JP2015026776A - エピタキシャルウェーハの製造方法 - Google Patents

エピタキシャルウェーハの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】気相成長装置のクリーニング後に製造される各エピタキシャルウェーハ間で外周部形状を略同じにできるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】クリーニング後の製造枚数にかかわらず条件を一定にして気相成長を行ったときのクリーニング後1枚目、2枚目及び次回のクリーニング直前の最終枚目のエピタキシャルウェーハ間での外周部の形状差異を測定する(S1)。気相成長の条件を変化させたときに外周部の形状がどのように変化するかの関係を測定する(S2)。S1の工程で得られた形状差異が無くなるように、S2の工程で得られた関係に基づいて1枚目、2枚目、最終枚目の条件をそれぞれ決定する(S3)。2枚目の条件と最終枚目の条件とから内挿して、3枚目から最終枚目の一つ前までの各条件を決定する(S4)。S3、S4で決定した1枚目から最終枚目までの各条件にしたがって気相成長を行う(S5)。
【選択図】図6

Description

本発明は、気相成長装置内で1枚ずつウェーハの表面にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
枚葉式の気相成長装置を用いたエピタキシャルウェーハの製造においては、単結晶シリコンウェーハ等のウェーハが気相成長装置の反応炉内に1枚ずつ投入され、反応炉内に設けられたサセプタに載置される。その後、ウェーハを所定温度に加熱しつつ、反応炉内に、トリクロロシラン等の原料ガス及び原料ガスを希釈する水素ガス等のキャリアガスを含む気相成長用ガスを流し、その気相成長用ガスによりウェーハ表面にエピタキシャル層を気相成長させるという工程を経て、エピタキシャルウェーハを得ている。この気相成長の際、ウェーハの裏面外周部にはデポジション(堆積物)(以下、裏面デポという)が発生してしまう。また、ウェーハ表面側でも外周部のエピタキシャル層の膜厚が急激に変化する。
一方、エピタキシャルウェーハの製造を繰り返すと、反応炉の内壁やサセプタに次第に気相成長の際に発生した副生成物が堆積していく。この堆積量が多くなるとエピタキシャルウェーハの品質に悪影響を及ぼす。そのため、エピタキシャルウェーハを所定枚数製造するたびに、反応炉内に塩化水素ガス等のエッチングガスを流して、反応炉内及びサセプタに堆積した堆積物を除去するクリーニング(ベーパーエッチング)が実施される。
そのクリーニング後にエピタキシャルウェーハの製造を再開したときに、クリーニング後1枚目に製造したエピタキシャルウェーハと、2枚目以降に製造したエピタキシャルウェーハとの間で、ウェーハ外周部の形状が異なってしまう(例えば特許文献1参照)。この不具合を解消するために、特許文献1には、クリーニング後1枚目と2枚目以降とで、略等しいエピタキシャル層の膜厚形状が得られるように気相成長の条件(プロセスレシピ)を変更する発明が開示されている。
国際公開第2011/033752号
本発明者は、クリーニング後に得られるエピタキシャルウェーハの外周部形状についてさらに詳しく調査したところ、クリーニング後1枚目のウェーハと2枚目のウェーハの間だけでなく、3枚目以降のウェーハ間でも外周部の形状が異なってしまうことがわかった。つまり、従来のエピタキシャルウェーハの製造方法においては、気相成長装置内のクリーニング後1枚目から、次回のクリーニング直前の最終枚目まで、1枚ごとに外周部に形状が異なってしまい、結果、ウェーハ間の品質に差が生じてしまうという問題点があった。この点、特許文献1の発明では、クリーニング後1枚目と2枚目間ではレシピ変更を行っているものの、3枚目以降ではレシピ変更を行っていなため、上記問題点を解決したものとはなっていない。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、気相成長装置内のクリーニング後、次回のクリーニングまでに製造される全てのエピタキシャルウェーハ間で外周部形状を略同じにすることができるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、気相成長装置内で1枚ずつウェーハの表面にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、
エピタキシャルウェーハを所定枚数製造するたびに前記気相成長装置内に堆積した堆積物を除去するクリーニングが実施され、
前記クリーニングを実施してから次回の前記クリーニングを実施するまでに製造する各エピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が略同じとなるように、前記クリーニング後のエピタキシャルウェーハの製造枚数に応じて気相成長の条件を変化させることを特徴とする。
本発明によれば、クリーニング後のエピタキシャルウェーハの製造枚数に応じて気相成長の条件(レシピ)を変化させる。つまり、クリーニング後1枚目、2枚目間だけでなく、3枚目以降のウェーハに対してもクリーニング後からの製造枚数に応じた気相成長の条件に変更する。そして、ウェーハごとの気相成長の条件は、各エピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が略同じとなるように設定されるので、その条件で気相成長を行うことにより、全てのエピタキシャルウェーハ間で外周部の形状を略同じにすることができる。
また、前記条件はウェーハ表裏面温度のバランスを含むのが好ましい。
本発明者の知見によると、クリーニング後に一定の条件で気相成長を行うと、1枚ごとに裏面デポ量が異なってしまう。その理由を説明すると、クリーニング後にエピタキシャルウェーハの製造を繰り返していくと、次第にサセプタ表面に気相成長の際に発生した副生成物が堆積していく。その堆積量に応じてサセプタ表面状態(熱放射率)が変化、つまりウェーハ裏面とサセプタ間の温度関係(温度ギャップ)が変化する。その温度関係が変わると、ウェーハ裏面側に回り込んだ気相成長用ガスによって、サセプタ表面及びウェーハ裏面それぞれに堆積する副生成物の量の割合が変化する。これにより、1枚ごとに裏面デポ量が異なってしまうと考えられる。
