本発明の繊維強化複合体の製造方法は、型内発泡粒子を熱融着一体化させてなる芯材と、この芯材の表面に積層一体化された上下繊維強化プラスチック層とを含む繊維強化複合体を上下金型を用いて製造する製造方法であって、強化用合成樹脂が含浸された強化繊維を含む下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な温度に加熱する下側形成材加熱工程と、上記加熱前後又は加熱中の上記下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又発泡性粒子を載置する粒子載置工程と、上記下側繊維強化プラスチック層形成材を上記下側金型に沿って仮賦形する仮賦形工程とを有していることを特徴とする。
先ず、強化用合成樹脂が含浸された強化繊維を含む下側繊維強化プラスチック層形成材1を仮賦形可能な温度に加熱する下側形成材加熱工程を行う。本発明において用いられる繊維強化プラスチック層形成材は予め賦形されていない。なお、後述する粒子載置工程を下側形成材加熱工程の前後に行ってもよいし、下側形成材加熱工程と同時に行ってもよい。
強化用合成樹脂が含浸された強化繊維を含む下側繊維強化プラスチック層形成材1について説明する。なお、後述する上側繊維強化プラスチック層形成材は、下側繊維強化プラスチック層形成材と同様の構成を有するのでここで併せて説明し、以下では、上下繊維強化プラスチック層形成材を併せて単に「繊維強化プラスチック層形成材」という。なお、上側繊維強化プラスチック層形成材と、下側繊維強化プラスチック層形成材とは、互いに同一の材料であってもよいし異なる材料であってもよい。
繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的強度を有している。
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
強化繊維基材は、積層せずに一枚の強化繊維基材のみを用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
繊維強化プラスチック層形成材は、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させてなるものである。含浸させた強化用合成樹脂によって、強化繊維同士を結着一体化させることができる。強化繊維に含浸させる強化用合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
又、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、芯材との接着性又は繊維強化プラスチック層形成材を構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
繊維強化プラスチック層形成材中における強化用合成樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。強化用合成樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維同士の結着性や、繊維強化プラスチック層と芯材との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチック層の機械的強度や、繊維強化複合体の機械的強度又は衝撃吸収性を十分に向上させることができない虞れがある。又、強化用合成樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化プラスチック層の機械的強度が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。
繊維強化プラスチック層形成材の厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みが上記範囲内である繊維強化プラスチック層形成材は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
繊維強化プラスチック層形成材の目付は、50〜4000g/m2が好ましく、100〜1000g/m2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化プラスチック層は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
繊維強化プラスチック層形成材1、5には、図1に示したように、後述する仮賦形工程において、繊維強化プラスチック層形成材が金型に沿って円滑に且つ正確に仮賦形(熱成形)されるように切り込み部11、51を形成しておいてもよい。図1においては、平面矩形状の繊維強化プラスチック層形成材の四方角部に切り込み部11、51を形成した場合を示したが、これに限定されるものではなく、繊維強化プラスチック層形成材の仮賦形後の形状に合わせて適宜、位置及び形状を変更すればよい。
仮賦形可能な温度とは、繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が仮賦形可能となる温度のことをいう。仮賦形可能な温度は、繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が熱硬化性樹脂である場合を発熱ピーク温度、非晶性熱可塑性樹脂である場合をガラス転移温度、結晶性熱可塑性樹脂である場合を発熱ピーク温度とする。
繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂に熱硬化性樹脂が含まれている場合、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、低すぎると、発泡粒子又は発泡性粒子の発泡不足によって、繊維強化プラスチック層形成材と芯材とが一体化されないことがあり、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがあり、所望形状の繊維強化複合体を得ることができないことがあるので、120〜180℃が好ましく、130〜150℃がより好ましい。
繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂に熱硬化性樹脂が含まれている場合、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、低すぎると、発泡粒子又は発泡性粒子の発泡不足によって、繊維強化プラスチック層形成材と芯材とが一体化されないことがあり、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがあり、所望形状の繊維強化複合体を得ることができないことがあるので、90〜140℃が好ましく、100〜130℃がより好ましい。
繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂に熱可塑性樹脂が含まれている場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、低すぎると、発泡粒子又は発泡性粒子の発泡不足によって、繊維強化プラスチック層形成材と芯材とが一体化されないことがあり、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがあり、所望形状の繊維強化複合体を得ることができないことがあるので、70〜160℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。
