JP2015032362A - 酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Ni合金基板と、この基板に形成される第1中間層との密着性を向上させて、MOD法で形成される酸化物超電導層の特性の向上を図ること。【解決手段】酸化物超電導線材の製造方法において、Ni合金基板11の表面を機械研磨または電解研磨する研磨工程と、この研磨工程の後、成膜室130内で、Ni合金基板の表面に、イオンビームを照射してイオンエッチングするエッチング工程と、成膜室130内でイオンエッチングされたNi合金基板11の表面上に中間層における第1中間層を形成する層形成工程とを有するようにした。【選択図】図2

Description

本発明は、酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に、MOD法により成膜される超電導層を備える酸化物超電導線材の製造方法に関する。
液体窒素温度(77K)以上で超電導を示す高温超電導体の一つとして、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の酸化物超電導体が知られている。
この酸化物超電導体を用いた酸化物超電導線材(以下、「REBCO超電導線材」という)は、Ni合金基板上に2軸配向した酸化物薄膜を1層或いは複数層(中間層という)で形成し、その上に超電導薄膜および安定化層を順次形成した構造を有する。
2軸配向化したREBCO超電導線材は、Bi系の銀シース線材に比べ臨界電流密度Jcが高いという特徴があり、REBCO層を1〜数[μm]厚にすることによって数100[A/cm―w]級の高臨界電流Icを持つ超電導線材が作製されている。これらの線材には、電力ロスの少ない電力ケーブルとしての応用や液体窒素を冷媒として用いることの出来る超電導マグネットとしての応用等が期待されている。
このようなREBCO超電導線材の製造方法としては、有機金属酸塩或いは有機金属化合物を原料とし、高真空プロセスを使用せずに、超電導薄膜を製造するMOD法(Metal Organic Deposition Processes:有機酸塩堆積法)や、PLD法(Pulsed laser deposition)、CVD法(Chemical vapor deposition)などの気相法が知られている。
ところで、REBCO超電導線材の特性を低下させる一つの要因として基板と、その基板の直上に形成される、つまり、その基板上に接して形成される第1中間層の剥離の問題がある。
例えば、MOD法の場合、基板上の金属有機酸塩を加熱して熱分解することで酸化物中間層付き基板上に超電導層である薄膜を形成する。具体的には、MOD法では、まず、金属成分の有機化合物が均一に溶解された原料溶液を酸化物中間層付き基板上に塗布する。次いで、溶液を塗布した基板に仮焼成熱処理を施してアモルファス状の前駆体を形成し、その後、結晶化熱処理(本焼成熱処理)を施すことで前駆体を結晶化させて超電導層を形成する。
このMOD法としては、オクチル酸塩、ナフテン酸塩等の脂肪族有機酸塩、トリフルオロ酢酸塩に代表されるフッ素を含む有機酸塩等を出発原料とし、水蒸気雰囲気中で熱処理及び水蒸気分圧の制御することで、REBCO超電導体を形成する方法が知られている。
このフッ素を含む有機酸塩を出発原料とする方法によれば、水蒸気とフッ素を含むアモルファス前駆体との反応により基板からRE(123)超電導体をエピタキシャル成長させることができる。具体的には、原料溶液を酸化物中間層付き基板に塗布した後、有機分を分解させるために約450℃以下で熱処理する仮焼成熱処理工程を経て、金属有機酸塩を約750℃で数時間、結晶加熱処理することにより超電導膜を生成させる。
MOD法による超電導層の形成方法は、上述したように、超電導層を生成する際に、基板に対して、仮焼成熱処理工程では450℃、本焼成熱処理では700℃以上等の高温で焼成するプロセスを有する。このことから、中間層成膜前の基板に吸着した成分(油分、水分等の汚れ、酸化層)等の汚れが除去されていないと、焼成熱処理工程の際に、基板に吸着した成分(油分、水分等の汚れ、酸化層)等の汚れは、加熱されることでガス化する。これにより、第1中間層を含む酸化物中間層(以下、「中間層」という)を形成する場合及びこの中間層上に超電導層を形成する場合等、熱焼成処理が必要な工程において、基板と第1中間層との剥離が生じ、密着不良となる等して、製造される超電導線材の超電導特性(臨界電流値Ic[A/cm−w])が低下する恐れがある。これに対して、特許文献1では、酸化物超電導線材の製造方法において、基板の表面を研磨した後で、中間層を形成する構成が開示されている。
特開2005−5089号公報
