タブ103及び109は、ワイヤ状(例えばリード線)、箔状又は板状等の任意の形状を採ることができる。電流を流したときにオーム損失を小さくすることのできる構造であり、且つ電解液と反応しない材質であれば、集電タブ103及び109の形状、本数、並びに/又は材質は、電池容器105の構造に応じて任意に選択することができる。
複数の正極110、負極106及びセパレータ107からなる電極群の形状は、捲回形状であってもよく、扁平状などの任意の形状に捲回した形状であってもよく、短冊状の形状であってもよい。種々の形状を採ることができる。また、電池容器の形状は、前記電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状又は角型等の任意の形状を選択することができる。この場合、電池容器は、電池容器105の如く底面の部材と一体となった構成としてもよく、電池容器の底面に電池蓋を取り付け、電池蓋に負極を接続する構成としてもよい。本発明の効果に何ら影響を与えることなく、前記電極群の形状及び/又は端子の取り付け方法に応じて任意の形状及び構成の電池容器を用いることができる。
密閉蓋部111には、電池内の圧力が上昇すると開裂して電池内部の圧力を逃がす開裂弁を設けてもよい。
電池容器105への電池蓋101の取り付けは、かしめ、溶接又は接着等の方法によって行うことができる。
前記電極群を挿入した電池容器105の内部に電解質を注入して、正極110、負極106及びセパレータ107の表面及び細孔内部に電解質を保持させる。前記で説明したように、電解質として、ポリマーゲル電解質又は固体電解質を用いる場合、セパレータ107は不要である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、単独で用いてもよく、複数のリチウムイオン二次電池を接続したモジュールの形態で用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池を用いて作製したリチウムイオン二次電池モジュールの一実施形態を図3に示す。
図3に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池のモジュール201は、複数のリチウムイオン二次電池202を備える。前記複数のリチウムイオン二次電池202の正極外部端子203及び負極外部端子205は、端子204によって互いに接続されることができる。図3の8個のリチウムイオン二次電池202は、直列に接続されている。前記リチウムイオン二次電池のモジュール201に含まれるリチウムイオン二次電池202は、場合によりモジュール容器206により適切な位置に配置される。
また、本発明のリチウムイオン二次電池のモジュール201は、所望により正極外部端子207と、負極外部端子208と、充電回路210と、演算制御部209と、電力線212と、信号線213と外部電力ケーブル214とを備える、リチウムイオン二次電池モジュールの形態とすることもできる。前記モジュールは、外部電源又は外部負荷に接続され(図3では211と表示される)、充放電することができる。
以上詳細に説明したように、本発明の正極活物質及び正極は、高エネルギー密度及び高レート特性を有し、且つ高温保存において長寿命である。このため、本発明の正極を用いたリチウムイオン二次電池及びそのモジュールは、従来品と比較して長寿命のものとすることができる。前記の特性を有することにより、本発明のリチウムイオン二次電池及びそのモジュールは、携帯用電子機器、携帯電話又は電動工具等の民生用品の他、電気自動車、電車、再生可能エネルギーの貯蔵用蓄電池、無人移動車又は介護機器等の電源のような様々な用途に用いることが可能である。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<製造例1:正極活物質の製造>
[実施例1]
金属源として、クエン酸鉄(FeC6H5O7・nH2O)及び酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)及び五酸化バナジウム(V2O5)を、純水中に溶解させた。クエン酸鉄及び酢酸マンガン四水和物は、FeとMnとのモル比が2:8となるように秤量した。水酸化マグネシウム及び五酸化バナジウムは、Mg及びV(置換金属元素)のモル比(置換金属元素量)が金属元素(Mn、Fe及びM)の総量に対して3原子%となる量を算出し、その3/4の量を秤量した(残りの1/4の量は、以下で説明する追加の置換金属元素混合工程で用いた)。前記溶液に、キレート剤としてクエン酸一水和物(C6H5O7・H2O)を加えた。加えるキレート剤の量は、クエン酸イオンが全ての金属イオンの合計量に対して80 mol%の量となるように、他のクエン酸塩の添加量に応じて設定した。クエン酸イオンは、金属イオンの周囲に配位する。これにより、金属イオンが不溶性塩を形成して沈殿することを抑制し、金属イオンが均質な状態で溶解した原料混合物の溶液を得ることができる。
