JP2009241349A - 感熱転写シート - Google Patents

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祐継 室
Hisato Nagase
久人 長瀬
Masataka Yoshizawa
昌孝 芳沢
Yoshihiko Fujie
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Abstract

【課題】肌色再現性、経時安定性の両者を満足させる感熱転写シートを提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも染料とバインダーを含有する染料層を有する感熱転写シートであって、マゼンタ染料層に含有する染料とバインダーの関係において、少なくとも1種の染料の溶解性パラメータSPs値(J/cm1/2と少なくとも1種のバインダーの溶解性パラメータSPp値(J/cm1/2の絶対値差ΔSP値(ΔSP値=│SPs値−SPp値│)が2.3(J/cm1/2以下であり、かつ該染料の含有質量(D)とバインダー(固形分)の含有質量(B)の比(D/B)が1を越えている感熱転写シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は、肌色再現と経時安定性に優れた感熱転写シートに関する。
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、中でも染料拡散転写記録方式は銀塩写真の画質に最も近いカラーハードコピーが作製できるプロセスとして注目されている。しかも、銀塩写真に比べて、ドライであること、デジタルデータから直接可視像化できること、複製作りが簡単であること、画像形成のためのシステムを比較的安価に構築できることなどの利点を持っている。
この染料拡散転写記録方式では、染料(以下、色素とも称す)を含有する感熱転写シート(以下、単にインクシートとも称す)と感熱転写受像シート(以下、単に受像シートとも称す)とを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによって感熱転写シートを加熱することで感熱転写シート中の染料を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色あるいはこれにブラックを加えた4色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を転写記録することができる。
各色の染料層は、別々の支持体上に形成される場合と、同一の支持体上に面順次で繰り返し形成される場合とがある。また、染料層に加えて、印画後の画像上に熱転写されて画像を被い保護するための保護層(転写性保護層)が同一支持体上に形成されることもある。
染料層は、目的に応じて任意のやり方で設けられる。例えば、一般的なイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック以外にも、任意の色相の染料層を設けることが可能である。
このような感熱転写シートにおいて必要とされる性能として、高い転写濃度、色再現性に優れ、光や熱に堅牢であること、種々の化学薬品に堅牢であること、素材の合成が容易であること、経時安定性に優れていること、感熱転写シートと感熱転写受像シートを作りやすいこと等がある。色再現性のなかでも写真プリントにとって重要色である肌色再現性は、様々な人種肌例えばいわいる黒人肌のように明度の低い肌色から、アジア人のような中間明度の肌色、白人肌のような明度の高い肌色までを表現できることが求められ、写真プリントに使用される昇華型システムとしてもその求められる性能は高く、特に肌色再現性と経時安定性に優れた感熱転写シートが昨今の昇華型熱転写プリントに必要とされるようになった。
そのような要望に対して、従来種々の感熱転写シートが研究されている。例えば、高い転写濃度を得るために、バインダーに対し染料の含有比率を増加させることが提案(特許文献1参照)されているが、色素の比率を高めると、保存経時中に、階調の変化を起こしたり、最悪の場合、染料の析出による白地汚れなどの問題が発生する。また、白地汚れの改良のために、染料とバインダーの溶解度パラメータの調整も提案(特許文献2参照)されているが、(肌色再現性という点では不満足なレベルであった。)
従って、肌色再現性と経時安定性の両者を両立する感熱転写シートが強く求められていた。
特許第3124534号公報 特開2005−313357号公報
従って本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、肌色再現性、経時安定性の両者を満足させる感熱転写シートを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記手段で本発明の上記目的が達成できることを見い出した。
すなわち、
(1)支持体上に少なくとも染料とバインダーを含有する染料層を有する感熱転写シートであって、マゼンタ染料層に含有する染料とバインダーの関係において、少なくとも1種の染料の溶解性パラメータSPs値(J/cm1/2と少なくとも1種のバインダーの溶解性パラメータSPp値(J/cm1/2の絶対値差ΔSP値(ΔSP値=│SPs値−SPp値│)が2.3(J/cm1/2以下であり、かつ該染料の含有質量(D)とバインダー(固形分)の含有質量(B)の比(D/B)が1を越えていることを特徴とする感熱転写シート。
(2)前記マゼンタ染料層に含有するバインダーが架橋していることを特徴とする(1)に記載の感熱転写シート。
(3)前記マゼンタ染料層に離型剤を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の感熱転写シート。
(4)さらに、厚みが1.5〜2.0μmの転写性保護層を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
本発明により、肌色再現性、経時安定性の両方を満足させる感熱転写シートが提供できる。
最初に、本発明の感熱転写シートを説明する。
[感熱転写シート]
本発明の感熱転写シートは支持体上に少なくとも1層の染料層を有する。
<染料層>
本発明においては、少なくとも1層のマゼンタ染料層を有し、該層は、少なくとも1種の染料と少なくとも1種のバインダーを含有する。
本発明において、イエロー、上記マゼンタ、シアンの各色の染料層(色素層または熱転写層)及び必要に応じてブラックの染料層(色素層または熱転写層)が同一の支持体上に面順次で繰り返し塗り分けられているのが好ましい。一例として、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色相の染料層が同一の支持体の長軸方向に、感熱転写受像シートの記録面の面積に対応して面順次に塗り分けられている場合を挙げることができる。
本発明においてマゼンタ染料層とは感熱転写受像シートに転写した場合の反射スペクトルのピーク波長が510nm〜560nmの間にある染料を含有する染料層のことを言う。
イエロー、マゼンタ、シアン3層に加えて、ブラックの色相の染料層と転写性保護層のどちらか、あるいは双方が塗り分けられるのも好ましい態様である。
この様な態様を取る場合、各色の開始点をプリンターに伝達する目的で、感熱転写シート上に目印を付与することも好ましい態様である。このように面順次で繰り返し塗り分けることによって、染料の転写による画像の形成、さらには画像上への転写性保護層の積層を一つの感熱転写シートで行なうことが可能となる。
しかしながら、本発明は前記のような染料層の設け方に限定されるものではない。昇華型熱転写染料層と熱溶融転写層を併設することも可能であり、また、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック以外の色相の染料層を設ける等の変更をすることも可能である。また、形態としては長尺であっても良いし、枚葉の熱転写シートであっても良い。
染料層は単層構成であっても複層構成であってもよく、複層構成の場合、染料層を構成する各層の組成は同一であっても異なっていてもよい。
(染料インク)
染料層を形成するための染料インクは、通常昇華性染料とバインダーを含有する。また、ワックス類、シリコーン樹脂、含フッ素有機化合物等の離型剤を含有することがより好ましい。
各々の染料は、染料層中にそれぞれ10〜91質量%(固形分)含有されることが好ましく、20〜81質量%含有されることがより好ましい。
本発明においては、少なくともマゼンタ染料層は、染料の含有質量(D)とバインダー(固形分)の含有質量の比(D/B)が1を越えていることが必要である。なお、D/Bが2を越えると染料の析出などの問題を起こすため、D/Bは1を越えて2以下の範囲で処方することが好ましい。
染料層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行われる。また染料層の塗布量は、0.1〜2.1g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましく、更に好ましくは0.2〜1.3g/mである。染料層の膜厚は0.1〜2.1μmであることが好ましく、更に好ましくは0.2〜1.3μmである。
