JP6131682B2 - 流路ユニット、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、流路ユニットの製造方法 - Google Patents
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液体流路には、例えば、壁の一部である振動板の変形によりインク等の液体に圧力が加わる圧力室、この圧力室への液体の供給路、及び、圧力室からノズルに連通する連通路が含まれる。液体吐出ヘッドは、前述の流路基板とノズルプレート等の接合基板とを接合することにより形成される。
また、本発明は、前記液体吐出ヘッドを搭載した、インクジェットプリンター等の液体吐出装置の態様を有する。
そこで、このような液の染み出しを抑制することを目的として、振動板を結晶構造が異なる少なくとも2層以上のセラミックス層により構成している。
薄膜を構成する結晶配列の規則性が高いと、結晶間に生じる隙間が連続しやすく、この連続した隙間を通って液の染み出しが発生し易くなると考えられる。逆に、結晶配列の規則性が低ければ、隙間が連続せず、液の染み出しも容易とはならない。
ここで、第1層と第2層とを構成する結晶構造を異ならせると、2つの層の間の結晶配列も近いものとはならない。即ち、第1層と第2層とを1つの層として観察した場合に、隙間の連続性が遮断される境界が振動板内に生じることとなる。その結果、振動板の染み出しを抑制することができる。
加えて、2つの層に含まれる結晶サイズが異なる場合、振動板内に内部応力が生じ、この内部応力が振動板の撓みを生じさせる。周知のように振動板は振動することで圧力室に圧力変化を生じさせるが、振動は撓み変形が連続したものである。そのため、第1層と第2層の結晶構造を異ならせることで、振動板の撓み方向を制御することが可能となる。
具体的には、層間の結晶構造を変化させることで振動板の密度等を変化させ、内部応力の向きを制御する。例えば、振動板を圧力室側に撓ませることで、振動板の振動が同方向の変位の連続となる。ここで、圧力室側に撓ませるとは、振動板が圧力室側に向けて凸状に変形している状態である。そのため、振動板は撓み方向が変化することなく変位するため、振動板の耐久性を高めることができる。
一方で、振動板の内部応力を結晶構造により制御し、振動板を圧力室側と反対側に撓ませることで、振動板の振動が異なる方向の変位の連続となる。そのため、振動番は、撓み方向が変化しつつ変位するため、変位量を増加させることができる。
ここで、希土類元素としては、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等を用いることができる。また、第2族元素としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。
また、結晶に含まれる希土類又は第2族元素の含有量の解析方法としては、例えば、ICP発光分光(ICP-OES Optical Emission Spectrometry)、(ICP-MS(ICP - Mass Spectrometry;ICP-MS)、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry,EDX)、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いることができる。
まず、流路ユニット及び液体吐出ヘッドの例を説明する。図1は、圧電素子3を設けた使用前後の流路ユニットU0を模式的に例示する断面図であり、使用前後のそれぞれについて振動板11の要部を拡大して下側に示している。分かり易く示すため、セラミック結晶粒子13を振動板11の厚みと比べて大きくし、隙間CL1を粒子13と比べて大きくしている。むろん、振動板の厚みに対するセラミック結晶粒子の大きさは特に限定されず、粒子に対する隙間の大きさも特に限定されず、粒子の形状も特に限定されない。図2は、流路ユニットU0を含む液体吐出ヘッド1の構成の概略を例示している。図3(a)は、液体吐出ヘッド1を図2のA1−A1の位置での断面図を示している。図3(b)は、液体吐出ヘッド1を図2のA2−A2の位置での断面図を示している。
このような隙間CL1による「液漏れ」は振動板が厚い場合には、途中で液が止まり、顕在化していなかったので、液漏れは振動板の厚みについて薄く極限を追求するようになって顕在化した問題と言える。
さらに、染み出た液体は溶液の一部であり、原液と濃度が大きく異なる。これは、粒子がフィルタリングされた為である。故に染み出しが生じる隙間は微小であり制御が難しく、一部制御できてもばらつきによる歩留まりの低下を招く。
なお、液体吐出ヘッド1は、封止プレート40やリザーバープレート50を必ずしも備える必要は無い。例えば、封止プレートが無い場合にはリザーバープレートを接合基板にすることができ、リザーバープレートも無い場合にはノズルプレートを接合基板にすることができる。また、液体吐出ヘッドはいわゆるコンプライアンスプレート等の他のプレートを備えていてもよく、例えば、コンプライアンスプレートがリザーバープレートとノズルプレートとの間に配置されてもよい。更に、これらのプレートが複数のプレートで構成されてもよいし、複数のプレートの機能を一枚のプレートが備えていてもよい。
振動板11は、スペーサー部20の一方の面(表面20a)を封止し、該スペーサー部20と接する裏面11bとは反対側の表面11aに圧電素子3(少なくとも一対の電極と、一対の電極に挟まれた圧電体とで構成される)、リード電極84、等が設けられている。振動板の裏面11bは、圧力室21の壁面の一部を構成する。すなわち、圧力室21の壁の一部である振動板11は、圧電素子3により駆動信号SG1に応じた変形をする。振動板11は、矩形板状でもよいし、矩形板状でなくてもよい。
