本発明は、手持ち電動工具の位置を決定するための方法及びシステムに関する。
旧来、壁に対する手持ち電動工具の位置決めのためには、別個の計測コンポーネント又は装置が必要である。それらは、タキメータ、レーザローテータ、ラインレーザ、Leica Distoのような電子距離計又は単純なアナログ計量装置であることができる。それにもかかわらず、時間を節約するためには、職人が、別個の計測装置を要することなく、手持ち電動工具、たとえば電動ドリル、電動スクリュードライバ又は空気式ネイルガンを壁に対して位置決めすることができることが有利であろう。
室内又は建造物内では、工具を壁に対して位置決めする場合、通常、右左の壁までの距離又はスパンならびに床及び天井までの距離又はスパンを知るだけで十分である。通常の場合、たとえば部屋が立方体形であるとき、壁は長方形であり、隣接する壁、床及び天井はその壁に対して垂直である。この場合、上述の距離を知ることはまた、たとえば、壁の別個の位置における座標をゼロ化し、壁、床及び天井に対して平行な軸を有する系の中で相対座標を導出することにより、基準点に対して工具を位置決めするための局所座標系を確立することをも可能にする。
従来的には、この問題は、壁、床及び天井までの計測を同時並行に可能にする距離センサ、すなわち、垂直に取り付けられる距離センサを工具に取り付けることによって解決されるであろう。しかし、これは、オペレータが、センサが壁に対して正確に垂直に整合するようなやり方で工具を整合させることを強要する。計器の正しい水準をオペレータに示すバイアルのようなインジケータがないならば、システムが、鉛直線方向を自動的に検出し、距離センサを相応に整合させなければならない。
代替方法は、Nikonの光学屋内位置決めシステムiSite/iGPS又はLocataの疑似衛星ベースの位置決めシステムのような、位置決めのためのブロードキャスタを用いる解決手段であることができる。これらは、追加的な機器及び複雑な装備に依存するという欠点を抱えている。
工具に固定的に取り付けられ、回転しない装置によって工作方向に対して垂直な距離計測を記載する従来技術の文献がいくつかある。
EP1275470B1は、手持ち工具のための手動で案内される支持体及びこの支持体の位置を感知するための手段を記載している。
DE202004018003U1には、二つの方向、すなわち水平方向及び垂直方向の距離を計測し、それによって壁に対する工具の位置を決定する、手持ち電動工具上に固定された位置決めシステムが開示されている。
EP1249291B1は、工具上に固定的に取り付けられている装置による、工作方向に対して垂直な距離計測を開示するだけでなく、重力方向を中心に揺れる距離計測によって床までの最短距離を決定して、その実測最小値が床までの最短距離を表す解決手段をも記載している。これは、走査範囲内で揺動する、非対称に分散した重量を有する自由に回転するセンサ又は偏向手段によって実現されている。EP1249291B1はまた、鉛直線方向を決定するための加速度センサの使用を開示している。
これらの文献に開示された解決手段はすべて、計測のためにはオペレータが工具を正確に整合させることを強要する、固定された距離計測センサを使用する。
EP1517117A1は、手持ち電動工具上に配置されるように設計されていない、手持ち計測機器の空間位置を決定するための方法及びシステムを開示している。このためには、走査レーザビームによって検出される少なくとも二つの基準点が必要である。これらの基準点と計器との間の角度及び距離を計測することにより、計器の実際の位置を演繹することができる。
したがって、本発明の目的は、電動ドリルのような電気駆動手工具のための改善された位置決めシステムであって、オペレータが工具を正確に整合させる、又は部屋の中に基準点を配置することを強要することなく、壁に対するその工具の位置を正確かつ確実に検出する位置決めシステムを提供することである。本発明のもう一つの目的は、部屋が非対称である場合、たとえば一つの隣接する壁及び床又は天井が存在しない、遮られている、平坦でない、傾いている、又は反射性である場合でも、位置の検出を可能にすることである。
この目的は、本発明の、請求項1記載の方法、請求項5記載の位置決めシステム及び請求項15記載の手持ち電動工具によって達成される。
