JP2015024575A - 熱転写記録材料及び印画物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱転写受像シートに熱転写画像が形成された印画物で、高温下に保存しても、熱転写画像の印画濃度、色差等が変化することを抑制し、熱転写時に熱転写シートとの離型性に優れ、さらに印画物の熱転写画像を保護層で覆った形態で、印画物を曲げても、印画物表面に「ワレ」が生じることを抑制できる印画物を提供する。【解決手段】 基材シート上に、少なくともバインダー樹脂を含有する受容層を設けた熱転写受像シートと、基材上に熱転写性樹脂層を設けた保護層転写シートの組合せからなる熱転写記録材料で、前記受容層のバインダー樹脂は、塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、前記受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含み、前記保護層転写シートの熱転写性樹脂層に、塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含むようにした。【選択図】 図1

Description

本発明は、基材シート上に、少なくともバインダー樹脂を含有する受容層を設けた熱転写受像シートと、基材上に熱転写性樹脂層を設けた保護層転写シートの組合せからなる熱転写記録材料、さらにその熱転写記録材料を用いて作製される印画物に関わるものである。
近年、カラーハードコピーとして種々の熱転写方法が広く普及している。これらの熱転写方法の中で、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)をプラスチックフィルム等の基材上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせて、熱転写により熱転写受像シート上にフルカラー画像を形成する熱拡散型転写方式が知られている。この方法は、加熱手段としてプリンターのサーマルヘッドが使用され、極めて短時間の加熱によって3色又は4色の多数の色素を受像シートに転移させ、色素により原稿のフルカラー画像を再現するものであり、熱移行性染料を色材としているため、画像濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に再現できるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。その画像は、銀塩写真に匹敵する高品質なものである。
熱転写受像シートとして、保存性と離型性を向上させるために、受容層のバインダー樹脂としてTgが高いものを使用することが知られている(例えば特許文献1)。しかし、Tgが高いポリマーラテックスを受容層のバインダー樹脂として用いた場合には、印画物を曲げた時にワレが発生してしまう。
特開平3−184893号公報
したがって、本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱転写受像シートに熱転写画像が形成された印画物において、高温下に保存しても、熱転写画像の印画濃度、色差などが変化することを抑制し、熱転写時に熱転写シートとの離型性に優れ、さらに印画物を曲げても、印画物表面に「ワレ」が生じることを抑制できる印画物を提供することである。
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、基材シート上に、少なくともバインダー樹脂を含有する受容層を設けた熱転写受像シートと、基材上に熱転写性樹脂層を設けた保護層転写シートの組合せからなる熱転写記録材料において、
前記受容層のバインダー樹脂は、塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、前記受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含み、
前記保護層転写シートの熱転写性樹脂層に、塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含むことを特徴とする熱転写記録材料である。
また、本発明は基材シート上に少なくともバインダー樹脂を含有する受容層を設けた熱転写受像シートで、
前記受容層は染料による熱転写画像を有し、前記熱転写画像上の少なくとも一部に転写された保護層を有する印画物において、
前記受容層のバインダー樹脂は、塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含み、
前記保護層は、塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含むことを特徴とする印画物である。
本発明によれば、熱転写画像が形成された印画物において、高温下に保存しても、熱転写画像の印画濃度、色差などが変化することを抑制し、すなわち保存性が良好となり、熱転写時に熱転写シートとの離型性に優れ、さらに印画物の熱転写画像を保護層で覆った形態で、印画物を曲げても、印画物表面に「ワレ」が生じることを抑制できる。
本発明の熱転写記録材料の一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の印画物の一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の熱転写記録材料で使用する熱転写受像シートの一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の熱転写記録材料で使用する保護層転写シートの一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の熱転写受像シート1は、図1に示すように基材シート2に直接的に受容層3が設けられていてもよく、図3に示すように、基材シート2と受容層3との間に中間層4が設けられていてもよい。本発明において、中間層4とは、基材シート2と受容層3との間にある全ての層を意味する。本発明の熱転写受像シート1は、中間層を設けることにより、例えば、断熱性、クッション性、バリア性、層間接着性、白色性、隠蔽性、帯電防止性等に優れたものとすることができる。
