JP2010083005A - 感熱転写シート - Google Patents

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淳一郎 細川
Akito Yokozawa
晶人 横沢
Suketsugu Muro
祐継 室
Hisato Nagase
久人 長瀬
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Abstract

【課題】 高濃度で、耐光性に優れ、かつ大量生産性に優れ、ジャミングの問題を解決して機器通過性に優れる感熱転写シートを提供する。
【解決手段】 基材フィルムの一方の面に、マゼンタ色素及び樹脂を含む染料層を有し、他方の面に無機粒子の1種としてのタルク粒子及び樹脂を含む耐熱滑性層を有する感熱転写シートであって、該マゼンタ色素として特定のピラゾロトリアゾール系アゾメチン色素を含有し、かつ該感熱転写シートに対して走査型電子顕微鏡により20kVに加速した電子線を耐熱滑性層側から照射して得られる電子線像から耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求た場合に、該投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が80平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.80以下である感熱転写シート。
【選択図】なし

Description

本発明は感熱転写シートに関し、詳しくは機器通過性に優れた感熱転写シートに関する。
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも染料拡散転写記録方式は、銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている。しかも、銀塩写真に比べて、ドライであること、デジタルデータから直接可視像化できる、複製作りが簡単であるなどの利点を持っている。
この染料拡散転写記録方式では、染料を含有する感熱転写シート(以下、インクシートともいう。)と感熱転写受像シート(以下、受像シートともいう。)とを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルプリンターヘッド等によってインクシートを加熱することでインクシート中の染料を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を転写記録することができる。
高品質な画像を得るため、従来種々の方法が提案されており、例えば、染料では、特定のピラゾロトリアゾール系アゾメチン色素(特許文献1参照)が提案されている。
また、プリンターのサーマルプリンターヘッドと感熱転写シートの焼付き防止およびサーマルプリンターヘッドと感熱転写シート間の滑り性を付与する等の目的でプリンターのサーマルプリンターヘッドに接する側の感熱転写シート上に、タルクを含有する耐熱滑性層が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、インクシートの研究が積み重ねられるに従って、新たに発生する問題に対しては、必ずしも充分でなく、また、高濃度の転写性や色素の堅牢性もさらなる向上が求められていた。
特許第3596922号公報 特開平8−90942号公報
感熱転写シートを製造する際の大量生産性を考慮すると、染料塗布液を調液後数時間から数日にかけて経時させて使用する必要が生じる。本発明者等は、昇華性染料(色素)の種類によっては、該染料を含む塗布液を長時間(例えば、24時間以上)経時させた後、塗布して製造した感熱転写シートは塗布液を経時させないで作製した感熱転写シートに比較して、プリンターにて印画を行った際のジャミング(紙詰まり)を生じる確率が非常に高くなり、機器通過性に劣ったものとなってしまうという問題を発生することを見出した。しかもこのジャミングの問題と高濃度に転写させることおよび色素の堅牢性の向上の両立が求められていた。
従って、本発明の目的は、高濃度で、耐光性に優れ、かつ大量生産性に優れ、ジャミングの問題を解決して機器通過性に優れる感熱転写シートを提供することである。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記手段で本発明の上記目的が達成できることを見出した。
(1)基材フィルムの一方の面に、マゼンタ色素及び樹脂を含む染料層を有し、他方の面に無機粒子の1種としてのタルク粒子及び樹脂を含む耐熱滑性層を有する感熱転写シートであって、該マゼンタ色素が下記一般式(1)で表されるマゼンタ色素であり、かつ該感熱転写シートに対して走査型電子顕微鏡により20kVに加速した電子線を耐熱滑性層側から照射して得られる電子線像から耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求た場合に、該投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が80平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.80以下であることを特徴とする感熱転写シート。
一般式(1)
(式中、Aは置換もしくは無置換のアリーレン基または置換もしくは無置換の2価のピリジン環基を表し、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
(2)前記投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が40平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.60以下であることを特徴とする(1)に記載の感熱転写シート。
(3)前記耐熱滑性層中のタルク粒子の投影面積が100平方μm以上の個数が該耐熱滑性層の面積20万平方μm当たり1個以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の感熱転写シート。
(4)前記耐熱滑性層に、モース硬度3から6であり、粒子の平均球相当径が0.3μmから5μmであり、かつ当該粒子の最大巾の該平均球相当径に対する比が1.5から50である、タルク以外の無機粒子を少なくとも1種含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
(5)前記耐熱滑性層に、さらに下記一般式(P)で表される化合物を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
一般式(P)
{(R1aO)(R2aO)P(=O)O}
(式中、R1aは置換基を有してよい脂肪族基または置換基を有してよいアリール基を表し、R2aは水素原子、金属イオン、置換基を有してよい脂肪族基または置換基を有してよいアリール基を表す。Mは水素原子、金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。mはMの価数と同じ数であって1〜6の数を示す。)
(6)前記タルク粒子の含有量と、前記一般式(P)で表される化合物の含有量の関係が、該一般式(P)で表される化合物の含有量を100質量部としたとき、該タルク粒子の含有量が30質量部以上であることを特徴とする(5)に記載の感熱転写シート。
(7)前記耐熱滑性層に、さらにアルキルカルボン酸の多価金属塩を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
(8)前記基材フイルムが、基材フイルムの少なくとも一方の面上に易接着層を有することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
(9)前記耐熱滑性層の樹脂が、該樹脂のポリマー鎖長末端もしくはポリマー構造中に2個以上の水酸基を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
(10)前記樹脂が、ポリアクリルポリオール樹脂であることを特徴とする(9)に記載の感熱転写シート。
(11)前記耐熱滑性層の前記樹脂が架橋されていることを特徴とする(9)または(10)に記載の感熱転写シート。
(12)前記架橋における架橋反応が、40℃〜53℃の温度範囲でかつ1日〜20日の期間で行なわれてなるものであることを特徴とする(11)に記載の感熱転写シート。
(13)前記感熱転写シートが、支持体上に、中空ポリマーラテックスを含有する断熱層とポリマーラテックスを含有する受容層とを有する感熱転写受像シートと組み合わせて使用される感熱転写シートであることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
(14)支持体上に、中空ポリマーラテックスを含有する断熱層とポリマーラテックスを含有する受容層とを有する感熱転写受像シートと、基材フィルムの一方の面に、マゼンタ色素及び樹脂を含む染料層を有し、他方の面に無機粒子の1種としてのタルク粒子及び樹脂を含む耐熱滑性層を有する感熱転写シートとを、前記感熱転写受像シートの受容層と前記感熱転写シートの染料層とが接するように重ね合わせ、画像信号に応じた熱エネルギーを前記感熱転写シートの耐熱滑性層側から付与することにより画像を形成する画像形成方法であって、該マゼンタ色素が上記一般式(1)で表されるマゼンタ色素であり、かつ前記感熱転写シートが、該感熱転写シートに対して走査型電子顕微鏡により20kVに加速した電子線を耐熱滑性層側から照射して得られる電子線像から耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求めた場合に、該投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が80平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.80以下であることを特徴とする画像形成方法。
本発明により高濃度で、耐光性に優れ、かつ塗布液を長時間経時させて製造しても印画時のジャミングの発生がなくて機器通過性に優れ、大量生産性に優れた感熱転写シートを提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1)感熱転写シート
(感熱転写シート(インクシート)の構成)
インクシートは熱転写画像形成の際に、感熱転写受像シートに重ねて置かれ、インクシート側からサーマルプリンターヘッド等によって加熱することにより染料(以下色素とも言う)をインクシートから感熱転写受像シートに転写するために用いられる。本発明のインクシートは、インクシートの基材フィルムの一方の面に、熱転写可能な染料及び樹脂を含む染料層(熱転写層)を有し、他方の面に、滑剤及び樹脂を含む耐熱滑性層を有する。基材フィルムと染料層間または基材フィルムと耐熱滑性層間に易接着層(プライマー層)を設けることも出来る。
(耐熱滑性層)
本発明では、耐熱滑性層に無機粒子としてタルクを含有する。
(タルク)
本発明においてタルクとは、マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物であり、理論組成はMgSi10(OH)である。ケイ酸塩の層状構造2層の間にマグネシウム含有層が挟みこまれた3層構造を単位構造としており、単位構造間のケイ酸塩層同士の結合が弱いためにへき開性を有し、柔らかく(モース硬度1)かつ滑り性を有する。また900℃付近まで分解せず、かつ大部分の薬品に不活性であるため、熱的および化学的に安定な物質である。上記タルクは単斜晶系および三斜晶系の2種が存在するが、本発明においてはいずれの晶系のタルクを用いることもでき、また単斜晶系および三斜晶系の混合物も用いることができる。
耐熱滑性層にタルクを含有させることは、タルクが柔らかいためにサーマルプリンターヘッドを傷つけ難く、滑り性を有することで感熱転写シートの伸びを抑制して印画シワを生じ難く、熱的および化学的に安定であることからサーマルプリンターヘッドに対する融着や腐食の影響が小さいことに有用性がある。本発明において、耐熱滑性層に含まれるタルクは耐熱滑性層の総量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%〜20質量%がより好ましく、0.4質量%〜10質量%がさらに好ましく、0.8質量%〜5質量%が最も好ましい。
本発明において耐熱滑性層にタルクを含有させるには、あらかじめ原料タルクの粉末を分散含有させた耐熱滑性層用の塗工液を基材フィルムに塗設することで実施できる。通常、原料タルクは天然鉱物由来のものを用いるが、天然物のために不純物を含有する。本発明においてタルクとは、原料タルク中の不純物は含まず、マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物としてのタルクを指す。またタルク粒子表面はタルク粒子内部と異なり種々の吸着物または水酸基のような置換基が存在する場合があるため、タルクの元素組成が前記理論組成から幾分ずれる場合があるが、これもタルクとする。タルクか否かの判定は、組成分析およびX線回折測定により回折ピークを求めて、既知のタルクの回折ピークと比較することで実施できる。
以下に原料のタルクを例示するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
原料タルクとしては、市販されている天然鉱物由来の粉末状タルクを使用することができ、例えば日本タルク(株)製のミクロエースシリーズ、SGシリーズ、松村産業(株)製のハイ・フィラーシリーズ、(株)福岡タルク工業所製のPSシリーズ、浅田製粉(株)製のJETシリーズ、竹原化学工業(株)製ハイトロンシリーズまたは日本ミストロン(株)製のMVシリーズ等(いずれも商品名)を挙げることが出来る。本発明において原料タルクに含まれるタルクの平均球相当径粒子サイズは、0.5〜10μmが好ましく、0.8〜5μmが更に好ましく、1〜4μmが最も好ましい。原料タルクの平均球相当径粒子サイズはレーザー回折散乱法により求めた値である。粒子に光を照射して得られる回折散乱光強度の空間分布は粒子サイズによって各々異なるため、回折散乱光強度の空間分布を測定して解析することで粒子サイズ分布を求め、更に平均球相当径粒子サイズを計算により求めることができる。この手法はレーザー解析散乱法として確立しており測定装置としては(株)島津製作所製SALDシリーズや(株)堀場製作所製 LAシリーズ等(いずれも商品名)の市販のものを使用することができる。
前記原料タルクは天然鉱物を選鉱、粉砕、分級等の各工程を経て製造されるものである。原料タルクは平板状の粒子形状が主だった粉末である。平板形状の厚みと平板面の面積の比は様々であるため、前記原料タルクの平均粒子サイズにより耐熱滑性層中のタルク粒子の平板面の投影面積を規定することはできない。本発明においては耐熱滑性層中のタルクの投影面積を用いて規定するが、この点については後述する。
特開平8−90942号公報には散弾式磨耗度がある範囲内にある原料タルクを使用することが、特開平8−90945号公報には原料タルクとしてX線回折によりタルクの回折ピーク強度に対して不純物の回折ピーク強度がある範囲内にある原料タルクを使用することが、それぞれ開示されている。原料タルクが天然物由来であるため、不純物の種類や量が異なる各種原料タルクがあり、そのため原料タルクとしての硬さや磨耗度も様々なものが有る。本発明において、原料タルク中の不純物は少ないことが好ましく、タルク以外の硬い粒子を耐熱滑性層に併用する場合には、別に純度の高い硬い粒子を併用して用いることが好ましい。