本発明では、クリーニング後の製造枚数に応じてウェーハ表裏面温度のバランスを変化させるので、サセプタ表面の堆積量が変化したとしても、ウェーハ裏面とサセプタ間の温度関係が変化してしまうのを抑制できる。よって、クリーニング後に製造された各エピタキシャルウェーハ間で裏面デポ量の差異を低減でき、外周部の形状を略同じにすることができる。
また、本発明における気相成長装置は、気相成長の際にウェーハを表面側から加熱する上ランプと、ウェーハを裏面側から加熱する下ランプとを有し、上ランプと下ランプの出力バランスをウェーハ表裏面温度のバランスとして前記製造枚数に応じて変化させるのが好ましい。
これによれば、気相成長装置に設けられた上ランプはウェーハを表面側から加熱し、下ランプはウェーハを裏面側から加熱するので、それら上ランプと下ランプの出力バランスを変化させることで、ウェーハ表裏面温度のバランスを簡単に変化させることができる。
この場合、クリーニング後エピタキシャルウェーハの製造枚数が多くなるにつれて上ランプと下ランプの合計出力に対する下ランプの出力の割合を増加させるのが好ましい。
クリーニング後にエピタキシャルウェーハの製造を繰り返していくと、次第にサセプタ表面の堆積量が増加していき、結果、サセプタからの熱放射率が低下する。また、下ランプは、ウェーハと下ランプの間にサセプタが配置される関係で、上ランプよりもサセプタ温度への影響が大きい。以上を鑑みて本発明では、クリーニング後エピタキシャルウェーハの製造枚数が多くなるにつれて上ランプと下ランプの合計出力に対する下ランプの出力の割合を増加させるので、製造枚数を重ねてサセプタ表面の堆積量が増加したとしても、サセプタ表面からの熱放射率の低下を抑制できる。その結果、クリーニング後の製造枚数にかかわらず、ウェーハ裏面とサセプタ間の温度関係を一定にでき、ウェーハ間で裏面デポ量を一定にできる。
また、本発明において、前記条件は、気相成長の際に気相成長装置内に流す気相成長用ガスの流量を含むのが好ましい。このように、クリーニング後の製造枚数に応じて気相成長用ガスを変化させることで、各エピタキシャルウェーハ間でウェーハ表面側の外周形状の差異、つまり、エピタキシャル層の外周膜厚の差異を低減できる。よって、エピタキシャルウェーハ間で外周形状の差異をより一層低減できる。
また、本発明において、前記クリーニング後に前記条件を一定にしてエピタキシャルウェーハの製造を繰り返したときの各エピタキシャルウェーハ間の外周部の形状差異を測定する形状差異測定工程と、
前記条件とエピタキシャルウェーハの外周部の形状との関係を測定する関係測定工程と、
前記形状差異測定工程で測定した形状差異がなくなるように、前記クリーニング後の製造枚数に応じた前記条件を前記関係に基づいて決定する条件決定工程とを含み、
前記条件決定工程で決定した条件にしたがってエピタキシャルウェーハを製造する。
これによれば、形状差異測定工程で測定した形状差異がなくなるように、クリーニング後の製造枚数に応じた気相成長の条件を決定し、決定した条件にしたがってエピタキシャルウェーハを製造するので、外周部の形状差異を低減したエピタキシャルウェーハを得ることができる。
この場合、前記形状差異測定工程では、前記クリーニング後1枚目、2枚目及び次回の前記クリーニング直前の最終枚目に製造したエピタキシャルウェーハ間における外周部の形状差異を測定し、
前記条件決定工程は、
前記形状差異測定工程で測定した前記1枚目、前記2枚目、及び前記最終枚目のエピタキシャルウェーハ間における外周部の形状差異がなくなるように、前記1枚目、前記2枚目、及び前記最終枚目の各ウェーハに対する前記条件を前記関係に基づいて決定する第1の条件決定工程と、
前記クリーニング後3枚目から前記最終枚目の一つ前までの各ウェーハに対する前記条件を、前記第1の条件決定工程で決定した前記2枚目のウェーハに対する前記条件と前記最終枚目のウェーハに対する前記条件とから内挿して求める第2の条件決定工程とを含むとするのが好ましい。
本発明者の知見によると、クリーニング後に条件を一定にして気相成長を行うと、1枚目と2枚目のウェーハ間で外周部の形状差異が大きく、3枚目以降では形状差異は小さい。本発明では、形状差異が大きいクリーニング後1枚目、2枚目の気相成長の条件を、形状差異測定工程及び関係測定工程で測定した実測値から決定するので(第1の条件決定工程)、1枚目、2枚目のウェーハ間で外周部の形状を略同じにできる正確な気相成長の条件を得ることができる。一方、3枚目から最終枚目の一つ前までの各ウェーハに対しては、第1の条件決定工程で決定した2枚目の条件と最終枚目の条件とから内挿して気相成長の条件を決定するので(第2の条件決定工程)、それら条件を得るまでの時間を節約できる。また、3枚目以降では外周部の形状差異は小さいので、2枚目、最終枚目の条件から内挿して3枚目以降の条件を求めたとしても、ウェーハ間で外周部の形状を略同じにできる気相成長の条件を得ることができる。
気相成長装置1の側面断面図である。 サセプタ3、そのサセプタ3に載置されたウェーハW、上ランプ51及び下ランプ52を斜め方向からみた斜視図である。 エピタキシャルウェーハおよびサセプタ3の外周付近の拡大図である。 クリーニング後の製造枚数にかかわらず一定の条件で気相成長を行ったときの各エピタキシャルウェーハの外周部の形状変化を示した図である。 図4の1枚目の外周部における形状変化と、9枚目の外周部における形状変化とをそれぞれ模式的に示した図である。 本発明におけるエピタキシャルウェーハの製造手順を示したフローチャートである。 クリーニング後1枚目、2枚目、9枚目(最終枚目)の外周部の形状変化(エピ膜厚+裏面デポ量)を示した図である。 クリーニング後1枚目、2枚目、9枚目(最終枚目)のエピ膜厚の変化を示した図である。 クリーニング後1枚目、2枚目、9枚目(最終枚目)の裏面デポ量の変化を示した図である。 LOWER POWERに対する裏面デポ量の変化を示した図である。 成長速度を種々変化させたときの外周部の形状変化を示した図である。 