JP2014237296A - 機能性ユニットの製造方法、機能性母基板および機能性ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の機能性ユニットを精密かつ効率的に製造する。
【解決手段】複数の機能性溝と、前記機能性溝に挟まれる位置に配設されて前記機能性溝を有する部分よりも脆弱である被分割部と、を備えたセラミックス前駆体を有する基板前駆体を形成する前駆体形成工程と、前記基板前駆体を焼成して機能性母基板を形成する焼成工程と、前記被分割部において前記機能性母基板を分割して複数の機能性ユニットとする分割工程と、を含む機能性ユニットの製造方法。
【選択図】図6

Description

本発明は、機能性ユニットの製造方法、機能性母基板および機能性ユニットに関する。
チップ領域の縁を通る切断線に沿ってセラミックスシートを切断し、複数のアクチュエーターユニットを得る切断工程を有する記録ヘッドの製造方法が知られている(特許文献1,2参照)。
特開2003‐341076号公報 特開2004‐96071号公報
一つのセラミックス焼成体から複数個の機能性ユニットを切り出す際に、切り出しの精度や効率が悪いと、製品の製造コストの抑制や歩留まり向上を図ることができない。
本発明は少なくとも上述の課題を解決するためになされたものであり、複数の機能性ユニットを精密かつ効率的に製造することが可能な機能性ユニットの製造方法や機能性母基板、さらには、そのように製造される機能性ユニットを提供する。
本発明の態様の一つは、機能性ユニットの製造方法は、複数の機能性溝と、前記機能性溝に挟まれる位置に配設されて前記機能性溝を有する部分よりも脆弱である被分割部と、を備えたセラミックス前駆体を有する基板前駆体を形成する前駆体形成工程と、前記基板前駆体を焼成して機能性母基板を形成する焼成工程と、前記被分割部において前記機能性母基板を分割して複数の機能性ユニットとする分割工程と、を含む。
当該構成によれば、基板前駆体は、機能性溝に挟まれる位置に、機能性溝を有する部分よりも脆弱である被分割部を有する。そして、基板前駆体を焼成して機能性母基板を形成した後、被分割部において機能性母基板を分割することで、それぞれに機能性溝を有する複数の機能性ユニットが得られる。このため、各機能性ユニットを機能性母基板から効率的かつ精度良く切り出すことができ、製品の製造コストの抑制や歩留まり向上に繋がる。
本発明の態様の一つは、前記焼成工程の前後における前記被分割部の変形割合は、前記焼成工程の前後における前記機能性溝を有する部分の変形割合よりも大きい。
被分割部は、基板前駆体の他の部分と比較して脆弱である分、基板前駆体の焼成時に発生する素材の収縮の影響を受けて変形しやすい。言い換えると、被分割部が基板前駆体の焼成時に他の部分よりも大きく変形し易いことで、他の部分(機能性溝を有する部分)が大きく変形することが抑制され、寸法ずれや反りの少ない優れた製品(機能性ユニット)が得られる。
本発明の態様の一つは、前記被分割部は、前記機能性溝よりも底が薄い構成としてもよい。あるいは、前記被分割部は、一定あるいは不定の間隔で並ぶ貫通孔を有する構成としてもよい。
このように、被分割部が、機能性溝よりも底が薄い構成や一定あるいは不定の間隔で並ぶ貫通孔を有する構成を採用することで、上記脆弱である状態が具体的に実現され、分割工程における機能性母基板の容易かつ正確な分割が実現される。
本発明にかかる技術的思想は機能性ユニットの製造方法という形態のみで実現されるものではない。例えば、当該製造方法の過程で存在する物(例えば、被分割部を含む基板)を一つの発明と捉えることも可能である。
一例として、複数の機能性溝を備えた機能性ユニットがチップ領域毎に区分けした状態で複数設けられたセラミックス焼成物を有して構成された機能性母基板において、所定のチップ領域に設けられた機能性ユニットと、前記所定のチップ領域の隣のチップ領域に設けられた機能性ユニットと、の間には、前記機能性溝が備えられた部分よりも脆弱である被分割部が備えられている構成を把握することができる。
また、当該製造方法によって製造された機能性ユニットとして、複数の機能性溝を備え、セラミックス焼成物を有して構成された機能性ユニットにおいて、前記機能性ユニットの端面の少なくとも一部には、該端面から外方に向けて突出する突起が設けられている構成を把握することができる。
