JP2004202975A - インクジェット記録ヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク加圧室にアルミナ質焼結体を用いたものでは、アルカリ性を示すインクに長時間曝されると、アルミナ質焼結体中に不純物として含まれているシリカが溶出し、インク粘度の増大やインクの流れが阻害する等の課題を解決する。
【解決手段】インク加圧室がアルミナ質焼結体で形成され、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下でとする。
【選択図】図1
【解決手段】インク加圧室がアルミナ質焼結体で形成され、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下でとする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、文字や画像の印刷に用いる高精度のインクジェット記録へッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、パーソナルコンピューターの普及やマルチメディアの発達に伴って、情報を記録媒体に出カする記録装置として、インクジェット方式のインクジェット記録ヘッドの利用が急速に拡大している。
【0003】
かかるインクジェット方式の記録装置には、インクジェット記録へッド(以下ヘッドと称す)が搭載されており、この種のヘッドには、インクが充填されたインク加圧室内に加圧手段としてのヒータを備え、ヒータによりインクを加熱、沸騰させ、インク加圧室内に発生する気泡によってインク加圧室を加圧し、インク吐出孔よりインク滴として吐出させるサーマルジェット方式と、インクが充填されるインク加圧室の一部の壁を圧電素子によって形成し、この圧電素子を屈曲変位させ、機械的にインク加圧室内を加圧し、インク吐出孔よりインク滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
【0004】
ヘッドのインク加圧室の材料としては金属や樹脂およびガラス等が用いられていたが、近年では、熱、強度、耐食性の点で優れるセラミックスが用いられ、なかでもアルミナ質焼結体は強度や耐熱、耐酸、耐アルカリ、さらには製造の容易さやコストに優れているために、多用されるようになっていた。
【0005】
ところで、近年、問題視されている環境問題等に配慮するため、インクジェット記録ヘッド用のインクとして非溶剤系の需要が高まっているが、非溶剤系のインクは顔料の分散性が悪いため、例えば、特許文献1のようにインクをアルカリ性にしてPH値を微妙に調整し、顔料の分散性を改善したものが用いられている。
【0006】
ところが、インク加圧室にアルミナ質焼結体を用いたものでは、アルカリ性を示すインクに長時間曝されると、アルミナ質焼結体中に不純物として含まれているシリカが溶出するとともに、陽イオン化し、インク中の着色剤を均一に分散させている分散剤の負の帯電を部分的に中和してしまい、その結果、インク中の着色剤に凝集が起こり、インク粘度の増大によりインクの流れが阻害され、インク吐出孔から吐出されるインク滴の吐出量や吐出速度が低下するとともに、インク中に発生した着色剤の凝集物によりインク吐出孔の目詰まりが発生し、インク滴の吐出が不可能となって正確かつ綺麗で鮮明な印刷ができなくなるといった課題があった。
【0007】
しかも、このような課題はインク加圧室内に保護膜が形成されている場合においても同様に発生していた。即ち、ミクロンオーダーの寸法を有するインク加圧室内に完全な保護膜を被着することは難しく、小さなピンホールが存在するため、このピンホールから侵入したインクがアルミナ質焼結体と接すると前述したようにインクにシリカが溶出し、同様の問題が発生していた。
【0008】
また、このような課題はインクの加圧方式に関係なく、例えば、圧電方式以外のサーマルジェット方式などにおいては、溶出したシリカがインクの加圧に利用される気泡の生成を行うヒータ表面に付着し、気泡の生成を阻害することによってインク滴の吐出が不可能となって正確かつ綺麗で鮮明な印刷が出来なくなるといった課題があった。
【0009】
そのため、特許文献2のように、アルミナ結晶とスピネル結晶のみに限定して製造する方法もあるが、製造する上での制約が多いため、量産には向かず、コストが高く、現実的でないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−127442号公報
【特許文献2】特開2001−179968号公報
【発明の目的】
本発明の目的は、インク中の着色剤の凝集及びインク粘度の増加を防止し、インク吐出孔の目詰まりがなく、また、サーマルジェット方式においては、ヒータ等への付着も少なく、正確かつ綺麗で鮮明な印刷が可能なインクジェット記録ヘッド及びその製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インク吐出孔とインク供給孔とを有したインク加圧室と、該インク加圧室内の加圧により上記インク吐出孔からインク滴を吐出させる加圧手段とを有したインクジェット記録ヘッドにおいて、上記加圧室がアルミナ質焼結体で形成され、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下であることを特徴とするインクジェット記録ヘッドを提供する。