しかしながら、この特許文献1では、超電導層の形成方法として特に制限を設けているわけではないが、仮にMOD法を適用した場合、基板とその基板の直上に形成される第1中間層との剥離が発生する恐れがある。このため、特許文献1の製造方法を用いた場合よりも、基板と基板上に形成される第1中間層とを更に剥離しにくく密着させる方法が望まれている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、Ni合金基板と、この基板に形成される第1中間層との密着性を向上させて、酸化物超電導層の特性の向上を図ることができる酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、Ni合金基板、1層以上からなる中間層、及び2軸配向されたREBCO酸化物超電導層を有する酸化物超電導線材の製造方法であって、前記Ni合金基板の表面を研磨する研磨工程と、この研磨工程の後、チャンバー内で、前記Ni合金基板の表面に、イオンビームを照射してイオンエッチングするエッチング工程と、前記チャンバー内で前記イオンエッチングされた前記Ni合金基板の前記表面に、前記中間層において前記表面に接する第1中間層を形成する層形成工程とを有するようにした。
本発明によれば、Ni合金基板と、この基板に形成される第1中間層との密着性を向上させることで、MOD法で形成される酸化物超電導層の特性の向上を図ることができる。
本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法により製造された酸化物超電導線材の一例を示す概略断面図 本実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で用いられる製造装置の一例としての成膜装置を模式的に示す断面図 本実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法で用いられる製造装置の一例としての成膜装置の変形例を模式的に示す断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<酸化物超電導線材の製造方法により製造される酸化物超電導線材>
本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法により製造されるテープ状の酸化物超電導線材は、Ni合金基板と、1層以上の層からなる中間層と、2軸配向されたREBCO酸化物超電導層とを有する。
図1は、本発明に係る一実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法により製造されたテープ状の酸化物超電導線材の一例を示す断面図である。
図1に示す超電導線材10は、テープ状のNi合金基板11に、中間層17、テープ状の酸化物超電導層(以下、「超電導層」と称する)である超電導層18、安定化層19が順に積層されることによって形成される。
具体的には、テープ状のNi合金基板11は、例えば、ニッケル(Ni)または、ニッケル合金である。Ni合金基板11は、例えば、結晶粒無配向・耐熱高強度金属基板であり、Ni−Cr系(具体的には、Ni−Cr−Fe−Mo系のハステロイ(登録商標)B、C、X等)、Fe−Ni系(例えば、非磁性の組成系のもの)等の材料に代表される立方晶系のビッカース硬度(Hv)=150以上の非磁性の合金などである。具体的には、上述したハステロイ(登録商標)の他、インコネル(登録商標)、ステンレス等が好ましい。
なお、超電導線材10自体の厚さを0.1[mm]以下とする場合、Ni合金基板11の厚さは、好ましくは、50〜200[μm]とする。一般に、Ni合金基板11の幅は、2〜30[mm]である。ここでは、Ni合金基板11としてハステロイ(登録商標)テープが用いられる。また、酸化物超電導線材10の長手方向の長さは、500[m]としている。
中間層17は、第1〜第5中間層12〜16を有する。第1中間層12は、Al、GdZrまたはAl-Y-Oのいずれかであり、ここでは、第1中間層12として、GdZrが、Ni合金基板11上に(詳細には、上に接して)形成される。形成方法としては、スパッタリング(sputtering)法、イオンビームスパッタリング法、MOD法等がある。
また、第2中間層13は、Y、GdZrまたはMgOのいずれかであり、ここでは、第2中間層13は、第1中間層12であるGdZr上に、GdZrに接して形成されたY層である。第2中間層13の形成方法としては、スパッタリング(sputtering)法、イオンビームスパッタリング法、MOD法等がある。
このように、Ni合金基板11上に接して設けられる層構成は、本実施の形態以外の構成として、AlとAl上に成膜したYとによる2層で構成されてもよく、GdZrとGdZr上に成膜したYとによる2層で構成されてもよい。また、Ni合金基板11上に接して設けられる層構成は、GdZrの1層或いはAl-Y-Oの1層のいずれかの構成でもよい。
さらに、第3中間層14は、第2中間層13上にIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法により成膜したMgOである。また、第4中間層15は、第3中間層14上に、スパッタリング法により成膜したLaMnOである。第5中間層16は、第4中間層15上に、スパッタリング法またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法によって2軸配向の層として蒸着して成膜されたCeOである。
なお、中間層17は、1層〜4層或いは6層以上で形成されてもよい。なお、超電導線材10の幅方向の長さは、特に限定されるものではないが、本実施の形態では、幅4[mm]としている。
超電導線材10の超電導層18は、2軸配向REBCO層、つまり、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の膜である。ここでは、超電導層18は、YBCO超電導層(イットリウム系酸化物超電導体(RE123))としている。