位置決めシステムは、電気駆動手工具(以下、単に「工具」という)上に取り付けられる、又は取り付け可能であり、少なくとも270°、特に少なくとも360°又はその部分範囲のセクタ中の距離又は角度を計測することができる、計測センサモジュールを備えた少なくとも一つの距離計測装置と、最小値が、工作される壁に隣接する壁、床及び天井までの最短距離を表す離散関数を生成する計算・記憶ユニットとを含む。角度を計測する代わりに、距離のみを時系列として計測することも可能である。
計測センサモジュールは、レーザもしくは赤外線ビームを使用する旧来の電子距離計(EDM)であることもできるし、マルチターゲット波形デジタイザ(WFD)であることもできる。また、最短距離の決定のためにレーザファンを使用することもできる。この場合、角度情報は、マルチレシーバ構造によって、又は複数の帰還信号の波形解析によって演繹される。
少なくとも360°の角度の中で距離を計測するために、位置決めシステム又はそのパーツ(たとえば少なくとも一つの計測センサモジュール)は、工作することを望む壁に対して垂直な軸を中心に回転可能に工具に取り付けられることができる。電動ドリルの場合、壁に対して垂直な軸は穴あけ軸であろう。そして、計測センサは、たとえばレーザ距離計測装置の場合、高い周波数で計測ビームを送出することができるような方法で取り付けられる。すると、そのビームが、360°の回転により、穴あけ軸に対して垂直な平面、換言するならば、穴あけすることを望む壁に対して平行な面を画定する。これは、Leica Rugbyに類似したレーザローテータによって視覚的に生成することもできる。あるいはまた、少なくとも二つ、特に三つ又は四つの計測センサモジュールを、それらが一緒になって少なくとも360°の角度をカバーするようなやり方で、工具のボディ上に取り付けることもできる。
いずれの方法においても、計測された距離は、放出角又はタイムスタンプに対する離散関数を生成し、その最大値が隅を表し、その最小値が、壁、床及び天井までの最短距離を表す。よくある簡単な立方体形の部屋の場合、これらの最小値は常に、一つの軸が鉛直線方向に向く座標系を導くであろう。それにもかかわらず、オペレータが工具を異例なやり方で、たとえば、180°反転させて、すなわち、通常の姿勢とは反対に保持する、又は、特定の状況下、たとえば壁の縁のすぐ近くを穴あけする場合に任意に傾けて保持するならば、この軸を明白に特定することはできない。
したがって、各最小値を正しい壁に割り当てるために、電動ドリルがオペレータによってどのように保持されるかを確実に決定するために重力指示装置が追加される。すると、床を表す最小値を鉛直線の方向によって認識することができ、座標系は明白に配向される。この重力指示装置は、加速度計、たとえばST MicroelectronicsによるLIS203DL又は360°重心配向傾斜計もしくはチルトスイッチであることができる。重力指示装置は、回転レーザ距離計測装置の既定の角度基準に対して整合される。角度基準は、角度センサのゼロ点であることもできるし、単に、距離計測を発動させる時系列の初期点であることもできる。
回転するレーザビームを目に見えるようにすることは、工作される壁に対する工具の垂直位置決め、ひいてはその壁に対して平行な計測平面の整合を簡単にする。あるいはまた、バイアルを工具に取り付けて、オペレータが工具を整合させるのを支援することもできる。もう一つの代替態様において、計測モジュールは、機械的補助、たとえば、壁の上に配置されたとき工具を壁に対して垂直に整合させる少なくとも三つの点を有する嵌め込み可能なフレーム又は類似した構造物を含むことができる。
計測センサモジュール(あるいは距離計測装置全体又はそのパーツ、たとえばセンサ又はミラー、プリズムもしくは偏光要素)の回転は有限又は無限であることができる。有限の回転(たとえば400°の回転)は、コンタクトリングの代わりにケーブルを使用することが可能であるため、より容易な送電の実現の利点を有する。また、必要ならば、ファイバを介して距離計測ビーム光の伝送が可能である。無限回転の場合、エネルギーハーベスティングを組み込むことにより、非接触送電を実現することもできる。すなわち、ユニットは外部電源を要しない。これを実現する一つの方法は、ドリルを保持するチャックにいくつかの磁石を接続し、センサを有する回転装置上にコイルを配置することである。そのコイルからAC信号が得られ、それを使用して計測装置に給電する、又は蓄電要素を充電することができる。第二の方法は、同じ誘導的送電技術を使用する非接触直接駆動装置によって電力を供給する、又は蓄電装置を充電することである。