次に、得られた混合物にリン酸二水素リチウム及び酢酸リチウムを加えて、全ての原料を溶解させた。得られた溶液は、金属イオン基準の濃度で0.2 mol/Lとなるように調製した。前記原料は、Li過剰のモル比、すなわちLi:Fe+Mn+M(中心金属及び置換金属元素):PO4=1.05:1:1のモル比となるように秤量した。前記のモル比を原料の仕込み組成とした理由は、カチオンミキシングを防ぐため、及び焼成時のLiの揮発を補うためである。Li過剰としたことにより、結果として得られるリチウム複合リン酸化物の粒子の表面にリン酸リチウム(Li3PO4)が生じる場合がある。しかしながら、Li3PO4は高Liイオン導電性化合物であるため、正極活物質の性能に悪影響を与える可能性は低いと考えられる。
得られた溶液を、スプレードライヤー装置を用いて、入口温度195℃及び出口温度80℃の条件で乾燥し、原料混合物の粉末を得た(原料混合工程)。前記粉末は、クエン酸マトリックス中に各金属元素が均質に分散した状態で配置されている。
原料混合物の粉末を、箱形電気炉を用いて、空気雰囲気下、440℃で10時間仮焼成することにより、仮焼成体(リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子)を得た(仮焼成工程)。得られた仮焼体を、炭素源且つ粒径制御剤としてのスクロースと混合した。スクロースは、仮焼体100重量部に対して7重量部の割合となるように秤量した。得られた混合物に、追加の水酸化マグネシウム及び五酸化バナジウムを加えた。前記で説明したように、追加の水酸化マグネシウム及び五酸化バナジウムは、置換金属元素の総仕込量の1/4の量を秤量した。前記混合物に分散媒として純水を加えた。得られた混合物を、遊星型ボールミル装置を用いて2時間粉砕・混合した(追加の置換金属元素混合工程)。得られた混合物を、4流体ノズルのスプレードライヤー装置を用いて、エア噴霧圧0.2 MPaの条件で噴霧乾燥して、リチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を得た(二次粒子形成工程)。得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を、雰囲気制御可能な管状炉を用いて、Ar雰囲気下、700℃で10時間本焼成することにより、目的の正極活物質を得た(本焼成工程)。
[実施例2]
実施例1で説明した手順において、置換金属元素源として五酸化バナジウムのみを添加した他は、実施例1と同様の手順で実施例2の正極活物質を得た。
[実施例3]
実施例1で説明した手順において、置換金属元素のうちMgをTiに置き換え、置換金属元素をTi及びVの組み合わせとした他は、実施例1と同様の手順で実施例3の正極活物質を得た。Tiの原料としては、酸化チタン(TiO2)を用いた。
[比較例1]
実施例1で説明した手順において、置換金属元素の原料の総仕込量の全量を、原料混合工程において原料混合物に添加した他は、実施例1と同様の手順で比較例1の正極活物質を得た。本比較例の方法は、特許文献1に記載の方法と同様である。
[比較例2]
実施例2で説明した手順において、置換金属元素の原料の総仕込量の全量を、原料混合工程において原料混合物に添加した他は、実施例2と同様の手順で比較例2の正極活物質を得た。本比較例の方法は、特許文献1に記載の方法と同様である。
<正極活物質の分析>
[元素組成分析]
実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質を所定量秤量し、王水を用いて溶解させた。得られた溶液に含まれる各イオンの量を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(SPS35000DD; SII製)を用いて定量した。得られた定量値に基づき、各正極活物質の元素組成を決定した。結果を表1に示す。
Figure 2015002092
[表面構造分析]
細孔分布測定装置(BELSORP mini;BEL社製)を用い、実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質のBET表面積を測定した。
レーザー回折式粒度分布計(LA-920;HORIBA社製)を用い、実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質の平均二次粒子径を測定した。
次に、正極活物質の成分分析を行った。実施例及び比較例の正極活物質粒子のうち、測定対象として測定誤差の少なくなる比較的大径の粒子を選択した。集束イオンビーム装置(FB-2000A;日立製作所製)を用い、実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質の二次粒子(粒子径:約20μmを5個)を切断した。透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光装置(TEM-EDX)(HF-2000;日立製作所製)を用い、前記で切断した実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質の二次粒子の断面を組成分析し、平均全体置換量A(原子%)と外周部平均置換量B(原子%)とを決定した。
