JP2014234542A - 耐リジング性に優れたアルミニウム合金板 - Google Patents

耐リジング性に優れたアルミニウム合金板 Download PDF

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博貴 竹田
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Abstract

【課題】成形の厳しい条件においてもリジングマークの発生を確実に抑制できる耐リジング性に優れたアルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】Mg及びSiを含有するアルミニウム合金板において、板厚方向に6以上の数に等分に分割した場合の全板厚の中央部分に該当する板厚中層部の結晶粒径を45μm以上200μm以下とする一方、板厚中層部以外の領域である板厚表層部における平均結晶粒径を80μm以下とし、かつ板厚中層部以外の領域である板厚表層部において板厚中層部の結晶粒径と5μm以上異なる結晶粒径を有する面を含有させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車ボディシート、ボディパネルのような各種自動車、船舶、航空機等の部材、部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等に好適に用いられるアルミニウム合金板に関するものであり、特に、成形の厳しい条件においてもリジングマークの発生を確実に抑制できる耐リジング性に優れたアルミニウム合金板に関するものである。
自動車のボディシートには、従来は冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では地球温暖化抑制やエネルギーコスト低減等のために、自動車を軽量化して燃費を向上させる要望が高まっている。このため、従来の冷延鋼板に代えて冷延鋼板とほぼ同等の強度で比重が約1/3であるアルミニウム合金板を自動車のボディシートに使用する傾向が増大しつつある。また、近年では自動車以外の電子・電気機器等のパネル、シャーシの様な成形加工部品についても、高い熱伝導性や比強度といった特性を持つアルミニウム合金板を用いることが多くなっている。
例えば、自動車のボディシートは、プレス成形における張出成形や、曲げ成形などの成形加工が複合して行われるため、成形加工性が優れていることが要求される。また、フードやドアなどといったアウターパネルにおいては、美麗な表面品質が要求される。
一般に自動車ボディシート用のアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほか、Al−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金が主として使用されている。ここで、Al−Mg−Si系合金、Al−Mg−Si−Cu系合金は時効性を有する合金であり、塗装焼付けの加熱工程を利用して塗装焼付前より塗装焼付後で強度が向上する。つまり、塗装焼付前においては比較的強度が低く成形性が優れている一方、塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、Al−Mg系合金で問題となるリューダースマークが発生しにくいという長所を有している。
しかしながら、Al−Mg−Si系合金、Al−Mg−Si−Cu系合金では、プレス成形後の板表面にリジングマークが発生することがある。リジングマークとは、板に成形加工を施した際に、素材の板の製造工程における圧延方向と平行な方向に筋状に現れる微細な凹凸模様である。リジングマークはプレス成形条件が厳しくなった場合に特に生じやすく、近年の自動車ボディの形状複雑化や薄肉化の要求の高まりと共に、リジングマークの発生を抑制できる材料が強く要望されている。なお、以下、本明細書では、成形加工時にリジングマークが発生しにくい性質を「耐リジング性」と記す。
ところで、リジングマークの発生は、材料の再結晶挙動と深く関わっていることから、リジングマークの発生を抑制するためには、板製造過程での組織制御が不可欠とされている。耐リジング性を向上させるための従来の技術としては、主として板の熱延工程中の再結晶状態の制御の観点、結晶方位の制御の観点から、例えば特許文献1〜4に示すような提案がなされている。
特許第2823797号公報 特許第3590685号公報 特開2004−292899号公報 特開2008−045192号公報
最近では意匠性などから材質、特に表面外観品質の一層の向上が求められている。特に前述のような成形性、塗装焼付け工程での強度向上に優れたAl−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板は、利便性の点からより優れた耐リジング性を有することが強く要求されている。しかしながら前述のような従来技術では、その要求性能を十分に満足させることは困難であった。
すなわち、特許文献1や特許文献2に示されている方法では、熱間圧延の開始温度を350℃から450℃までの範囲としているため、熱間圧延中の粗大な結晶粒の形成はそれなりに抑制されるものの、未だその抑制効果が不充分であった。特に、板厚中層部に粗大結晶粒が形成されてしまい、その結果、必ずしも充分な耐リジング性が得られないことが本発明者等の実験により判明している。
また、特許文献3、4に記載のように板の特定の結晶方位を制御する方法では、耐リジング性の向上に一定の効果はあるものの、最近の耐リジング性向上の強い要求に対しては、その効果が未だ不充分であった。
本発明は以上の事情を鑑みてなされたものであり、成形の厳しい条件においてもリジングマークの発生を確実に抑制できる耐リジング性に優れたアルミニウム合金板を提供することを目的とするものである。