成長速度を種々変化させたときのエピ膜厚のみの形状変化を示した図である。 成長速度を種々変化させたときの裏面デポ量のみの形状変化を示した図である。 Main H2の流量を種々変化させたときの外周部の形状変化を示した図である。 Main H2の流量を種々変化させたときのエピ膜厚のみの形状変化を示した図である。 Main H2の流量を種々変化させたときの裏面デポ量のみの形状変化を示した図である。 SLIT H2の流量を種々変化させたときの外周部の形状変化を示した図である。 SLIT H2の流量を種々変化させたときのエピ膜厚のみの形状変化を示した図である。 SLIT H2の流量を種々変化させたときの裏面デポ量のみの形状変化を示した図である。 比較例におけるクリーニング後1枚目から5枚目までの外周部の形状変化を示した図である。 実施例におけるクリーニング後1枚目から5枚目までの外周部の形状変化を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、ウェーハ(例えばシリコンウェーハ)の表面上にエピタキシャル層(例えばシリコン単結晶膜)を気相成長させる枚葉式の気相成長装置1の側面断面図を示している。
気相成長装置1は透明石英部材等から構成された反応炉2を備えている。その反応炉2内には、ウェーハWをその裏面側から支持する例えば黒鉛製の円盤状サセプタ3が水平に設けられている。なお、サセプタ3の表面には、耐熱性、耐食性、清浄度等を向上するために、例えば炭化珪素(SiC)やPoly−Siでコーティングされている。サセプタ3の上面には、ウェーハWを載置するための凹形状のポケット31が形成されている。そのポケット31は、平面視で、ウェーハWの直径(例えば300mm)よりも少し大きい直径の円形に形成されている。また、ポケット31の深さは、ウェーハWの厚さと同等となっている。詳細には、ポケット31は、その外周に形成された外周部31aと、外周部31aの内側にて外周部31aよりも深く形成された内側部31bとの2段構造となっている(図3も参照)。ウェーハWがポケット31に載置されると、外周部31aにてウェーハWの外周部が支持される一方で、内側部31bとウェーハ裏面との間には隙間を有する。これによって、外周部に比べて中央部の温度が高くなりやすいウェーハWに対して面内均一に加熱できるようにしている。
また、サセプタ3には、ポケット31の底面とサセプタ裏面との間を貫通する複数の貫通孔32が形成されている。それら貫通孔32は、サセプタ3にウェーハWを載せ、またはサセプタ3からウェーハWを外す際に、サセプタ3に対してウェーハWを昇降させるためのリフトピン4が挿入されるリフトピン孔である。
また、リフトピン孔32とは別に、サセプタ3には、ポケット31の底面とサセプタ裏面との間を貫通する複数の貫通孔33が形成されている。それら貫通孔33は、リフトピン孔32より外側に形成され、ウェーハ裏面から発生する物質(例えばウェーハWにドープしたボロン)をサセプタ3の下側領域に排出させ、その物資がサセプタ3の上側領域に回り込むのを防止するための孔である。
サセプタ3は、その下面がサポートシャフト7により支持されている。そのサポートシャフト7は、支柱71と、その支柱71の上部から斜め上方に放射するように設けられた複数のアーム72とを備えている。各アーム72の先端がサセプタ3の下面外周部に接続されている。支柱71には支柱71をその軸周りに回転させる駆動装置(図示外)が接続されている。その駆動装置により支柱71が回転することで、気相成長時にはサセプタ3及びウェーハWが回転する。これによって、気相成長の際にガスがウェーハWの表面に均一に供給されるようになっている。
反応炉2には、反応炉2内に原料ガス(例えばトリクロロシラン(TCS))及び原料ガスを希釈するためのキャリアガス(例えば水素)を含む気相成長用ガスを、サセプタ3の上側領域に導入してサセプタ3に載置されたウェーハWの表面上に供給する第1のガス導入管15が接続されている。その第1のガス導入管15は、反応炉2の水平方向における一端側に設けられている。また、第1のガス導入管15と同じ側には、キャリアガスをサセプタ3の下側領域に導入する第2のガス導入管16が接続されている。この第2のガス導入管16から導入されるキャリアガスは、サセプタ3の上側領域に導入される気相成長用ガスとの間の圧力差を調整するためのガスである。この調整により、サセプタ3の上側領域に導入される気相成長用ガスが不本意にサセプタ3の下側領域に回り込んでしまうのを抑制できる。
反応炉2の、第1のガス導入管15、第2のガス導入管16が接続された反対側には、反応炉2内からガスを排出するガス排出管17が接続されている。
また、反応炉2の周囲には、気相成長時にウェーハWを気相成長温度(例えば900〜1200℃)まで加熱するハロゲンランプ等のランプ51、52が配置されている。詳細には、反応炉2の上方には、気相成長の際にウェーハWを表面側から加熱する上ランプ51が配置されている。また、反応炉2の下方には、気相成長の際にウェーハWを裏面側から加熱する下ランプ52が配置されている。
図2は、サセプタ3、そのサセプタ3に載置されたウェーハW、上ランプ51及び下ランプ52を斜め方向からみた図(斜視図)を示している。図2に示すように、上ランプ51及び下ランプ52はそれぞれ、サセプタ3、ウェーハWの径方向及び周方向に配置された複数のランプ50から構成されている。気相成長装置1では、これら上ランプ51、下ランプ52の出力を別々にコントロールできるようになっている。これによって、ウェーハ表裏面温度のバランス、つまりウェーハWの表面、裏面の温度差を自由に設定することができる。
図1の気相成長装置1を用いてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する際の一般的な手順を説明すると、先ず、ランプ51、52により投入温度(例えば650℃)に調整した反応炉2内にシリコンウェーハWを搬入する。ここで反応炉2にはシリコンウェーハWが投入される前段階から、ガス導入管15、16を介して水素ガスが導入されている。
