JP2015012900A - ポータブルトイレ - Google Patents

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Abstract

【課題】トイレ本体部に肘掛けを取り付けるスペースを確保した上で、使用者の足元の配置や脚の動きの自由度を高め、そして使用者が少ない動きで便座の後方に深く腰を掛けることができるようにしたポータブルトイレを提供する。
【解決手段】本発明によれば、ポータブルトイレの平面部分の外形を略方形とし、ポータブルトイレの前端部の両側を便座の開口部の先端部よりも後方へ向けて凸となるよう湾曲させて後退させることによって、使用者の足元の配置や脚の動きの自由度が高められ、そして使用者が少ない動きで便座の後方に深く腰を掛けることができるようにされたポータブルトイレが提供される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回動可能な便座を備えたポータブルトイレ(移動式簡易便器)に関するものであって、特に平面部分が略方形の外形を有するポータブルトイレにおいて、ポータブルトイレの前端部の両側を便座の開口部の先端部よりも後方へ向けて凸となるよう湾曲させて後退させることにより、使用者の着座位置の自由度を高めたポータブルトイレに関する。
近年、高齢者及び身体障害者が居室等で排泄するために、ポータブルトイレ(移動式簡易便器)が普及している。
ところで、近年のポータブルトイレは、高齢者及び身体障害者の使用を考慮して肘掛けや背もたれが備え付けられている場合が多い。このため、便座が載置される腰掛の平面部分は、肘掛や背もたれを支持することができるように全体として略方形に造られていることが多い。
また、上述のような平面部分が略方形のポータブルトイレにおいて、便座の外形を便座の開口部と略相似形のO形状としてしまうと、O形状の便座は略方形の平面部分との間にO形状の便座の外縁に沿って隙間や段差を生じ、そして該隙間や段差は、着座した使用者の太腿部の裏側を斜め方向に横断するように配置される。このため、便座の外形をO形状としたポータブルトイレでは、使用者が便座に着座した後、脚を動かしたりすると、太腿部の裏側の皮膚が、便座とトイレ本体の平面部分との間にできた隙間や段差に挟み込まれて怪我をしてしまうという問題がある。
このため、平面部分が略方形のポータブルトイレでは、特開2005−000387号公報(特許文献1)や特開2010−240165号公報(特許文献2)、特開2012−152256号公報(特許文献3)の中に開示されているように、便座の外形も略方形とすることによって、便座とトイレ本体の平面部分との間にできた隙間や段差が使用者の太腿部の裏側を斜め方向に横断しないようにした便座の使用が増えつつある。
このように、近年のポータブルトイレは、平面部分が略方形の外形を有しており、そして略方形の便座を取り付けているタイプが主流となりつつある。しかしながら、上述のような平面部分が略方形のポータブルトイレは、平面部分がO形状の据付式の洋式便器に比べてポータブルトイレの前端部の両端が前方へ突出しているため、使用者がポータブルトイレの便座の後方に腰を掛けようとすると、膝の裏側が相対的に前方側でポータブルトイレの前端部に当たってしまい、深く腰を掛けることができないという問題があった。
また、上述のように、ポータブルトイレには通常肘掛けが取り付けられているため、使用者の膝の裏側が相対的に前方側においてポータブルトイレの前端部に当たってしまうことがないようにポータブルトイレの前端部の両端をトイレ本体部の後方へ後退させると、ポータブルトイレの平面部において肘掛けを支える支柱を取り付けるスペースが無くなってしまうという問題点があった。
特開2005−000387号公報 特開2010−240165号公報 特開2012−152256号公報
そこで本発明は、平面部分が略方形の外形を有するポータブルトイレにおいて、トイレ本体部の平面部分に肘掛けの支柱を取り付けるスペースを確保した上で、さらにトイレ本体部の前端部が着座した使用者の脚の自由な移動を妨げることがなく、且つ使用者が便座の後方に深く腰を掛けることできるポータブルトイレを提供することを目的とする。
また本発明は、必要な強度を確保した上で、トイレ本体部の表面からリブ等の突起物や段差を無くすることによって使用者の脚の引っ掛かりを防止すると共に、使用者の足元の配置や脚の動きの自由度を高め、その結果、使用者は少ない動きでポータブルトイレから立ち上がること及びポータブルトイレへ着座することができるポータブルトイレを提供することを目的とする。
本発明者等は、回動可能な便座を備えており、そして平面部分が略方形の外形を有するポータブルトイレの形状や配置について鋭意検討を重ねた結果、トイレ本体部の平面部分の外形を略方形とし、そしてトイレ本体部の前端部の両側を便座の開口部の先端部よりも後方へ向けて凸となるよう湾曲させて後退させることにより、肘掛けの支柱を配置するスペースを確保した上で、使用者が便座の後方に深く腰を掛けることを可能にし、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明によれば、縁壁によって区画された第1の開口部を有する上面部を備えたトイレ本体部と、周囲が閉じた第2の開口部を有しており且つ上面部へ回動自在に取り付けられた便座とを備えており、そしてトイレ本体部の上面部は、便座をトイレ本体部の上面部に載置した状態において、上面部の外側で、便座の第2の開口部の先端部より後方に位置する第1のトイレ本体端部から上面部の後部まで略直線状に延びた第1の側端部と、第1の側端部の反対側で且つ上面部の外側で、便座の第2の開口部の先端部より後方に位置する第2のトイレ本体端部から上面部の後部まで略直線状に延びた第2の側端部と、そして便座の第2の開口部の先端部より前方に位置するトイレ本体突出部を経由して、第1の端部から第2の端部まで延びたトイレ本体前端部とを備えているポータブルトイレが提供される。
すなわち、本発明のポータブルトイレは、周囲が閉じた開口部を有する便座を備えている。本発明のポータブルトイレのトイレ本体部は、便座をトイレ本体部の上面部に載置した状態において、該上面部の外側で、便座の開口部の先端部より後方に位置するトイレ本体端部からトイレ本体部の後部まで略直線状に延びた第1及び第2の側端部を有している。また、トイレ本体部は、第1及び第2の側端部のトイレ本体端部とは逆に、便座の開口部の先端部より前方に位置するトイレ本体突出部を有しており、トイレ本体部の前部には、第1のトイレ本体端部から該突出部を経由して第2のトイレ本体端部まで延びたトイレ本体前端部が形成されており、全体として略方形の形状を有している。