この目的を達成するために、本発明者等は、リジングマークの発生原因について鋭意検討を重ねた。リジングマークは、熱間圧延や冷間圧延工程中で圧延方向に引き伸ばされた結晶粒が形成するバンド状組織(筋状組織)が起源であると考えられている。本発明者等は、このバンド状組織を再結晶させて分解する際に、その再結晶粒径を粗大化させることにより、この分解力を増大させ、リジングマークの特徴である圧延方向の強い直線性を大きく低減させ、リジングマークを抑制できることを見出した。
本発明者等は、さらに検討を重ねた結果、リジングマークの発生は、板厚中層部で結晶粒群毎の塑性変形挙動差によって板厚方向の変形量が大きい場所と小さい場所が発生し、それが表面まで伝播していくことで表面に凹凸が現れるという現象であることが判明した。すなわち、リジングマーク発生の主原因となるバンド状組織は圧延板の板厚中層部に存在するということであり、特に圧延板の板厚中層部の再結晶粒径を適切なサイズまで大きくすることがリジングマークの防止に非常に効果的であることが判明したのである。これは、リジングマークが表面性状に関わる問題であることから、板厚表層部の組織が影響しやすいと考えられていた、これまでの見解とは全く異なる新しい知見である。
しかしながら、板厚中層部の結晶粒径を適切なサイズまで大きくした場合でも、特に成形の厳しい条件であればリジングマークが発生してしまい、その効果は十分ではなかった。そこで、本発明者等が更なる検討を重ねた結果、板厚中層部で発生した凹凸が表面に伝播する際に、凹凸伝播途中に板厚中層部の結晶粒径と異なる結晶粒径の層が存在すると、その層において変形挙動が変化することで、凹凸の伝播が乱され、リジングマークが視認しづらくなることが判明した。特に、板厚表層部の結晶粒径をも適切に制御することで、肌荒れを防止できるとともに、特に成形の厳しい場合であってもリジングマークを防止できることが判明した。
このように、本発明者等は、種々実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金の最終板の組織として、板厚表層部及び板厚中層部の結晶粒径、およびその関係を適切に制御することにより、肌荒れを防止するとともに、耐リジング性を確実かつ顕著に向上させることを見出したのである。
具体的には、本発明の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板は、Mg及びSiを含有するアルミニウム合金板において、板厚方向に6以上の数に等分に分割した場合の全板厚の中央部分に該当する板厚中層部の結晶粒径を45μm以上200μm以下とする一方、前記板厚中層部以外の領域である板厚表層部における平均結晶粒径が80μm以下であり、かつ前記板厚中層部以外の領域である板厚表層部において前記板厚中層部の結晶粒径と5μm以上異なる結晶粒径を有する面を含有することを特徴とする。
本発明によれば、成形の厳しい条件においてもリジングマークの発生を確実に抑制できる耐リジング性に優れたアルミニウム合金板を提供することができる。
本発明の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板を説明する概略図である。 本発明の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板(板厚中層部の結晶粒径より板厚表層部の結晶粒径が小さくなる場合)の代表的な製造方法を示すフローチャートである。 本発明の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板(板厚中層部の結晶粒径より板厚表層部の結晶粒径が大きくなる場合)の代表的な製造方法を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る耐リジング性に優れたアルミニウム合金板について詳細に説明する。
[アルミニウム合金板の化学成分組成]
本発明のアルミニウム合金板は、基本的にはAl−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるものであれば良く、その具体的な成分組成は特に制約されるものではないが、通常は、質量%でMg:0.2〜1.5%、Si:0.3〜2.0%を含有し、かつMn:0.03〜0.6%、Cr:0.01〜0.4%、Zr:0.01〜0.4%、V:0.01〜0.4%、Fe:0.03〜1.0%、Ti:0.005〜0.3%、Zn:0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる成分組成とすることが好ましい。
次に、各元素の限定理由について説明する。
(Mg)
Mgは本発明で対象としている合金系で基本となる合金元素であって、Siとともに強度向上に寄与する。Mg量は、0.2〜1.5%とすることが好ましい。Mg量が0.2%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られない。一方1.5%を超えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、プレス成形性、主に曲げ加工性が低下する。特に、最終板のプレス成形性、主に曲げ加工性をより良好にするためには、Mg量は0.3〜0.9%の範囲内とすることがより好ましい。
(Si)