(染料)
本発明に用いられるイエロー、シアン染料は、熱により拡散し、感熱転写シートに組み込み可能かつ、加熱により感熱転写シートから感熱転写受像シートに転写するものであれば特に限定されず、感熱転写シート用の染料として従来から用いられてきている染料、あるいは公知の染料を用いることができる。
またマゼンタ染料については、後述のマゼンタ染料層のバインダーとの溶解性パラメータSP値の差の絶対値(ΔSP値)が、2.3(J/cm1/2以下を満たすものであれば特に限定されず、感熱転写シート用の染料として従来から用いられてきている染料、あるいは公知の染料を用いることができる。
好ましい染料としては、例えば、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等が挙げられる。
以下にマゼンタ染料を説明する。
本発明において、マゼンタ染料は、上記のうちのマゼンタ染料が好ましく使用されるが、中でも、以下に説明する一般式(M1)〜(M3)で表される染料が好ましい。
Figure 2009241349
一般式(M1)中、Bは置換もしくは無置換のフェニレン基、または2価の置換もしくは無置換のピリジン環基を表し、R、R、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
、R、RおよびRの各基はさらに置換基を有していてもよい。B、R、R、RおよびRの各基が置換していてもよい置換基は、後述の一般式(Y1)の環A、RおよびRの各基が置換してもよい置換基が挙げられる。
におけるフェニレン基は、置換基を有してもよい1,4−フェニレン基が好ましく、Bは2価のピリジン環基より置換基を有してもよいフェニレン基が好ましい。
一般式(M1)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、Bが無置換のフェニレン基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、Bが無置換のフェニレン基であり、Rが置換もしくは無置換のフェニル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の組み合わせは、Bが無置換のフェニレン基であり、Rが2−クロロフェニル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。Rのアルキル基が更に置換基を持つ場合、シアノ基が好ましい。
以下に、一般式(M1)で表される染料の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009241349
以下に一般式(M2)で表される染料について詳しく説明する。
Figure 2009241349
一般式(M2)中、環Dは置換もしくは無置換のベンゼン環を表し、R、R10およびR11は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rはさらに水素原子を表す。
、R10およびR11の各基はさらに置換基を有していてもよい。環D、R、R10およびR11の各基が置換していてもよい置換基は、一般式(Y1)の環A、RおよびRの各基が置換してもよい置換基が挙げられる。
一般式(M2)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、環Dが炭素数2〜8のアシルアミノ基が置換されたベンゼン環であり、Rは置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アシル基であり、R10は置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基であり、R11は置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、環Dが炭素数2〜6のアシルアミノ基が置換されたベンゼン環であり、Rは置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、アシル基であり、R10は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、アリル基であり、R11は置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、アリル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の組み合わせは、環Dが炭素数2〜4のアシルアミノ基が置換されたベンゼン環であり、Rは置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、アシル基であり、R10は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、アリル基であり、R11は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、アリル基である組み合わせである。
以下に、一般式(M2)で表される染料の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009241349
以下に一般式(M3)で表される染料について詳しく説明する。
Figure 2009241349
(一般式(M3)中、R38およびR39は各々独立に置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基を表し、R40およびR41は独立に置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
38、R39、R40およびR41の各基はさらに置換基を有していてもよい。R38、R39、R40およびR41の各基が置換していてもよい置換基は、後述する一般式(Y1)の環A、R、Rの各基が置換してもよい置換基と同じ置換基が挙げられる。
一般式(M3)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、R38が置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、R39が置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、R40が置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、R41が置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、R38が置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換のフェニル基であり、R39が置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換または無置換のフェニル基であり、R40が置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、R41が置換または無置換の炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の組み合わせは、R38が置換または無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基であり、R39が置換または無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換のフェニル基であり、R40が置換または無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、R41が置換または無置換の炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。
以下に、一般式(M3)で表される染料の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 2009241349
次に、本発明に好ましく使用されるイエロー染料として、一般式(Y1)もしくは(Y2)で表される染料が挙げられる。
Figure 2009241349
一般式(Y1)中、環Aは置換もしくは無置換のベンゼン環を表し、RおよびRは各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
およびRの各基はさらに置換基を有していてもよい。環A、RおよびRの各基が置換していてもよい置換基は、ハロゲン原子、不飽和アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル基、アリールスルフィニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基が挙げられる。