【0011】
また、上述のアルミナを含有したセラミック原料により上記インク加圧室を構成する成形体を形成する工程と、該成形体を焼成することで焼結体を得る工程と、得られた焼結体の少なくともインクと接する表面を30%以上の沸酸で表面処理する工程とを含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。を提供する。
【0012】
【作用】
本発明によれば、インク加圧室をアルミナ質焼結体で形成するとともに、アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下とするようにしたことから、アルカリ性を示すインクに長時間曝されたとしてもアルミナ質焼結体から溶出するシリカ量が少ないため、インク中の着色剤の凝集を抑え、凝集物の発生及びインク粘度の増加を防止することができ、常にインク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、サーマルヘッド方式においてもヒータによる気泡の生成効率を落とすことなく、安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが出来るのである。
【0014】
さらに、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法においては、少なくとも焼結体の少なくともインクと接する表面を30%以上の沸酸によって処理することで、簡単にインクジェット記録ヘッドインクと接する加圧室の表面のシリカの含有量を制御することができるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は本発明に用いるインク加圧室1の斜視図であり、図1(b)は本発明のインクジェット記録ヘッド一部を破断した斜視図であり、(c)は同図(a)のX−X線における部分断面図、図1(d)は同図(a)のY−Y線における部分断面図である。
【0016】
本発明のインクジェット記録ヘッドは、インク加圧室1と、加圧手段4とから構成されている。
インク加圧室1はアルミナ質焼結体で形成され、インク滴を吐出するためのインク吐出孔1dを備えた下板1bと、その下板1bの上面に離間して配置された複数の隔壁1c、1cと、インク供給孔1eが略中央長手方向に形成され、隔壁1c、1cの上面に配置された振動板4と、下板1bと隔壁1c及び振動板2とで形成される内部空間で構成したインク流路1と、そのインク流路1の両端側を閉鎖する側板3とから構成されている。
【0017】
本発明に用いるアルミナ焼結体として、そのアルミナ純度を95〜99重量%のものが用いられる。そして、本発明は、上記インク加圧室1におけるアルミナ質焼結体の、少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下としている。すなわち、本発明者は鋭意検討の結果、インク滴が安定して吐出できなくなったり、サーマルジェット方式の気泡の生成を阻害する要因にインク加圧室1のインクと接する表面に偏析するシリカが溶出して影響するものであることを見い出したものである。すなわち、上記シリカの溶出を抑えるにはアルミナ質焼結体そのものへ添加するシリカの量を減らすことが重要であるが、一方でシリカの添加はアルミナ質焼結体の焼結を容易にする働きを有しており、シリカの減少はそのままアルミナ質焼結体の焼結温度を高めたり、アルミナ質焼結体の強度を損ねる弊害を有することから極端に添加量を減らすことは出来ない状況である。
【0018】
そこで、本発明者は、アルミナ質焼結体を焼成すると、上記シリカがアルミナ質焼結体の主に表面に偏析することに着目し、インクに対する溶出量を減らすにはこの偏析したシリカを除去することが重要であることに気づき、表面のシリカ量を限定するとともに、偏析したシリカを除去することによって、シリカの溶出の少ないアルミナ質焼結体を得ることが出来るようになったわけである。
【0019】
従って、アルミナ質焼結体の、少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以上では、上記のシリカが溶出する原因となり、インク中の着色剤の凝集が発生し、凝集物の発生及びインク粘度の増加が起こり、インク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出できないからであるからである。
【0020】
このようなインクと接する表面のシリカの含有量を測定する方法としてはX線光電子分光分析法で表面のシリカ元素の分析により計算される。
【0021】
つぎに、このようなインク加圧室1を作成する方法について説明する。まず、図2に示すようにセラミックグリーンシート12、13を所定の金型で打ち抜きインク供給孔1e及びインク流路1aを形成する。打ち抜いたセラミックグリーンシート12、13を積層する。次に、上記積層したセラミックグリーンシート12、13に、位置決め用の穴7及びインク供給孔1eを穿孔するために金型で打ち抜く。そして、別に所定の金型で位置決め用の穴7を打ち抜きした下板1bとなるセラミックグリーンシート14とセラミックグリーンシート12、13とを穴7にピンを有する位置決め治具11に挿入して加圧しながら積層圧着して成形体を作成する。この成形体を別の所定の金型で打ち抜き、分割溝を形成する。そして、この成形体を焼成一体化し、焼成後、所定の分割装置で焼結体を分割する。そして、分割後、30%以上の沸酸からなるエッチング液で表面処理するものである。