局所2D座標系の画定のためには、一つの壁、好ましくは床又は天井と一つの隅又は二つの垂直な壁、たとえば側壁と天井があれば十分であり、場合によっては、部屋のどの面が座標軸の向きを定めるのか、及びどの点がその軸の原点又は基準であるのかを選択することができる。これは、部屋が屋根を有しない場合又は壁の一つが不規則又は反射性である場合に有用である。窓又はガラス面は、レーザ距離計測問題、すなわち反対側壁の反射を生じさせるおそれがある。壁までの計測を混乱させ、ひいては最短距離又は局所座標系の導出を許さない不規則な壁又は空間構造物の場合、そのような不規則さを測定し、工具の位置を原点とする2D断面図として表示して、計測に使用される最小で二つ又は最大で四つの壁又は角度区分を後で画定する(自動的に又はユーザ入力を介して)こともできる。
また、穴あけすることを望む壁における小さな障害物、たとえば釘又ははしご又は取り付け具ならびに動的外乱、たとえば通り過ぎる人は、何らかのやり方で、回転EDMの処理される距離の離散関数の計算から除外されなければならない。平面又は直線情報からの有意な偏差のせいでこれらの障害物が妥当な外乱性物体として検出されると、ただちに警告が発されるか、又は、システムが表示装置を含む場合、計測オプションが提供される。
天井又は床への穴あけは、結果として、水平計測を要し、二つのさらなる問題を招く。第一に、鉛直線によって提供される基準向きは利用不可能であり、第二に、特に床は通常、壁よりも多くの障害物、たとえばオペレータの脚、家具、柱などをこうむる。
この場合、オペレータは、後続の位置決めのために一つの壁に対して平行に作業しなければならず、外乱を受けた方向に対して垂直な方向における追加的情報、たとえば引かれた線もしくはワイヤ又はレーザラインからの情報を使用することができる。
特に電動ドリルの場合、ほこりが電子距離計の光学要素にとって危険になることがあるため、工具はアスピレータを備えることができるか、又は、計測モードが工作モードから時間的に分かれているならば(電動ドリルの場合)、光学部品は、工作モード中のホームポジションにおいて、たとえばキャップによって機械的に保護される。
位置決めシステムのもう一つの可能な特徴が出願番号10192628.5の欧州特許出願に記載されている。そこでは、回転レーザを使用して、壁を前後に数°の角度で走査し、そのようにして壁上の多数の点までの距離を計測することにより、多数の垂直平面から、二つの平行な壁に対して垂直である他ならぬ平面を決定している。この「垂直走査」により、最短距離を見いだすことができる。したがって、その最短距離の方向において、その平面は側壁に対して垂直である。
本発明の位置決めシステムを備えた工具が壁に対して位置決めされるとき、重力感知装置又は円形バブルが、工具オペレータが工具を二つの軸、すなわち工作軸、すなわち縦軸及び工作軸に対して垂直な水平又はピッチ軸に沿って整合させるのに役立つことができる。この追加的な「垂直走査」機能は、第三の軸、すなわち工作軸に対して垂直な垂直又はヨー軸をも中心とする工具の正確な整合のためのオプションである。「垂直走査」は、本発明のシステムの場合には、工具が側壁又は両側壁に対して平行に整合されているかどうかを決定するために使用することができる。側壁(又は少なくとも一つの側壁)が、工作することを望む壁に対して垂直であることがわかっているとき、「垂直走査」は、工具が、工作することを望む壁に対して垂直に整合されているかどうかを決定するために使用することができる。このようにして、側壁までの距離が正しい方向で(側壁に正確に直交する方向で)計測されることを保証することができる。