図1は本発明の熱転写記録材料の一つの実施形態を示し、熱転写受像シート1と保護層転写シート10の組合せからなる熱転写記録材料20であり、その熱転写受像シート1は基材シート2上に、少なくともバインダー樹脂を含有する受容層3を設けた構成である。基材シート2と受容層3との間に、断熱性、クッション性、接着性など各種の機能を有する中間層を設ける、また基材シート2の受容層3の設けられた面と反対面に、裏面層を設けるなど、その他の層をさらに有してもよい。例えば、図3に示すように、基材シート2の一方の面に、中間層4、受容層3を順に積層し、その基材シート2の他方の面に裏面層5を設けることができる。また、この構成で、基材シート2の表面がコロナ処理、プラズマ処理など、易接着処理されていてもよく、基材シート2と中間層4の間、基材シート2と裏面層5の間に、接着層を設けてもよい。
また図1に示す保護層転写シート10は、基材12上に1層の熱転写性樹脂層11を設けた構成であるが、図示した構成に限らずに、熱転写性樹脂層を、基材側から順に、透明性樹脂層、熱接着性樹脂層の2層に分けて積層させてもよい。また、基材12と熱転写性樹脂層11との間に、離型層を設けて、基材から熱転写性樹脂層を熱転写の際に、剥離しやすくすることができる。また保護層転写シートは基材の熱転写性樹脂層の設けられた面と反対面に、耐熱滑性層を設けることもできる。
また、印画物を形成する際に、熱転写受像シートの受容層に、別に用意した熱転写シートとして、基材上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)等の各色の染料層を面順次に繰り返し形成したものを用いて、染料を転写して熱転写画像を形成することができる。その熱転写画像形成後、保護層転写シートを用いて、その受容層表面に熱転写性樹脂層、つまり保護層を転写して印画物を形成する。
保護層転写シートとして、上記の染料層を有する熱転写シートを兼ねたものとして、例えば図4に示すように、基材12上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)等の各色の染料層の熱転写性色材層13と、熱転写性樹脂層11(保護層)を面順次に繰り返し形成した、染料層及び保護層を一体に形成した熱転写シートの形態にすることもできる。
図2は本発明の印画物の一つの実施形態を示し、基材シート2上に受容層3を設けた熱転写受像シートの受容層3に、染料を転写して熱転写画像31が形成され、その受容層3の上に、保護層11、すなわち保護層転写シートから熱転写により転写される熱転写性樹脂層11を有した構成である。
以下に、本発明の熱転写記録材料の熱転写受像シート、保護層転写シート、さらに印画物について、詳述する。
<熱転写受像シート>
(基材シート)
熱転写受像シート1の基材シート2は、受容層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。
このような基材シート2の材料としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムも使用でき、特に限定されない。また、上記基材シートの任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。
本発明においては、市販の基材シートを用いることもでき、例えば、RCペーパー(三菱製紙(株)製)等が好ましい。なお、基材シートの厚みは、熱転写受像シートに要求される強度や耐熱性等や、基材シートとして採用した素材の材質に応じて、適宜変更可能であり、具体的に、基材シートの厚みは、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
(受容層)
熱転写受像シートにおける受容層3は、熱転写による画像形成時に熱転写シートから転写される昇華性染料を受容するとともに、受容した昇華性染料を受容層に保持することで、受容層の面に画像を形成かつ維持することができる。本発明においては、受容層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、そのバインダー樹脂が染料染着性を有し、かつ水系溶媒に分散または溶解可能であり、そのバインダー樹脂は塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含有するものである。
受容層のバインダー樹脂は、塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含む条件である。その塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステルの共重合体などの塩化ビニルモノマーを用いた共重合体が挙げられる。上記の受容層は水系溶媒に分散または溶解可能である樹脂を主成分として構成されるので、いわゆる水系受容層といえる。上記に挙げた好ましい樹脂として、市販のバインダー樹脂を用いることもでき、例えば、ビニブラン900(日信化学工業(株)製 塩化ビニルとアクリル酸エステルとの共重合体)、ビニブラン985(日信化学工業(株)製 ポリ塩化ビニル)等を用いることができる。
なお、本明細書中、ポリマーラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒(水系溶媒)中に分散したもののことを言う。分散状態としては、球状のポリマー重合粒子や、ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。
また、上記の塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上の樹脂の他に、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニルポリマー、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等を混合、添加することができる。特に好ましいものは、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体であるアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルである。このようなバインダー樹脂を用いることが、受容層に添加される離型剤との相溶性、耐熱性等の観点から好ましい。この好ましい樹脂として、市販のバインダー樹脂を用いることもでき、例えば、アクリル樹脂として、AQ AST499(ダイセルファインケム社製)などが挙げられ、また好ましいポリエステルとして、バイロナールMD−1500(東洋紡績工業(株)製)などが挙げられる。