【0022】
インク加圧室1を成形する方法としては、上述に限らず、切削加工・ブラスト加工、金型で一体的に作成する方法等でも作成が可能である。なお、加工コストから上述のようあ金型成形技術と積層技術を用い、簡略的に且つ、大量に製造が可能としたのが好ましい。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は図1に示した形態に限定されるものではなく、その形状は様々なものに適用できるものであることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
本発明のインクジェット記録ヘッドは、長さ223mm、幅3.6mm、高さ2.5mmのインク加圧室1を作成し、濃度46%のふっ酸にてエッチング処理を行い試料を得た。
【0025】
具体的には、ドクターブレード法によりAl2O3含有量96%のアルミナセラミックスの厚み1.0mmと0.5mmのグリーンシートを成形し、1mmのグリーンシートを1層目用金型にて所定の形状に成型し、厚み1mmの1層目セラミックスグリーンシート12、13を得た。次に1.0mmと0.5mmのグリーンシート14を金型にて所定の形状に成型し積層を行い、2層目用金型で所定の形状に成型し、厚み1.5mmの2層目セラミックスグリーンシート14をえた。上記1層目と2層目のセラミックスグリーンシートを積層し、厚み2.5mmの成形体を得た後、分割溝を加工するための別の金型で成形し、約1600℃で焼成後、分割溝に沿って分割しインク加圧室1を得た。この試料について濃度46%のふっ酸を用いてエッチング処理を行い、X線光電子分光分析法で表面のシリカ元素の分析を行った。
【0026】
【表1】
【0027】
次にふっ酸の濃度毎による比較を行った。
【0028】
【表2】
【0029】
以上の結果から、ふっ酸によるエッチング処理は、30秒の処理で表面のシリカ元素は検出限界を越えるレベルまでエッチングできていることがいえる。また、エッチング後の成形体の表面状態を確認するため、表面粗さ測定、走査型電子顕微鏡で観察したが、異常は検出されなかった。
【0030】
これらを用いたインクジェット記録ヘッドを作成して1000枚の印字を行ったが、インク中の着色剤の凝集がなく、凝集物の発生、インク粘度の増加がなく、常にインク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させて良好な印字を行うことができた。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下としたことから、アルカリ性を示すインクに長時間曝されたとしてもアルミナ質焼結体から溶出するシリカ量が少ないため、インク中の着色剤の凝集を抑え、凝集物の発生及びインク粘度の増加を防止することができ、常にインク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが可能となる。
【0032】
また、本発明によれば、サーマルヘッド方式においてもヒータによる気泡の生成効率を落とすことなく、安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが出来る。
【0033】
さらに、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法においては、少なくともインクと接する加圧室の表面を30%以上の沸酸によって処理することで、簡単にインクジェット記録ヘッドインクと接する加圧室の表面のシリカの含有量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に用いるインク加圧室1の斜視図であり、(b)は本発明のインクジェット記録ヘッド一部を破断した斜視図であり、(c)は同図(a)のX−X線における部分断面図、(d)は同図(a)のY−Y線における部分断面図である。
【図2】本発明にのインク加圧室を製造するのにセラミックグリーンシートの積層工程を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
1:インク加圧室
1a:インク流路
1b:下板
1c:隔壁
1d:インク吐出口
1e:インク供給口
2:振動板
3:側板
4:加圧手段
5:電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、文字や画像の印刷に用いる高精度のインクジェット記録へッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、パーソナルコンピューターの普及やマルチメディアの発達に伴って、情報を記録媒体に出カする記録装置として、インクジェット方式のインクジェット記録ヘッドの利用が急速に拡大している。
【0003】