また、前記機能性ユニットを含む液体噴射ヘッドや液体噴射装置も、それぞれ発明として捉えることが可能である。さらには、これら液体噴射ヘッドや液体噴射装置を製造する製造方法の発明を捉えることも可能である。
液体噴射ヘッドの構成を模式的に例示する分解斜視図。 (a)は図1のA1‐A1の位置における液体噴射ヘッドの断面図、(b)は図1のA2‐A2の位置における液体噴射ヘッドの断面図。 液体噴射ヘッドの製造方法における各工程を例示する図。 液体噴射ヘッドの製造方法の一部の工程に対応する状態を例示する断面図。 流路基板あるいは流路基板前駆体の平面図。 図5のA3‐A3の位置における断面図。 図6に対応する、焼成工程前後の流路基板前駆体および流路基板を例示する断面図。 (a)、(b)はそれぞれ被分割部の異なる例を示す断面図。 図8(a)に対応する、焼成工程前後の流路基板前駆体および流路基板を例示する断面図。 図8(b)に対応する、焼成工程前後の流路基板前駆体および流路基板を例示する断面図。 被分割部の他の例を示す断面図。 被分割部の他の例を示す断面斜視図。 流路ユニットの端面の例を示す斜視図。 流路ユニットの端面の他の例を示す斜視図。 インクジェットプリンターの一例を示す概略図。
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
1.流路ユニット及び液体噴射ヘッドの概要の例示
図1は、流路ユニットU0を含む液体噴射ヘッド1の構成の概略を例示している。
図2(a)は、液体噴射ヘッド1を、図1のA1‐A1の位置での断面図により示している。
図2(b)は、液体噴射ヘッド1を、図1のA2−A2の位置での断面図により示している。
流路ユニットU0は、本発明にかかる機能性ユニットの一例である。機能性ユニットとは、流路ユニットU0や、流路ユニットU0の少なくとも一部と同等の構成を備えた各種デバイスについての総称である。機能性ユニットは、アクチュエーターユニットと呼ぶこともできる。
上述した図中、符号D1は流路ユニットU0の厚み方向を示している。符号D3は、流路ユニットU0の長手方向を示し、符号D4は、流路ユニットU0の短手方向を示している。各方向D1,D3,D4は、互いに直交するものとするが、互いに交わっていれば直交していなくてもよい。分かり易く示すため、各方向D1,D3,D4の拡大率は異なることがあり、圧電素子3の面積率も異なることがあり、各図は整合していないことがある。
本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、圧力室の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に振動板が配置されることも、本発明に含まれる。また、方向や位置等の同一、直交、等は、厳密な同一、直交、等のみを意味するのではなく、製造時等に生じる誤差も含む意味である。更に、接すること、及び、接合することは、間に接着剤等の介在するものが有ることと、間に介在するものが無いこととの両方を含む。
図1に例示する液体噴射ヘッド1は、符号10,20,30の各部を有する流路ユニットU0と、圧力室21に連通するノズル62と、を備え、インク(液体)を噴射(吐出)するインクジェット式記録ヘッドである。図15に例示する液体噴射装置200は、前述のような液体噴射ヘッドを搭載したインクジェットプリンター(記録装置)である。
振動板部10は、振動板11、圧電素子3、リード電極84、等を有する圧電アクチュエーターである。振動板部10は、駆動信号SG1に応じて変形して圧力室21内の液体に圧力を加える。
振動板11は、スペーサー部20の一方の面(表面20a)を封止する。振動板11の、スペーサー部20と接する裏面11bとは反対側の表面11aに圧電素子3、リード電極84、等が設けられている。振動板11の裏面11bは、圧力室21の壁面の一部を構成する。すなわち、圧力室21の壁の一部である振動板11は、圧電素子3により駆動信号SG1に応じた変形をする。