受容層には水溶性ポリマーを含有してもよく、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が好ましく用いられ、なかでも塗工時のセット性が良好であるという理由からゼラチンが好ましく用いられる。これらの水溶性ポリマーは受容層の親疎水性の制御に有効であり、多量に使用し過ぎない場合は熱転写シートからの染料転写が良好であり、転写濃度も良好となる。
水溶性ポリマーの使用量は、受容層の固形分全体の質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
受容層を構成する染料染着性樹脂を分散又は溶解するために用いられる「水系溶媒」とは、水を10%以上含む溶媒をいう。水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等を例示することができる。
受容層に含有する離型剤は、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)、リン酸エステル系可塑剤、およびフッ素系化合物を挙げることができ、特にシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン等の各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、およびポリエーテル変性シリコーン等を用い、これらを混合する、あるいは各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。また、2種以上の離型剤を混合して用いてもよい。このような離型剤を用いることで、印画時に熱転写シートと熱転写受像シートの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。
上記以外に、受容層に添加することができる任意の添加剤として、例えば、離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等を挙げることができる。
界面活性剤は、受容層をスライドコート法等により形成する際に、疎水性化合物の分散性を向上する作用を有する。このような界面活性剤としては、リン酸エステル型界面活性剤等種々の界面活性剤を使用することができる。尚、界面活性剤の添加量は,上記作用を効果的に発揮させるために、受容層固形分に対し、0.5〜3質量%程度添加されていることが望ましい。
上記の本発明における受容層の厚みは、所望の画像濃度を発現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜20μmがより好ましく、1μm〜15μmが更に好ましい。
(中間層)
中間層を形成する樹脂、その他の高分子としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
上記中間層は、例えば、水溶性高分子を添加したものであってもよい。上記水溶性高分子としては、セルロース系樹脂、デンプン、寒天等の多糖類、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体、酢酸ビニル−ベオバ共重合体、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、スチレン樹脂等のビニル系樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。本発明において、水溶性高分子とは、水性溶媒に完全溶解(粒径0.01μm以下)、コロイダルディスパージョン(粒径0.01〜0.1μm)、エマルジョン(粒径0.1〜1μm)又はスラリー(粒径1μm以上)の状態になる高分子を意味する。
中間層に、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等を添加した場合には、層間接着性に優れた熱転写受像シートを得ることができる。また、中間層として、活性水素を有する熱可塑性樹脂とイソシアネート化合物等の硬化剤とを併用した場合、更に層間接着性に優れた熱転写受像シートとすることができる。
また、中間層に、例えば、蛍光増白剤を添加した場合、熱転写受像シートに白みを付与することができる。蛍光増白剤としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、スチルベン系蛍光増白剤、ジスチルベン系蛍光増白剤、ベンゾオキサゾール系蛍光増白剤、スチリル−オキサゾール系蛍光増白剤、ピレン−オキサゾール系蛍光増白剤、クマリン系蛍光増白剤、アミノクマリン系蛍光増白剤、イミダゾール系蛍光増白剤、ベンゾイミダゾール系蛍光増白剤、ピラゾリン系蛍光増白剤、ジスチリル−ビフェニル系蛍光増白剤等が挙げられる。本発明の熱転写受像シートは、上記蛍光増白剤の種類、添加量等を適宜選択することにより、白色度を調整することができる。
また、中間層に、酸化チタンを添加すると、基材シートのギラ付き感やムラを隠蔽した熱転写受像シートを得ることができる。上記酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン及びアナターゼ型酸化チタンが挙げられるが、白色度の点で、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。上記酸化チタンは、中間層が上述の水溶性樹脂からなる場合、表面に親水性処理を施して添加してもよいし、界面活性剤等の分散剤を適宜添加して分散させてもよい。
また、中間層に、例えば導電性無機フィラー、有機性導電剤等を添加すると、帯電防止性を有する熱転写受像シートを得ることができる。また、中間層は、中空粒子を含有していてもよい。
(ミクロボイドを有する層)
基材シートと受容層との間に中間層を形成する場合にあっては、基材シートと中間層との間に図示しないミクロボイドを有する層(以下ミクロボイド層という)を設けることとしてもよい。ミクロボイド層を基材シートと受容層との間に設けることで、受容層側からの吸湿を防止することができ、熱転写受像シート全体としてのカールの発生を防止することができる。
ミクロボイド層としては、内部にミクロボイドを有するプラスチックフィルムや合成紙を用いることができる。また、基材シート上に、各種の塗工方式でミクロボイドを有する層を形成することもできる。ミクロボイドを有するプラスチックフィルム又は合成紙としては、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体として、それに無機顔料及び/又はポリプロピレンと非相溶なポリマーをブレンドし、これらを発泡開始剤として用い、これらの混合物を延伸、成膜したプラスチックフィルム又は合成紙が好ましい。