この超電導線材10における超電導層18は、有機金属酸塩或いは有機金属化合物を原料とし、真空プロセスを使用せずに、超電導薄膜を製造するMOD法により製造される。MOD法は、基板11上に中間層17を設けた複合基板(便宜上、以下、「テープ材」という)上の金属有機酸塩を加熱して熱分解することでテープ材上に超電導層18である薄膜を形成する。具体的には、MOD法では、まず、金属成分の有機化合物が均一に溶解された原料溶液をテープ材上に塗布する。次いで、溶液を塗布したテープ材に仮焼成熱処理を施してアモルファス状の前駆体を形成し、その後、結晶化熱処理(本焼成熱処理)を施すことで前駆体を結晶化させて、テープ材上に超電導層18を形成する。
なお、超電導線材10における超電導層18の作製に際し、超電導原料溶液として、イットリウム(Y)のトリフルオロ酢酸塩(Y−TFA)、バリウム(Ba)のトリフルオロ酢酸塩(Ba−TFA)及び銅(Cu)のナフテン酸塩を、Y:Ba:Cuのモル比が1:a:3(但し、a<2)で混合したものを用いる。
安定化層19は、銀、金、白金等の貴金属、或いはそれらの合金であり低抵抗の金属である。ここでは、銀(Ag)により安定化層19を構成している。なお、安定化層19は、超電導層18の直上に形成することによって、超電導層18が金、銀などの貴金属、或いはそれらの合金以外の材料と直接的な接触によって反応によって引き起こす性能低下を防止する。これに加えて、安定化層19は、事故電流や交流通電により発生した熱を分散して発熱による破壊・性能低下を防止する。安定化層19の厚みは、ここでは2〜30[μm]である。
図2は、本実施の形態に係る酸化物超電導線材の製造方法で用いられる製造装置の一例としての成膜装置100を模式的に示す断面図である。
この成膜装置100は、Ni合金基板11上に、少なくとも1層以上の層からなる中間層17、及び超電導層18が順に積層された酸化物超電導線材10(図1参照)において、Ni合金基板の直上の中間層、すなわち、Ni合金基板11上でNi合金基板11に接する第1中間層12を形成する。
この成膜装置100は、供給リール室110、研磨室120、成膜室(成膜チャンバー)130、巻き取りリール室140、及び制御部(図示省略)を備えたリールtoリール式の装置である。
供給リール室110には、Ni合金基板11が巻かれる供給リール111が設けられる。この供給リール111は供給リール室110内で着脱自在に設けられている。Ni合金基板11を研磨室120に送り出し、巻き取りリール室140で巻き取られた後、Ni合金基板11が巻回された別の供給リール111に付け替えて、研磨室120に送り出す動作を繰り返して行う。
また、巻き取りリール室140には、巻き取りリール141が着脱自在に設けられている。巻き取りリール141は、供給リール室110から送出され、研磨室120、成膜室130の中を順に通過して、表面に第1中間層12(図1参照)が成膜されたNi合金基板11を巻き取りリール室140内で巻き取る。
この巻き取りリール141は、第1中間層12(図1参照)が成膜されたNi合金基板11を巻き取った後、Ni合金基板が巻回されていない別の巻き取りリール141に交換される。なお、この後、巻き取りリール141は、巻き取り室140に導入されるNi合金基板11を巻き取る。
これら供給リール室110と、巻き取りリール室140との間に、研磨室120、成膜室130が順に連結されている。
研磨室120は、供給リール室110に接続されており、研磨室120では、Ni合金基板11の表面を、機械研磨、電解研磨、或いは化学研磨により研磨する。なお、この研磨室120では、研磨装置で、供給リール室110から送られるNi合金基板11の表面に対して機械研磨或いは電解研磨を施すことが好ましい。
研磨装置により研磨室120内で行われる機械研磨とは、例えば、SiCまたはAlなどの細かな粒子をペーパーに焼き付けたものを研磨ペーパーとして使用し、Ni合金基板11の表面の酸化層を削りとることである。この機械研磨には、SiCまたはAl等の細かな粒子の粉を用いたバフ研磨も含む。また、研磨室120内で行われる電解研磨とは、例えば、濃リン酸、濃硫酸などの電解液中にNi合金基板11を陽極として浸漬し、この陽極と電解液中に設置された陰極との間に直流電流を流して、電気化学的に配向金属基板表面の酸化層を除去することである。また、研磨装置により研磨室120内で行われる化学研磨とは、例えば、リン酸、硝酸、フッ酸などを含有する液体中に配向金属基板を浸漬して、化学反応により基板表面の酸化層を除去することである。
研磨室120では、機械研磨または電解研磨によってNi合金基板11の表面の平均表面粗さRa(JISB0601)を3.0nm以下に研磨する。この結果、研磨処理の後、Ni合金基板11の表面に第1中間層12を形成する際に、Ni合金基板11の表面に対して、第1中間層12をより密着性を高めた状態で形成できる。
成膜室130は、研磨されたNi合金基板11の表面のエッチングを行うエッチング領域と、エッチングした表面に第1中間層12を形成する層形成領域とを有する。成膜室130内、つまり成膜チャンバー内では、エッチング領域と層形成領域とが、第1中間層12が成膜されるNi合金基板11の走行方向に沿って連続して配置されている。