一般式(Y1)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、環Aが置換もしくは無置換のベンゼン環であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、アリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、環Aが置換もしくは無置換のベンゼン環であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、アリル基、置換もしくは無置換のフェニル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、アリル基、置換もしくは無置換のフェニル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の組み合わせは、環Aがメチル基が置換したベンゼン環であり、Rが無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが置換基を有する炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。Rのアルキル基について、更に置換基を持つ場合、好ましい置換基は炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、アルコキシ部分が炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、アリール部分が炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基である。
以下に、一般式(Y1)で表される染料の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009241349
次に一般式(Y2)で表される染料について説明する。
Figure 2009241349
一般式(Y2)中、Bは置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表し、Rは置換もしくは無置換のアルキル基を表し、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
およびRの各基はさらに置換基を有していてもよい。B、RおよびRの各基が置換していてもよい置換基は、一般式(Y1)の環A、RおよびRの各基が置換してもよい置換基が挙げられる。
におけるアリール基は置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
一般式(Y2)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、Bが置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換もしくは無置換のピラゾリル基、置換もしくは無置換のチアジアゾリル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である組み合わせである。
より好ましい置換基の置換基の組み合わせは、Bが置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換の1,3,4−チアジアゾリル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の置換基の組み合わせは、Bが4−ニトロフェニル基、炭素数1〜6のチオアルキル基が置換した1,3,4−チアジアゾリル基であり、Rが無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基である組み合わせである。Rのフェニル基の好ましい置換基としては、2−クロロ基、4−クロロ基、2,4,6−トリクロロ基、4−カルボキシメチル基、4−カルボキシエチル基である。
以下に本発明に用いられる一般式(Y2)で表される染料の具体例を示す。本発明はこれにより限定されるものではない。
Figure 2009241349
これらの染料は、特開平1−225592号公報に記載の方法もしくはこれに準じた方法で容易に合成できる。
本発明に好ましく使用される用いられる、シアン染料として、従来用いられてきた公知の染料を用いることが可能であるが、その中でも、下記一般式(C1)もしくは(C2)で表される染料を好適に用いることができる。ただし、本発明に用いられるシアン染料は、これらの染料に限定されるものではない。
一般式(C1)で表される染料について説明する。
Figure 2009241349
一般式(C1)中、R12およびR13は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R14は水素原子または置換基を表す。
12およびR13の各基はさらに置換基を有していてもよい。R12およびR13の各基が置換していてもよい置換基は、一般式(Y1)の環A、RおよびRの各基が置換してもよい置換基が挙げられる。また、R14における置換基としては一般式(Y1)の環A、RおよびRの各基が置換してもよい置換基が挙げられる。
14における置換基としては、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基(これらの各基はさらに置換基を有してもよい)であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜8のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基であり、より好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ部分が炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基である。
一般式(C1)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、R12が置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、R13が置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、R12が置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基であり、R13が置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基である組み合わせである。
最も好ましい置換基の組み合わせは、R12が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、R13が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基である組み合わせである。
以下に、一般式(C−1)で表される染料の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 2009241349
前記一般式(C1)で表される色素のうち、市販されていないものに関しては、米国特許第4,757,046号、同第3,770,370号、独国特許第2316755号、特開2004−51873号、特開平7−137455号、特開昭61−31292号の各公報もしくは明細書、ならびに、J.Chem.Soc.Perkin transfer I,2047(1977)、Champan著,「Merocyanine Dye−Doner Element Used in thermal Dye Transfer」に記載の方法に準じて合成することができる。
次に一般式(C2)で表される染料について詳細に説明する。
Figure 2009241349
一般式(C2)中、環Eは置換もしくは無置換のベンゼン環を表し、R15は水素原子またはハロゲン原子を表し、R16は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、R17は置換もしくは無置換のアシルアミノ基、または置換もしくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基を表し、R18およびR19は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
環E、R16、R17、R18およびR19の各基はさらに置換基を有していてもよい。環E、R16、R17、R18およびR19の各基が置換していてもよい置換基は、一般式(Y1)の環A、RおよびRの各基が置換してもよい置換基と同じである。
一般式(C2)で表される染料の好ましい置換基の組み合わせは、環Eが炭素数1〜4のアルキル基が置換したベンゼン環、塩素原子が置換したベンゼン環、無置換のベンゼン環であり、R15が水素原子、塩素原子、臭素原子であり、R16が置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、R17が置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニルアミノ基であり、R18が置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、R19が置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基である組み合わせである。