実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質の平均二次粒子径、並びに置換金属元素の分布を表2に示す。表中、「二次粒子全体における置換金属元素の置換量」は、TEM-EDXにより二次粒子の断面全体に亘る元素組成を分析することによって決定された、二次粒子全体に含有される金属元素(Mn、Fe及びM)の総量に対する置換金属元素(M)の量の原子百分率(原子%)を示す。また、「外周領域における置換金属元素の置換量」は、TEM-EDXにより二次粒子の表面から約2μmの深さ(二次粒子の1/10の深さに相当する)までの領域における元素組成の平均値を分析することによって決定された、該領域に含有される金属元素(Mn、Fe及びM)の総量に対する置換金属元素(M)の量の原子百分率(原子%、5個平均)を示す。いずれの実施例及び比較例も、平均全体置換量Aは3原子%であるが、実施例の外周部平均置換量Bは5原子%、比較例の外周部平均置換量Bは3原子%であった。
Figure 2015002092
表2に示すように、二次粒子全体における置換金属元素の置換量(A)は、実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質では、いずれも3原子%だった。これに対し、外周領域における置換金属元素の置換量(B)は、実施例1〜3の正極活物質では5原子%だったのに対し、比較例1〜2の正極活物質では3原子%だった。B/Aの比は、実施例1〜3の正極活物質ではいずれも1.7であったのに対し、比較例1〜2の正極活物質では1.0だった。前記の結果は、実施例1〜3の正極活物質では、外周領域に置換金属元素がより多く存在することを示している。
<製造例2:正極の製造>
実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質、導電助材、バインダ及び溶媒を乳鉢上で混錬して、正極合剤スラリーを調製した。導電助材としては、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック(登録商標))を、バインダとしては、変性ポリアクリロニトリルを、溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、それぞれ用いた。なお、バインダは、NMPに溶解させた溶液の形態で用いた。前記電極材料は、正極活物質、導電助材及びバインダが82.5:10:7.5の重量比となるように加えた。
得られた正極合剤スラリーを、250μmのギャップに設定したドクターブレード法を用いて、厚さ20μmの正極集電体(アルミニウム箔)の片面に、塗工量が5〜6 mg/cm2になるように塗布した。前記正極集電体を80℃で1時間乾燥して、該正極集電体の表面に正極合剤層(厚さ38〜42μm)を形成させた。次に、前記正極合剤層を、打ち抜き金具を用いて直径15 mmの円盤状に打ち抜いた。打ち抜かれた正極合剤層を、ハンドプレスを用いて圧縮成形して、リチウムイオン二次電池用正極を得た。実施例1〜3及び比較例1〜2の正極活物質を用いて作製された正極を、実施例1〜3及び比較例1〜2の正極と記載する。
実施例1〜3及び比較例1〜2の正極は、いずれも前記の塗工量及び厚さの範囲内となるよう作製することで、各試料の電極構造を一定に保った。得られた電極を、120℃で乾燥した。なお、水分の影響を排除するため、前記の工程は全てドライルーム内で実施した。
<製造例3:リチウムイオン二次電池の製造>
[(a)三極式モデルセル]
実施例1〜3及び比較例1〜2の正極を用いて、リチウムイオン二次電池を簡易的に再現した三極式モデルセルを作製した。前記の手順で作製した実施例1〜3及び比較例1〜2の正極(直径15 mm)、アルミニウム集電体、対極用金属リチウム及び参照極用金属リチウムを、電解液を含侵させたセパレータを介して積層させた。前記積層体を、2枚のSUS製端板を用いて挟み込み、ボルトで締め付けた。エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを1:2の容量比となるように混合して、混合溶媒を調製した。前記混合溶媒に、LiPF6を溶解させて1 Mの溶液とした。得られた溶液に、ビニレンカーボネート(VC)を総重量に対して0.8重量%となるように添加して、電解液を調製した。これをガラスセル中に入れ、三極式モデルセルを作製した。実施例1〜3及び比較例1〜2の正極を用いて作製された三極式モデルセルを、実施例1〜3及び比較例1〜2の三極式モデルセルと記載する。
[(b)円筒型リチウムイオン電池]