本発明のシステムがこの特徴を備えているとき、「垂直走査」は以下のように実施される。工具を壁に対して位置決めし、二つの水平軸に沿って整合させたのち、オペレータは、工具を用いてわずかなヨー運動を実施しなければならない。すなわち、垂直軸を中心に左及び/又は右に工具をわずかに枢動させなければならない。これは、通常の計測中に実施することもできるし、計測そのものが実施される前に側壁だけが走査される特定の走査モード中に実施することもできる。あるいはまた、手動の枢動の代わりに側壁の区域の二次元走査を行う自動走査モードを用いることもできる。この自動走査モードの場合、工具のヨー運動を模倣するために垂直方向だけでなく水平方向にも特定の角度で旋回するように設計されているセンサモジュール又はエミッタ・レシーバ装置が提供されなければならない。
そして、システムは、手動の場合、計測された距離から、工具のどの向きにおいて壁までの距離が最短になるのかを決定する。自動旋回の場合、システムは、工作軸と側壁までの最短距離の方向との間の水平角を認識し、この角度から、どの向きにおいて工具が側壁に対して平行になるのかを演繹する。いずれの場合でも、オペレータは、出力手段を介して、壁に対する工具の正確に垂直な整合へと誘導される。したがって、側壁までの距離計測がより正確になるだけでなく、垂直走査はまた、より正確な垂直方向の工作を可能にし、それは、たとえば、壁の中に又は壁に貫通させて深い穴をあける場合に重要になり得る。
「垂直走査」機能は、上記実施態様のいずれにとっても追加的な特徴であることもできるし、又は、最短距離を決定するように設計されているため、独立したバージョンであることさえできる。「垂直走査」の概念はまた、床又は天井の方向における走査によって工具を水平方向に整合させるために、「水平走査」を含むように変更されることもできる。また、天井又は床を工作する場合に使用することもできる。
以下、図面を伴う例示的な実施態様を参照することによって本発明を詳細に説明する。
本発明の位置決めシステムの第一の実施態様の側面図及び正面図を示す。
本発明の位置決めシステムの第一の実施態様の側面図及び正面図を示す。
位置決めシステムの第一の実施態様を備えた手持ち電動工具の例としての電動ドリル及び計測ビームの回転によって生成された平面の模式図を示す。
位置決めシステムの第一の実施態様を備えた手持ち電動工具の例としての電動ドリル及び計測ビームの回転によって生成された平面の模式図を示す。
さらなる任意選択の特徴を備えた位置決めシステムの第一の実施態様の側面図を示す。
2D断面図を表示する、入力手段及びスピーカを備えた制御及び/又は表示ユニットの模式図を示す。
計測されたプロフィールを極座標で表す、位置決めシステムの第一の実施態様によって生成された様々な離散関数の形状を示す。
計測されたプロフィールを極座標で表す、位置決めシステムの第一の実施態様によって生成された様々な離散関数の形状を示す。
計測されたプロフィールを極座標で表す、位置決めシステムの第一の実施態様によって生成された様々な離散関数の形状を示す。
計測されたプロフィールを極座標で表す、位置決めシステムの第一の実施態様によって生成された様々な離散関数の形状を示す。
位置決めシステムの第一の実施態様を備えた手持ち電動工具の例としての電動ドリル及び放出された回転計測ビームによって生成された平面の正面図を示す。
位置決めシステムの第一の実施態様を備えた手持ち電動工具の例としての電動ドリル及び放出された回転計測ビームによって生成された平面の正面図を示す。
位置決めシステムの第一の実施態様を備えた手持ち電動工具の例としての電動ドリル及び放出された回転計測ビームによって生成された平面の正面図を示す。
本発明の位置決めシステムの第二の実施態様の側面図及び正面図を示す。
本発明の位置決めシステムの第二の実施態様の側面図及び正面図を示す。
本発明の位置決めシステムの第二の実施態様の側面図及び正面図を示す。
本発明の位置決めシステムの第三の実施態様の正面図を示す。
本発明の位置決めシステムの第三の実施態様の正面図を示す。
マルチエミッタ及びマルチレシーバを備えた、又は波形デジタイザ(WFD)を備えた位置決めシステムの第三の実施態様によって生成された離散関数の形状を示す。
側壁への走査を実施する「垂直走査」機能を備えた位置決めシステムの実施態様の模式図を示す。
側壁への走査を実施する「垂直走査」機能を備えた位置決めシステムの実施態様の模式図を示す。
「垂直走査」によって計測された例示的な数値をグラフ及び表で示す。