ここで、本発明においてポータブルトイレとは、高齢者及び身体障害者が居室等で排泄するために使用される、特許文献1〜3に記載されているような移動式簡易便器を意味する。また、ポータブルトイレの概念には、主として樹脂材料から製作されているポータブルトイレの他、例えばポータブルトイレの便器以外の外枠や脚部、肘掛け、背もたれなどが木材などの材料から製作されている、いわゆる家具調のポータブルトイレも含まれている。
また、本発明において「側端部」とは、平面図において表れるポータブルトイレの輪郭及び該輪郭を形成する端面を意味する。また「略直線状」とは、離間した2点を略最短距離で結ぶ線分のことを意味し、距離的に直線と略同じであれば、厳密な意味の直線のみならず、多少“くの字状”に曲がった折れ線や大きな弧を描くように多少曲がった曲線も含まれる。このため、側端部はその大部分が略直線状に延びていれば足り、側端部の一部に、例えばポータブルトイレ本体部の脚部支柱を収容するための膨らみ等が形成されていてもよい。
さらに、本発明において「前部」とは、大人の使用者が便座に着座した時、使用者の腹側に配置される便座及びポータブルトイレの前方付近の領域を意味し、そして「後部」とは、大人の使用者が便座に着座した時、使用者の背中側に配置される便座及びポータブルトイレの後方付近の領域を意味する。また、ポータブルトイレの側端部の「トイレ本体端部」とは、ポータブルトイレの長手方向に延びた側端部が、ポータブルトイレの幅方向に延びたトイレ本体前端部へ実質的に方向変換するコーナー部分を意味し、該コーナー部分は角部のみならず、Rの付いた隅部であってもよい。
また、一般にポータブルトイレは、トイレ本体部の平面部分の上に一対の略平行に配置された肘掛けを取り付けるスペースを確保した上でコンパクト化が図られるので、トイレ本体部の第1の側端部は実質的に第2の側端部と略平行に配置されることとなる。
さらに本発明のポータブルトイレは、第1のトイレ本体端部からトイレ本体突出部を経由して第2のトイレ本体端部まで延びたトイレ本体前端部を有しており、さらに該前端部は第1のトイレ本体端部とトイレ本体突出部の間に第1の変曲点を有しており、且つ第2のトイレ本体端部からトイレ本体突出部までの間に第2の変曲点を有している曲線部を含んでいることが好ましい。なお、本発明において「変曲点」は、トイレ本体前端部がトイレ本体部の後方に向けて凸な状態からトイレ本体部の前方に向けて凸な状態へ変化する部分であれば足り、前記変化する部分は点である場合のみならず、直線によって構成されている場合も含まれる。
このように、本発明のポータブルトイレは、平面部分が矩形のトイレ本体部に比べてトイレ本体前端部の両端区域がトイレ本体部の後方へ向けて凸となるよう湾曲し後退しているので、使用者がポータブルトイレの便座の後方に腰を掛けようとしても、トイレ本体部の前端部が使用者の膝の裏側に当たって障害となることがない。このため、使用者は容易に本発明のポータブルトイレの便座の後方へ深く腰を掛けることができるようになる。
また、本発明のポータブルトイレは、トイレ本体前端部の中央部分が該前端部の両端区域よりも相対的に前方へ突出しているので、使用者が便座の後方に深く腰を掛けると、該前端部のトイレ本体突出部が使用者の両膝の内側に当接し、使用者の両脚を開脚させるように誘導する。このため、使用者は自然と排泄が容易な姿勢を取ることができるようになり、特に男性使用者の場合、性器を下方へ容易に向けることができるので、使用者の排尿が便座の先端部やトイレ本体前端部の突出部を越えて飛散することを無くすることができるようになる。
このため、本発明のポータブルトイレに取り付けられる便座は、便座がトイレ本体部の上面部に載置された時、トイレ本体部の前端部と略並行に配置される前縁を備えていることが好ましい。
すなわち、便座の前縁の前部又は一部がトイレ本体部の前端部と略同一形状であると、使用者がポータブルトイレの便座の後方に腰を掛けようとしても、従来の前縁の両端区域が後退していない便座と比べて、トイレ本体部の前端部と便座の前縁が使用者の膝の裏側に当たって障害となることがなく、そして使用者が着座した時の脚のフィット感も高めることができる。また、便座の前縁の前部又は一部がトイレ本体部の前端部と略同一形状であると、トイレ本体前端部のトイレ本体突出部と便座の前縁の突出部は協働して使用者の両膝の内側に広く当接するので、使用者の両脚をスムーズに開脚させる。
さらに、使用者が両脚を開脚した姿勢は、排泄後、使用者が中腰姿勢を取ることなく、自力で前方から排便を拭き取ることを可能にする。また、使用者が付添い人や介護者に拭き取ってもらわなければならない高齢者や要介護者である場合であっても、付添い人等は使用者を抱き抱えることなく使用者の排便を拭き取ることができるので、付添い人等の負担を大幅に軽減することができるようになる。
本発明においてトイレ本体前端部の曲線部は、第1のトイレ本体端部と第1の変曲点の間でトイレ本体部の後方へ向けて凸に湾曲した第1の湾曲部と、第2のトイレ本体端部と第2の変曲点の間でトイレ本体部の後方へ向けて凸に湾曲した第2の湾曲部と、そして第1の変曲点と第2の変曲点の間でトイレ本体部の前方へ向けて凸に湾曲した第3の湾曲部とを含んでいることが好ましい。
上述したように、トイレ本体前端部の両端区域の曲線部がトイレ本体部の後方へ向けて凸に湾曲しており、且つトイレ本体前端部の中央部分の曲線部がトイレ本体部の前方へ向けて凸に湾曲していると、使用者が便座の後方に深く腰を掛けた時、トイレ本体前端部の両端区域の形状は使用者の膝の裏側にフィットするので、使用者の両脚を優しく且つスムーズに開脚させるように誘導する。さらに、上述のトイレ本体前端部の形状は、使用者が便座に腰を掛ける際の自己の脚を置く位置の目印となり便利である。
本発明のポータブルトイレはトイレ本体部を備えており、該トイレ本体部は、上部が開口した箱部であって、開口の開口縁から箱部の下方へ且つ後方へ向けて傾斜している前面部を有している箱部と、そして箱部の開口縁へ接続される上面部とに分割されていることが好ましい。
変形に対するトイレ本体部の強度を向上させる手段としては、トイレ本体部の開口縁や側面に折り返しリブや補強リブなどを設ける方法や、若しくはトイレ本体部の各面にパネルを配置して、トイレ本体部をいわゆるボックス構造とする方法などが知られている。
しかしながら、特に開口縁の折り返しリブは、構造上、トイレ本体部から外部へ突出した突起物となるので、トイレ本体部に折り返しリブを設けると、使用者がポータブルトイレで又はポータブルトイレ近傍で脚を動かす際に脚を引っ掛ける障害物となる。そのため、本発明では、折り返しリブなどの突起物を無くするのに有利なボックス構造を採用することによって、特にトイレ本体部の前面部から、使用者が脚などを引っ掛ける可能性のある突起物や段差を無くすることを達成し、トイレ本体部の前面部を滑らかな形状としている。