実施例1〜3及び比較例1〜2の正極を用いて、円筒型リチウムイオン電池を作製した。製造例2に記載の方法で正極集電体の表面に正極合剤層を形成させた。得られた正極合剤層を、5.4 cmの幅及び60 cmの厚さとなるように切断して、正極板を得た。電流を取り出すための正極集電タブとして、アルミニウム箔製のリード片を正極板に溶接した。
次に、負極板を作製した。負極活物質、バインダ及び溶媒を乳鉢上で混錬して、負極合剤スラリーを調製した。負極活物質としては、黒鉛炭素材を、バインダとしては、SBRを、溶媒としては、水を、それぞれ用いた。なお、バインダは、溶媒に溶解させた溶液の形態で用いた。前記電極材料は、負極活物質及びバインダが92:8の乾燥重量比となるように加えた。
得られた負極合剤スラリーを、ドクターブレード法を用いて、厚さ10μmの負極集電体(圧延銅箔)の片面に、均質に塗布した。前記負極集電体を80℃で1時間乾燥して、該負極集電体の表面に負極合剤層を形成させた。得られた負極合剤層を、ロールプレス機を用いて圧縮成形した。前記負極合剤層を、5.6 cmの幅及び64 cmの厚さとなるように切断して、負極板を得た。電流を取り出すための負極集電タブとして、銅箔製のリード片を負極板に溶接した。
前記の正極板及び負極板を用いて、円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。図2は、作製された円筒型リチウムイオン二次電池を模式的に示す切り欠き断面図である。
始めに、正極板110及び負極板106が直接接触しないように、正極板110及び負極板106の間にセパレータ107を配置し、これを捲回して電極群を作製した。このとき、電極群の一端に正極板110のリード片(正極リード片)103が、他端に負極板106のリード片(負極リード片)109が、それぞれ配置されるようにした。さらに、正極板110及び負極板106の対向面において、正極の合剤塗布面と負極の合剤塗布面とが互いにはみ出すことがないように正極板110及び負極板106を配置した。セパレータ107としては、25μmの厚さ及び5.8 cmの幅を有する微多孔性ポリプロピレンフィルムを用いた。
前記の電極群を、SUS製の電池缶105に挿入した。負極リード片109を電池缶105の底部に溶接し、正極リード片103を密閉蓋部111に溶接した。密閉蓋部111は、正極電流端子を兼ねる。前記の手順で電極群を配置した電池缶105に、電解質として非水電解液を注入した。エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを1:2の容量比となるように混合して、混合溶媒を調製した。前記混合溶媒に、LiPF6を溶解させて1 Mの溶液とした。得られた溶液を、非水電解液として用いた。その後、パッキン102を取り付けた密閉蓋部111を、電池缶105にかしめて密閉した。なお、密閉蓋部111には、電池内の圧力が上昇すると開裂して電池内部の圧力を逃がす開裂弁を設けた。また、密閉蓋部111と電極群との間、及び電池缶105の底部と電極群の間には、絶縁板104及び108を配した。以上の手順により、18 mmの直径及び65 mmの長さを有する円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。実施例1〜3及び比較例1〜2の正極を用いて作製された円筒型リチウムイオン二次電池を、実施例1〜3及び比較例1〜2の円筒型リチウムイオン二次電池と記載する。
<リチウムイオン二次電池の性能評価>
[(a)充放電試験(容量試験)]
実施例1〜3及び比較例1〜2の三極式モデルセルを用いて、以下の手順で充放電試験を実施して、各モデルセルの初期容量を評価した。本試験は、Ar雰囲気下のグローブボックス内において、室温(25℃)で行った。電流値を0.1 mAとして、4.5 Vまで定電流充電を行い、4.5 Vに達した後は、電流値が0.03 mAに減衰するまで定電圧充電を行った。その後、2 Vまで0.1 mAの定電流で放電した。このときの放電容量を、試験対象のモデルセルの容量とした。
[(b)レート特性の評価試験]
実施例1〜3及び比較例1〜2の三極式モデルセルを用いて、(a)の充放電試験を3サイクル繰り返した。その後、各モデルセルのレート特性を評価した。本試験は、Ar雰囲気下のグローブボックス内において、室温(25℃)で行った。前記の手順で定電流充電と定電圧充電とを行ったモデルセルを、5 mAの電流値で定電流放電した。このときの容量を、(a)で測定した0.1 mA放電時の容量の値で除算した。得られた比を、試験対象のモデルセルのレート特性とした。
実施例1〜3及び比較例1〜2の三極式モデルセルの性能評価結果を表3に示す。
Figure 2015002092
表3に示すように、実施例1〜3三極式モデルセルは、比較例1〜2の三極式モデルセルと比較して、容量及びレート特性のいずれも高かった。特に、レート特性は、実施例1〜3三極式モデルセルの値が比較例1〜2の三極式モデルセルの値と比較して非常に高かった。前記の結果から、リチウム複合リン酸化物の二次粒子を含む正極活物質において、二次粒子の外周領域に置換金属元素がより多く存在する場合には、レート特性が良好であることが明らかとなった。