この成膜室130には、イオン源160と、イオン源160に原料ガスを供給する原料ガス供給装置162と、直上層形成装置170とが設けられている。
イオン源160と、イオン源160に原料ガスを供給する原料ガス供給装置162は、エッチング領域に配置され、直上層形成装置170は、層形成領域に配置される。
イオン源160及び原料ガス供給装置162は、成膜室130内に導入されるNi合金基板11の表面をイオンビームでイオンエッチングする。このエッチング領域では、原料ガス供給装置162が、イオン源160に原料ガスを供給することで、イオン源160から放出されるイオンビームによりNi合金基板11の表面を切削してクリーニングする。
直上層形成装置170は、イオンエッチングされたNi合金基板11の表面の真上に、つまり、Ni合金基板11の表面に接して、第1中間層12(図1参照)を形成する。なお、直上層形成装置170は、Ni合金基板11の表面に第1中間層12(図1参照)を形成するものであれば、Ni合金基板11の表面にどのような方法で形成してもよい。例えば、直上層形成装置170は、周知の技術であるスパッタリング(sputtering)法、イオンビームスパッタリング法等により、Ni合金基板11の表面に第1中間層12を形成する。この直上層形成装置170は、Ni合金基板11の表面に、Al、GdZrOまたはAl-Y-Oのいずれかの第1中間層12を形成する。
ここでは、直上層形成装置170は、酸化物薄膜形成材料ターゲットをGdZrとし、このターゲットに電圧を印加してスパッタリングすることで、Ni合金基板11の表面に第1中間層12として、ガドリニウム(Gd)とジルコニウム(Zr)の酸化物である層(GdZr層)を形成する。
次に、成膜装置100により酸化物超電導線材10を製造する方法について説明する。
まず、成膜装置100において、酸化物超電導線材10の基材となるテープ状のNi合金基板11が巻回された供給リール111を、供給リール室110内にセットする。なお、成膜装置100では、Ni合金基板11は、供給リール室110から送出されて、研磨室120、成膜室130を通過して巻き取りリール室140で巻き取られるように、供給リール室110にセットされる。
成膜装置100では、供給リール室110内の供給リール111から導出されるNi合金基板11は、ローラ112を介して研磨室120に送出される。研磨室120では、Ni合金基板11の表面は研磨(研磨工程)され、研磨室120から、成膜室130に送出される。
次に、成膜室130において、Ni合金基板11の表面は、イオン源160であるイオン銃から照射されたイオンビームが衝突する。これにより、基板表面は、研磨室120で研磨された後、成膜室130でエッチングされる(エッチング工程)。これにより、Ni合金基板11の表面に付着していたガス等は除去されるとともに、研磨された後でも表面に付着している酸化層は切削されて取り除かれる。
このようにエッチングによって洗浄された表面を有するNi合金基板11は、その後、同じ成膜室130内において、直上層形成装置170でスパッタリングされて第1中間層12(図1参照)が形成される(層形成工程)。直上層形成装置170における酸化物薄膜形成材料ターゲットから放出される層形成材料(例えば、ガドリニウム(Gd)やジルコニウム(Zr)によって、表面の酸化層が切削された直後のNi合金基板11の表面に第1中間層12が形成される。
なお、成膜装置100では、研磨後からイオンエッチングまでの時間は、所定時間以内であることが好ましい。ここでは、24時間以内(例えば12時間)としている。すなわち、成膜装置100では、Ni合金基板11の走行スピードは、制御部(図示省略)により、研磨室120を出てから成膜室130内に入り、エッチング領域でイオンエッチングされるまでの時間が24時間以内(例えば12時間)となるように制御される。研磨した後、イオンエッチングするまで24時間より長い時間が経過した場合では、表面に水分、油分が吸着したり、酸化層が形成されたり等、加熱の際にガス化する成分(基板に吸着した成分である「汚れ」)が付着することになる。このように成膜装置100では、研磨とイオンエッチングとを短い時間で連続して行うことで、研磨後のNi合金基板11の表面が酸化したり、研磨後の表面に汚れ(油分、水分、酸化層)が付着したりする前に、イオンエッチングを行うことができる。
この結果、Ni合金基板11の表面として、Ni合金自体そのものを効果的に露出させることができ、この表面上に、第1中間層12を形成することで、Ni合金基板11と第1中間層12との密着性の向上を図ることができる。
表面に第1中間層12が形成されたNi合金基板11は、成膜室130から送出されて、巻き取りリール室140において、ローラ142を介して巻き取りリール141により巻き取られる。
このように、成膜装置100では、表面を研磨されたNi合金基板11が成膜室130に導入されると、このNi合金基板11の表面に対して、成膜室130内で、エッチングにより洗浄されるとともに、直上層形成装置170により第1中間層12が形成される。
よって、成膜装置100では、連続的に、供給リール111から供給されたNi合金基板11の表面の酸化層が切削され、その後、第1中間層12が形成されて巻き取りリール141に巻き取られることなる。Ni合金基板11を巻き取った巻き取りリール141は、別の装置の成膜室などに搬送され、図1に示すような第1中間層12上に順に、第2中間層13、第3中間層14、第4中間層15、第5中間層16を成膜して中間層17を形成していく。