本発明において、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は下記の要領で測定された温度をいう。熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する場合には熱硬化性樹脂を予め硬化させる必要がある。熱硬化性樹脂の硬化温度はJIS K7121:1987において測定される発熱ピーク温度±10℃が目安とされる。熱硬化性樹脂の硬化時間は60分間が目安とされ、硬化後の熱硬化性樹脂の発熱ピークをJIS K7121:1987に準拠して測定した際に、発熱ピークが観察されなければ、硬化が完了されたとみなせ、この硬化後の熱硬化性樹脂を用いて、後述する要領で熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する。なお、上述した熱硬化性樹脂の硬化温度の目安となる発熱ピーク温度の詳細な測定方法は、下記の通りである。熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下の要領で行う。示差走査熱量計装置を用いてアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、基準物質としてアルミナを用い、試料を30℃から220℃まで速度5℃/分で昇温させる。本発明において、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度とは1回目昇温時のピークトップの温度を読みとった値である。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121(1987)「プラスチックの転移温度測定方法」における規格9.3「ガラス転移温度の求め方」に準拠して測定された温度とする。具体的には、ガラス転移温度を測定する、硬化後の熱硬化性樹脂6mgを試料として採取する。示差走査熱量計装置を用い、装置内で流量20mL/分の窒素ガス流の下、試料を20℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温して200℃にて試料を10分間に亘って保持する。その後、試料を装置から速やかに取出して25±10℃まで冷却した後、装置内で、流量20mL/分の窒素ガス流の下、20℃/分の昇温速度で試料を200℃まで再度、昇温した時に得られるDSC曲線よりガラス転移温度(中間点)を算出する。測定においては基準物質としてアルミナを用いる。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
本発明において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度及び発熱ピーク温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下のように行う。示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、試料を30℃から−40℃まで降温した後に10分間に亘って保持した後、試料を−40℃から290℃まで昇温(1st Heating)し290℃に10分間に亘って保持した後に290℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間に亘って保持した後に−40℃から290℃まで昇温(2nd Heating)した時に得られるDSC曲線より算出する。なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。得られた曲線の変曲点をガラス転移温度とし、発熱ピークトップの温度を発熱ピーク温度とする。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
上述の如き構成を有している下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な温度に加熱する。この下側形成材加熱工程において、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した、後述する発泡粒子又は発泡性粒子が発泡しないように加熱温度を制御する必要がある。なお、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、下側繊維強化プラスチック層形成材の表面温度をいう。
下側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂に熱硬化性樹脂が含まれている場合、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、低すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下して、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、高すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が開始してしまい、下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下し、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形できない虞れや、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがある。従って、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、(下側繊維強化プラスチック層形成材中の熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度−50℃)〜(下側繊維強化プラスチック層形成材中の熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度+50℃)が好ましい。
下側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂に非晶性熱可塑性樹脂が含まれている場合、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、低すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下して、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがある。従って、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、(下側繊維強化プラスチック層形成材中の非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度−40℃)〜(下側繊維強化プラスチック層形成材中の非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度+40℃)が好ましい。
