JP2015050994A - 核酸増幅法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】精製工程を経ていない生体試料を核酸増幅反応液に添加し、生体試料中の標的核酸を増幅する方法であって、増幅に用いられる酵素がファミリーBに属するDNAポリメラーゼであり、かつデオキシウリジン(dUTP)を反応液中に含んでいることを特徴とする核酸増幅法。
【選択図】なし
Description
数コピーといった微量サンプルからでも標的核酸を何十万倍に増幅することができ、研究分野のみならず、遺伝子診断、臨床診断といった法医学分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられるようになってきている。
さらに本発明の他の目的は、上記の目的に適した試薬キットを提供することにある。要約すれば本発明の目的は、dUTP存在下で動植物組織や体液に存在する遺伝子の増幅に適したPCR改良法およびPCR反応試薬を提供することにある。
[1]
精製工程を経ていない生体試料を核酸増幅反応液に添加し、生体試料中の標的核酸を増幅する方法であって、増幅に用いられる酵素がファミリーBに属するDNAポリメラーゼであり、かつデオキシウリジン(dUTP)を反応液中に含んでいることを特徴とする核酸増幅法。
[2]
生体試料が、動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、ウイルスのいずれかである[1]に記載の核酸増幅法。
[3]
核酸増幅に用いられる酵素が、減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である、[1]または[2]に記載の核酸増幅法。
[4]
核酸増幅に用いられる酵素が、30塩基/秒以上のDNA合成速度を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[5]
古細菌DNAポリメラーゼ変異体が、以下の(a)から(c)のいずれかで示されるものであることを特徴とする、[3]または[4]に記載の核酸増幅法。
(a)配列番号1または配列番号2(Pfuの野生型配列に相当)で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90〜97および112〜119番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列である。
(b)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列が(a)で示されるアミノ酸配列と80%以上同一であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列である。
(c)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列が(a)で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列である。
[6]
古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、36、93番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する、[3]〜[5]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[7]
古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36RまたはP36Hのいずれかの改変を有する、[3]〜[6]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[8]
古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、Y7A/V93K、Y7A/P36HまたはP36Hのいずれかの改変を有する、[3]〜[7]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[9]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼがさらに3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域を構成するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[10]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域への改変が、配列番号1または配列番号2における、D141、I142、E143、H147、N210及びY311に相当するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する、[1]〜[9]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[11]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域への改変が、配列番号1または配列番号2における、D141A/E143A、I142R、H147E、H147D、N210DまたはY311Fのいずれかである[1]〜[10]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[12]
古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、以下の(1)−(4)のいずれかの改変を有する、[3]〜[11]のいずれかに記載の核酸増幅法。
(1)(A)H147Eと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36R、P36H、V93RまたはV93Qのいずれか
(2)(A)N210Dと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36K、P36R、P36H、V93Q、V93KまたはV93Rのいずれか
(3)(A)I142Rと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H、V93K、V93RまたはV93Qのいずれか
(4)(A)D141A/E143Aと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36HまたはV93Kのいずれか
[13]
さらにPCNAを前記反応液に含む[1]〜[12]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[14]
PCNAが単独でDNAにロードする変異体である、[1]〜[13]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[15]
PCNAが、配列番号21または配列番号22で示されるアミノ酸配列の(a)82、84、109番目に相当するアミノ酸からなるN末端領域、および(b)139、143、147番目に相当するアミノ酸からなるC末端領域のうち、少なくともひとつの改変を有する変異体である、[1]〜[14]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[16]
PCNAが配列番号21または配列番号22における143番目に相当するアミノ酸を塩基性アミノ酸に改変したもの、または、82番目と143番目に相当するアミノ酸を共に中性アミノ酸に改変したもの、147番目に相当するアミノ酸を中性アミノ酸に改変したもの、109番目と143番目に相当するアミノ酸を共に中性アミノ酸に改変したもののいずれかの変異体である、[1]〜[15]のいずれかに記載の核酸増幅法。
[17]
[1]〜[16]のいずれかに記載の核酸増幅法を実行するための試薬。
[18]
[1]〜[16]のいずれかに記載の核酸増幅法を実行するための試薬を含むキット。
