JP5867475B2 - リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用電極、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質は、一般式LixFeAO4(ただし、AはPまたはSのいずれか一方または両方であり、0.7<x≦2である)で表される無機粒子を含み、前記無機粒子は、比表面積が4m2/g以上15m2/g以下であり、YI(黄色度)が24以下である。
また、無機粒子の比表面積は、15m2/g以下であると、この一次粒子の表面を薄膜状の炭素にて十分に被覆することができ、高速充放電レートにおける放電容量を高くすることができる。その結果、このような無機粒子を正極活物質に用いたリチウムイオン電池において、充分な充放電レート性能を実現することが可能となるため好ましい。
具体的には、分光型測色計(カラーアナライザー(型番TC−1800)、東京電色社製)を用いて反射光2度視野測定を行い、得られた三刺激値から上記計算式に基づいて算出される値を意味する。測定時には、シャーレにムラなく測定対象の正極活物質を載せて測定する。
リチウム電池用正極活物質の一次粒子径の平均粒子径が5nm以上であると、充放電により体積変化しても結晶構造が破壊されるおそれがなく好ましい。また、一次粒子径の平均粒子径が500nm以下であると、粒子内部への電子の供給量が不足しにくく、利用効率の低下を抑制できるため好ましい。
一方、炭素量が10質量部以下であると、正極活物質に対して炭素質被膜の量が多くなりすぎない。そのため、必要な導電性を得る量以上の炭素を含むことなく、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量の低下を抑制することができる。
リチウム電池用正極活物質が2次粒子を形成することにより、1次粒子間にリチウムイオンの拡散浸透が可能な細孔が形成されるため、リチウムイオンは正極活物質の表面に到達することができ、リチウムイオンの挿入脱離反応を効率的に行うことができる。また、各1次粒子間が炭素質被膜により結合されるため、粒子間の電子伝導が容易となる。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、一般式LixFeAO4(ただしAはPまたはSのいずれか一方または両方、0.7<x≦2)で表され、比表面積が4m2/g以上15m2/g以下であり、YI(黄色度)が24以下であるリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法であって、Li化合物と、Fe化合物と、リン化合物または硫黄化合物のいずれか一方または両方と、を含む液状体を、pH3以上pH5以下に調整する工程と、前記液状体を密閉容器内で加熱する工程と、を有する。
pHの調整にリン酸を用いる場合、生じるリン酸イオンは目的物であるLiFePO4の原料として消費されるため、不純物の混入を抑制することができる。
また、pHの調整にシュウ酸やNH3を用いると、急激なpH変化を生じさせることなくpHの調整が可能であるため好ましい。
また、pHの調整に強酸を用いると、pHが低くなりすぎた場合に正極活物質の粒子表面が腐食するおそれが生じる。
また、水熱反応の処理時間を短くすると、得られる無機粒子の比表面積は大きくなりやすく、処理温度を長くすると、得られる無機粒子の比表面積は小さくなりやすい。
これらの処理条件をそれぞれ制御することで、得られる無機粒子の比表面積を適宜調整することができる。すなわち、同じ比表面積となる処理条件であっても、処理温度や処理時間の組み合わせは無数に想定される。
また、水熱反応の処理時間を短くすると、得られる無機粒子のYIは大きくなりやすく、処理温度を長くすると、得られる無機粒子のYIは小さくなりやすい。
これは、無機粒子の比表面積が変化すると、無機粒子に含まれるFeの酸化しやすさが変化し、結果として無機粒子に含まれる不純物量が変化するためであると考えられる。
炭化触媒であるリン化合物としては、黄リン、赤リン、オルトリン酸(H3PO4)、メタリン酸(HPO3)等のリン酸、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸アンモニウム((NH4)3PO4)、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸水素二リチウム(Li2HPO4)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)及びこれらの水和物等が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ここで、「非酸化性雰囲気下」とは、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下のことである。
本実施形態のリチウムイオン電池用電極は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料を有している。