下側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂に結晶性熱可塑性樹脂が含まれている場合、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、低すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下して、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがある。従って、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱温度は、(下側繊維強化プラスチック層形成材中の結晶性熱可塑性樹脂の発熱ピーク温度−40℃)〜(下側繊維強化プラスチック層形成材中の結晶性熱可塑性樹脂の発熱ピーク温度+40℃)が好ましい。
下側形成材加熱工程においては、下側繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂を軟化させるが、強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、未硬化の熱硬化性樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とする。熱硬化性樹脂は、加熱によって熱硬化する前に流動性を有する状態となるので、後述する仮賦形工程において、上記流動性を有する状態を維持するように温度制御する。強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。
下側形成材加熱工程において、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱方法としては、(1)下側繊維強化プラスチック層形成材を赤外線ヒータなどの汎用の加熱手段を用いて加熱する方法、(2)下側金型を加熱し、下側金型によって下側繊維強化プラスチック層形成材を加熱する方法などが挙げられる。なお、上記(2)の方法の場合は、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型上に載置した後、下側金型を加熱して下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型によって加熱するか、又は、予め下側金型を加熱した後、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型上に載置し、下側金型によって下側繊維強化プラスチック層形成材を加熱すればよい。下側繊維強化プラスチック層形成材は下側金型上に直接、載置することが好ましい。
下側金型によって下側繊維強化プラスチック層形成材を加熱する場合、下側金型の加熱温度は、下側繊維強化プラスチック層形成材が上述の温度範囲となるように調整されていればよい。
下側金型によって下側繊維強化プラスチック層形成材を加熱すると、下側繊維強化プラスチック層形成材が下側金型によって冷却されることを防止して、後述する下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形できると共に、下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な状態で下側金型上に移動させる必要がなくなり、下側繊維強化プラスチック層形成材が移動中に不測に変形することを防止することができ、更に、別途、加熱装置を用意する必要がなくなり、製造設備の省スペース化及びコストダウンを図ることができ好ましい。
上記加熱前後又は加熱中であって下側金型に沿って仮賦形する前の下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又発泡性粒子を載置する。即ち、上記下側形成材加熱工程の前、下側形成材加熱工程の後、又は、下側形成材加熱工程中であって、後述する仮賦形工程の前に、下側繊維強化プラスチック層形成材1上に発泡粒子又は発泡性粒子2を載置する粒子載置工程を行う(図2参照)。粒子載置工程は、下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又は発泡性粒子を載置する工程である。粒子載置工程は、下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な温度に加熱する前、加熱した後、又は、加熱途上に行われるが、下側繊維強化プラスチック層形成材中の軟化した強化用合成樹脂の接着作用によって下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又は発泡性粒子を安定的に載置させることができるので、下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な温度に加熱した後、又は、下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な温度に加熱途上に行われることが好ましく、発泡粒子又は発泡性粒子の不測の発泡を防止しながら、下側繊維強化プラスチック層形成材の加熱を行うことができ、製造時間の短縮を図ることができることから、下側繊維強化プラスチック層形成材を仮賦形可能な温度に加熱する途上に行われることがより好ましい。
下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又は発泡性粒子を載置する方法としては、下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又は発泡性粒子を安定的に載置できる方法であれば、特に限定されず、例えば、下側繊維強化プラスチック層形成材の外周縁部を上方に屈曲させた上で、下側繊維強化プラスチック層形成材上に発泡粒子又は発泡性粒子を載置する方法などが挙げられる。
下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置する、発泡粒子又は発泡性粒子の量は、少なすぎると、後述する発泡成形工程において、発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させて得られる型内発泡粒子同士の一体化が不十分となり、又は、得られる繊維強化複合体における芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となって、繊維強化複合体の機械的強度又は衝撃吸収性が低下することがある。従って、発泡粒子又は発泡性粒子の量は、粒子の発泡後充填係数が1.5以上となるように調整することが好ましく、粒子の発泡後充填係数が2以上となるように調整することがより好ましい。一方、発泡粒子又は発泡性粒子の量は、多すぎると、得られる繊維強化複合体において芯材の重量が重くなり、繊維強化複合体の軽量性が低下する虞れがあるので、粒子の発泡後充填係数が3以下となるように調整することが好ましい。
ここで、粒子の発泡後充填係数は下記の要領で算出される。先ず、粒子充填率を下記式に基づいて算出する。
粒子充填率(%)
=100×(型内発泡前の発泡粒子又は発泡性粒子全体のかさ体積)
/(上下金型を完全に型締めして得られるキャビティの内容積)
次に、発泡粒子又は発泡性粒子の10分加熱後発泡率を算出する。先ず、かさ体積50cm3に相当する発泡粒子又は発泡性粒子を試料として秤量する。試料を予め発泡粒子又は発泡性粒子の型内発泡時の上下金型温度のうちの高い方の温度に加熱にされたオーブン中に10分間に亘って放置して発泡させて発泡後粒子を得た後、発泡後粒子のかさ体積を測定し、下記式に基づいて、発泡粒子又は発泡性粒子の10分加熱後発泡率を算出する。なお、かさ体積は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した値をいう。