かかるインクジェット方式の記録装置には、インクジェット記録へッド(以下ヘッドと称す)が搭載されており、この種のヘッドには、インクが充填されたインク加圧室内に加圧手段としてのヒータを備え、ヒータによりインクを加熱、沸騰させ、インク加圧室内に発生する気泡によってインク加圧室を加圧し、インク吐出孔よりインク滴として吐出させるサーマルジェット方式と、インクが充填されるインク加圧室の一部の壁を圧電素子によって形成し、この圧電素子を屈曲変位させ、機械的にインク加圧室内を加圧し、インク吐出孔よりインク滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
【0004】
ヘッドのインク加圧室の材料としては金属や樹脂およびガラス等が用いられていたが、近年では、熱、強度、耐食性の点で優れるセラミックスが用いられ、なかでもアルミナ質焼結体は強度や耐熱、耐酸、耐アルカリ、さらには製造の容易さやコストに優れているために、多用されるようになっていた。
【0005】
ところで、近年、問題視されている環境問題等に配慮するため、インクジェット記録ヘッド用のインクとして非溶剤系の需要が高まっているが、非溶剤系のインクは顔料の分散性が悪いため、例えば、特許文献1のようにインクをアルカリ性にしてPH値を微妙に調整し、顔料の分散性を改善したものが用いられている。
【0006】
ところが、インク加圧室にアルミナ質焼結体を用いたものでは、アルカリ性を示すインクに長時間曝されると、アルミナ質焼結体中に不純物として含まれているシリカが溶出するとともに、陽イオン化し、インク中の着色剤を均一に分散させている分散剤の負の帯電を部分的に中和してしまい、その結果、インク中の着色剤に凝集が起こり、インク粘度の増大によりインクの流れが阻害され、インク吐出孔から吐出されるインク滴の吐出量や吐出速度が低下するとともに、インク中に発生した着色剤の凝集物によりインク吐出孔の目詰まりが発生し、インク滴の吐出が不可能となって正確かつ綺麗で鮮明な印刷ができなくなるといった課題があった。
【0007】
しかも、このような課題はインク加圧室内に保護膜が形成されている場合においても同様に発生していた。即ち、ミクロンオーダーの寸法を有するインク加圧室内に完全な保護膜を被着することは難しく、小さなピンホールが存在するため、このピンホールから侵入したインクがアルミナ質焼結体と接すると前述したようにインクにシリカが溶出し、同様の問題が発生していた。
【0008】
また、このような課題はインクの加圧方式に関係なく、例えば、圧電方式以外のサーマルジェット方式などにおいては、溶出したシリカがインクの加圧に利用される気泡の生成を行うヒータ表面に付着し、気泡の生成を阻害することによってインク滴の吐出が不可能となって正確かつ綺麗で鮮明な印刷が出来なくなるといった課題があった。
【0009】
そのため、特許文献2のように、アルミナ結晶とスピネル結晶のみに限定して製造する方法もあるが、製造する上での制約が多いため、量産には向かず、コストが高く、現実的でないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−127442号公報
【特許文献2】特開2001−179968号公報
【発明の目的】
本発明の目的は、インク中の着色剤の凝集及びインク粘度の増加を防止し、インク吐出孔の目詰まりがなく、また、サーマルジェット方式においては、ヒータ等への付着も少なく、正確かつ綺麗で鮮明な印刷が可能なインクジェット記録ヘッド及びその製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インク吐出孔とインク供給孔とを有したインク加圧室と、該インク加圧室内の加圧により上記インク吐出孔からインク滴を吐出させる加圧手段とを有したインクジェット記録ヘッドにおいて、上記加圧室がアルミナ質焼結体で形成され、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下であることを特徴とするインクジェット記録ヘッドを提供する。
【0011】
また、上述のアルミナを含有したセラミック原料により上記インク加圧室を構成する成形体を形成する工程と、該成形体を焼成することで焼結体を得る工程と、得られた焼結体の少なくともインクと接する表面を30%以上の沸酸で表面処理する工程とを含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。を提供する。
【0012】
【作用】
本発明によれば、インク加圧室をアルミナ質焼結体で形成するとともに、アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下とするようにしたことから、アルカリ性を示すインクに長時間曝されたとしてもアルミナ質焼結体から溶出するシリカ量が少ないため、インク中の着色剤の凝集を抑え、凝集物の発生及びインク粘度の増加を防止することができ、常にインク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、サーマルヘッド方式においてもヒータによる気泡の生成効率を落とすことなく、安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが出来るのである。
【0014】