Siも本発明の合金系で基本となる合金元素であって、Mgとともに強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成される。この金属Si粒子の周囲が冷間圧延時に付与される加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量は、0.3〜2.0%とすることが好ましい。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を超えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じて、プレス成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。特に、プレス成形性と曲げ加工性とのより良好なバランスを得るためには、Si量は0.5〜1.3%の範囲内がより好ましい。
(Mn、Cr、Zr、V、Fe、Ti、Zn)
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性(焼付硬化性)の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。これらのうちMn、Cr、Zr、Vは強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素である。Mn量が0.03%未満、もしくはCr、Zr、V量がそれぞれ0.01%未満では、上記の効果が充分に得られない。一方、Mn量が0.6%を超えるか、あるいはCr、Zr、V量がそれぞれ0.4%を超えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、Mnは0.03〜0.6%の範囲内、Cr、Zr、Vはそれぞれ0.01〜0.4%の範囲内とすることが好ましい。
Feも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素である。Fe量は、0.03〜1.0%の範囲内が好ましい。Fe量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方1.0%を超えれば、多数の金属間化合物が生成されて、プレス成形性、曲げ加工性が低下するおそれがある。特に、曲げ加工性の低下を最小限に抑えたい場合、Fe量は0.03〜0.5%の範囲がより好ましい。
Tiは、鋳塊組織の微細化を通じて最終板の強度向上、肌荒れ防止、耐リジング性向上に効果があることから、鋳塊組織の微細化のために添加する。Ti量は0.005〜0.3%の範囲内とすることが好ましい。Ti量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.3%を超えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶出物が生じるおそれがある。さらに、Tiと同時に500ppm以下のBを添加することによって、鋳塊組織の微細化と安定化の効果が一層顕著となる。
Znは時効性向上を通じて強度向上に有効な元素である。Zn量は0.03〜2.5%の範囲内が好ましい。Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を超えれば成形性が低下する。
(Cu)
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素である。Cu量が1.5%を超えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が低下することから、Cu量は1.5%以下とすることが好ましい。また、より耐食性の改善を図りたい場合はCu量を1.0%以下とすることが好ましく、特に耐食性を重視する場合は、Cu量は0.05%以下に規制することが望ましい。
(その他の元素)
Al−Mg−Si系合金、Al−Mg−Si−Cu系合金においては、高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素であるAg、In、Cd、Be、あるいはSnを微量添加することがある。本発明の場合も微量添加であればこれらの元素の添加も許容され、それぞれ0.01〜0.3%の範囲内であれば特に所期の目的を損なうことはない。さらに、鋳塊組織の微細化にはScの添加も効果があるとされており、本発明の場合も微量のScを添加しても良く、Sc量0.01〜0.2%の範囲内であれば特に支障はない。
(不可避的不純物)
例えば、地金や中間合金に含まれている通常知られている範囲内のGa、V、Ni等の不可避的不純物は、本発明の効果を妨げるものではないため、このような不可避的不純物の含有も許容される。
[アルミニウム合金板の結晶粒径制御]
さらに、本発明のアルミニウム合金板において特に耐リジング性を確実かつ安定して向上させるためには、合金の成分組成を前述のように調整するばかりでなく、最終板であるアルミニウム合金板の結晶粒径を、板厚方向の各部位で適切に制御することが極めて重要である。
リジングマークは、前述したように、圧延板を成形加工したときに、圧延板表面に圧延方向と平行な方向に筋状に生じる微小な凹凸模様である。このようなリジングマークは、熱間圧延および冷間圧延工程において圧延方向に引き伸ばされた結晶粒が形成するバンド状組織(筋状組織)が起源となり、以下のように発生すると考えられる。即ち、これらのバンド状組織を形作る圧延方向に伸長した結晶粒は、再結晶させることにより等軸粒に近い結晶粒となるため、バンド状組織は分解される。しかしながらその際に、圧延方向に伸長した元のバンド状組織に基づいて、類似した結晶方位を持つ結晶粒群を形成する。それらがあたかも単一の結晶粒かのように振舞うことで、それら結晶粒群同士の結晶方位の違いに起因した塑性変形挙動の違いにより、微小な凹凸が発生し、リジングマークとなってしまうと推定される。