発泡粒子又は発泡性粒子の10分加熱後発泡率(%)
=100×(発泡後粒子のかさ体積−50)/50
粒子の発泡後充填係数は下記式に基づいて算出される。
粒子の発泡後充填係数=(発泡粒子又は発泡性粒子の10分加熱後発泡率)
×(粒子充填率)/10000
又、下側繊維強化プラスチック層形成材と、発泡粒子又は発泡性粒子との間に接着性樹脂3を介在させておいてもよい。下側繊維強化プラスチック層形成材と、発泡粒子又は発泡性粒子との間に接着性樹脂を介在させることによって、後述する発泡成形工程時、下側繊維強化プラスチック層形成材と、発泡粒子又は発泡性粒子との間に接着性樹脂が層状に存在した状態となり、下側繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が発泡粒子又は発泡性粒子側に移行するのを防止することができる。その結果、下側繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が下側繊維強化プラスチック層形成材の表面、即ち、得られる繊維強化複合体の繊維強化プラスチック層の表面に強化用合成樹脂が滲出するのを助長し、繊維強化複合体の表面平滑性を向上させることができる。又、発泡粒子又は発泡性粒子を発泡させて得られる芯材と繊維強化プラスチック層との一体化をより強固にすることができ、得られる繊維強化複合体はより優れた機械的強度を有する。なお、図2では、下側繊維強化プラスチック層形成材1と発泡粒子又は発泡性粒子2との間に接着性樹脂3を介在させた場合を示したが、接着性樹脂3を介在させることなく、下側繊維強化プラスチック層形成材1上に直接、発泡粒子又は発泡性粒子2を載置してもよい。
接着性樹脂の形態は、特に限定されず、フィルム状であっても粒子状であってもよいが、下側繊維強化プラスチック層形成材と、発泡粒子又は発泡性粒子との間に、接着性樹脂による層をより確実に形成することができることから、接着性樹脂の形態は、フィルム状であることが好ましい。
接着性樹脂としては、芯材と繊維強化プラスチック層とを一体化させることができれば、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルムなどの熱可塑性樹脂が挙げられ、得られる繊維強化複合体の機械的強度に優れていることから、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましい。なお、接着性樹脂としては、例えば、GH−CRAFT社から商品名「NB−102HC50−0.06」にて市販されている熱硬化性エポキシ樹脂(硬化温度:130℃)などが挙げられる。
接着性樹脂が熱硬化性樹脂の場合、接着性樹脂の発熱ピーク温度は、低すぎると、加熱、成形時に接着性樹脂のみが先に硬化し、芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となることがあり、高すぎると、加熱、成形時に接着性樹脂が硬化せず、芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となることがあるので、(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度−30℃)〜(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度+30℃)が好ましく、(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度−10℃)〜(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度+10℃)が好ましい。
接着性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂の場合、接着性樹脂のガラス転移温度は、低すぎると、加熱、成形時に、接着性樹脂の流動性が必要以上に高くなり、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維間に接着性樹脂が漏れてしまい、芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となることがあり、高すぎると、加熱、成形時に接着性樹脂が溶融せず、芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となることがあるので、(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂のガラス転移温度−30℃)〜(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂のガラス転移温度+30℃)が好ましく、(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂のガラス転移温度−10℃)〜(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂のガラス転移温度+10℃)が好ましい。
接着性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂の場合、接着性樹脂の発熱ピーク温度は、低すぎると、加熱、成形時に、接着性樹脂の流動性が必要以上に高くなり、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維間に接着性樹脂が漏れてしまい、芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となることがあり、高すぎると、加熱、成形時に接着性樹脂が結晶化せず、芯材と繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となることがあるので、(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度−30℃)〜(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度+30℃)が好ましく、(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度−10℃)〜(繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度+10℃)が好ましい。