次にサセプタ3上のシリコンウェーハWをランプ51、52により熱処理温度(例えば1050〜1200℃)まで加熱する。次に、シリコンウェーハWの表面に形成されている自然酸化膜を除去する為の気相エッチングを行う。なお、この気相エッチングは、具体的には、次工程である気相成長の直前まで行われる。
次に、シリコンウェーハWを所望の成長温度(例えば1050〜1180℃)に合わせ、第1のガス導入管15からはシリコンウェーハWの表面上に原料ガス(例えばトリクロロシラン)及びキャリアガス(例えば水素)を、第2のガス導入管16からはサセプタ3の下側領域にキャリアガス(例えば水素)を導入することによって、シリコンウェーハWの表面上にシリコン単結晶膜を気相成長させシリコンエピタキシャルウェーハとする。最後に、反応炉2を取り出し温度(例えば650℃)まで降温した後、シリコンエピタキシャルウェーハを反応炉2外に搬出する。
ここで、図3は、上記手順により製造されたエピタキシャルウェーハとそのエピタキシャルウェーハが載置されたサセプタ3の外周付近の様子(側面拡大図)を示している。図3に示すように、ウェーハWの表面にはエピタキシャル層101が形成され、そのエピタキシャル層101の外周部101aの形状(膜厚)は急激に変化する傾向がある。なお、図3においては、外周部101aは他の部分に比べて膜厚が薄くなっている(ダレが発生している)。
また、エピタキシャルウェーハの裏面外周部には裏面デポ102が発生する傾向がある。裏面デポ102が発生する原因としては、原料ガスはウェーハとサセプタ3の隙間や原料ガス供給の上流側の隙間からサセプタ下部に回り込みやすく、ウェーハ外周部に堆積しやすい。そのため、ウェーハ裏面外周部に裏面デポが局所的に発生すると考えられる。
一方で、シリコンエピタキシャルウェーハの製造を繰り返していくと、反応炉2の内壁、サセプタ3の表面等、気相成長装置1内の各部には、気相成長の際に発生したシリコン由来の副生成物が堆積していく。その副生成物の堆積量は、エピタキシャルウェーハの製造枚数を重ねるにつれて次第に多くなっていき、得られるエピタキシャルウェーハの品質に悪影響を及ぼす。そこで、エピタキシャルウェーハを所定枚数製造するたびに、反応炉2の内壁やサセプタ3の表面に堆積した副生成物を除去するクリーニングが実施される。そのクリーニングは、反応炉2内にウェーハWが投入されていない状態で、反応炉2内に塩化水素ガスを導入して、その塩化水素ガスにより反応炉2内をベーパーエッチングすることにより、行われる。
そして、上記「発明が解決しようとする課題」の欄でも説明したように、反応炉2のクリーニング(ベーパーエッチング)後にエピタキシャルウェーハの製造を再開すると、気相成長の条件を一定とした場合には、得られる各エピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が異なってしまうことが明らかとなった。ここで、図4は、クリーニング後に製造された複数のエピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が異なっていることを示した図である。詳細には、図4は、クリーニング後に9枚分のエピタキシャルウェーハを1枚ずつ順次製造して、得られた各エピタキシャルウェーハごとにウェーハ中心からの距離に対するウェーハの目標厚からのずれ量の変化(形状変化)を示している。図4において、各エピタキシャルウェーハの元となるウェーハは、直径が300mmのP−のシリコン基板であり、エピタキシャル層の目標膜厚は4μmである。また、ずれ量は、気相成長前後のウェーハ厚の差分である。
図4に示すように、クリーニング後1枚目から9枚目までの全てのエピタキシャルウェーハ間で、ウェーハ中心からの距離が140mm以上の範囲(外周部)におけるずれ量に差異が生じていることがわかる。図5は、図4の1枚目の外周部におけるずれ量の変化(外周形状変化)と、9枚目の外周部におけるずれ量の変化(外周形状変化)とをそれぞれ実線201、破線202で模式的に示している。図4、図5に示すように、クリーニング後1枚目における外周形状(ずれ量)は、外周縁に近づくにしたがって最初は比較的フラットに変化し、外周縁になると急激に上昇する。これに対し、クリーニング後9枚目における外周形状は、外周縁に近づくにしたがって最初は下降するように変化し、外周縁になると急激に上昇するが、その上昇の度合いは1枚目よりも小さい。
また、クリーニング後2枚目から8枚目における外周形状は、図4に示すように、1枚目と9枚目の間で、枚数が大きくなるにしたがって次第に9枚目の外周形状に近づくように変化する。また、1枚目の外周形状と2枚目の外周形状の差分(具体的には例えば、ウェーハ中心からの距離が147mmでのずれ量の差分)は2枚目以降のそれに比べて大きくなっている。
このように、クリーニング後にエピタキシャルウェーハの製造を再開すると、1枚ごとに外周部の形状が異なってしまうが、これは、エピタキシャル層101(図3参照)の外周部101aにおける膜厚(エピ膜厚)と、裏面デポ102(図3参照)の量との両方が、クリーニング後の製造枚数に応じて変化することによるものである。クリーニング後の製造枚数に応じてエピ膜厚と裏面デポ量とが変化してしまうのは、クリーニング後の製造枚数に応じてサセプタ3の表面に堆積する副生成物の量が変化するためと考えられる。すなわち、サセプタ3の表面外周34(図3参照)には、クリーニング後に製造枚数を重ねるにつれて次第に副生成部が堆積していくのに対し、サセプタ3のウェーハWが載る部分、つまりポケット31の底面には副生成物は堆積しない。そのため、ウェーハWの表面とサセプタ3の表面外周34との高さギャップが、クリーニング後の製造枚数を重ねるにつれて次第に大きくなり、ガスの流れに変化を及ぼすことでウェーハ外周部へのSi供給量が少なくなり、結果、エピタキシャル層の成長が下がる。これにより、クリーニング後の製造枚数に応じて外周部のエピ膜厚が変化、具体的には、クリーニング後の製造枚数が多くなるにつれて外周部のエピ膜厚が小さくなると考えられる。また、表面外周34の堆積量が変化すると、サセプタ3の外周温度(表面外周34の温度)やウェーハ外周部の温度が変化することも、エピ膜厚の変化に影響していると考えられる。
また、裏面デポ量の変化についていえば、サセプタ3の表面状態(熱放射率)が副生成物の堆積量によって変化し、サセプタ3の温度が変化するための影響と考えられる。