また、これらのプラスチックフィルムや合成紙は、通常、二軸延伸により成膜されたものである。上述のプラスチックフィルムや合成紙は、それ自体が、ミクロボイドを含む層の単層であっても良いし、複数の層構成であっても良い。複数の層構成の場合には、その構成する全ての層にミクロボイドを含有しても良いし、ミクロボイドが存在しない層が存在しても良い。そして、このプラスチックフィルムや合成紙には、必要に応じて隠ぺい剤として、白色顔料を混入させても良い。また、白色性を増すために、蛍光増白剤等の添加剤を加えることができる。さらに、光沢性、平滑性を与えるために、表面にスキン層を設けても良い。ミクロボイド層の厚みは、5μm〜100μm程度が好ましい。
(接着層)
また、図示しないが、基材シートとミクロボイド層とを貼合わせて接着するための接着層を設けることとしてもよい。接着層は接着剤からなり、この接着剤としては、例えば、ウレタン系樹脂、α−オレフィン−無水マレイン酸樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウリア系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂等が使用できる。中でもアクリル系樹脂の反応型のものや、変成したもの等が好ましく使用することができる。また、接着層は、ミクロボイド層と受容層、又はミクロボイド層と上記で説明した任意の層である中間層との間や、基材シートと後述する任意の裏面層との間にも設けることもできる。
また、接着剤は硬化剤を用いて硬化させると、接着力も向上し、耐熱性も上がるため好ましい。硬化剤としては、イソシアネート化合物が一般的であるが、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物等を使用することができる。このような接着層の厚さは、塗工量で、通常、厚さ0.5μm〜10μm程度である。接着層の形成は、一般的に行われている塗工手段を用いることができ、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の手段により、塗工し、乾燥することで形成することができる。また、ポリオレフィン材料等を使用した、ECサンドラミネーションを行ってもよい。
(裏面層)
また、図3に示すように、基材シート2の受容層3形成側とは反対側の面上に、シートの機械搬送性向上、カール防止、筆記性、帯電防止等を目的とする裏面層5を設けてもよい。裏面層は、1層のみから構成されるものであってもよいし、組成等が異なる2層以上の層を積層して構成されるものであってもよい。
裏面層は、上記で例示した中間層を形成する樹脂、その他の高分子として例示したものと同様の樹脂等から形成することができる。上記裏面層を形成する際に、例えば、(1)上記例示の樹脂等に加え、有機フィラー又は無機フィラーを適量添加する、又は、(2)ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂等、滑性が高い樹脂を使用すると、搬送性が向上した熱転写受像シートを得ることができる。
また、裏面層を形成する際に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等、保水性を有する樹脂等を主成分として用いた場合、得られる熱転写受像シートのカールを防止することができる。また、裏面層を形成する際に、上述の受容層における添加剤として例示したフィラー、顔料等を配合した場合、得られる熱転写受像シートに筆記性を付与することができる。
裏面層は、帯電防止機能を得るために、アクリル樹脂等の導電性樹脂、及び/又は、脂肪酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、エチレンオキサイド付加物等の各種帯電防止剤を含有していてもよい。
(熱転写受像シートの製造方法)
熱転写受像シートの製造は、公知の製造方法を用いることができる。熱転写受像シートの基材シートに設ける層の塗工には、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、およびカーテンコート等の公知の方法を用いることができる。
<保護層転写シート>
図4は、本発明で使用する保護層転写シートの一例を示す概略断面図である。基材12の熱転写性樹脂層11が設けられている面と同一面上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各熱転写性色材層13が面順次に設けられており、基材12の他方の面には耐熱滑性層14が設けられているが、熱転写性色材層13および耐熱滑性層14は、本発明で用いられる保護層転写シートにおける任意の構成である。
(基材)
保護層転写シートの基材12としては特に限定されず、保護層転写シートに使用されている従来公知の基材と同様のものを用いることができる。好ましい基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン若しくはポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテンまたはアイオノマー等のプラスチックの延伸又は未延伸フィルム等が挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。
基材12の厚さとしては、その強度及び耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常、3〜100μm程度のものが好ましく用いられる。また、基材の熱転写性樹脂層側とは反対の面に、必要に応じて従来の方法で設けられた耐熱滑性層を有していてもよい。
(熱転写性樹脂層)
本発明の必須の構成である、保護層転写シートの基材上に設ける熱転写性樹脂層11は、加熱により基材から剥離して、熱転写受像シートの受容層へ転写、接着する層であり、1層のみの単独層で形成することができる。また、熱転写性樹脂層を、基材側から順に、透明性樹脂層、熱接着性樹脂層の2層に分けて積層させることもできる。また、上記の透明性樹脂層と熱接着性樹脂層との間に、紫外線遮断性などの機能を有する中間層を設けることもできる。
その熱転写性樹脂層は、塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含む特徴を有するが、上記の熱転写性樹脂層が2層など複数層からなる場合、熱転写性樹脂層は印画物に転写された際に、印画物の受容層と直接に接する層に、前記塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含むことが好ましい。それは、印画物の受容層と、保護層転写シートから転写される熱転写性樹脂層とに含まれるバインダー樹脂が、塩化ビニルの共通した骨格を繰り返して有する樹脂にすることで、受容層と熱転写性樹脂層(保護層)との密着性が高く、また両方の層の相溶性が高くなり、印画物を曲げても、印画物表面に「ワレ」が生じることを抑制できると想定できるからである。