上記発泡粒子又は発泡性粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から熱可塑性樹脂押出物を押出発泡させながら切断した後に冷却して発泡粒子を製造する方法、(2)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出発泡してストランド状の熱可塑性樹脂押出物を製造し、この熱可塑性樹脂押出物を所定間隔毎に切断して発泡粒子を製造する方法、(3)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出発泡して発泡シートを製造し、この発泡シートを切断することによって発泡粒子を製造する方法、(4)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して物理発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から熱可塑性樹脂押出物を押出し、切断しながら冷却して発泡粒子又は発泡性粒子を製造する方法、(5)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して溶融混練して押出機に取り付けたノズル金型から押出してストランド状の熱可塑性樹脂押出物を製造し、この熱可塑性樹脂押出物を所定間隔毎に切断して粒子を製造し、この粒子に公知の要領で発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造して、この発泡性粒子を予備発泡させて発泡粒子を製造する方法、(6)熱可塑性樹脂を押出機内に供給して溶融混練して押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出してシートを製造し、このシートを切断することによって粒子を製造し、この粒子に公知の要領で発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造して、この発泡性粒子を予備発泡させて発泡粒子を製造する方法、(7)公知の要領で熱可塑性樹脂からなる粒子を製造し、この粒子に公知の要領で発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造して、この発泡性粒子を予備発泡させて型内発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
又、発泡性粒子の製造方法としては、例えば、上記(5)、(6)又は(7)の方法において、予備発泡させる工程をしなければよい。
物理発泡剤は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
粒子に発泡剤を含浸させる方法としては、例えば、耐圧密閉容器中に水と粒子とを供給し、粒子を水中に分散させた後、耐圧密閉容器中に物理発泡剤を圧入して、粒子に加圧された物理発泡剤を接触させて、粒子に発泡剤を含浸させる方法などが挙げられる。
発泡粒子又は発泡性粒子を構成している熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられ、繊維強化材に含浸されている熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂との接着性に優れていることから、熱可塑性ポリエステル樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸と二価アルコールとが、縮合反応を行った結果得られた高分子量の線状ポリエステルである。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、芳香族ポリエステル樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
又、芳香族ポリエステル樹脂は、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル材料を用いることもできる。
ポリエチレンテレフタレートは架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリエチレンテレフタレートを架橋剤によって架橋する場合には、押出機にポリエチレンテレフタレートと共に架橋剤を供給すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、少なすぎると、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が小さくなりすぎて、破泡してしまうことがあり、多すぎると、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が大きくなりすぎて、押出発泡が困難となることがあるので、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸がエステル結合により重合した樹脂を用いることができ、商業的な入手容易性及びポリ乳酸系樹脂発泡粒子への発泡性付与の観点から、D−乳酸(D体)及びL−乳酸(L体)の共重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選択される1又は2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、発泡成形工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、乳酸以外の単量体成分として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などの脂肪族多価カルボン酸;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの脂肪族多価アルコールなどを含有していてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、仮賦形工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、アルキル基、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基などのその他の官能基を含んでいてもよい。ポリ乳酸系樹脂はイソシアネート系架橋剤などによって架橋されていてもよく、エステル結合以外の結合手により結合していてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、ポリフェニレンエーテルにスチレン系モノマーをグラフト共重合してなる変性ポリフェニレンエーテル、この変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、フェノール系モノマーとスチレン系モノマーとを銅(II) のアミン錯体などの触媒存在下で酸化重合させて得られるブロック共重合体、このブロック共重合体とポリスチレン系樹脂との混合物などが挙げられる。なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2、6−ジメチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジエチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジクロロフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジ−n−プロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−ブロモ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)などが挙げられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂の重合度は、通常、10〜5000のものが用いられる。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーを重合させることによって製造される。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの何れか一方又は双方を意味する。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