本発明では、クリーニング後に製造される各エピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が略同じとなるように、クリーニング後のエピタキシャルウェーハの製造枚数に応じて気相成長の条件を変化させている。以下、本発明におけるエピタキシャルウェーハの製造手順を詳細に説明する。図6は、その製造手順を示したフローチャートである。
先ず、反応炉2のクリーニングを行った後、1枚目から次回のクリーニング直前の最終枚目までの各ウェーハに対して順次気相成長を行って、1枚目から最終枚目までの各エピタキシャルウェーハを製造する(S1)。この際、下記の表1に示すように、1枚目から最終枚目の各ウェーハ間で気相成長の条件を一定にして気相成長を行う。なお、表1に示す気相成長の条件として、UPPER LANP POWER(上ランプ51の出力)と、LOWER LANP POWER(下ランプ52の出力)と、キャリアガスとしてのH2(水素)流量、原料ガスとしてのTCS(トリクロロシラン)の流量と、反応時間(気相成長時間)とを示しており、各々の条件をA、B、C、D、Eの一定のものとして表している。
Figure 2015026776
その後、得られた1枚目から最終枚目までのエピタキシャルウェーハのうち、1枚目、2枚目、最終枚目の各エピタキシャルウェーハ間における外周部の形状差異を測定する(S1)。図7はその測定結果を例示した図であり、詳細には、1枚目、2枚目、最終枚目としての9枚目のそれぞれにおける、ウェーハ中心からの距離に対するウェーハ厚の目標厚からのずれ量の変化(形状変化)を示している。なお、このずれ量は、例えばケー・エル・エー・テンコール社製のウェーハサイト等の膜厚測定器を用いて、気相成長前後でウェーハ面内の厚さ分布を測定し、差分を求めることにより、得られる。
なお、図7の結果は、ウェーハ表面側のエピ膜厚と裏面デポ量の両方を含んだ形状変化を示しているので、S1の工程では、エピ膜厚による形状変化と、裏面デポ量による形状変化とを別々に測定するのが好ましい。図8は、エピ膜厚による形状変化の測定結果を例示しており、詳細には、ウェーハ中心からの距離に対する1枚目、2枚目、最終枚目としての9枚目のエピ膜厚の目標膜厚からのずれ量の変化を示している。また、図9は、裏面デポ量による形状変化の測定結果を例示しており、詳細には、ウェーハ中心からの距離に対する1枚目、2枚目、最終枚目としての9枚目の裏面デポ量の目標値(ゼロ)からのずれ量の変化を示している。なお、図8、図9の測定結果は、図7の測定の際に用いた1枚目、2枚目、9枚目のエピタキシャルウェーハと同じものから得られた測定結果である。つまり、図8の測定結果と図9の測定結果を加算すると、図7の測定結果となる。
図8の測定結果は、例えば、フーリエ変換型赤外分光法(FTIR)を用いてウェーハ表面側のエピ膜厚の面内分布を測定することにより、得られる。また、図9の測定結果は、例えば、図7の測定結果と図8の測定結果の差分をとることにより得られる。図8、図9に示すように、エピ膜厚、裏面デポ量ともに、外周部(ウェーハ中心からの距離が140mm以上の範囲)で、1枚目、2枚目、9枚目間で差異が生じている。つまり、クリーニング後のエピタキシャルウェーハの製造枚数に応じて外周部のエピ膜厚と裏面デポ量の両方とも変化する。
図6の説明に戻り、次に、気相成長の条件を変化させたときに、エピタキシャルウェーハの外周形状がどのように変化するか、つまり、気相成長の条件と外周部の形状との関係を測定する(S2)。具体的には、クリーニング後1枚目(ただし何枚目でも良い)にウェーハに対して、気相成長の条件を種々変更したときの、外周部の形状変化(エピ膜厚、裏面デポ量)を測定する。ここでは、気相成長の条件の一つとして上ランプ51と下ランプ52の合計出力に対する下ランプ52の出力の割合を変化させたときの裏面デポ量の変化を測定する(S2)。図10はその測定結果を例示した図である。
図10において、横軸のLOWER POWERは、上ランプ51と下ランプ52の合計出力を100%としたときの下ランプ52の出力割合(%)を示している。例えば、LOWER POWER=55%のときには、UPPER POWER(上ランプ51の出力割合)は45%となっている。また、図10の各点はそれぞれクリーニング後1枚目のエピタキシャルウェーハにおける裏面デポ量を示し、ランプ51、52の出力バランス以外の気相成長の条件は各点間で一定となっている。さらに、図10では、上ランプ51と下ランプ52の合計出力は一定としている。また、図10の裏面デポ量は、ウェーハ中心からの距離が145mmから148mmまでの範囲における値である。
図10に示すように、LOWER POWER(%)が大きくなるにしたがって裏面デポ量が増加することがわかる。図10の測定結果では、裏面デポ量は、LOWER POWER(%)が大きくなるにしたがってほぼ線形に変化している。具体的には、LOWER POWER(%)が5%増加すると、裏面デポ量は約10nm増加する。
また、S2の工程では、ランプ51、52の出力バランス以外の気相成長の条件である、エピタキシャル層の原料となる原料ガス(TCS)の流量や、第1のガス導入管15(図1参照)から導入されるキャリアガスとしてのH2(以下、Main H2という)の流量や、第2のガス導入管16(図1参照)から導入されるキャリアガスとしてのH2(以下、SLIT H2という)の流量と、ウェーハ外周部の形状との関係も測定するのが好ましい。なぜなら、それら流量はエピ膜厚に影響を及ぼすからである。
ここで、図11〜図13は、TCS流量を種々変化させてエピタキシャル層の成長速度を種々変化させたとき、具体的には、成長速度を0.5μm/min〜2.0μm/minの範囲で、小、中、大の3パターンで変化させたときのクリーニング後1枚目における外周部の形状変化を示し、図11はエピ膜厚と裏面デポ量の両方を含んだ形状変化を、図12はエピ膜厚のみの形状変化を、図13は裏面デポ量のみの形状変化を示している。図11〜図13の横軸はウェーハ中心からの距離を示し、縦軸は目標値からのずれ量を示している。