[(c)円筒型リチウムイオン電池の評価試験]
製造例3(b)で作製した実施例1の円筒型リチウムイオン電池を用いて、以下の手順で充放電試験を実施して、該円筒型リチウムイオン電池の初期容量を評価した。本試験は、Ar雰囲気下のグローブボックス内において、室温(25℃)で行った。電流値を0.1 mAとして、4.5 Vまで定電流充電を行い、4.5 Vに達した後は、電流値が0.03 mAに減衰するまで定電圧充電を行った。その後、2 Vまで0.3 mAの定電流で放電した。このときの放電容量を、試験対象の円筒型リチウムイオン電池の容量とした。その結果、実施例1の円筒型リチウムイオン電池の放電容量は、1.3 Ahだった。
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除及び/又は置換をすることが可能である。
1…本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質
11…置換金属元素の置換量の少ない一次粒子
12…置換金属元素の置換量の多い一次粒子
100…リチウムイオン二次電池
101…電池蓋
102…ガスケット
103…正極集電タブ
104…絶縁板
105…電池容器
106…負極
107…セパレータ
108…絶縁板
109…負極集電タブ
110…正極
111…密閉蓋部
201…モジュール
202…リチウムイオン二次電池
203…リチウムイオン二次電池の正極外部端子
204…端子
205…リチウムイオン二次電池の負極外部端子
206…モジュール容器
207…モジュールの正極外部端子
208…モジュールの負極外部端子
209…演算制御部
210…充電回路
211…給電負荷電源
212…電力線
213…信号線
214…外部電力ケーブル

Claims (6)

  1. LixMnyFe1-y-zMz(PO4)p(式中、Mは、Ti、Mg、Mo及びVからなる群より選択される1種類以上の置換金属元素であり、xは、0.8≦x≦1.1の範囲から選択され、yは、0.7≦y≦0.9の範囲から選択され、zは、0.01≦z≦0.05の範囲から選択され、pは、0.8≦p≦1.1の範囲から選択される。)で表される、オリビン構造を有するリチウム複合リン酸化物を含み、一次粒子から造粒された二次粒子の形態を有し、該二次粒子の表面から二次粒子の粒子径の1/10の深さまでの領域における式中のzの値は、該二次粒子全体におけるzの値の1.1倍以上となるように前記置換金属元素を含有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記Mが、Ti、Mg及びVからなる群より選択される1種類以上の置換金属元素である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 集電体と、該集電体の表面に配置された、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む正極合剤層とを有する、リチウムイオン二次電池用正極。
  4. 請求項3に記載の正極と、負極と、電解質とを備えるリチウムイオン二次電池。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池を複数備えるリチウムイオン二次電池モジュール。
  6. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    Li、Mn、Fe、M及びPO4の原料を混合する原料混合工程;
    原料混合工程で得られた原料混合物を仮焼成して、リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子を形成させる仮焼成工程;
    リチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子と追加のMの原料とを混合する、追加の置換金属元素混合工程;
    追加の置換金属元素混合工程で得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の一次粒子及び追加のMの原料を含む混合物を造粒して、リチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を形成させる、二次粒子形成工程;
    二次粒子形成工程で得られたリチウム複合リン酸化物の前駆体の二次粒子を本焼成して、正極活物質を形成させる本焼成工程;
    を含み、
    前記原料混合工程で加えられるM元素量と、前記追加の置換金属元素混合工程で加えられるM元素量との合計量に対する追加のM元素量の比が1/5〜1/2の範囲であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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