このようなバンド状組織の形成は、通常の圧延工程により製造を行う上では決して回避できるものではない。しかし、本発明では、前述したように、板厚中層部の結晶粒径を適切なサイズまで大きくすることがバンド状組織の分解に有効であること、同時に板厚表層部の結晶粒径を適切に制御することで肌荒れも防止できること、板厚中層部と板厚表層部の結晶粒径の関係を適切に制御することで、特に成形の厳しい場合であってもリジングマークを防止できること等の知見に基づきなされている。即ち、本発明では、アルミニウム合金板の板厚中層部と板厚表層部それぞれの結晶粒径、およびそれらの関係を適切に制御することで、アルミニウム合金板のリジングマークや肌荒れといった表面性状の問題を防止することができる。従って、本発明のアルミニウム合金板は、自動車のボディシートなど特に表面外観特性が優れていることが要求される成形加工用のアルミニウム合金圧延板として最適である。
(具体的な結晶粒径分布)
アルミニウム合金板における具体的な結晶粒径分布について、例えば、図1に示すように、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系アルミニウム合金板の表面から板厚1/8面までの層(S1)の任意の面での結晶粒径をd、板厚1/8面から板厚2/8面までの層(S2)の任意の面の結晶粒径をd、板厚2/8面から板厚3/8面までの層(S3)の任意の面の結晶粒径をd、板厚3/8面から板厚4/8面までの層(S4)の任意の面の結晶粒径をdとした場合を考える。
リジングマーク発生に特に強い影響を与えるバンド状組織は、図1における層S4箇所の板厚中層部に存在し、そこで発生した凹凸の表面への伝播を抑制させるためには、この板厚中層部と結晶粒径の異なる層の厚さは少なくとも全板厚の1/8以上の厚さが必要である。
これらの検討の結果から、板厚中層部の結晶粒径を適切なサイズまで大きく再結晶させることでバンド状組織の分解を促し、同時に板厚内に板厚中層部と異なる結晶粒径をもつ層を形成させて板厚中層部から表面への凹凸の伝播を抑制する。
本発明者等の行った実験によれば、製造工程中で形成したバンド状組織を分解するためには、板厚中層部に相当する結晶粒径dを45μm以上、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは60μmを超えることが望ましい。結晶粒径dが45μmより小さい場合には、リジングマーク発生の原因であるバンド状組織を十分に分解することができず、リジングマークが発生してしまう。また、結晶粒径dが200μmを超えてしまうと伸びや成形性が大きく低下してしまうため、結晶粒径dは200μm以下、好ましくは150μm以下とすることが望ましい。さらに、特に伸びや成形性を必要とする場合には、結晶粒径dを100μm以下とすることが好ましい。
同時に、上記の結晶粒径dと、結晶粒径d、d、dの少なくともいずれか一つ以上の層における結晶粒径との差が5μm以上、好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上を満たすことで、板厚中層部で発生した凹凸が表面に伝播する際に、板厚中層部の結晶粒径と異なる結晶粒径の層を通過することで変形挙動が変化し、凹凸の伝播が抑制されることで、より成形の厳しい条件であっても、リジングマークの発生しない材料を製造することができる。結晶粒径dと結晶粒径d〜dの差がいずれも5μmより小さい場合、板厚中層部で発生したリジングマークの凹凸が表面に伝播する際に、その伝播を抑制する効果が十分ではなくなり、リジングマークが発生してしまう場合がある。
また、従来の知見では最終材の結晶粒径を大きくさせることは、表面性状や成形性を悪化させることにつながると考えられており、例えば、板厚表層部の結晶粒径を過度に粗大化させてしまうと肌荒れやオレンジピールと呼ばれるような表面性状に関わる問題を引き起こす場合がある。これらの抑制には結晶粒径を微細化させることが有効であることが公知である。このため、本発明においても、肌荒れやオレンジピールが発生しない程度に板厚表層部の結晶粒径を制御する必要がある。
本発明者等の実験によれば、肌荒れやオレンジピールはリジングマークとは異なり、主に板厚表層部、すなわち図1における層S1〜S3の範囲の平均結晶粒径との相関が強いことが判明しており、板厚表層部の平均結晶粒径が80μmを超えると、特に肌荒れやオレンジピールが起こりやすくなる。そのため、板厚表層部に相当する結晶粒径dとdとdの平均値を80μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下とすることが望ましい。
以上をまとめると、
45μm≦d≦200μm ・・・(1)
(d+d+d)/3≦80μm ・・・(2)
上記(1)、(2)式を満たし、かつ、
|d−d|≧5μm ・・・(3)
|d−d|≧5μm ・・・(4)
|d−d|≧5μm ・・・(5)
上記(3)〜(5)式の少なくとも一つを満たすように制御する必要がある。また、dとdとdそれぞれの粒径は、上記(3)〜(5)式を満たせば、特に限定するものではない。
このように、耐リジング性向上のために、再結晶時に板厚中層部の結晶粒径を適切なサイズまで大きくさせることでバンド状組織を分解しつつ、板厚中層部と結晶粒径の異なる層を形成させて板厚中層部で発生した凹凸の伝播を抑制し、また、肌荒れの防止のために板厚表層部の平均結晶粒径を制御することで、肌荒れを防止しつつ、苛酷な成形加工が施される部位でも、リジングマークの発生を確実に防止することが可能となる。
また、リジングマーク発生に強く影響する板厚中層部のバンド状組織は、熱間圧延時から形成されており、板厚中層部に当たる図1における層S4の領域の全板厚に対する割合は、圧延が進んで板厚が減少してもその割合を保つことになるから、上記結晶粒径の制御によりリジングマークを防止できる板厚は特に制限されるものではなく、製品に要求される所定の板厚の最終圧延板に対して適用できる。
次に、各結晶粒径の具体的な測定方法について説明する。
(結晶粒径d〜dの測定方法)