図11に示すように、成長速度(TCS流量)を変化させると、外周部の形状も変化することがわかる。具体的には、成長速度(TCS流量)が増加するほど、外周部がダレる方向に形状変化、つまり厚さが薄くなる方向に形状変化する。また、図12に示すように、成長速度(TCS流量)が増加するほど、外周部のエピ膜厚がダレる方向に形状変化する。これに対し、裏面デポ量は、図13に示すように、成長速度(TCS流量)が変化してもほとんど変化していない。よって、図11の形状変化はエピ膜厚による形状変化が支配的であり、このことから、TCS流量は主にエピ膜厚に影響を及ぼすといえる。
図11又は図12の測定結果から、外周部(例えば、ウェーハ中心からの距離が145mmから148mmまでの範囲)における各TCS流量(成長速度)ごとのずれ量を抽出し、抽出した各ずれ量を各TCS流量(成長温度)に対して図示することにより、TCS流量と外周部のエピ膜厚との関係(厳密には、TCS流量と、外周部のエピ膜厚の目標膜厚からのずれ量との関係)を得ることができる。
図14〜図16は、Main H2の流量を50L/min〜100L/minの範囲で小、中、大の3パターンで変化させたときのクリーニング後1枚目における外周部の形状変化を示し、図14はエピ膜厚と裏面デポ量の両方を含んだ形状変化を、図15はエピ膜厚のみの形状変化を、図16は裏面デポ量のみの形状変化を示している。図14〜図16の横軸、縦軸は、図11〜図13の横軸、縦軸と同じである。
図14に示すように、Main H2の流量を変化させると、外周部の形状が変化することがわかる。具体的には、Main H2の流量が増加するほど、外周部がダレる方向に形状変化する。また、図15に示すように、Main H2の流量が増加するほど、外周部のエピ膜厚がダレる方向に形状変化する。これに対し、裏面デポ量は、図16に示すように、Main H2の流量が変化してもほとんど変化していない。よって、図14の形状変化はエピ膜厚による形状変化が支配的であり、このことから、Main H2の流量は主にエピ膜厚に影響を及ぼすといえる。
図14又は図15の測定結果から、外周部(例えば、ウェーハ中心からの距離が145mmから148mmまでの範囲)における各流量ごとのずれ量を抽出し、抽出した各ずれ量を各流量に対して図示することにより、Main H2の流量と、外周部のエピ膜厚との関係を得ることができる。
図17〜図19は、SLIT H2の流量を0L/min〜30L/minの範囲で小、大の2パターンで変化させたときのクリーニング後1枚目における外周部の形状変化を示し、図17はエピ膜厚と裏面デポ量の両方を含んだ形状変化を、図18はエピ膜厚のみの形状変化を、図19は裏面デポ量のみの形状変化を示している。図17〜図19の横軸、縦軸は、図11〜図13の横軸、縦軸と同じである。
図17に示すように、SLIT H2の流量を変化させると、外周部の形状が変化することがわかる。具体的には、SLIT H2の流量が増加するほど、外周部がダレる方向に形状変化する。また、図18に示すように、SLIT H2の流量が増加するほど、外周部のエピ膜厚がダレる方向に形状変化する。これに対し、裏面デポ量は、図19に示すように、SLIT H2の流量が変化してもほとんど変化していない。よって、図17の形状変化はエピ膜厚による形状変化が支配的であり、このことから、SLIT H2の流量は主にエピ膜厚に影響を及ぼすといえる。
図17又は図18の測定結果から、外周部(例えば、ウェーハ中心からの距離が145mmから148mmまでの範囲)における各流量ごとのずれ量を抽出し、抽出した各ずれ量を各流量に対して図示することにより、SLIT H2の流量と、外周部のエピ膜厚との関係を得ることができる。
なお、SLIT H2の流量がエピ膜厚に影響を及ぼす理由としては、SLIT H2の流量が変化すると、サセプタ3の上側領域と下側領域の間の圧力バランスが変化する。また、図3に示すように、サセプタ3の外周とウェーハWの外周縁との間には隙間35があるが、ガスはこの隙間35を上下に流れる。そして、上側領域の圧力が高いほど隙間35から下側へのガス移動が優勢となり、逆に上側領域の圧力が低いほど隙間35から上側へのガス移動が優勢となる。つまり、SLIT H2の流量の変化することによる、隙間35からのガス移動の変化が、外周部のエピ膜厚に影響を及ぼすと考えられる。
なお、以上では、ランプ51、52の出力バランス、TCS流量、キャリアガス(Main H2、SLIT H2)の流量と外周部の形状との関係を求めることを説明したが、それら関係に加えて、またはそれら関係に代えて、他の気相成長の条件、具体的には例えば、反応時間と外周部の形状との関係や、成長温度と外周部の形状との関係を求めても良い。また、S1の工程とS2の工程はどちらを先に実施しても良い。
図6の説明に戻り、次に、S1、S2の工程で得られた測定結果を用いて、クリーニング後1枚目、2枚目及び最終枚目のエピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が略同じとなるように、それら1枚目、2枚目、最終枚目の気相成長の条件を決定する(S3)。言い換えると、S1の工程で測定した形状差異が無くなるように、S2の工程で測定した関係に基づいて、1枚目、2枚目、最終枚目の気相成長の条件を決定する。
具体的には例えば、S1の工程で得られた1枚目、2枚目、最終枚目の各エピタキシャルウェーハの外周形状のうち、どの外周形状に他の外周形状を合わせるのかを決定する。ここでは、例えば、1枚目の外周形状に合わせると決定する。この場合、1枚目の気相成長の条件は、S1の工程で用いた気相成長の条件(現状の条件)と同じとする。
次に、2枚目の気相成長の条件を決定することを考える。具体的には、S1の工程で得られた測定結果(図7〜図9)から、外周部(具体的には例えば145mmから148mmまでの範囲)における1枚目の形状(エピ膜厚、裏面デポ量)と2枚目の形状(エピ膜厚、裏面デポ量)とをそれぞれ抽出する。この際、エピ膜厚は図8から、裏面デポ量は図9から抽出する。なお、エピ膜厚と裏面デポ量とを区別しないで気相成長の条件を決定する場合には、エピ膜厚と裏面デポ量の両方を含んだ図7から、1枚目、2枚目の外周部の形状を抽出しても良い。そして、抽出した1枚目の形状と2枚目の形状との差分を算出する。この際、エピ膜厚と裏面デポ量とを区別して、1枚目、2枚目間の差分を算出するのが好ましい。