また、一般にトイレ本体部をボックス構造とすると、トイレ本体部の成形性やメンテナンス性が低下するので、本発明ではいわゆる2ピース構造を採用し、トイレ本体部を、上部が開口した箱部と、該開口の開口縁へビスなどによって連結される上面部との2つの部品から構成することによって上記の問題を解消している。そのため、本発明では、箱部と上面部はいずれも樹脂製の一体成形品として成形することが可能であり、その結果、低コストで且つ頑丈なポータブルトイレを提供することができる。
また、本発明のポータブルトイレは、箱部の前面部を、開口の開口縁から箱部の下方へ且つ後方へ向けて傾斜させているので、使用者は自己の足下をトイレ本体部の前端部又は便座の前縁の真下又はその後方まで引き寄せることが可能となる。このため、本発明のポータブルトイレでは、使用者がポータブルトイレから立ち上がる時及び/又はポータブルトイレへ着座する時の体重移動は主として上下方向の移動のみとなるので、使用者のポータブルトイレからの立ち上がり及びポータブルトイレへの着座が容易となる。
さらに、本発明のポータブルトイレは、箱部の外面を上面部の外面と面一に接続することが好ましい。
本発明のポータブルトイレは、上述したように便座に着座した使用者の両脚の移動を自由にするために、トイレ本体部の前端部の形状を便座の前縁と略同一形状としている。このため、箱部の外面を上面部の外面と面一に接続すると、トイレ本体部の前端部からトイレ本体部の下方へ向けて、便座の前縁の形状と略同一の表面形状を有する前面部を形成することができるようになる。
その結果、箱部の外面を上面部の外面と面一にすると、トイレ本体部の前面部から突起物や段差を排除して、トイレ本体部の前面部をより一層滑らかな形状とすることができると共に、便座の前縁の中央部分の突出部を、便座の前縁からトイレ本体部の前面部に掛けて連続的に形成することができるので、使用者が便座の後方に深く腰を掛けた時の使用者の両脚の開脚誘導をよりスムーズに促進させることができるようになる。
本発明においてトイレ本体部の上面部は、枠部と、縁壁によって区画された第1の開口部を有しており且つ枠部の内側で該枠部に着脱自在に装着される受け部とへ分割されていることが好ましい。
トイレ本体部の上面部は、肘掛けや背もたれを支持し、そして箱部と接続されることによってトイレ本体部の強度を向上させると共に、便座を下方から支持し、さらに第1の開口部を区画する縁壁を介して第1の開口部の中へバケツを懸架するように支持するためにも機能する。このためトイレ本体部の上面部の中、特に第1の開口部やその周辺部は使用者の排泄物や埃などによって汚れ易く、適宜洗浄や拭き取りなどの掃除をする必要がある。
そこで本発明では、トイレ本体部の上面部を第1の開口部やその周辺部からなる受け部と、該受け部を着脱自在に支持する枠部とに分割することにより、受け部をトイレ本体部から分離してポータブルトイレの外部で容易に掃除ができるようにしている。そのため、受け部がトイレ本体部から容易に取り外せる構造であれば、トイレ本体部は必ずしも枠部(受け部を除いた上面部)と箱部に分離されている必要がなく、枠部と箱部が一体となったいわゆる1ピース構造であってもよい。
また受け部は、受け部の第1の開口部の周りに樋状の溝部を設けることよって、使用者の排泄物等がトイレ本体部の他の部位へ垂れたり飛散したりするのを防止することができる。また便座や蓋部を受け部へ回動自在に取り付けると、受け部を利用して、一度に便座と蓋部をトイレ本体部から取り外すことが可能となるので、ポータブルトイレの掃除がより一層容易となる。
次に、本発明のポータブルトイレに取り付けられる便座の特徴について述べる。本発明のポータブルトイレに取り付けられる便座は、便座をトイレ本体部の上面部に載置した時、トイレ本体部の第1の側端部と略平行に配置される第1の側縁と、そしてトイレ本体部の第2の側端部と略平行に配置される第2の側縁とを備えていることが好ましい。
本発明において、便座の第1及び第2の側縁を、それぞれにトイレ本体部の第1及び第2の側端部と略平行に配置すると、便座の外形も略方形となり、そして便座とトイレ本体部の上面部との間にできた隙間や段差を着座した使用者の太腿部の外側に形成させることができる。このため、上述のような第1及び第2の側縁を有する便座は、便座とトイレ本体部の上面部との間にできた隙間や段差が着座した使用者の太腿部の裏側を斜め方向に横断するのを無くすることができるので、使用者の太腿部の裏側の皮膚が、便座とトイレ本体部の上面部との間にできた隙間や段差に挟み込まれるという問題を解消することができる。
また、通常、ポータブルトイレの肘掛けもトイレ本体部の側端部と略平行に配置されているので、トイレ本体部の側端部と略平行に配置された側縁を有する便座を、肘掛けや肘掛けを支える支柱に隣接して配置しても、便座の回動時、便座が肘掛けや肘掛けを支える支柱と干渉することがなく、そしてその結果、左右肘掛けの間で、便座の座面を最大限に大きな大きさとすることができる。
もし、便座の側縁をトイレ本体部の側端部に対して略平行に配置せず、例えば「ハの字状」に配置すると、便座の座面を必要且つ十分な大きさとした場合、便座の幅が最大となる部分は肘掛けや肘掛けを支える支柱と干渉することとなる。逆に、便座の幅が最大となる部分を肘掛けや肘掛けを支える支柱と干渉しない大きさとした場合、許容される左右肘掛け間の最大距離は決まっているので便座の外形幅は相対的に小さくなり、その結果、便座の座面を必要且つ十分な大きさとすることができなくなるであろう。
また、ポータブルトイレが肘掛け及び該肘掛けを下方から支持する支柱を備えている場合、上述のような略方形の外形を有する便座は、便座の前側の両端部(コーナー部分)を肘掛けの支柱より前方に配置することが好ましい。なお、ここで便座の「端部」とは、便座の長手方向に延びた側縁が、便座の幅方向に延びた前縁へ実質的に方向変換するコーナー部分を意味し、該コーナー部分は角部のみならず、Rの付いた隅部であってもよい。
便座の前側の両端部を肘掛けの支柱より前方に配置すると、トイレ本体部の前端部の形状を便座の前縁と略同一形状とした上で、肘掛けの支柱を取り付けるスペースをトイレ本体部に確保することができる。このため、便座に着座した使用者は、自己の両脚を、特に外側へ向けて自由に移動することができるようになる。
本発明のポータブルトイレで使用される便座は、第1の側縁の接線と直交する断面において略直線状に表れる第1の座面であって、水平面に対し開口部へ向けて下方へ傾斜する第1の座面の傾斜角度が便座の後部から前部へ向かうにつれて連続的に増加し、そしてその後連続的に減少して略水平となるように形成された第1の座面と、そして第2の側縁の接線と直交する断面において略直線状に表れる第2の座面であって、水平面に対し開口部へ向けて下方へ傾斜する第2の座面の傾斜角度が便座の後部から前部へ向かうにつれて連続的に増加し、そしてその後連続的に減少して略水平となるように形成された前記第2の座面とを備えていることが好ましい。