原料タルク中の不純物は、硬い不純物を形成し得る不純物が少ないことが好ましく具体的には、Caは0.5質量%(以下、単に%と略記する。)以下が好ましく、0.1%以下が更に好ましく、Alは0.6%以下が好ましく、0.2%以下が更に好ましく、Feは1.0%以下が好ましく、0.2%以下が更に好ましく、0.05%以下が最も好ましい。また水分は耐熱滑性層用の分散液を製造する場合の分散性に影響を与える可能性があるために少ないことが好ましく、具体的には0.5%以下が好ましく、0.2%以下が更に好ましい。原料タルク中の不純物をX線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する不純物由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)により規定した場合には、この比は0.40以下が好ましく、0.20以下が更に好ましく0.10以下が最も好ましい。
原料タルクは硬い不純物が多いほど磨耗度が大きくなる。磨耗度の測定方法は様々であるが、例えば散弾式磨耗度は以下の様にして測定することができる。
(散弾式磨耗度の測定方法)
1.測定する原料タルク5gと水45mlを100mlのガラス容器に入れて攪拌する。
2.あらかじめ質量を量った散弾(鉛 直径4mm)6粒を、上記容器に入れてふたをする。
3.内容物の入った容器を攪拌機(アズワン(株)製、MixRotarVMR―5(商品名))を用いて114rpm、5.5時間攪拌する。
4.攪拌後の容器から散弾を取り出し、散弾をよく水洗し、散弾に付いた水分を除去して、再度散弾の質量を測定する。
5.攪拌前に量った散弾の質量から、攪拌後に量った散弾の質量を引いた値(差)を求め、これを散弾式磨耗度とする。
散弾式磨耗度が大きいほど、散弾の磨耗量が多いことを表し磨耗し易いことを示す。
原料タルクは硬い不純物が少ないことが好ましく、このため原料タルクの磨耗度が小さいことが好ましく、例えば散弾式磨耗度では40mg以下が好ましく、20mg以下が更に好ましく、10mg以下が最も好ましい。
次に耐熱滑性層用の塗工液の製造方法について述べる。
耐熱滑性層用の塗工液は、タルク粒子等の溶解しない固体粒子を含む液であるため、塗料工業で用いられる顔料分散液の製造手法を用いることができる。
製造工程としては一般に、溶解工程と分散工程に大別することができる。溶解工程とは、耐熱滑性層成分の中で塗工液用の溶媒に溶解する成分を溶解して溶解液を作る工程のことであり、一般には樹脂を有機溶剤に溶解することが含まれる。分散工程とは、前記溶解液と、耐熱滑性層成分の中で塗工液用の溶媒に溶解しない原料タルク等の固体粉末成分とを、混ぜて分散する工程のことである。固体粉末成分は一般に2次凝集した粉体であるため、分散工程には、(1)粉体表面を溶解液でぬらす工程、(2)凝集した粉体を一次粒子にほぐす、または一次粒子を粉砕する工程、(3)分散された粒子を安定化する工程、を含むことができる。(1)の工程は、粉体表面が溶解液にぬれ易いことが重要であり、粉体表面の空気と溶解液を置換することになるため、分散条件として高圧または高せん断力(ずり応力)が好ましい。(2)の工程は、粉体の凝集を解くために分散条件として高せん断力が必要不可欠である。(3)の工程では、分散した粒子が液中で再凝集しない、または塗工液を塗工後乾燥して溶剤が無くなった場合にも再凝集を抑制するために、各種添加剤を添加することができる。通常(1)〜(3)の工程は同一分散装置の中で同時に進行するが、(1)の工程を事前に実施する工程(プレミキシング)を設けることも好ましい。また樹脂を架橋剤で硬化させて耐熱滑性層を形成する場合には、樹脂を含む前記分散済みの液に更に架橋剤を添加して塗工を行うことができる。
前記分散に用いる分散装置としては公知のものを使用できる。例えば、3本ロールミルは回転速度の異なるロール間の接点に働くせん断力と押し付け圧力を利用して分散するものであり、サンドミルおよびビーズミルは容器内でガラスビーズやジルコニアビーズのようなメディアを攪拌することで得られる衝撃力とずり応力を利用して分散するものである。ビーズミルにおけるメディアの攪拌が重力によるものであるために衝撃力とずり応力が制限されることに対して、メディアを腕木によって強制的に攪拌して強い衝撃力とずり応力を得られるように改良されたアトライターがある。少量分散用としては以上の他にも、少量容器を振り混ぜるペイントシェーカーや、ビーズミルの衝撃力とずり応力が制限されることにたいして、容器自体を自転と公転を同時に行うことでメディアを強制的に攪拌して強い衝撃力とずり応力を得られるように改良された遊星型ビーズミル(あるいは遊星型ボールミル)等がある。より詳細な説明は「塗料の流動と顔料分散」共立出版(株)発行,1992年、「塗料と塗装(増補版)」(株)パワー社発行,平成6年や、「乳化・分散の理論と実際 理論編」特殊化学工業(株)発行,1997年や、「印刷インキ入門 改訂版」(株)印刷学会出版部発行,2002年に記載されている。
耐熱滑性層は、前述の塗工液を、グラビアコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、ワイヤーバーなどの公知の方法で塗設することによって形成される。耐熱滑性層の膜厚は0.1〜2.5μmの膜厚が好ましく、0.4〜1.5μmがより好ましく、塗設量は1平方m当たり0.1〜3.0gが好ましく、0.5〜2.0gがより好ましい。
前述の通り、高せん断力を付与するために、分散過程において原料タルクの一次粒子の粉砕を生じることが分かった。タルクは柔らかいためにサーマルプリンターヘッドを傷つけ難いという有用性を持つことと同時に分散過程で粉砕され易いものであった。分散過程での原料タルクの粉砕はへき開面に沿ってへき開するだけでなく、せん断応力の最も高い平板面の両端を割る方向にも生じ、また分散後のタルク粒子が分散液中または塗工乾燥時に再び凝集する場合もあり、塗工後の耐熱滑性層中でタルクの形状が様々に変わりうるものであった。
前述の通り、耐熱滑性層中でのタルク粒子の形状は、原料タルクの粒子サイズや形状とは一致しない。更に分散液の組成、製造スケールおよび分散装置の種類によりタルクの粉砕の状況が大きく変化するために、製造条件を一律に決められるものではない。このため、本発明においては耐熱滑性層中でのタルク粒子の投影面積の分布状態を以下の走査型電子顕微鏡測定により規定する。
次に本発明において規定する耐熱滑性層のタルク粒子に対応する投影面積の測定方法について述べる。
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope 略称「SEM」)を用いた電子線像(SEM像)の測定。
(測定用試料準備)
電子ビームを照射することで試料が帯電すると、帯電による電界で電子ビームがゆらぎ、かつ電子ビームの電流値も変動するため正確な測定が行えない。帯電を防止するために試料表面を導電性薄膜で覆って帯電を防止する。導電性薄膜としては炭素(C)をスパッタリングによって20nmから35nmの厚さでコートして形成することが一般に好ましく行われる。
(電子線照射およびSEM像測定)
照射する電子線は解像度を確保するため加速電圧を20kV、ビーム径はできるだけ収束することが好ましいが、SEMの通常測定のビーム径であれば問題はない。SEMにおける表面観察では加速電圧は通常2kV程度であるが、本発明において加速電圧は20kVとする。加速電圧2kVの場合にはSEM像は観察表面近傍から放出される二次電子の寄与が優性であり、加速電圧が高くなるに従い次第に反射電子の寄与が大きくなる。二次電子は、表面の凹凸を観察し易い特徴を持つが、耐熱滑性層中のタルクによるコントラスト像と耐熱滑性層表面の凹凸によるコントラスト像を区別し難い欠点が有る。反射電子は入射電子が反射されたものであり、原子番号の大きい原子ほど反射電子強度が大きくなる。耐熱滑性層中の有機物に対してタルクの構成元素のSiとMgは原子番号が大きいため、反射電子は2次電子よりも明確なタルク像を得ることができる。このため反射電子の寄与を大きくするために通常のSEM測定より加速電圧を上げるが、加速電圧を上げるに従い入射電子線の浸入深さが大きくなり反射電子の散乱も大きくなるため、最もタルク像を観察し易い加速電圧として20kVを選んだ。
一般にSEM測定は入射電子線に対して観察面を一方向に傾けて行われるため、得られるSEM象は真上からの観察像ではなく、入射電子線と観察面間の角度(Θ)に対して傾けた方向にsin(Θ)の比率分だけ縮小されている。即ち、角度(Θ)が90°で垂直な(傾いていない)場合には、sin(Θ)が1.0で縮小されていないのに対して、角度(Θ)が30°で傾いている場合には、sin(Θ)が0.5となり傾いている方向に0.5倍に縮小されていることになる。本発明で規定する耐熱滑性層中のタルクの投影面積は、耐熱滑性層表面の真上からの投影面積であるため、傾けて測定したSEM像については補正が必要である。上記、角度(Θ)が30°の場合は傾き方向の長さを縮小率0.5倍の逆数の2.0倍することで補正することができる。他の傾き角の場合にも同様にして補正することができる。このようにして測定したSEM像より耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求める。本発明において、耐熱滑性層中でタルク粒子が重なって、または凝集して1つのタルク像として観察される場合には一つのタルク粒子として評価し、対応する一つの投影面積を求める。
(タルク以外の無機粒子が共存する場合の判別方法)
本発明において、耐熱滑性層中にタルク粒子以外の無機粒子を含有する場合には以下の方法でタルク粒子とそれ以外の粒子を判別する。
(特性X線測定による判別)
走査型電子顕微鏡(上記のSEM)にエネルギー分散型X線分光器を装備した装置(略称「SEM−EDX」、「SEM−EDS」)により特性X線測定を行って判別する。この装置を用いることでSEM像と同一視野で特性X線測定を行うことができる。具体的には、まずSEM測定をしてタルク粒子の候補となる箇所を特定する。次に、同じ領域全体をEDX(エネルギー分散型X線分光器)により走査測定して特性X線によるマッピングを実施する。EDXによる元素マッピングとは、SEM測定と同様に電子ビームを走査しながら各箇所において特性X線を短時間で測定してマッピングする方法である。また測定場所を固定して各地点において各元素に由来する特性X線強度を測定して各元素の特性X線強度比を求めることができる。この比は組成と相関しているため判別に使用できる。
(例1.タルクと白雲母が共存する場合) 白雲母はへき開性を有し平板状の粒子でありタルク粒子と形状が似ているが、組成がKAl[(AlSi)O10]である。上記元素マッピングによって、タルク部分にはMgの特性X線が検出される一方でKおよびAlの特性X線は検出されないのに対して、白雲母部分にはMgの特性X線が検出されない一方でKおよびAlの特性X線が検出されるために、明確に判別することができる。
(例2.タルクとかんらん石の一種であるフォルステライトが共存する場合) フォルステライトは、組成がMgSiOでありタルクと構成元素が似ているがMgとSiの組成比が異なる。この場合には、既知のタルクを含有させた耐熱滑性層であらかじめタルク粒子の地点でMgとSiの特性X線を測定して、MgとSiの特性X線強度比を算出しておく。判別するサンプルについて同様に測定を行い、あらかじめ算出したタルクのMgとSi強度比と比較することでタルクか否かを判別することができる。
より詳細な説明は例えば「機器分析の辞典 (社)日本分析化学会編」(株)朝倉書店発行,2005年、「表面分析技術選書 電子プローブ・マイクロアナライザー 日本表面科学会編」丸善(株)発行,1998年や、EPMA Electron probe microanalyzer電子プローブ・マイクロアナライザー 木ノ内 嗣郎 著 技術書院発行,2001年に記載されている。
(耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積)
本発明において、前記の方法により求めた耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積について、10平方μm以上のものについて個数と投影面積を求める。通常、40万平方μmの耐熱滑性層の領域(例えば0.5mm×0.8mm四方)について前記タルク粒子に対応する投影面積を求め、通常200個以上の投影面積を求めることになる。更に平均投影面積と標準偏差と変動係数を計算する。計算式は以下の通りである。
数式(1) (平均投影面積)=(投影面積の総和)/(全個数)
数式(2) (標準偏差)={[(各々の投影面積)―(平均投影面積)]の2乗の総和/(全個数)}の0.5乗
数式(3) (変動係数)=(標準偏差)/(平均投影面積)
本発明において、前記平均投影面積は80平方μm以下であり、60平方μm以下であることが好ましく、40平方μm以下であることが最も好ましい。10平方μm以上のものの平均投影面積であるため、平均投影面積は必ず10平方μm以上である。
変動係数はこの値が小さいほどタルクに相当する投影面積の分布がそろっていることを示し、本発明においては変動係数は0.80以下であり、0.60以下が更に好ましい。
また、タルクに相当する投影面積が100平方μm以上であるものの個数が20万平方μm当たり3個以下であることが好ましく、1個以下であることが最も好ましい。タルクに相当する投影面積が100平方μm以上であるものの個数が少ない場合には個数の精度を上げるために、更に広い耐熱滑性層の領域(例えば100万平方μm 1.0mm×1.0mm四方)について個数を求めることが好ましい。
本発明においては、上述したように平均投影面積が80平方μm以下でありかつ変動係数が0.80以下とすることによって初めて、高速プリントにおいてプリント開始時の感熱転写シートの伸びを抑制でき、そのため印画シワが改良でき、かつ低濃度域のプリントの点状またはスジ状の画像欠陥を抑制できるという優れた効果を奏するものである。
図1は、日立製作所(株)製、高分解能電界放出型走査電子顕微鏡S−4700(商品名)を用いて加速電圧20kVで得られた耐熱滑性層の実際の電子顕微鏡写真(SEM像)であり、電子顕微鏡写真(SEM像)の上下方向で入射電子線と観察面間の傾斜角度を30°として測定したものである。図1は、400μm×500μmの面積である。
図1の写真において、周囲より白く表示されている部分がタルクに由来する部分であり、あらかじめ前述のSEM−EDX測定から周囲より白く表示されている部分がタルクであることを確認している。
ここで、図1の電子顕微鏡写真(SEM像)は、本発明の耐熱滑性層中のタルク粒子を示したもので、写真中の各々のタルク粒子に対応する投影面積について、10平方μm以上のものは約100個存在し、投影面積が10平方μm以上のものの平均投影面積は25平方μmであり、10平方μm以上のものの投影面積の変動係数は0.50であり、また100平方μm以上の投影面積のものはないことが分かる。
本発明において、耐熱滑性層にはタルク以外にもその他の無機粒子、滑剤、可塑剤、安定剤、充填剤およびフィラー等の添加剤を併用することができる。