なお、成膜装置100において、成膜室130と巻き取りリール室140との間に、更に別の成膜室(図示省略)を設け、この別の成膜室において第1中間層12の上に続けて第2中間層13(図1参照)を形成してもよい。これと同様に、成膜室130と巻き取りリール室140の間に、形成する中間層の数だけ別の成膜室を設けて、第2中間層13上に、第3中間層14、第4中間層15、第5中間層16を順に形成してもよい。
このようにして、Ni合金基板11の表面をエッチングした直後に、第1中間層12を形成することができる。更に加えて、この第1中間層12上に、第2〜第5中間層13〜16を連続的に形成することができる。
ここで、イオンビームを用いてNi合金基板11の表面をエッチングする条件は、Ni合金基板11の表面の酸化層を取り除く等、表面をクリーニングするような条件であれば、特に限定しない。イオン源ガスとしてArガスを用いて、イオン電流20mA〜50mA、300V〜1000Vの加速電圧をかけたArイオンをNi合金基板11に衝突させる。また、イオンビームの照射角度[deg]はNi合金基板11の表面(金属テープ面)に対して15度以上70度以下の角度から照射することが望ましい。
ここでイオンビームの加速電圧を300V以上1000V以下の範囲とした点については、イオンビームの加速電圧が300V未満である場合、エッチングが不十分となり、洗浄効果が低く、Ni合金基板11の表面上に形成される中間層17(具体的には第1中間層12)の剥離強度が低下するからである。また、加速電圧が1000V超である場合では、表面へのエッチングが過剰となり、Ni合金基板11の表面が荒れるため、この表面上に形成する中間層17の2軸配向性が十分に得られず、その上に形成される超電導層(酸化物超電導層)の超電導特性が低下するからである。また、イオンビームの照射角度については15度未満の角度から照射した場合には十分なエッチング効果を得ることができないため、Ni合金基板11の表面はクリーニングされない。また、イオンビームの照射角度が170度超の場合には、イオンがNi合金基板に注入されボイドを形成し、表面が荒れる原因となる。
次いで、成膜装置100により得られる第1中間層を含む中間層(図1に示す中間層17と2軸配向されたREBCO酸化物超電導層(図1に示す超電導層(YBCO)18)を形成することにより、酸化物超電導線材を製造する。
具体的には、中間層17が形成されたNi合金基板11(以下「テープ材」と称す)上に、超電導原料溶液を塗布して塗布膜を形成する(塗布工程)。この塗布工程は、テープ材を、超電導原料溶液(有機金属塩を有機溶媒に溶解させたもの)に浸し、このテープ材を超電導原料溶液から引き上げること(いわゆるディップコート法)により、テープ材の表面に超電導膜を付着させる。こうしてテープ材に超電導原料溶液が塗布される。この超電導原料溶液は、例えば、Y―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)、Ba―TFA塩およびCu―ナフテン酸塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した混合溶液である。なお、この超電導原料溶液には、磁束ピンニング点を形成するためのZr等の添加元素Mが添加されていてもよい。また、この原料溶液の粘度は、2〜150mPa・sである。
この超電導原料溶液を塗布した後、テープ材を仮焼成する(仮焼成熱処理工程)。なお、塗布工程では、ディップコートで1回に塗布する膜厚は0.01〜2.0[μm]、好ましくは0.05〜1.5[μm]である。これにより、生成される超電導層の厚み(膜厚)は、0.5μm以上であり、例えば、1.5μmに形成される。
このような塗布工程および仮焼成熱処理工程を所定回数繰り返す。これにより、テープ材における中間層上で塗布膜をマルチコートする。
これにより、テープ材における中間層上に、超電導層(YBCO超電導層)となるアモルファス超電導前駆体としての膜体を形成する。
このようなフッ素(F)を含有した膜体を中間層17(図1参照)上に成膜した後、テープ材における膜体の結晶化熱処理、即ち、REBCO超電導層生成のための熱処理を、水蒸気ガス中において施す(本焼成熱処理工程)。更に、この後、本焼成熱処理により生成された超電導層上に、スパッタ法で安定化層(例えば、Agの安定化層19)を成膜し、後熱処理を施す。これにより、磁場印加特性に優れたREBCOの超電導層(図1ではYBCO層)を有する超電導線材(REBCO超電導線材)を製造する。
本実施の形態の成膜装置100によれば、Ni合金基板11の表面に吸着した油、水分等が、第1中間層12を形成する前に除去される、つまり、第1中間層12の形成前にNi合金基板11の表面を洗浄する。具体的には、研磨室120で研磨して洗浄されたNi合金基板11の表面を、研磨洗浄処理に続いて、成膜室130で、イオン源160を設置した層形成領域でイオンエッチングすることで、Ni合金基板11の表面に付着した汚れ(吸着した水分、油分、形成された酸化層)を除去して洗浄する。これに連続して、同一成膜室130内の層形成領域で、洗浄したNi合金基板11の表面に第1中間層12を形成する。