次に、算出した差分を補償する気相成長の条件を、S2の工程で得られた関係に基づき決定する。例えば2枚目の裏面デポ量が1枚目の裏面デポ量に比べて10nm少ない場合、つまり、2枚目の裏面デポ量−1枚目の裏面デポ量=−10nmの場合には、図10の関係から、−10nmを補償する裏面デポ量、つまり+10nmだけ変化させるLOWER POWER(%)を読み取り、LOWER POWERを調整する。
同様にして、1枚目と2枚目のエピ膜厚の差分を補償するTCS流量やキャリアガス流量を、S2の工程で求めたTCS流量とエピ膜厚との関係や、Main H2とエピ膜厚との関係や、SLIT H2とエピ膜厚との関係に基づき決定する。この際、TCS流量、Main H2の流量、SLIT H2の流量の全てを1枚目の流量から変更しても良いし、一部だけを1枚目の流量から変更しても良い。全てを変更する場合には、1枚目と2枚目のエピ膜厚の差分がXとすると、例えば、Xのうちの半分はTCS流量の変更で補償し、残り半分はキャリアガス(Main H2、SLIT H2)の変更で補償するようにして、各々の流量を決定する。
2枚目の気相成長の条件を決定した後、次に、最終枚目の気相成長の条件を2枚目と同様にして決定する(S3)。具体的には、S1の工程で得られた測定結果(図7〜図9)から、最終枚目と2枚目の形状(エピ膜厚、裏面デポ量)の差分を算出する。そして、その差分を補償する気相成長の条件をS2の工程で得られた関係から求め、LOWER POWERを調整する。なお、最終枚目と1枚目の形状差分に基づいて、最終枚目の気相成長の条件を決定しても良い。
なお、以上では、1枚目の形状に、2枚目、最終枚目の形状が合うように、1枚目、2枚目、最終枚目の気相成長の条件を決定することを説明したが、1枚目以外の形状に合うように、各枚目の気相成長の条件を決定しても良い。例えば、2枚目の形状に合わせる場合には、S3の工程では、2枚目の気相成長の条件を、S1の工程で用いた気相成長の条件(表1のA〜E)と同じとし、1枚目、最終枚目の条件を、その2枚目の条件(A〜E)を基準に決定する。
S3で1枚目、2枚目、最終枚目の条件を決定した後、次に、3枚目から最終枚目の一つ前までの気相成長の条件を決定する(S4)。図4で説明したように、2枚目から8枚目(最終枚目の一つ前)の形状は、枚数が大きくなるにしたがって次第に9枚目(最終枚目)に近づくように変化する。さらに、2枚目から9枚目の隣り合う2枚間における形状差分は、1枚目と2枚目間の形状差分に比べて小さい。そこで、S4の工程では、2枚目から最終枚目の間では、ウェーハ間の形状差分は、枚数が多くなるにしたがってほぼ線形に変化すると仮定する。そして、S3の工程で決定した2枚目の条件と最終枚目の条件との間で枚数が多くなるにしたがって線形に条件が変化するように、3枚目から最終枚目の一つ前までの各条件を、S3で決定した2枚目の条件と最終枚目の条件とから内挿して決定する。
表2には、S3、S4の工程で決定した1枚目から最終枚目までのそれぞれの気相成長の条件を、上記表1の気相成長の条件(A〜E)を基準とした形で示している。表2に示すように、本発明では、1枚ごとに気相成長の条件を変化させることになる。また、表2では、UPPER POWERは枚数が多くなるほど減少させ、反対に、LOWER POWERは枚数が多くなるほど増加させる。なお、表2では、キャリアH2流量は枚数が多くなるほど減少させ、TCS流量は枚数が多くなるほど増加させ、反応時間は枚数が多くなるほど減少させる傾向を示したが、これはあくまで例示であって、表2とは逆の傾向となる場合もあり得る。また、表2では、UPPER POWER、LOWER POWER、キャリアH2流量、TCS流量、反応時間の全ての条件を、1枚ごとに変更する例を示しているが、一部の条件だけを変更し、残りの条件は1枚目から最終枚目の間で一定としても良い。なお、表2中のa1〜ax、c1〜cx、d1〜dx、e1〜exは、各々の条件の1枚ごとの変化分を表している。
Figure 2015026776
以上に説明したS1からS4の工程は、実際にエピタキシャルウェーハ製造を実施するにあたっての事前準備に位置づけられる工程である。S1〜S4の工程でクリーニング後の製造枚数に応じた条件を決定した以降は、その決定した条件(表2の条件)にしたがってエピタキシャルウェーハを製造する(S5)。つまり、クリーニング後1枚目では表2の1枚目の列の条件で、2枚目では表2の2枚目の列の条件で、・・・最終枚目では表2の最終枚目の列の条件で、それぞれ気相成長を行う。これによって、クリーニング後の製造枚数にかかわらず、外周部の形状が略同じとなるエピタキシャルウェーハを得ることができる。
本発明の効果を確認するために以下の実験を行った。
(比較例)
先ず、気相成長装置のクリーニングを行った後、1枚ずつ順次、5枚分のシリコンエピタキシャルウェーハを製造した。この際、1枚目から5枚目の間で一定の製造条件とした。また、シリコンエピタキシャルウェーハの元となる基板は、直径300mm、P−のシリコン基板を用いた。エピタキシャル層の目標膜厚は4μmとした。
得られた5枚のエピタキシャルウェーハのそれぞれに対して、外周部の形状(エピ膜厚+裏面デポ量)を測定した。この測定は、ケー・エル・エー・テンコール社製のウェーハサイトを用いて、気相成長前後でウェーハ面内の厚さ分布を測定し、得られた気相成長前後の厚さ分布の差分を外周部の形状として求めた。図20はその測定結果を示している。図20において、横軸はウェーハ中心からの距離を示し、縦軸はエピタキシャル層の目標膜厚(=4μm)からのずれ量を示している。図20に示すように、気相成長の条件を一定にすると、中心からの距離が140mm以上の範囲の形状、つまり外周部の形状がウェーハ間で異なってしまう。
(実施例)