タルク以外の無機粒子としては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化黒鉛等のフッ化物、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、硫化鉄等の硫化物、シリカ、コロイダルシリカ、酸化鉛、アルミナ、酸化モリブデン等の酸化物、グラファイト、雲母、窒化ホウ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、炭酸マグネシウム(マグネサイト)、炭酸マグネシウムカルシウム(ドロマイト)、粘土類(カオリン、酸性白土等)等の無機粒子が挙げられるが、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウムおよびカオリンが好ましく、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸マグネシウムカルシウムがより好ましく、酸化マグネシウムが最も好ましい。耐熱滑性層に含まれるタルク以外の無機粒子は耐熱滑性層の総量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜30質量%がより好ましく、0.1質量%〜20質量%が最も好ましい。
タルク以外の無機粒子のサイズ(平均球相当径)は0.1μmから50μmが好ましく、0.5μmから10μmがより好ましく、粒子形状としては不定形、球形、立方体、針状、平板状等いずれの形状であっても用いることができるが、針状および平板状のものが好ましく用いられる。これらの中でもモース硬度3から6であり、平均粒子径が0.3μmから5μmであり、かつ粒子の最大巾の球相当径に対する比が平均で1.5から50であるタルク以外の無機粒子を併用することが更に好ましい態様である。
タルク以外に併用できる有機物としてはフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂、シリコーンオイル、高級脂肪酸アルコール、オルガノポリシロキサン、有機カルボン酸、OH基を有するリン酸エステル、アルキルカルボン酸多価金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等)、リン酸エステルアンモニウム塩もしくは金属塩(ステアリルリン酸亜鉛等)、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの中でも、スティッキング抑制や滑り性向上等に効果のあるシリコーン樹脂、オルガノポリシロキサン、OH基を有するリン酸エステル、アルキルカルボン酸多価金属塩、リン酸エステルアンモニウム塩もしくは金属塩を好ましく併用できる。なかでもOH基を有するリン酸エステル、アルキルカルボン酸多価金属塩、リン酸エステルアンモニウム塩もしくは金属塩が好ましい。
OH基を有するリン酸エステル、リン酸エステルアンモニウム塩もしくは金属塩は、下記一般式(P)で表される化合物が好ましい。
一般式(P)
{(R1aO)(R2aO)P(=O)O}
式中、R1aは置換基を有してよい脂肪族基または置換基を有してよいアリール基を表し、R2aは水素原子、金属イオン、置換基を有してよい脂肪族基または置換基を有してよいアリール基を表す。Mは水素原子、金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。mはMの価数と同じ数であって1〜6の数を示す。
上記脂肪族基やアリール基が置換してもよい置換基としては、例えば、脂肪族基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケノキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルケノキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基等が挙げられる。
1a、R2aにおける脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、これらの置換基はさらにこれらの置換基で置換されていてもよい。
1aは脂肪族基が好ましく、なかでもアルキル基またはアルケニル基が好ましく、R2aは水素原子または脂肪族基が好ましく、水素原子、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。なお、これらの脂肪族基、アルキル基、アルケニル基は上述の置換基を有していてもよい。
1aまたは/およびR2aが脂肪族基である場合、以下の基である場合が好ましい。
11〜R14は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては、前記一般式(P)におけるR1a、R2aの脂肪族基やアリール基が有してもよい置換基が挙げられる。R11〜R14は水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。nは0〜20の数を表し、1〜8がさらに好ましい。R15は脂肪族基またはアリール基を表す。
15における脂肪族基は、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、炭素原子数は6〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。また、R15は置換基を有してもよく、該置換基としては、前記一般式(P)におけるR1a、R2aの脂肪族基やアリール基が有してもよい置換基が挙げられるが、無置換の脂肪族基が好ましい。
15のアリール基は、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。該アリール基は置換基を有してもよく、前記一般式(P)におけるR1a、R2aの脂肪族基やアリール基が有してもよい置換基が挙げられ、なかでもアルキル基が好ましい。この場合のアルキル基は、炭素原子数が6〜20が好ましく、12〜18がより好ましい。
15は、好ましくは脂肪族基であり、より好ましくはステアリル基、オレイル基である。
またnが0の場合も本発明においては好ましい。
Mは水素原子、金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。金属イオンは1価金属イオンであっても多価金属イオンであってもよい。1価金属イオンとしては、アルカリ金属イオンが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが最も好ましい。多価金属イオンとしてはアルカリ金属イオン以外の任意の多価金属イオンであり、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、銅イオン、鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、クロムイオンおよびマンガンイオンなどが挙げられるが、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンが好ましく、亜鉛イオンが最も好ましい。
アンモニウムイオンとしては下記一般式で表わされるイオンが好ましい。
N(RA1)(RA2)(RA3)(RA4
上記において、RA1〜RA4は各々独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基を表し、該置換基としては、前記一般式(P)におけるR1a、R2aの脂肪族基やアリール基が有してもよい置換基が挙げられる。これらの置換基のうち、好ましくはヒドロキシル基、フェニル基である。また、RA1〜RA4のいずれか2〜3個の基が互いに結合して環(例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、インドリン環、キヌクリジン環、ピリジン環)を形成してもよい。
A1〜RA4は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。
アンモニウムイオンとしては、NH 、NH(CHCHOH) 、NH(CHCHOH)、モルホリニウム、N(CHCHOH) 、NH(Cが好ましく、NH 、NH(CHCHOH)、モルホリニウムがより好ましい。
1aは炭素数12〜18のアルキル基が好ましく、R2aは水素原子、金属イオンまたは炭素数12〜18のアルキル基が好ましい。また、一般式(P)で表される化合物を単独で使用しても複数混合して使用しても構わないが、好ましくは複数併用した場合である。
一般式(P)で表される化合物のうち、Mが水素原子である化合物は、その多くが市販されており、例えば、日光ケミカルズ(株)のNIKKOL DLP−10、NIKKOL DOP−8NV、NIKKOL DDP−2、NIKKOL DDP−4、NIKKOL DDP−6、NIKKOL DDP−8、NIKKOL DDP−10、第一工業製薬(株)のプライサーフAL、プライサーフA208F、プライサーフA208N、プライサーフA217E、プライサーフA219B、東邦化学工業(株)のフォスファノールRB410、フォスファノールRB710、フォスファノールGF199、フォスファノールLP700、フォスファノールLB400、堺化学工業(株)のPhoslexA―8、PhoslexA―18、PhoslexA―18D(いずれも商品名)が挙げられる。
これ以外に、ジラウリルリン酸エステル、ジオレイルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、ジ(ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル)リン酸が挙げられる。
また、一般式(P)におけるMが金属イオンの化合物も、その多くが市販されており、例えば、第一工業製薬(株)のプライサーフM208B、プライサーフM208F、東邦化学工業(株)のフォスファノールRD720、フォスファノールGF185、フォスファノールGF215、フォスファノールRS710M、フォスファノールSC6103、堺化学工業(株)のLBT―1830、LBT―1830精製品、LBT―2230、LBT―1813、LBT―1820(いずれも商品名)が挙げられる。
これ以外に、ジラウリルリン酸エステルの亜鉛塩、ジオレイルリン酸エステルの亜鉛塩、ジステアリルリン酸エステルの亜鉛塩、ジ(ポリオキシエチレンノニルエーテル)リン酸ナトリウム、ジ(ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル)リン酸、ジ(ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル)リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明の一般式(P)で表される化合物の総塗設量は耐熱滑性層の総塗設質量の1%以上25%以下であることが好ましく、2%以上15%以下であることがさらに好ましい。これらのうち、常温で固体であるものが好ましい。
耐熱滑性層用塗工液に対する溶解度が低いあるいは溶解しない場合には、耐熱滑性層用塗工液への分散を早めるあるいは安定化するためにあらかじめ粉末状の形態にしておくことが好ましく、粒子サイズとしては0.1μmから100μmが好ましく、1μmから30μmがより好ましい。
本発明において、耐熱滑性層中のタルクの含有量は、一般式(P)で表される化合物の総含有量を100質量部としたとき、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。なお、上限は好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは400質量部以下である。
アルキルカルボン酸多価金属塩において、アルキルカルボン酸は、炭素数8〜25のアルキルカルボン酸が好ましく、炭素数12〜21がより好ましく、炭素数14〜20がさらに好ましく、例えば、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられ、多価金属としては、2価または3価の金属が挙げられ、アルカリ土類金属、遷移金属が挙げられ、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、カドミウム、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄などが挙げられ、なかでも亜鉛が好ましい。アルキルカルボン酸多価金属塩としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅などが挙げられ、このなかでもステアリン酸亜鉛が好ましい。これらは市販されていたり、対応するカルボン酸から容易に合成することができる。
これらのアルキルカルボン酸多価金属塩は、耐熱滑性層の樹脂(バインダー樹脂)100質量部に対し、0.1〜50質量部使用するのが好ましく、0.5〜10質量部使用するのがより好ましい。
耐熱滑性層に含まれるこれら樹脂以外の有機物の量は様々であるが、耐熱滑性層の総量に対して0.001質量%〜50質量%が好まし、く、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。
耐熱滑性層には樹脂を含むが、耐熱性の高い公知の樹脂を用いることができる。例として、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物を挙げることができる。
耐熱性を高めるため、紫外線又は電子ビームを照射して樹脂を架橋することが出来る。また、架橋剤を用い、加熱により架橋させることも可能である。この際、触媒を添加することも出来る。架橋剤としては、イソシアネート系(ポリイソシアネート、ポリイソシアネートの環状3量体等)、金属系(チタンテトラブチレート、ジルコニウムテトラブチレート、アルミニウムトリイソプロピレート等)等が挙げられる。これら架橋剤と反応させる樹脂の例としては、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリエステルポリオール、アルキドポリオール、およびアミノ基を側鎖に含むシリコーン化合物等が挙げられる。
耐熱滑性層を塗設後に高温の更には高湿の環境に置くことで架橋剤との反応を促進することが知られている。この点、本発明においては、耐熱滑性層中に含有する前記一般式(P)で表されるリン酸エステル又はリン酸エステルの塩局在化構造が破壊されない条件を選ぶことが好ましい。また、本発明の耐熱滑性層における前記リン酸エステル又は塩局在化構造が破壊されない条件で十分に架橋反応を促進できるように、上記樹脂と架橋剤の組み合わせを選定することができる。60℃低湿条件であれば1日以内に十分架橋反応を促進できる樹脂と架橋剤の組み合わせが好ましい。
このような樹脂としては、樹脂のポリマー鎖長末端もしくはポリマー構造中に2個以上の水酸基を有することが好ましい。ここで、樹脂のポリマー鎖長末端もしくはポリマー構造中に2個以上の水酸基を有するとは、該樹脂のポリマー鎖の長さ方向の末端もしくはそのポリマーの末端ではない構造中に水酸基を2個以上有していることを意味する。このような樹脂としては、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。なお、本発明においては、ポリアクリルポリオールにはポリメタアクリルポリオールも包含されるものである。本発明においては、これらのなかでもポリアクリルポリオールが好ましい。
