JP2015030925A - 抗菌防臭性、消臭性を有するアクリル系複合繊維並びにそれを含む紡績糸および織編物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクリロニトリル系重合体60〜90質量%、セルロースアセテート9〜39質量%、消臭性微粒子0.5〜2.5質量%、抗菌剤0.05〜2.0質量%から構成され、連続相がアクリロニトリル系重合体、分散相がセルロースアセテートである繊維構造を有するアクリル系複合繊維。
【選択図】なし
Description
<アクリロニトリル系重合体>
本発明のアクリル系複合繊維は、アクリロニトリル系重合体を60〜90質量%を含み、好ましくは65〜75質量%含むと良い。アクリロニトリル系重合体の含有率が60質量%以上であることで、アクリル系複合繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付きなどが少なくなるとともに、繊維物性が向上し紡績工程通過性が良好となり、さらには、当該繊維を使用した織編物のソフト感が良好となる。また、アクリロニトリル系重合体の含有率が90質量%以下であることで、当該繊維を使用した織編物のドライ感が良好となる。
本発明のアクリル系複合繊維は、セルロースアセテートを9〜39質量%含み、好ましくは15〜35質量%含むと良い。セルロースアセテートの含有率が9質量%以上であることで、酢酸、イソ吉草酸およびノネナールに対する消臭性能が良好となり、さらには、当該繊維を使用した織編物のドライ感が良好となる。また、セルロースアセテートの含有率が39質量%以下であることで、アクリル系複合繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付き等が少なくなるとともに、繊維物性が良好となり、紡績工程通過性が良好となる。
本発明のアクリル系複合繊維は、セルロースアセテートを9〜39質量%含むとともに、消臭性微粒子を0.5〜2.5質量%、好ましくは消臭性微粒子を1.0〜2.0質量%含むと良い。消臭性微粒子の含有率が0.5質量%以上であることで、セルロースアセテートを含有することでは得られない、アンモニアに対する消臭性能が良好となる。消臭性微粒子の含有率が2.5質量%以下であることで、アクリル系複合繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付き等が少なくなるとともに、繊維物性が良好となり、紡績工程通過性が良好となる。
本発明のアクリル系複合繊維は、抗菌剤を0.05〜2.0質量%含み、好ましくは抗菌剤を0.1〜1.0質量%含むと良い。抗菌剤の含有率が0.05質量%以上であることで、黄色ブドウ球菌等の細菌に対する抗菌性が良好となる。抗菌剤の含有率が2.0質量%以下であることで、アクリル系複合繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付き等が少なくなるとともに、繊維物性が良好となり、紡績工程通過性が良好となる。
本発明のアクリル系複合繊維において、繊維軸方向の断面(繊維縦断面)において分散相を形成するセルロースアセテートが全て又は部分的に連通していることが消臭性能を向上する上で好ましい。
本発明のアクリル系複合繊維は、繊維内部に空孔を有することが好ましい。本発明において空孔とは、繊維内部に形成される空隙を示すものであり、空孔の一部が繊維表面に開口していてもよく、また空孔は分散相同士を連結していてもよい。空孔の形態及びサイズは何ら限定されるものではないが、繊維強度が1.8CN/dtex以上を維持することが好ましいことから、空孔形態によっても異なるが約2〜5μm未満のものが好ましい。
本発明の紡績糸は、アクリル系複合繊維を20質量%以上含み、30質量%以上含むことが好ましい。アクリル系複合繊維を20質量%以上含むことで、酢酸に対する消臭率を80%以上、イソ吉草酸に対する消臭率を85%以上、ノネナールに対する消臭率を75%以上、アンモニアに対する消臭率を70%以上、黄色ブドウ球菌に対する静菌活性値を2.2以上とすることができる。
本発明の織編物は、アクリル系複合繊維を20質量%以上含み、30質量%以上含むことが好ましい。アクリル系複合繊維を20質量%以上含むことで、酢酸に対する消臭率を80%以上、イソ吉草酸に対する消臭率を85%以上、ノネナールに対する消臭率を75%以上、アンモニアに対する消臭率を70%以上、黄色ブドウ球菌に対する静菌活性値を2.2以上とすることができる。