又、アクリル系樹脂は、上記(メタ)アクリル系モノマー以外にこれと共重合可能なモノマー成分を含有していてもよい。このようなモノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系モノマーをモノマー単位として含む単独重合体又は共重合体、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能な一種又は二種以上のビニルモノマーとをモノマー単位として含む共重合体などが挙げられ、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能な一種又は二種以上のビニルモノマーとをモノマー単位として含む共重合体が好ましく、メタクリル酸及び/又はメタクリル酸メチルと、スチレン系モノマーとをモノマー単位として含む共重合体がより好ましい。なお、ポリスチレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなど)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)などのアクリル系モノマー、無水マレイン酸、アクリルアミドなどが挙げられ、アクリル系モノマーが好ましく、メタクリル酸、メタクリル酸メチルを含むことがより好ましく、メタクリル酸、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
発泡粒子又は発泡性粒子を構成している熱可塑性樹脂のガラス転移温度と、繊維強化プラスチック層形成材の強化用合成樹脂のガラス転移温度との差は、大きすぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始してしまい、所望形状を有する繊維強化複合体を製造することができず、又は、発泡粒子又は発泡性粒子の発泡不足によって、繊維強化プラスチック層形成材と芯材とが一体化されないことがあるので、60℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
次に、図3に示したように、下側繊維強化プラスチック層形成材1を下側金型4に沿って仮賦形する仮賦形工程を行う。本発明においては、下側繊維強化プラスチック層形成材1上に発泡粒子又は発泡性粒子2が載置されており、これら粒子の重量を利用して、仮賦形可能な温度に加熱された下側繊維強化プラスチック層形成材1を下側金型4に沿って仮賦形してもよいし、又は、下側繊維強化プラスチック層形成材1を下側金型4に向かって吸引することによって、下側繊維強化プラスチック層形成材1を下側金型4に沿って仮賦形してもよいが、粒子2の重量を利用しつつ下側繊維強化プラスチック層形成材1を下側金型4に向かって吸引することによって下側繊維強化プラスチック層形成材1を下側金型4に沿って仮賦形することが好ましい。
又、仮賦形工程において、下側繊維強化プラスチック層形成材1は何ら把持されていないことが好ましく、このように、下側繊維強化プラスチック層形成材が何ら把持されていないことで、下側繊維強化プラスチック層形成材の仮賦形を円滑に行って所望形状に仮賦形することができる。
仮賦形工程において、下側金型4は加熱されていることが好ましい。下側金型4が加熱されていることによって、仮賦形可能な温度に加熱された下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性を良好な状態に維持することができる。下側金型4の加熱温度は、低すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材を冷却してしまい、下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下して、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。下側金型4の加熱温度は、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂が熱硬化性樹脂の場合、熱硬化性樹脂の硬化が開始してしまい、下側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下し、下側繊維強化プラスチック層形成材を下側金型に沿って円滑に仮賦形できない虞れがある。従って、下側金型4の加熱温度は、(下側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度−10℃)〜(下側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂の発熱ピーク温度+10℃)が好ましい。なお、下側金型の加熱温度は、仮賦形される下側繊維強化プラスチック層形成材と接触する金型表面の温度、即ち、金型のキャビティ形成面の表面温度をいう。金型のキャビティ形成面とは、上下金型を型締めした時に形成されるキャビティの表面を構成している面をいう。
本発明の繊維強化複合体の製造方法においては、上記工程の後、下記実施態様1又は実施態様2を行うことが好ましいが、これらの実施態様に限定されるものではない。
(実施態様1)
上記発泡粒子又は発泡性粒子上に、強化用合成樹脂が含浸された強化繊維を含む上側繊維強化プラスチック層形成材を載置する上側形成材載置工程と、上記上下金型を型締めして、上記発泡粒子又は発泡性粒子を発泡させて得られる型内発泡粒子を熱融着一体化させて芯材を製造すると共に、上記上下繊維強化プラスチック層形成材を上記上下金型に沿って成形し、上記上下繊維強化プラスチック層形成材を繊維強化プラスチック層として上記芯材に積層一体化させる発泡成形工程。
(実施態様2)
強化用合成樹脂が含浸された強化繊維を含む上側繊維強化プラスチック層形成材を上側金型に沿って仮賦形する仮賦形工程と、上記上下金型を型締めして、上記発泡粒子又は発泡性粒子を発泡させて得られる型内発泡粒子を熱融着一体化させて芯材を製造すると共に、上記上下繊維強化プラスチック層形成材を上記上下金型に沿って成形し、上記上下繊維強化プラスチック層形成材を繊維強化プラスチック層として上記芯材に積層一体化させる発泡成形工程。
図4に示したように、下側繊維強化プラスチック層形成材1上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子2上に、上側繊維強化プラスチック層形成材5を載置する。なお、上述したように、上側繊維強化プラスチック層形成材5の構成は、下側繊維強化プラスチック層形成材1の構成と同様であるのでその説明を省略する。後述する発泡成形工程の前に、上側繊維強化プラスチック層形成材5を上側金型7に沿って予め仮賦形させておき、発泡成形工程の上下金型4、7の型締めによって、上側繊維強化プラスチック層形成材5を発泡粒子又は発泡性粒子上に載置してもよい。
又、下側繊維強化プラスチック層形成材1上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子2と、上側繊維強化プラスチック層形成材5との間に接着性樹脂6を介在させてもよい。上側繊維強化プラスチック層形成材5と、発泡粒子又は発泡性粒子2との間に接着性樹脂を介在させることによって、後述する発泡成形工程時、上側繊維強化プラスチック層形成材と、発泡粒子又は発泡性粒子との間に接着性樹脂を層状に存在させて、上側繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が発泡粒子又は発泡性粒子側に移行するのを防止することができる。その結果、上側繊維強化プラスチック層形成材中の強化用合成樹脂が上側繊維強化プラスチック層形成材の表面、即ち、得られる繊維強化複合体の繊維強化プラスチック層の表面に強化用合成樹脂が滲出するのを助長し、繊維強化複合体の表面平滑性を向上させることができる。又、発泡粒子又は発泡性粒子を発泡させて得られる芯材と繊維強化プラスチック層形成材との一体化をより強固にすることができ、得られる繊維強化複合体はより優れた機械的強度を有する。なお、図4では、発泡粒子又は発泡性粒子2と、上側繊維強化プラスチック層形成材5との間に接着性樹脂6を介在させた場合を示したが、接着性樹脂6を介在させることなく、上側繊維強化プラスチック層形成材5を、発泡粒子又は発泡性粒子2上に直接、載置してもよい。