これにより、図1に示すNi合金基板11と第1中間層12との界面部分に、加熱によりガス化する成分は無くなる。よって、加熱プロセスが必要な中間層(例えば第2中間層13等)及び超電導層18の形成時において、Ni合金基板11と第1中間層12との界面部分に存在する成分のガス化を防ぐことができる。この結果、製造される酸化物超電導線材において、Ni合金基板11と、第1中間層12(つまり、中間層17)との密着性の向上を図り、Ni合金基板11と中間層17(具体的には第1中間層12)との間の剥離を防止できる。すなわち、酸化物超電導線材10において、Ni合金基板11と中間層17との間の剥離強度の向上を図ることができる。
なお、成膜装置100により第1中間層12を形成する際に、研磨の後、イオンエッチング及び第1中間層12の形成を同じ成膜室130内で行う構成としたが、これに限らない。例えば、成膜室130でイオンエッチング及び第1中間層12の形成を行う前に、アニールを施しても良い。
このようにイオンエッチングと第1中間層形成を同じ成膜室130内で行う前にNi合金基板11の表面にアニール(プレアニール)可能な成膜装置の変形例を図3に示す。
<成膜装置の変形例>
図3は、本実施の形態に係る酸化物超電導線材の製造方法で用いられる製造装置の一例としての成膜装置100Aの変形例を模式的に示す断面図である。
図3に示す成膜装置100Aは、成膜装置100の構成において、研磨室120と、成膜室130のとの間に、プレアニールを行うプレアニール室180を介設したものである。よって、図2に示す成膜装置100と、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3に示す成膜装置100Aは、Ni合金基板11上に、少なくとも1層以上の層からなる中間層17、YBCOである超電導層18を有する酸化物超電導線材10において、Ni合金基板の直上の中間層、すなわち、第1中間層12を形成する。
具体的には、成膜装置100は、供給リール室110と巻き取りリール室140との間に、研磨室120、プレアニール室180、成膜室130を順に備えるとともに、これらを制御部(図示省略)で制御するリールtoリール式の装置である。
成膜装置100Aでは、研磨室120と、成膜室130の間に、接続路154、155を介して、プレアニール室180が接続されている。
プレアニール室180は、ヒータ181を備え、このヒータ181によって研磨室120から導入されるNi合金基板11の研磨済の表面を加熱することでプレアニールを施す。このプレアニールによって、Ni合金基板11の表面に付着した汚れ(油分、水分、酸化層)が消滅する。このプレアニール室180では、圧力10mTorr以下、温度300℃以上700℃以下でプレアニールを行う。このプレアニール制御は、制御部(図示省略)により制御される。アニール温度は300度未満ではアニールの効果が得られず、700度超では金属基板の結晶粒成長が生じることによって表面が荒れるため好ましくない。
プレアニール室180でプレアニールされたNi合金基板11は、成膜室130に送出される。
このように、成膜装置100Aでは、供給リール室110から送出されたNi合金基板11は、その表面が、研磨室120で研磨された後、プレアニール室180でプレアニールされる。そして、プレアニールされたNi合金基板11の表面は、成膜室130に送出される。この成膜室130内で、Ni合金基板11は、イオンエッチングされるとともに、イオンエッチングと連続して第1中間層12が形成されて、巻き取りリール141で巻き取られる。この後、成膜装置100と同様に、成膜装置100Aにおいて、成膜室130と巻き取りリール室140との間に、更に別の成膜室(図示省略)を設け、この別の成膜室において第1中間層12の上に続けて第2中間層13を形成してもよい。これと同様に、成膜室130と巻き取りリール室140の間に、形成する中間層の数だけ別の成膜室を設けて、例えば、第2中間層13上に、第3中間層14、第4中間層15、第5中間層16を順に形成してもよい。
このようにして、Ni合金基板11の表面をエッチングした直後に、第1中間層12を形成することができ、更に、この第1中間層12上に、第2〜第5中間層13〜16を連続的に形成することができる。
次いで、その後、成膜装置100と同様に、成膜装置100Aにより得られる第1中間層12を含む中間層17に接して酸化物超電導層を形成することにより、酸化物超電導線材を製造する。この酸化物超電導層の形成プロセスは、成膜装置100を用いて製造する酸化物超電導線材の製造方法でのものと同様であるため、説明は省略する。
この成膜装置100Aによれば、Ni合金基板11の表面に第1中間層12を形成する前に、Ni合金基板11の表面に付着した汚れ(吸着した水分、油分や、化形成された酸化層)を確実に除去できる。
この結果、Ni合金基板11と第1中間層12との界面には、加熱によりガス化する成分が無くなる。よって、加熱プロセスが必要な中間層(例えば第2中間層14等)及び超電導層18の形成時において、Ni合金基板11と第1中間層12との界面で発生するガス化による不良を防止できる。これにより、製造された酸化物超電導線材において、Ni合金基板11と、第1中間層12(つまり、中間層17)との密着性の向上を、成膜装置100を用いた場合よりも図ることができる。すなわち、Ni合金基板11と中間層17(具体的には第1中間層12)との間の剥離を確実に防止でき、酸化物超電導線材10において、中間層17の剥離強度の向上を図ることができる。