熱転写性樹脂層が複数層の場合、基材側の層は、耐摩擦性、透明性、硬さなどに優れた樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂及びこれらの樹脂のシリコーン変性樹脂、そして、これらの樹脂の混合物のほか、重合性モノマー、オリゴマー、反応性重合体等の少なくとも一種を電離放射線照射により架橋、硬化した樹脂等を用いることができる。また、前述の樹脂には、可撓性及び接着性を向上させるために、相溶性のよい熱可塑性樹脂を混合して用いてもよい。
なお、電離放射線により架橋、硬化させる場合には、その硬化した層の上に設ける層(熱接着層樹脂層など)との接着性をより向上させるために、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、アクリルウレタン樹脂等からなる中間層(プライマー層)を設けてもよい。
これらの樹脂は、透明性に優れているが、比較的強靱な皮膜を形成する傾向があるので、転写時における膜切れが充分ではない。そこで、これらの透明樹脂の膜切れ性や、転写によって被覆される印画面の耐摩擦性、耐スクラッチ性などを向上させるために、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等を樹脂の透明性を損なわない程度に添加することができる。添加量は、樹脂固形分100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましい。また、耐摩擦性、耐スクラッチ性を更に向上させるために、シリコーン変性樹脂、滑剤等の添加剤を含有させてもよい。
このような透明性樹脂層を形成する方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、その他多くの手段が利用できる。具体的には、上記樹脂を含む塗工液を塗工、乾燥することによって形成することができる。上記透明性樹脂層の厚さは、乾燥時の皮膜で0.1〜50μm程度であることが好ましく、より好ましい下限0.5μm、より好ましい上限は10μm程度である。
熱転写性樹脂層の基材側と反対側の最表面層の熱接着性樹脂層は、熱転写性樹脂層を接着性よく印画面に転写させるものである。本発明では、熱接着性樹脂層において、塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含有させる。その塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂は、受容層に主成分として含有するバインダー樹脂で説明したものが適用できる。この塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂により、熱転写画像が保護層で覆われた印画物を曲げても、印画物表面に「ワレ」が生じることを抑制しやすくすると想定できる。
熱接着性樹脂層には、上記の塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂の他に、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル、ポリアミド等のような熱時接着性の良好な樹脂を用いることができる。
上記の熱接着性樹脂層は、上記の樹脂の1種又は2種以上を溶液、或いはエマルジョン等塗工可能な形にしたものを、上記透明性樹脂層で挙げた塗工方法の中から適した方法をそれぞれ選択して、塗工、乾燥することにより形成できる。その熱接着性樹脂層の厚さとしては、例えば、0.1〜5μm程度の範囲が好ましい。
(熱転写性色材層)
本発明に用いられる保護層転写シートは、基材12の熱転写性樹脂層11が設けられている面と同一面上に、熱転写性色材層13が面順次に設けられていてもよい。熱転写シートが昇華型熱転写シートの場合には、熱転写性色材層として昇華性染料を含有する層(染料層)を形成し、熱溶融型熱転写シートの場合には、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層を形成する。なお、昇華性染料を含有する層領域と、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層領域と、を連続した1枚の基材上に面順次に設けてもよい。
熱転写性色材層の材料は、従来公知の染料を使用することができるが、印画材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。例えば、赤色染料としては、MS Red G(三井東圧化学社製)、Macrolex Red Violet R(バイエル社製)、CeresRed 7B(バイエル社製)、Samaron Red F3BS(三菱化学社製)等が、黄色染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社製)、PTY−52(三菱化成社製)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製)等が、青色染料としては、カヤセットブルー714(日本化薬社製)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製)、ホロンブリリアントブルーS−R(サンド社製)、MSブルー100(三井東圧化学社製)等が挙げられる。その他、市販されている昇華型熱転写方式で使用される熱転写シートに含まれる染料も使用できる。
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の樹脂が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
熱転写性色材層の形成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。上記染料およびバインダー樹脂に、必要に応じて離型剤等の添加剤を加え、トルエン、メチルエチルケトン等の適当な有機溶剤に溶解させ、あるいは、水に分散させ、得られた熱転写性色材層用塗布液(溶解液または分散液)を、例えば、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材の一方の面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。熱転写性色材層は、厚みが0.2〜5.0μm程度であり、また、熱転写性色材層中の昇華性染料の含有量は、5〜90質量%、好ましくは5〜70質量%であることが好ましい。