本明細書においては、塩基配列、アミノ酸配列およびその個々の構成因子については、アルファベット表記による簡略化した記号を用いる場合があるが、いずれも分子生物学・遺伝子工学分野における慣行に従う。また、本明細書においては、アミノ酸配列の変異を簡潔に示すため、例えば「D143A」などの表記を用いる。「D143A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示しており、すなわち、置換前のアミノ酸残基の種類、その場所、置換後のアミノ酸残基の種類を示している。また、配列番号は、特に断らない限り、配列表に記載された配列番号に対応する。また、多重変異体の場合は、上記の表記を「/」でつなげて表す。たとえば「D143A/D147A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換し、かつ、第147番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示す。
また、本明細書において「変異型PCNA」という場合の「変異型」とは、従来知られたPCNAとは異なるアミノ酸配列を備えることを意味するものであり、人為的変異によるか自然界における変異によるかを区別するものではない。
本発明における核酸増幅法は、精製工程を経ていない生体試料を核酸増幅反応液に添加し、生体試料中の標的核酸を増幅する方法であって、増幅に用いられる酵素がファミリーBに属するポリメラーゼであり、かつデオキシウリジン(dUTP)を反応液中に含んでいることを特徴とする。
本発明における核酸増幅法においては、精製工程を経ていない生体試料内の核酸を精製することなく増幅する。精製とは、生体試料の組織、細胞壁などの夾雑物質と生体試料中のDNAを分離する方法であり、フェノールあるいはフェノール・クロロホルム等を用いて、DNAを分離する方法や、イオン交換樹脂、ガラスフィルターあるいはタンパク凝集作用を有する試薬によってDNAを分離する方法がある。
本発明の核酸増幅法に適用する生体試料は、生体から採取された試料であれば特に限定されない。例えば、動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、ウイルス等をいう。体液には血液や唾液が含まれ、細胞には血液から分離した白血球が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明の核酸増幅法においては、反応液にdUTPを含む。dUTPの入手経路は特に限定されないが、市販のものを使用することができる。
反応液中のdUTPの濃度は特に限定されないが、コンタミネーション除去の効率の観点から、好ましい下限は0.5μM以上、より好ましくは50μM以上、より好ましくは0.1mM以上である。またPCR効率の観点から、dUTPは高濃度で含まれていてもよい。好ましい上限は1mM以下、より好ましくは0.6mM以下である。
また、PCR効率の観点からdTTPとdUTPが混在していてもよい。dTTPとdUTPの比率は100:1〜1:100が好ましい。より好ましくは10:1〜1:10であり、さらに好ましくは1:1であるが、これらに限定されない。
本発明の核酸増幅法に用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである。
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとしては、パイロコッカス(Pyrococcus)属およびサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されるDNAポリメラーゼが挙げられる。
パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB−D、Pyrococcus Woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。
サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF−3、Thermococcus sp.9degrees North−7(Thermococcus sp.9°N−7)、Thermococcus sp.KS−1、Thermococcus celer、又はThermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。
これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo社)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs社)、Deep Vent(New England Biolabs社)、Tgo(Roche社)、Pwo(Roche社)などがある。
本発明の核酸増幅法に用いるファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、減少した塩基類似体検出活性を有する変異体でもよい。塩基類似体とはアデニンやシトシン、グアニン、チミン以外の塩基を示し、ウラシルやイノシンなどが挙げられる。通常、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、塩基類似体であるウラシルやイノシンを検出すると強く結合し、ポリメラーゼ機能を阻害する。塩基類似体検出活性とは、塩基類似体と強く結合し、ポリメラーゼ機能を阻害する活性を示す。減少した塩基類似体検出活性を有するファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体とは、ウラシルやイノシンへの結合能力が低いことを特徴とするファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体である。
具体的には、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成されるウラシルの結合に関するアミノ酸配列(ウラシル結合ポケット)に改変を加え、野生型のDNAポリメラーゼと比較して、ウラシルやイノシンへの結合能力が低いことを特徴とする古細菌DNAポリメラーゼ変異体である。ウラシルやイノシンへの結合能力が低い古細菌DNAポリメラーゼ変異体は、dUTPの存在下のPCRでもファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼの機能低下があまり見られず、dUTPによるDNAポリメラーゼの伸長反応への影響が低減されている。
本発明の核酸増幅法に用いる減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異型は、野生型(WT)と比べてDNA合成速度が速いものであることが好ましい。
dUTP存在下ではdUTPとポリメラーゼが強く結合することでPCRの阻害が生じる。DNAの合成速度が高いポリメラーゼの方が、dUTPとの結合を起しにくく、dUTP存在下でdUTPの影響を受けにくい。
本発明において、核酸増幅法に用いられるDNAポリメラーゼの合成速度は以下のように測定する。酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。(1)下記のA液2.5μl、B液2.5μl、C液1.5μl、D液4.8μl、およびE液4μlを混合し、95℃にて10分、37℃にて10分置き、基質を作成する。
(2)、75℃にて30秒、インキュベートさせた基質に0.64ng/μl酵素溶液5μlを加えて75℃にて30秒、60秒、120秒反応する。その後氷冷し、F液35μlを加えて、よく攪拌する。
(3)この液を10μl、1%のアルカリアガロースゲルに供し、Biotinylated 2−Log DNA Ladder (0.1−10 kb)(NEB製)をマーカーとし電気泳動する。
(4)Hybond N+へブロッテリングし、NEBのPhototope−Star Chemiluminescent Detection Kitの取説に従い、ビオチンを検出する。1秒当たりに伸長した鎖の長さを合成速度とする。
A:10×PCR Buffer for KOD −Plus− Ver.2(TOYOBO製)
B:2mM dNTPs(TOYOBO製)
C:25mM MgSO4
D:200ng/μl M13 ssDNA(TaKaRa製)
E:100μM Biotin化P7プライマー(配列:Biotin−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC)