圧電素子3は、圧電体層82と、圧電体層82の圧力室21側に設けられた下電極(第一電極)81と、圧電体層82の他方側に設けられた上電極(第二電極)83とを有する圧力発生部である。図1に示す各圧電素子3は、各圧力室21に対応した位置にある。圧電素子3を駆動制御するための制御回路基板91は、例えば、上電極83に対してフレキシブル基板等といったケーブル類92を介して接続されて、駆動信号SG1が制御回路基板91から供給される。電極81,83の一方は、他の圧電素子を構成する電極と電気的に接続されて同一の電圧の電位が印加(電気信号が供給)される共通電極にされてもよい。上下電極の構成金属には、例えば、Pt(白金)、Au(金)、Ir(イリジウム)、Ti(チタン)、等の一種以上を用いることができる。圧電体層82には、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)といった強誘電体、非鉛系ペロブスカイト型酸化物といったペロブスカイト構造を有する材料等を用いることができる。リード電極84は、下電極81に接続されてもよいし、上電極83に接続されてもよい。
スペーサー部20には、厚み方向D1へ貫通した圧力室21が形成されている。このスペーサー部20が振動板11と接続部30とに挟まれることにより、圧力室21が流路ユニットU0の内部に設けられる。各圧力室21は、長手方向を流路ユニットU0の短手方向D4に沿って配置させた長尺状に形成され、流路ユニットU0の長手方向D3へ複数並べられている。圧力室21同士の間は、隔壁22とされる。圧力室21内の液体には、壁の一部である振動板11の変形により圧力が加わる。流路ユニットU0の長手方向D3へ並んだ圧力室21の列は、流路ユニットU0の短手方向D4へ複数並べられてもよい。
接続部30には、各圧力室21に連通する位置で厚み方向D1へ貫通した液体の供給孔31及び連通孔32が形成されている。すなわち、接続部30は、孔31,32を除いてスペーサー部20における表面20aとは反対側の他方の面(裏面20b)を封止する。各供給孔31は各圧力室21の長手方向(D4)の一端に対応する位置に設けられ、各連通孔32は各圧力室21の長手方向(D4)の他端に対応する位置に設けられている。孔31,32及び圧力室21は、流路ユニットU0の液体が通過する流路F1となる。本実施形態においては、流路F1のうち、少なくとも圧力室21は、特許請求の範囲における「機能性溝」に該当する。また、機能性溝は、単に「溝」と呼ぶこともでき、流路ユニットU0においては「流路溝」と呼ぶこともできる。
接続部30の裏面30bに接合される封止プレート40には、厚み方向D1へ貫通した液体の共通供給孔41、連通孔42、及び、リザーバー51への液体導入孔43(図2(a)参照)が形成されている。共通供給孔41は、長手方向を封止プレート40の長手方向D3に沿って配置させた長尺状に形成され、接続部30の複数の供給孔31に連通する位置に設けられている。各連通孔42は、接続部30の各連通孔32に連通する位置に設けられている。液体導入孔43は、流路ユニットU0に接しない位置に設けられている。封止プレートの裏面40bは、リザーバー51の壁面の一部を構成する。
リザーバープレート50には、厚み方向D1へ貫通したリザーバー51及び連通孔52が形成されている。リザーバー51は、共通供給孔41と液体導入孔43とに連通した共通液室(共通インク室)である。各連通孔52は、封止プレートの各連通孔42に連通する位置に設けられている。
ノズルプレート60には、各連通孔52に連通する位置で厚み方向D1へ貫通したノズル62が形成されている。ノズルプレート60の裏面は、ノズル62から液滴を噴射するノズル面60bとされる。図1に示すノズルプレート60は、各圧力室21に連通するノズル62が所定方向(D3)へ所定間隔(ノズルピッチP)で並べられたノズル列を有している。複数のノズル62は、いわゆる千鳥状に配置されてもよい。
液体噴射ヘッド1は、封止プレート40やリザーバープレート50を必ずしも備える必要は無い。例えば、封止プレート40が無い場合にはリザーバープレート50を流路ユニットU0へ接合することができ、リザーバープレート50も無い場合にはノズルプレート60を流路ユニットU0へ接合することができる。封止プレート40やリザーバープレート50を設けない場合は、これらプレートの機能を他のプレートに担わせる。また、液体噴射ヘッド1はいわゆるコンプライアンスプレート等の他のプレートを備えていてもよく、例えば、コンプライアンスプレートがリザーバープレート50とノズルプレート60との間に配置されてもよい。更に、上述したプレートのいずれかが複数のプレートで構成されてもよいし、逆に、複数のプレートの機能を一枚のプレートが備えるとしてもよい。