「垂直走査」によって計測された例示的な数値をグラフ及び表で示す。
位置決めシステムの実施態様ならびに「垂直走査」による工具の垂直軸及び平面を中心とする整合の模式図を示す。
データフローの模式図を示す。
手持ち電動工具1のための位置決めシステムが提供される。このシステムは、計測センサモジュール3を備えた距離計測装置2、鉛直線インジケータ13、計算・記憶ユニット4及び計算された絶対もしくは相対距離又は局所座標を2D断面図19として表示するための表示ユニット18を含む。
図1a及び1bは、計測センサモジュール3が、計測ビーム5を高い周波数で送出し、工作軸8を中心に回転可能にすることができるようなやり方で距離計測装置2に取り付けられている位置決めシステムの第一の実施態様の模式図を示す。そして、ビーム5は、360°の回転により、工作軸8に対して垂直な、すなわち穴あけすることを望む壁22に対して平行な平面9を画定する。距離は、計測ビームの完全な一回転ののち初期発動が与えられる規則的な時間間隔で記録される。回転6の速度が一定であるという仮定の下、これらの時間間隔は、明確に画定された角度に対応する。あるいはまた、距離に対応する角度を別個の角度センサによって計測することもできる。最後に、距離対角度のシーケンスが環境の2D断面プロフィールを構築するか、あるいはまた、二つの極座標を離散関数として表すことができる(図5a〜5dに示すように)。
この作動原理が図2a及び2bに示されている。これらの図は、本発明の位置決めシステムの第一の実施態様を備えた手持ち工作工具1の例として電動ドリルを示す。放出された回転計測ビーム5が、穴あけ軸8に対して垂直であり、壁22に対して平行である平面9を画定して、平面9の縁10までの距離11を計測する。計測された最大値は隅を表し、最小値11a’〜11d’は壁、床及び天井までの最短距離11a〜11dを表す。
回転計測ビーム5によって画定される平面9は、工具オペレータが工具1を壁22に対してほぼ垂直に位置決めすることを可能にするために、レーザローテータによって目に見えるようにすることができる。目に見えるレーザ平面のための代替が図3に示されている。また、円形バブル14又は嵌め込み可能なフレーム15(嵌め込み可能なフレーム15は、少なくとも三つの点17を前端に有する。)が、オペレータが工具1を整合させることに役立つことができる。また、計測センサモジュール3の光学部品をほこりから保護するために、保護キャップ16又はアスピレータを提供することもできる。
図4は、局所座標系におけるプラニング及び/又は計測データから導出された2D断面図19を表示し、壁22の上の工具の位置23を指示する、入力手段20及びスピーカ21を含む制御・表示ユニット18の模式図である。制御・表示ユニット18の入力手段20は、局所的に画定された座標系の基準点23’(たとえばゼロ点)を設定すること、又はたとえば部屋の隅を基準にして、床、天井又は壁の一つからの計測値を容易に導出することができるようなやり方で画定された座標軸を用いて計測平面9中に任意座標系を画定することを可能にする。入力手段20はまた、線もしくはグリッド値のような設計データ又は後で工作される不規則な「仕切り」点を入力することを可能にする。そして、工具オペレータは、方向及び距離計測値を表示ユニット18上に指示することにより、これらの点に誘導される。
場合によっては、入力手段は、タッチスクリーン、USBインターフェース又はワイヤレスリンクであることができる。構成され、事前にロードされた、座標系を含む設計データの場合、その設計データは、「仕切られた」単独の点又はプロフィール又はそれらの両方からなることができる。一つの用途においては、設計寸法と実寸との間の差を見るために、計測された距離シーケンスを、事前にロードされた設計といっしょに表示することができる。電動工具の局所座標系と設計データの局所座標系との整合は、ヘルマート変換によって達成することができる。
計測された距離は計算・記憶ユニット4によって離散関数11’に変換され、その最大値が隅を表し、その最小値11a’〜11d’が壁、床及び天井までの最短距離11a〜11dを表す。可能な離散関数11’の形状の例が図5a〜5dに示されている。図5aは、工具が長さ5m、高さ5mの正方形の壁の中心に配置されたときに生成された離散関数11’の形状を示し、図5bは、工具が長さ5m、高さ2.5mの長方形の壁の中心に配置されたときのその形状を示す。