F:59mM NaOH、59mM EDTA、0.1% BPB 30% Glycerol
前記「減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体」について、さらに具体的に説明する。
ウラシルの結合に関するアミノ酸配列はパイロコッカス属に由来するDNAポリメラーゼ及びサーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼにおいて高度に保存されている。サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号1)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。パイロコッカス・フリオサス(配列番号2)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・ゴルゴナリウス(配列番号3)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・リトラリス(配列番号4)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。パイロコッカス・エスピーGB−D(配列番号5)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・エスピーJDF−3(配列番号6)のおいては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・エスピー9°N−7(配列番号7)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・エスピーKS−1(配列番号8)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・セラー(配列番号9)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。サーモコッカス・シクリ(配列番号10)においては、アミノ酸1〜40、およびアミノ酸78〜130によって形成される。
(b)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列が(a)で示されるアミノ酸配列と80%以上同一(好ましくは85%以上同一であり、さらに好ましくは90%以上同一であり、さらに好ましくは95%以上同一であり、さらに好ましくは98%以上同一であり、さらに好ましくは99%以上同一である)であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出する。
(c)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列が(a)で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
配列の一次構造を比較する方法としては、種々の方法が知られている。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。
本明細書では、DNA Databank of Japan(DDBJ)のClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/index.php?lang=ja)においてデフォルト(初期設定)のパラメーターを用いることにより、配列の一次構造を比較する。
ここで、例えばY7とは、7番目のアミノ酸であるチロシン(Y)残基を意味しており、アルファベット1文字は通用されているアミノ酸の略号を表している。好ましい例において、Y7アミノ酸はチロシン(Y)が非極性アミノ酸に置換されており、具体的にはY7A、Y7G、Y7V、Y7L、Y7I、Y7P、Y7F、Y7M、Y7W、及びY7Cからなる群より選ばれるアミノ酸置換である。
本発明における塩基類似体検出活性はPCRによって評価できる。塩基類似体は典型的にはウラシルである。例えば、鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、および評価対象のDNAポリメラーゼを含む通常のPCR反応液に、dUTP溶液を、終濃度0.5μM〜200μMで添加し、熱サイクルを行う。反応後にエチジウムブロマイド染色アガロース電気泳動でPCR産物の有無を確認し、許容できたdUTP濃度によって、ウラシルの検出活性を評価することが出来る。ウラシル検出活性の高いDNAポリメラーゼは少しのdUTPの添加で伸長反応が阻害され、PCR産物が確認できない。またウラシルの検出活性の低いDNAポリメラーゼは高濃度のdUTPを添加しても問題なくPCRによる遺伝子増幅が確認できる。
KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付の10×PCR Buffer、またはPfu DNA Polymerase(Agilent社製)添付の10×PCR Bufferを用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO4、0.2mM dNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)、約1.3kbを増幅する15pmolの配列番号13及び14に記載のプライマー、10ngのヒトゲノムDNA(Roche製)、1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、dUTP(Roche製)を終濃度0.5、5、50、100、200μMになるよう添加する。94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1分30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約1.3kbの増幅DNA断片を確認することで塩基類似体検出活性が減少しているかどうかが評価できる。
本発明の核酸増幅法に用いるDNAポリメラーゼは以下のように活性を測定する。酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。
(1)下記のA液25μl、B液5μl、C液5μl、滅菌水10μl、及び酵素溶液5μlをマイクロチューブに加えて75℃にて10分間反応する。
(2)その後氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。
(3)この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N 塩酸およびエタノールで十分洗浄する。
(4)フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード製)で計測し、鋳型DNAのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件で30分当りの10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分(即ち、D液を添加したときに不溶化する画分)に取り込む酵素量とする。
A:40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)16mM 塩化マグネシウム15
mM ジチオスレイトール100μg/mL BSA(牛血清アルブミン)
B:1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C:1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D:20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E:1mg/mL仔牛胸腺DNA
本発明の核酸増幅法に用いる改変されたDNAポリメラーゼは、さらに3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域を構成するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を含んでいてもよい。