まず、結晶粒径dからdは、組織観察用試験片の圧延面に対して、結晶粒径dからdそれぞれで定義された板厚方向部位の任意の面まで苛性エッチングで減厚した後に、機械研磨、バフ研磨、電解研磨を行う。それぞれの研磨面において、走査電子顕微鏡に付属の後方散乱電子回折測定装置(SEM−EBSD)で測定することによって集合組織の方位情報を取得する。試料の測定領域は1000μm×1000μmとし、測定ステップ間隔は結晶粒径の1/10程度としてやればよい。
得られた方位データから、EBSD解析ソフト(TSL社製の「OIM Analysis」)を使用して結晶粒径を測定する。このときミスオリエンテーション5°以上の結晶境界線を結晶粒界とみなし、円相当として算出した直径を結晶粒径とする。
[耐リジング性に優れたアルミニウム合金板の製造方法]
次に、前述のような結晶粒径の分布を有する本発明の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板を製造するための方法について説明する。
本発明の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板を製造する方法は、基本的には特に限定されるものではなく、合金板の組織が前述の結晶粒径の規定を満足する、すなわち、板厚中層部の結晶粒径を粗大にしつつ、板厚中層部の結晶粒径と板厚中層部以外の板厚部位である板厚表層部での結晶粒径との間に差があればよい。そのための方法としては種々考えられるが、代表的な製造方法を図2に示す。
図2は、板厚中層部の結晶粒径に比べて板厚表層部の結晶粒径が小さくなるアルミニウム合金板の製造方法を示している。この製造方法では、冷間圧延工程(S13)以降において、ひずみの導入量を板厚表層部と板厚中層部で異なるように冷間圧延・熱処理条件を制御することで、上記の規定された結晶粒径を満足するアルミニウム合金板を製造する。導入されたひずみエネルギーは、再結晶時の核生成の駆動力となるため、導入されたひずみエネルギーが大きい部分では、再結晶時の核生成数が多くなるために、再結晶粒径が微細になり、一方導入されたひずみエネルギーが小さい部分では、再結晶時の核生成数が少なくなるために、結晶粒径が大きく成長する。この作用を用いることで、再結晶を兼ねた溶体化処理工程(S18)において、板厚中層部の結晶粒径に比べて板厚表層部の結晶粒径が小さくなる条件を満たすアルミニウム合金板を製造することができる。以下、図2に示す各工程についてさらに詳しく説明する。
(鋳造工程:S11、熱間圧延工程:S12)
前述のような成分組成のアルミニウム合金を常法に従って溶製し、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の鋳造法を適宜選択して鋳造する。そして得られた鋳塊に対し、必要に応じて均質化処理を施した後、熱間圧延を行う。
ここで、均質化処理を行う場合の処理条件は特に限定されないが、通常は、480℃以上590℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下の加熱をすればよい。
上述のように必要に応じて均質化処理を行った後には、従来の一般的な方法に従って熱間圧延を施せばよいが、熱間圧延開始までの過程においては、必要に応じて以下のいずれかの処理方法を適用することができる。すなわち、均質化処理後の冷却過程で常温もしくは常温近くまで冷却させた後、改めて熱間圧延の開始温度まで加熱して熱間圧延を開始してもよいし、あるいは均質化処理後の冷却過程で熱間圧延の開始温度まで冷却し、そのまま熱間圧延を開始しても良い。
熱間圧延は、通常の条件に従えばよく、例えば熱間圧延開始温度を580℃未満250℃以上とし、熱間圧延終了温度を150℃以上として熱間圧延が可能な温度に制御すればよい。
(板厚中層部の結晶粒径に比べて板厚表層部の結晶粒径が小さくなるアルミニウム合金板の製造方法)
前述した製造方法により鋳造工程(S11)及び熱間圧延工程(S12)までを終えた材料に対し、更に冷間圧延工程(S13)、一次中間焼鈍工程(S14)、一次異周速圧延工程(S15)、二次中間焼鈍工程(S16)、二次異周速圧延工程(S17)及び溶体化処理工程(S18)を施す。異周速圧延を行うことで、板厚表層部に強いせん断ひずみを与えることができ、溶体化処理工程(S18)での再結晶時に板厚中層部に比べ、板厚表層部を微細に再結晶させることができる。
(冷間圧延工程:S13、一次中間焼鈍工程:S14)
熱間圧延終了後の板に対して、冷間圧延を挟んで一次中間焼鈍を行う。この冷間圧延の圧延率は特に限定しないが、5〜85%程度が好ましい。また、冷間圧延後の一次中間焼鈍は、材料到達温度が430℃以上580℃未満とすればよく、保持時間は特に決まりはないが、生産性を考慮し5分以内の条件で行えばよい。
(一次異周速圧延工程:S15)
以上のように一次中間焼鈍を施した後には、対となる上下圧延ロールの回転数が異なる一次異周速圧延を行う。この一次異周速圧延は、上下の圧延ロールの周速比を1.5以上2.0未満、圧延温度を室温以上150℃未満とし、1パスで圧下率を60%以上とする強圧下異周速圧延とする。このような条件内における所望の条件で異周速圧延を行うことにより、板厚表層部のみに強いせん断ひずみを加えることができ、板厚表層部と板厚中層部に導入されるひずみエネルギーに差を与えることができる。
この1パスあたりの圧下率が60%より小さい場合には、板厚表層部と板厚中層部に導入されるひずみエネルギーの差が小さくなり、溶体化処理による再結晶の際に所望の結晶粒径を持つ組織を得ることができなくなる。
(二次中間焼鈍工程:S16)
次に、上記の異周速圧延を施した圧延板に対して、二次中間焼鈍を行う。この二次中間焼鈍は圧延板に導入されたひずみエネルギーを適度に減少させ、この工程の後に続く溶体化処理時に板厚中層部の再結晶粒径を所望された適切なサイズまで大きくさせる目的で行う。材料到達温度は200℃以上250℃以下とし、保持時間は10時間以上100時間未満とすればよい。以降、このような再結晶の起こらない温度にて、導入されたひずみエネルギーを調整させる焼鈍工程を「ひずみ抜き焼鈍」と呼ぶ。