樹脂のポリマー鎖長末端もしくはポリマー構造中に2個以上の水酸基を有する樹脂としては、市販のものを使用することができ、例えば、三井化学ポリウレタン(株)製タケラック(登録商標)シリーズ、綜研化学(株)製サーモラックシリーズ、日立化成(株)製ヒタロイドシリーズ、ハリマ化成(株)製ハリアクロンシリーズ、大日本インキ(株)製アクリディックシリーズ及び日本ポリウレタン(株)製ニッポランシリーズ(いずれも商品名)を挙げることが出来るがこれらに限定されない。
樹脂のポリマー鎖長末端もしくはポリマー構造中に2個以上の水酸基を有する樹脂の水酸基価は樹脂の固形分に対して5〜300が好ましく、15〜100が最も好ましい。水酸基価とはJIS K−1557−1で規定されている試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数のことである。このような樹脂の酸価は樹脂の固形分に対して20以下が好ましく、0〜10が最も好ましい。酸価とはJIS K−1557−5で規定されている試料1g中の遊離酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数のことである。
イソシアネート系架橋剤を用いて架橋させる場合にはIRスペクトル測定により残留イソシアネート基を検出することで架橋反応の進行を検出することができ、十分架橋反応を促進するとは、塗布して乾燥直後の耐熱滑性層中の残留イソシアネート基由来のIRスペクトルピーク強度に対して、架橋反応後の残留イソシアネート基由来のIRスペクトルピーク強度が20%以下であることであり、好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下であることである。
本発明の効果を効率的に発揮させるためには、樹脂と架橋剤の反応を促進する温度は65℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、40℃から53℃であることが最も好ましい。また樹脂と架橋剤の反応を促進する時間は12時間以上40日以下であることが好ましく、18時間以上30日以下であることがより好ましく、1日以上20日以下であることが最も好ましい。
(基材フィルム)
本発明の感熱転写シートの基材フィルムは特に限定されず、必要とされる耐熱性と強度を有するものであれば、従来公知の任意のものを使用することができる。例として、グラシン紙、コンデンサー紙、パフィン紙等の薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の耐熱性の高いポリエステル類、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチックの延伸あるいは未延伸フィルムや、これらの材料を積層したものが好ましい支持体の具体例として挙げられる。ポリエステルフィルムはこれらの中でも特に好ましく、延伸処理されたポリエステルフィルムがより好ましく、基材フイルムの少なくとも一方の面に易接着層を形成した後に延伸して製造されたものが特に好ましい。
この基材フイルムの厚さは、強度及び耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択されるが、1〜30μm程度のものが好ましく用いられる。より好ましくは1〜20μm程度のものであり、さらに好ましくは3〜10μm程度のものが用いられる。
(易接着処理)
基材フイルムは、塗布液の濡れ性及び接着性の向上を目的として、易接着処理を行なってもよい。易接着処理方法として、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術を例示することができる。
このうち、基材フイルム上に塗布によって易接着層を形成することもでき、本発明においては易接着層を形成することが好ましい。易接着層に用いられる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂等を例示することができる。
支持体に用いられる基材フイルムは、フィルムを溶融押出し形成する時に、未延伸フィルムに塗工処理を施し、その後に延伸処理して行なうことも可能である。
また、上記の処理は、二種類以上を併用することもできる。
ここで、前述のように、本発明においては、基材フイルムの少なくとも一方の面に、易接着層を形成後、延伸したものが好ましい。本発明の感熱転写シートは、染料層と基材フィルムの間に易接着層(染料バリア層)を設けることが好ましい。
転写するための染料(好ましくは昇華性染料)を含む熱転写層(以下、染料層ともいう)は染料塗工液を塗設して形成することが出来る。
(染料層)
本発明の染料層は、イエロー、マゼンタ、シアンの各色の染料層及び必要に応じてブラックの染料層が同一の基材フィルム上に面順次で繰り返し塗り分けられているのが好ましい。一例として、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色相の染料層が同一の基材フィルム上の長軸方向に、感熱転写受像シートの記録面の面積に対応して面順次に塗り分けられている場合を挙げることができる。この3層に加えて、ブラックの色相の染料層と転写性保護層(これは、後述する転写性保護層積層体であってもよい)のどちらか、あるいは双方が塗り分けられるのも好ましい態様である。
この様な態様を取る場合、各色の開始点をプリンターに伝達する目的で、感熱転写シート上に目印を付与することも好ましい態様である。このように面順次で繰り返し塗り分けることによって、色素の転写による画像の形成、さらには画像上への保護層の積層を一つの感熱転写シートで行なうことが可能となる。
しかしながら、本発明は前記のような染料層の設け方に限定されるものではない。昇華型熱転写インク層と熱溶融転写インク層を併設することも可能であり、また、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック以外の色相の染料層を設ける等の変更をすることも可能である。また、形態としては長尺であっても良いし、枚葉の熱転写シートであっても良いし、特に使用前の感熱転写シートが重なった状態で保管される態様に好ましく用いることができる。
(染料層塗工液)
染料層塗工液は、少なくとも昇華性染料(以下色素とも言う)と、バインダー樹脂を含有するものであるが、必要に応じて、有機微粉末もしくは無機微粉末、ワックス類、シリコーン樹脂、含フッ素有機化合物等を含有することも本発明の好ましい態様である。
本発明の感熱転写シートにおける各々の色素は、感熱転写層中にそれぞれ20〜80質量%含有されることが好ましく、30〜70質量%含有されることがより好ましい。
染料層の塗設は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行われる。また染料層の塗設量は、0.1〜2.0g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である)が好ましく、更に好ましくは0.2〜1.2g/mである。染料層の膜厚は0.1〜2.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.2〜1.2μmである。
感熱転写層は単層構成であっても複層構成であってもよく、複層構成の場合、熱転写層を構成する各層の組成は同一であっても異なっていてもよい。
(染料)
以下に、本発明で使用する下記一般式(1)で表される色素についてさらに詳細に説明する。
一般式(1)
一般式(1)中、Aは置換もしくは無置換のアリーレン基(炭素数は6〜12が好ましく、より好ましくはフェニレン基であり、例えば、p−フェニレン基)または置換もしくは無置換の2価のピリジン環基(炭素数は5〜11が好ましく、例えば、ピリジン−2,5−ジイル基)を表し、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基(炭素数は1〜10が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基)、置換もしくは無置換のアルケニル基(炭素数は2〜10が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基)または置換もしくは無置換のアリール基(炭素数は6〜12が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基)を表す。
ここで、前記、A、R、R、RおよびRの各基が置換してもよい置換基をさらに詳しく説明する。
以下に、このような置換基としては、下記の基が挙げられ、各々の置換基の具体的な基、各々の置換基の中での好ましい基を含めて説明する。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。中でも塩素原子、臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
脂肪族基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族基(環状の脂肪族基とは、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、ビシクロアルキル基等の環状の脂肪族基を意味する)であり、飽和脂肪族基には、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基が含まれ、置換基を有してもよい。これらの炭素数は1〜30が好ましい。例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、ベンジルおよび2−エチルヘキシルを挙げることができる。ここで、シクロアルキル基としては置換もしくは無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換もしくは無置換のシクロアルキル基は、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシルを挙げることができる。ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルを挙げることができる。さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
不飽和脂肪族基としては、直鎖、分枝または環状の不飽和脂肪族基であり、アルケニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基、アルキニル基が含まれる。アルケニル基としては直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基としては、炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基が好ましい。例としてはビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイルを挙げることができる。シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルが挙げられる。ビシクロアルケニル基としては、置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基が含まれる。ビシクロアルケニル基としては炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イルを挙げることができる。アルキニル基は、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル、およびプロパルギルが挙げられる。
アリール基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルが挙げられ、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
ヘテロ環基は、置換もしくは無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、それらはさらに縮環していてもよい。これらのヘテロ環基としては、好ましくは5または6員のヘテロ環基であり、また環構成のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、ピロール環、インドール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、ベンズオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イソチアゾール環、ベンズイソチアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾリジン環、チアゾリン環などが挙げられる。
脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)は、置換もしくは無置換の脂肪族オキシ基(代表としてアルコキシ基)が含まれ、炭素数は1〜30が好ましい。例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシおよび3−カルボキシプロポキシなどを挙げることができる。
アリールオキシ基は、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基の例として、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−tert−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシなどを挙げることができる。好ましくは、置換基を有してもよいフェニルオキシ基である。
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
カルバモイルオキシ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基の例には、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシなどを挙げることができる。
脂肪族オキシカルボニルオキシ基(代表としてアルコキシカルボニルオキシ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、tert−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルオキシ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシなどを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェノキシカルボニルオキシ基である。
アミノ基は、無置換のアミノ基、脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、アリールアミノ基およびヘテロ環アミノ基を含む。アミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族アミノ基(代表としてアルキルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましい。アミノ基の例には、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、ヒドロキシエチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、スルフォエチルアミノ、3,5−ジカルボキシアニリノ、4−キノリルアミノなどを挙げることができる。
アシルアミノ基は、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アミノカルボニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基の例には、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノなどを挙げることができる。なお、この基における「アミノ」とは、この基中のアミノ部分が前述のアミノ基と同義であることを意味する。他の基においても同様である。
脂肪族オキシカルボニルアミノ基(代表としてアルコキシカルボニルアミノ基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルアミノ基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基の例には、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノなどを挙げることができる。
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニルアミノ基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の脂肪族スルホニルアミノ基(代表としてアルキルスルホニルアミノ基)、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニルアミノ基)が好ましい。例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノなどを挙げることができる。
脂肪族チオ基(代表としてアルキルチオ基)は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオなどを挙げることができる。
スルファモイル基は、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基の例には、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)などを挙げることができる。
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルフィニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルフィニル基(代表としてアルキルスルフィニル基)、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルフィニル基)が好ましい。例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニルなどを挙げることができる。
脂肪族(代表としてアルキル)もしくはアリールスルホニル基は、炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族スルホニル基(代表としてアルキルスルホニル基)、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルスルホニル基)が好ましい。例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニルなどを挙げることができる。
アシル基は、ホルミル基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換の脂肪族カルボニル基(代表としてアルキルカルボニル基)、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基(好ましくは置換基を有してもよいフェニルカルボニル基)、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニルなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニル基は、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−tert−ブチルフェノキシカルボニルなどを挙げることができる。好ましくは置換基を有してもよいフェニルオキシカルボニル基である。
脂肪族オキシカルボニル基(代表としてアルコキシカルボニル基)は、炭素数2〜30が好ましく、置換基を有してもよい。例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルなどを挙げることができる。
カルバモイル基は、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基の例には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイルなどを挙げることができる。
アリールもしくはヘテロ環アゾ基として、例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾなどを挙げることができる。
イミド基として、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミドなどを挙げることができる。
これらに加え、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基が挙げられる。
以上の前記A、R、R、RおよびRの各基が置換してもよい置換基の例としてのこれらの各基はさらに置換基を有してもよく、このような置換基としては、上述の置換基が挙げられる。
Aとして、好ましくは置換もしくは無置換の2価のピリジン環基、または無置換のフェニレン基(なかでも、好ましくは置換もしくは無置換の2価のピリジン環基が好ましい。なお、フェニレン基ではp−フェニレン基が好ましい。)であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基が置換した2価のピリジン環基、または無置換のフェニレン基であり、最も好ましくは炭素数1〜2のアルキル基が置換した2価のピリジン環基であり、なかでも6−メチル−ピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。
として、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜10)(なかでも、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)が好ましい)であり、より好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基であり、最も好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、なかでもt−ブチル基が好ましい。
として、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜10)(なかでも、好ましくは置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜10)が好ましい)であり、より好ましくは置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基であり、最も好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基であり、アルキル置換フェニル基が特に好ましく、なかでも3−メチルフェニル基が好ましい。
として、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜10)(なかでも、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)が好ましい)であり、より好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基であり、最も好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、なかでもエチル基が好ましい。
として、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜10)(なかでも、好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)が好ましい)であり、より好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基であり、最も好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、なかでもエチル基が好ましい。
一般式(1)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせ(A、R、R、RおよびRの組み合わせ)については、これらの置換基の少なくとも1つが前記の好ましい置換基である染料が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい置換基である染料がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である染料が最も好ましい。
一般式(1)で表される色素の好ましい置換基の組み合わせは、Aが置換もしくは無置換の2価のピリジン環基、無置換のフェニレン基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、Aが置換もしくは無置換の2価のピリジン環基、無置換のフェニレン基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の組み合わせは、Aが置換もしくは無置換の2価のピリジン環基、無置換のフェニレン基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。
以下に、本発明の一般式(1)で表される色素の具体的化合物例を示すが、本発明は以下の具体例によって限定的に解釈されるものではない。
一般式(1)で表される色素のうち、市販されていないものに関しては、例えば特開平7−137455号公報に記載の方法もしくはこれに準じた方法により合成することができる。
その他本発明で一般式(1)で表される色素とともに併用される色素は、熱により拡散し、感熱転写シートに組み込み可能かつ、加熱により感熱転写シートから受像シートに転写するものであれば特に限定されず、感熱転写シート用の色素として従来から用いられてきている色素、あるいは公知の色素を用いることができる。
好ましい色素としては、たとえば、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等が挙げられる。
具体例を挙げると、イエロー色素としては、ディスパースイエロー231、ディスパースイエロー201、ソルベントイエロー93等が、一般式(1)で表される色素以外のマゼンタ色素としては、ディスパースバイオレット26、ディスパースレッド60、ソルベントレッド19等が、さらに、シアン色素としては、ソルベントブルー63、ソルベントブルー36、ディスパースブルー354、ディスパースブルー35等が挙げられるがこれらに限定されない。また、上記の各色相の色素を任意に組み合わせることも可能である。
(染料層用樹脂)
本発明の感熱転写シートにおいて、通常、染料は樹脂(バインダー、樹脂バインダーとも呼ばれる)と呼ばれる高分子化合物に分散された状態で基材フィルム上に塗設されている。本発明では染料層に含まれる樹脂バインダーとして、公知のものを使用することができる。例として、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、硝酸セルロース等の変性セルロース系樹脂ニトロセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びエチルセルロースなどのセルロース系樹脂や、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、各種エストラマー等が挙げられ、上記からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂により染料層は構成される。
これらを単独で用いる他、これらを混合、または共重合して用いることも可能であり、各種架橋剤によって架橋することも可能である。
本発明において、セルロース系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂が好ましく、より好ましくはポリビニルアセタール系樹脂である。中でもポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が本発明において好ましく用いられる。
染料層における染料の樹脂に対する含有量の比(質量比)はどのような割合であってもよいが、0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましく、0.9〜2.0がさらに好ましい。
(転写性保護層積層体)
本発明では、感熱転写シートに転写性保護層積層体を面順次で設けることも好ましい。転写性保護層積層体は、熱転写された画像の上に透明樹脂からなる保護層を熱転写で形成し、画像を覆い保護するためのものであり、耐擦過性、耐光性、耐候性等の耐久性向上を目的とする。転写された色素が受像シート表面に曝されたままでは、耐光性、耐擦過性、耐薬品性等の画像耐久性が不十分な場合に有効である。
転写性保護層積層体は、基材フィルム上に、基材フィルム側から離型層、保護層、接着剤層の順に形成することができる。保護層を複数の層で形成することも可能である。保護層が他の層の機能を兼ね備えている場合には、離型層、接着剤層を省くことも可能である。支持体としては、易接着層の設けられたものを用いることも可能である。
(転写性保護層)
本発明の転写性保護層を形成する樹脂としては、耐擦過性、耐薬品性、透明性、硬度に優れた樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これら各樹脂のシリコーン変性樹脂、紫外線遮断性樹脂、これら各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
また、各種架橋剤によって架橋することも可能である。
(転写性保護層樹脂)
アクリル樹脂としては、従来公知のアクリレートモノマー、メタクリレートモノマーの中から選ばれた少なくとも1つ以上のモノマーからなる重合体で、アクリル系モノマー以外にスチレン、アクリロニトリル等を共重合させても良い。好ましいモノマーとしてメチルメタクリレートを仕込み質量比で50質量%以上含有していることが挙げられる。