本発明の織編物は、以下の(1)〜(5)を満足する織編物である。織編物がこれらの消臭率および静菌活性値を満たすことで、汗臭・加齢臭に対する消臭効果および抗菌防臭効果を有することの目安となる。
(1)酢酸に対する消臭率が80%以上
(2)イソ吉草酸に対する消臭率が85%以上
(3)ノネナールに対する消臭率が75%以上
(4)アンモニアに対する消臭率が70%以上
(5)黄色ブドウ球菌に対する静菌活性値が2.2以上
本発明に係るアクリル系複合繊維の製造方法の一例を説明する。
本実施形態におけるアクリル系複合繊維の製造方法では、まずアクリロニトリル系重合体の原液、セルロースアセテートの原液、消臭性微粒子のマスターバッチ、抗菌剤のマスターバッチを調製する。このときに、原液またはマスターバッチに使用する溶剤は、共通の溶剤とする。さらに、この溶剤は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤や、ロダン塩、硝酸などの無機溶剤、その他アクリル繊維の紡糸で一般的に用いられる溶剤の何れの溶剤でも使用することができるが、溶剤回収の容易さを考慮すると有機溶剤を用いることが好ましい。また、このとき用いるアクリロニトリル系重合体、セルロースアセテート、消臭性微粒子、抗菌剤については、上記で説明したものを好適に使用することができる。
こともできる。
本発明のアクリル系複合繊維はカットして短繊維とされた後、紡績される。紡績糸の構成は、本発明のアクリル系複合繊維を100%としても良いし、他の繊維、例えば通常のアクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等の合成繊維または綿、ウール、絹等の天然繊維と混紡して、アクリル系複合繊維を20質量%以上含む紡績糸としてもよい。本発明の紡績糸の製造方法は、特に限定はなく公知の紡績方式によって、本発明の紡績糸を製造することができる。
さらに、前述のようにして製造された本発明の紡績糸は、織編物の構成糸として用いられる。本発明の織編物を得るに当たっては、織組織、編組織、或いは製織方法、編成方法、織機、編機等については特に限定はない。
テドラーパックに試料(わたは2.4g、編地は100cm2に切り取ったもの)を入れ、アンモニアの場合は初発濃度が100ppm、酢酸の場合は初発濃度が50ppmとなるように臭気ガスを3L入れ、2時間後の臭気成分濃度を検知管により測定し、次の式より算出した。
消臭率(%)=((2時間後の空試験濃度−2時間後の試料試験濃度)/2時間後の空試験濃度)×100
三角フラスコ(内容量:500ml)に試料(編地を6cm×8cmに切り取ったもの)を入れ、イソ吉草酸の場合は初発濃度を38ppm、ノネナールの場合は初発濃度を14ppmとなるように臭気成分の溶液を滴下し、封をし、2時間後シリンジによりフラスコ内ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフでピーク面積を測定し、次の式より算出した。
消臭率(%)=((Sb−Sm)/Sb)×100
ただし、Sb=2時間後の空試験のピーク面積
Sb=2時間の試料試験のピーク面積
JIS L 1902(菌液吸収法)の方法により、対象菌種を黄色ブドウ球菌として試験を行い、次の式より静菌活性値を算出した。
静菌活性値=(Mb−Ma)−(Mc−Mo)
ただし、Ma=標準布の試験菌接種直後の生菌数の常用対数値
Mb=標準布の18時間培養後の生菌数の常用対数値
Mo=試験試料の試験菌接種直後の生菌数の常用対数値
Mc=試験試料の18時間培養後の生菌数の常用対数値
また、試験成立条件として増殖値(F)が次の条件を満たすこととした。
F=Mb−Ma≧1.0
アクリロニトリル93質量%と、酢酸ビニル7質量%からなるアクリロニトリル系重合体を固形分濃度が24質量%となるようにジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」という。)に溶解して、アクリロニトリル系重合体の原液を調製した。
これとは別に、水酸基の74%以上92%未満が酢酸化されているセルロースアセテート(株式会社ダイセル社製)を固形分濃度が18質量%となるようにDMAcに溶解して、セルロースアセテートの原液を調製した。