より好ましい置換基の組み合わせは、環Eが炭素数1〜2のアルキル基が置換したベンゼン環、無置換のベンゼン環であり、R15が水素原子、塩素原子であり、R16が置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、R17が置換もしくは無置換の炭素数2〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜8のアルコキシカルボニルアミノ基であり、R18が置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、R19が置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせである。
最も好ましい組み合わせは好ましい置換基の組み合わせは、環Eがメチル基が置換したベンゼン環、無置換のベンゼン環であり、R15が水素原子、塩素原子であり、R16が置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であり、R17が置換もしくは無置換の炭素数2〜6のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜6のアルコキシカルボニルアミノ基であり、R18が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、R19が置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。
以下に、一般式(C2)で表される染料の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009241349
(バインダー)
マゼンタ、イエロー、シアンの染料層のバインダーとしては、各種のものが公知であり、マゼンタ染料層のバインダーとしては使用する染料との溶解性パラメータSP値の差の絶対値が2.3(J/cm1/2以下を満たす限りにおいて、本発明ではこれらを使用することができる。
例としては、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、硝酸セルロース等の変性セルロース系樹脂ニトロセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びエチルセルロースなどのセルロース系樹脂や、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、各種エストラマー等が挙げられ、上記からなる群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂により染料層は構成される。
これらを単独で用いる他、これらを混合、または共重合して用いることも可能である。
また本発明の感熱転写シートにおいて、バインダーを各種架橋剤によって架橋することも本発明の好ましい態様である。
架橋剤とは、高分子化合物の主鎖や側鎖についた官能基と反応し、高分子同士を結合する性質を持つ化合物である。本発明の感熱転写シートのバインダーとして好ましく用いられるポリビニルアセタール系樹脂は主鎖に活性水素を有する水酸基を有しており、分子中に複数のイソシアネート基(−N=C=O)を有するイソシアネート類が架橋剤として好ましく用いられる。以下にイソシアネート類の具体例を挙げる。
(1)ジイソシアネート化合物
芳香族系ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネートなどが、また脂肪族系ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、水添キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
(2)トリイソシアネート化合物
トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート、イソシアヌレート結合トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレート結合ヘキサメチレンジイソシアネート、ビューレット結合ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールイソホロンジイソシアネート、イソシアヌレート結合イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどを挙げることができる。
また、これらイソシアネート化合物の混合物やイソシアネート化合物を主鎖や側鎖に有するポリマーの使用も好ましい。
これらイソシアネート類はバーノック(大日本インキ化学工業株式会社)、タケネート、MT−オレスター(何れも三井化学ポリウレタン株式会社)、コロネート(日本ポリウレタン工業社)などの商品名で商業的に入手可能である。
イソシアネート類の使用量はイソシアネート基(NCO)とバインダーの活性水素(H)のモル比(NCO/H)で0.2から2.0の範囲が好ましく、0.3から1.5の範囲がより好ましい。
バインダーとイソシアネート類の架橋反応を促進する目的で触媒を添加しても良い。このような触媒については「最新ポリウレタン材料と応用技術」(株式会社シーエムシー出版,2005年)に記載がある。
また本発明におけるバインダーとしては、セルロース系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂が好ましく、より好ましくはポリビニルアセタール系樹脂である。中でもポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が本発明において好ましく用いられる。
(溶解性パラメータ)
本発明における溶解性パラメータ(SP値)について説明する。
分子を無限に遠ざけ、相互作用のない状態にするのに必要なエネルギーは「液体1molを気体にするときのエネルギー」に相当する。これを単位体積あたりの密度として、
凝集エネルギー密度=ΔEv/V ΔEv:蒸発エネルギー(J/mol)
V:モル体積(cm/mol)
と計算される。
さらに
δ=(ΔEv/V)1/2
とするとき、δが溶解性パラメータ(SP値)である。
実際に溶解性パラメータを計算する場合は、ポリマーや色素の構造式からパラメーターテーブルを使用して、SP値を計算により求めることが多く、従来より、fedor
、Small、Hoyなどの研究者により様々な方法が提案されている。
本実験ではこれらのうちHoyの推算法(例えば、D.W.Van Krevelen著、Properties of Polymers 第3版,Chapter7,Elsevier Science Publishing Company Inc,.(1990年))により、バインダーと染料のSP値を計算した。
また、染料層のΔSP値は以下のように定義し、バインダー、色素のSP値を上記方法で計算することで、容易に計算できる。
ΔSP値=│SPs値−SPp値│
ここで、SPs値は染料の、SPp値はバインダーのSP値である。
本発明においてマゼンタ染料層のΔSP値は経時安定性のためにはより少ない方が好ましいが、課題である肌色再現性との両立のためには2.3(J/cm1/2以下であることが必要である。
また染料のSP値は17〜24程度の範囲であることが好ましく、バインダーのSP値は19〜21程度の範囲であることが好ましい。この範囲をはずれると感熱転写シートの作成において染料の析出、バインダーの溶媒への不溶解などが起こることがあり好ましくない。
<染料バリア層>
本発明の感熱転写シートは、染料層と支持体の間に染料バリア層を設けることができる。
(易接着処理)
本発明において、支持体面に対して、塗布液の濡れ性及び接着性の向上を目的として、易接着処理を行なってもよい。処理方法として、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術を例示することができる。
また、支持体上に塗布によって易接着層を形成することもできる。易接着層に用いられる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等を例示することができる。
支持体に用いられるフィルムを溶融押出し形成する時に、未延伸フィルムに塗工処理を施し、その後に延伸処理して行なうことも可能である。
また、上記の処理は、二種類以上を併用することもできる。
<転写性保護層>
本発明においては、転写性保護層を有してもよく、好ましい態様である。
(転写性保護層積層体)
本発明では、感熱転写シートに転写性保護層積層体を面順次で設けるのが好ましい。転写性保護層積層体は、熱転写された画像の上に透明樹脂からなる転写性保護層を熱転写で形成し、画像を覆い保護するためのものであり、耐擦過性、耐光性、耐候性等の耐久性向上を目的とする。転写された染料が受像シート表面に曝されたままでは、耐光性、耐擦過性、耐薬品性等の画像耐久性が不十分な場合に有効である。
転写性保護層積層体は、支持体上に、支持体側から離型層、転写性保護層、接着剤層の順に形成することができる。転写性保護層を複数の層で形成することも可能である。転写性保護層が他の層の機能を兼ね備えている場合には、離型層、接着剤層を省くことも可能である。支持体としては、易接着層の設けられたものを用いることも可能である。