リチウムイオン電池用電極は、例えば本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質と結着剤との混合物をアルミニウム等の金属箔上に塗布し、乾燥してシート状とすることで製造することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池は、正極、負極および非水電解質を有するリチウムイオン電池であって、正極が本実施形態のリチウムイオン電池用電極を有する。
また、以上のような構成のリチウムイオン電池は、信頼性の高い電池とすることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
粉末の黄色度(YI)は、分光型測色計(カラーアナライザー(型番TC−1800)、東京電色社製)を用いて反射光2度視野測定を行い、得られた三刺激値からASTM E 313で既定された計算式に基づいて算出される値を用いた。三刺激値の測定時には、シャーレにムラなく測定対象の正極活物質の粉末を載せて測定した。
粉末の比表面積は、比表面積計(BELSORP−mini、日本ベル社製)を用いて、窒素(N2)吸着によるBET法により測定した。
X線回折装置(X’Pert PRO MPD、検出器:X’celarator、パナリティカル社製)を用いて、得られた粉末の結晶構造を解析した。
(4−1.Fe(III)の割合の測定)
粉末に含まれる総Fe量を、JISK0102に準拠して、フェナントロリン吸光光度法で測定した。
また、粉末に含まれるFe(III)量を過マンガン酸カリウム滴定で測定した。
粉末に含まれるFe(II)量は、総Fe量からFe(III)量を差し引いて求めた。
その後、得られた総Fe量の値およびFe(II)量の値を用いて、Fe(II)の割合(単位:%)を算出した。
粉末に含まれるFe価数(Feの平均価数)は、総Fe量の値およびFe(III)量の値を用いてFe(III)の割合(単位:%)を算出し、下記計算式から比例配分して求めた。
Fe価数={2×(Fe(II)の割合)+3×(Fe(III)の割合)}/100
(5−1.リチウムイオン電池の作製)
後述の実施例及び比較例で得られた活物質と、導電助材であるアセチレンブラック(AB)と、結着材であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、活物質:AB:PVdF=90:5:5の質量比でN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に混合し、正極材料ペーストを作成した。
得られた正極ペーストを、厚さ30μmのAl箔上に塗布した。ペーストの塗膜は300μmとした。乾燥後、40MPaの圧力にて100μm程度の厚みとなる様に圧着して電極板とした。
得られた電極板を直径16mmの円盤状に打ち抜き、試験電極を作製した。
セパレーターは、多孔質ポリプロピレン膜(#2500、セルガード社製)を採用した。
非水電解質溶液は、1mol/LのLiPF6溶液を用いた。なお、このLiPF6溶液に用いられる溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを体積%で1:1に混合したものを用いた。
作製したコイン型のリチウムイオン電池の放電容量について、放電容量測定装置(HJ1010mSM8、北斗電工社製)を用いて測定した。
作製したコイン型のリチウムイオン電池について、25℃にて、0.1C電流値で充電電圧が4.2Vとなるまで定電流充電を行った後、定電圧充電に切り替えて電流値が0.01Cとなった時点で充電を終了した。
その後、放電電流3Cで放電を行い、電池電圧が2.0Vとなった時点で放電を終了した。放電終了時の放電容量を測定し、3C放電容量とした。
作製したコイン型のリチウムイオン電池について、上述の条件で充電した後、放電電流0.1Cでの放電を行い、電池電圧が2.0Vとなった時点で放電を終了した。放電終了時の放電容量を測定して得られる0.1C放電容量を、初期容量とした。
その後、得られた初期容量(0.1C放電容量)と、上述の方法で求めた3C放電容量とを用い、3C容量/0.1C容量比を算出した。
また、上述の条件で充放電を繰り返し、1回の充電および放電を1サイクルとして300サイクル目の0.1C放電容量を測定して、初期容量に対する容量維持率を算出した。
Li源として酢酸リチウム(LiCH3COO)、Fe源として硫酸鉄(II)を用いて、これらをモル比でLi:Fe=1:1となるように純水に溶解した後、さらに、P源としてリン酸(H3PO4)を用いてpH3.8に調整し、200mlの前駆体溶液を作製した。
次いで、得られた前駆体溶液を耐圧容器に入れ、170℃で24時間水熱合成を行った。
反応後、室温になるまで冷却することで、沈殿しているケーキ状態の反応生成物を得た。
得られた沈殿物を蒸留水で複数回十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持しケーキ状物質とした。
この沈殿物を一部採取し、70℃で2時間真空乾燥させて得られた粉末についてX線回折を測定したところ、単相のLiFePO4が形成されていることが確認された。
また、得られたLiFePO4粉末の比表面積は7.67m2/gであった。