床までの最短距離11bを表す最小値11b’は、鉛直線12を指示する重力感知装置13によって認識することができ、この重力感知装置は、回転計測センサモジュール3の既定の角度基準又は発動点に対して校正されている。そして、他の最小値11a’、11c’、11d’が、回転6が右回りであるのか左回りであるのかに依存して、壁及び天井までの対応する距離11a、11c、11dに割り当てられる。これは図5c及び5dに示されている。前者は、工具が長さ5m、高さ2.5mの長方形の壁に偏心的に配置されたときに生成された離散関数11’の形状を示す。後者は、工具が長さ5m、高さ2.5mの長方形の壁の隅の近くに非常に偏心的に配置されたときのその形状を示す。いずれの場合でも、鉛直線12が最小値11b’を画定し、この最小値が床までの最短距離11bを表す。したがって、左回りに回転させた場合、各グラフ中、左から二番目の最小値11c’が右の壁までの最短距離11cを表し、三番目の最小値11d’が天井までの最短距離11dを表し、四番目の最小値11a’が左の壁までの最短距離11aを表す。
壁までの計測を混乱させ、それによって最短距離11a〜11d又は局所座標系の導出を許さない不規則な壁又は特殊な構造物の場合、そのような不規則さを測定し、工具の位置23を原点とする2D断面図19として表示して、計測に使用される最小で二つかつ最大で四つの区域を後で画定する(自動的に又は入力手段20を使用して)。また、穴あけすることを望む壁における小さな障害物24、たとえば釘又ははしご又は取り付け具ならびに動的外乱、たとえば通り過ぎる人は、平面又は直線情報からの有意な偏差として検出される。妥当な外乱性物体24の場合、警告が発され、計測オプションが表示装置18上に提供される。
これらの場合、信頼性を高めるために、重力感知装置13の鉛直線12を、角度エンコーダ又は部屋のレイアウトの知識もしくはたとえばミニスキャナによって事前に記録された点群の形態にあるすでに生成されたデータと組み合わせて使用することもできる。
前者の解決手段は、鉛直線12の十分に正確な決定のための重力感知装置13と角度エンコーダとの併用を含む。この場合、0°、90°、180°及び270°の角度又はこれらの角度を中心として数°のセグメント、たとえば1°〜5°のセグメントでのみ距離11を直接計測する。これが図6aに示されている。
後者の解決手段は、たとえばレーザスキャナによってデジタル化されている部屋の場合に使用することができる。
また、部屋のレイアウトが規則的、たとえば立方体であることがわかっているならば、より簡単な方法が可能である。この場合、計測された距離11の変化は余弦関数をたどるであろう。そして、距離計測値の各角度αを評価するための直径距離を使用することによって、すなわち、角度αで計測された距離とα+180°で計測された相補的距離とを合わせることによって冗長性が加えられる。これが図6bに示されている。
しかし、局所2D座標系の画定の場合、二つの垂直な壁があれば十分である。したがって、入力手段20を使用して、オペレータは、座標の決定において壁、床又は天井の一つ以上を省くことを選択することができる。これは、部屋が屋根を有さない場合又は壁の一つが不規則又は反射性である場合に有用であるかもしれない。図6cは、工作される壁22の正面にある、距離計測装置2を備えた電動ドリル1を示す。障害物24、たとえば家具及び窓25が、障害物24は床までの最短距離11bの計測を遮り、窓25は計測ビームを反射することにより、それぞれ一つの方向における計測を妨害する。したがって、計測は、他二つの方向だけで実施される。
距離計測装置2又はそのパーツの回転6は、手動で実施することもできるし、モータによって駆動することもできる。このモータは、穴あけから独立した計測を可能にし、工具1をより安定かつ非振動性に維持するために、好ましくは、工具1のモータ、たとえばドリルモータから切り離されているべきである。ドリルモータを使用する場合、速度を距離計測に最適な速度又は特定の速度モードに適合させるためのギヤが設けられるべきである。全体として軸8を中心に回転するEDMモジュールの場合、運動は、リングピエゾ駆動装置、直結駆動装置又は他の中空コア軸モータによって実現される。計測距離及び座標の計算においては回転軸に対するオフセットを考慮しなければならない。このようなモジュールは、今日、30又は50mまでの距離をミリメートル範囲の精度で計測する能力を有しながらも、すでに30×10×15mm以下のサイズにまで小型化されることができる。