3‘−5’エキソアーゼ活性とは、取り込まれたヌクレオチドをDNA重合体の3’末端から除去する能力を指し、上記の3‘−5’エキソヌクレアーゼ領域とは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼで高度に保存されている部位であり、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号1)、パイロコッカス・フリオサスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号2)、サーモコッカス・ゴルゴナリウスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号3)、サーモコッカス・リトラリスに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号4)、パイロコッカス・エスピーGB−Dに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号5)、サーモコッカス・エスピーJDF−3に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号6)、サーモコッカス・エスピー9°N−7に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号7)、サーモコッカス・エスピーKS−1に由来するDNAポリメラーゼ(配列番号8)、サーモコッカス・セラーに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号9)、又はサーモコッカス・シクリに由来するDNAポリメラーゼ(配列番号10)においては、137〜147、206〜222、および308〜318番目のアミノ酸である。本発明は具体的に配列を提示したDNAポリメラーゼ以外のDNAポリメラーゼにも適用される。また、配列番号1〜10に示されるDNAポリメラーゼ以外のファミリーBに属する古細菌由来DNAポリメラーゼにおいては、配列番号1の137〜147、206〜222、および308〜318番目のアミノ酸からなる3‘−5’エキソヌクレアーゼ領域と対応する領域のことを示す。
より好ましくは、アミノ酸の改変がD141A、E143A、D141A/E143A、I142R、N210D、またはY311Fから選択されるいずれか一つである、3‘−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させたDNAポリメラーゼである。
なお、3‘−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損させた(エキソ(−))DNAポリメラーゼとは、活性の完全な欠如を含み、例えば、親酵素と比較して0.03%、0.05%、0.1%、1%、5%、10%、20%、または最大でも50%以下のエキソヌクレアーゼ活性を有する改変されたDNAポリメラーゼを指す。
(1)(A)H147Eと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36R、P36H、V93RまたはV93Qのいずれか
(2)(A)N210Dと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36K、P36R、P36H、V93Q、V93KまたはV93Rのいずれか
(3)(A)I142Rと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H、V93K、V93RまたはV93Qのいずれか
(4)(A)D141A/E143Aと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36HまたはV93Kのいずれか
なお、3‘−5’エキソヌクレアーゼ活性領域を改変したDNAポリメラーゼを生成する方法や、3‘−5’エキソヌクレアーゼ活性を解析する方法は公知であり、例えば、米国特許第6946273号に開示されている。PCR効率を向上させたDNAポリメラーゼとは、PCR産物の量が親酵素と比較して増加している改変されたDNAポリメラーゼを示す。PCR産物の量が親酵素と比較して増加しているかどうかを解析するための方法は、特許第3891330号等に記載されている。
本発明の核酸増幅法は、精製工程を経ていない生体試料を核酸増幅反応液に添加し、生体試料中の標的核酸を増幅する方法であって、増幅に用いられる酵素がファミリーBに属するDNAポリメラーゼであり、かつデオキシウリジン(dUTP)を反応液中に含んでいることを除いて、特に限定されない。
精製していない生体試料から得た増幅対象DNAに、
(a)減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体
(b)一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である一対のプライマー
(c)dUTPを含むDNA合成基質(デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP))および、
(d)マグネシウムイオン、アンモニウムイオン及び/又はカリウムイオンを含むバッファー溶液
を、混合し、
サーマルサイクラー等を用いて反応液の温度を上下させることにより、(1)DNA変性、(2)プライマーのアニーリング、(3)プライマーの伸長の熱サイクルを繰り返し、特定のDNA断片を増幅させる。
上記PCR方法においては、必要に応じて、さらに、PCR増強因子(後述)、BSA、非イオン界面活性剤などを用いてもよい。
さらに本発明における核酸増幅反応には、PCR増強因子が含まれていてもよい。その増強因子とは、ポリヌクレオチドポリメラーゼ増強活性、例えばPEF、dUTPase、ssb、PCNA、RFC、ヘリカーゼ等を有する複合体または蛋白を指す(Hogrefeら、1997,Strategies 10:93−96;および米国特許第6,183,997号などを参照)。また、PCR増強因子には非蛋白因子、例えばDMSOおよびベタインも包含される。本発明の核酸増幅法に用いるPCR増強因子は、これらに限定されるものではないが、PCNAが特に好ましい。
(a)82、84、109番目に相当するアミノ酸からなるN末端領域、または
(b)139、143、147番目に相当するアミノ酸からなるC末端領域に少なくともひとつの改変を有し、RFCがなくともDNAにロードし、DNAポリメラーゼの伸長反応を促進する変異体があげられる。
本発明の中性アミノ酸としては、天然のものであれば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。好ましくは、置換部位の周辺部位の立体構造に与える影響がもっとも小さいアラニンである。塩基性アミノ酸としては、天然のものであれば、アルギニン、ヒスチジン、リシンが挙げられる。好ましくはアルギニンである。
具体的には以下の「増幅増強活性の評価方法」に従う。
「増幅増強活性の評価方法」
本明細書においては、
(i)PCR
KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付の10×PCR Buffer添付を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO4、
dTTPの代わりにdUTPを含んだ0.2mM dNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、
15pmolのプライマー(1.3kbの増幅には配列番号13及び14)、
10ngのヒトゲノムDNA(Roche製)、
0.8μgのKOD抗体を混合した1U KOD DNAポリメラーゼ V93K変異体 (減少した塩基類似体検出活性を持つ古細菌DNAポリメラーゼ変異体)を含む
50μlの反応液中に、評価するPCNAを250ng添加し、
94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃、30秒→68℃、1分30秒を35サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。
(ii)PCR産物の分析
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下、増幅DNA断片を、PCNAを添加していないものと比較することで単独でDNAにロードできるかどうか(増幅増強活性があるかどうか)を評価することができる。単独でDNAにロードできる(増幅増強活性の高い)PCNAは添加によって増幅量が増加する。