さらに、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法においては、少なくとも焼結体の少なくともインクと接する表面を30%以上の沸酸によって処理することで、簡単にインクジェット記録ヘッドインクと接する加圧室の表面のシリカの含有量を制御することができるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は本発明に用いるインク加圧室1の斜視図であり、図1(b)は本発明のインクジェット記録ヘッド一部を破断した斜視図であり、(c)は同図(a)のX−X線における部分断面図、図1(d)は同図(a)のY−Y線における部分断面図である。
【0016】
本発明のインクジェット記録ヘッドは、インク加圧室1と、加圧手段4とから構成されている。
インク加圧室1はアルミナ質焼結体で形成され、インク滴を吐出するためのインク吐出孔1dを備えた下板1bと、その下板1bの上面に離間して配置された複数の隔壁1c、1cと、インク供給孔1eが略中央長手方向に形成され、隔壁1c、1cの上面に配置された振動板4と、下板1bと隔壁1c及び振動板2とで形成される内部空間で構成したインク流路1と、そのインク流路1の両端側を閉鎖する側板3とから構成されている。
【0017】
本発明に用いるアルミナ焼結体として、そのアルミナ純度を95〜99重量%のものが用いられる。そして、本発明は、上記インク加圧室1におけるアルミナ質焼結体の、少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下としている。すなわち、本発明者は鋭意検討の結果、インク滴が安定して吐出できなくなったり、サーマルジェット方式の気泡の生成を阻害する要因にインク加圧室1のインクと接する表面に偏析するシリカが溶出して影響するものであることを見い出したものである。すなわち、上記シリカの溶出を抑えるにはアルミナ質焼結体そのものへ添加するシリカの量を減らすことが重要であるが、一方でシリカの添加はアルミナ質焼結体の焼結を容易にする働きを有しており、シリカの減少はそのままアルミナ質焼結体の焼結温度を高めたり、アルミナ質焼結体の強度を損ねる弊害を有することから極端に添加量を減らすことは出来ない状況である。
【0018】
そこで、本発明者は、アルミナ質焼結体を焼成すると、上記シリカがアルミナ質焼結体の主に表面に偏析することに着目し、インクに対する溶出量を減らすにはこの偏析したシリカを除去することが重要であることに気づき、表面のシリカ量を限定するとともに、偏析したシリカを除去することによって、シリカの溶出の少ないアルミナ質焼結体を得ることが出来るようになったわけである。
【0019】
従って、アルミナ質焼結体の、少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以上では、上記のシリカが溶出する原因となり、インク中の着色剤の凝集が発生し、凝集物の発生及びインク粘度の増加が起こり、インク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出できないからであるからである。
【0020】
このようなインクと接する表面のシリカの含有量を測定する方法としてはX線光電子分光分析法で表面のシリカ元素の分析により計算される。
【0021】
つぎに、このようなインク加圧室1を作成する方法について説明する。まず、図2に示すようにセラミックグリーンシート12、13を所定の金型で打ち抜きインク供給孔1e及びインク流路1aを形成する。打ち抜いたセラミックグリーンシート12、13を積層する。次に、上記積層したセラミックグリーンシート12、13に、位置決め用の穴7及びインク供給孔1eを穿孔するために金型で打ち抜く。そして、別に所定の金型で位置決め用の穴7を打ち抜きした下板1bとなるセラミックグリーンシート14とセラミックグリーンシート12、13とを穴7にピンを有する位置決め治具11に挿入して加圧しながら積層圧着して成形体を作成する。この成形体を別の所定の金型で打ち抜き、分割溝を形成する。そして、この成形体を焼成一体化し、焼成後、所定の分割装置で焼結体を分割する。そして、分割後、30%以上の沸酸からなるエッチング液で表面処理するものである。
【0022】
インク加圧室1を成形する方法としては、上述に限らず、切削加工・ブラスト加工、金型で一体的に作成する方法等でも作成が可能である。なお、加工コストから上述のようあ金型成形技術と積層技術を用い、簡略的に且つ、大量に製造が可能としたのが好ましい。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は図1に示した形態に限定されるものではなく、その形状は様々なものに適用できるものであることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
本発明のインクジェット記録ヘッドは、長さ223mm、幅3.6mm、高さ2.5mmのインク加圧室1を作成し、濃度46%のふっ酸にてエッチング処理を行い試料を得た。
【0025】