距離計測装置2は、工具1の中に固定的に組み込まれることもできるし、それに対して嵌め込み可能であることもできる。後者の場合及び電動ドリルの場合、計測装置2は、ドリルチャックの周囲に配置されることもできる。ドリルをチャックの中に装着したのち、同心的な計測アダプタをその上に嵌め込み、ドリルを交換する必要がない限り、それを穴あけ機能と並行に使用する。
計測モジュール又はむしろその光学部品は電動ドリルのような工作工具の軸を中心に回転することができないため、ドリラ及びドリルチャックがある。それは、同心リング上、この軸を中心に一定の距離で回転しなければならない、又は偏心的に配置されなければならない。
後者の場合のいくつかの実施態様が図7及び8に示されている。不都合なことに、ここでは、ドリラ又はドリルチャックは回転ビーム5にとって障害物である。この問題は、二つ以上の固定された偏心計測センサモジュール3’によって解決され、各モジュールが回転偏向要素を有し、この回転偏向要素が、少なくとも360°を、それらのモジュール3’の数の角度に分割してカバーする。二つのモジュール3’の場合、それぞれ一つが少なくとも180°の角度をカバーし、三つのモジュールの場合、それぞれ一つが少なくとも120°の角度をカバーする。これらの要素は、ドリルチャック又は工具1のハウジングの任意の部分の上下又は左右に固定される。図7a〜cは、工作工具1のボディに固定された三つ又は二つの計測センサモジュール3’を含む位置決めシステムの実施態様を示す。この場合、回転6、揺動7又はファンレーザによって変調又はパルス化された計測ビーム5を送出することができる。
図8aは、回転6又は揺動7なしで、かつ工具1を壁22に対して正確に垂直に保持することなく、変調されたレーザファン5’を使用して四方向の距離11を標的化する四つの固定的に取り付けられた計測センサモジュール3''を含む本発明のさらなる実施態様を示す。角度分解能は、構造化されたレシーバによって達成することができる。たとえば、数°程度の間隔のフォトダイオードアレイを使用することができる。各フォトダイオードの受信されたレーザ信号は、距離評価に備えてマルチプレクサによってEDM電子部品に伝送される。角度分解能は各フォトダイオードのアドレスによって画定される。したがって、この機械的に静的な構造を用いると、部屋の壁及び面の動的に記録されたプロフィールをも容易に捕らえることができる。
あるいはまた、四つのレーザファンの代わりに、工作工具1のボディの周囲に配置された複数のエミッタ・レシーバ装置3'''を含むバージョンが可能である。これが図8bに示されている。これは、LED又はレーザダイオードをエミッタとして使用し、及び少なくとも三つの広角レシーバ又はマルチレシーバ構造を使用する。別々のエミッタ・レシーバ装置3'''の計測は、並行に実施することもできるし、順次に実施することもできる。後者の場合、発動又はタイミングはエミッタ側で管理される。エミッタが一つずつアクティブ化されて距離を計測する。この場合、電動工具の周囲のすべてのエミッタを段階的に作動させることによって電子的に「仮想回転」6’が実施される。
EDMがWFD原理に基づくならば、センサモジュール3''は複数のレシーバを要しない。表面に線を投射するパルス化レーザファンは広角レシーバの中へと反射される。壁及び障害物からの光反響は一時的に重複し、WFDレンジファインダの電子レシーバの中に幅広の信号パルスを生成する。この実施態様によって生成される信号の例が図9に示されている。受信される信号は、必ずしもではないが通常、反射物体の面が送られた信号に対して垂直である場合に最強になる。しかし、最も近い面までのスパンは一番左の曲線26に対応する。図示するケースの場合、これらの物体は、壁22に隣接する側壁、床及び天井であり、一番左の曲線26は、対応する角度セクタ内の最短距離11a〜11dを表し、一番右の曲線27は最も遠い隅を表す。