(転写性保護層)
本発明の転写性保護層を形成する樹脂としては、耐擦過性、耐薬品性、透明性、硬度に優れた樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これら各樹脂のシリコーン変性樹脂、紫外線遮断性樹脂、これら各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
また、各種架橋剤によって架橋することも可能である。
(転写性保護層樹脂)
アクリル樹脂としては、従来公知のアクリレートモノマー、メタクリレートモノマーの中から選ばれた少なくとも1つ以上のモノマーからなる重合体で、アクリル系モノマー以外にスチレン、アクリロニトリル等を共重合させても良い。好ましいモノマーとしてメチルメタクリレートを仕込み質量比で50質量%以上含有していることが挙げられる。
本発明のアクリル樹脂は、分子量が20,000以上100,000以下であることが好ましい。20,000未満であると、合成時にオリゴマーが出て、安定した性能が得られず、100,000を越えると、保護層転写時に箔切れが悪くなる。
本発明のポリエステル樹脂としては、従来公知の飽和ポリエステル樹脂を使用できる。上記ポリエステル樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度は50〜120℃が好ましく、又、分子量は2,000〜40,000の範囲が好ましく、更に4,000〜20,000の範囲が保護層転写時に箔切れ性が良くなり、より好ましい。
(紫外線吸収剤)
上記の転写性保護層や保護層転写シートでは、転写性保護層及び/又は接着層に、紫外線吸収剤を含有することができ、その紫外線吸収剤としては、従来公知の無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤が使用できる。有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤や、これらの非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入し、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に共重合若しくは、グラフトしたものを使用することができる。また、樹脂のモノマーまたはオリゴマーに紫外線吸収剤を溶解させた後、このモノマーまたはオリゴマーを重合させる方法が開示されており(特開2006−21333号公報)、こうして得られた紫外線遮断性樹脂を用いることもできる。この場合には紫外線吸収剤は非反応性のもので良い。
これら紫外線吸収剤に中でも、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系が好ましい。これら紫外線吸収剤は画像形成に使用する染料の特性に応じて、有効な紫外線吸収波長域をカバーするように組み合わせて使用することが好ましく、また、非反応性紫外線吸収剤の場合には紫外線吸収剤が析出しないように構造が異なるものを複数混合して用いることが好ましい。
紫外線吸収剤の市販品としては、チヌビン−P(チバガイギー製)、JF−77(城北化学製)、シーソープ701(白石カルシウム製)、スミソープ200(住友化学製)、バイオソープ520(共同薬品製)、アデカスタブLA−32(旭電化製)等が挙げられる。
(転写性保護層の形成)
転写性保護層の形成法は、用いられる樹脂の種類に依存するが、前記染料層の形成方法と同様の、方法で形成され、0.5〜10μm程度の厚さが好ましく、より好ましくは1.0〜5μm程度の厚さが好ましく、さらに好ましくは1.5〜2.0μmの厚さが好ましい。
<離型層>
転写性保護層では、転写性保護層が熱転写時に支持体から剥離しにくい場合には、支持体と転写性保護層との間に離型層を形成することができる。転写性保護層と離型層の間に剥離層を形成しても良い。離型層は、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、アクリルビニルエーテル系樹脂、無水マレイン酸樹脂、及びこれらの樹脂群の共重合体を少なくとも1種以上含有する塗布液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコート等の方法で塗布、乾燥することにより形成することができる。上記の樹脂の中でも、アクリル樹脂として、アクリル酸やメタクリル酸等の単体、または他のモノマー等と共重合させた樹脂、あるいはセルロース誘導体樹脂が好ましく、支持体との密着性、転写性保護層との離型性において優れている。
各種架橋剤によって架橋することも可能であり、また、電離放射線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂も用いることができる。
離型層は、熱転写時に被転写体に移行するもの、あるいは支持体側に残るもの、あるいは凝集破壊するもの等を、適宜選択することができるが、離型層が非転写性であり、熱転写により離型層が支持体側に残存し、離型層と熱転写性保護層との界面が熱転写された後の保護層表面になるようにすることが、表面光沢性、保護層の転写安定性等の点で優れており、好ましい態様である。離型層の形成方法は、従来公知の塗工方法で形成でき、その厚みは乾燥状態で0.5〜5μm程度が好ましい。
<接着層>
転写性保護層積層体の最上層として、転写性保護層の最表面に接着層を設けることができる。これによって転写性保護層の被転写体への接着性を良好にすることができる。
<背面層>
本発明の感熱転写シートは、染料層を塗設した支持体の面の他方の面(裏面)、すなわちサーマルヘッド等に接する側に背面層を設けることが好ましい。また、転写性保護層の場合にも、転写性保護層を塗設した支持体の面の他方の面(裏面)、すなわちサーマルヘッド等に接する側に背面層を設けることが好ましい。
感熱転写シートの支持体の裏面とサーマルヘッド等の加熱デバイスとが直接接触した状態で加熱されると、熱融着が起こりやすい。また、両者の間の摩擦が大きく、感熱転写シートを印画時に滑らかに搬送することが難しい。
背面層は、感熱転写シートがサーマルヘッドからの熱エネルギーに耐え得るように設けられるものであって、熱融着を防止し、滑らかな走行を可能にする。近年、プリンターの高速化に伴いサーマルヘッドの熱エネルギーが増加しているため、必要性は大きくなっている。
背面層は、バインダーに滑剤、離型剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを塗布することによって形成される。また、背面層と支持体との間に中間層を設けてもよく、無機微粒子と水溶性樹脂またはエマルジョン化可能な親水性樹脂からなる層が開示されている。
バインダーとしては、耐熱性の高い公知の樹脂を用いることができる。例として、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセトアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物を挙げることができる。
背面層の耐熱性を高めるため、紫外線又は電子ビームを照射して樹脂を架橋する技術が知られている。また、架橋剤を用い、加熱により架橋させることも可能である。この際、触媒が添加されることもある。架橋剤としては、ポリイソシアネート等が知られており、このためには、水酸基系の官能基を有する樹脂が適している。特開昭62−259889号公報には、ポリビニルブチラールとイソシアネート化合物との反応生成物にリン酸エステルのアルカリ金属塩又はアルカリ土類塩及び炭酸カルシウム等の充填剤を添加することにより背面層を形成することが開示されている。また、特開平6−99671には、耐熱滑性層を形成する高分子化合物を、アミノ基を有するシリコーン化合物と1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を反応させることにより得ることが開示されている。
機能を十分に発揮させるために、背面層には、滑剤、可塑剤、安定剤、充填剤、ヘッド付着物除去のためのフィラー等の添加剤が配合されていても良い
滑剤としては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化黒鉛等のフッ化物、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、硫化鉄等の硫化物、酸化鉛、アルミナ、酸化モリブデン等の酸化物、グラファイト、雲母、窒化ホウ素、粘土類(滑石、酸性白度等)等の無機化合物からなる固体滑剤、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂、シリコーンオイル、ステアリン酸金属塩等の金属セッケン類、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。
アルキルリン酸モノエステル、アルキルリン酸ジエステルの亜鉛塩などの燐酸エステル系界面活性剤も用いられるが、酸根を有しており、サーマルヘッドからの熱量が大になると燐酸エステルが分解し、更に背面層のpHが低下してサーマルヘッドの腐食摩耗が激しくなるという問題点がある。これに対しては、中和した燐酸エステル系界面活性剤を用いる方法、水酸化マグネシウムなどの中和剤を用いる方法等が知られている。