なお、成膜装置100Aでは、プレアニール室180を、研磨室120と成膜室130との間に設けて、Ni合金基板の表面に、研磨、プレアニール、イオンエッチングを順に施すようにしたが、プレアニールは研磨の前に行ってもよい。また、成膜室130内で、イオンエッチングと、第1中間層の形成との間で行っても良い。すなわち、プレアニールは、Ni合金基板の表面に接して第1中間層を形成する前に、研磨、イオンエッチングととともにNi合金基板の表面に対して施すものであれば、いつ行ってもよい。成膜装置100Aにおいて、プレアニール室180を供給リール室110と研磨室120との間に設けたり、プレアニール室180で用いられるプレアニール装置を成膜室130内においてエッチング領域と層形成領域との間に設けた構成としてもよい。
Ni合金基板上に第1中間層を形成し、その後、第2中間層、第3中間層を形成して中間層とし、その上に、MOD法により超電導層、安定化層を形成することで実施例1〜3,参照例1、2の酸化物超電導線材を製造した。各実施例1〜3、参照例1、2の特性(剥離強度、臨界電流値Ic)を表1に示す。
<実施例1>
実施例1のYBCO酸化物超電導線材は成膜装置100(図2参照)を用いて製造した。成膜装置100では、まず、Ni合金基板11としてのハステロイ(登録商標)の表面の平均表面粗さRa(JISB0601)を2.0nmに研磨した。次いで、表面を研磨したハステロイを成膜室(成膜チャンバー)130内に位置させる。そして、ハステロイの表面を、1×10−2[Pa]中で、イオン加速電圧800[V]、イオン照射角度45[deg]、イオン電流密度30[mA]のArエッチング(イオンエッチング)し、同じ成膜室(成膜チャンバー)130内で、ハステロイを保持したまま、ハステロイの表面上に、第1中間層として、GdZrを100nmの厚さで形成した。この第1中間層を形成した後、順に、第2中間層としてMgOを10nm、第3中間層としてCeOを500nm、超電導層を1500nm、安定化層としてAgを2000nmの厚みとなるように積層して形成した。
<実施例2>
実施例2としての酸化物超電導線材は、実施例1と同様の条件で、成膜装置100A(図3参照)を用いて製造した。この酸化物超電導線材では、実施例1と比較して、成膜室130に送られる前に、研磨後のNi合金基板11であるハステロイの表面には、プレアニールが施されている。つまり、Ni合金基板11としてのハステロイの表面の平均表面粗さRa(JISB0601)を2.0nmに研磨した。次いで、表面を研磨したハステロイに、プレアニール室で、プレアニールを施した後、成膜室(成膜チャンバー)130内で、イオン照射角度60[deg]とした以外は実施例1と同条件で、イオンエッチングを施すとともに第1中間層を実施例1と同条件で形成した。この後、第1中間層上に、第2中間層及び第3中間層を有する中間層、超電導層及び安定化層を、実施例1のものと同様な製造方法、材料、寸法で積層した。
<実施例3>
実施例3としての酸化物超電導線材は、成膜装置100Aを用いて、実施例1及び実施例2と同様の寸法で製造した。この酸化物超電導線材は、実施例2と同様な条件で、表面の平均表面粗さRa(JISB0601)を2.0nmに研磨された後、プレアニール室180で、プレアニールを施された。次いで、成膜室(成膜チャンバー)130内で、実施例1と同条件で、ハステロイの表面にイオンエッチング及び第1中間層12の形成が行われた。この後、第1中間層上に、第2中間層及び第3中間層を有する中間層、超電導層及び安定化層を、実施例1のものと同様な製造方法、材料、寸法で積層した。
<比較例1>
比較例1としての酸化物超電導線材では、Ni合金基板11としてのハステロイを研磨せずに、成膜室130内においてイオンエッチングした後、第1中間層を形成した。このイオンエッチングの条件と第1中間層の形成の条件は、実施例1と同様である。この後、第1中間層上に、第2中間層及び第3中間層を有する中間層、超電導層及び安定化層を、実施例1のものと同様な製造方法、材料、寸法で積層した。
<比較例2>
比較例2としての酸化物超電導線材では、成膜装置100を用いて、Ni合金基板11としてのハステロイを研磨した後、成膜室130内において、研磨したハステロイの表面に、イオンエッチングせずに第1中間層を形成した。この研磨の条件と第1中間層の形成の条件は、各実施例と同様である。この後、第1中間層上に、第2中間層及び第3中間層を有する中間層、超電導層及び安定化層を、実施例1のものと同様な製造方法、材料、寸法で積層した。
<参照例1>
参照例1としての酸化物超電導線材は、実施例1と比較してイオンエッチングにおけるイオン照射角度を90[deg]とした以外は実施例1と同様の条件で、成膜装置100(図2参照)を用いて製造された。
<参照例2>
参照例2としての酸化物超電導線材は、実施例1と比較してイオンエッチングにおけるイオン照射角度を10[deg]とした以外は実施例1と同様の条件で、成膜装置100(図2参照)を用いて製造された。
Figure 2015032362