ここで、希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等を用いることができる。また、第2族元素としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。このように作成することで、結果として第2層11aは第1層11bと比べて、希土類元素又は第2族元素等の割り合いが高くなる。
なお、振動板11は、立方晶である安定化ジルコニアが主成分となっている2層以上の層を含む複数層からなっていてもよい。例えば、圧電素子3の一つの電極が振動板11の一つの層を兼ねていてもよいし、圧力室21の壁面の一部となる領域に保護膜の層を振動板11の層の一つとして有していてもよい。
また、結晶に含まれる希土類又は第2族元素の含有量の解析方法としては、ICP発光分光(ICP-OES Optical Emission Spectrometry)、(ICP-MS(ICP - Mass Spectrometry;ICP-MS)、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry,EDX)、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いることができる。
ここで、振動板11が圧力室21側と反対側に撓んでいると、圧力室21の駆動時において振動板11の撓み方向が変化し、変位量を稼ぐことができる。
ここで、振動板11が圧力室21側に撓んでいると、圧力室21の駆動時において振動板11の撓み方向が変化せず、振動板11の耐久性を高めることができる。
各圧力室21は、長手方向を流路基板の短手方向D4に向けた長尺状に形成され、流路基板の長手方向D3へ複数並べられている。圧力室21同士の間は、隔壁22とされる。圧力室21内の液体には、壁の一部である振動板11の変形により圧力が加わる。圧力室21の形状は、この形状に限定されるものではなく任意な形状とすることができる。例えば、圧力室21の幅や長さは、裏面20b側の長さが表面20a側の長さよりも短くされてもよい。流路基板の長手方向D3へ並んだ圧力室21の列は、流路基板の短手方向D4へ複数並べられてもよい。
リザーバープレート50には、厚み方向D1へ貫通したリザーバー51及びノズル連通孔52が形成されている。リザーバー51は、共通供給孔41と液体導入孔43とに連通した共通インク室である。各ノズル連通孔52は、封止プレートの各ノズル連通孔42に連通する位置に設けられている。
なお、上記プレート40,50,60を含む種々のプレートの材料には、例えば、ステンレスやニッケルといった金属、合成樹脂、セラミックス、等の一種以上を用いることができる。
第2層11bのもととなる前駆体110b用のグリーンシートは、ジルコニア(ZrOx)に、希土類酸化物として酸化イットリウム(YOx)をモル比で8%以上、及び二酸化ケイ素(SiO2)をモル比で2%〜3%添加して作成する。また、第1層11aのもととなる前駆体110a、及びスペーサー部20を含む前駆体120,130用のグリーンシートは、ジルコニア(ZrOx)に酸化イットリウム(YOx)をモル比で2%〜3%、及び二酸化ケイ素(SiO2)をモル比で2%〜3%添加して作成する。
前駆体100はシート状に形成する以外にも、型を用いた転写により形成してもよい。
また、二酸化ケイ素(SiO2)を添加したのは、バインダー等に含まれる炭素を除去することを目的としたものであり、二酸化ケイ素(SiO2)が添加されていなくともよい。
なお、流路ユニット本体は、セラミック粉体とバインダーと溶媒を含むスラリーを用いるゲルキャスト法等により形成してもよい。
一方で、振動板11の第1層11aは、希土類元素を約3モル%含んだグリーンシートを焼成して形成されるため、図6(b)に示すように、ジルコニアの結晶構造が主に正方晶となる。
以上により、図3(a),(b)で示したような液体吐出ヘッド1が製造される。
また、振動板を多層化することで、振動板の内部応力の調整が可能となる。
図7は、第2の実施形態に係る流路ユニットUOを示す断面図である。この第2の実施形態においても、振動板11の第1層11aと第2層11bとはジルコニアの結晶構造が異なる。特に、この第2の実施形態の液体吐出ヘッド1では、第2層11bのジルコニアの結晶サイズが第1層11aのジルコニアの結晶サイズに比べて大きい。
この第2の実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法では、第2層11bの上方に溶液法を用いて第1層11aを形成する。
そして、グリーンシートを必要に応じて加工し、積層する。そしてこれらグリーンシートを焼成することで、図8(a)に示す、第2層11b、スペーサー20、接続部30をそれぞれ形成する(第3の工程)。
なお、第2層11bの製造方法としては、これ以外の製造方法を用いるものであってもよい。
また、振動板11の層数を2層以上とする場合は、上記した塗布、脱脂、焼成の工程を振動板の数に応じて繰返す。
この第3の実施形態では、上記した第2の実施形態において、振動板11の第1層11aの製造をスパッター法により行う構成が異なる。なお、この第3の実施形態で示す製造方法で製造される、流路ユニットUOは、図4(b)に示すように、振動板11における第1層11aの結晶サイズが、第2層11bの結晶サイズと比べて大きくなる。その結果、振動板11が圧力室21側に撓むこととなり圧縮応力を付与することができる。