(二次異周速圧延工程:S17)
ひずみ抜き焼鈍を行った圧延板に対しては、ロール周速比1.2以上1.6以下、圧延温度を室温以上150℃未満とし、圧下率10%以上20%未満とする二次異周速圧延を行い、所定の板厚とする。この二次異周速圧延を行うことで、板厚表層部と板厚中層部にそれぞれ導入されるひずみエネルギーに差を与えることができ、また、一次異周速圧延工程で荒れる場合のある圧延板表面を慣らし、さらに良好な表面性状を得ることが可能となる。
(溶体化処理工程:S18)
以上のようにして所定の板厚とした圧延板に対して、再結晶処理と兼ねて溶体化処理を施すことにより、耐リジング性に特に優れたアルミニウム合金板を得ることができる。再結晶処理と兼ねた溶体化処理条件は、材料到達温度480℃以上590℃以下、材料到達温度到達後の保持時間は0分以上5分以内とすることが好ましい。材料到達温度までの昇温速度は結晶粒径に影響を与えるので生産性も考慮して50℃/分以上とすることが望ましい。50℃/分未満であると結晶粒径が粗大化しすぎてしまい、所定の結晶粒径を得ることができない場合がある。また、溶体化処理後の冷却については、100℃/分以上の冷却速度で150℃以下の温度域まで冷却することで、十分な成形性、焼付硬化性を得ることができる。
なお、さらに良好な焼付け硬化性を得るためには、溶体化処理後に、直ちに50〜150℃の温度範囲で1時間以上保持する予備時効処理を行うのが好ましい。但し、この予備時効処理は、結晶粒径に対しては本質的な影響を与えるものではなく、したがって本発明において、予備時効処理を行うか否かは本質的な要件ではない。
[耐リジング性に優れたアルミニウム合金板の他の製造方法]
次に、図3に、板厚中層部の結晶粒径に比べて板厚表層部の結晶粒径が大きくなるアルミニウム合金板の代表的な製造方法を示す。
鋳造工程(S11)及び熱間圧延工程(S12)は、図2に示した製造工程と同様である。本製造方法では、さらに、一次冷間圧延工程(S23)、一次中間焼鈍工程(S24)、二次冷間圧延工程(S25)を施す。最後の2工程の二次中間焼鈍工程(S16)及び溶体化処理工程(S18)は図2に示した製造工程と同様である。本製造方法では、一次中間焼鈍工程(S24)において、板厚表層部のみを再結晶させることにより、板厚表層部と板厚中層部のひずみエネルギーの導入量を調整することで結晶粒径に差を与える。以下、一次冷間圧延工程(S23)以降の製造工程についてさらに詳しく説明する。
(一次冷間圧延工程:S23、一次中間焼鈍工程:S24)
熱間圧延終了後の板に対して、一次冷間圧延を行い、その後一次中間焼鈍を行う。このときの一次冷間圧延の圧下率は20%以上85%以下とすることが望ましい。一次中間焼鈍は圧延板表面の材料到達温度を400℃以上590℃以下、圧延板板厚中層部の材料到達温度を300℃以下に制御する。
これにより、圧延板表面から板厚中層部までの間に温度勾配を持たせることができ、板厚表層部のみを再結晶させることができる。このとき、図1におけるS1〜S4の層のうち、少なくとも最表層にあたる板厚表層部S1が再結晶し、少なくとも板厚中層部S4が再結晶しないように調節する。板厚表層部のみを再結晶させることによって、板厚表層部に蓄積されるひずみエネルギーのみを減少させることができ、溶体化処理による再結晶の際に板厚表層部の結晶粒径を板厚中層部に比べて大きく再結晶させることができる。一次中間焼鈍時に板厚表層部のみを再結晶させる条件は、一次冷間圧延の圧下率、一次中間焼鈍の雰囲気温度、材料板厚などにより異なるが、例えば以下に記載する熱伝導の微分方程式を解いて得られる式(6)を用いる。
T=(T-T)×exp(-λt/(s・ρ・C))+T ・・・(6)
を用いておおよそ必要な時間を計算し、材料投入からの保持時間を調整することで、最適な条件を決定すればよい。
ここで、Tは材料温度(K)、Tは昇温前の材料温度(K)、Tは雰囲気温度(K)、λは熱伝導率(W/m・K)、tは時間(sec)、sは材料板厚(m)、ρは材料密度(g/m)、Cは比熱(J/g・K)を表す。
(二次冷間圧延工程:S25)
一次中間焼鈍後は二次冷間圧延を行い、所定の板厚とする。このときの圧下率は20%以上30%未満とすることが好ましい。圧下率が20%未満であると、表層部に十分なひずみエネルギーが導入されず、30%より圧下率を大きくしてしまうと、板厚の各部位に導入されるひずみエネルギーが均一化され、板厚表層部と板厚中層部でのひずみエネルギーの差が小さくなってしまい、規定の結晶粒径を持つ組織を得ることができなくなってしまう。
(二次中間焼鈍工程:S16)
次に、上記の二次冷間圧延を施した圧延板に対して、二次中間焼鈍として、ひずみ抜き焼鈍を行う。ひずみ抜き焼鈍は圧延板に導入されたひずみエネルギーを適度に減少させ、溶体化処理時に板厚中層部の再結晶粒径を所望された適切なサイズまで大きくさせる目的で行う。材料到達温度は200℃以上250℃以下とし、保持時間は10時間以上100時間未満とすればよい。
(溶体化処理工程:S18)
以上のようにして所定の板厚とした圧延板に対して、再結晶処理と兼ねて溶体化処理を施すことにより、耐リジング性に特に優れた成形加工用アルミニウム合金板を得ることができる。再結晶処理と兼ねた溶体化処理条件は、材料到達温度480℃以上590℃以下とし、保持時間は特に決まりはないが、生産性を考慮し5分以内とすることが好ましい。材料到達温度までの昇温速度は結晶粒径に影響を与えるので生産性も考慮して50℃/分以上とすることが望ましい。50℃/分未満であると結晶粒径が粗大化しすぎてしまい、所定の結晶粒径を得ることができない場合がある。また、溶体化処理後の冷却については、100℃/分以上の冷却速度で150℃以下の温度域まで冷却することで、十分な成形性、焼付硬化性を得ることができる。