(耐熱滑性層)
基材12の熱転写性樹脂層11や熱転写性色材層13が設けられている面の他方の面に設けられていてもよい耐熱滑性層14は、主に耐熱性樹脂からなるものである。耐熱性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテート−ヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、および塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
耐熱滑性層は、上記耐熱性樹脂に加え、滑り性付与剤、架橋剤、離型剤、有機粉末、無機粉末等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
耐熱滑性層は、一般に、上述の耐熱性樹脂、並びに、所望により添加する上記滑り性付与剤など添加剤を溶剤中に加えて、各成分を溶解または分散させて耐熱滑性層塗工液を調製した後、該耐熱滑性層塗工液を基材の上に塗工し、乾燥させて形成することができる。上記耐熱滑性層塗工液における溶剤としては、上述の熱転写性色材層用塗工液における溶剤と同様のものを使用することができる。
耐熱滑性層塗工液の塗工法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。耐熱滑性層塗工液は、厚さが好ましくは0.1μm〜3μm、より好ましくは1.5μm以下となるよう塗布すればよい。
<印画物>
次に、本発明の印画物について説明する。本発明の印画物は、上記の熱転写記録材料における熱転写受像シート、保護層転写シートを用いて、以下のとおりに作成することができる。
(1)熱転写受像シートの受容層と、基材上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び/若しくはブラック(Bk)等の熱転写性色材層を形成した熱転写シートの熱転写性色材層を重ね合わせて、サーマルヘッドなどの加熱手段を用いて、その染料を受容層に転写し、受容層に熱転写画像を形成する。
(2)上記の熱転写画像の形成された受容層面と、保護層転写シートの熱転写性樹脂層を重ね合わせて、サーマルヘッドやホットスタンプなどの加熱手段を用いて、その熱転写画像上の少なくとも一部に、熱転写性樹脂層、すなわち保護層を転写して、印画物を形成する。
このような印画物は、高温下に保存しても、熱転写画像のにじみの発生、及び印画濃度、色相などが変化することを抑制し、すなわち保存性が良好となる。また、熱転写時に熱転写シートとの離型性に優れ、さらに印画物の熱転写画像を保護層で覆った形態で、印画物を曲げても、印画物表面に「ワレ」が生じることを抑制できる。
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。但し、以下に示す各層の塗工液に関し、溶媒を除き、各材料は固形分換算の質量部である。
(試験例1)
基材シートとして市販のコート紙(大王製紙(株)製、商品名:Sユトリロコート157)の一方の面にポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製、トヨパールSS)をウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製タケラックA−969V/タケネートA−5=3/1、塗工量4.0μm(乾燥後))で貼合した基材シートを用い、該基材シート上に、下記組成のプライマー層用塗工液をバーコーターにより、塗工量2.0μm(乾燥後)となるように塗工、乾燥(100℃2分)し、さらにその上に下記組成の受容層用塗工液1をバーコーターにより、塗工量3.0μmとなるように塗工、乾燥(100℃2分)し、試験例1の熱転写受像シートを作製した。
<プライマー層用塗工液>
バインダー樹脂(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名ニッポラン5199) 25部
白色顔料(アナターゼ型酸化チタン、石原産業(株)製、A−220)
75部
混合溶剤;メチルエチルケトン/トルエン/IPA(質量比2:2:1) 400部
<受容層用塗工液1>
バインダー樹脂(塩化ビニル共重合体エマルジョン、Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)
100部
離型剤(ポリエーテル変性シリコーン、HLB値:10、信越化学工業(株)製、商品名KF615A) 10部
水溶性樹脂(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製、商品名RR) 2部
界面活性剤(スルホン酸型アニオン界面活性剤、第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW−C) 3部
上記受容層用塗工液は、公知の方法により上記の成分を水中に分散させた水系分散塗工液である。
(試験例2)
試験例1で使用したバインダー樹脂を、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体(塩化ビニル/アクリル酸エステル=90/10、Tg70℃、日信化学工業(株)製、商品名VB900)に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例3)
試験例1で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル共重合体(Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)を100部から80部にし、さらにポリエステル(Tg77℃、東洋紡績工業(株)製、商品名バイロナールMD−1500)20部を加えたものをバインダー樹脂に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例4)
試験例1で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル共重合体(Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)を100部から80部にし、さらにアクリル樹脂(Tg80℃、ダイセルファインケム社製、商品名AQ AST499)20部を加えたものをバインダー樹脂に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例5)