その他の添加剤としては高級脂肪酸アルコール、オルガノポリシロキサン、有機カルボン酸およびその誘導体、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を挙げることができる。
背面層は、上に例示したようなバインダーに添加剤を加えた材料を溶剤中に溶解または分散させた塗工液を、グラビアコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、ワイヤーバーなどの従来から公知の方法で塗布することによって形成される。0.1〜10μm程度の膜厚が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5μm程度の膜厚である。
<支持体>
本発明の感熱転写シートおよび転写性保護層の支持体は特に限定されず、必要とされる耐熱性と強度を有するものであれば、従来公知のいずれのものでも使用することができる。
例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルフィルムが挙げられる。
支持体の厚さは、その強度及び耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜変更することができるが、好ましくは1〜100μmである。より好ましくは2〜50μm程度のものであり、さらに好ましくは3〜10μm程度のものが用いられる。
次に感熱転写受像シート(以下、単に受像シートともいう。)に関して詳細に説明する。
[感熱転写受像シート]
本発明に用いられる受像シートは、支持体上に少なくとも1層の染料受容層(以下、単に受容層ともいう。)を有するものであって、支持体と受容層との間に、例えば断熱層(多孔質層)、光沢制御層、白地調整層、帯電調節層、接着層、プライマー層などの中間層が形成されていてもよい。支持体と受容層との間に少なくとも1層の断熱層を有することが好ましい態様である。
中間層は、必要に応じて複数設けることができる。
支持体の裏面側にはカール調整層、筆記層、帯電調整層が形成されていてもよい。支持体の裏面側の各層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行うことができる。
<受容層>
受像シートは、染料を受容し得る熱可塑性の受容ポリマーを含有する少なくとも1層の受容層を有する。受容層には、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、その他の添加物を含有させることができる。
(熱可塑性樹脂)
本発明において受容層には、染料の受容ポリマーとして、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルおよびその共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトンまたはこれらの混合物を含有することが好ましく、ポリエステル、ポリ塩化ビニルおよびその共重合体またはこれらの混合物がさらに好ましい。以上のポリマーは、単独またはこれらの混合物として用いることができる。
これらのポリマーは、有機溶剤(メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレンなど)を適宜用いて溶解させることで、支持体上に塗布することができる。あるいは、ポリマーラテックスとして水系の塗工液に加えて支持体上に塗布することもできる。
ポリエステルおよびポリ塩化ビニルについて、以下にさらに詳しく説明する。
(ポリエステル系ポリマー)
ポリエステルはジカルボン酸成分(その誘導体含む)とジオール成分(その誘導体を含む)との重縮合により得られるものである。ポリエステルポリマーは、芳香環および/または脂環を含有しても良い。脂環式ポリエステルについては、特開平5−238167号公報に記載の技術が染料取り込み能と像の安定性の点で有効である。
本発明においては、上記のジカルボン酸成分およびジオール成分を少なくとも使用して、分子量(質量平均分子量(Mw))が通常約11000以上、好ましくは約15000以上、より好ましくは約17000以上となるように重縮合したポリエステル系ポリマーを使用するのが好ましい。分子量があまり低いものを使用すると、形成される受容層の弾性率が低くなり、また耐熱性も足りなくなり、感熱転写シートと受像シートとの離型性を確保することが難しくなる場合がある。分子量は、弾性率を上げる観点からは大きいほど望ましく、受容層形成時に塗工液溶媒に溶かすことができなくなる等の弊害が生じたり、あるいは、受容層の塗布乾燥後に支持体との接着性に悪影響が出たりする等の弊害が生じたりしない限り、特に限定されないが、高くても約30000程度以下であり、好ましくは約25000以下である。なお、エステル系ポリマーの合成法としては、従来公知の方法を使用することができる。
飽和ポリエステルとしては、例えばバイロナールMD−1200、バイロナールMD−1220、バイロナールMD−1245、バイロナールMD−1250、バイロナールMD−1500、バイロナールMD−1930、バイロナールMD−1985(いずれも商品名、東洋紡(株)製)等が用いられる。
(塩化ビニル系ポリマー)
受容層に用いられる塩化ビニル系ポリマー、特に塩化ビニルを用いた共重合体について、さらに詳しく説明する。
塩化ビニルと共重合するモノマーには特に限定はなく、塩化ビニルと共重合できればよく、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが特に好ましく、ポリマーとしては塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体が優れている。これらの共重合体は、必ずしも塩化ビニル成分と上記の好ましいモノマー(酢酸ビニルあるいはアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル)成分のみとの共重合体である場合に限らず、本発明の目的を妨げない範囲のビニルアルコール成分、マレイン酸成分等を含むものであってもよい。このような、塩化ビニルと上記の好ましいモノマーを主単量体とする共重合体を構成する他の単量体成分としては、ビニルアルコール、プロピオン酸ビニルなどのビニルアルコール誘導体、アクリル酸およびメタクリル酸およびそれらのメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシルエステルなどのアクリル酸およびメタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチルなどのマレイン酸誘導体、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。共重合体中にしめる塩化ビニルと上記の好ましいモノマーとの成分比は任意の比率でよいが、塩化ビニル成分が共重合体中で50質量%以上であるのが好ましい。また、先に挙げた塩化ビニルと上記の好ましいモノマー以外の成分は10質量%以下であるのが好ましい。
このような塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、ビニブラン240、ビニブラン601、ビニブラン602、ビニブラン380、ビニブラン386、ビニブラン410、ビニブラン550(いずれも商品名、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体としては、ビニブラン270、ビニブラン276、ビニブラン277、ビニブラン609、ビニブラン680、ビニブラン690、ビニブラン900(いずれも商品名、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
(ポリマーラテックス)
本発明においては、ポリマーラテックスを好ましく用いることができる。以下、ポリマーラテックスについて説明する。
本発明で用いる感熱転写受像シートにおいて、受容層に用い得るポリマーラテックスは、疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものが好ましい。分散粒子の平均粒子サイズは、好ましくは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度である。
ポリマーラテックスは、通常の均一構造のポリマーラテックスであっても、いわゆるコア/シェル型のラテックスであってもよい。このとき、コアとシェルでガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。本発明で用いるポリマーラテックスのガラス転移温度は、−30℃〜130℃が好ましく、0℃〜120℃がより好ましく、10℃〜100℃がさらに好ましい。
本発明に用いられる上記のポリマーラテックスは、上記のポリマーラテックスとともにいかなるポリマーを併用してもよい。併用することのできるポリマーとしては、透明または半透明で、無色であることが好ましく、天然樹脂ポリマーおよびコポリマー、合成樹脂ポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリビニルピロリドン類が挙げられる。