なお、さらに良好な焼付け硬化性を得るためには、溶体化処理後に、直ちに50〜150℃の温度範囲で1時間以上保持する予備時効処理を行うのが好ましい。但し、この予備時効処理は、結晶粒径に対しては本質的な影響は与えるものではなく、したがって本発明において、予備時効処理を行うか否かは本質的な要件ではない。
以下に本発明の実施例を記載する。なお、以下の実施例は、本発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセス、条件及び性能値が本発明の技術的範囲を制限するものではない。
表1の合金符号A〜Jに示す各成分組成のアルミニウム合金を常法に従って溶解し、DC鋳造法によりスラブに鋳造した。なお、リジングマークや肌荒れと言った表面性状の問題の防止に対しては、本明細書で規定したような結晶粒径が重要なのであり、本実施例においては製造工程の工夫により結晶粒径を制御している。そのため、合金成分自体が表面性状に大きな影響を与えることはない。合金成分の与える影響は、機械的性質や成形性あるいは工業的な生産性においてである。
Figure 2014234542
得られた各スラブに対して530℃、8時間の条件で均質化処理を施した後、室温付近まで放冷した。次いで、熱間圧延開始温度を500℃として2時間保持する予備加熱を行った後、熱間圧延終了温度を250℃となるように熱間圧延を実施した。
次に、表2に記載の実施例では、板厚を2.8mm〜8.4mmとした熱延板に対して、圧下率30%で冷間圧延を行い、ソルトバスを用いて材料到達温度560℃、保持時間1分で一次中間焼鈍を行った。その後、ロール周速比1.5、圧延開始温度120℃、表2に記載の圧下率にて1パスで一次異周速圧延を行った。こうして得られた圧延板に対して、表2に記載の材料到達温度にて48時間のひずみ抜き焼鈍を行い、ロール周速比1.5、圧延開始温度120℃、圧下率15%の二次異周速圧延を施し板厚1mmとした。その後の溶体化処理では、昇温速度を変えて結晶粒径を制御する目的で2つの昇温速度、すなわち表2に記載の昇温速度40℃/秒のソルトバス、昇温速度80℃/分の硝石炉にて材料到達温度560℃、保持時間1分にて溶体化処理を行い、室温付近までファンにて強制空冷後、直ちに80℃、5時間の予備時効処理を施した。
また、比較例として作成した製造プロセス番号21は、一次異周速圧延を周速比が1.0である等周速圧延とした。同様に製造プロセス番号23は、溶体化処理を昇温速度100℃/時間の硝石炉にて、材料到達温度560℃、保持時間1分にて行った。
Figure 2014234542
次に、表3に記載の実施例では、板厚を3mm〜4mmとした熱延板に対して、圧下率60%で一次冷間圧延を行い板厚1.2mm〜1.8mmとした。その後、450℃に設定したソルトバスに表3に記載の板厚に合わせ、先に記した熱伝導から得られた式(6)から得られた保持時間にて一次中間焼鈍を行った。このように保持時間を調整することで、圧延板表面の材料到達温度を再結晶温度以上にしつつ、圧延板中層部の材料到達温度を再結晶温度以下に抑え、圧延板表面のみを再結晶させた。このとき、一次中間焼鈍後の圧延方向と平行な切断断面の組織を観察し、両表面からの再結晶組織の厚さを任意の各5箇所で測定し、その平均値を「表面から未再結晶組織までの再結晶組織厚さ」とした。そして、「表層再結晶率」を(「表面から未再結晶組織までの再結晶組織厚さ」)×2/(全板厚)により求めた。その後、同じく表3に記載の圧下率にて二次冷間圧延を行い板厚1mmとし、同じく表3に記載の材料到達温度にて48時間保持し、ひずみ抜き焼鈍を行った。こうして得られた圧延板に対して、昇温速度40℃/秒のソルトバスを用いて材料到達温度550℃、保持時間30秒にて溶体化処理を行い、室温付近までファンにて強制空冷後、直ちに80℃、5時間の予備時効処理を施した。
Figure 2014234542
以上のようにして得られた板厚1mmの各板材について、前述した方法で結晶粒径を測定した。結晶粒径dを例にすると、図1におけるS1の層において表面から厚み方向内部へ1/3だけ進行した面と2/3だけ進行した面の結晶粒径をそれぞれ測定し、その平均値をdとした。結晶粒径d、d、dに関しても同様に、それぞれS2、S3、S4の層において、その層板厚の1/3だけ進行した面と2/3だけ進行した面の2面の結晶粒径を測定し、その平均値を結晶粒径d、d、dとした。
さらに、前述のようにして得られた各板材について、従来から行われている簡便な評価手法を用いて耐リジング性の評価を行った。具体的には、圧延方向に対し90°をなす方向に沿ってJIS5号試験片を採取し、15%ストレッチを行い、表面に圧延方向に沿って生じた筋模様(筋状凹凸模様)をリジングマークとして、その発生の有無を目視で判定した。○印は筋模様なし、×印は筋模様が強い状態を示す。また、同様にして肌荒れの有無を判定した。○印は肌荒れ発生なし、×印は表面性状として問題となる程度の肌荒れが発生したことを示す。
さらにまた、前述のようにして得られた各板材について、溶体化処理を行った日から7日後において、圧延方向と平行な方向にJIS5号試験片を切り出し、引張試験により0.2%耐力(ASYS)と伸び(ASEL)を評価した。また、それぞれ2%ストレッチ後、オイルバスを用いて170℃×20分の塗装焼付け処理を施した0.2%耐力値(BHYS)も測定した。成形性や強度の判断基準として、自動車ボディシート材として要求される基準を元に、ASYSが90MPa以上、ASELが25%以上、BHYSが160MPa以上を合格とした。
表2に記載の実施例で作製したサンプルの評価結果を表4に、表3に記載の実施例で作製したサンプルの評価結果を表5に示す。