上述した液体噴射ヘッド1において、インク等の液体は、液体導入孔43から導入されてリザーバー51内を満たし、共通供給孔41及び個別の供給孔31を通って圧力室21内を満たす。制御回路基板91からの駆動電圧(駆動信号SG1)に応じて振動板11を圧力室21側へ撓ませるように圧電素子3が変形すると、それに応じて振動板11も変形する。振動板11の変形により圧力室21内の液体の圧力が高まり、連通孔32,42,52を介してノズル62から液滴が噴射される。
2.製造方法の例示
次に、図1,2とともに図3,4等を参照して、液体噴射ヘッドの製造方法を例示する。液体噴射ヘッドの製造方法は、流路ユニットの製造方法(機能性ユニットの製造方法)を含んでいる。
図3は、液体噴射ヘッドの製造方法における各工程をフローチャート形式で示している。
図4は、液体噴射ヘッドの製造方法の一部の工程に対応する状態を、流路ユニットU0の長手方向D3に沿った垂直断面により例示している。
前駆体形成工程(ステップS1)では、まず、機能性母基板100の前駆体(基板前駆体300)を、セラミックスを用いて形成する。機能性母基板100とは、複数の流路ユニットU0(機能性ユニット)へ切断する前の状態の部材を意味する。
図5は、機能性母基板100(あるいは基板前駆体300)を、表面11a(図1参照)に対面する視点により例示している。機能性母基板100は、分割される前の複数の流路ユニットU0を有する。図5では、鎖線で区画された領域一つ一つが、それぞれ流路ユニットU0に相当するチップ領域を示している。なお、当該鎖線が実際に存在する訳ではない。つまり本実施形態では、流路ユニットU0を個々に製造するのではなく、機能性母基板100を形成した後に、機能性母基板100から複数の流路ユニットU0を切り出す(後述のステップS5)。
機能性母基板100(基板前駆体300)は、各流路ユニットU0に相当する各チップ領域を区画する位置(図5における鎖線上)に、被分割部70を有する。被分割部70とは、機能性溝に挟まれる位置に在り、かつ機能性溝を有する部分(流路ユニットU0に相当する領域)よりも脆弱である部位である。ここで言う機能性溝に挟まれる位置とは、ある流路ユニットU0に相当するチップ領域に属する機能性溝(圧力室21)と隣の他の流路ユニットU0に相当するチップ領域に属する機能性溝(圧力室21)とに挟まれる位置であり、流路ユニットU0同士に挟まれる位置とも言える。
基板前駆体300の形成に際しては、前駆体111,120,130を形成する。前駆体111は、振動板11の前駆体であり、前駆体120は、スペーサー部20の前駆体であり、前駆体130は、接続部30の前駆体である。例えば、ジルコニア(ZrO)に、モル比で、酸化イットリウム(Y)を3〜8%程度、二酸化ケイ素(SiO)を1〜3%程、添加したセラミックス粉体をバインダー等に分散したペーストをシート状にした、グリーンシートを形成する。そして、グリーンシートに対し、金型等を用いた加工や、切断、切削、打ち抜き等といった機械加工や、レーザー加工を必要に応じて施す。これにより、シート状の前駆体111、圧力室21を有するシート状の前駆体120、および、孔31,32を有するシート状の前駆体130がそれぞれ得られる。また、前駆体111,120,130の全てあるいは一部は、上述した被分割部70も有する。
図6は、図5のA3‐A3の位置での断面を例示したものであって、特に、流路ユニットU0同士に挟まれる位置に形成された被分割部70を例示している。被分割部70は、例えば、表面11aから厚み方向D1に沿って掘り下げられた凹部71と、裏面30bから厚み方向D1に沿って掘り下げられた凹部72とを含む。被分割部70の底の厚さTは、機能性溝(圧力室21)の底の厚さ、つまり図6で言うと前駆体130の厚さよりも薄い。このように被分割部70は、機能性溝を有する部分よりも底が薄いために、機能性溝を有する部分よりも脆弱であると言える。被分割部70は、各流路ユニットU0に相当する各チップ領域の周縁(図5における鎖線上)すべてに連続して形成されていてもよいし、当該周縁の少なくとも一部に形成されているとしてもよい。