(離型剤)
本発明では、画像印画時の感熱転写シートと受像シートとの離型性をより確実に確保するために、離型剤を使用してもよい。
離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス等の固形ワックス類、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他当該技術分野で公知の離型剤を使用することができ、フッ素系界面活性剤等のフッ素系化合物、シリコーン系界面活性剤、シリコーンオイルおよび/またはその硬化物等のシリコーン系化合物が好ましく用いられる。
(水系塗工液)
本発明では、受容層を水系の塗工液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗工液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗工液の水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、オキシエチルフェニルエーテルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。
受容層の塗布量は、0.5〜10g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましい。
本発明においては、離型層を有してもよく、好ましい態様である。
<離型層>
硬化変性シリコーンオイルは、受容層にではなく、受容層の上に形成される離型層に添加してもよい。この場合にも、上述した受容層を使用してよく、また、受容層にシリコーンを添加してもよい。この離型層は、硬化型変性シリコーンを含有してなるが、使用するシリコーンの種類や使用方法は、受容層に使用する場合と同様である。また、触媒や遅延剤を使用する場合も、受容層中に添加するのと同様である。離型層は、シリコーンのみにより形成してもよいし、バインダーとして、相溶性のよい樹脂と混合して使用してもよい。この離型層の厚みは、0.001〜1g/m程度である。
本発明においては、断熱層を有することが好ましい。
以下に、詳細を説明する。
(中空ポリマー)
本発明に用いられる受像シートにおいて、断熱層は中空ポリマーと水溶性ポリマーを含有するのが好ましい。
本発明における中空ポリマーとは粒子内部に空隙を有するポリマー粒子である。例えば、[1]ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂等により形成された隔壁内部に水などの分散媒が入っており、塗布乾燥後、粒子内の分散媒が粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空ポリマー粒子、[2]ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルのいずれか又はそれらの混合物もしくは重合物よりなる樹脂で覆っており、塗工後、加熱により粒子内部の低沸点液体が膨張することにより内部が中空となる発泡型マイクロバルーン、[3]上記の[2]をあらかじめ加熱発泡させて中空ポリマーとしたマイクロバルーンなどが挙げられる。
これらの中空ポリマーの粒子サイズは0.1〜20μmが好ましく、0.1〜5.0μmがより好ましく、0.2〜3.0μmが更に好ましく、0.3〜1.0μmが特に好ましい。
中空ポリマーの空隙率は、20〜70%程度のものが好ましく、20〜50%のものがより好ましい。中空ポリマーの空隙率とは、粒子体積に対する空隙部分の体積の割合を示したものである。
中空ポリマーのガラス転移温度(Tg)は70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。中空ポリマーは必要に応じて2種以上混合して使用することができる。
このような中空ポリマーは市販されており、前記[1]の具体例としてはローアンドハース社製ローペイク1055、大日本インキ社製ボンコートPP−1000、JSR社製SX866(B)、日本ゼオン社製ニッポールMH5055(いずれも商品名)などが挙げられる。前記[2]の具体例としては松本油脂製薬社製のF−30、F−50(いずれも商品名)などが挙げられる。前記[3]の具体例としては松本油脂製薬社製のF−30E、日本フェライト社製エクスパンセル461DE、551DE、551DE20(いずれも商品名)が挙げられる。これらの中で、前記[1]の系列の中空ポリマーがより好ましく使用できる。
(水溶性ポリマー)
断熱層のバインダーとしては、水溶性ポリマーを使用することができる。断熱層に用いることのできる水溶性ポリマーは、ポリマーラテックスと併用されるポリマーが好ましく用いられる。
本発明において、断熱層のバインダーとして用いられる水溶性ポリマーはポリビニルアルコール類、ゼラチンが好ましく、ゼラチンが最も好ましい。
また、断熱層に含まれる水溶性ポリマーは、クッション性や膜強度を調整する為に硬膜剤により架橋されていてもよい。硬膜により架橋する場合は、硬膜剤として、特開平1−214845号公報17頁のH−1,4,6,8,14,米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表わされる化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報8頁右下の式(6)で表わされる化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物などが好ましく用いられる。
<支持体>
本発明の感熱転写受像シートに用いる支持体は、従来公知の支持体を用いることができる。その中でも耐水性支持体が好ましく用いられる。耐水性支持体を用いることで支持体中に水分が吸収されるのを防止して、受容層の経時による性能変化を防止することができる。耐水性支持体としては例えばコート紙やラミネート紙、合成紙を用いることができる。なかでもラミネート紙が好ましい。
<カール調整層>
本発明に用いる感熱転写受像シートには、必要に応じてカール調整層を形成することが好ましい。カール調整層には、ポリエチレンラミネートやポリプロピレンラミネート等が用いられる。具体的には、例えば特開昭61−110135号公報、特開平6−202295号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
<筆記層・帯電調整層>
本発明に用いる感熱転写受像シートには、必要に応じて筆記層・帯電調整層を設けることができる。筆記層、帯電調整層には、無機酸化物コロイドやイオン性ポリマー等を用いることができる。帯電防止剤として、例えば第四級アンモニウム塩、ポリアミン誘導体等のカチオン系帯電防止剤、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤、脂肪酸エステル等のノニオン系帯電防止剤など任意のものを用いることができる。具体的には、例えば特許第3585585号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
実施例1
(感熱転写シートの作製)
支持体として片面に易接着処理がされている厚さ6.0μmのポリエステルフィルム(ダイアホイルK200E−6F、商品名、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製)の易接着処理がされていない面に、乾燥後の固形分塗布量が1g/mとなるように背面層塗工液を塗布した。乾燥後、60℃で熱処理を行い硬化させた。
このようにして作製したポリエステルフィルムの易接着層塗布側に前記塗工液により、イエロー、マゼンタ、シアンの各染料層および転写性保護層積層体を面順次となるように塗布した感熱転写シートを作製した。各染料層の固形分塗布量は、0.8g/mとした。
なお、転写性保護層積層体の形成は、離型層用塗工液を塗布し、乾燥した後に、その上に転写性保護層用塗工液を塗布し、乾燥した後に、さらにその上に接着層塗工液を塗布した。
背面層塗工液
アクリル系ポリオール樹脂 26.0質量部
(アクリディックA−801、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
ステアリン酸亜鉛 0.43質量部
(SZ−2000、商品名、堺化学工業(株)製)
リン酸エステル 1.27質量部
(プライサーフA217E、商品名、第一工業製薬(株)製)
イソシアネート(50%溶液) 8.0質量部
(バーノックD−800、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 64質量部
イエロー染料層塗工液(Y−1)(D/B=1.6)
イエロー染料Y−a 7.8質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.9質量部
(デンカブチラール#6000−CS、商品名、電気化学工業(株)製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 84質量部