具体的には、ドクターブレード法によりAl2O3含有量96%のアルミナセラミックスの厚み1.0mmと0.5mmのグリーンシートを成形し、1mmのグリーンシートを1層目用金型にて所定の形状に成型し、厚み1mmの1層目セラミックスグリーンシート12、13を得た。次に1.0mmと0.5mmのグリーンシート14を金型にて所定の形状に成型し積層を行い、2層目用金型で所定の形状に成型し、厚み1.5mmの2層目セラミックスグリーンシート14をえた。上記1層目と2層目のセラミックスグリーンシートを積層し、厚み2.5mmの成形体を得た後、分割溝を加工するための別の金型で成形し、約1600℃で焼成後、分割溝に沿って分割しインク加圧室1を得た。この試料について濃度46%のふっ酸を用いてエッチング処理を行い、X線光電子分光分析法で表面のシリカ元素の分析を行った。
【0026】
【表1】
【0027】
次にふっ酸の濃度毎による比較を行った。
【0028】
【表2】
【0029】
以上の結果から、ふっ酸によるエッチング処理は、30秒の処理で表面のシリカ元素は検出限界を越えるレベルまでエッチングできていることがいえる。また、エッチング後の成形体の表面状態を確認するため、表面粗さ測定、走査型電子顕微鏡で観察したが、異常は検出されなかった。
【0030】
これらを用いたインクジェット記録ヘッドを作成して1000枚の印字を行ったが、インク中の着色剤の凝集がなく、凝集物の発生、インク粘度の増加がなく、常にインク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させて良好な印字を行うことができた。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下としたことから、アルカリ性を示すインクに長時間曝されたとしてもアルミナ質焼結体から溶出するシリカ量が少ないため、インク中の着色剤の凝集を抑え、凝集物の発生及びインク粘度の増加を防止することができ、常にインク吐出孔から安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが可能となる。
【0032】
また、本発明によれば、サーマルヘッド方式においてもヒータによる気泡の生成効率を落とすことなく、安定した吐出速度、吐出量のインク滴を吐出させることが出来る。
【0033】
さらに、本発明のインクジェット記録ヘッドの製造方法においては、少なくともインクと接する加圧室の表面を30%以上の沸酸によって処理することで、簡単にインクジェット記録ヘッドインクと接する加圧室の表面のシリカの含有量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に用いるインク加圧室1の斜視図であり、(b)は本発明のインクジェット記録ヘッド一部を破断した斜視図であり、(c)は同図(a)のX−X線における部分断面図、(d)は同図(a)のY−Y線における部分断面図である。
【図2】本発明にのインク加圧室を製造するのにセラミックグリーンシートの積層工程を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
1:インク加圧室
1a:インク流路
1b:下板
1c:隔壁
1d:インク吐出口
1e:インク供給口
2:振動板
3:側板
4:加圧手段
5:電極
Claims (2)
- インク吐出孔とインク供給孔とを有したインク加圧室と、該インク加圧室内の加圧により上記インク吐出孔からインク滴を吐出させる加圧手段とを有したインクジェット記録ヘッドにおいて、上記加圧室がアルミナ質焼結体で形成され、上記アルミナ質焼結体の少なくともインクと接する表面のシリカの含有量が1原子%以下であることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
- 請求項1記載のアルミナを含有したセラミック原料により上記インク加圧室を構成する成形体を形成する工程と、該成形体を焼成することで焼結体を得る工程と、得られた焼結体の少なくともインクと接する表面を30%以上の沸酸で表面処理する工程とを含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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JP2002377396A JP2004202975A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | インクジェット記録ヘッド及びその製造方法 |
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JP2014237296A (ja) * | 2013-06-10 | 2014-12-18 | セイコーエプソン株式会社 | 機能性ユニットの製造方法、機能性母基板および機能性ユニット |
US11910717B2 (en) | 2020-03-30 | 2024-02-20 | Brother Kogyo Kabushiki Kaisha | Piezoelectric actuator |
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2002
- 2002-12-26 JP JP2002377396A patent/JP2004202975A/ja active Pending
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