前駆体111,120,130は、図4(a)や図6に示すように積層されて、基板前駆体300となる。なお、前駆体120,130は、それぞれが別のシートではなく、まとめて一枚状に形成されたシートであってもよい。また、前駆体111,120,130は、セラミックス粉体とバインダーと溶媒を含むスラリーを用いるゲルキャスト法等により形成してもよい。以上が、前駆体形成工程である。なお図4は、機能性母基板100あるいは基板前駆体300に含まれる、一つの流路ユニットU0に相当する範囲の、さらにその一部を例示したものである。
上記各添加物の添加量(モル比)は、上述の数値に限定されるものではない。酸化イットリウムは、後述の焼成工程(ステップS3)において結晶を安定化させる目的で添加されるものである。また、上記添加物の少なくとも一部に替えてあるいは上記添加物に加えて、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)等の一部あるいは組み合わせを、ジルコニアに添加してもよい。また、二酸化ケイ素は、上記安定化に寄与するだけでなく、前駆体111,120,130からの炭素の除去効果を上げる役割も果たす。
次に、不図示の加熱装置内に基板前駆体300をセットし、加熱装置により、例えば、100℃〜300℃程度の低温で基板前駆体300を加熱し、基板前駆体300を一体的に脱脂する脱脂工程を行う(ステップS2)。続けて、基板前駆体300を一体焼成する焼成工程を行う(ステップS3)。焼成温度は、例えば、1300℃〜1400℃程度である。かかる焼成により、振動板11とスペーサー部20と接続部30とが一体的に接合したセラミックス焼成物を有する機能性母基板100が得られる(図4(b))。
次に、加熱装置から機能性母基板100を取り出した後、図4(c)に示すように、振動板11上に下電極81、リード電極84(図2(a)参照)、圧電体層82、及び、上電極83を形成する(圧電素子形成工程、ステップS4)。電極81,83,84は、スパッタ法等といった気相法で形成してもよいし、スピンコート法等といった液相法で形成した塗布膜を加熱する方法等で形成してもよい。スピンコート法等といった液相法によって圧電体層を形成する場合、例えば、PZTを構成する金属の有機物を分散媒に分散した前駆体溶液の塗布工程、例えば170〜180℃程度の乾燥工程、例えば300〜400℃程度の脱脂工程、及び、例えば600〜700℃程度の焼成工程の組合せを複数回行えばよい。不要箇所の電極や圧電体層は、パターニングにより除去してもよい。また、レジストパターンを振動板上に形成し、振動板全面上に電極や圧電体層を形成した後にレジストパターンとともに電極や圧電体層を除去してもよい。
次に、被分割部70において機能性母基板100をチップ領域単位に分割して複数の流路ユニットU0とする(分割工程、ステップS5)。被分割部70に沿った分割は、例えば、レーザーやダイシングソーを用いて行う。これにより、一枚の機能性母基板100から複数の流路ユニットU0が得られる(流路ユニットU0が多数個取りされる)。
ここまでが流路ユニットU0の製造方法に該当する。
その後、流路ユニットU0、封止プレート40、リザーバープレート50、及び、ノズルプレート60を接合し(接合工程、ステップS6)、制御回路基板91をケーブル類92で圧電素子3に接続する(基板接続工程、ステップS7)。部材U0,40,50,60間の接合は、接合し合う部材と略同じ孔を形成した熱圧着用接着シートを部材間に挟んだ状態で部材同士を熱圧着する方法、液状の接着剤を部材間に塗布する方法、熱圧着性(自己圧着性)を有する部材を用いて部材同士を熱圧着する方法、等が可能である。なお、上記プレート40,50,60の材料には、例えば、ステンレスやニッケルといった金属、合成樹脂、セラミックス、等の一種以上を用いることができる。制御回路基板91の接続は、部材U0,40,50,60間の一部又は全部を接合する前に行ってもよい。
以上により、図2(a),(b)で示したような液体噴射ヘッド1が製造される。
このように本実施形態によれば、基板前駆体300は、機能性溝に挟まれる位置に、機能性溝を有する部分よりも脆弱である被分割部70を有する。そして、基板前駆体300を焼成して機能性母基板100を形成した後、被分割部70において機能性母基板100を分割することで、それぞれに複数の機能性溝(複数の圧力室21)を有する複数の流路ユニットU0が得られる。このため、各流路ユニットU0を機能性母基板100から効率的かつ精度良く切り出すことができ、製品の製造コストの抑制や歩留まり向上に繋がる。