試験例1で使用したバインダー樹脂を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg63℃、日信化学工業(株)製、商品名VB603)に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例6)
試験例1で使用したバインダー樹脂を、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体(塩化ビニル/アクリル酸エステル=80/20、Tg46℃、日信化学工業(株)製、商品名VB690)に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例7)
試験例1で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル共重合体(Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)を100部から30部にし、さらに塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体(塩化ビニル/アクリル酸エステル=80/20、Tg46℃、日信化学工業(株)製、商品名VB690)70部を加えたものをバインダー樹脂に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例8)
試験例1で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル共重合体(Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)を100部から70部にし、さらに塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体(塩化ビニル/アクリル酸エステル=80/20、Tg46℃、日信化学工業(株)製、商品名VB690)30部を加えたものをバインダー樹脂に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例9)
試験例1で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル共重合体(Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)を100部から20部にし、さらにアクリル樹脂(Tg80℃、ダイセルファインケム社製、商品名AQ AST499)80部を加えたものをバインダー樹脂に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例10)
試験例1で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル共重合体(Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985)を100部から20部にし、さらにポリエステル(Tg77℃、東洋紡績工業(株)製、商品名バイロナールMD−1500)80部を加えたものをバインダー樹脂に代えた以外は試験例1と同様に、熱転写受像シートを作製した。
(試験例11)
厚さ5μmのPETフィルム(商品名ルミラー 東レ社製)を基材とし、その一方の面に耐熱滑性層としてシリコーン樹脂を乾燥時の厚さが1μmになるようにグラビアコート方式で形成し、もう一方の面に下記組成の透明性樹脂層用塗工液をグラビアコート方式で乾燥時の厚さが1μmとなるように塗工、乾燥して透明性樹脂層を形成した。
(透明性樹脂層用塗工液)
アクリル樹脂(ダイヤナールBR−87、Tg105℃、三菱レイヨン(株)製)
20部
トルエン 40部
メチルエチルケトン 40部
上記の透明性樹脂層の上に、下記組成の熱接着性樹脂層用塗工液をグラビアコート方式で乾燥時の厚さが1μmとなるように塗工、乾燥して熱接着性樹脂層を形成して、試験例11の保護層転写シートを作製した。
(熱接着性樹脂層用塗工液1)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(塩化ビニル/酢酸ビニル=90/10、Tg76℃、日信化学工業(株)製、商品名ソルバインCNL) 25部
紫外線吸収剤(チヌビン928 チバ・ジャパン社製) 5部
メチルエチルケトン 35部
トルエン 35部
(試験例12)
試験例11の熱接着性樹脂層で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製、商品名ソルバインCNL)を25部から20部にし、さらにアクリル樹脂(ダイヤナールBR−83、Tg105℃、三菱レイヨン(株)製)5部を加えたものを熱接着性樹脂層のバインダー樹脂に代えた以外は試験例11と同様に、保護層転写シートを作製した。
(試験例13)
試験例11の熱接着性樹脂層で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製、商品名ソルバインCNL)を25部から5部にし、さらにアクリル樹脂(ダイヤナールBR−83、Tg105℃、三菱レイヨン(株)製)20部を加えたものを熱接着性樹脂層のバインダー樹脂に代えた以外は試験例11と同様に、保護層転写シートを作製した。
(試験例14)
試験例11の熱接着性樹脂層で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製、商品名ソルバインCNL)を、アクリル樹脂(ダイヤナールBR−83、Tg105℃、三菱レイヨン(株)製)に代えた以外は試験例11と同様に、保護層転写シートを作製した。
(試験例15)
試験例11の熱接着性樹脂層で使用したバインダー樹脂である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製、商品名ソルバインCNL)を、ポリエステル(バイロン200、Tg67℃、東洋紡績(株)製)に代えた以外は試験例11と同様に、保護層転写シートを作製した。
(試験例16)
試験例11の熱接着性樹脂層を下記組成の塗工液に代えた以外は試験例11と同様に、保護層転写シートを作製した。
(熱接着性樹脂層用塗工液2)
塩化ビニル共重合体(エマルジョンタイプ、Tg80℃、日信化学工業(株)製、商品名VB985) 95部