すなわち、上述の便座は開口部を挟んで第1の座面と第2の座面を有しており、そして第1及び第2の座面の傾斜は、いずれも便座の後部から前部へ向かうにつれて開口部へ向けて連続的にきつくなり、その後連続的に緩やかとなり、そして便座の前縁付近において略水平となる。なお、ここで座面の「傾斜角度」とは、側縁の接線と直交する断面において略直線状に表れる座面の代表的な勾配を示す線分の水平面に対する角度を意味している。
そのため、第1及び第2の座面は、使用者が便座に着座した時、該使用者の臀部を便座の開口部の中へ落とし込むように誘導する。その結果、第1及び第2の座面は使用者の臀部の皮膚を座面に対し相対的に持ち上げ、使用者の肛門を開かせるので、使用者の排泄を容易にするという効果を奏する。なお、便座の断面において略直線状に表れる座面は、必ずしも便座の断面が直線で表れる平面のみで構成されている必要はなく、座面の傾斜によって上述の落し込み効果が得られるものであれば、多少下方へ窪んだ曲面や上方へ膨らんだ曲面が含まれていてもよい。
また、第1の座面の傾斜角度は、第1の側縁の接線と直交し且つ開口部の幅が最大となる寸法線を通過する便座断面において最大となり、そして第2の座面の傾斜角度は、第2の側縁の接線と直交し且つ開口部の幅が最大となる寸法線を通過する便座断面において最大となることが好ましい。
第1の座面の傾斜角度と第2の座面の傾斜角度が、便座の開口部の幅が最大となる位置において最大となるようにすると、使用者が本発明の便座に着座した時、使用者の肛門は、第1及び第2の座面によって便座の開口部の幅が最大となる寸法線の中点付近に誘導されるので、使用者の排便は便座の下方に設置されたバケツの中の所定の位置に落下させることが可能となる。そのため、上述の第1及び第2の座面の傾斜は、使用者の排便がバケツの周囲へ飛散したり又は付着するのを防止すると共に、使用者の排便を、所定の深さでバケツの中に貯蔵されている水中に確実に埋没させるので、便の露出による異臭の発生を防止することができる。
なお、通常、第1の座面の傾斜角度と第2の座面の傾斜角度は、便座の開口部の幅が最大となる位置の付近において最大であれば、使用者の肛門を、便座の開口部の幅が最大となる寸法線の中点付近に誘導することができるので、第1の座面の傾斜角度と第2の座面の傾斜角度は、厳密な意味において便座の開口部の幅が最大となる位置において最大とならなければならないものではない。
本発明のポータブルトイレのトイレ本体前端部は両端区域がトイレ本体部の後方へ向けて凸に湾曲しており、突出部(中央区域)はトイレ本体部の前方へ向けて凸に突出しているので、使用者は容易にトイレ本体部及び便座の後方へ深く腰を掛けることができるようになる。また、使用者が便座の後方に深く腰を掛けると、トイレ本体前端部の突出部が使用者の両膝の内側に当接して使用者の両脚を開脚させるので、使用者は自然と排泄が容易な姿勢を取ることができようになる。また、使用者が両脚を開脚した姿勢は、排泄後、使用者が中腰姿勢を取ることなく、自力で前方から排便を拭き取ることを可能にし、さらに使用者が要介護者等である場合であっても、付添い人等は使用者を抱き抱えることなく使用者の排便を拭き取ることができるので、付添い人等の負担を大幅に軽減することができる。
本発明のポータブルトイレはいわゆるボックス構造としているので、必要な強度を確保した上で、トイレ本体部の表面から使用者が脚などを引っ掛ける可能性のあるリブ等の突起物や段差を無くし、トイレ本体部の表面を滑らかな形状とすることができる。また、トイレ本体部は、箱部と上面部とに分割されたいわゆる2ピース構造を採用しているため、いずれの部品も樹脂製の一体成形品として成形することが可能となり、低コストで且つ頑丈なポータブルトイレを提供することができる。
さらに、本発明のポータブルトイレは、トイレ本体部の前面部を開口の開口縁から箱部の下方へ且つ後方へ向けて傾斜させているので、使用者がポータブルトイレから立ち上がる時及び/又はポータブルトイレへ着座する時、使用者は自己の足下をトイレ本体部の前端部又は便座の前縁の真下又はその後方まで引き寄せることが可能となる。その結果、立ち上がり時及び/又は着座時、使用者の体重移動は主として上下方向の移動のみとなり、立ち上がり及び着座が容易となる。
本発明のポータブルトイレは、トイレ本体部の上面部を、使用者の排泄物や埃などによって汚れ易く且つ適宜洗浄や拭き掃除が必要な受け部と、該受け部を着脱自在に支持する枠部とに分割することができるので、受け部をポータブルトイレの外部で容易に掃除することができるようになる。
本発明において、便座の側縁をトイレ本体部の側端部と略平行に配置すると、便座の回動時におけるトイレ本体部の肘掛けや肘掛けを支える支柱との干渉が防止される。また、便座とトイレ本体部の上面部分との間にできる隙間等は着座した使用者の太腿部の外側に形成されるので、使用者の太腿部の裏側の皮膚が該隙間等に挟み込まれるのも防止される。
本発明において、便座の座面を、座面の傾斜が便座の後部から前部へ向かうにつれて開口部へ向けて連続的にきつくし、その後連続的に緩やかにし、そして便座の前縁付近において略水平となる形状とすると、使用者が本発明の便座に着座すると、該使用者の臀部は便座の開口部の中へ落とし込むように誘導され、使用者の臀部の皮膚が座面に対し相対的に持ち上げられるので、使用者の肛門が開かれ、使用者の排便が容易化される。
本発明において、便座の前側の両端部を肘掛けの支柱より前方に配置すると、トイレ本体部の前端部の形状を便座の前縁と略同一形状とした上で、肘掛けの支柱を取り付けるスペースをトイレ本体部に確保することができるので、便座に着座した使用者の両脚の移動自由に移動することができるようになる。
蓋が開けられた状態の本発明の便座が取り付けられた本発明のポータブルトイレの概要図である。 バケツがセットされており且つ蓋及び便座が開けられた状態の本発明のポータブルトイレの概要図である。 本発明のポータブルトイレの組立模式図である。 バケツのみがセットされておらず且つ蓋及び便座が開けられた状態の本発明のポータブルトイレの概要図である。 便座を載置した状態の本発明のポータブルトイレの平面図である。 本発明のポータブルトイレのトイレ本体部の組立模式図である。 本発明のポータブルトイレの側面図である。 バケツが懸架された状態の受け部の概要図である。 便座の概要図である。 便座の平面図である。 図5に示されている便座のA−A断面からD−D断面までの断面図及び正面図である。
以下、本発明の一実施形態に係るポータブルトイレについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