Figure 2014234542
Figure 2014234542
表4中の製造プロセス番号1〜16および表5中の製造プロセス番号26〜41の例は、いずれも合金の成分組成が本発明の実施形態で規定する範囲内であって、かつ、溶体化後の結晶粒径も本発明の実施形態で規定する範囲を満たすものである。これらの耐リジング性はいずれも問題にならないレベルとなっていることが確認され、また、機械的性質やベークハード性も自動車材として要求される性能を十分に満たすものとなった。
表4中の製造プロセス番号17〜20および表5中の製造プロセス番号42〜45の例は、リジングマークは発生しておらず、自動車材として実用上使えるレベルだったが、いずれも合金の成分組成、特にMgとSiが本発明の実施形態で規定する範囲を外れた組成となっているため、いずれも機械的性質、特に伸びが25%未満と低かった。
一方、表4中の製造プロセス番号21〜25の例は、一次異周速圧延条件、ひずみ抜き焼鈍条件及び溶体化処理条件が最適化されておらず、結晶粒径が本発明の実施形態で規定する範囲を満たさなかったものである(比較例)。具体的には、異周速圧延を行わず、等速圧延を行った番号21は、板厚表層部と板厚中層部に結晶粒径差が表れず、リジングマークが確認された。また、ひずみ抜き焼鈍の温度が高い番号22では、板厚中層部の結晶粒径が本発明の実施形態で規定する範囲を超え、伸びが小さくなり、成形性に劣った。溶体化処理時の昇温速度の遅い番号23では、板厚表層部の結晶粒径が80μmを超えたために肌荒れが発生し、また伸びが小さく成形性が劣った。ひずみ抜き焼鈍を行っていない番号24では板厚中層部の結晶粒径がバンド状組織を分解するほど大きくならず、リジングマークが発生した。異周速圧延時の圧下率の低い番号25では、板厚表層部に十分なひずみエネルギーが導入されず、板厚表層部と板厚中層部に結晶粒径差が表れなかったために、リジングマークが発生した。
表5中の製造プロセス番号46〜49の例は、一次中間焼鈍条件、二次冷間圧延条件及びひずみ抜き焼鈍条件が最適化されておらず、結晶粒径が本発明の実施形態で規定する範囲を満たさなかったものである(比較例)。具体的には、中間焼鈍時に完全再結晶させた番号46や二次冷間圧延率の大きい番号47では、板厚中層部と板厚表層部での結晶粒径の差が本発明の実施形態で規定する範囲を満たさず、リジングマークが確認された。ひずみ抜き焼鈍の温度が高すぎる番号48では、板厚表層部の結晶粒径が粗大になりすぎ、肌荒れが発生し、ひずみ抜き焼鈍を行わなかった番号49では、板厚中層部の結晶粒径がバンド状組織を分解するほど大きくならず、リジングマークが発生した。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、アルミニウム合金板を厚さ方向に8等分した際にその全板厚の中央部に該当する板厚3/8面から板厚4/8面の部分の層を板厚中層部とし、板厚中層部以外の領域である表面から板厚3/8面を板厚表層部としたが、厚さ方向の分割数は8には限られず、6以上の任意の数とすることができる。例えば、6等分した場合は全板厚の中央部に該当する板厚2/6面から板厚3/6面に該当する部分の層を板厚中層部、板厚中層部以外の領域である表面から板厚2/6面を板厚表層部とすることができる。また、7分割した場合は全板厚の中央部に該当する板厚3/7面から板厚4/7面に該当する部分の層を板厚中層部、板厚中層部以外の領域である表面から板厚3/7面を板厚表層部とすることができる。さらに、10等分した場合は全板厚の中央部に該当する板厚4/10面から板厚5/10面に該当する部分の層を板厚中層部、板厚中層部以外の領域である表面から板厚4/10面を板厚表層部とすることができる。

Claims (3)

  1. Mg及びSiを含有するアルミニウム合金板において、板厚方向に6以上の数に等分に分割した場合の全板厚の中央部分に該当する板厚中層部の結晶粒径を45μm以上200μm以下とする一方、前記板厚中層部以外の領域である板厚表層部における平均結晶粒径が80μm以下であり、かつ前記板厚中層部以外の領域である板厚表層部において前記板厚中層部の結晶粒径と5μm以上異なる結晶粒径を有する面を含有することを特徴とする耐リジング性に優れたアルミニウム合金板。
  2. 前記等分に分割する数を8とし、前記合金板表面から板厚1/8面までの任意の面での結晶粒径をd、板厚1/8面から板厚2/8面までの任意の面の結晶粒径をd、板厚2/8面から板厚3/8面までの任意の面の結晶粒径をd、板厚3/8面から板厚4/8面までの任意の面の結晶粒径をdとしたときに、
    45μm≦d≦200μm ・・・(1)
    (d+d+d)/3≦80μm ・・・(2)
    上記(1)、(2)式を満たし、かつ、
    |d−d|≧5μm ・・・(3)
    |d−d|≧5μm ・・・(4)
    |d−d|≧5μm ・・・(5)
    上記(3)〜(5)式の少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項1記載の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板。
  3. 前記合金板の組成として、質量%でMg:0.2〜1.5%、Si:0.3〜2.0%を含有し、かつMn:0.03〜0.6%、Cr:0.01〜0.4%、Zr:0.01〜0.4%、V:0.01〜0.4%、Fe:0.03〜1.0%、Ti:0.005〜0.3%、Zn:0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする請求項1又は2記載の耐リジング性に優れたアルミニウム合金板。
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