本発明の核酸増幅法を実行するための試薬、キットは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、および、デオキシウリジン(dUTP)を反応液中に含み、それ以外の構成は特に限定されない。適用する核酸増幅法も特に限定されない。
(a)減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体
(b)一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である一対のプライマー
(c)dUTPを含むDNA合成基質(デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP))および、
(d)マグネシウムイオン、アンモニウムイオン及び/又はカリウムイオンを含むバッファー溶液
(実施例1)
KOD変異体の作製
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号11)(pKOD)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
Pfu変異体の作製
パイロコッカス・フリオサス由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたパイロコッカス・フリオサス由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号12)(pPfu)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
実施例3−1
改変型耐熱性DNAポリメラーゼの作製
実施例1および実施例2で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、改変型耐熱性DNAポリメラーゼを得た。
改変された耐熱性DNAポリメラーゼの減少した塩基類似体検出活性の評価
ウラシルの検出活性は、前述の(10)に記載の「塩基類似体検出活性の評価方法」に従い実施した。
野生型ではdUTPを添加した場合はPCR産物が確認できず(レーン2−6)、dUTP無添加の場合(レーン1)のみ増幅産物が確認された。これに対し、7種の変異型では、終濃度0.5μMのdUTPを添加した際にも増幅産物が確認された。中でも、P36K、P36R、Y7A/P36K、Y7A/P36R、P36H、V93Q、Y7A/P36Hの6種については、dUTP終濃度0.5−200μMのすべての範囲で増幅産物が確認された。
結果、Y7、P36またはV93のウラシル結合ポケットへの変異はdUTP耐性濃度を高くする傾向があり、H147Eなどの3‘−5’エキソヌクレアーゼを保持している変異体(エキソ(+))にさらに変異を加える場合に比べ、N210D、I142RまたはD141A/E143Aなどの3‘−5’エキソヌクレアーゼを欠質させた変異体(エキソ(−))にさらに変異を加える方が、dUTP耐性濃度が高くなる傾向が確認された。
改変された耐熱性DNAポリメラーゼを用いた長鎖DNA増幅の評価
表2に記載のKOD変異体を用いて、dTTPなしのdUTPのみの条件でも、1.3kBを超える長鎖DNAが増幅するかどうか調べた。表2ではエキソ領域のアミノ酸変異と、ウラシル結合に関するアミノ酸変異の両方が示されている。エキソ領域のアミノ酸変異に関して、エキソ(+)とあるのは野生型を含め3‘−5’エキソヌクレアーゼを保持している変異、エキソ(−)とあるのは3‘−5’エキソヌクレアーゼを欠失させた変異であることをそれぞれ示す。
それぞれ反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約増幅DNA断片の増幅量を確認した。
次に、V93K、P36H、P36Rと、それぞれにさらにY7Aの変異を加えた二重変異体の増幅量を比較した結果、単変異のものよりウラシル結合ポケットへ二重変異を入れたものの方が、増幅量が多くなった。これらの変異体はTaqでは増幅できないような長鎖長を増幅することが可能となっていた。
一方で、上記で効果のあったV93K、P36H、P36Rについて組み合わせた種々の多重変異体についてさらに検討したところ、P36H/V93Kでは相乗効果が見られたが、P36R、Y7A/P36R/V93K、Y7A/P36H/V93Kでは増幅が認められなかった。
さらに、図3と図4において、野生型のDNAポリメラーゼにV93KやP36Hなどの変異を施したものと、PCR効率が向上するエキソ(+)の変異体であるH147EにV93K、P36Hなどの変異を施したものとを比較した結果、エキソ(+)のH147E変異体の方が、増幅量が多い結果となった。
合成速度の比較
合成速度は、前述の(8)に記載の<DNAポリメラーゼ合成速度測定法>に従い実施した。
図5は、野生型(WT)と、Y7A/V93K、P36H、Y7A/P36H、Y7A/V93K/N210D、P36H/N210D、Y7A/P36H/N210D、N210Dの7種のKOD変異体との計8種について、Biotin化P7プライマーを用いてPCR反応を30秒、60秒、120秒行い、それぞれで得られた産物を電気泳動した結果である。図5において、30とあるのはPCR反応を30秒行ったことを示す。60、120についても同様である。図5では、増幅産物が電気泳動写真の上部で検出されるほど、長い増幅産物が取れ合成速度が速いことが示される。写真の左側には、7000bp、3000bpの増幅産物がそれぞれの矢印のところで検出されることを示す。写真の下部に示されている数字は、その結果に基づいて計算された各DNAポリメラーゼの合成速度である。
またエキソ領域を改変したN210D変異体は、野生型より、合成速度が速く、さらに前記N210D変異体に、Y7A/V93KやP36H、Y7A/P36Hなどの改変を行った変異体は、より合成速度が速くなることが確認された。
dUTP存在下のPCRにおける血液からの増幅
反応液に添加する血液量を変えて、血液耐性を評価した。比較には、1Uあたり0.8μgのKOD抗体と混合したKOD(野生型)とKOD Y7A/V93K変異体とKOD Y7A/P36H/N210D変異体、抗体を混合したTaq DNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ(Toyobo社製)とAnti−Taq High(Toyobo社製)を等量混合したもの)を用い、HBgの482bpPCRを行い増幅の違いを比較した。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
結果、Taq DNAポリメラーゼ、野生型のKOD DNAポリメラーゼはdUTP存在下で増幅が確認されないところ、KOD Y7A/V93KやKOD Y7A/P36H/N210D変異体ではdUTP存在下でもしっかりしたバンドが確認された。
KOD Y7A/V93K変異体より合成速度の速いKOD Y7A/P36H/N210D変異体の方が血液耐性が高く、血液10%添加でも増幅が確認できた。
実施例4−1
KOD−PCNA変異体の作製
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性PCNA遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来のPCNA(配列番号23)(pKODPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
Pfu−PCNA変異体の作製
パイロコッカス・フリオサス由来の改変型耐熱性PCNA遺伝子を含有するプラスミドを作製した。
変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたパイロコッカス・フリオサス株由来のPCNA(配列番号24)(pPfuPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(Toyobo社製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素調製に用いた。
改変型耐熱性PCNAの作製