図1には、蓋5が開けられた状態の本発明の一実施形態に係るポータブルトイレ1の概要図が示されており、図2には、バケツ6がセットされており且つ蓋5及び便座4が開けられた状態の本実施形態に係るポータブルトイレ1の概要図が示されている。また、図3には、本発明の一実施形態に係るポータブルトイレ1の組立模式図されている。
本実施形態のポータブルトイレ1は、図3に示されているように、トイレ本体部2、トイレ本体部2の上面を構成する受け部3、便座4、蓋部5、トイレ本体部2の中に装着されるバケツ6及びバケツ6の補助蓋7から構成されており、それぞれの構成要素は互いに取り外し可能に取り付けられている。また、トイレ本体部2には、肘掛け20、背もたれ21及び脚部22が含まれている。
図4には、バケツ6のみがセットされておらず且つ蓋5及び便座4が開けられた状態の本実施形態のポータブルトイレ1の概要図が示されている。また、図5には、肘掛け20及び背もたれ21を取り外し、そして便座4を載置した状態の本実施形態のポータブルトイレ1の平面図が示されている。
図4に示されているように、トイレ本体部2は、縁壁31によって区画された第1の開口部30を有する上面部28を備えており、そしてトイレ本体部2の上面部28には、周囲が閉じた第2の開口部40を有する便座4が回動自在に取り付けられている。
また、図5に示されているように、トイレ本体部2の上面部28は、便座4をトイレ本体部2の上面部28に載置した状態において、上面部28の外側で、便座4の第2の開口部40の先端部400より後方に位置する第1のトイレ本体端部250から上面部28の後部まで略直線状に延びた第1の側端部25と、第1の側端部25の反対側で且つ上面部28の外側で、便座4の第2の開口部40の先端部400より後方に位置する第2のトイレ本体端部260から上面部28の後部まで略直線状に延びた第2の側端部26とを有している。
そしてトイレ本体部2の上面部28は、第1及び第2の側端部25,26のトイレ本体端部250,260とは逆に、便座4の第2の開口部40の先端部400より前方に位置するトイレ本体突出部270を有しており、トイレ本体部2の前部には、便座4の第2の開口部40の先端部400より前方に位置するトイレ本体突出部270を経由して、第1のトイレ本体端部250から第2のトイレ本体端部260まで延びたトイレ本体前端部27が形成されている。したがって、トイレ本体部2の平面は全体として略方形の形状を有しており、第1の側端部25は実質的に第2の側端部26と略平行に配置されている。
なお、本実施形態において「側端部」とは、平面図において表れるポータブルトイレ1の輪郭及び該輪郭を形成する端面を意味する。また「略直線状」とは、離間した2点を略最短距離で結ぶ線分のことを意味し、距離的に直線と略同じであれば、厳密な意味の直線のみならず、多少“くの字状”に曲がった折れ線や大きな弧を描くように多少曲がった曲線も含まれる。このため、側端部25,26はその大部分が略直線状に延びていれば足り、側端部25,26の一部に、例えばポータブルトイレ本体部2の脚部支柱を収容するための膨らみ等が形成されていてもよい。
また、本実施形態において「前部」とは、大人の使用者が便座4に着座した時、使用者の腹側に配置される便座4及びポータブルトイレ1の前方付近の領域を意味し、そして「後部」とは、大人の使用者が便座4に着座した時、使用者の背中側に配置される便座4及びポータブルトイレ1の後方付近の領域を意味する。また、ポータブルトイレ1の側端部25,26の「トイレ本体端部250,260」とは、ポータブルトイレ1の長手方向に延びた側端部25,26が、ポータブルトイレ1の幅方向に延びたトイレ本体前端部27へ実質的に方向変換するコーナー部分を意味し、該コーナー部分は角部のみならず、Rの付いた隅部であってもよい。
本実施形態のポータブルトイレ1のトイレ本体第1のトイレ本体端部270は、第1のトイレ本体端部250とトイレ本体突出部270の間に第1の変曲点271を含んでおり、そして第2のトイレ本体端部260からトイレ本体突出部270までの間に第2の変曲点272を含んでいる曲線部273を有している。なお、本実施形態において「変曲点」は、トイレ本体前端部27がトイレ本体部2の後方に向けて凸な状態からトイレ本体部2の前方に向けて凸な状態へ変化する部分であれば足り、前記変化する部分は点である場合のみならず、直線によって構成されている場合も含まれる。
このように、実施形態のポータブルトイレ1は、平面部分が矩形のトイレ本体部に比べてトイレ本体前端部27の両端区域がトイレ本体部2の後方へ向けて凸となるよう湾曲し後退しているので、使用者がポータブルトイレ1の便座4の後方に腰を掛けようとしても、従来の前縁の両端区域が後退していない便座と比べて、トイレ本体部2の前端部27が使用者の膝の裏側に当たって障害となることがない。このため、使用者は容易に本実施形態のポータブルトイレ1の便座4の後方へ深く腰を掛けることができるようになる。
また、本実施形態のポータブルトイレ1は、トイレ本体前端部27の中央部分が該前端部27の両端区域よりも相対的に前方へ突出しているので、使用者が便座4の後方に深く腰を掛けると、該前端部27のトイレ本体突出部270が使用者の両膝の内側に当接し、使用者の両脚を開脚させるように誘導する。このため、使用者は自然と排泄が容易な姿勢を取ることができるようになり、特に男性使用者の場合、性器を下方へ容易に向けることができるので、使用者の排尿が便座4の先端部400やトイレ本体前端部27の突出部270を越えて飛散することを無くすることができるようになる。
このため、本実施形態のポータブルトイレ1では、トイレ本体部2に取り付けられる便座4は、便座4をトイレ本体部2の上面部28に載置した時、トイレ本体部2の前端部27と略並行に配置される前縁45を備えている。
すなわち、便座4の前縁45の前部又は一部がトイレ本体部2の前端部27と略同一形状であると、使用者がポータブルトイレ1の便座4の後方に腰を掛けようとしても、従来の前縁の両端区域が後退していない便座と比べて、トイレ本体部2の前端部27と便座4の前縁45が使用者の膝の裏側に当たって障害となることがなく、そして使用者が着座した時の脚のフィット感も高めることができる。また、便座4の前縁45の前部又は一部がトイレ本体部2の前端部27と略同一形状であると、トイレ本体前端部27のトイレ本体突出部270と便座4の前縁45の突出部450は協働して使用者の両膝の内側に広く当接するので、使用者の両脚をスムーズに開脚させる。
さらに、使用者が両脚を開脚した姿勢は、排泄後、使用者が中腰姿勢を取ることなく、自力で前方から排便を拭き取ることを可能にする。また、使用者が付添い人や介護者に拭き取ってもらわなければならない高齢者や要介護者である場合であっても、付添い人等は使用者を抱き抱えることなく使用者の排便を拭き取ることができるので、付添い人等の負担を大幅に軽減することができるようになる。