この結果、表1に示すように、実施例1の酸化物超電導線材は、剥離強度75[Mpa]、臨界電流値Ic180[A/cm−w]であり、実施例2の酸化物超電導線材は、剥離強度85[Mpa]、臨界電流値Ic250[A/cm−w]であった。また、実施例3の酸化物超電導線材は、剥離強度80[Mpa]、臨界電流値Ic200[A/cm−w]であった。比較例1の酸化物超電導線材は、剥離強度30[Mpa]、臨界電流値Ic70[A/cm−w]であり、比較例2の酸化物超電導線材は、剥離強度70[Mpa]、臨界電流値Ic150[A/cm−w]であった。また、参照例1の酸化物超電導線材は、剥離強度30[Mpa]、臨界電流値Ic100[A/cm−w]であり、参照例2の酸化物超電導線材は、剥離強度30[Mpa]、臨界電流値Ic50[A/cm−w]であった。
このように、Ni合金基板であるハステロイの表面に対して、研磨の後、同一成膜室内でのイオンエッチング及び第1中間層の形成を行った実施例1の酸化物超電導線材は、比較例1と比較して、より、優れた超電導特性(臨界電流値)を有した。
また、実施例1と比較例2との比較で見られるように、研磨されたNi合金基板の表面に対して、第1中間層の形成の前に、イオンエッチングを、第1中間層を形成する際の成膜室内で行うことで、超電導特性の向上を図ることができた。
さらに、実施例1の第1中間層形成プロセスにおいて、第1中間層の形成の前にアニール(プレアニール)を行った実施例2及び実施例3では、実施例1よりも更に優れた超電導特性(臨界電流値250、200)[A/cm−w]を有した。また、実施例1〜3のように、Ni合金基板の表面に対して、イオンエッチングにおけるイオン照射角度[deg]を、15[deg]以上70[deg]以下の範囲内である、45、60、45[deg])で行った場合、参照例1、2よりもさらに優れた超電導特性を有した。実施例2、3のように、Ni合金基板の表面に対して、プレアニールを施し、且つ、イオンエッチングにおけるイオン照射角度[deg]を60[deg]、45[deg]で行った場合、実施例1、比較例1、2及び参照例1、2よりもさらに優れた超電導特性を有した。
以上、本発明に係る実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、Ni合金基板とその基板上に形成される第1中間層との密着性を向上して、酸化物超電導線材としての超電導特性の向上を図ることができる効果を有し、MOD法で製造される超電導層を有する超電導線材の製造方法として有用である。
10 超電導線材
11 Ni合金基板
12 第1中間層
13 第2中間層
14 第3中間層
15 第4中間層
16 第5中間層
17 中間層
18 超電導層
19 安定化層
100、100A 成膜装置
110 供給リール室
111 供給リール
112、142 ローラ
120 研磨室
130 成膜室
140 巻き取りリール室
141 巻き取りリール
160 イオン源
162 原料ガス供給装置
170 直上層形成装置
180 プレアニール室
181 ヒータ

Claims (8)

  1. Ni合金基板、1層以上からなる中間層、及び2軸配向されたREBCO酸化物超電導層を有する酸化物超電導線材の製造方法であって、
    前記Ni合金基板の表面を研磨する研磨工程と、
    この研磨工程の後、チャンバー内で、前記Ni合金基板の表面に、イオンビームを照射してイオンエッチングするエッチング工程と、前記チャンバー内で前記イオンエッチングされた前記Ni合金基板の前記表面に、前記中間層において前記表面に接する第1中間層を形成する層形成工程と、を有する、
    ことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記Ni合金基板は、ハステロイ、インコネル又はステンレスからなる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記第1中間層は、Y、Al、GdZrまたはAl-Y-Oのいずれか一つからなる、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 前記研磨工程では、機械研磨または電解研磨によって前記Ni合金基板の表面の平均表面粗さRa(JISB0601)を3.0nm以下にする、
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記エッチング工程におけるイオン加速電圧は300V以上1000V以下であり、イオンの照射角度は15度以上70度以下である、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記REBCO酸化物超電導層は、MOD法にて形成されている、
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記第1中間層は、スパッタリング法にて形成されている、
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 前記層形成工程の前に前記Ni合金基板の表面に対してアニールを行うプレアニール工程を有する、
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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