本発明のアクリル樹脂は、分子量が20,000以上100,000以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂としては、従来公知の飽和ポリエステル樹脂を使用できる。上記ポリエステル樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度は50〜120℃が好ましく、又、分子量は2,000〜40,000の範囲が好ましく、更に4,000〜20,000の範囲が保護層転写時に箔切れ性が良くなり、より好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明において、保護層および/または接着層に、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、紫外線吸収剤としては、従来公知の無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤が使用できる。有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤や、これらの非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入し、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に共重合若しくは、グラフトしたものを使用することができる。また、樹脂のモノマーまたはオリゴマーに紫外線吸収剤を溶解させた後、このモノマーまたはオリゴマーを重合させる方法が開示されており(特開2006−21333号公報)、こうして得られた紫外線遮断性樹脂を用いることもできる。この場合には紫外線吸収剤は非反応性のもので良い。
これら紫外線吸収剤に中でも、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系が好ましい。これら紫外線吸収剤は画像形成に使用する色素の特性に応じて、有効な紫外線吸収波長域をカバーするように組み合わせて使用することが好ましく、また、非反応性紫外線吸収剤の場合には紫外線吸収剤が析出しないように構造が異なるものを複数混合して用いることが好ましい。
紫外線吸収剤の市販品としては、チヌビン−P(チバガイギー製)、JF−77(城北化学製)、シーソープ701(白石カルシウム製)、スミソープ200(住友化学製)、バイオソープ520(共同薬品製)、アデカスタブLA−32(旭電化製)等(いずれも商品名)が挙げられる。
(転写性保護層の形成)
保護層の形成法は、用いられる樹脂の種類に依存するが、前記染料層の形成方法と同様の方法で形成すことができ、0.5〜10μmの厚さが好ましい。
(離型層)
前記転写性保護層が熱転写時に基材フィルムから剥離しにくい場合には、基材フィルムと保護層との間に離型層を形成することができる。転写性保護層と離型層の間に更に剥離層を形成しても良い。離型層は、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、アクリルビニルエーテル系樹脂、無水マレイン酸樹脂、及びこれらの樹脂群の共重合体を少なくとも1種以上含有する塗工液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコート等の方法で塗設、乾燥することにより形成することができる。上記の樹脂の中でも、アクリル樹脂として、アクリル酸やメタクリル酸等の単体、または他のモノマー等と共重合させた樹脂、あるいはセルロース誘導体樹脂が好ましく、基材フィルムとの密着性、保護層との離型性において優れている。
各種架橋剤によって架橋することも可能であり、また、電離放射線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂も用いることができる。
離型層は、熱転写時に被転写体に移行するもの、あるいは基材フィルム側に残るもの、あるいは凝集破壊するもの等を、適宜選択することができるが、熱転写により離型層が基材フィルム側に残存し、離型層と転写性保護層との界面が熱転写された後の保護層表面になるようにすることが、表面光沢性、保護層の転写安定性等の点で優れており、好ましい態様である。離型層の形成方法は、従来公知の塗設方法で形成でき、その厚みは乾燥状態で0.5〜5μm程度が好ましい。
(接着層)
転写性保護層積層体の最上層として、保護層の最表面に接着層を設けることができる。これによって保護層の被転写体への接着性を良好にすることができる。
2)感熱転写受像シート
次に感熱転写プリントを形成するために本発明の感熱転写シートと組み合わせて使用できる感熱転写受像シート(以下、単に受像シートともいう。)に関して詳細に説明する。
感熱転写受像シートは、色素を受容する熱可塑性の受容ポリマーを含有する少なくとも1層の受容層を支持体上に有する。受容層には、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、その他の添加物を含有させることができる。支持体と受容層との間に、例えば断熱層(多孔質層)、光沢制御層、白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層などの中間層が形成されていてもよい。支持体と受容層との間に少なくとも1層の断熱層を有することが好ましい。
受容層およびこれらの中間層は同時重層塗布により形成されることが好ましく、中間層は、必要に応じて複数設けることができる。
支持体の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていてもよい。支持体裏面各層を塗布するためには、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法を用いることができる。
本発明においては、どのような感熱転写受像シートと組み合わせることもできるが、特に、支持体上に、中空ポリマー(粒子)ラテックスを含有する断熱層とポリマー(粒子)ラテックスを含有する受容層とを有する感熱転写受像シートと組み合わせて用いることが、本発明の効果を効果的に奏する点で好ましい。
感熱転写受像シートは、受容層に色素染着可能なポリマーラテックスを使用することが好ましい。またポリマーラテックスとしては単独でも複数のポリマーラテックスを混合使用してもよい。
ポリマーラテックスとは一般に熱可塑性樹脂が微粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。本発明のポリマーラテックスに用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
このうちポリカーボネート、ポリエステル、塩化ビニル共重合体が好ましく、ポリエステル、塩化ビニル共重合体が特に好ましい。
ポリエステルはジカルボン酸誘導体とジオール化合物との縮合により得られ、芳香環や飽和炭化環を含有してもよく、分散性を付与するための水溶性基してもよい。
塩化ビニル共重合体としては、塩化ビニルと酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとメタクリレートの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリレートとエチレンの共重合体等が挙げられる。このように2元共重合体でも3元以上の共重合体でもよく、モノマーが不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
該共重合体にはビニルアルコール誘導体やマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体などの補助的なモノマー成分を添加してもよい。共重合体において塩化ビニル成分は50質量%以上含有されていることが好ましく、またマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体等の補助的なモノマー成分は10質量%以下であることが好ましい。
ポリマーラテックスは単独でも混合物として使用してもよい。ポリマーラテックスは、均一構造であってもコア/シェル型であってもよく、このときコアとシェルをそれぞれ形成する樹脂のガラス転移温度が異なっても良い。
この様なポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、20℃以上90℃以下であることが好ましく、より好ましくは25℃以上80℃以下である。
商業的に入手可能なアクリレートラテックスとしては、日本ゼオン株式会社製、NipolLX814(Tg25℃)、NipolLX857X2(Tg43℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
商業的に入手可能なポリエステルラテックスとしては、東洋紡株式会社製 バイロナールMD−1100(Tg40℃)、バイロナールMD−1400(Tg20℃)、バイロナールMD−1480(Tg20℃)、MD−1985(Tg20℃)等(いずれも製品名)が挙げられる。
商業的に入手可能な塩化ビニル共重合体としては、日信化学工業株式会社製 ビニブラン276(Tg33℃)、ビニブラン609(Tg48℃)、住化ケムテックス株式会社製スミエリート1320(Tg30℃)、スミエリート1210(Tg20℃)等(いずれも商品名)が挙げられる。
ポリマーラテックスの添加量は、ポリマーラテックスの固形分が受容層中の全ポリマーの50〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。またポリマーラテックスの平均粒子サイズは、好ましくは1〜50000nmであり、より好ましくは5〜1000nmである。
断熱層に中空ポリマーを含有することが好ましい。
本発明において中空ポリマーとは粒子内部に空隙を有するポリマー粒子であり、好ましくは水分散物であり、例えば、1)ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水などの分散媒が入っており、塗布乾燥後、粒子内の水が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空ポリマー粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれか又はそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、3)上記の2)をあらかじめ加熱発泡させて中空ポリマーとしたマイクロバルーンなどが挙げられる。
これらの中でも、上記1)の非発泡型の中空ポリマー粒子が好ましく、必要に応じて2種以上混合して使用することができる。具体例としてはロームアンドハース社製 ローペイク HP−1055、JSR社製 SX866(B)、日本ゼオン社製 Nipol MH5055 (いずれも商品名)などが挙げられる。
これらの中空ポリマーの平均粒子径は0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.2〜3.0μmであることがさらに好ましく、0.4〜1.4μmであることが特に好ましい。
また、中空ポリマーは、空隙率が20〜70%のものが好ましく、30〜60%のものがより好ましい。
中空ポリマー粒子のサイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、その外径の円相当換算直径を測定し算出する。平均粒径は、中空ポリマー粒子を少なくとも300個透過電子顕微鏡を用いて観察し、その外形の円相当径を算出し、平均して求める。また中空ポリマーの空隙率とは、粒子体積に対する空隙部分の体積の割合から求める。
中空ポリマーのポリマー特性として、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上200℃以下であることが好ましく、90℃以上180℃以下である中空ポリマーがさらに好ましい。中空ポリマーとしては、中空ポリマーラッテックスが特に好ましい。
感熱転写受像シートの受容層及び/または断熱層には水溶性ポリマーを含有させることができる。ここで水溶性ポリマーとは、20℃において水100gに対し0.05g以上の溶解度を有し、より好ましくは0.1g以上、さらに好ましくは0.5g以上の溶解度を有する。
感熱転写受像シートに用いることのできる水溶性ポリマーとして、カラギナン類、ペクチン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性ポリエステル等を挙げることができる。このうちゼラチンとポリビニルアルコールが好ましい。
ゼラチンは分子量10,000から1,000,000までのものを用いることができ、ゼラチン中にCl、SO 2−等の陰イオンを含んでいてもよいし、Fe2+、Ca2+、Mg2+、Sn2+、Zn2+などの陽イオンを含んでいても良い。ゼラチンは水に溶かして添加することが好ましい。
またゼラチンには、アルデヒド型架橋剤、N−メチロール型架橋剤、ビニルスルホン型架橋剤、クロロトリアジン型架橋剤等の公知の架橋剤を添加することができる。このうちビニルスルホン型架橋剤、クロロトリアジン型架橋剤が好ましく、具体的例としては、ビスビニルスルホニルメチルエーテル、N,N’−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン、4,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンまたはそのナトリウム塩を挙げることができる。
ポリビニルアルコールとしては、完全けん化物、部分けん化物、変性ポリビニルアルコール等の各種ポリビニルアルコールを用いることができる。これらポリビニルアルコールについては、長野浩一ら共著,「ポバール」(高分子刊行会発行)に記載のものが用いられる。ポリビニルアルコールは、その水溶液に添加する微量の溶剤あるいは無機塩類によって粘度調整をしたり粘度安定化させたりすることが可能であって、詳しくは上記文献144〜154頁記載のものを使用することができる。その代表例としてホウ酸を含有させることで塗布面質を向上させることができ、好ましい。ホウ酸の添加量は、ポリビニルアルコールに対し0.01〜40質量%であることが好ましい。
ポリビニルアルコールの具体例として、完全けん化物としてはPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117Hなど、部分けん化物としてはPVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−220など、変性ポリビニルアルコールとしてはC−118、HL−12E、KL−118、MP−203が挙げられる。(いずれも商品名、株式会社クラレ製)
感熱転写受像シートの受容層に、フッ素原子が置換した脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物を含有させることができる。この場合、感熱転写シートが含有するフッ素原子が置換した脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物と同一の高分子化合物を含有しても同じ範疇の異なる高分子化合物を含有してもよく、好ましい態様である。また、離型剤として公知のポリエチレンワックス、アミドワックス等の固形ワックス類、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を含有してもよい。