次に、図6のS1〜S4の工程にしたがって、クリーニング後1枚目から5枚目までの各エピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が略同じとなる気相成長の条件を求めた。具体的には、先ず、図20の1枚目、2枚目、5枚目間での形状差分が無くなるように、あらかじめ求めておいた気相成長の条件と外周部の形状との関係(図10〜図19)と、比較例の条件とを用いて、1枚目、2枚目、5枚目のそれぞれの気相成長の条件(改善条件)を求めた(図6のS3)。次に、得られた2枚目の改善条件と5枚目の改善条件とから内挿して、3枚目、4枚目の改善条件を求めた(図6のS4)。1枚目の改善条件は比較例の条件と同じとした。
その後、気相成長装置のクリーニングを行った後、求めた改善条件で、1枚ずつ順次、5枚分のシリコンエピタキシャルウェーハを製造した。シリコンエピタキシャルウェーハの元となる基板は、直径300mm、P−のシリコン基板を用いた。エピタキシャル層の目標膜厚は4μmである。得られた5枚のエピタキシャルウェーハのそれぞれに対して、図20と同様にして、外周部の形状を測定した。図21はその測定結果を示している。図21に示すように、5枚のウェーハ間で外周部の形状を略同じにすることができた。
以上説明したように、本実施形態によればクリーニング後の製造枚数に応じて気相成長の条件を変化させているので、クリーニング後の製造枚数にかかわらず外周部の形状が一定の高品質なエピタキシャルウェーハを得ることができる。また、外周部の形状差異が小さい2枚目から最終枚目の一つ前までは、2枚目の条件と最終枚目の条件とから内挿して条件を求めているので、その条件を求めるまでの時間を節約できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、上記実施形態ではシリコンエピタキシャルウェーハの製造に本発明を適用した例を説明したが、シリコンエピタキシャルウェーハ以外のエピタキシャルウェーハ(例えばGaP等の化合物半導体エピタキシャルウェーハ)の製造に本発明を適用しても良い。
また、上記実施形態では、図6のS3の工程では2枚目の条件も決定したが、図6のS3では1枚目、最終枚目の条件だけを決定し、S4の工程では、2枚目の条件も内挿して求めるようにしても良い。この場合、1枚目の条件と最終枚目の条件とから2枚目以降の条件を内挿して求めるようにする。これによって、2枚目の条件を求める際の時間も節約できる。
また、本発明は、3枚目から最終枚目の一つ前までの各条件を、内挿して求めないで、1枚目、2枚目、最終枚目と同じように求めるという態様を除外する趣旨ではない。
1 気相成長装置
2 反応炉
3 サセプタ
51 上ランプ
52 下ランプ

Claims (7)

  1. 気相成長装置内で1枚ずつウェーハの表面にエピタキシャル層を気相成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法において、
    エピタキシャルウェーハを所定枚数製造するたびに前記気相成長装置内に堆積した堆積物を除去するクリーニングが実施され、
    前記クリーニングを実施してから次回の前記クリーニングを実施するまでに製造する各エピタキシャルウェーハ間で外周部の形状が略同じとなるように、前記クリーニング後のエピタキシャルウェーハの製造枚数に応じて気相成長の条件を変化させることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
  2. 前記条件はウェーハ表裏面温度のバランスを含むことを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
  3. 前記気相成長装置は、気相成長の際にウェーハを表面側から加熱する上ランプと、ウェーハを裏面側から加熱する下ランプとを有し、
    前記上ランプと前記下ランプの出力バランスを前記ウェーハ表裏面温度のバランスとして前記製造枚数に応じて変化させることを特徴とする請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
  4. 前記クリーニング後エピタキシャルウェーハの製造枚数が多くなるにつれて前記上ランプと前記下ランプの合計出力に対する前記下ランプの出力の割合を増加させることを特徴とする請求項3に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
  5. 前記条件は、気相成長の際に前記気相成長装置内に流す気相成長用ガスの流量を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
  6. 前記クリーニング後に前記条件を一定にしてエピタキシャルウェーハの製造を繰り返したときの各エピタキシャルウェーハ間の外周部の形状差異を測定する形状差異測定工程と、
    前記条件とエピタキシャルウェーハの外周部の形状との関係を測定する関係測定工程と、
    前記形状差異測定工程で測定した形状差異がなくなるように、前記クリーニング後の製造枚数に応じた前記条件を前記関係に基づいて決定する条件決定工程とを含み、
    前記条件決定工程で決定した条件にしたがってエピタキシャルウェーハを製造することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
  7. 前記形状差異測定工程では、前記クリーニング後1枚目、2枚目及び次回の前記クリーニング直前の最終枚目に製造したエピタキシャルウェーハ間における外周部の形状差異を測定し、
    前記条件決定工程は、
    前記形状差異測定工程で測定した前記1枚目、前記2枚目、及び前記最終枚目のエピタキシャルウェーハ間における外周部の形状差異がなくなるように、前記1枚目、前記2枚目、及び前記最終枚目の各ウェーハに対する前記条件を前記関係に基づいて決定する第1の条件決定工程と、
    前記クリーニング後3枚目から前記最終枚目の一つ前までの各ウェーハに対する前記条件を、前記第1の条件決定工程で決定した前記2枚目のウェーハに対する前記条件と前記最終枚目のウェーハに対する前記条件とから内挿して求める第2の条件決定工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
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