実施例4−1で得られた菌体の培養は以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリDH5α(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1%ノニデットP40、50%グリセリン)に置換し、改変型耐熱性PCNAを得た。
PCR増強因子(PCNA)の評価
PCNAの効果を確認するため、KOD−PCNA変異体(M73L、M73L/E143R、M73L/R109A/E143A、M73L/D147A、M73L/R82A/E143A、M73L/E143F、M73L/E143A)を用いて『増幅増強活性の測定方法』に従い、dUTP存在下PCRでの増幅量の違いを、Human β−グロビンの1.3kbを増幅することで比較した。
PCNAの添加がない場合(レーン8)やPCNAとしてKOD−PCNA M73L変異体を用いた場合(レーン1)では、バンドがわずかに見出されたに過ぎなかったが、他のKOD PCNA変異体を添加した場合は、増幅量が多くなり、より明確なバンドが確認された。
PCNAは多量体を形成し核酸の合成反応を促進するが、通常、RFCの働きなしではDNAにロードできず反応が進まない。M73L/E143R、M73L/E143A、M73L/R109A/E143A、M73L/D147A、M73L/R82A/E143A、M73L/E143Fの改変は、多量体形成に関わる部位への改変であり、適度に多量体形成が弱まったため、PCNAがDNAにロードでき、PCR増幅量を向上させたことが考えられる(図7)。
またPCNAは合成速度を向上させ伸長時間を短縮する作用が以前報告されていたが、合成速度の向上は、ウラシルと結合ポケットが相互作用する時間を短くし、ウラシルの検出活性を弱める働きがあることが考えられる。
PCNA添加による合成速度の比較
KOD V93K変異体に様々なPCNA変異体を添加し、合成速度を測定した。KOD V93Kは、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)で希釈し用いた。また、PCNA変異体は各反応系に250ng添加し、合成速度を測定した。
試薬・方法は、前述の(8)に記載の<DNAポリメラーゼ合成速度測定法>に従い実施した。
dUTP存在下のPCRにおける血液からの増幅、PCNA添加の影響
血液耐性の評価にPCNAを加えて影響を確認した。比較には、1Uあたり0.8μgのKOD抗体と混合したKOD(野生型)とKOD Y7A/V93K変異体とKOD Y7A/P36H/N210D変異体、抗体を混合したTaq DNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ(Toyobo社製)とAnti−Taq High(Toyobo社製)を等量混合したもの)を用い、PCNA D147A変異体を250ng添加し、HBgの482bpのPCRを行い増幅の違いを比較した。
上記と同様、KODのPCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO4、15pmolのプライマー(配列番号19および20)、抗体と混合した1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、通常のdNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)を0.2mM添加したものと、dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)を0.2mMになるよう添加したものをそれぞれ用い、各反応液にKOD−PCNA M73L/D147A変異体を250ng添加した。鋳型には血液そのもの、および血液を水で希釈したものを用いた。94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、10秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてPCRを行った。
Taq DNAポリメラーゼのPCRは、1×BlendTaqに添付のBuffer(Toyobo製品)、10pmolのプライマー(上記と同様)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液中に、通常のdNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)を0.2mM添加したものと、dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)を0.2mMになるよう添加したものをそれぞれ用い、鋳型には血液そのもの、および血液を水で希釈したものを用いた。94℃、2分の前反応の後、94℃、30秒→65℃、30秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてPCRを行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
結果、PCNAはファミリーBに属するポリメラーゼのPIPモチーフとよばれる部位に結合することが知られている。TaqなどのファミリーAに属するポリメラーゼはPIPモチーフを持たないため、PCNAを添加しても影響は見られなかった(図9)。
一方、減少した塩基類似体検出活性を有するKOD Y7A/V93K、KOD Y7A/P36H/N210D変異体ではPCNAを添加するとより濃い血液まで反応が起こることがわかった。
またPCNAを添加したKOD Y7A/P36H/N210D、PCNAを添加したKOD Y7A/V93Kの合成速度が高い順に増幅量が向上しており、やはり合成速度がdUTP存在下でのPCRでは重要と考えられる。
dUTP存在下で体組織(爪、髪、口腔粘膜)からのPCR
爪や髪、口腔粘膜を鋳型に、dUTP存在下でPCRができるかを検討した。爪は爪きりで切断した一片を、髪は1本を、50mM NaOH180μlに添加し、95℃10分の熱処理で破砕を行い、その後、1M Tris−HCl(pH8.0)20μlを加え中和した上清を鋳型として用いた。口腔粘膜は綿棒で採取した粘膜を200μlの水に懸濁したものを鋳型として用いた。
酵素には1Uあたり0.8μgのKOD抗体と混合したKOD(野生型)とKOD Y7A/V93K変異体とKOD Y7A/P36H/N210D変異体、抗体を混合したTaq DNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ(Toyobo社製)とAnti−Taq High(Toyobo社製)を等量混合したもの)を用い、HBgの482bpのPCRを行い増幅の違いを比較した。
上記と同様、KODのPCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO4、15pmolのプライマー(配列番号19および20)、抗体と混合した1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、通常のdNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)を0.2mM添加したものと、dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)を0.2mMになるよう添加したものをそれぞれ用い、鋳型には上記サンプル1μlを用いた。また、各反応液にPCR増強因子であるKOD−PCNA E143R変異体を250ng添加したものも実施した。94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、10秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてPCRを行った。