フッ素原子が置換した脂肪族基を側鎖に有する高分子化合物の含有量は、受容層の全固形分(質量)に対して0.01%〜20%であり、好ましくは0.1%〜10%であり、さらに好ましくは1%〜5%である。
3)画像形成方法
次に本発明の感熱転写シートを用いて行うことのできる画像形成方法について説明する。
画像形成方法では、感熱転写受像シートの受容層と感熱転写シートの染料層などの熱転写層とが接するように重ね合わせ、サーマルプリンターヘッドからの画像信号に応じた熱エネルギーを感熱転写シートの耐熱滑性層側から付与することにより画像を形成する。
具体的な画像形成は、例えば特開2005−88545号公報などに記載された方法と同様にして行うことができる。本発明では、消費者にプリント物を提供するまでの時間を短縮するという観点から、プリント時間は15秒未満が好ましく、3〜12秒がより好ましく、さらに好ましくは、3〜7秒である。
上記プリント時間を満たすために、プリント時のライン速度は1.0msec/line以下であることが好ましく0.75msec/line以下であることが更に好ましく、0.65msec/line以下であることが最も好ましい。また、高速プリントにおける転写効率向上の観点から、プリント時のサーマルプリンターヘッド最高到達温度は、180℃以上450℃以下が好ましく、更に好ましくは200℃以上450℃以下である。更には350℃以上450℃以下が好ましい。
本発明の感熱転写シートは感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンター(例えば、日立製作所製、商品名、ビデオプリンターVY−100)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm程度の熱エネルギーを付与することによってプリントを得ることができる。また、本発明の感熱転写シートと組み合わせて用いられる感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
実施例1
(感熱転写シートの作製)
基材フィルムとして片面に易接着層が形成された後に延伸して製造された厚さ4.5μmのポリエステルフィルムの易接着層とは反対面に、乾燥後の固形分塗設量が1.1g/mとなるように後述の耐熱滑性層塗工液Aを塗設した。後述の耐熱滑性層塗工液Aのポリイソシアネートと樹脂との反応性の基の比率(−NCO/OH)は1.1であった。塗布直後に100℃オーブンで1分間乾燥後、引き続き65℃で15時間熱処理を行いイソシアネートとポリオールの架橋反応を行い硬化させた。熱処理後に未反応のイソシアネート基をIR測定により確認し、十分に反応していることを確認した。
このようにして作製した耐熱滑性層形成ポリエステルフィルムの易接着層塗布側に後述の塗工液により、イエロー、マゼンタ、シアンの各染料層(感熱転写層)および転写性保護層積層体を面順次となるように塗設した感熱転写シートを作製した。各染料層の固形分塗設量は、0.9g/mとした。これら塗布直後に100℃オーブンで1分間乾燥させた。
なお、転写性保護層積層体の形成は、離型層用塗工液を塗布し、その上に保護層用塗工液を塗設し、乾燥した後に、さらにその上に接着層塗工液を塗布した。
耐熱滑性層用分散液A
ポリビニルアセタール樹脂 10.0質量部
(エスレックBX―1、商品名、積水化学(株)製)
OH基を有するリン酸エステル(一般式(P)で表される化合物) 1.8質量部
(フォスレックスA−18、商品名、堺化学工業(株)製:アルコール部の炭素数18)
ステアリン酸亜鉛 0.3質量部
原料タルク 1.5質量部
(平均球相当径粒子サイズ2.9μm、X線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する不純物由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)が0.15、散弾式磨耗度25mg)
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 86.4質量部
前記耐熱滑性層用分散液Aの樹脂と溶媒をあらかじめ溶解し、溶解液にその他添加剤を添加してプレミキシングを実施後、分散を実施して分散液を調製した。分散条件は以下の3つの条件のいずれかで実施した。
(条件1)ペイントシェーカーを用いて120分間分散
(条件2)独・フリッチュ社製遊星型ボールミルP−7型(商品名)を用いて250rpm40分間分散
(条件3)独・フリッチュ社製遊星型ボールミルP−7型を用いて400rpm40分間分散
耐熱滑性層塗工液
耐熱滑性層用分散液A 35.0質量部
ポリイソシアネート(75%溶液) 5.0質量部
(バーノックD−750、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 60.0質量部
イエロー染料層塗工液
染料(Y−1) 0.6質量部
染料(Y−2) 0.6質量部
染料(Y−3) 4.0質量部
染料(Y−4) 1.9質量部
ポリビニルアセタール樹脂 6.0質量部
(デンカブチラール#5000−D、商品名、電気化学工業(株)製)
フッ素系高分子 0.1質量部
(メガファックF−472SF、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
フルオロカルボン酸のリチウム塩(アニオン性、水溶性) 0.01質量部
(Zonyl FSA、商品名、デュポン社製)
マット剤(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製) 0.12質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 85質量部
マゼンタ染料層塗工液
染料(M−1) 3.9質量部
染料(M−2) 3.9質量部
ポリビニルアセタール樹脂 5.5質量部
(デンカブチラール#5000−D、商品名、電気化学工業(株)製)
フッ素系高分子 0.1質量部
(メガファックF−472SF、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
フルオロカルボン酸のリチウム塩(アニオン性、水溶性) 0.01質量部
(Zonyl FSA、商品名、デュポン社製)
マット剤(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製) 0.12質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 85質量部
シアン染料層塗工液
染料(C−1) 0.7質量部
染料(C−2) 5.7質量部
染料(C−3) 0.8質量部
ポリビニルアセタール樹脂 5.8質量部
(デンカブチラール#5000−D、商品名、電気化学工業(株)製)
フッ素系高分子 0.1質量部
(メガファックF−472SF、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
フルオロカルボン酸のリチウム塩(アニオン性、水溶性) 0.01質量部
(Zonyl FSA、商品名、デュポン社製)
マット剤(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製) 0.12質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 85質量部
転写性保護層積層体
染料層の作製に使用したものと同じポリエステルフィルムに、以下に示す組成の離型層、保護層および接着層用塗工液を塗布し、転写性保護層積層体を形成した。乾膜時の塗布量は離型層0.5g/m、保護層1.0g/m、接着層1.8g/mとした。
離型層塗工液
変性セルロース樹脂(L−30、商品名、ダイセル化学(株)製) 5.0質量部
メチルエチルケトン 95.0質量部
保護層塗工液
アクリル樹脂 35質量部
(ダイアナールBR−100、商品名、三菱レイヨン(株)製)
イソプロパノール 75質量部
接着層塗工液
アクリル樹脂 25質量部
(ダイアナールBR−77、商品名、三菱レイヨン(株)製)
紫外線吸収剤 UV−1 1.5質量部
紫外線吸収剤 UV−2 1.5質量部
紫外線吸収剤 UV−3 1.2質量部
紫外線吸収剤 UV−4 0.8質量部
シリコーン樹脂微粒子 0.06質量部
(トスパール120、商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 70質量部
(感熱転写受像シート(Z−1)の作製)
支持体として合成紙(ユポFPG200、厚さ200μm、商品名、(株)ユポ・コーポレーション製)を用い、この一方の面に下記組成の白色中間層、受容層の順にバーコーターにより塗布を行った。それぞれの乾燥時の塗布量は白色中間層:1.0g/m、受容層:4.0g/mとなるように塗布を行い、塗布後乾燥した後にプリンターの設定に合った形状に加工して感熱転写受像シート(Z−1)を作製した。
白色中間層
ポリエステル樹脂 14質量部
(バイロン200、商品名、東洋紡(株)製)
蛍光増白剤 2質量部
(Uvitex OB、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
酸化チタン 32質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 82質量部
受容層
塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂 100質量部
(ソルバインA、商品名、日信化学工業(株)製)
アミノ変性シリコーン 12質量部
(信越化学工業(株)製、商品名、X22−3050C)
エポキシ変性シリコーン 10質量部
(信越化学工業(株)製、商品名、X22−3000E)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 350質量部
(感熱転写受像シート(Z−2)の作製)
ポリエチレンで両面ラミネートした紙支持体表面に、コロナ放電処理を施した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むゼラチン下塗層を設けた。この上に、下記組成の下引き層、断熱層、受容層下層、受容層上層を支持体側からこの順に積層させた状態で、米国特許第2,761,791号明細書に記載の第9図に例示された方法により、同時重層塗布を行った。それぞれの乾燥時の塗布量が下引き層:5.6g/m、断熱層:9.2g/m、受容層下層:2.0g/m、受容層上層:3.4g/mとなるように塗布を行い乾燥後に、30℃で5日間熱処理を行い架橋剤とゼラチンの架橋反応を行った後にプリンターの設定に合った形状に加工して感熱転写受像シート(Z−2)を作製した。
受容層上層
塩化ビニル系ラテックス 25.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製)
塩化ビニル系ラテックス 2.5質量部
(ビニブラン276、商品名、日信化学工業(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 2.1質量部
下記エステル系ワックスEW−1 1.0質量部
下記界面活性剤F−1 0.2質量部
下記界面活性剤F−2 0.2質量部
受容層下層
塩化ビニル系ラテックス(Tg 46℃) 17.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製)
塩化ビニル系ラテックス(Tg 73℃) 8.5質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 5.0質量部
下記界面活性剤F−1 0.10質量部
断熱層
アクリルスチレン系中空ポリマー 65.0質量部
(平均粒径0.5μm)(MH5055、商品名、日本ゼオン(株)製)
ゼラチン(10%水溶液) 25.0質量部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンNa塩(架橋剤)
0.2質量部
下引き層
ポリビニルアルコール 9.0質量部
(ポバールPVA205、商品名、(株)クラレ製)
スチレンブタジエンゴムラテックス 48.0質量部
(SN−307、商品名、日本エイ アンド エル(株)製)
下記界面活性剤F−1 0.04質量部
耐熱滑性層用分散液に分散条件1を適用した試料を耐熱滑性層(101)、分散条件2を適用した試料を耐熱滑性層(102)および分散条件3を適用した試料を耐熱滑性層(103)とした。耐熱滑性層(101)〜(103)に対して耐熱滑性層のOH基を有するリン酸エステルをフォスレックスA−18(堺化学工業(株)製)単独からフォスレックスA−18(堺化学工業(株)製)とプライサーフA208N(第一工業製薬(株)製:モノ−およびジ−ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル混合物)の2対8混合物(質量比)に変えること以外は同様にして耐熱滑性層(104)から(106)を作製した。
(耐熱滑性層中のタルク粒子の投影面積)
上で詳述した本書に記載の方法により、耐熱滑性層(101)に対して走査型電子顕微鏡により20kVに加速した電子線を耐熱滑性層側から照射して耐熱滑性層のSEM像(電子線像)を得て、このSEM像より耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求め、該個々のタルク粒子についてその投影面積が10平方μm以上のものについて個々の投影面積を求めた。このようにして得た個々の投影面積より、上記数式(1)〜数式(3)に従って、該投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積、標準偏差および変動係数(該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求める)を求めた。耐熱滑性層(102)〜(106)についても同様にして値を求めた。各試料において、耐熱滑性層中の個々のタルク粒子について投影面積が10平方μm以上のものの個数は20万平方μm当たり約50〜200個であり、各試料において200個から400個の個々の投影面積を求めた。
耐熱滑性層の構成および上記の値を表2に示す。
表2より、原料タルクが同一であっても、分散条件によって耐熱滑性層中タルクの投影面積の平均値および変動係数が様々に変わることが分かる。タルクの分散を促進することが有効なのであれば、分散条件の最も強い条件3がタルク投影面積の平均値および変動係数のいずれもが最も小さくなるはずであるが、必ずしもそうではなく、単に分散条件を強くすることでは本発明の規定の範囲とすることができないことが分かる。
耐熱滑性層(201)の作製
耐熱滑性層(103)に対して、耐熱滑性層用分散液の組成および耐熱滑性層塗工液の組成を以下のように変更すること以外は同様にして耐熱滑性層(201)を作製した。
耐熱滑性層用分散液B
ポリアクリルポリオール系樹脂(50%溶液) 18.0質量部
(アクリディックA―801―P、商品名、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分に対する水酸基価が100±6、酸価が2〜8)