3.被分割部についての追加説明
図7は、本実施形態による効果の一つを説明するための図である。図7の上段には、焼成工程前の基板前駆体300の断面を、図7の下段には、焼成工程後の機能性母基板100の断面を、それぞれ図6と同様の視点により例示している。図7では、断面のハッチングや、流路(圧力室21等)の記載を省いて図示を簡略化している。また図7では、互いの間が被分割部70で接続された3つの流路ユニットU0を例示している。基板前駆体300はセラミックス前駆体であるため、焼成されることにより素材に収縮が生じる。また、収縮の度合いは、一方の面(例えば、表面11a)側と他方の面(例えば、裏面30b)側とで必ずしも同等ではないため、かかる収縮に伴い機能性母基板100全体に反り(例えば、表面11a側が凸になる反り)が発生し得る。このような反りは、流路ユニットU0毎の形状にばらつきを与え得るものであるため、可能な限り少ないほうが良い。しかし、本実施形態のように多数の流路ユニットU0の集合体である大判部材(機能性母基板100)を焼成する手法においては、比較的大きな反りが発生し易いと言える。
図7の下段においては、本実施形態にかかる被分割部70が存在しない場合の機能性母基板100を鎖線で例示し、本実施形態にかかる被分割部70が存在する場合の機能性母基板100を実線で例示している。当該図によれば、被分割部70が存在する場合の方が、機能性母基板100全体の反りが抑えられていることが分かる。被分割部70は、他の部分(流路ユニットU0に相当する部分)と比較して脆弱である分、基板前駆体300の焼成時に発生する素材の収縮の影響を受けて変形しやすい。また、被分割部70が存在することで、反りが分断され、機能性母基板100全体が大きく反ることが防止される。すなわち、被分割部70が基板前駆体300の焼成時に、他の部分に代わって変形し易いことで、他の部分が大きく変形することが抑制され、寸法ずれや反りの少ない(形状のばらつきが少ない)高品質な流路ユニットU0を多数得ることができる。なお、図7では、理解を容易とするために機能性母基板100の「反り」を大げさに表現しており、実際に生じる反りの程度を正確に表現しているわけではない。
図8の(a)および(b)はそれぞれ、図6と同様の断面により、被分割部70の形状の他の例を示している。被分割部70は、例えば図8(a)に示すように、裏面30bから厚み方向D1に沿って掘り下げられた凹部73により構成されるとしてもよい。また、被分割部70は、例えば図8(b)に示すように、表面11aから厚み方向D1に沿って掘り下げられた凹部74により構成されるとしてもよい。図8に例示したいずれの場合であっても、被分割部70の底の厚さTは、機能性溝(圧力室21)の底の厚さ(前駆体130の厚さ)よりも薄く形成されている。なお、被分割部70としての凹部71,72,73,74の形状は、図6,8に示したように、表面11aあるいは裏面30bにおける開口から底に到るまで略同一の幅としてもよいが、凹部71,72,73,74を形成するための金型を離型させる際の操作性を考慮して、底に近づくほど先細りとなるテーパー形状としてもよい。
図9は、被分割部70が図8(a)に示した形状である場合における、焼成工程前後の基板前駆体300の断面および機能性母基板100の断面を、それぞれ図7と同様の手法で例示している。図9では、焼成工程前の被分割部70の開口の幅をp1、焼成工程後の被分割部70の開口の幅をp2としており、p1<p2となっている。焼成時、被分割部70の両側の流路ユニットU0それぞれの収縮に伴い、脆弱な被分割部70は、開口が両側へ引っ張られるように開く。被分割部70がこのような変形をすることで、結果的に機能性母基板100全体の反りが分断され、各流路ユニットU0の反りは、被分割部70が無い場合と比較して小さなものに留まる。