次に、前駆体を酸素雰囲気中で600度から700度付近で加熱し、第1層11aを結晶成長させる。
また、600度から700度付近で熱酸化して、第1層11aを結晶成長させることで、他の実施形態同様、第1層11aと第2層11bとの密度が異なり、振動板11の内部応力の調整を行うことができる。
また、第2の実施形態同様、振動板11の表面の平坦化を向上させることができる。
図9は、液体吐出ヘッド1を記録ヘッドとして有するインクジェット式の記録装置である液体吐出装置200の外観を示している。液体吐出ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み込むと、液体吐出装置200を製造することができる。図9に示す液体吐出装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、液体吐出ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シート290は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され液体吐出ヘッド1から噴射されるインク滴により印刷がなされる。
第1の実施形態において、第1層11aと第2層11bのグリーンシートの粉体の粒径をそれぞれ異ならせる構成としてもよい。
また、上述した第2及び第3の実施形態において、振動板の第2層をCVD法、レーザーアブレーション法により形成するものであってもよい。
液体吐出ヘッドから吐出される液体は、液体吐出ヘッドから吐出可能な材料であればよく、染料等が溶媒に溶解した溶液、顔料や金属粒子といった固形粒子が分散媒に分散したゾル、等の流体が含まれる。このような流体には、インク、液晶、等が含まれる。液体吐出ヘッドは、プリンターといった画像記録装置の他、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造装置、有機ELディスプレーやFED(電解放出ディスプレー)等の電極の製造装置、バイオチップ製造装置、等に搭載可能である。
圧力室に圧力を与えるための圧電素子は、薄膜型に限定されず、圧電材料と電極材料とを交互に積層させた積層型、縦振動させて各圧力室に圧力変化を与える縦振動型、等でもよい。また、圧電アクチュエーターは、発熱素子の発熱で生じる気泡によってノズルから液滴を噴射させるアクチュエーター、振動板と電極との間に発生させた静電気によって振動板を変形させてノズルから液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーター、等でもよい。更には、そのほかの様々な流路ユニットに適用することができる。
Claims (11)
- 壁となる振動板を変形させて圧力室内の液体を吐出させる流路ユニットであって、
前記振動板中の第1層と、該第1層の圧力室側に隣接する第2層とは、ジルコニアを主成分とし、互いに結晶構造の異なるセラミックス製である、流路ユニット。 - 前記第1層を構成する結晶は立方晶を主とし、前記第2層を構成する結晶は正方晶を主とし、前記振動板は圧力室側に撓んでいる、請求項1に記載の流路ユニット。
- 前記第1層を構成する結晶は正方晶を主とし、前記第2層を構成する結晶は立方晶を主とし、前記振動板は圧力室側とは反対側に撓んでいる、請求項1に記載の流路ユニット。
- 壁となる振動板を変形させて圧力室内の液体を吐出させる流路ユニットであって、
前記振動板中の第1層と、該第1層の圧力室側に隣接する第2層とは、ジルコニアを主成分とするセラミックス製であって、希土類元素及び第2族元素のいずれかを含み、含まれる希土類元素又は第2族元素の割合が異なる、流路ユニット。 - 前記第1層は前記第2層と比べて前記含まれる希土類元素又は第2族元素の割合が多く、前記振動板は前記圧力室側に撓んでいる、請求項4に記載の流路ユニット。
- 前記第1層は前記第2層と比べて前記含まれる希土類元素又は第2族元素の割合が少なく、前記振動板は前記圧力室側とは反対側に撓んでいる、請求項4に記載の流路ユニット。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の流路ユニットと、ノズルと、を有する液体吐出ヘッド。
- 請求項7に記載の液体吐出ヘッドを搭載した、液体吐出装置。
- 壁となるセラミックス製の振動板を変形させて圧力室内の液体を吐出させる流路ユニットの製造方法であって、
積層された少なくとも2以上の前記振動板の基材を含む前駆体を構成する第1の工程と、
前記前駆体を焼成して複数層から成る振動板を含んだ流路部材を形成する第2の工程と、を有し、
前記第1の工程で用いられる前記2以上の基材は、希土類元素及び第2族元素のいずれかを含み、含まれる希土類元素又は第2族元素の割合が異なる、流路ユニットの製造方法。 - 壁となるセラミックス製の振動板を変形させて圧力室内の液体を吐出させる流路ユニットの製造方法であって、
前記振動板の一部となる基材を含む前駆体を焼成して前記基材を形成する第3の工程と、
前記基材と隣接する位置に前駆体層を形成する第4の工程と、
前記形成された前駆体層を焼成して、前記振動板を形成する第5の工程と、を有する流路ユニットの製造方法。 - 前記前駆体層は、希土類元素及び第2族元素のいずれかを含んでいる、請求項10に記載の流路ユニットの製造方法。
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