本実施形態において、トイレ本体前端部27の曲線部273は、第1のトイレ本体端部250と第1の変曲点271の間でトイレ本体部2の後方へ向けて凸に湾曲した第1の湾曲部274と、第2のトイレ本体端部260と第2の変曲点272の間でトイレ本体部2の後方へ向けて凸に湾曲した第2の湾曲部275と、そして第1の変曲点271と第2の変曲点272の間でトイレ本体部2の前方へ向けて凸に湾曲した第3の湾曲部276とを含んでいる(図4,5参照)。
上述したように、トイレ本体前端部27の両端区域の曲線部273がトイレ本体部2の後方へ向けて凸に湾曲しており、且つトイレ本体前端部27の中央部分の曲線部273がトイレ本体部2の前方へ向けて凸に湾曲していると、使用者が便座4の後方に深く腰を掛けた時、トイレ本体前端部27の両端区域の形状は使用者の膝の裏側にフィットするので、使用者の両脚を優しく且つスムーズに開脚させるように誘導する。さらに、上述のトイレ本体前端部27の形状は、使用者が便座4に腰を掛ける際の自己の脚を置く位置の目印となり便利である。
次に、図6,7を用いて、主として本実施形態に係るポータブルトイレ1の構造上の特徴について説明する。図6には、本実施形態のポータブルトイレ1のトイレ本体部2の組立模式図が示されている。図7には、本実施形態のポータブルトイレ1の側面図が示されている。
図6に示されているように、本実施形態のポータブルトイレ1は、肘掛け20、背もたれ21及び脚部22を含んでいるトイレ本体部2を有している。そしてトイレ本体部2は、上部が開口している箱部23と、箱部23の開口の開口縁230へ接続される上面部28とに分割されている。また、箱部23は、開口の開口縁230から箱部23の下方へ且つ後方へ向けて傾斜している前面部231を有している。また、上面部28は、後述する受け部3と枠部24を含んでいる。
本実施形態のポータブルトイレ1は、特に開口縁230の折り返しリブなどの突起物を無くするのに有利ないわゆるボックス構造を採用することによって、特にトイレ本体部2の前面部231から、使用者が脚などを引っ掛ける可能性のある突起物や段差を無くし、トイレ本体部2の前面部231を滑らかな形状としている。
また、本実施形態のポータブルトイレ1はいわゆる2ピース構造を採用し、トイレ本体部2を、上部が開口した箱部23と、該開口の開口縁230へビスなどによって連結される上面部28の2つの部品へ分割している。そのため、本実施形態のポータブルトイレ1の箱部23及上面部28はいずれも樹脂製の一体成形品として成形されており、その結果、本実施形態のポータブルトイレ1は低コストで且つ頑丈に製作されている。
さらに、本実施形態のポータブルトイレ1は、図7に示されているように、箱部23の前面部231を開口の開口縁230から箱部23の下方へ且つ後方へ向けて傾斜させているので、使用者は自己の足下をトイレ本体部2の前端部27又は便座4の前縁45の真下又はその後方まで引き寄せることが可能となる(図1参照)。このため、本実施形態のポータブルトイレ1では、使用者がポータブルトイレ1から立ち上がる時及び/又はポータブルトイレ1へ着座する時の体重移動は主として上下方向の移動のみとなるので、使用者のポータブルトイレ1からの立ち上がり及びポータブルトイレ1への着座が容易となる。
また、本実施形態のポータブルトイレ1は、箱部23の外面が上面部28の外面と面一に接続されている(図1,2参照)。
本実施形態のポータブルトイレ1は、便座4に着座した使用者の両脚の移動を自由にするために、トイレ本体部2の前端部27の形状を便座4の前縁45と略同一形状としている(図1参照)。このため、箱部23の外面を上面部28の外面と面一に接続すると、トイレ本体部2の前端部27からトイレ本体部2の下方へ向けて、便座4の前縁45の形状と略同一の表面形状を有する前面部231を形成することができるようになる。
その結果、本実施形態のポータブルトイレ1は、トイレ本体部2の前面部231から突起物や段差を排除して、トイレ本体部2の前面部231をより一層滑らかな形状とすることができる。また、便座4の前縁45の中央部分の突出部450を、便座4の前縁45からトイレ本体部2の前面部231に掛けて連続的に形成することができるので、使用者が便座4の後方に深く腰を掛けた時の使用者の両脚の開脚誘導をよりスムーズに促進させることができるようになる。
図8には、トイレ本体部2の上面部28から分離した、バケツ6が懸架された状態の受け部3の概要図が示されている。
図3,4,8を参照して理解されるように、本実施形態においてトイレ本体部2の上面部28は、枠部24と、縁壁31によって区画された第1の開口部30を有しており且つ枠部24の内側で該枠部24に着脱自在に装着される受け部3とへ分割されている。
トイレ本体部2の上面部28は、肘掛け20や背もたれ21を支持し、そして箱部23と接続されることによってトイレ本体部2の強度を向上させると共に、便座4を下方から支持し、さらに第1の開口部30を区画する縁壁31を介して第1の開口部30の中へバケツ6を懸架するように支持するためにも機能する。このため、トイレ本体部2の上面部28の中、特に第1の開口部30やその周辺部は使用者の排泄物や埃などによって汚れ易く、適宜洗浄や拭き取りなどの掃除をする必要がある。
このため、本実施形態ではトイレ本体部2の上面部28を第1の開口部30やその周辺部からなる受け部3と、該受け部3を着脱自在に支持する枠部24とに分割し、受け部3をトイレ本体部2から分離してポータブルトイレ1の外部で容易に掃除ができるようにしている。そのため、受け部3がトイレ本体部2から容易に取り外せる構造であれば、トイレ本体部2は本実施形態のように枠部24(受け部3を除いた上面部28)と箱部23に分離されている必要がなく、枠部24と箱部23が一体となったいわゆる1ピース構造であってもよい。
また受け部3は、受け部3の第1の開口部30の周りに樋状の溝部32を設けることよって、使用者の排泄物等がトイレ本体部2の他の部位へ垂れたり飛散したりするのを防止することができる。また便座4や蓋部5を受け部3へ回動自在に取り付けると、受け部3を利用して、一度に便座4と蓋部5をトイレ本体部2から取り外すことが可能となるので、ポータブルトイレ1の掃除がより一層容易となる(図3,8参照)。
次に、本実施形態のポータブルトイレ1に取り付けられる便座4の特徴について述べる。図9には本実施形態の便座4の概要図が示されており、図10には本実施形態の便座4の平面図が示されている。
本実施形態のポータブルトイレ1に取り付けられる便座4は、図1と図2とを対比して理解されるように、トイレ本体部2の受け部5に回動自在に取り付けられている。また、便座4は、便座4をトイレ本体部2の上面部28に載置した時、トイレ本体部2の第1の側端部25と略平行に配置される第1の側縁43と、そしてトイレ本体部の第2の側端部と略平行に配置される第2の側縁44とを備えている。