しかる後、発泡成形工程を行う。発泡成形工程において、はじめに上下金型4、7を型締めする(図5参照)。この上下金型4、7の型締め時に上側金型7が加熱されていると、上側繊維強化プラスチック層形成材5を軟化させ成形性を向上させて上側繊維強化プラスチック層形成材5を上側金型7に沿って円滑に仮賦形させて所望形状を有する繊維強化複合体を製造することができ好ましい。なお、上側繊維強化プラスチック層形成材5は、発泡粒子又は発泡性粒子2上に載置される前に予め汎用の手段によって加熱されて軟化させ仮賦形可能な状態とされていてもよい。
上側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂に熱硬化性樹脂が含まれている場合、上側金型7の加熱温度は、低すぎると、上側繊維強化プラスチック層形成材の成形性を向上させることができず、上側繊維強化プラスチック層形成材を上側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。上側金型7の加熱温度は、高すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が開始してしまい、上側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下し、上側繊維強化プラスチック層形成材を上側金型に沿って円滑に仮賦形できない虞れがある。従って、上側金型7の加熱温度は、(上側繊維強化プラスチック層形成材中の熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度−50℃)〜(上側繊維強化プラスチック層形成材中の熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度+50℃)が好ましい。
上側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂に非晶性熱可塑性樹脂が含まれている場合、上側金型7の加熱温度は、低すぎると、上側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下して、上側繊維強化プラスチック層形成材を上側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。上側金型7の加熱温度は、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがある。従って、上側金型7の加熱温度は、(上側繊維強化プラスチック層形成材中の非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度−30℃)〜(上側繊維強化プラスチック層形成材中の非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度+30℃)が好ましい。
上側繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂に結晶性熱可塑性樹脂が含まれている場合、上側金型7の加熱温度は、低すぎると、上側繊維強化プラスチック層形成材の成形性が低下して、上側繊維強化プラスチック層形成材を上側金型に沿って円滑に仮賦形することができないことがある。上側金型7の加熱温度は、高すぎると、下側繊維強化プラスチック層形成材上に載置した発泡粒子又は発泡性粒子が不測に発泡を開始する虞れがある。従って、上側金型7の加熱温度は、(上側繊維強化プラスチック層形成材中の結晶性熱可塑性樹脂の発熱ピーク温度−30℃)〜(下側繊維強化プラスチック層形成材中の結晶性熱可塑性樹脂の発熱ピーク温度+30℃)が好ましい。
なお、上側金型の加熱温度は、成形される上側繊維強化プラスチック層形成材と接触する金型表面の温度、即ち、金型のキャビティ形成面の表面温度をいう。
発泡成形工程では、上下繊維強化プラスチック層形成材1、5の端部は何ら把持されていないことが好ましく、このように、上下繊維強化プラスチック層形成材が何ら把持されていないことで、上下繊維強化プラスチック層形成材1、5の成形を円滑に行って所望形状に成形することができる。
上下金型4、7を型締めした後、上下金型4、7の加熱によってキャビティ内を加熱して発泡粒子又は発泡性粒子を加熱して型内発泡させる。
上下金型4、7を型締めして形成されたキャビティ8内において、発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させ、型内発泡によって得られる型内発泡粒子同士を粒子の発泡圧力によって互いに熱融着一体化させて芯材A1を形成する。
更に、発泡粒子又は発泡性粒子の発泡圧力によって、上下繊維強化プラスチック層形成材1、5を上下金型4、7に沿って、特に、上側繊維強化プラスチック層形成材5を上側金型7に沿って成形すると共に、上下繊維強化プラスチック層形成材と芯材との間に隙間が生じないように互いに密着させた状態とする。従って、得られる繊維強化複合体は、芯材と繊維強化プラスチック層とが極めて高度に密着した状態で互いに一体化しており、繊維強化複合体は、所望形状を有し且つ優れた機械的強度及び衝撃吸収性を有している。
上下繊維強化プラスチック層形成材1、5に含まれている強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、上下繊維強化プラスチック層形成材1、5を上下金型4、7に沿って成形している間、未硬化の熱硬化性樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とする。強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。
上記では、上下金型4、7を完全に型締めしてから発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させた場合を説明したが、上下金型4、7を完全に型締めすることなくクラックを残した状態で型締めし、この状態で発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させ、しかる後、上下金型4、7を完全に型締めしてもよい。このようにすることによって、型内発泡させた後の発泡粒子又は発泡性粒子を圧縮させて、型内発泡粒子同士の密着性をより向上させることができると共に、上下繊維強化プラスチック層形成材と芯材との間の密着性もより向上させることができ、得られる繊維強化複合体はより機械的強度及び衝撃吸収性に優れている。なお、上下金型をクラックを残した状態で型締めした状態とは、上下金型間に形成されたキャビティ内において発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させた時に、発泡粒子、発泡性粒子、並びに、これら発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させて得られる型内発泡粒子が上下金型のキャビティ外に飛び出さない状態で上下金型が型締めされている状態をいう。本発明において、上下金型4、7がクラックを残した状態で型締めされている状態も「上下金型を型締めした状態」とする。