Taq DNAポリメラーゼのPCRは、1×BlendTaqに添付のBuffer(Toyobo製品)、10pmolのプライマー(上記と同様)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液中に、通常のdNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)を0.2mM添加したものと、dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)を0.2mMになるよう添加したものをそれぞれ用い、鋳型には上記サンプル1μlを用いた。また、各反応液にPCR増強因子であるKOD−PCNA M73L/E143R変異体を250ng添加したものも実施した。94℃、2分の前反応の後、94℃、30秒→65℃、30秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いてPCRを行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
結果、Taq DNAポリメラーゼ、野生型のKOD DNAポリメラーゼはdUTP存在下でほとんど増幅が確認されないところ、KOD Y7A/V93KやKOD Y7A/P36H/N210D変異体ではdUTP存在下でもしっかりしたバンドが確認された(図10)。またPCNAを添加した反応液の方が増幅量が多い結果となった。
KODの他の変異体(P36H、P36K、P36R、V93K、V93R、Y7A/P36H、Y7A/P36R、Y7A/V93R、P36H/H147E、P36K/H147E、P36R/H147E、V93K/H147E、V93R/H147E、Y7A/P36H/H147E、Y7A/P36R/H147E、Y7A/V93K/H147E、Y7A/V93R/H147E、P36H/N210D、P36K/N210D、P36R/N210D、V93K/N210D、V93R/N210D、Y7A/P36R/N210D、Y7A/V93K/N210D、Y7A/V93R/N210D、P36H/I142R、P36R/I142R、V93K/I142R、V93R/I142R、Y7A/P36H/I142R、Y7A/P36R/I142R、P36H/D141A/E143A、P36R/D141A/E143A、V93K/D141A/E143A、V93R/D141A/E143A、Y7A/P36H/D141A/E143A、Y7A/P36R/D141A/E143A)でも同様の反応条件で、体組織(爪、髪、口腔粘膜)からの増幅を確認し、dUTP存在下でもしっかりとしたバンドが確認できた。またこれらに、KOD−PCNA変異体(M73L/D147A、M73L/R109A/E143A、M73L/E143R)、Pfu−PCNA変異体(M73L/D143R)を添加すると、上記と同様、増幅量の向上が確認できた。
植物ライセートからの増幅
dUTPを含むPCR反応系で植物ライセートからの増幅を実施した。
比較には、KOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼを用い、rbcL 1.3kbの増幅量の違いを比較した。KOD Y7A/P36H/N210D変異体にはPCR増強因子としてKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したものも実施した。
KOD Y7A/P36H/N210DのPCRは、KOD −Plus− Ver.2(Toyobo社製)添付のBuffer、MgSO4を用い、1×PCR Buffer、および1.5mM MgSO4、15pmolのプライマー(配列番号25および26)、 2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP) 、KOD抗体と混合した1Uの酵素を含む50μlの反応液中に、植物ライセートを反応液に対して2%になるように加え、94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃ 30秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。KOD−PCNA M73L/D147Aは上記反応系に250ng加え、PCNAなしのものと比較した。
Taq DNAポリメラーゼはToyobo社製のものを用い、Anti−Taq High(Toyobo社製)と混合したものを用いた。反応は1×BlendTaqに添付のBuffer、10pmolのプライマー(上記と同様)、 2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液中に、植物ライセートを反応液に対して2%になるように加え、94℃、2分の前反応の後、94℃、30秒→65℃、30秒→68℃、1、5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
各写真の1はTaqポリメラーゼの結果を、2はKOD Y7A/P36H/N210Dの結果を、3はKOD Y7A/P36H/N210DにKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したものの結果を示す。
結果、KOD Y7A/P36H/N210Dでは未精製の植物ライセートからでも増幅が確認された。さらにPCNAの変異体を添加したものは、添加なしのものより増幅量が多いしっかりしたバンドが確認された。
一方、Taqポリメラーゼでは植物ライセートから直接増幅することはできなかった(図11)。
糞便からの増幅
dUTP、糞便存在下で遺伝子増幅ができるかを評価した。
酵素には、KOD Y7A/P36H/N210D変異体、Taqポリメラーゼを用い、サルモネラのinvA遺伝子約700bpの増幅の違いをSYBR GREEN Iを用いたリアルタイムPCR、および融解曲線で比較した。KOD Y7A/P36H/N210D変異体にはPCR増強因子としてKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したものも実施した。
KOD Y7A/P36H/N210DのPCRは、KOD Dash(Toyobo社製)添付のBufferを用い、1×PCR Buffer、50コピーのサルモネラゲノム、4pmolのプライマー(配列番号27および28)、 2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP) 、1/30000 SYBR GREEN I、KOD抗体と混合した0.4Uの酵素を含む20μlの反応液中に、糞便を反応液に対して0、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5%になるように加え、95℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃ 10秒→68℃、30秒を50サイクル繰り返すスケジュールでLightCycler2.0(Roche社)を用いて行った。KOD−PCNA M73L/D147Aは上記反応系に100ng加え、PCNAなしのものと比較した。
Taq DNAポリメラーゼはToyobo社製のものを用い、Anti−Taq High(Toyobo社製)と混合したものを用いた。反応は1×Taqに添付のBuffer(Mg別添タイプ)、50コピーのサルモネラゲノム、4pmolのプライマー(上記と同様)、 2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、4mM MgSO4、1/30000 SYBR GREEN I、抗体と混合した1Uの酵素を含む20μlの反応液中に、糞便を反応液に対して0、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5%になるように加え、95℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→60℃ 10秒→68℃、30秒を50サイクル繰り返すスケジュールでLightCycler2.0(Roche社)を用いて行った。
それぞれ、反応終了後、融解曲線解析にて、80℃後半に出現する目的ピークを確認した。
結果、Taqポリメラーゼでは0.5%の糞便を添加すると増幅が見られなくなるところ、KOD Y7A/P36H/N210Dでは2.5%の糞便を添加しても増幅が確認された。また、PCNAありなしを比較すると、PCNAを添加したものの方が、Cq値が小さく、優れたPCR効率を示していることがわかった。
1はKOD Y7A/P36H/N210Dの結果を、2はKOD Y7A/P36H/N210DにKOD−PCNA M73L/D147Aを添加したものの結果を、3はTaqポリメラーゼの結果を示す。