本実施形態において、便座の第1及び第2の側縁43,44を、それぞれにトイレ本体部2の第1及び第2の側端部25,26と略平行に配置すると、便座4の外形も略方形となり、そして便座4とトイレ本体部2の上面部28との間にできた隙間や段差を着座した使用者の太腿部の外側に形成させることができる。このため、上述のような第1及び第2の側縁43,44を有する便座4は、便座4とトイレ本体部2の上面部28との間にできた隙間や段差が着座した使用者の太腿部の裏側を斜め方向に横断するのを無くすることができるので、使用者の太腿部の裏側の皮膚が、便座4とトイレ本体部2の上面部28との間にできた隙間や段差に挟み込まれるという問題を解消することができる。
また、本実施形態のポータブルトイレ1では、肘掛け20がトイレ本体部2の側端部25,26と略平行に配置されているので、トイレ本体部2の側端部25,26と略平行に配置された側縁43,44を有する便座4を、肘掛け20や肘掛けを支える支柱200に隣接して配置しているが、便座4の回動時、便座4が肘掛け20や肘掛けを支える支柱200と干渉することがなく、そしてその結果、左右肘掛け20の間で、便座4の座面を最大限に大きな大きさとすることができる。
もし、便座4の側縁43,44をトイレ本体部2の側端部25,26に対して略平行に配置せず、例えば「ハの字状」に配置すると、便座4の座面41,42を必要且つ十分な大きさとした場合、便座4の幅が最大となる部分は肘掛け20や肘掛けを支える支柱200と干渉することとなる。逆に、便座4の幅が最大となる部分を肘掛け20や肘掛けを支える支柱200と干渉しない大きさとした場合、許容される左右肘掛け20間の最大距離は決まっているので便座4の外形幅は相対的に小さくなり、その結果、便座4の座面41,42を必要且つ十分な大きさとすることができなくなる。
また、本実施形態のポータブルトイレ1は、ポータブルトイレ1の上面部28で肘掛け20及び該肘掛けを下方から支持する支柱200を支えており、そして略方形の外形を有する便座4の前側の両端部(コーナー部分)は、肘掛けの支柱200より前方に配置されている。なお、ここで便座4の「端部」とは、便座4の長手方向に延びた側縁43,44が、便座4の幅方向に延びた前縁45へ実質的に方向変換するコーナー部分を意味し、該コーナー部分は角部のみならず、Rの付いた隅部であってもよい。
本実施形態では、便座4の前側の両端部430,440を肘掛けの支柱200より前方に配置しているので、トイレ本体部2の前端部27の形状を便座4の前縁45と略同一形状とした上で、肘掛けの支柱200を取り付けるスペースをトイレ本体部2に確保することができる。このため、便座4に着座した使用者は、自己の両脚を、特に外側へ向けて自由に移動することができるようになる。
図11には、図10に示されている便座4であって、第1の側縁43及び第2の側縁44と直交するA−A断面からD−D断面までの断面図と、便座4の正面図が示されている。
本実施形態のポータブルトイレ1で使用される便座4は、開口部40を挟んで第1の座面41と第2の座面42を有している(図9,10参照)。そして、図11に示されているように、第1の側縁43の接線と直交する断面において略直線状に表れる第1の座面41は、水平面に対し開口部40へ向けて下方へ傾斜する第1の座面41の傾斜角度αが便座4の後部から前部へ向かうにつれて連続的に増加し、そしてその後連続的に減少して略水平となるように形成されている。また、第2の側縁44の接線と直交する断面において略直線状に表れる第2の座面42は、水平面に対し開口部40へ向けて下方へ傾斜する第2の座面42の傾斜角度αが便座4の後部から前部へ向かうにつれて連続的に増加し、そしてその後連続的に減少して略水平となるように形成されている。
すなわち、第1及び第2の座面41,42の傾斜は、いずれも便座4の後部から前部へ向かうにつれて開口部40へ向けて連続的にきつくなり、その後連続的に緩やかとなり、そして便座4の前縁45付近において略水平となる。なお、ここで座面41,42の「傾斜角度」とは、側縁43,44の接線と直交する断面において略直線状に表れる座面41,42の代表的な勾配を示す線分の水平面に対する角度を意味している(図11)。
そのため、第1及び第2の座面41,42は、使用者が便座4に着座した時、該使用者の臀部を便座4の開口部40の中へ落とし込むように誘導する。その結果、第1及び第2の座面41,42は使用者の臀部の皮膚を座面41,42に対し相対的に持ち上げ、使用者の肛門を開かせるので、使用者の排泄を容易にするという効果を奏する。なお、便座4の断面において略直線状に表れる座面41,42は、座面41,42の傾斜によって落し込み効果が得られるものであれば、必ずしも便座4の断面が直線で表れる平面のみで構成されている必要はなく、図11(d)に示されるように、多少下方へ窪んだ曲面を含んだものであってもよい。
また、本実施形態では、第1の座面41の傾斜角度αは、第1の側縁43の接線と直交し且つ開口部40の幅が最大となる寸法線401(図11)を通過する便座断面において最大となっている。また、第2の座面42の傾斜角度αは、第2の側縁44の接線と直交し且つ開口部40の幅が最大となる寸法線401(図11)を通過する便座断面において最大となっている。
第1の座面41の傾斜角度αと第2の座面42の傾斜角度αが、便座4の開口部40の幅が最大となる位置において最大となるようにすると、使用者が本発明の便座4に着座した時、使用者の肛門は、第1及び第2の座面41,42によって便座4の開口部40の幅が最大となる寸法線401の中点付近に誘導されるので、使用者の排便は便座4の下方に設置されたバケツ6の中の所定の位置に落下させることが可能となる(図1参照)。そのため、第1及び第2の座面41,42の傾斜は、使用者の排便がバケツ6の周囲へ飛散したり又は付着するのを防止すると共に、使用者の排便を、所定の深さでバケツ6の中に貯蔵されている水中に確実に埋没させるので、便の露出による異臭の発生を防止することができる。
なお、第1の座面41の傾斜角度αと第2の座面42の傾斜角度αは、便座4の開口部40の幅が最大となる位置の付近において最大であれば、使用者の肛門を、便座4の開口部40の幅が最大となる寸法線401の中点付近に誘導することができるので、第1の座面41の傾斜角度αと第2の座面42の傾斜角度αは、厳密な意味において便座4の開口部40の幅が最大となる位置において最大とならなければならないものではない。
1・・・・・ポータブルトイレ
2・・・・・トイレ本体部
20・・・・肘掛け
200・・・支柱
21・・・・背もたれ
22・・・・脚部
23・・・・箱部
230・・・開口縁
231・・・前面部
24・・・・枠部