上記ポリビニルブチラール樹脂を7.8質量部とした塗工液Y−2も同時に作成した。
マゼンタ染料層塗工液(M−1)(D/B=1.6)
マゼンタ染料M−a 7.8質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.9質量部
(デンカブチラール#6000−CS、商品名、電気化学工業(株)製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 84質量部
上記ポリビニルブチラール樹脂を7.8質量部とした以外はM−1と同じ塗工液を作成しM−2とした。
またポリビニルブチラール樹脂をポリビニルアセタール樹脂(エスレックKS−1、商品名、積水化学工業(株)製)に変更した以外はM−1と同じ処方で塗工液M−3を作成し、M−2のポリビニルブチラール樹脂をポリビニルアセタール樹脂樹脂に変更した以外はM−2と同じ処方のM−4を作成した。同様に、マゼンタ染料をM−b、M−cにそれぞれ等質量変更した以外は、マゼンタ染料M−aと全く同様の組み合わせの塗工液を作成した(M−11〜M−14、M−21〜M−24)。
シアン染料層塗工液(C−1)(D/B=1.6)
シアン染料C−a 7.8質量部
ポリビニルブチラール樹脂 4.9質量部
(デンカブチラール#6000−CS、商品名、電気化学工業(株)製)
マット剤 0.15質量部
(フローセンUF、商品名、住友精工(株)製)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 84質量部
上記ポリビニルブチラール樹脂を7.8質量部とした塗工液C−2も同時に作成した。
以下に、上記で使用した染料を示す。これらの染料のSP値はY−aが20.68、M−aが17.57、M−bが18.42、M−cが18.44、C−aが21.88である。
Figure 2009241349
またバインダーのSP値は、ポリビニルブチラール樹脂であるデンカブチラール#6000−CS(商品名、電気化学工業(株)製)が19.79、ポリビニルアセタール樹脂であるエスレックKS−1(商品名、積水化学工業(株)製)が21.08である。
以上のように作成したY−1、Y−2、M−1〜4、M−11〜M−14、M−21〜M−24、C−1、C−2それぞれの染料塗工液を様々に組み合わせて、下記表1のような比較例1〜36、本発明1〜12のサンプルを作成した。
ここで、マゼンタ染料M−aは特開2005−313357号公報に記載の染料であり、シアン染料C−aは特許第3124534号公報に記載の染料である。
Figure 2009241349
Figure 2009241349
Figure 2009241349
(転写性保護層積層体の作製)
染料層の作製に使用したものと同じポリエステルフィルムに、以下に示す組成の離型層、転写性保護層および接着層用塗工液を塗布し、転写性保護層積層体を形成した。乾膜時の塗布量は離型層0.3g/m、転写性保護層0.7g/m、接着層2.2g/mとした。
離型層塗工液
変性セルロース樹脂 5.0質量部
(L−30、商品名、ダイセル化学)
メチルエチルケトン 95.0質量部
転写性保護層塗工液
アクリル樹脂溶液(固形分40%) 90質量部
(UNO−1、商品名、岐阜セラミック(有)製)
メタノール/イソプロパノール(質量比1/1) 10質量部
接着層塗工液
アクリル樹脂 25質量部
(ダイアナールBR−77、商品名、三菱レイヨン(株)製)
下記紫外線吸収剤UV−1 1質量部
下記紫外線吸収剤UV−2 2質量部
下記紫外線吸収剤UV−3 1質量部
下記紫外線吸収剤UV−4 1質量部
PMMA微粒子(ポリメチルメタクリレート微粒子) 0.4質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比2/1) 70質量部
Figure 2009241349
(感熱転写受像シートの作製)
支持体として合成紙(ユポFPG200、厚さ200μm、商品名、ユポコーポレーション社製)を用い、この一方の面に下記組成の白色中間層、受容層の順にバーコーターにより塗布を行った。それぞれの乾燥時の塗布量は受容層4.0g/mとなるように塗布を行い、乾燥は各層110℃、30秒間行った。
受容層
塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂 100質量部
(日信化学工業(株)製 ソルバインA)
アミノ変性シリコーン 5質量部
(信越化学工業(株)製 X22−3050C)
エポキシ変性シリコーン 5質量部
(信越化学工業(株)製 X22−3000E)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 400質量部
白色中間層
ポリエステル樹脂(バイロン200、商品名、東洋紡績(株)) 10質量部
蛍光増白剤(Uvitex OB、商品名、チバガイギー社製) 1質量部
酸化チタン 30質量部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90質量部
(画像形成)
上記のようにして得た各感熱転写シートと感熱転写受像シートを組み合わせて用いて、熱転写型プリンターA(ASK−2000 富士フイルム(株)製)により152mm×102mmサイズ画像の出力を行った。なお、熱転写型プリンターAのライン速度は0.73m秒/ライン、TPHの最高到達温度は410℃であった。これらは25℃50%環境においてプリントを行った。
(肌色再現性評価)
肌色再現性の評価は以下のように行った。
デジタルデータのR、G、B値(それぞれ0〜255の整数値をとるいわいる8ビットデータ)それぞれ0〜255のうちほぼ均等に9点を割り当て、R、G、Bの組み合わせで9×9×9=729個の画像パッチが1枚の画像に入っている画像を作成して、プリントを行なった。
出力されたパッチを分光測色器(SpectroEye GretagMacbeth社製)を使用して、L* a* b*(CIE 1976 視野角2°光源 F8)を測定し、肌色再現に重要な a*=15±3、b*=22±4 の色相範囲に入るパッチのL*のうち一番小さい値を肌色評価の指標として、このL*が小さいほど肌色再現性に優れていると評価し、L*の値が10以下のものを良と判断した。
(経時安定性評価)
経時安定性の評価は以下のように行った。
作成した感熱転写シートを40℃60%の環境下で30日経時し、別途冷蔵保存したサンプル(Freshと呼ぶ)と同時にプリントを行い、Freshのサンプルでマゼンタ光学濃度が1.0となるプリントにおいて上記経時後の感熱転写シートをプリントしたときのマゼンタ光学濃度を経時安定性の指標とし、この値が1.0に近いほど経時安定性に優れていると評価し、0.9〜1.1を良好と判断した。
光学濃度の測定にはいずれもXrite社製Xrite310で反射濃度測定を行い、各サンプルにおけるマゼンタ濃度の測定値を用いた。
得られた結果をまとめて、下記表2に示した。
Figure 2009241349
Figure 2009241349
Figure 2009241349
上記結果から明らかなように肌色再現性と経時安定性が両立できていることがわかる。
(実施例2)
実施例1の感熱転写シートの各染料層に架橋性硬化剤(タケネートD110N、商品名、三井ポリウレタン株式会社製)をバインダーに対して18質量%添加して架橋し、同様の実験を行ったところ実施例1の結果を上回る良好な結果が得られた。
(実施例3)
実施例1の感熱転写シートで転写性保護層の厚みを1.7μmに変更して同様の実験を行ったところ実施例1の結果を上回る良好な結果が得られた。
(実施例4)
実施例1の感熱転写シートに離型剤(メガファックF472SF 商品名、大日本インキ化学工業製)をバインダーポリマーの1質量%使用して同様の実験を行ったところ実施例1の結果を上回る良好な結果が得られた。

Claims (4)

  1. 支持体上に少なくとも染料とバインダーを含有する染料層を有する感熱転写シートであって、マゼンタ染料層に含有する染料とバインダーの関係において、少なくとも1種の染料の溶解性パラメータSPs値(J/cm1/2と少なくとも1種のバインダーの溶解性パラメータSPp値(J/cm1/2の絶対値差ΔSP値(ΔSP値=│SPs値−SPp値│)が2.3(J/cm1/2以下であり、かつ該染料の含有質量(D)とバインダー(固形分)の含有質量(B)の比(D/B)が1を越えていることを特徴とする感熱転写シート。
  2. 前記マゼンタ染料層に含有するバインダーが架橋していることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写シート。
  3. 前記マゼンタ染料層に離型剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感熱転写シート。
  4. さらに、厚みが1.5〜2.0μmの転写性保護層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱転写シート。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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