図10は、被分割部70が図8(b)に示した形状である場合における、焼成工程前後の基板前駆体300の断面および機能性母基板100の断面を、それぞれ図7,9と同様の手法で例示している。図10では、焼成工程前の被分割部70の底の幅をp1、焼成工程後の被分割部70の底の幅をp2としており、p1<p2となっている。焼成時、被分割部70の両側の流路ユニットU0それぞれの収縮に伴い、脆弱な被分割部70は、底が両側へ引っ張られる。被分割部70がこのような変形をすることで、結果的に機能性母基板100全体の反りが分断され、各流路ユニットU0の反りは、被分割部70が無い場合と比較して小さなものに留まる。
なお、焼成工程の前後における被分割部70の変形割合(p1からp2への変形割合)は、焼成工程の前後における機能性溝を有する部分の変形割合(例えば、方向D4における圧力室21の変形割合)よりも大きいと言える。上記変形割合は、例えば、焼成前のサイズに対する焼成前後のサイズの変化量(絶対値)の比率により得られる。
図11は、図6,8と同様の断面により、被分割部70の形状の他の例を示している。被分割部70は、例えば図11に示すように、表面11aと裏面30bの何れにも開口を有さない空洞75を少なくとも含むとしてもよい。空洞75は、例えば、前駆体120において圧力室21と同一の工程で形成される。また、図11では、被分割部70は、空洞75とともに、裏面30bから厚み方向D1に沿って掘り下げられた凹部76を含んでいる。むろん、図11の構成においても、被分割部70は、表面11a側に形成された凹部を含んでもよいし、表面11a側および裏面30b側それぞれに形成された凹部を含んでもよい。また、図11では、空洞75および凹部76について、上記テーパー形状を採用している。
図12は、被分割部70の他の例を、基板前駆体300の一部断面斜視図により示している。被分割部70は、例えば図12に示すように、表面11aから裏面30bへ貫通する貫通孔77を、一定あるいは不定の間隔で並べて形成することにより実現してもよい。分割工程において、複数の貫通孔77による被分割部70を切断することにより、機能性母基板100から複数の流路ユニットU0を効率的かつ正確に切り出すことができる。レーザー、ダイシングソーで切断する場合は、変形抑制の為の被分割部70が切断代となる為に、無駄の少ない多数個取りが出来る。
図13および図14はそれぞれ、機能性母基板100から分割された後の一つの流路ユニットU0の一部の端面101,102を例示している。端面101,102は、流路ユニットU0の表面11aと裏面30bとを繋ぐ側面である。図13は、例えば、図6,7に示したような被分割部70において機能性母基板100を切断した場合の切断後の端面101を斜視図により示している。図14は、例えば、図12に示したような被分割部70において機能性母基板100を切断した場合の切断後の端面102を斜視図により示している。図13,14から分かるように、流路ユニットU0は、被分割部70が分割されることで生じる端面101,102の少なくとも一部に、端面101,102から外方に向けて突出する突起101a,102aを設ける。このような突起101a,102aは、被分割部70の一部であるとも言える。
4.液体噴射装置の例
図15は、上述した液体噴射ヘッド1を記録ヘッドとして有するインクジェット式の記録装置である液体噴射装置200の外観を示している。液体噴射ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み込むと、液体噴射装置200を製造することができる。図15に示す液体噴射装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、液体噴射ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録媒体290は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され液体噴射ヘッド1から噴射されるインク滴により印刷がなされる。
また、液体噴射装置200は、印刷中に液体噴射ヘッドが移動しないように固定されて、記録媒体を移動させるだけで印刷を行ういわゆるラインヘッド型のプリンターでもよい。
5.応用、その他
流体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよく、染料等が溶媒に溶解した溶液、顔料や金属粒子といった固形粒子が分散媒に分散したゾル、等の流体が含まれる。このような流体には、インク、液晶、等が含まれる。液体噴射ヘッドは、プリンターといった画像記録装置の他、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造装置、有機ELディスプレーやFED(電解放出ディスプレー)等の電極の製造装置、バイオチップ製造装置、等に搭載可能である。