25・・・・第1の側端部
250・・・第1のトイレ本体端部
26・・・・第2の側端部
260・・・第2のトイレ本体端部
27・・・・トイレ本体前端部
270・・・トイレ本体突出部
271・・・第1の変曲点
272・・・第2の変曲点
273・・・曲線部
274・・・第1の湾曲部
275・・・第2の湾曲部
276・・・第3の湾曲部
28・・・・上面部
3・・・・・受け部
30・・・・第1の開口部
31・・・・縁壁
32・・・・溝部
4・・・・・便座
40・・・・第2の開口部
400・・・先端部
401・・・最大開口幅の寸法線
41・・・・第1の座面
42・・・・第2の座面
43・・・・第1の側縁
430・・・第1の端部
44・・・・第2の側縁
440・・・第2の端部
45・・・・前縁
450・・・突出部
5・・・・・蓋部
6・・・・・バケツ
7・・・・・補助蓋

Claims (15)

  1. 縁壁によって区画された第1の開口部を有する上面部を備えたトイレ本体部と、
    周囲が閉じた第2の開口部を有しており、且つ前記上面部へ回動自在に取り付けられた便座と
    を備えており、そして
    前記トイレ本体部の前記上面部は、前記便座を前記トイレ本体部の前記上面部に載置した状態において、
    前記上面部の外側で、前記便座の前記第2の開口部の先端部より後方に位置する第1のトイレ本体端部から前記上面部の後部まで略直線状に延びた第1の側端部と、
    前記第1の側端部の反対側で且つ前記上面部の外側で、前記便座の前記第2の開口部の先端部より後方に位置する第2のトイレ本体端部から前記上面部の後部まで略直線状に延びた第2の側端部と、そして
    前記便座の前記第2の開口部の前記先端部より前方に位置するトイレ本体突出部を経由して、前記第1のトイレ本体端部から前記第2のトイレ本体端部まで延びたトイレ本体前端部とを備えている
    ことを特徴とするポータブルトイレ。
  2. 前記便座は、前記便座を前記トイレ本体部の前記上面部に載置した時、前記上面部の前記トイレ本体前端部と略並行に配置される前縁を備えていることを特徴とする請求項1に記載のポータブルトイレ。
  3. 前記トイレ本体前端部は、前記第1のトイレ本体端部と前記トイレ本体突出部の間に第1の変曲点を有し、そして前記第2のトイレ本体端部から前記トイレ本体突出部までの間に第2の変曲点を有している曲線部を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のポータブルトイレ。
  4. 前記曲線部は、
    前記第1のトイレ本体端部と前記第1の変曲点の間で前記トイレ本体部の後方へ向けて凸に湾曲した第1の湾曲部と、
    前記第2のトイレ本体端部と前記第2の変曲点の間で前記トイレ本体部の後方へ向けて凸に湾曲した第2の湾曲部と、そして
    前記第1の変曲点と第2の変曲点の間で前記トイレ本体部の前方へ向けて凸に湾曲した第3の湾曲部と
    を含んでいることを特徴とする請求項3に記載のポータブルトイレ。
  5. 前記トイレ本体部は、前記上面部の前記トイレ本体前端部から前記トイレ本体部の下方へ且つ後方へ向けて傾斜している前面部をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  6. 前記トイレ本体部は、
    前記上面部と、そして
    上部が開口しており且つ前記上面部と接続される箱部とへ分割されている
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  7. 前記箱部の外面は、前記上面部の外面と面一に接続されることを特徴とする請求項6に記載のポータブルトイレ。
  8. 前記上面部は、枠部と、前記第1の開口部を有しており且つ前記枠部の内側で、前記枠部に着脱自在に装着される受け部とへ分割されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  9. 前記便座は、前記便座を前記トイレ本体部の前記上面部に載置した時、
    前記上面部の前記第1の側端部と略平行に配置される第1の側縁と、そして
    前記上面部の前記第2の側端部と略平行に配置される第2の側縁とを備えている
    ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  10. 前記便座は、
    前記第1の側縁の接線と直交する断面において略直線状に表れる第1の座面であって、水平面に対し、前記開口部へ向けて下方へ傾斜する前記第1の座面の傾斜角度が、前記便座の後部から前部へ向かうにつれて連続的に増加し、そしてその後連続的に減少して略水平となるように形成された前記第1の座面と、そして
    前記第2の側縁の接線と直交する断面において略直線状に表れる第2の座面であって、水平面に対し、前記開口部へ向けて下方へ傾斜する前記第2の座面の傾斜角度が、前記便座の後部から前部へ向かうにつれて連続的に増加し、そしてその後連続的に減少して略水平となるように形成された前記第2の座面とを備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載の便座。
  11. 前記第1の座面の前記傾斜角度は、前記第1の側縁の接線と直交し且つ前記便座の前記第2の開口部の幅が最大となる寸法線を通過する前記便座断面において最大となり、そして
    前記第2の座面の前記傾斜角度は、前記第2の側縁の接線と直交し且つ前記便座の前記開口部の幅が最大となる寸法線を通過する前記便座断面において最大となる
    ことを特徴とする請求項10に記載のポータブルトイレ。
  12. 前記トイレ本体部の前記上面部の前記縁壁を介して前記第1の開口部の中に着脱自在に装着されるバケツをさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  13. 前記トイレ本体部の前記上面部の前記第1の側端部は、前記第2の側端部と略平行に配置されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  14. 前記トイレ本体部の前記上面部および前記箱部は、いずれも樹脂製の一体成形品であることを特徴とする特徴とする請求項6ないし13のいずれかに記載のポータブルトイレ。
  15. 前記ポータブルトイレは肘掛け及び前記肘掛けを下方から支持する支柱を備えており、前記便座の第1の端部と及び第2の端部は、前記肘掛けの前記支柱より前方に配置されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のポータブルトイレ。
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