水 5部
(実施例1〜11、比較例1〜16)
上記で作製した熱転写受像シート(試験例1〜10)と、保護層転写シート(試験例11〜16)を、下記の表1に示す組合せによる各例の熱転写記録材料を用意した。
Figure 2015024575
上記の各例の熱転写記録材料を用いて、以下の条件にて、印画物表面のワレ、印画物の色相変化、にじみ及び剥離音の評価を行った。ただし、以下のRHとは相対湿度を指す。
(イ)印画物表面のワレ
上記作製した各例の熱転写受像シートを昇華型熱転写プリンター(シチズン・システムズ社製プリンターCW−02)にて、その各例に対応する保護層転写シートを用いて、受容層面に、ベタで熱転写性樹脂層(保護層)を転写して、印画物を作製した。その印画物を室温(25℃)にて、中央部付近で、両手で3回折り曲げて、印画物表面にワレが生じているか、目視にて調べた。
印画物表面のワレの評価基準は下記のとおりとした。
○:印画物表面のワレが認められない。
△:印画物表面のワレが少し認められる。
×:印画物表面のワレが発生している。
(ロ)印画物の色相変化
上記作製した各例の熱転写受像シートを、それぞれを昇華型熱転写プリンター(シチズン・システムズ社製プリンターCW−02)にて、シチズン・システムズ社製プリンターCW−02用熱転写シートのうち、熱転写性樹脂層が形成されていない熱転写シートを用いて、RGB値が15*n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画した。さらに、その印画後、昇華型熱転写プリンター(シチズン・システムズ社製プリンターCW−02)にて、その各例に対応する保護層転写シートを用いて、受容層面に、ベタで熱転写性樹脂層(保護層)を転写して、印画物を作製し、作製した印画物を、60℃Free環境下に168時間保存し、下記基準で耐熱保存性(ΔEab)評価を行った。
上記保存前後の印画物の光学反射濃度の変化を、光学濃度計(グレタグマクベス(株)製spectrolino)により測定し、保存前の濃度が1.0近傍の諧調について、L*、a*,b*を算出し、下記の色相変化式により色相変化(ΔEab)を算出した。なお、7色ΔEabは、各色(Yellow、Magenta、Cyan、Red、Green、Blue、Black)のΔEabの合計値であり、数値が小さいほど耐熱保存性が高いことを示すものである。
・分光測定器
測定器名:Gretag Macbeth(株)製SpectroLino
光源:D65
視野角:2°
濃度測定用フィルター:ANSI Status A
・L*、a*、b*の説明
CIE1976L*a*b*表色系に基づくものであり、L*は明度を、a*及びb*は、知覚色度指数を表す。
・色相変化式
Δa=保存後のa*−保存前のa*
Δb=保存後のb*−保存前のb*
としたとき、
ΔE=(Δaの2乗+Δbの2乗)の平方根
色相変化7色ΔEab)の評価基準は下記の通りとした。
○:7色ΔEabが10未満。
△:7色ΔEabが11以上20未満。
×:7色ΔEabが20以上。
(ハ)印画物のにじみ
上記の印画物の色相変化を調べる際と同様に18階調グラデーション画像を印画したものを用意した。この印画物を温度60℃、湿度80%RHの環境(暗所)下に168時間保存して、保存前と比較して、目視にて画像でにじみの有無を調べた。
印画物のにじみの評価の基準は下記の通りとした。
○:にじみは認められない。
△:にじみが少し認められる。
×:にじみが認められる。
(ニ)剥離音の評価方法
作製した熱転写受像シートを昇華型熱転写プリンター(シチズン・システムズ社製プリンターCW−02)にて、35℃で85%RHの環境下でシチズン・システムズ社製プリンターCW−02用の熱転写シートのうち、熱転写性樹脂層が形成されていない熱転写シートを用いて、黒ベタ画像を3枚印画し、さらに、その印画後、昇華型熱転写プリンター(シチズン・システムズ社製プリンターCW−02)にて、その各例に対応する保護層転写シートを用いて、受容層面に、ベタで熱転写性樹脂層(保護層)を転写して、印画物を作製した。その際に熱転写シートと熱転写受像シートの印画後の剥離する音を、耳で直接、聞くことにより調べた。
剥離音の評価基準は下記の通りとした。
○:剥離音が認められない。
△:少し、剥離音が認められる。
×:剥離音が発生している。
上記の印画物表面のワレ、印画物の色相変化、にじみ及び剥離音の評価結果を下記の表2に示す。
Figure 2015024575
上記の結果に示すように、実施例1〜11の印画物は、印画物表面のワレ、印画物の色相変化、にじみ及び剥離音の評価の全てにおいて、良好な結果であった。
比較例1〜12、15、16の印画物は、印画物の色相変化、にじみ及び剥離音の評価は良いが、印画物表面のワレの評価で不良であった。また比較例13、14の印画物では、印画物表面のワレの評価は良いが、印画物の色相変化、にじみ及び剥離音の評価が不良であった。
1 熱転写受像シート
2 基材シート
3 受容層
4 中間層
5 裏面層
10 保護層転写シート
11 熱転写性樹脂層
12 基材
13 熱転写性色材層
14 耐熱滑性層
20 熱転写記録材料
30 印画物
31 熱転写画像

Claims (2)

  1. 基材シート上に、少なくともバインダー樹脂を含有する受容層を設けた熱転写受像シートと、基材上に熱転写性樹脂層を設けた保護層転写シートの組合せからなる熱転写記録材料において、
    前記受容層のバインダー樹脂は、塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、前記受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含み、
    前記保護層転写シートの熱転写性樹脂層に、塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含むことを特徴とする熱転写記録材料。
  2. 基材シート上に少なくともバインダー樹脂を含有する受容層を設けた熱転写受像シートで、
    前記受容層は染料による熱転写画像を有し、前記熱転写画像上の少なくとも一部に転写された保護層を有する印画物において、
    前記受容層のバインダー樹脂は、塩化ビニルの繰り返し構造を有し、かつTgが60℃以上のポリマーラテックスを、前記受容層のバインダー樹脂中の固形分比率で50%以上含み、
    前記保護層は塩化ビニルの繰り返し構造を有する樹脂を50%以上含むことを特徴とする印画物。
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