結果、KOD Y7A/P36H/N210DではdUTP、糞便存在下からでも増幅が確認され、糞便の添加でピークは低くなるものの、2.5%を添加しても、目的ピークを確認することができた。PCNAを添加したものでも同様に、2.5%の添加でも目的ピークを確認することができた。しかし、Taqポリメラーゼでは0.25%の添加で目的ピークが消失しており、糞便の影響で阻害を受けたことが示唆された(図12)。
dUTPを含む反応液を用いたPCNA添加による血液からの増幅
図9と同様、dUTPを含むPCR反応系でもPCNAの添加でクルード(血液)耐性が向上するかを評価した。
酵素には、KOD Y7A/P36H/N210D、Taqポリメラーゼを用い、HBgの1.3kbの増幅量の違いを比較した。KOD変異体にはPfu−PCNA M73L/D147A添加したものも実施した。
Taq DNAポリメラーゼのPCRは、1×BlendTaqに添付のBuffer(Toyobo製品)、10pmolのプライマー(上記と同様)、2mM dTTPをdUTPに置換したdNTPs(dATP、dUTP,dCTP、dGTP)、抗体と混合した2.5Uの酵素を含む50μlの反応液中に、血液を反応液に対して2%になるように加えたものを用いた。
反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社)を用いて行った。
反応終了後、5μlの反応液についてアガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下増幅DNA断片の増幅量を確認した。
結果、本発明のポリメラーゼを用いれば、1.3kbと比較的長い増幅でも血液成分が含まれるクルードな条件から増幅できることが示された。またPCNAの変異体を添加したものは添加していないものと比べしっかりしたバンドが確認された(図13)。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
Claims (18)
- 精製工程を経ていない生体試料を核酸増幅反応液に添加し、生体試料中の標的核酸を増幅する方法であって、増幅に用いられる酵素がファミリーBに属するDNAポリメラーゼであり、かつデオキシウリジン(dUTP)を反応液中に含んでいることを特徴とする核酸増幅法。
- 生体試料が、動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、ウイルスのいずれかである請求項1に記載の核酸増幅法。
- 核酸増幅に用いられる酵素が、減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である、請求項1または2に記載の核酸増幅法。
- 核酸増幅に用いられる酵素が、30塩基/秒以上のDNA合成速度を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 古細菌DNAポリメラーゼ変異体が、以下の(a)から(c)のいずれかで示されるものであることを特徴とする、請求項3または4に記載の核酸増幅法。
(a)配列番号1または配列番号2(Pfuの野生型配列に相当)で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90〜97および112〜119番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列である。
(b)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列が(a)で示されるアミノ酸配列と80%以上同一であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列である。
(c)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列が(a)で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列である。 - 古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、36、93番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する、請求項3〜5のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36RまたはP36Hのいずれかの改変を有する、請求項3〜6のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、Y7A/V93K、Y7A/P36HまたはP36Hのいずれかの改変を有する、請求項3〜7のいずれかに記載の核酸増幅法。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼがさらに3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域を構成するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の核酸増幅法。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域への改変が、配列番号1または配列番号2における、D141、I142、E143、H147、N210及びY311に相当するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の核酸増幅法。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域への改変が、配列番号1または配列番号2における、D141A/E143A、I142R、H147E、H147D、N210DまたはY311Fのいずれかである請求項1〜10のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 古細菌DNAポリメラーゼの変異体が、配列番号1または配列番号2において、以下の(1)−(4)のいずれかの改変を有する、請求項3〜11のいずれかに記載の核酸増幅法。
(1)(A)H147Eと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36R、P36H、V93RまたはV93Qのいずれか
(2)(A)N210Dと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36K、P36R、P36H、V93Q、V93KまたはV93Rのいずれか
(3)(A)I142Rと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H、V93K、V93RまたはV93Qのいずれか
(4)(A)D141A/E143Aと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36HまたはV93Kのいずれか - さらにPCNAを前記反応液に含む請求項1〜12のいずれかに記載の核酸増幅法。
- PCNAが単独でDNAにロードする変異体である、請求項1〜13のいずれかに記載の核酸増幅法。
- PCNAが、配列番号21または配列番号22で示されるアミノ酸配列の(a)82、84、109番目に相当するアミノ酸からなるN末端領域、および(b)139、143、147番目に相当するアミノ酸からなるC末端領域のうち、少なくともひとつの改変を有する変異体である、請求項1〜14のいずれかに記載の核酸増幅法。
- PCNAが配列番号21または配列番号22における143番目に相当するアミノ酸を塩基性アミノ酸に改変したもの、または、82番目と143番目に相当するアミノ酸を共に中性アミノ酸に改変したもの、147番目に相当するアミノ酸を中性アミノ酸に改変したもの、109番目と143番目に相当するアミノ酸を共に中性アミノ酸に改変したもののいずれかの変異体である、請求項1〜15のいずれかに記載の核酸増幅法。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の核酸増幅法を実行するための試薬。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の核酸増幅法を実行するための試薬を含むキット。
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