図10aは、垂直走査機能をさらに含む本発明の位置決めシステムの第一の実施態様の図を示す。壁22に対して垂直な壁の一方又は両方において垂直走査を実施する場合には二つの選択肢がある。第一の選択肢において、工具オペレータは、垂直軸28を中心にわずかに工具1を手で枢動させなければならない。すると、枢動中、計測センサモジュール3が、側壁上の多数の線分29、30上の多数の点までの距離31、32、33を計測する。第二の選択肢は、計測センサモジュール3が側壁までの二次元走査を実施して、それによって垂直軸28を中心とする工具1の枢動を模倣する特殊な走査モードを含む。また、このモードにおいて、計測センサモジュール3は、側壁の少なくとも一つ上の多数の線分29、30上の多数の点までの距離31、32、33を計測する。
図10bは、そこまでの距離31、32、33が計測される例示的な点を有するいくつかの例示的な線分29、30及びそれらの線分29、30までの最短距離31、32を示す。これらの最短距離31、32はすべて水平線34上の点で計測される。通常の場合、すべての計測距離31、32、33の最短距離31は通常、その壁までの最短距離11a、11cと一致する。したがって、最短距離31を有する線分30は、工作される壁22に対して平行である、距離計測のための正しい平面9の縁10に位置する。
図11aは、五つの線分29、30に関して様々な角度γで計測された最短距離31、32を表す可能な値31’、32’の例を有するグラフを示す。このとき、0°が出力角、すなわち、走査開始時の工作軸8と側壁との間の角度である。図11bはそれらの数値を表形式で示す。最低値31’(この例においては−4°の角度γにおける3000.0mmの距離)は、最も近い線分30上の点までの最短距離31、したがって側壁までの最短距離11a、11cを表す。線分29、30の数は五に限定される必要はない。
図12は、壁22に対して平行ではない平面9’の、壁22に対して平行である、計測のための正しい平面9までの枢動を示す。オペレータは、工具1の正しい整合又は工作軸8と側壁上の最も近い線分30上の点までの最短距離31の方向との間の角度βを指示する出力手段、特にラウドスピーカ21により、最小計測値31’(この例においては、−4°の角度における3000.0mmの値)の対応する角度γへと誘導される。この角度βが90°であるならば、工具1は側壁に対して平行に整合している。
図13は、位置決めシステム中のデータフローの模式図を示す。距離計測モジュール2及び計測センサ3は計算・記憶ユニット4によって制御される。このユニット4は、距離計測のためにエミッタ及び/又はレシーバを発動し、重力感知装置13によって与えられる任意の向きを含む角度関連同期化を管理する。よりモジュラーなシステムの場合、リアルタイムオペレーティングシステムが計算・記憶ユニット4に常駐するが、データアプリケーションタスクは、表示ユニット18及び入力手段20を含むヒューマンインタフェースモジュール上で計算される。このモジュールは、計測タスクを開始し、データインタフェーシング、データ処理及びグラフィカル表示、たとえば2Dビュー19又は表面プロフィールを取り扱う。
位置決めシステムのすべてのコンポーネントは、工具1に取り付けられた状態、たとえば工具1の中に固定的に組み込まれた状態で提供されることもできるし、解放された状態で、たとえば嵌め込み可能なアップグレードキットとして提供されることもできる。アップグレードキットは、位置決めシステムのすべての必要なコンポーネントを含むことができ、事前に設置された位置決めシステムなしで工具1に嵌め込むことができる。あるいはまた、さらなる特徴を提供するために、任意選択のコンポーネントのみを含み、本発明の位置決めシステムを組み込まれた工具1に嵌め込まれることもできる。嵌め込み可能なコンポーネントは、好ましくは、たとえばクイックリリース手段によって解放可能に工具1に取り付け可能であるように設計されることができる。
いくつかの好ましい実施態様を部分的に参照しながら本発明を説明したが、実施態様の様々な特徴の数多くの変形及び組み合わせを達成することができることが理解されよう。そのような変形はすべて特許請求の範囲に入る。