次に、繊維強化プラスチック層形成材1、5に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されている場合には、繊維強化プラスチック層形成材1、5に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチック層形成材1、5の強化繊維同士を、硬化した熱硬化性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材1、5を繊維強化プラスチック層A2、A2とし、この繊維強化プラスチック層A2、A2を硬化した熱硬化性樹脂によって芯材A1に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造する。
繊維強化プラスチック層形成材1、5に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、発泡粒子又は発泡性粒子を型内発泡させる時の温度と同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために、未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は上昇させることが好ましい。
繊維強化プラスチック層形成材1、5に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、低すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、芯材の気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度−20℃)〜(熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度+20℃)が好ましく、(熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度−10℃)〜(熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度+10℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、強化用合成樹脂に含まれている熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度のうちの最も高い発熱ピーク温度とする。
又、繊維強化プラスチック層形成材1、5に含浸させている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱硬化性樹脂の場合と異なり、上述した硬化工程は必要なく、後述するように冷却することによって熱可塑性樹を固化させて、繊維強化プラスチック層形成材1、5の強化繊維同士を、固化した熱可塑性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層A2、A2とし、この繊維強化プラスチック層A2、A2を、固化した熱可塑性樹脂によって芯材A1に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造する。
次に、繊維強化複合体Aを必要に応じて冷却した後、上下金型4、7を開いて繊維強化複合体Aを取り出して繊維強化複合体Aを得ることができる(図6参照)。繊維強化プラスチック層形成材1、5に含浸させている強化用合成樹脂が非晶性熱可塑性樹脂である場合、繊維強化複合体Aの冷却温度は、強化用合成樹脂のガラス転移温度未満が好ましく、(ガラス転移温度−10℃)以下がより好ましい。繊維強化プラスチック層形成材1、5に含浸させている強化用合成樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である場合、繊維強化複合体Aの冷却温度は、強化用合成樹脂の発熱ピーク温度未満が好ましく、(発熱ピーク温度−10℃)以下がより好ましい。繊維強化複合体Aの冷却温度は、繊維強化複合体の繊維強化プラスチック層の表面温度とする。
得られた繊維強化複合体Aは、熱可塑性樹脂又は硬化した熱硬化性樹脂によって強化繊維同士が結着され且つ上下金型4、7に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層A2、A2が芯材A1の表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されている。
このようにして得られた繊維強化複合体Aは、芯材A1の表面に、熱可塑性樹脂又は硬化した熱硬化性樹脂で強化繊維同士が強固に結着されてなる繊維強化プラスチック層A2、A2が強固に積層一体化されており、優れた機械的強度を有していると共に、一部に発泡体を有していることから軽量性及び衝撃吸収性にも優れている。
繊維強化複合体Aの芯材を構成している型内発泡粒子同士の熱融着率は、低いと、繊維強化複合体の機械的強度又は衝撃吸収性が低下することがあるので、60%以上が好ましい。
なお、繊維強化複合体Aの芯材を構成している型内発泡粒子同士の熱融着率は下記の要領で測定された値をいう。先ず、繊維強化複合体Aの芯材と一体化している繊維強化プラスチック層のみを取り除く。次に、繊維強化複合体Aの繊維強化プラスチック層を除去した芯材に、カッタナイフを用いて深さ約2mmの切込線を入れる。
しかる後、繊維強化複合体Aの芯材を切込線に沿って手で二分割し、この分割断面を目視観察した。そして、試験シートの分割断面において、全部の型内発泡粒子の数(a)と、型内発泡粒子同士が熱融着界面で破断することなく型内発泡粒子自体が破断された発泡粒子の数(b)とを数え、下記式に基づいて熱融着率を算出する。
芯材を構成している型内発泡粒子同士の熱融着率(%)=100×b/a
又、繊維強化複合体Aにおいて、芯材A1と繊維強化プラスチック層A2、A2との接着面積当たりの剥離強度は、低すぎると、繊維強化複合体の機械的強度及び衝撃吸収性が低下することがあるので、0.5N/mm2以上が好ましい。
なお、繊維強化複合体における芯材と繊維強化プラスチック層との接着面積当たりの剥離強度は、下記の要領で測定された値をいう。繊維強化複合体から縦40mm×横20mmの平面長方形状の試験片を切り出す。試験片から芯材の一面に一体化されている繊維強化プラスチック層を剥離、除去する。更に、試験片の芯材のうちの縦方向の半分を繊維強化プラスチック層から除去して試験体を作製する。次に、試験体の繊維強化プラスチック層における芯材が一体化されていない縦方向の端部を治具(A)を用いて把持すると共に、試験体の芯材のみを該芯材の横方向の端面において治具(B)を用いて把持する。しかる後、治具(A)(B)を繊維強化プラスチック層の面方向に沿って互いに離間する方向に100mm/分の試験速度で移動させて試験体を引張り、この過程で測定された最大剥離強度を測定する。引張試験をする前の試験体の繊維強化プラスチック層のうち、芯材が一体化されている部分の面積Sを測定し、最大剥離強度を面積Sで除した値を、繊維強化複合体における芯材と繊維強化プラスチック層との接着面積当たりの剥離強度とする。