上記アクリロニトリル系重合体の原液と、セルロースアセテートの原液、消臭性微粒子のマスターバッチ、抗菌剤のマスターバッチを、各成分が以下の表1に示す割合となるようにホモミキサーにて十分に攪拌混合し、紡糸原液を調製した。
消臭性微粒子として商品名「ミズカナイト」(水澤化学工業株式会社製)を用い、抗菌剤として「ダイキトサン」(大日精化工業株式会社製)を用いた以外、実施例1と同様の方法でアクリル系複合繊維を得た。
消臭性微粒子として商品名「ゼオミック」(シナネンゼオミック株式会社製)を用い、抗菌剤として「ニッカノン」(日華化学株式会社製)を用いた以外、実施例1と同様の方法でアクリル系複合繊維を得た。
消臭性微粒子として商品名「ミズカナイト」(水澤化学工業株式会社製)を用い、抗菌剤として「フローナック」(日本水産株式会社製)を用いた以外、実施例1と同様の方法でアクリル系複合繊維を得た。
実施例1〜4で調製したアクリロニトリル系重合体の原液と、セルロースアセテートの原液、および消臭性微粒子のマスターバッチ、抗菌剤のマスターバッチを、各成分が以下の表1に示す割合となるようにホモミキサーにて十分に攪拌混合し、紡糸原液を調製し、実施例1と同様の方法でアクリル系複合繊維を得た。
実施例1〜4で調製したアクリロニトリル系重合体の原液と、セルロースアセテートの原液、および消臭性微粒子のマスターバッチ、抗菌剤のマスターバッチを、各成分が表2に示す比率となるようにホモミキサーにて十分に攪拌混合し、芯成分の紡糸原液Aを調製した。
尚、紡糸操業性の判定は以下により行った。
○:糸切れ、巻付きなどがなく、紡糸性良好
△:糸切れはないが、巻付きが発生し、紡糸性やや不良
×:糸切れが多発し、紡糸性不良
一方、芯鞘型複合繊維とした場合(比較例4、5)は、満足する消臭性能を得るために消臭性微粒子の含有率を高くする必要があるが、消臭性微粒子の含有率を高くするに従い、紡糸操業性が低下する傾向である。
また、消臭性微粒子を含有していない場合(比較例1)はアンモニア消臭性能が低く、セルロースアセテートを含有しない場合(比較例2、3)はアンモニアおよび酢酸の両方の消臭性能が満足するレベルに達していない。
実施例1のアクリル系複合繊維と、単繊維繊度1.3dtexのビスコースレーヨン繊維を、混紡率60%/40%の割合で紡績し、毛番手で1/68の紡績糸Aを得た。この紡績糸を用いて22ゲージ丸編み機でフライス生地を編成した。
アクリル系複合繊維を実施例4のアクリル系複合繊維とした以外、実施例5と同様の方法で紡績糸Bを得た。
この紡績糸Bを表5に示す配列で交編し、22G丸編機でフライス交編生地を編成した。
綿100%からなる綿番手で40/1の紡績糸Cを得た。
実施例6に記載した紡績糸Bと紡績糸Cとを表5に示す配列で交編し、22G丸編機でフライス交編生地を編成した。
単繊維繊度1dtexの抗ピルアクリル繊維と、綿繊維を混紡率55%/45%の割合で紡績し、毛番手で1/68の紡績糸Dを得た。
実施例6に記載した紡績糸Bと紡績糸Dとを表5に示す配列で交編し、22G丸編機でフライス交編生地を編成した。
Claims (6)
- アクリロニトリル系重合体60〜90質量%、セルロースアセテート9〜39質量%、消臭性微粒子0.5〜2.5質量%および抗菌剤0.05〜2.0質量%から構成され、連続相がアクリロニトリル系重合体であり、分散相がセルロースアセテートである繊維構造を有するアクリル系複合繊維。
- セルロースアセテートが連通した構造を有する請求項1に記載のアクリル系複合繊維。
- 繊維内部に空孔を有する請求項1又は2に記載のアクリル系複合繊維。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載のアクリル系複合繊維を20質量%以上含む紡績糸。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載のアクリル系複合繊維を20質量%以上含む織編物。
- 以下の(1)〜(5)を満足する請求項5に記載の織編物。
(1)酢酸に対する消臭率が80%以上
(2)イソ吉草酸に対する消臭率が85%以上
(3)ノネナールに対する消臭率が75%以上
(4)アンモニアに対する消臭率が70%以上
(5)黄色ブドウ球菌に対する静菌活性値が2.2以上
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