OH基を有するリン酸エステル(一般式(P)で表される化合物) 0.15質量部
(堺化学工業(株)製フォスレックスA−18)
OH基を有するリン酸エステル(一般式(P)で表される化合物) 0.80質量部
(第一工業製薬(株)製プライサーフA208N)
ステアリン酸亜鉛 0.07質量部
ステアリルリン酸エステル亜鉛塩 0.07質量部
原料タルク(ミクロエースL―1、商品名、日本タルク(株)製) 0.70質量部
(平均球相当径粒子サイズ4.5μm、X線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する不純物由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)が0.39、散弾式磨耗度22mg)
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 80.2質量部
耐熱滑性層塗工液B
耐熱滑性層用分散液B 48.5質量部
ポリイソシアネート(75%溶液) 2.0質量部
(バーノックD−750、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒 49.5質量部
耐熱滑性層(202)〜(208)の作製
耐熱滑性層(201)に対して耐熱滑性層用分散液の分散条件を変更する以外は同様にして耐熱滑性層(202)および(203)を作製した。耐熱滑性層(201)に対して、原料タルクを以下のものに変更して耐熱滑性層用分散液の分散条件を変える以外は同様にして耐熱滑性層(204)〜(208)を作製した。
耐熱滑性層(204)
原料タルクをミクロエースP―3、商品名、日本タルク(株)製(平均球相当径粒子サイズ4.9μm、X線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する不純物由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)が0.06、散弾式磨耗度11mg)に変更した。
耐熱滑性層(205)
原料タルクをハイフィラー#5000PJ、商品名、松村産業(株)製(平均球相当径粒子サイズ1.7μm、X線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する不純物由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)が0.07、散弾式磨耗度7mg)に変更した。
耐熱滑性層(206)
原料タルクを、ハイフィラー#5000PJ、商品名、松村産業(株)製と全合成品の酸化マグネシウム(組成MgO、モース硬度4、平均球相当径粒子サイズ1.2μm、各粒子の粒子最大巾/球相当径の平均が8.5)の質量比で85:15の混合物に変更した。混合物としてX線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する酸化マグネシウム由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)は0.23、散弾式磨耗度は23mgであった。
耐熱滑性層(207)
原料タルクを、ハイフィラー#5000PJ、商品名、松村産業(株)製と全合成品の水酸化マグネシウム(組成Mg(OH)、モース硬度2.5、平均球相当径粒子サイズ0.8μm、各粒子の粒子最大巾/球相当径の平均が12.5)の質量比で85:15の混合物に変更した。混合物としてのX線回折のタルク由来の最大ピーク強度(X)に対する水酸化マグネシウム由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)は0.21、散弾式磨耗度は8mgであった。
耐熱滑性層(208)
原料タルクを、ハイフィラー#5000PJ、商品名、松村産業(株)製と全合成品のシリカ(組成SiO2、モース硬度7、平均球相当径粒子サイズ1.1μm、各粒子の粒子最大巾/球相当径の平均が20.5)の質量比で85:15の混合物に変更した。混合物としてのX線回折タルク由来の最大ピーク強度(X)に対するシリカ由来の最大ピーク強度(Y)の比(Y/X)は0.28、散弾式磨耗度は35mgであった。
耐熱滑性層(209)
感熱転写シート(206)に対して耐熱滑性層用分散液Bのポリアクリル系ポリオール樹脂をポリビニルアセタール樹脂(エスレックBX―1、商品名、積水化学(株)製)に固形分として同量で置き換え、かつ耐熱滑性層塗工液Bのポリイソシアネートと樹脂との反応性の基の比率(−NCO/OH)が1.1となるようにポリイソシアネートの量を変更すること以外は同様にして耐熱滑性層(209)を作製した。
作製した耐熱滑性層(201)〜(209)を耐熱滑性層(101)〜(106)と同様にして耐熱滑性層中の個々のタルク粒子について投影面積を求めて、平均投影面積および変動係数を求めた。更に投影面積が100平方μm以上のタルク粒子の個数を求め、耐熱滑性層の面積20万平方μm当たりの存在個数を計算した。
結果を下記表3に示す。
上記表3より、原料タルクの不純物量や磨耗度、タルク以外に併用される無機粒子によらずに耐熱滑性層中タルクの投影面積の平均値および変動係数を本発明の範囲内にできることが分かる。
これら耐熱滑性層(101)〜(106)、(201)〜(209)の耐熱滑性層とマゼンタ色素を表3に示すように組み合わせて感熱転写シートNo.1〜30を作製した。
(マゼンタDmax濃度測定)
シアン、マゼンタ、イエロー染料層の塗工液を作製後6時間以内に使用した以外は、上記と同様にして作製した感熱転写シートNo.1〜30を、それぞれ感熱転写受像シートZ−1と組み合わせて、25℃、相対湿度50%の環境下で、富士フイルム(株)製 フジフイルムサーマルフォトプリンター ASK−2000(商品名)を用いて、マゼンタのベタ画像を出力し、そのプリントをXrite社製Xrite310(商品名)で反射濃度測定を行なった。この条件で測定して得られたMの値をマゼンタの最大発色濃度(Dmax濃度)とした。
その結果、いずれの感熱転写シートを用いてもジャミングの問題は発生しなかった。
(ジャミングの評価)
マゼンタ染料層塗工液を作製後、30℃条件下に72時間経時させた後に塗布した以外は上記と同様にして作製した感熱転写シートNo.1〜30を、それぞれ感熱転写受像シートZ−1と組み合わせて、10℃、相対湿度10%の環境下で、富士フイルム(株)製 フジフイルムサーマルフォトプリンター ASK−2000(商品名)を用いて、黒ベタ画像を連続10枚出力し、ジャミングの発生状況を下記評価ランクにて判断した。この評価を各サンプルにつき10回行い、5人の検査者の平均値を求めた。
(ジャミングの評価ランク)
5 ジャミングは全く発生しない。
4 非常に僅かにジャミングの跡があるが通常の画像鑑賞では気付かないレベル。
3 印画物にジャミング跡が確認できるが画像を鑑賞する上で障害とならない程度。
2 ジャミング跡が画像を鑑賞する上の障害となる。
1 ジャミングが発生するが、印画自体はかろうじてできるレベル。
0 ジャミング発生がひどく印画が停止。
上記表4より、本発明の感熱転写シートはDmax濃度が高く、かつジャミングの発生が抑制されるという優れた性能を示すことが明らかである。
また耐熱滑性層中の樹脂としてポリアクリルポリオールを使用した耐熱滑性層(206)の方が、ポリビニルアセタール樹脂を使用した耐熱滑性層(209)よりもジャミング発生が少なくより良いことがわかる。
実施例2
実施例1の感熱転写受像シートZ−1をZ−2に変更した以外は実施例1と同様の評価を行ったところ、実施例1同様の結果が得られた。また感熱転写シートZ−2を用いた方が印画物の光沢が向上しさらに優れることが確認できた。
実施例3
実施例1の耐熱滑性層(206)に対して、イソシアネートとポリオールの架橋反応を行う熱処理条件を以下の通り変更すること以外は同様にして耐熱滑性層(301)〜(304)を作製した。
耐熱滑性層(301) 熱処理条件58℃2日
耐熱滑性層(302) 熱処理条件50℃8日
耐熱滑性層(303) 熱処理条件45℃15日
耐熱滑性層(304) 熱処理条件35℃35日
熱処理後に未反応のイソシアネート基をIR測定により確認し、いずれの熱処理条件でも十分に反応していることを確認した。
作製した耐熱滑性層(301)から(304)を実施例1と同様にして耐熱滑性層中の個々のタルク粒子について投影面積を求め、平均投影面積および変動係数を求めた。更に投影面積が100平方μm以上のタルク粒子の個数を求め、耐熱滑性層の面積20万平方μm当たりの該投影面積が100平方μm以上のタルク粒子の存在個数を計算した。結果を表5に示す。
実施例1の感熱転写シートNo.27の耐熱滑性層(206)を前記耐熱滑性層(301)〜(304)に変更した以外はNo.27と同様にして感熱転写シートNo.301〜304を作製した。
(ジャミングの評価)
マゼンタ染料層塗工液の経時条件を40℃90時間に変更したこと、印画条件を5℃、相対湿度10%に変更したこと以外は実施例1と同様にしてジャミングの評価を行った。評価結果を下記表6に示す。
上記表6の結果から、熱処理条件を40℃〜53℃かつ1日〜20日の範囲にした試料(302)および(303)がジャミングの発生をより効果的に抑制できて、より好ましいことがわかる。
耐熱滑性層中のタルク粒子の電子顕微鏡写真(SEM像)である。

Claims (14)

  1. 基材フィルムの一方の面に、マゼンタ色素及び樹脂を含む染料層を有し、他方の面に無機粒子の1種としてのタルク粒子及び樹脂を含む耐熱滑性層を有する感熱転写シートであって、該マゼンタ色素が下記一般式(1)で表されるマゼンタ色素であり、かつ該感熱転写シートに対して走査型電子顕微鏡により20kVに加速した電子線を耐熱滑性層側から照射して得られる電子線像から耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求た場合に、該投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が80平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.80以下であることを特徴とする感熱転写シート。
    一般式(1)
    (式中、Aは置換もしくは無置換のアリーレン基または置換もしくは無置換の2価のピリジン環基を表し、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
  2. 前記投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が40平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.60以下であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写シート。
  3. 前記耐熱滑性層中のタルク粒子の投影面積が100平方μm以上の個数が該耐熱滑性層の面積20万平方μm当たり1個以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写シート。
  4. 前記耐熱滑性層に、モース硬度3から6であり、粒子の平均球相当径が0.3μmから5μmであり、かつ当該粒子の最大巾の該平均球相当径に対する比が1.5から50である、タルク以外の無機粒子を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
  5. 前記耐熱滑性層に、さらに下記一般式(P)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
    一般式(P)
    {(R1aO)(R2aO)P(=O)O}
    (式中、R1aは置換基を有してよい脂肪族基または置換基を有してよいアリール基を表し、R2aは水素原子、金属イオン、置換基を有してよい脂肪族基または置換基を有してよいアリール基を表す。Mは水素原子、金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。mはMの価数と同じ数であって1〜6の数を示す。)
  6. 前記タルク粒子の含有量と、前記一般式(P)で表される化合物の含有量の関係が、該一般式(P)で表される化合物の含有量を100質量部としたとき、該タルク粒子の含有量が30質量部以上であることを特徴とする請求項5に記載の感熱転写シート。
  7. 前記耐熱滑性層に、さらにアルキルカルボン酸の多価金属塩を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
  8. 前記基材フイルムが、基材フイルムの少なくとも一方の面上に易接着層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
  9. 前記耐熱滑性層の樹脂が、該樹脂のポリマー鎖長末端もしくはポリマー構造中に2個以上の水酸基を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
  10. 前記樹脂が、ポリアクリルポリオール樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の感熱転写シート。
  11. 前記耐熱滑性層の前記樹脂が架橋されていることを特徴とする請求項9または10に記載の感熱転写シート。
  12. 前記架橋における架橋反応が、40℃〜53℃の温度範囲でかつ1日〜20日の期間で行なわれてなるものであることを特徴とする請求項11に記載の感熱転写シート。
  13. 前記感熱転写シートが、支持体上に、中空ポリマーラテックスを含有する断熱層とポリマーラテックスを含有する受容層とを有する感熱転写受像シートと組み合わせて使用される感熱転写シートであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
  14. 支持体上に、中空ポリマーラテックスを含有する断熱層とポリマーラテックスを含有する受容層とを有する感熱転写受像シートと、基材フィルムの一方の面に、マゼンタ色素及び樹脂を含む染料層を有し、他方の面に無機粒子の1種としてのタルク粒子及び樹脂を含む耐熱滑性層を有する感熱転写シートとを、前記感熱転写受像シートの受容層と前記感熱転写シートの染料層とが接するように重ね合わせ、画像信号に応じた熱エネルギーを前記感熱転写シートの耐熱滑性層側から付与することにより画像を形成する画像形成方法であって、該マゼンタ色素が下記一般式(1)で表されるマゼンタ色素であり、かつ前記感熱転写シートが、該感熱転写シートに対して走査型電子顕微鏡により20kVに加速した電子線を耐熱滑性層側から照射して得られる電子線像から耐熱滑性層中の各々のタルク粒子に対応する投影面積を求めた場合に、該投影面積が10平方μm以上であるものの平均投影面積が80平方μm以下であり、かつ該投影面積が10平方μm以上であるものの投影面積の標準偏差を該平均投影面積で割って求めた変動係数が0.80以下であることを特徴とする画像形成方法。
    一般式(1)
    (式中、Aは置換もしくは無置換のアリーレン基または置換もしくは無置換の2価のピリジン環基を表し、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
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