充放電特性は3C放電容量が140mAh/gを示した。
また、充放電特性は3C容量/0.1C容量比は87.0%を示した。
酢酸リチウムと硫酸鉄(II)とを純水に溶解した後、LiOHとH3PO4とを用いて前駆体溶液のpHを4.1に調整したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の単相のLiFePO4を製造した。得られたLiFePO4が単相であることは、X線回折を測定することで確認した。
また、得られたLiFePO4粉末の比表面積は9.02m2/gであった。
得られたLiFePO4を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性は、3C放電容量が142mAh/gであり、3C容量/0.1C容量比が89.9%であった。
酢酸リチウムと硫酸鉄(II)とを純水に溶解した後、NH3とH3PO4とを用いて前駆体溶液のpHを4.5に調整したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の単相のLiFePO4を製造した。得られたLiFePO4が単相であることは、X線回折を測定することで確認した。
また、得られたLiFePO4粉末の比表面積は12.21m2/gであった。
得られたLiFePO4を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性は、3C放電容量が143mAh/gであり、3C容量/0.1C容量比が89.4%であった。
NH3とシュウ酸とを用いて前駆体溶液のpHを5.1に調整したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の単相のLiFePO4を製造した。得られたLiFePO4が単相であることは、X線回折を測定することで確認した。
また、得られたLiFePO4粉末の比表面積は6.72m2/gであった。
得られたLiFePO4を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性は、3C放電容量が101mAh/gであり、3C容量/0.1C容量比が72.1%であった。
NH3を用いて前駆体溶液のpHを5.6に調整したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の単相のLiFePO4を製造した。得られたLiFePO4が単相であることは、X線回折を測定することで確認した。
また、得られたLiFePO4粉末の比表面積は5.71m2/gであった。
得られたLiFePO4を用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性は、3C放電容量が96mAh/gであり、3C容量/0.1C容量比が67.6%であった。
評価においては、3C放電の容量が130mAh/g以上であり、且つ3C容量/0.1C容量比が80%以上であるものを良品と判定した。
対して、比較例1,2は、3C放電の容量が130mAh/g未満であり、また3C容量/0.1C容量比が80%未満となった。
したがって、実施例1〜3は、比較例1,2よりも良好な電池特性を示すことが分かった。
Claims (7)
- 一般式LixFeAO4(ただし、AはPまたはSのいずれか一方または両方であり、0.7<x≦2である)で表される無機粒子を含み、
前記無機粒子は、比表面積が4m2/g以上15m2/g以下であり、YI(黄色度)が24以下であり、
含有するFeの平均価数は、2.01以上2.04以下であるリチウムイオン電池用正極活物質。 - 前記無機粒子と、前記無機粒子の表面を被覆する炭素質被膜と、を有する請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
- 前記炭素質被膜の炭素量は、前記無機粒子100質量部に対して0.6質量部以上かつ10質量部以下である請求項2記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を有するリチウムイオン電池用電極。
- 正極、負極および非水電解質を有するリチウムイオン電池であって、前記正極が請求項4に記載のリチウムイオン電池用電極を有するリチウムイオン電池。
- 請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法であって、
Li化合物と、Fe化合物と、P化合物またはS化合物のいずれか一方または両方と、を含む液状体を、リン酸、シュウ酸、NH 3 またはLiOHを用いてpH3以上pH5以下に調整する工程と、
前記液状体を密閉容器内で加熱する工程と、を有するリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。 - 前記加熱する工程で得られた反応生成物と、有機化合物とを含むスラリーを乾燥させ、得られた固体を非酸化性雰囲気下で熱処理する工程をさらに有する請求項6に記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
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