圧力室に圧力を与えるための圧電素子は、図2(a),(b)で示したような薄膜型に限定されず、圧電材料と電極材料とを交互に積層させた積層型、縦振動させて各圧力室に圧力変化を与える縦振動型、等でもよい。また、圧電アクチュエーターは、発熱素子の発熱で生じる気泡によってノズルから液滴を噴射させるアクチュエーター、振動板と電極との間に発生させた静電気によって振動板を変形させてノズルから液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーター、等でもよい。更には、そのほかの様々な流路ユニットに適用することができる。
また、これまで説明した機能性ユニット(アクチュエーターユニット)の構成は、液体を噴射するための流路ユニットU0以外のデバイスへも適用可能である。
例えば、アクチュエーターユニットは、これまで説明した圧力室21に相当する空洞を、外部から超音波あるいは赤外線を受信するための受信部とすることで、超音波センサーや赤外線センサーとして用いることが可能である。また、上述した圧電素子を撓みモードから梁モードに変えることで、更に、ジャイロ、加速度センサー、超音波モーター等へ用いることも可能である。これらの場合、供給孔31及び連通孔32を有する接続部30は不要である。
また、上述した実施形態や変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
1…液体噴射ヘッド、3…圧電素子、10…振動板部、11…振動板、11a…表面、20…スペーサー部、21…圧力室、30…接続部、30b…裏面、31…供給孔、32…連通孔、40…封止プレート、50…リザーバープレート、51…リザーバー、60…ノズルプレート、62…ノズル、70…被分割部、71,72,73,74,76…凹部、75…空洞、77…貫通孔、100…機能性母基板、111,120,130…前駆体、200…液体噴射装置、300…基板前駆体、U0…流路ユニット(機能性ユニット)

Claims (6)

  1. 複数の機能性溝と、前記機能性溝に挟まれる位置に配設されて前記機能性溝を有する部分よりも脆弱である被分割部と、を備えたセラミックス前駆体を有する基板前駆体を形成する前駆体形成工程と、
    前記基板前駆体を焼成して機能性母基板を形成する焼成工程と、
    前記被分割部において前記機能性母基板を分割して複数の機能性ユニットとする分割工程と、
    を含むことを特徴とする機能性ユニットの製造方法。
  2. 前記焼成工程の前後における前記被分割部の変形割合は、前記焼成工程の前後における前記機能性溝を有する部分の変形割合よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の機能性ユニットの製造方法。
  3. 前記被分割部は、前記機能性溝よりも底が薄いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性ユニットの製造方法。
  4. 前記被分割部は、一定あるいは不定の間隔で並ぶ貫通孔を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性ユニットの製造方法。
  5. 複数の機能性溝を備えた機能性ユニットがチップ領域毎に区分けした状態で複数設けられたセラミックス焼成物を有して構成された機能性母基板において、
    所定のチップ領域に設けられた機能性ユニットと、前記所定のチップ領域の隣のチップ領域に設けられた機能性ユニットと、の間には、前記機能性溝が備えられた部分よりも脆弱である被分割部が備えられていることを特徴とする機能性母基板。
  6. 複数の機能性溝を備え、セラミックス焼成物を有して構成された機能性ユニットにおいて、
    前記機能性ユニットの端面の少なくとも一部には、該端面から外方に向けて突出する突起が設けられていることを特徴とする機能性ユニット。
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